説明

飽和ノルボルネン系樹脂フィルム及びその製造方法

【課題】製造過程において発生するゲル状異物を極力少なくできるので、光学特性に優れた飽和ノルボルネン系樹脂フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の押出機24で溶融させた飽和ノルボルネン系樹脂をダイ26からシート状に押し出した後、冷却固化することによりフィルムを製膜する製膜工程部12を備えた方法において、製膜工程部12の前段に、飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤とを第2の押出機22で混合した混合樹脂をペレット化するペレット工程部10を設け、ペレットを第1の押出機24で溶融すると共に、ペレット工程部10では、第2の押出機22内で飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大剪断速度が4000(1/S)以下であり、且つ飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大温度が200〜260℃の範囲である条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飽和ノルボルネン系樹脂フィルム及びその製造方法に係り、特に液晶表示装置の保護フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルムとして好適な品質を有する飽和ノルボルネン系樹脂フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の偏光板の保護フィルム、あるいは光学補償フィルム(位相差膜)や反射防止フィルムを製造する際の基材フィルムとしては、光学特性に優れたセルロースエステル系樹脂フィルムが一般的に使用されている。しかし、セルロースエステル系樹脂フィルムは吸湿性が高いために、湿度により収縮してレターデーションむらを発生し易い。
【0003】
このことから、光学特性に優れ且つ吸湿性の小さなフィルムとして、飽和ノルボルネン系樹脂フィルムが提案されている。
【0004】
飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法としては、大別して樹脂を有機溶剤に溶解したドープをダイから支持体に流延してフィルム状にした後、支持体から剥離して乾燥する溶液製膜方法(例えば特許文献1)と、押出機で溶融した樹脂をダイからシート状に押し出した後、冷却固化してフィルム状にする溶融製膜法(例えば特許文献2)とがある。
【0005】
溶融製膜法は、有機溶剤を使用しないので、溶液製膜法のように有機溶剤を回収する回収系統を必要としない装置的なメリットがあると共に、環境面でも有利である。
【0006】
このことから、光学的な品質に優れた飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを溶融製膜法により製造することが要望されている。
【特許文献1】特開2003−306557号公報
【特許文献2】特開2005−099097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の溶融製膜法で製造された飽和ノルボルネン系樹脂フィルムには、製造過程においてゲル状異物が発生し易い傾向にあり、フィルムを液晶表示装置等の光学用途に使用した際に表示ムラ等の光学欠陥の原因になるという問題がある。
【0008】
しかし、このゲル状異物は、セルロースエステル系樹脂フィルムの製造過程で発生するコゲ状異物と違って濾過処理により除去されにくく最終製品であるフィルムに残存してしまう。従って、発生したゲル状異物を除去するのではなく、製造過程でゲル状異物を如何に発生させないかが必要になる。
【0009】
このように、飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを製造する過程でゲル状異物が発生しないようにすることが重要になるが、具体的な解決策が見出されていないのが実情である。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、製造過程において発生するゲル状異物を極力少なくできるので、光学特性に優れ、特に液晶表示装置に用いる保護フィルムや、光学補償フィルム及び反射防止フィルムの基材フィルムとして好適な品質な飽和ノルボルネン系樹脂フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、第1の押出機で溶融させた飽和ノルボルネン系樹脂をダイからシート状に押し出した後、冷却固化することによりフィルムを製膜する製膜工程を備えた飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法において、前記製膜工程の前段に、前記飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤とを第2の押出機で混合した混合樹脂をペレット化するペレット工程を設け、前記ペレットを前記第1の押出機で溶融すると共に、前記ペレット工程では、前記第2の押出機内で前記飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大剪断速度が4000(1/S)以下であり、且つ前記第2の押出機内での前記飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大温度が200〜260℃の範囲である条件を満たすことを特徴とする飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【0012】
飽和ノルボルネン系樹脂は熱や剪断力により変質し易く、この変質によってゲル状の異物が発生するが、上記したように、発生したゲル状異物は濾過により除去されにくい。また、熱安定剤の添加によってゲル状異物の発生は抑制できるが、飽和ノルボルネン系樹脂は元々粒状で存在しており、特に粒状の場合には粉状の熱安定剤(例えば酸化防止剤)を添加しても互いに分離してしまい均一に混合されにくい。このため、第1の押出機で飽和ノルボルネン系樹脂を溶融する際に熱安定性剤の含有分布が発生し、上手く混ざっていない樹脂部分では依然としてゲル状異物が発生する。しかし、粒状の飽和ノルボルネン系樹脂と粉状の熱安定剤とが十分に混合されるような混合条件(大きな剪断力や高熱)を加えると、熱安定剤は均一に混合されるが、ゲル状異物も同時に発生してしまう。
【0013】
従って、如何に、ゲル状異物を発生させないように熱安定剤を飽和ノルボルネン系樹脂に均一に混合するかが必要になる。この場合、飽和ノルボルネン系樹脂を粉砕機等により予め粉状にしてから熱安定剤と混合することで混合効果を向上する考えもあるが、粉砕機で粉砕する際の剪断力や剪断熱により、粉状にする際にゲル状異物が発生してしまい、本質的な解決にはならない。
【0014】
そこで、請求項1によれば、製膜工程の前段に飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤とを第2の押出機で混合した混合樹脂をペレット化するペレット工程を設けたので、飽和ノルボルネン系樹脂の中に熱安定剤を均一に含有させたペレットを得ることができる。このペレットを第1の押出機で溶融すれば、飽和ノルボルネン系樹脂に熱安定剤が均一に含有されるので、ゲル状の異物が発生しにくくなる。
【0015】
しかし、単に飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤とをペレットにするだけではゲル状異物の問題は解決できない。それは、第2の押出機でペレットを製造する際にも、飽和ノルボルネン系樹脂が加熱及び剪断力を受けるために、ペレット化する際にゲル状異物が発生してしまうためである。
【0016】
そこで、請求項1によれば、ペレット工程では、第2の押出機内で飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大剪断速度が4000(1/S)以下であり、且つ第2の押出機内での飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大温度が200〜260℃の範囲である2つの条件を満たすようにしてペレット化するようにした。これにより、飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤とをペレットにする際のゲル状異物の発生を極力防止することができる。尚、第1の押出機で第2の押出機条件を採用したのでは、ダイから押し出すための好適な溶融樹脂を形成できない。
【0017】
このように、飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤とをペレット化することと、該ペレット化の際の条件を満足することで、製造過程におけるゲル状異物の発生を極力少なくできる。これにより、光学特性に優れ、特に液晶表示装置に用いる保護フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルムとして好適な品質な飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを製造できる。
【0018】
請求項2は、前記第1及び第2の押出機のうち、少なくとも前記第2の押出機は二軸押出機であることを特徴とする。
【0019】
これは、一軸押出機と二軸押出機とでは、二軸押出機の方が混合能力に優れており、熱安定剤が樹脂中に均一に含有され易いからである。
【0020】
請求項3は請求項1又は2において、前記ペレット工程では、前記第2の押出機において上流側の剪断速度が下流側の剪断速度よりも小さいことを特徴とする。
【0021】
これは、飽和ノルボルネン系樹脂が溶融して熱安定剤との混合が開始される前から大きな剪断力をかけるとゲル状異物ができ易いためである。従って、請求項3のように、上流側の剪断速度が下流側の剪断速度よりも小さくしておけば、樹脂溶融前の上流位置では剪断力に起因するゲル状異物ができにくい。そして、樹脂が溶融して樹脂中に熱安定剤が十分に混合された下流側で剪断力が大きくなるようにすれば、大きな剪断力がかかってもゲル状物質を発生しにくい。これにより、ゲル状異物の発生を防止しつつ樹脂と熱安定剤とを十分に混合することができる。
【0022】
請求項4は請求項1〜3のいずれか1において、前記ペレット工程では、前記第2の押出機内で前記飽和ノルボルネン系樹脂が溶融する前の機内雰囲気中の酸素濃度を10%以下にすると共に、溶融後の機内真空度を100torr以下にすることを特徴とする。
【0023】
これは、第2の押出機内の酸素を減らすことで飽和ノルボルネン系樹脂の酸化による変質を防止でき、ゲル状異物の発生を一層抑制できるためである。そして、機内を減圧にすると粒状の飽和ノルボルネン系樹脂が飛散してしまう樹脂溶融前は機内の酸素濃度を10%以下にすることで対応し、機内を減圧することが可能な樹脂溶融後は機内真空度を100torr以下にすることで対応したものである。
【0024】
請求項5は請求項1〜4のいずれか1において、前記第2の押出機内で前記飽和ノルボルネン系樹脂の溶融直後に前記熱安定剤を前記押出機内に添加することを特徴とする。
【0025】
これは、上記したように、飽和ノルボルネン系樹脂はもともと粒状であり、粒状の飽和ノルボルネン系樹脂と粉状の熱安定剤とを同時に第2の押出機に供給すると、樹脂と熱安定剤とが分離して樹脂中に含有される熱安定剤の含有量に分布が生じ易いためである。
【0026】
請求項5のように、飽和ノルボルネン系樹脂が溶融直後に熱安定剤を添加すれば、熱安定剤の含有量を一定にでき、且つゲル状異物の発生を効果的に抑制できる。
【0027】
尚、飽和ノルボルネン系樹脂が溶融したか否かは、例えば第2の押出機に覗き窓を設けて目視で確認することができる。
【0028】
本発明の請求項6は前記目的を達成するために、請求項1〜5のいずれか1の製造方法により製造されたことを特徴とする飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを提供する。
【0029】
請求項1〜5のいずれかの製造方法で製造された飽和ノルボルネン系樹脂フィルムはゲル状異物の発生を極力防止できるからである。
【0030】
請求項7は請求項6において、偏光板の保護フィルム、光学補償フィルム又は反射防止フィルムの基材フィルムとして用いられることを特徴とする。
【0031】
ゲル状異物の発生を極力防止した飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、偏光板の保護フィルム、光学補償フィルム又は反射防止フィルムの基材フィルムとして好適だからである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、製造過程で発生するゲル状異物を極力少なくできるので、光学特性に優れており、特に液晶表示装置に用いる保護フィルムや、光学補償フィルム及び反射防止フィルムの基材フィルムとして好適な品質を得ることができる。また、ゲル状異物による不良品の発生率が低下するので、生産性も向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下添付図面に従って本発明に係る飽和ノルボルネン系樹脂フィルム、及びその製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0034】
以下添付図面に従って本発明に係る飽和ノルボルネン系樹脂フィルム及びその製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0035】
図1は、本発明の飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法を適用する製造装置の概略構成の一例を示したものであり、溶融製膜法により飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを製造する場合である。
【0036】
図1に示すように製造装置は、主として、原料の飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤とを混合した混合樹脂をペレット化するペレット化工程部10と、製造したペレットを用いて飽和ノルボルネン系樹脂フィルム14を製膜する製膜工程部12と、製膜工程部12で製膜された飽和ノルボルネン系樹脂フィルム14を縦方向に延伸する縦延伸工程部16と、横延伸する横延伸工程部18と、延伸飽和ノルボルネン系樹脂フィルム14を巻き取る巻取工程部20とで構成される。
【0037】
原料である飽和ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物、ノルボルネン系モノマーとオレフィンとの付加型重合体、ノルボルネン系モノマー同士の付加重合体及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの飽和ノルボルネン系樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
ノルボルネン系モノマーを具体的に例示すれば、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)や、6−メチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ−2−エン、5,6−ジメチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ−2−エン、1−メチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ−2−エン、6−エチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ−2−エン、6−n−ブチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ−2−エン、6−イソブチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ−2−エン、7−メチルビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ−2−エンなどのノルボルネンやその置換体等の2環体が挙げられる。但し、ノルボルネン系モノマーはこれらに限定されるものではなく、3環体以上のノルボルネン系モノマーやその置換体も使用できる。
【0039】
上記ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物としては、上記ノルボルネン系モノマーを公知の方法で開環重合させた後、残留している二重結合が水素添加されているものが広く用いられる。これは、ノルボルネン系モノマーの単独重合体であっても共重合体であってもよく、ノルボルネン系モノマーと他の環状オレフィン系モノマーとの共重合体であってもよい。
【0040】
ノルボルネン系モノマーとオレフィンとの付加型重合体としては、ノルボルネン系モノマーとα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。上記α−オレフィンとしては、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等が挙げられる。中でも、共重合性の高いエチレンが好ましく、他のα−オレフィンをノルボルネン系モノマーと共重合させる場合にも、エチレンが存在している方が共重合性を高められるので好ましい。
【0041】
また、飽和ノルボルネン系樹脂に添加する熱安定剤としては、公知の酸化防止剤を好適に使用することができる。例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジエチルフェニルメタン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]、2,4,8,10−テトラオキスピロ[5,5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト;紫外線吸収剤、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどを添加することによって安定化することができる。また、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
【0042】
これらの酸化防止剤の添加量は、飽和ノルボルネン系樹脂100質量部に対して、通常0.1〜3質量部、好ましくは0.2〜2質量部である。
【0043】
さらに飽和ノルボルネン系樹脂には、所望により、フェノール系やリン系などの老化防止剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤、上述の易滑剤などの各種添加剤を添加してもよい。特に、液晶は、通常、紫外線により劣化するので、ほかに紫外線防護フィルターを積層するなどの防護手段を取らない場合は、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾル系紫外線吸収剤、アクリルニトリル系紫外線吸収剤などを用いることができ、それらの中でもベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、添加量は、通常10〜100,000ppm、好ましくは100〜10,000ppmである。
【0044】
先ず、ペレット化工程部10について説明する。
【0045】
図2は、ペレット製造装置の全体構成を示す概念図であり、主として、第2の押出機22と、該第2の押出機から押し出された溶融樹脂を固化する水槽40とで構成される。
【0046】
図2に示すように、飽和ノルボルネン系樹脂は、混合装置36において熱安定剤以外の添加剤(例えば紫外線吸収剤等)と攪拌混合された後、定量フィーダ38に送られる。
【0047】
次に、飽和ノルボルネン系樹脂は、定量フィーダ38により一定量が第2の押出機22に供給されて、第2の押出機22に添加される熱安定剤と溶融混合される。そして、第2の押出機22で溶融混合した溶融状態の混合樹脂(飽和ノルボルネン系樹脂、熱安定剤、その他添加剤の混合物)を第2の押出機22から水槽40にヌードル状に押出す。第2の押出機22から押出したものをストランド43(紐状のもの)という。
【0048】
このストランド43を水槽40内の水41で固化し、切断装置45で切断してペレット47を製造した後、シフター(篩)51で篩って粉を分離してから容器49(タンク等)に一旦貯留する。尚、ペレット47を容器49に一旦貯留しないで、次の製膜工程部12に連続供給することもできる。
【0049】
第2の押出機22としては一軸押出機及び二軸押出機のいずれを使用することもできるが、原料である飽和ノルボルネン系樹脂は、元々粒状であると共に、熱安定剤は通常粉状であり均一混合されにくいので、均一混合の観点から第2の押出機22としては混錬効果の大きい二軸押出機を用いることが好ましい。
【0050】
図3は、第2の押出機22としての好ましい態様である二軸押出機の側面断面図であり、図4は上面断面図である。
【0051】
図3及び図4に示すように、第2の押出機22は、シリンダ42内に2本のスクリュー48、48を備えている。各スクリュー48はスクリュー軸44にスクリュー羽根46が取りつけられて構成されており、回転自在に支持されるとともに、不図示のモータによって回転駆動される。尚、第2の押出機22は、2本のスクリュー軸44、44が平行に配置されたものを用いてもよいし、2本のスクリュー軸44、44が傾斜して配置させたものを用いてもよい。また、互いのスクリュー羽根46同士のかみ合っているかみ合い型、非かみ合い型のいずれでよく、回転方向が同方向のものを用いてもよいし、異方向のものを用いてもよい。
【0052】
シリンダ42の外周部には、図示しないヒーターが取りつけられており、所望の温度に温度制御できるようになっている。この温度制御は、第2の押出機22内での飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大温度が200〜260℃の範囲になるように制御される。
【0053】
シリンダ42の上流側に位置する原料供給口51にはホッパー53が設けられ、原料である飽和ノルボルネン系樹脂の一定量が定量フィーダ52からホッパー53を介してシリンダ42内に供給される。一方、図4に示すように、シリンダ42の略中央位置、具体的には飽和ノルボルネン系樹脂が溶融した直後に、粉末状の熱安定剤をシリンダ42内に添加する添加装置54が設けられる。添加装置54としては、例えば二軸のスクリューフィーダを好適に用いることができる。この添加装置54により、シリンダ42内で溶融状態の飽和ノルボルネン系樹脂に熱安定剤が一定量添加される。尚、熱安定剤の添加は、図2に示した混合装置36で、他の添加剤と一緒に添加することもできるが、第2の押出機22において添加することが好ましい。また、図示しないが、添加装置54の添加口直前のシリンダ42部分に覗き窓を設けて、この覗き窓から飽和ノルボルネン系樹脂の溶融状態を観察できるようにしてもよい。
【0054】
そして、第2の押出機22は、シリンダ42内に供給された飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大剪断速度が4000(1/S)以下になるように、2本のスクリュー48、48の回転速度、スクリュー48、48とシリンダ42の内壁との隙間距離、互いのスクリュー48、48のかみ合い度等が設計されている。
【0055】
ここで、図5に示すように、最大剪断速度とは、2本のスクリュー48、48を構成するそれぞれのスクリュー羽根46、46先端の周速度v1(m/s)、v2(m/s)の速度差(v1−v2)を、スクリュー羽根46同士の隙間d(m)で除した値をいい、計算によって求めることができる。この場合、v1、v2の符号は、2本のスクリュー48、48の回転方向が同一方向であれば同符号となり、逆方向である場合にはv2がマイナスの符号になる。
【0056】
更には、第2の押出機22の剪断速度は上流側の剪断速度が下流側の剪断速度よりも小さいことが好ましい。このためには、スクリュー48、48とシリンダ42の内壁との隙間及び/又は互いのスクリュー48、48のスクリュー軸44とスクリュー羽根46との隙間を、上流側から下流側にいくに従って小さくなるようにする。この場合、隙間を徐々に小さくしてもよく、あるいは段階的(ステップ状)に小さくなるようにしてもよい。
【0057】
上記した裁断剪断速度4000(1/S)以下にすることを前提として、スクリュー48、48の回転速度は、10rpm以上1000rpm以下が好ましく、より好ましくは、20rpm以上700rpm以下、さらにより好ましくは30rpm以上500rpm以下である。これは、回転速度が10rpmを下回って遅過ぎると、滞留時間が長くなり過ぎて飽和ノルボルネン系樹脂が熱劣化により分子量が低下したり、色が変色したりし易くなる。逆に、回転速度が1000rpm超えて速すぎると、剪断により分子の切断がおき易くなる。
【0058】
飽和ノルボルネン系樹脂のシリンダ42内における好ましい滞留時間は10秒以上30分以内、より好ましくは15秒以上10分以内、さらに好ましくは30秒以上3分以内である。十分に溶融が出来れば、滞留時間は短い方が、樹脂劣化、色の変色を抑えることができる点で好ましい。
【0059】
また、図3に示すように、ホッパー53の下部には、窒素ガス(N2ガス)をホッパー53内に吹き込む窒素ガスノズル55が設けられる。これにより、ホッパー53からシリンダ42内に飽和ノルボルネン系樹脂を供給する際に、シリンダ42内に持ち込まれる空気の酸素濃度を低減することができる。具体的には、シリンダ42内で飽和ノルボルネン系樹脂が溶融する前の機内雰囲気中の酸素濃度を10%以下、好ましくは5%以下にすることが好ましい。尚、本実施の形態では、ホッパー53内に窒素ガスを吹き込むようにしたが、定量フィーダ52内に吹き込んでもよく、あるいはシリンダ42の上流位置に直接吹き込んでもよい。
【0060】
また、図3及び図4に示すように、シリンダ42に形成された添加装置54の下流側にはベント59が設けられ、このベント59が図示しない真空ポンプに接続される。これにより、飽和ノルボルネン系樹脂の溶融後の機内真空度(シリンダ内の真空度)を減圧する。具体的には、100torr以下、好ましくは10torr以下にすることが好ましい。このように、粒状の飽和ノルボルネン系樹脂が飛散し易い樹脂溶融前は機内(シリンダ内)の酸素濃度を10%以下にすることで対応し、機内を減圧することが可能な樹脂溶融後は機内真空度を100torr以下にすることで、飽和ノルボルネン系樹脂の空気酸化を効果的に防止できる。
【0061】
上記の如くペレット化工程部10を構成することにより、第2の押出機22内で飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大剪断速度が4000(1/S)以下であり、且つ第2の押出機22内での飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大温度が200〜260℃の範囲である条件を満たすようにして、飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤とを混合した混合樹脂を製造することができる。これにより、熱安定剤を均一に含有するペレット47を製造することができると共に、ペレット47を製造する際に、熱や剪断力に起因するゲル状異物の発生を極力抑制することができる。
【0062】
更には、第2の押出機22内で飽和ノルボルネン系樹脂が溶融する前の機内雰囲気中の酸素濃度を10%以下にすると共に、溶融後の機内真空度を100torr以下にすることができるので、ゲル状異物の発生を更に抑制できる。
【0063】
このようにゲル状異物の発生を防止しつつ飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤とが混合溶融された混合樹脂は、第2の押出機22の押出口57から押し出されて、図2で示したようにペレット化される。
【0064】
次に、製膜工程部12について説明する。
【0065】
図1に示すように、製膜工程部12では、ペレット工程部10にて製造したペレット47を、第1の押出機24で溶融し、ペレット47を溶融した溶融樹脂を配管39に吐出する。吐出された溶融樹脂はギアポンプ25により一定量がダイ26に供給されてダイ26からシート状に押し出される。押し出されたシート状の溶融樹脂は冷却ドラム28上で冷却されて冷却固化された後、冷却ドラム28から剥離される。これにより、未延伸の飽和ノルボルネン系樹脂フィルムが製膜される。この製膜工程部12において、ペレット47には、第1の押出機24内で熱や剪断力を受けてもゲル状異物を発生しにくいだけの量の熱安定剤が均一に含有されているので、製膜工程部12においてゲル状異物の発生を極力抑制できる。尚、ギアポンプ25とダイ26との間に濾過装置を設けて、ゴミ等の微細異物を除去することもできる。
【0066】
製膜工程部12において用いる第1の押出機24としては、一軸押出機又は二軸押出機のいずれをも使用できるが、本実施の形態では一軸押出機を用いた例で説明する。
【0067】
図6は、第1の押出機24としての一軸押出機を示したものである。
【0068】
図6に示すように、シリンダ62内にはスクリュー軸64にフライト66を有する単軸スクリュー68が配設され、図示しないホッパーからペレット工程部10で製造したペレット47が供給口70を介してシリンダ62内に供給される。シリンダ62内は供給口70側から順に、供給口70から供給された樹脂を定量輸送する供給部(Aで示す領域)と、樹脂を混練・圧縮する圧縮部(Bで示す領域)と、混練・圧縮された樹脂を計量する計量部(Cで示す領域)とで構成される。押出機24で溶融された樹脂は、吐出口72から濾過装置38に連続的に送られる。
【0069】
第1の押出機24で溶融するペレット47を予熱しておくことが好ましい。予熱温度は、飽和ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tg−90℃〜Tg+15℃、好ましくはTg−75℃〜Tg−5℃、さらに好ましくはTg−70℃〜Tg−5℃である。Tg−90℃〜Tg+15℃の範囲で予熱しておけば、この後のペレット47の溶融混練を均一に行うことができる。
【0070】
次に、予熱したペレット47を、第1の押出機24を用いて200〜300℃の温度まで昇温して溶融させる。この際、第1の押出機24の出口側の温度を入口側の温度より5〜100℃、好ましくは20〜90℃、さらに好ましくは30〜80℃高くしておくことが好ましい。第1の押出機24の出口側の温度を入口側の温度より高くしておくことにより、溶融したペレット47を均一に混練することができる。
【0071】
第1の押出機24のスクリュー圧縮比は、2.5〜4.5に設定され、L/Dは20〜70に設定されている。ここで、スクリュー圧縮比とは、供給部Aと計量部Cとの容積比、即ち供給部Aの単位長さ当たりの容積÷計量部Cの単位長さ当たりの容積で表され、供給部Aのスクリュー軸64の外径d1、計量部Cのスクリュー軸64の外径d2、供給部Aの溝部径a1、及び計量部Cの溝部径a2とを使用して算出される。また、L/Dとは、図6のシリンダ内径(D)に対するシリンダ長さ(L)の比である。
【0072】
スクリュー圧縮比が2.5を下回って小さすぎると、十分に混練されない。逆に、スクリュー圧縮比が4.5を上回って大きすぎると、剪断応力がかかり過ぎて発熱により飽和ノルボルネン系樹脂が劣化し易くなり、ゲル状異物発生の原因になる。また、剪断応力がかかり過ぎると分子の切断が起こり分子量が低下してフィルムの機械的強度が低下する。従って、スクリュー圧縮比は2.5〜4.5の範囲が良く、より好ましくは2.8〜4.2の範囲、特に好ましくは3.0〜4.0の範囲である。
【0073】
また、L/Dが20を下回って小さすぎると、溶融不足や混練不足となる。逆に、L/Dが70を上回って大きすぎると、第1の押出機24内での飽和ノルボルネン系樹脂の滞留時間が長くなり過ぎ、樹脂の劣化を起こし易くなり、ゲル状異物発生の原因になる。また、滞留時間が長くなると分子の切断が起こり分子量が低下してフィルムの機械的強度が低下する。従って、L/Dは20から70の範囲が良く、好ましくは22〜45の範囲、特に好ましくは24〜40の範囲である。
【0074】
製膜された飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの厚みは、30〜200μmの範囲が好ましく、より好ましくは40〜160μmであり、さらに好ましくは50〜120μmである。飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの厚みが30μm未満であると、強度が不足し取り扱い性に問題が生じ、200μmより厚いと折り曲げにくく取り扱い性に問題が生じやすい。
【0075】
製膜工程部12で製膜された未延伸の飽和ノルボルネン系樹脂フィルム14は、例えば液晶表示装置の保護フィルムとして好適に使用できる。
【0076】
また、未延伸の飽和ノルボルネン系樹脂フィルム14を基材フィルムとして光学補償フィルムを製造するには、図1に示すように縦延伸工程部16と横延伸工程部18との少なくとも1つの延伸工程を通して分子配向させる。これにより、未延伸の飽和ノルボルネン系樹脂フィルムに面方向のレターデーション(Re)と面に対して垂直方向のレターデーション(Rth)を発生させる。延伸倍率は1.1〜6倍程度であることが適当であり、1.2〜4倍程度であることが好ましく、この範囲で所定の残留位相差(レターデーション)になるように調整する。延伸倍率が低すぎるとレターデーションの絶対値が上がらずに所定の値とならず、高すぎると破断することもある。
【0077】
延伸は、通常、飽和ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行うことが好ましい。Tg〜Tg+50℃の温度範囲であれば、フィルムの破断や分子配向不足がなく所望の光学補償フィルムが得られる。また、Re及びRthは、延伸以外にもフィルムの厚さを制御することにより調整することができ、厚いほどRe及びRthの値が大きくなる。
【0078】
延伸は縦方向及び横方向のいずれの方向、あるいは縦・横の両方に延伸してもよい。縦方向に延伸する場合は、一組以上のニップロール30、32を用い、入口側の搬送速度より出口側の搬送速度を速くすることにより達成することができる。一方、横方向に延伸する場合は、両端をチャックで把持し、これを幅方向に広げる方法(テンター延伸)により達成することができる。
【0079】
位相差膜のRe及びRthは20〜500nmであり、25〜300nmであることが好ましく、25〜200nmであることがさらに好ましい。また、位相差膜のRe及びRthのバラツキ(Re及びRthむら)は小さいほど好ましい。具体的には、波長550nmのRe及びRthのバラツキは、通常±10%以下、好ましくは±7%以下、より好ましくは±5%以下の小さいことが好ましい。
【0080】
Re及びRthの面内でのバラツキや厚さムラは、延伸時に飽和ノルボルネン系樹脂フィルムに応力が均等にかかるようにすることにより小さくすることができる。そのためには、均一な温度分布下、好ましくは±5℃以内、さらに好ましくは±2℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内に温度を制御した環境で延伸することが望ましい。
【0081】
このように延伸された延伸飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは巻取工程部20において巻取機に巻き取られる。
【実施例】
【0082】
次に、本発明の飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法の条件を満足する場合(実施例)と、満足しない場合(比較例)とで、製膜されたフィルムのゲル状異物の数がどのように相違するかを試験した。熱安定剤としては、酸化防止剤(例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を使用した。
【0083】
実施例及び比較例の試験条件は図7の表1の通りである。表1において、「サイドフィード」とは、第2の押出機内で飽和ノルボルネン系樹脂の溶融直後に、図4に示す添加装置54から熱安定剤を添加する場合である。また、「ペレット同時」とは、第2の押出機22に飽和ノルボルネン系樹脂が供給される前の図2に示す混合装置36に熱安定剤を添加する場合である。また、「剪断速度比」は第2の押出機のシリンダ内における下流側の剪断速度に対する上流側の剪断速度を比で表したものである。また、「最大温度」とは、第2の押出機内で飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大温度である。
【0084】
尚、本実施例では、第2の押出機において、窒素ガス注入や、シリンダ内の真空は行わなかった。また、熱安定剤以外の添加物は添加しなかった。
また、本発明を満足する条件は下記のとおりである。
【0085】
(a)飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤とを第2の押出機で溶融混合したペレットを製造すること。
【0086】
(b)第2の押出機内で飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大剪断速度が4000(1/S)以下であること。
【0087】
(c)第2の押出機内で飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大温度が200〜260℃の範囲であること。
【0088】
実施例1は、上記条件(a)〜(c)を全て満足する共に、熱安定剤を「サイドフィード」方式で添加し、剪断速度比を0.7にした場合である。
【0089】
実施例2は、上記条件(a)〜(c)を全て満足する共に、熱安定剤を「ペレット同時」方式で添加し、剪断速度比を0.7にした場合である。
【0090】
実施例3は、上記条件(a)〜(c)を全て満足する共に、熱安定剤を「ペレット同時」方式で添加し、剪断速度比を1にした場合である。
【0091】
実施例4は、上記条件(a)〜(c)を全て満足する共に、熱安定剤を「ペレット同時」方式で添加し、剪断速度比を1にした場合であり、最大剪断速度と最高温度が本発明の条件の上限値になるようにした場合である。
【0092】
比較例1は、飽和ノルボルネン系樹脂のペレット化、及び熱安定剤の添加を行わずに、第1の押出機で飽和ノルボルネン系樹脂を直接溶融して製膜した場合である。
【0093】
比較例2は、上記条件(b)を満足しない場合であり、熱安定剤を「ペレット同時」方式で添加し、剪断速度比を1にした。
【0094】
比較例3は、上記条件(c)を満足しない場合であり、熱安定剤を「ペレット同時」方式で添加し、剪断速度比を1にした。
【0095】
表1の「ゲル個数」は、製膜工程部で製膜されたフィルム平方メータ当たりに、直径が10μm以上のゲル状異物が幾つあるかをカウントし、次のように評価した。
【0096】
◎:ゲル状異物の個数が0.5個/m以下であり、光学フィルムとして合格。
【0097】
○:ゲル状異物の個数が0.5〜1個/mであり、光学フィルムとして合格。
【0098】
×:ゲル状異物の個数が1個/m以上であり、光学フィルムとして不合格。
その結果、表1から分かるように、本発明の条件(a)〜(c)を全て満足する実施例1〜4は、ゲル個数が○〜◎であり、光学フィルムとして合格であった。特に、熱安定剤を「サイドフィード」方式で添加し、剪断速度比を0.7にした実施例1は、◎であり、極めて良い結果であった。
【0099】
これに対して、飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤のペレットを製造するペレット工程を行わない実施例1、ペレット工程を行っても、第2の押出機における最大剪断速度や最高温度が本発明を満足しない実施例2、3は、ゲル個数が×の評価であり、光学フィルムとして不合格であった。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造装置の全体工程を説明する工程図
【図2】ペレット工程部の全体構成を説明する概念図
【図3】第2の押出機としての二軸押出機の側面断面図
【図4】第2の押出機としての二軸押出機の上面断面図
【図5】第2の押出機における最大剪断速度を説明する説明図
【図6】第1の押出機としての一軸押出機の構造を示す概念図
【図7】本発明の実施例を説明する説明図
【符号の説明】
【0101】
10…ペレット化工程部、12…製膜工程部、14…飽和ノルボルネン系樹脂フィルム、16…縦延伸工程部、18…横延伸工程部、20…巻取工程部、22…第2の押出機、24…押出機、25…キアポンプ、26…ダイ、28…冷却ドラム、30,32…ニップロール、39…配管、42…シリンダ、44…スクリュー軸、46…スクリュー羽根、47…ペレット、48…スクリュー、51…原料供給口、52…吐出口、53…ホッパ、54…添加装置、55…窒素ガスノズル、59…ベント、62…シリンダ、64…スクリュー軸、66…スクリュー羽根、68…スクリュー、70…供給口、72…吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の押出機で溶融させた飽和ノルボルネン系樹脂をダイからシート状に押し出した後、冷却固化することによりフィルムを製膜する製膜工程を備えた飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法において、
前記製膜工程の前段に、前記飽和ノルボルネン系樹脂と熱安定剤とを第2の押出機で混合した混合樹脂をペレット化するペレット工程を設け、前記ペレットを前記第1の押出機で溶融すると共に、
前記ペレット工程では、前記第2の押出機内で前記飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大剪断速度が4000(1/S)以下であり、且つ前記第2の押出機内での前記飽和ノルボルネン系樹脂が受ける最大温度が200〜260℃の範囲である条件を満たすことを特徴とする飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の押出機のうち、少なくとも前記第2の押出機は二軸押出機であることを特徴とする請求項1の飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ペレット工程では、前記第2の押出機において上流側の剪断速度が下流側の剪断速度よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2の飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ペレット工程では、前記第2の押出機内で前記飽和ノルボルネン系樹脂が溶融する前の機内雰囲気中の酸素濃度を10%以下にすると共に、溶融後の機内真空度を100torr以下にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第2の押出機内で前記飽和ノルボルネン系樹脂の溶融直後に前記熱安定剤を前記押出機内に添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1の飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1の製造方法により製造されたことを特徴とする飽和ノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項7】
偏光板の保護フィルム、光学補償フィルム又は反射防止フィルムの基材フィルムとして用いられることを特徴とする請求項6の飽和ノルボルネン系樹脂フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−302627(P2008−302627A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153214(P2007−153214)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】