説明

養鶏飼料並びに卵

【課題】本発明は、鶏生体の負担を軽くし、産卵率向上を図る養鶏飼料並びに卵に係り、特に鶏生体の負担を軽減させる養鶏飼料並びに、ヒトの脂質代謝ないし神経機能活性組成物を、高濃度に含み、ヒトの脂質代謝の向上に伴う、老化抑制、神経機能活性に寄与することのできる卵を提供することを目的としている。
【解決手段】 配合飼料1000kg当り、ヨウ素(Iとして)を28g〜130g含有する基礎配合飼料に、ヨウ素による鶏生体のストレス解消と産卵率向上を目的として、プロバイオティクスと、ビタミンBコンプレックスとを混合させた養鶏飼料。この飼料を鶏に投与して産出させた卵。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養鶏飼料並びに卵に係り、特に鶏生体の負担を軽減させる飼料、並びに、脂質代謝ないし神経機能活性組成物を、自然卵(意図的に含有させていないもの)よりも高濃度含む卵に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏の飼料に無機質ヨウ素を、多量に添加することがおこなわれている。その結果、抜け羽根、食欲不振など、鶏にストレス負担がかかっている。これを解消するために、リノール酸を投与する技術(例えば特公昭51−28号)が知られている。
【0003】
一方、日本における長寿は世界的にも注目されるところで、65歳以上の高齢者人口は年々増加している。これに伴って、生産人口の比率が減少し、高齢者の受ける年金の減少と、若年者層の年金負担の増加は、大きな社会問題となっている。
その中で特に、高齢者の増加は、老人性認知症を伴う要介護者人口の増加を伴い、介護保険料の負担が、収入のない高齢者にも重い負担となっている。
【0004】
高齢者の中でも要介護者は老人であり、高齢者と老人の違いを検討すると、身体における組織細胞の代謝低下の慢性的進行状態の人が、老人と定義することができる。
不老長寿は、組織細胞が老化しなければ、長寿を保つ事を意味し、漢方薬を飲んでいた徳川家康(75才)と贅食の豊臣秀吉(62才)の寿命差は、食事と老化を改めて考えさせる。 老化とは何かを、改めて検討すると、代謝力低下に伴い栄養の組織細胞への供給が低下し、体組織細胞数の減少による機能低下、ということで説明される。
【0005】
また、動物は酸素を得て生き、植物は酸素を排出して生きている。その結果、動物の寿命は短かいが、植物は数千年も生き、動物にとっての体組織細胞の酸化は、寿命に大きな影響を及ぼしている。それについて、活性酸素が身体に悪い、と最近説かれている。
【0006】
老人のイメージとして、中年太り、背骨曲がり、痩せ、物忘れ、が代表的なもので、この原因として、脂質代謝力の低下、筋肉力の低下と軟骨の摩耗、消化吸収力低下、毛細血管障害による栄養失調が挙げられる。これらの障害原因が抑止されるなら、老化の進行も抑止することが可能になり、また老人性認知症の抑止も期待される。
【0007】
人の食事で摂取された食物は、小腸で栄養分が血管に吸収される。胃腸でよく消化されない時は、吸収される栄養分量は少なく、滓は便として排出される。血管において血液に混ざった栄養分は、血流によって身体の各組織細胞へと運ばれ、組織細胞の再生に使用される。健康な人は、細胞分裂と老廃物の排出の新陳代謝が正確かつ確実に行われている。
【0008】
小腸で血管に吸収された脂質は、蛋白と結合してリポ蛋白(リポは脂質)になり、エネルギー源となり、細胞膜等の重要な構成成分となる。リポ蛋白は、HDL(高比重リポ蛋白)とLDL(低比重リポ蛋白)があり、LDL(低比重リポ蛋白)はコレステロールとリン脂質を組織細胞へ運び、HDL(高比重リポ蛋白)は、これらを組織細胞から除去して肝臓に運ぶ役割をもっている。
コレステロールは、リポ蛋白や組織細胞膜の構成分として体組織細胞の機能を維持し、胆汁酸や各種ホルモンの原材料になる。コレステロールは最終的には肝臓で胆汁酸として排出される。(日経バイオテクノロジー用語辞典、日経バイオテク1987年)。
【0009】
運動不足は、脂質の燃焼量を減少させる。そのためHDLにより肝臓に運ばれるコレステロールが増加し、脂肪が肝臓に蓄積される。LDLによって運ばれるコレステロールはエネルギーとして消費されず、血液中のコレステロール値が高くなる。「中年太り」は運動不足による脂肪の蓄積によるもので、高脂血症、脂肪肝を招く。
血液中の高コレステロールは、血液の流動性を悪化させ、血管の細胞膜透過性を低下させ、これに付着し、繊維化され、更に石灰巣化から、動脈硬化、毛細血管血栓を招く。
【0010】
体内に細菌が入り込むと、これを殺すために体内で活性酸素が生成される。激しい運動など過労には酸素が多く消費され、これを補うために体内で活性酸素が生成される。活性酸素は、脂質の酸化を早め、過酸化脂質は血液の流動性を低下させ、脂質代謝を悪化させる。
この活性酸素が過剰になると、組織細胞の炎症、細胞障害が生じる。炎症により細胞の分裂制御遺伝子が傷つくと、細胞分裂の制御ができずガンになる。
【0011】
細胞への血流が悪化すると、酸素と栄養が細胞に行渡たらず、細胞の再生力が低下し、或いは細胞が壊死する。脳細胞の酸素不足は、機能障害、意識障害等を招き、神経反応の緩慢、記憶力の低下を招く。
老化は、運動量の低下からはじまる。消化吸収の低下から栄養不足となる。栄養不足は、エネルギー不足となり、運動不足を更に促す。
【0012】
要介護には2っの要因がある。1っは歩行困難、2っは老人性認知障害である。歩行困難の原因は、脚筋肉の退化による。筋肉の弱化は、栄養不足による筋肉細胞の減少。歩行をすると血流が早まり、栄養分が供給される。脳への血流が不十分となると、脳細胞の再生力が低下し、減少し、萎縮して認知障害が生じる。これらの生理現象は鶏も同様である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
(1)鶏には、産卵率を上げるために多量の飼料を投与する。これが狭いゲージの中で運動量の少ない鶏には、大きな負担となり、またヨウ素入り卵生産のために無機ヨウ素を、鶏に大量投与することによるストレスが大きい。これらの負担を軽くすることによって、鶏の健康向上と、産卵率向上を図ることが可能になる。
また、鶏の腸内細菌サルモレラ菌が卵中に入り込むことがあり、解決が強く要望されている。この発明は、鶏生体のストレス負担を軽くし、産卵率向上を図ることができ、前記サルモレラ菌を腸内で抑止し、卵にサルモレラ菌が移行することがないようにすること、のできる養鶏飼料を、提供することを目的としている。
【0014】
(2)また、ヒトの老化を抑制するには、体組織細胞の活性化を促進させること、細胞に対する栄養の補給には、代謝の活性化が不可欠であること、代謝の活性化は血流の活性促進が不可欠であること、の認識を新たにし、この目的に沿う、人の脂質代謝ないし神経機能活性組成物が、自然卵よりも高濃度に含有された卵を、提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、目的を達成するために次のような手段を講じた。
【0016】
(1) 鶏の産卵率を上げるには、鶏生体のストレスを低下させること、大量に摂取させる餌料の消化吸収をよくして、鶏生体の負担を軽くすること。その目的のために、飼料にプロバイオティクス(腸内の細菌叢バランスを改善する、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物)を混合した。このプロバイオティクスは、胃腸内の食物の消化を良くし、前記サルモレラ菌を鶏の腸内で抑止する。
【0017】
(2) 卵のレシチンにコリンを多く含有させた。相乗効果をもたらすビタミンBコンブレックスを積極的に多く含有させた。
発明の具体的な内容は次の通りである。
【0018】
(1) 配合飼料1000kg当り、ヨウ素(Iとして)を28g〜130g含有する基礎配合飼料に、ヨウ素による鶏生体のストレス解消と産卵率向上を目的として、プロバイオティクスと、ビタミンBコンプレックスとを混合させた、養鶏飼料。
【0019】
(2) 配合飼料1000kg当り、ヨウ素(Iとして)を28g〜130g、ビタミンEを130g〜150g含有する基礎配合飼料に、ヨウ素による鶏生体のストレス解消と産卵率向上を目的として、プロバイオティクスと、ビタミンBコンプレックスとを混合させた、養鶏飼料。
【0020】
(3) 前記プロバイオティクスは、飼料1000kg当り、
バチルスサブチルス 200gプラスマイナス10%、
乳酸菌 8gプラスマイナス10%、
ビール酵母 200gプラスマイナス10%、
である、前記(1)(2)のいずれかに記載された養鶏飼料。
【0021】
(4) 前記ビタミンBコンプレックスは、飼料1000kg当り、
ビタミンB1 32gプラスマイナス10%、
ビタミンB6 32gプラスマイナス10%、
ビタミンB12 0.01gプラスマイナス10%、
コリン 100gプラスマイナス10%、
葉酸 32gプラスマイナス10%、
イノシトール 100gプラスマイナス10%、
である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載された養鶏飼料。
【0022】
(5) 卵可食部100gあたり、ヨウ素1.2mg〜1.5mgを含有する卵に、ビタミンBコンプレックスから選択された、人の脂質代謝ないし神経機能活性組成物を、自然卵より高濃度に含有している卵。
【0023】
(6) 前記脂質代謝ないし神経機能活性組成物として、卵可食部100gあたり、コリン0.26g〜0.34gが、ヨウ素との相乗効果を得る素材として含有されている、前記(5)に記載された卵。
【0024】
(7) 前記脂質代謝ないし神経機能活性組成物として、卵可食部100gあたり、コリン0.26g〜0.34g、葉酸0.1mg〜0.17mgが、ヨウ素との相乗効果を得る素材として含有されている、前記(5)に記載された卵。
【0025】
(8) 前記脂質代謝ないし神経機能活性組成物として、卵可食部100gあたり、コリン0.26g〜0.34g、葉酸0.1mg〜0.17mg、イノシトール18mg〜30mgが、ヨウ素の相乗効果を得る素材として含有されている、前記(5)に記載された卵。
【0026】
(9) 前記脂質代謝ないし神経機能活性組成物として、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、コリン、葉酸、イノシトールが自然卵より高濃度で、ヨウ素の相乗効果を得る素材として含有されている、前記(5)に記載された卵。
【0027】
(10) 前記脂質代謝ないし神経機能活性組成物として、卵可食部100gあたり、
ビタミンE 6mg〜12mg、
ビタミンB1 0.2mg〜0.3mg、
ビタミンB6 0.1mg〜0.2mg、
ビタミンB12 2.0μg〜3.0μg、
コリン 0.26g〜0.34g、
葉酸 0.1mg〜0.17mg、
イノシトール 18mg〜30mg、
の範囲で含有されている、前記(9)に記載された卵。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると次のような効果がある。
【0029】
(1) 請求項1に記載された発明の養鶏飼料は、プロバイオティクス(腸内の細菌叢バランスを改善する、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物)と、ビタミンBコンプレックスが混合されているので、この養鶏飼料で飼育される鶏は、プロバイオティクスによって、サルモレラ菌等、腸内有害細菌の増殖が抑制され、腸の働きが活性化され、消化吸収が改善される。
これによって、腸内におけるビタミンの合成、特に補酵素の活性化、ホルモンの正常分泌、免疫機能増強などによる、鶏体の健康増進による産卵率の向上が期待される。
またヨウ素の多量投与による鶏生体のストレスが改善される。ビタミンBコンプレックスは、この腸内のプロバイオティクスによる、ビタミン合成、補酵素の活性化に相乗的に作用して、鶏生体の組織細胞老化抑止に伴う健康増進、消化吸収改善に伴う栄養分の卵への移行の向上による、産卵率向上と、卵質の向上等が期待される。
プロバイオティクスは、鶏生体の腸内有害菌の産生を抑制するので、嫌な悪臭のない卵を採取することができる。また貴重な栄養素を、無駄なく鶏のエネルギーに変換し、卵への栄養移行を促進させる。
【0030】
(2) 請求項2に記載された発明の養鶏飼料は、ビタミンEが多量に配合されたので、ヨウ素、ビタミンBコンプレックスの、特にコリン、葉酸、イノシトールとの相乗作用で、鶏の卵巣の活性化に伴う、卵質の向上と産卵率の向上が期待される。同時に卵黄のリン脂質にコリン、イノシトール、葉酸、ヨウ素、ビタミンEを多く移行、含有させる。
【0031】
(3) 請求項3に記載された発明の養鶏飼料は、プロバイオティクスとして、乳酸菌、バチルスサブチルス(真正細菌目バチルス属の大表的菌種)、ビール酵母が選択されている。乳酸菌は、鶏の腸内の有害細菌、例えばウエルシュ菌(ガス壊疽の主な原因菌)、クロストロジウム(グラム陽性桿菌、菌体外毒素を生じる。)、中毒性大腸菌、サルモレラ菌等の増殖を抑制し、腸の異常発酵を抑制し、消化を補ける。
バチルスサブチルス(Bacillus Subtilis)は、蛋白質分解酵素、デンプン分解酵素の産生能力が高いので、鶏生体の胃腸内において消化力を高める。
ビール酵母は、非特異免疫機能の増強、鶏の健康改善、飼料要求率の改善、下痢の減少など、消化吸収を高めて鶏の健康を維持させる。同時に、これらプロバイオティクスの産生する消化酵素は、鶏生体の胃腸内での食物の消化力を高める。
【0032】
(4) 請求項4に記載された発明の養鶏飼料は、ビタミンBコンプレックスの中で、特にコリン、イノシトール、葉酸が多量に配合された。
コリンは、血液脳関門を通過できる数少ない物質で、体内に吸収されると、コリンは脳細胞に達し、神経線維を伝わる電気的興奮(インパルス)の伝達を補ける。これによって鶏の体組織細胞老化、精神的老化が抑止され、鶏の元気を維持させることができる。
またコリンは、イノシトールと相乗的に脂肪の酸化を抑止し、脂肪を乳化させて血管や肝臓にコレステロールの過度の沈着を抑止する。その結果、血中の脂質を卵へ効率良く移行させて卵質の向上をさせる。コリンは、イノシトール、ビタミンB12、葉酸との共働において活性が高まる。イノシトールはビタミンEの効果を向上させる。葉酸は、蛋白質の代謝を補け、細胞分裂に不可欠で、産卵率向上に寄与する。
【0033】
(5) 請求項5に記載された発明の卵は、ヨウ素とコリンが多量に含有されている。これを食べた時、ヨウ素は甲状腺ホルモンバランスを維持するために必要な事は、よく知られている。コリンは、血液脳関門を通過できる少ない物質の1っで、脳内のアセチルコリン(神経伝達物質)濃度を高め、脳内で記憶形成に使われるインパルスの伝達を補け、神経機能を活性化し、記憶力低下抑制、認知症抑制と改善に寄与する。コリンは血液中の脂肪を乳化して、血流の流れを良くし、身体中への栄養の円滑な補給を補ける。またコリンの脂質代謝活性によって、体脂肪の代謝活性にともない、肥満抑止と改善に加効する。
【0034】
(6) 請求項6に記載された発明の卵は、脂質代謝ないし神経機能活性組生物としてヨウ素とコリンが高濃度に含有されている。これをヒトが食べた時、ヨウ素は甲状腺を活性化させ、神経伝達物質ペプチドを活性化させ、脳波の賦活化、交感神経の活発化など、精神的活気を生じさせる。コリンは、脳中の神経伝達物質アセチルコリン濃度を高め、脳内の神経機能を活性化させ、記憶に関するインパルスの活性化に伴い、脳の老化抑止、老人性認知症の抑止に優れた作用をする。
【0035】
(7) 請求項7に記載された発明の卵は、脂質代謝ないし神経機能活性組生物として、ヨウ素とコリンのほかに、葉酸が高濃度に含有されている。これをヒトが食べた時、葉酸は、蛋白質代謝を補け、貧血を予防する。細胞分裂に必要なアミノ酸と糖を細胞に取込み易くし、ヨウ素とコリンの効果と相乗的に作用し、脂質代謝と神経機能を活性化させる。
【0036】
(8) 請求項8に記載された発明の卵は、脂質代謝ないし神経機能活性組生物としてヨウ素とコリンのほかに葉酸、イノシトールが高濃度に含有されている。これをヒトが食べた時、それぞれ相乗作用をして、イノシトールは、筋肉糖として細胞代謝に加効し、細胞の老化を抑止する。更にヨウ素、コリン、葉酸との相乗作用で、脂質代謝と神経機能を活性化させる。またイノシトールは体内の活性酸素を抑制する。
【0037】
(9) 請求項9に記載された発明の卵は、ヨウ素、ビタミンE、更に、ビタミンBコンプレックスとして、ビタミンB1、B6、B12、コリン、葉酸、イノシトールを自然卵より高濃度に含有するので、これをヒトが食べる時、ビタミンB1、B6、B12、の補酵素との相乗作用と、ヨウ素、コリン、葉酸、イノシトールの相乗効果により、充実した脂質代謝と神経機能活性促進化が得られる。またビタミンBとイノシトールは体内の活性酸素を抑止する。
【0038】
(10) 請求項10に記載された発明の卵は、素材物質それぞれの相乗作用に必要な量が配分されて含有されているので、老人の老化進行を抑止するための、脂質代謝と神経機能の活性化に必要な栄養分が、卵1個に集約されている。この卵を毎日食べることによって、老化抑止に必要な成分を十分摂取することができる。コリン、葉酸、イノシトール、ヨウ素、ビタミンEの相乗作用により、老人性認知症などの抑制、肥満抑制等の効果を得ることが可能。
老化、老人性認知症等の抑止ができるなら、要介護老人の絶対数を減少させること、介護保険料負担を減少させることができ、また老いても健康で生活を楽しむことができ、老人の保健と、国の保健行政に大きく寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(1) 鶏の産卵率を上げるために、鶏生体のストレスを低下させること、餌料の消化吸収に伴う鶏体の負担を軽くすること。その目的のために、飼料にプロバイオティクス(腸内の細菌叢バランスを改善する、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物)を混合する。
(2) 卵のレシチンにコリンを多く含有させる。相乗効果をもたらすビタミンBコンブレックスを含有させる。
【0040】
本願発明の実施例を説明する。まず発明の基本としての研究課題を次に示す。
プロバイオティクス(Probiotics)とは、抗生物質(Antibiotics)に対比される言葉で、生物間の共生関係(Probiosis)を意味する生態学的用語を起源としている。
プロバイオティクスを定義すると、「腸内の細菌叢バランスを改善する、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物」、ということになる。
【0041】
プロバイオティクスは、鶏の体内でどのような働きをするのか、要点を次に箇条書で示す。
(1) 腸内への細菌やウイルスの侵入、増殖を抑止する。
(2) 乳酸や酢酸などの有機酸を作り、有害菌の産生抑制、腸内腐敗を防止する。
(3) 腸管内でビタミンB1、B6、B12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミ ンE、ビタミンK、ホルモンなどを合成する。
(4) 免疫力を高め、癌の予防、老化防止。
(5) 腸の働きを活性化し、蠕動運動を促し、便秘を予防する。
(6) 発ガン物質などの有害物質を分解解毒する。(ニトロソアミンなどの分解)
【0042】
プロバイオティクスの種類として、例えば乳酸菌、バチルスサブチルス、ビール酵母などが選択される。
乳酸菌(Lactic acid bacteria)は、糖類の発酵によりエネルギーを得て成育する1群の細菌類の総称。
一般的には、乳酸桿菌、乳酸球菌を含む。ヒトの腸管内や粘膜上にも自然フローラ(腸内細菌叢)として住み、古くから、発酵乳、チーズ、漬物、酒、ワイン、など多くの発酵食品の製造に使用される。(日経バイオテクノロジー用語辞典、日経バイオテク1987年)。
【0043】
本発明で使用される乳酸菌は、ビオフェルミン製薬会社製の、アシドフェーカリス乳酸桿菌で、1g中に120億個の乳酸菌が生きている。
この乳酸菌は、鶏の大腸内で障害を生じさせるウエルシュ菌、クロストリジウム等の産生を抑止する。またその他有害細菌の増殖を抑止し、卵に付着して来る中毒性大腸菌の抑止や、卵の黄身に移行して産卵され、食中毒を生じさせることのあるサルモレラ菌を抑止する。
【0044】
バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)は、真正細菌目属の代表的菌種。土中、空気中に常在し、ヒトや動物に病原性がなく、培養も容易。蛋白分解酵素の分泌が旺盛。(日経バイオテクノロジー用語辞典、日経バイオテク1987年、南山堂医学英和大辞典)。
本願発明では、バチルスサブチルスの中でも非常に耐熱性に優れ、蛋白分解酵素やデンプン分解酵素の産生能力の高い菌(菌名ーBSTー9)を選択し、穀類をベースとして固形培養した生菌体(芽胞)と、培養基からなる生菌を使用した。生菌数1.0×109/g、耐熱芽胞菌数3.3×107/g。プロテアーゼ力価(pH=7)2,000IU/g、アミラーゼ力価(pH=7)3,800IU/g。
【0045】
ビール酵母(yeast)は、単細胞で、比較的下等な真核生物の1っ。アルコール発酵能が強いため、清酒、ビール、ワインなどの製造に使用される。(日経バイオテクノロジー用語辞典、日経バイオテク1987年)。
ビール酵母はβー1、3,βー、6グルカン(デンプン、グリコーゲン、セルロース、などDーグルコースを構成単位とする多糖の総称。)を含有しており、次のような作用がある。
【0046】
(1) 非特異免疫機能の増強。
(2) 鶏の健康改善。
(3) 飼料要求率の改善。
(4) 下痢の減少など。
【0047】
前記腸内有害菌は、タンパク質を分解して、アンモニア、アミン、硫化水素、インドール、スカトールなどの悪臭のある有害物質を作る嫌気性(空気を嫌う)の腐敗菌。
有害菌が鶏の腸内で多く増殖すると、これらの悪臭が発生し、卵に嫌な臭いが移行してしまう。またビタミンを破壊したり、ホルモンの産生を減少させ、働きを悪化させる。
【0048】
乳酸菌やバチルスサブチルス、ビール酵母は、共生関係(Probiosis)で有害菌の産生を抑制するので、嫌な悪臭のない卵を採取することができる。また消化吸収を補けるので、貴重な栄養素を無駄なく鶏のエネルギーに変換し、卵への栄養移行を促進させる。
【0049】
このように養鶏飼料に、プロバイオティクスを添加することによって、鶏の腸内有害細菌の増殖を抑制し、下痢を止め、特にサルモレラ菌の卵への移行を抑止する。消化を補けて腸を活性化し、腸管内でビタミンを合成して卵への移行率を高め、免疫機能の増強により、鶏の健康を改善する。飼料要求率を改善し、老化を抑止して産卵率を向上させる効果があることを見いだした。また不要なヨウ素を早く排出させて、ヨウ素によるストレスを解消させる。
【0050】
次に、基礎配合飼料に添加される、ビタミンBコンプレックス(complex)について述べる。ビタミンBコンプレックスは、ビタミンB複合体、ビタミンB群ともいわれる。
この中で一般的に知られているのは、B1(チアミン)、B6(ビリドキシン)、B12(シアノコバラミン)、B2(リボフラビン)、パントテン酸、ニコチン酸、ビオチンである。
このほかには、コリン、葉酸、イノシトールもビタミンBコンプレックスの1っにあげられている。また最近、パラアミノ安息香酸(PABA)も注目されている。
【0051】
ビタミンB1は、カッケに効くとして、なじみのあるビタミンである。抗神経炎性ビタミン。体内で補酵素(酵素活性に必要な蛋白以外の部分)になり、生理作用としては、体内で酸化的脱炭素反応、抹消神経炎や鬱血性心不全などを抑制する。
ビタミンB6は、体内でリン酸化合物レベルで相互転換をする。
ビタミンB12は、抗悪性貧血因子。肝臓に取込まれて補酵素に変換される。
ビタミンB2は、炭水化物、蛋白質を代謝する役割を担い、発育のビタミンといわれ、成長と生殖を補ける。(化学大事典、東京化学同人1989年)。
【0052】
パントテン酸は、脂肪酸の代謝、アミノ酸の代謝などに補酵素として関与する。また消耗性疾患、甲状腺機能亢進症、妊産婦の体力消耗改善に役立つ。
ニコチン酸は、種々の脱水素酵素の補酵素として酸化還元反応に関与している。欠乏すると、皮膚赤着色、湿疹、角質増多症など皮膚炎になる。(南山堂医学大事典、南山堂1954年)。
【0053】
ビオチンは、補酵素Rともいわれる。動物の肉や卵黄に含まれている。体内では腸内細菌によって作られる。ビオチンは、ビタミンB2、B6、ナイアシンと共働したときに効果が高い。
パラアミノ安息酸は、微生物の発育に必須の物質。パントテン酸、ニコチン酸、ビオチンについては、普通の食事で十分に摂れる。(日経バイオテクノロジー用語辞典、日経バイオテク1987年)。
【0054】
コリンは、あまり知られていない。これは、コリンの不足によるコリン欠乏症が確定されていないため、ビタミンとして認められていず、医薬品として人目につきにくいためである。
このコリンは、レシチン等リン脂質の成分となり、細胞の重要な構成物質。動物では、胆汁、脳、副腎皮質、腸粘膜、肝臓、卵黄などに含まれている。(化学大事典、東京化学同人1989年)。自然卵では、可食部100gあたり0.2g程度含まれている。
【0055】
コリン(C514NO)は、血圧降下作用、胃液分泌促進作用があり、脂肪を乳化する作用があるため、コレステロールを乳化して、動脈や肝臓にコレステロールを蓄積させない作用がある。イノシトールとの共働により、血中の脂肪とコレステロールを組織細胞にエネルギーとして活用促進させる。またビタミンB12、葉酸との共働により更に活性化される。(ビタミン研究のブレークスルー、日本ビタミン学会2002年)。
【0056】
コリンは、神経線維を伝わる電気的興奮(インパルス)の伝達、特に脳の中で記憶形成に使われるインパルスの伝達を補ける作用がある。それは、高齢者の記憶力低下を改善し、老人性認知症の抑止に加効する。ヒトには1日当り1〜5gの摂取で効果が生じる。(ビタミン・バイブル、小学館2004年)。
【0057】
特に、血液脳関門は、毎日の食事の変化に伴い、血液成分の変化にも影響を受けないように、脳を保護しているが、コリンは、この血液脳関門を通過できる数少ない物質の1っで、脳細胞に直ぐに達して、脳中の神経伝達物質アセチルコリン濃度をたかめる。(日経バイオテクノロジー用語辞典、日経バイオテク1987年)。
【0058】
アセチルコリン(C716NO2)は、神経の興奮を次の細胞に伝える神経伝達物質(ニューロン)の1っ。運動神経、交感神経の節前線維、副交感神経の節前線維と節後線維の末端で放出され、終末に興奮が伝わってくると細胞外に放出される。
また交感神経節での、リン脂質へのリン酸の取込みを促進し、クロム親和性細胞からのアミン類の放出を高める。(日経バイオテクノロジー用語辞典、日経バイオテク1987年)。
【0059】
葉酸(プテロイルグルタミン酸)は、赤血球を作るのに不可欠なビタミンで、動物の抗貧血因子として有効。体の細胞分裂に不可欠で、核酸、アミノ酸代謝等蛋白質代謝を補ける。
栄養性大赤血球性貧血、食欲不振を改善する。ビタミンB12 との共働は相乗効果が大きい。(ビタミン・バイブル、小学館2004年)。
【0060】
核酸は、蛋白質と共に生物にとって最も大切な物質で、DNA(デオキリポ核酸)とRNA(リポ核酸)に大別される。DNAは細胞核の染色体において遺伝子の本体になり、RNAは細胞全体において、遺伝子の設計図通りに蛋白質を生合成する働きをもっている。(日経バイオテクノロジー用語辞典、日経バイオテク1987年)。
【0061】
イノシトールは、コリンと結合してレシチンを作り、コリンと同様に脳細胞に栄養を与える重要な働きをもっている。脂肪とコレステロールの代謝を活性化し、血中コレステロール値を下げ、脂肪肝を防止する。他のビタミンBとの共働で効果は増大する。イノシトールは、コリンと結合してビタミンEの効果を最大にする。(ビタミン・バイブル、小学館2004年)。
イノシトールは活性酸素消去作用があり、またニコチン酸と結合して末梢血管拡張作用がある。(ステッドマン大医学事典、メジカルビュー社)
【0062】
ビタミンEは、酸化防止作用を有し、活性酸素を消去する脂溶性ビタミンとしてよく知られている。抗不妊因子を含み、生殖、細胞再生の活性作用がある。また免疫力の活性も知られている。血小板凝集抑止作用から、毛細血管の活性による血液循環を活性化させる。(日経バイオテクノロジー用語辞典、日経バイオテク1987年)。そのことから、高血圧の抑止、栄養の補給に伴う細胞の再生、軟骨の補強等の効果がある。
【0063】
本願発明者は、ヨウ素を多給している鶏生体のストレス解消、健康増進、産卵率向上の研究を長年継続してきたが、上記のような知見から、産卵率向上と、人の老化抑止、特に高齢者の神経機能活性の両テーマに沿って研究を重ね、本願発明を完成した。
【実施例1】
【0064】
産卵率向上のための養鶏飼料の配合実施例を示す。基礎配合飼料は、次の市販原料配合である。
穀類(とうもろこし、マイロ) 56%、植物性油かす 23%、動物質性飼料(魚粉)3%、
そうこう類(ふすま、コーングルテンフィルド)3%、その他(炭酸カルシウム、動物性油脂、アルファルファミール、食塩、パプリカ抽出物、リン酸カルシウム、等)15%。
【0065】
成分比率は、粗蛋白17%以上、粗脂肪3%以上、粗繊維6%以下、粗灰分14.5%以下、カルシウム3.5%以上、リン0.45%以上、NE2,860/kcal/kg。
【0066】
前記基礎配合飼料1000kg当り、プロバイオティクスとして、
バチルスサブチルス 200g、
乳酸菌 8g、
ビール酵母 200g、
を添加混合した。この数値は基準なので、ビール酵母を除いて、それぞれ、プラスマイナス10%の範囲で実施することができる。
【0067】
前記基礎配合飼料1000kg当り、ビタミンBコンプレックスとして、
ビタミンB1 32g、
ビタミンB6 32g、
ビタミンB12 0.01g、
コリン 100g、
葉酸 32g、
イノシトール 100g、
を添加混合した。コリンは塩化コリンを選択した。この数値は基準なので、プラスマイナスそれぞれ10%の範囲で実施することができる。
【0068】
その他の添加物として、ヨウ化カリウム(Iとして)28g〜130g、ビタミンE130g〜150g、を添加混合して本願養鶏飼料を製造した。
【0069】
これらの添加物は、下記「別表1」の素材をあらかじめ混合して、飼料添加物としておくことができる。飼料添加物1kgあたりの、各素材配合例は次の通り。この配合数値は、それぞれの相乗作用、効果が最良に生じるための配合例で、この飼料添加物は、基礎配合飼料に0.4%の割合(プラスマイナス10%)で配合される。
【0070】
【表1】

【実施例2】
【0071】
前記本発明養鶏飼料を、産卵鶏100羽に、それぞれ1日あたり100gを給餌しつづけた。対照鶏には普通の飼料(ヨウ素0.01%)を給餌し、比較をした結果は「別表2」の通りである。
この数値比較によると、明らかに産卵率が3.9%向上している。また卵への栄養の取込率も増加して、卵形の大型化が認められた。
【0072】
【表2】

【0073】
また年間における産卵鶏の死亡率/100羽、を比較すると、本件養鶏飼料では1.2羽、対照飼料では2.2羽で、本件餌による健康維持の効果が現れている。特に、3年鶏以上の老鶏の死亡率が低下した。
また本件養鶏飼料を給餌した鶏につき、3か月にわたり、毎月ランダムに卵100個を抽出選択し、卵の外面における中毒性大腸菌の付着、卵黄におけるサルモレラ菌の有無を検査したが、発見できなかった。
【0074】
このように、本発明の養鶏飼料は、ヨウ素とプロバイオティクス並びにビタミンBコンプレックスの相乗作用により、鶏の胃腸内での消化吸収の活性、胃腸機能の活性、脳神経系の活性、胃腸負担並びにストレス解消、血流の活性並びに生殖機能の活性、鶏体の健康増進に寄与し、結果的に卵質の向上と産卵率の向上が認められた。またビタミンEを添加したほうが、添加しないものよりも若年鶏、老鶏ともに産卵率は2〜5%向上した。
【0075】
前記養鶏飼料を鶏に投与して得た卵は、可食部100g当りの成分別平均値と、普通卵の平均値は「別表3」の通りである。
脂質代謝ないし神経機能活性を目的とする成分、コリンは自然卵の約1.5倍、葉酸は自然卵の約3倍、イノシトールは自然卵の約1.2倍含有されている。
【0076】
【表3】

【0077】
ビタミンBコンプレックスとして、ビタミンB1 、ビタミンB6 、ビタミンB12 、コリン、葉酸、イノシトールが、脂質代謝ないし神経機能活性を目的として、このように高濃度に含有されている卵は先例がない。
特に、コリン1.5倍、葉酸3倍、イノシトール1.2倍のように、3種の成分がこれだけ自然卵に比して高濃度に、積極的に含有された卵の先例はない。
【0078】
一般的な人のコリンの摂取量は500mg〜1000mg/日。記憶力低下改善には1〜5g/日。葉酸の所要量は、成人で200μg/日、妊婦で400μg/日(2000年、日本人の栄養所要量)と算定されている。
葉酸の許容上限摂取量は1mg/日。ただし、ビタミンCにより葉酸は外へ排出される。異常出産防止、白血病、悪性貧血、など治療には4mg/日。
イノシトールの一般的な治療用摂取量は、250〜500mg/日とされている。
【0079】
本発明卵はコリン、葉酸、イノシトールが理想的に含有されている。またヨウ素は約4.5倍、ビタミンEは約8.5倍、ビタミンB1は約4.1倍、ビタミン6は約2.2倍、ビタミン12は約2.8倍も含有され、量的には少ないが、バランスよくビタミンBコンプレックスが含有されている。
【0080】
卵の各成分の含有量は、前記飼料添加物の配合割合の調節により「別表4」の範囲で調整することができる。医薬的効果を得るためなど、必要に応じて増加させることができる。
また、これにパントテン酸、ニコチン酸、ビオチン、パラアミノ安息香酸(PABA)等を、適宜含有させることができる。
【0081】
【表4】

【0082】
普通卵の卵黄には、リン脂質が9.3%ほど含有されている。このリン脂質の中にコリンが8.62%ほど含有されている。
コリン(ホスファチジルコリン)は、普通卵の可食部100g当り、およそ0.2g含有されているが、本発明卵は、前記のように コリンが0.26g〜0.34gも含有していることに特徴がある。
【0083】
脂質代謝ないし神経機能活性を目的として含有させる、主たる物質はコリンなので、コリンとヨウ素のみ自然卵より高濃度にしたものも、目的に沿う構成となる。
コリンとの相乗作用、効果を高めるためには、ヨウ素、コリン、葉酸が自然卵より高濃度に含有されたものは、目的により適切に沿う構成となる。更に高い相乗作用・効果を得るためにはイノシトールが複合含有される。
【0084】
レシチンの語源は、卵黄を意味する「レシトール」から出たもので、「リン脂質」(ホスファチド)と呼ばれている。卵黄のレシチンを構成している主たる物質は、不飽和脂肪酸とイノシトールとコリンである。ヨウ素は不飽和脂肪酸に結合する。
【0085】
コリンは、血液脳関門を通過できる物質であるが、高知医科大で、卵黄のコリンと大豆のコリンとを動物実験で比較したところ、大豆抽出のコリンは血液脳関門をスムースに通過できなかったが、卵黄のコリンは容易に通過した。これは大豆のコリンと、動物、特に卵黄のコリンとの血液脳関門に対する適応性の差によるものであろう。
【0086】
アメリカ、マサチューセッツ工科大学、R・J・ワートマン博士の論文(1982)によると、
(1) ヒトの老齢による記憶障害の治療には、コリンを毎日の食事に補うことが必要。
(2) コリンは児童、成人、高齢者の脳の学習能力、記憶力の改善に役立つ。としている。
【0087】
また1997年に発表された高知医科大の論文によると、アルツハイマー型患者に対して卵黄から分離したコリンと、ビタミンB12を臨床的に投与したところ、有意な改善が見られた。
アルツハイマー病患者の脳内は、コリンが不足状態にあり、神経機能障害が起きているので、コリンを大量に供給することによって、脳の働きが改善された、としている。
【0088】
「ビタミン・バイブル、小学館ー2004年」によると、中高年者の記憶力低下の改善には、1日当り1g〜5gのコリンの摂取が必要としている。
本発明卵は、前記のように卵の可食部100g当り、コリンがおよそ0.3gも含有されているので、卵4個で、老人性認知症の予防、改善に効果があることが認められる。本願卵は、必要に応じて、コリンの含有量を、可食部100g当り0.5gまで増加させることは可能である。
【0089】
ヒトの脳内に存在するペプチド類は、神経伝達や高次の精神活動を仲介する。脳内ペプチド類は、脳以外の様々な組織からも分泌されて、神経伝達物質としてのほかに、各種標的臓器でホルモンとしても作用している。甲状腺刺激ホルモンは脳下垂体に作用して、甲状腺刺激ホルモンとプロラクチンを分泌させると共に、中枢神経では神経伝達物質として働いている。ヨウ素は、脳下垂体を活性化させ、ペプチドを活性化させて、これらの神経伝達物質を活性化させる。
【0090】
前記プロラクチン(Prolactin)は、脳下垂体で産生されるホルモンの1っで、アミノ酸からなる蛋白質。前立腺の発育促進、乳腺の発育、血圧や代謝に作用している。このペプチドは覚醒作用、脳波の賦活化、交感神経の活発化など、やる気の起こるホルモンとされている。しかしペプチド(複数のアミノ酸が結合した化合物)は血液脳関門の通過ができないという難点がある。(日経バイオテクノロジー用語辞典、日経バイオテク1987年)。
【0091】
その点で、この発明の卵においては、卵にヨウ素とコリンが高濃度に含有されているので、ヨウ素で活性化されるペプチドが、血液脳関門を通過できない分を、コリンの血液脳関門通過性、によるアセチルコリンの増強で補うことができる。
【0092】
特にコリンは、脳中のアセチルコリン濃度を高め、神経の興奮を次の細胞に伝える神経伝達物質アセチルコリンによる、脳の中で記憶形成に使われるインパルスの伝達を補け、高齢者の記憶力低下を改善し、老人性認知症の抑止に加効する。
ビタミンB12との相乗効果は、脳細胞の栄養となり、脳血管の活性化により栄養補給に加効する。イノシトールは、コリンと結合してレシチンを作る。レシチンにヨウ素が結合して卵に含まれる。これによって卵の栄養価を大きくしている。
【0093】
またコリンは、イノシトールと共に、血液中の脂肪を乳液化する。これによって血流がよくなり、脂肪、コレステロールの代謝が促進され、高脂血症、脂肪肝、動脈硬化が抑止され、脳細胞への血行が良好となるため脳の老化が抑止され、老人性認知症の発症が抑止される。
ビタミンB1、B6、B12等の補酵素との相乗作用により、効果は高まる。これによって、卵の持つコレステロールが、人の身体において障害になりにくく、細胞の栄養として加効する。
【0094】
コリンは、葉酸との相乗作用により、効果は大となる。また、コリンとイノシトールは、ビタミンEの作用・効果を最大にする。これはビタミンEが脂溶性であり、コリンとイノシトールが脂肪代謝能が高く、血流の活性化に伴う細胞への供給が十分に行われるためである。これがコリン、イノシトール、葉酸の3種混合の相乗効果である。
【0095】
コリンとイノシトールは、レシチンの成分として、組織細胞の重要な構成物質であり、葉酸は、細胞分裂に不可欠な物質。特に核酸、アミノ酸など蛋白質代謝を補ける物質であり、赤血球を作るためにも不可欠。この葉酸はビタミンB12と相乗作用により相乗効果は増大する。
ビタミンB12 は炭水加物と蛋白質を代謝する作用があり、発育のビタミンといわれ、細胞の再生に加効し、老化を抑止する。
このように、コリン、イノシトール、葉酸の相乗作用は、組織細胞の構成物質の代謝、核酸の代謝、細胞分裂の完全化、貧血の防止、脂質代謝、脳内栄養の補強が十分に行える等の相乗効果をもたらす。
【0096】
組織細胞の環境の悪化が細胞の老化を促進させ、様々な病の発症の原因となっている。細胞の環境とは、細胞を分裂させるための十分かつ完全な栄養補給と、老廃物の速やかな排出機能である。新陳代謝は新しい細胞を分裂再生させ、古い細胞を排出させる。血管の老化は細胞への栄養供給を低下させる。適度の運動をして、十分栄養を摂取している人は健康で長生きをしている。
【0097】
本発明は、血液脳関門を通過するコリンの、脳神経伝達物質の活性化特性に注目し、これを、栄養源としての卵に、コリンを自然卵よりも高濃度含有させることによって、高齢者への充実した栄養補給を兼ねて、老化抑止、認知症抑止を図ろうとするもので、この卵は、神経機能活性の目的に十分沿うものである。
【0098】
葉酸、イノシトール、或いはビタミンB12は、コリンと密接な相乗作用をして細胞への栄養補給を完全にする効果が得られ、脂質代謝に伴う血管の活性と、栄養補給機能の活性は、細胞の老化抑止の目的に適合し、組織細胞の環境を良好なものとするものである。これに併せて、脂質代謝は肥満抑止、肥満改善に加効する。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本願養鶏飼料は、鶏の健康活性、産卵率向上等のほかに、人の脂質代謝活性、神経機能活性組成物を、自然卵より2倍以上も含有させる卵の生産に、使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合飼料1000kg当り、ヨウ素(Iとして)を28g〜130g含有する基礎配合飼料に、ヨウ素による鶏生体のストレス解消と産卵率向上を目的として、プロバイオティクスと、ビタミンBコンプレックスとを混合させたこと、を特徴とする養鶏飼料。
【請求項2】
配合飼料1000kg当り、ヨウ素(Iとして)を28g〜130g、ビタミンEを130g〜150g含有する基礎配合飼料に、ヨウ素による鶏生体のストレス解消と産卵率向上を目的として、プロバイオティクスと、ビタミンBコンプレックスとを混合させたこと、を特徴とする養鶏飼料。
【請求項3】
前記プロバイオティクスは、配合飼料1000kg当り、
バチルスサブチルス 200gプラスマイナス10%、
乳酸菌 8gプラスマイナス10%、
ビール酵母 200gプラスマイナス10%、
であること、を特徴とする請求項1.2のいずれかに記載された養鶏飼料。
【請求項4】
前記ビタミンBコンプレックスは、配合飼料1000kg当り、
ビタミンB1 32gプラスマイナス10%、
ビタミンB6 32gプラスマイナス10%、
ビタミンB12 0.01gプラスマイナス10%、
コリン 100gプラスマイナス10%、
葉酸 32gプラスマイナス10%、
イノシトール 100gプラスマイナス10%、
であること、を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された養鶏飼料。
【請求項5】
卵可食部100gあたり、ヨウ素1.2mg〜1.5mgを含有する卵に、ビタミンBコンプレックスから選択された、人の脂質代謝ないし神経機能活性組成物を、自然卵より高濃度に含有していること、を特徴とする卵。
【請求項6】
前記脂質代謝ないし神経機能活性組成物として、卵可食部100gあたり、コリン0.26g〜0.34gが、ヨウ素との相乗効果を得る素材として含有されていることを特徴とする、請求項5に記載された卵。
【請求項7】
前記脂質代謝ないし神経機能活性組成物として、卵可食部100gあたり、コリン0.26g〜0.34g、葉酸0.1mg〜0.17mgが、ヨウ素との相乗効果を得る素材として含有されていること、を特徴とする請求項5に記載された卵。
【請求項8】
前記脂質代謝ないし神経機能活性組成物として、卵可食部100gあたり、コリン0.26g〜0.34g、葉酸0.1mg〜0.17mg、イノシトール18mg〜30mgが、ヨウ素の相乗効果を得る素材として含有されていること、を特徴とする請求項5に記載された卵。
【請求項9】
前記脂質代謝ないし神経機能活性組成物として、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、コリン、葉酸、イノシトールが自然卵より高濃度で、ヨウ素の相乗効果を得る素材として含有されていること、を特徴とする請求項5に記載された卵。
【請求項10】
前記脂質代謝ないし神経機能活性組成物として、卵可食部100gあたり、
ビタミンE 6mg〜12mg、
ビタミンB1 0.2mg〜0.3mg、
ビタミンB6 0.1mg〜0.2mg、
ビタミンB12 2.0μg〜3.0μg、
コリン 0.26g〜0.34g、
葉酸 0.1mg〜0.17mg、
イノシトール 18mg〜30mg、
の範囲で含有されていること、を特徴とする請求項9に記載された卵。



【公開番号】特開2007−54041(P2007−54041A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60911(P2006−60911)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(398008468)有限会社ヨドリノン研究所 (2)
【Fターム(参考)】