説明

食品容器及び該食品容器を用いたパック食品の製造方法

【目的】新規の構成を有する食品用容器、及び、この容器を用いたパック食品の製造方法を提供する。
【構成】本体2と蓋体3とからなる食品容器1であって、本体の上端縁には略水平の段設面26が形成されると共に、この段設面から外方に向かう傾斜面27が形成され、且つ、この傾斜面から段設面の下方を通って本体内に通じる通路4を与えるための開口部28が本体の上端外縁に間隔をおいて複数形成されている。第一の被着状態(図2)では蓋体の周縁下端が本体の段設面に当接載置して通路を介して容器内外のガス流通を許容する。蓋体を第一の被着状態から本体に向けて押し込んだ第二の被着状態(図3)では、蓋体の周縁内面が本体上端縁の傾斜面に略面接して通路を閉塞してガス流通を遮断する。この食品容器を用い、第一の被着状態で蒸気で炊飯・調理した後、第二の被着状態でパック食品を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品容器及び該食品容器を用いたパック食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニなどで販売される弁当類や総菜類などの容器として、たとえば下記特許文献1に記載されるようなものが一般に用いられている。この容器は、任意形状の合成樹脂製本体の上部開口面外側にフランジが設けられており、このフランジに蓋シートをヒートシールにて接着するように構成されている。
【特許文献1】特開平11−193067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成の容器を用いてパック入り食品を製造する場合、本体に必要量の食材(米や具材など)を収容した後、(1)本体を開口させたままの状態で蒸気釜などに送入して炊飯・調理した後に蓋シートを被着する方法と、(2)本体に蓋シートを被着した後に蒸気釜などで炊飯・調理する方法があるが、いずれの方法においても、蓋シートをヒートシールという化学的手法で被着する工程及び設備を必要とし、且つ、製造されたパック入り食品を購入した消費者がこれを食するに当たり、ヒートシールされた蓋シートを引き剥がす作業が必ずしも容易ではないという問題を抱えている。
【0004】
また、(1)の方法によると本体内の食材に直接蒸気が当たるため水分量が多くなりすぎる傾向にあるだけでなく、蒸気釜内における炊飯・調理工程において同時に蓋シートを蒸気殺菌することができない。一方、(2)の方法によると本体内の食材に対して蓋シート越しに蒸気で炊飯・調理及び殺菌することになるが、温度上昇が緩慢になるため、長時間の処理を必要とし、生産性が劣るだけでなく、食味や食感も低下する。(1)と(2)を組み合わせた方法、すなわち、本体に必要量の食材を収容した後、本体を開口させたままの状態で蒸気釜などに送入して炊飯・調理する一次炊飯・調理を行い、蓋シートを被着した後、再度蒸気釜などで炊飯・調理する二次炊飯・調理を行う方法もあるが、煩雑な工程を必要とし、生産性が大きく損なわれる。
【0005】
そこで本発明は、従来技術における上記問題を解決し、特にコンビニなどで販売される弁当類や総菜類の食品のための容器として適した構成を提供すると共に、この容器を用いた新規なパック食品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る本発明の食品容器は、必要量の食材を収容するための凹部を備えて略皿状またはカップ状に形成された本体と、この本体の上部に被着される略逆皿状または逆カップ状の蓋体とからなり、本体の上端外縁には略水平面に段設面が形成されると共に、この段設面から外方に向かう傾斜面が形成され、且つ、この傾斜面から段設面の下方を通って本体内に通じる通路を与えるための開口部が本体の上端外縁に間隔をおいて複数形成されており、第一の被着状態においては蓋体の周縁下端が本体の段設面に当接載置して上記通路を介して容器内外のガス流通を許容しており、蓋体が第一の被着状態から本体に向けて押し込まれた第二の被着状態においては蓋体の周縁内面が本体上端縁の傾斜面に略面接して上記通路を閉塞するよう構成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の食品容器において、蓋体は、耐熱性を有する樹脂製の薄シートと、この薄シートの周縁に一体に固着された弾性材料よりなる周縁部材とからなることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る本発明は、請求項1又は2記載の食品容器において、本体上端縁の傾斜面の下端が部分的に切除されており、第二の被着状態で本体に被着されている蓋体を本体から取り外すときの指掛け部として使用可能であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る本発明は、請求項1乃至3記載の食品容器を用いてパック食品を製造する方法であって、本体に必要量の食材を収容し、蓋体を第一の被着状態で本体に被着して蒸気により炊飯及び/又は調理した後、蓋体を第一の被着状態から本体に向けて押し込むことにより第二の被着状態として容器内を気密に維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の食品容器によれば、必要量の食材を収容するための凹部を備えて略皿状またはカップ状に形成された本体の上端外縁には略水平面に段設面が形成されると共に、この段設面から外方に向かう傾斜面が形成され、且つ、この傾斜面から段設面の下方を通って本体内に通じる通路を与えるための開口部が本体の上端外縁に間隔をおいて複数形成されており、一方、この本体の上部に被着される略逆皿状または逆カップ状の蓋体は、第一の被着状態においては蓋体の周縁下端が本体の段設面に当接載置して上記通路を介して容器内外のガス流通を許容しており、蓋体が第一の被着状態から本体に向けて押し込まれた第二の被着状態においては蓋体の周縁内面が本体上端縁の傾斜面に略面接して上記開口部を閉塞するよう構成されている。したがって、蓋体が第一の被着状態で本体に被着されている状態で蒸気釜に投入すると、蒸気が通路を介して本体内に入り込み、温度上昇が速く、炊飯・調理及び食材並びに蓋材の殺菌を短時間に行うことができる。また、開口部の数や大きさを適宜設定して開口率を変えることによって本体内への蒸気の入り込み量を調整することができるので、食材に適量の水分量を与えることができる。
【0011】
また、本発明のパック食品の製造方法によれば、このような食品容器を用いて、本体に必要量の食材を収容し、蓋体を第一の被着状態で本体に被着して蒸気により炊飯及び/又は調理した後、蓋体を第一の被着状態から本体に向けて押し込むことにより第二の被着状態として容器内を気密に維持するパック食品を製造するので、炊飯・調理時の蒸気による温度上昇が速く、炊飯・調理及び食材並びに蓋材の殺菌を短時間に行うことができ、且つ、食味・食感に優れたパック食品を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態による食品容器について添付図を参照して詳述する。この食品容器1は、必要量の食材を収容するための凹部21を備えて略皿状またはカップ状に形成された本体2と、この本体2の上部に被着される略逆皿状または逆カップ状の蓋体3とから構成され、蓋体3は、図2に示される第一の被着状態と、図3に示される第二の被着状態とを取り得る。
【0013】
本体2は、蒸気炊飯時の高温蒸気に耐え得る耐熱性を備え、またある程度の保形性を備えたPPやアクリルなどの樹脂で一体成形され、凹部21の底面となる底面部22と、底面部22の周縁から斜め上方に立ち上がって凹部21を取り囲む側面部23とを有する。側面部23の上端は略三角断面形状を有しており、最上縁24から外方に下向きの傾斜面25,27が略水平の段設面26を挟んで形成されている。
【0014】
本体2の上端外縁には、下方の傾斜面27から段設面26の下方を通って凹部21に通じる通路4を与えるように所定間隔をおいて断続的に複数の開口部29が形成されている。
【0015】
また、本体2の四隅に設けられた4つの開口部29に対応した位置において、側面部23の略三角断面形状上端部の下縁面がU溝状に切除されている。この切除部29は、後述するように、第二の被着状態(図3)で本体2に被着されている蓋体3を本体2から取り外すときの指掛け部として使用可能である。
【0016】
なお、図示実施形態では、切除部29が本体2の四隅に設けられた4つの開口部29に対応した位置に形成されているが、これに代えて、またはこれに加えて、他の開口部29に対応した位置に切除部29を設けても良い。あるいは、開口部29とは無関係に任意の位置に切除部29を設けても良い。
【0017】
蓋体3は、蒸気炊飯・調理の際の高温に耐え得る耐熱性を有する樹脂の薄シート31と、この薄シート31の周縁に一体に固着された弾性材料の周縁部材32とから構成されている。薄シート31を構成する樹脂は、さらに、二次汚染を防止するために酸素不透過性に優れたものであることが好ましく、PETやポリプロピレンなどで成形することが好ましい。周縁部材32を構成する弾性材料はたとえばシリコンゴムなどである。図示実施形態では、薄シート31の周縁を若干薄肉化し、この薄肉周縁部を、周縁部材32の上端内側に形成した二股部33に嵌入して焼付固着している。周縁部材32の側面部34は本体2の傾斜面27の傾斜角度(垂直に対する傾斜角度、以下同じ)より小さい傾斜角度を有しており、図示実施形態では、傾斜面27の傾斜角度が約25度に対して側面部34の傾斜角度が約10度に設計されている。
【0018】
次に、この食品容器1の用法、すなわちこの食品容器1を用いてパック入り米飯を製造する方法について説明する。
【0019】
まず、本体2の凹部21に必要量の米を収容する。米は、精白米を常法により洗米した後、常法により浸漬して所定含水率(10〜30%程度)に調整したものを用いる。本体2の凹部21は一食分(普通盛りまたは大盛り)の米を収容する容積を備えたものとし、これに相当する量の洗米浸漬後の米を凹部21に収容する。
【0020】
米が定量充填された容器本体2は、必要に応じて米の表面を略平滑にならすための表面ならし処理を経て、炊飯に必要な水(または湯)を注入した後、蓋体3を第一の被着状態(図2)で本体2に被着する。この状態では、蓋体3の側面部34の下端が本体2の周縁段設面26に当接載置された状態で蓋体3が本体2に被着されているが、開口部28の部分では蓋体側面部34の下端と本体2の周縁部との間に、容器内外に通じる通路4が形成されている。
【0021】
このように蓋体3を第一の被着状態(図2)で本体2に被着した容器1を、所定個数分まとめて、蒸気炊飯機に投入する。蒸気炊飯機は公知のものであって良く、炊飯水が充填された容器1内の米を常法により蒸気炊飯する。前述の通り、蓋体3が第一の被着状態にあるときは、本体2の側方から内部に通じる通路4が複数形成されている。したがって、蒸気が通路4を通って容器1内に入り込み、凹部21に収容されている米を効率よく炊飯することができる。また、この被着状態において、本体2の開口は上方から蓋体3で閉止されているので、凹部21に収容されている米が直接的に蒸気に晒されることがなく、過剰な水分量となることが防止される。米の温度上昇や水分量の調節は、通路4の数や大きさを通じて開口率を適宜変更することによって容易に行うことができる。
【0022】
炊飯のための蒸気としては約100℃の蒸気が用いられ、米を美味しく炊きあげると共に、容器本体2や蓋体3あるいは内容物に付着している可能性のある殺菌を死滅させることができる。長期保存性をより向上させるために、蒸気炊飯の前に、好ましくは130〜140℃の高温蒸気による殺菌処理を行っても良い。この殺菌処理は、特許第2838198号公報及び実用新案登録第3108004号公報に記載のような装置及び手法で行うことができる。殺菌処理においても、高温蒸気のための通路4が確保されているので、短時間に効率よく処理することが可能である。
【0023】
蒸気炊飯完了後、容器1を蒸気炊飯機から取り出し、蓋体3を上方よりプレスする。蒸気炊飯機の出口からプレス工程完了までの領域はクリーンブースとして、汚染された外気の侵入を防ぐ構成とすることが好ましい。蓋体3を上方よりプレスすると、周縁部材32が弾性材料で形成されていることから、側面部34が弾性変形して拡径し、段設部26から離脱し、傾斜面27に沿って滑り落ちて、第二の被着状態(図3)を得る。このとき、側面部34が傾斜面27に被さった状態となっているため、第一の被着状態(図2)においては開口部28の存在によって本体2と蓋体3との間に形成されていた通路4は、完全に閉止されており、容器内外のガス流動は実質的に行われない。したがって、容器1内の食品(炊飯米)に雑菌が入り込むことが実質的に防止され、長期保存性が確保される。
【0024】
この第二の被着状態でパック入り米飯としてコンビニなどで販売される。このパック入り米飯を購入した消費者は、蓋体3を本体2から外して、炊飯米を食することができる。前述のように、側面部23の略三角断面形状上端部の下縁面が部分的にU溝状に切除されて切除部29を形成しているので、この切除部29に指を掛けることにより、蓋体3を本体2から容易に引き剥がすことができる。また、一端本体2から引き剥がした蓋体3を第一の被着状態(図2)として本体2に被着させた状態にすると、通路4を介して蒸気を容器内に入り込ませることが可能であるので、この状態で電子レンジなどに入れて加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による食品容器の本体の平面図である。
【図2】図1の本体に蓋体を第一の被着状態で被着した食品容器を示す一部破断正面図である。
【図3】図1の本体に蓋体を第二の被着状態を被着した食品容器を示す一部破断正面図である。
【図4】図1のA−A断面図である(蓋体を第二の被着状態として仮想線で示す)。
【符号の説明】
【0026】
1 食品容器
2 本体
21 凹部
22 底面部
23 側面部
24 最上縁
25 傾斜面
26 段設面
27 傾斜面
28 開口部
29 切除部3 蓋体
31 樹脂製薄シート
32 弾性周縁部
33 二股部
34 側面部
4 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要量の食材を収容するための凹部を備えて略皿状またはカップ状に形成された本体と、この本体の上部に被着される略逆皿状または逆カップ状の蓋体とからなり、本体の上端縁には略水平面に段設面が形成されると共に、この段設面から外方に向かう傾斜面が形成され、且つ、この傾斜面から段設面の下方を通って本体内に通じる通路を与えるように本体の上端縁を間隔をおいて切り欠いて複数の開口部が形成されており、第一の被着状態においては蓋体の周縁下端が本体の段設面に当接載置して上記通路を介して容器内外のガス流通を許容しており、蓋体が第一の被着状態から本体に向けて押し込まれた第二の被着状態においては蓋体の周縁内面が本体上端縁の傾斜面に略面接して上記通路を閉塞するよう構成されたことを特徴とする食品容器。
【請求項2】
蓋体は、耐熱性を有する樹脂製の薄シートと、この薄シートの周縁に一体に固着された弾性材料よりなる周縁部材とからなることを特徴とする請求項1記載の食品容器。
【請求項3】
本体上端縁の傾斜面の下端が部分的に切除されており、第二の被着状態で本体に被着されている蓋体を本体から取り外すときの指掛け部として使用可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の食品容器。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の食品容器を用いてパック食品を製造する方法であって、本体に必要量の食材を収容し、蓋体を第一の被着状態で本体に被着して蒸気により炊飯及び/又は調理した後、蓋体を第一の被着状態から本体に向けて押し込むことにより第二の被着状態とすることを特徴とするパック食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−315708(P2006−315708A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138527(P2005−138527)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(390001627)株式会社シンワ機械 (8)
【Fターム(参考)】