説明

駆動力伝達装置

【課題】無駄な空間を削減し、第1及び第2ギアに用いられる潤滑油の量を減少することができる駆動力伝達装置を提供すること。
【解決手段】ハイポイドギア53には、ハイポイドギア54が咬合され、そのハイポイドギア54の内周部には、シャフト56が連結されており、そのシャフト56のさらに内側に、後輪ドライブシャフト95a、95bに駆動力を伝達する駆動力調整機構60a,60bが配設されている。よって、ハイポイドギア53,54が配設される空間において無駄な空間を削減できるので、そのハイポイドギア53,54に用いられる潤滑油の量を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力伝達装置に関し、特に、無駄な空間を削減し、第1及び第2ギアに用いられる潤滑油の量を減少することができる駆動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、四輪駆動車などの最終減速機としては、ドライブシャフトからの駆動力をピニオンギア(以下「第1ギア」と称す)とその第1ギアの側部に配置されたリングギア(以下「第2ギア」と称す)とで減速し、その第2ギアに連結されたシャフトによって両サイドの駆動輪に駆動力を伝達するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、近年では、最終減速機の両側に隣接してクラッチ機構を配置し、第2ギアを介してシャフトに伝達された駆動力をクラッチ機構により断続して、両サイドの駆動輪へのトルク配分を調整するものも知られている。この最終減速機の両側に隣接してクラッチ機構を配置した構成では、第1ギア及び第2ギアを覆うセンターカバーと、両側のクラッチ機構を覆う一対のサイドカバーとがボルトで固定され、最終減速機とクラッチ機構とが一体的にカバーで覆われる。
【特許文献1】特開平4−63727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最終減速機の両側に隣接してクラッチ機構を配置する構成では、第2ギアからの駆動力をシャフトによって両側のクラッチ機構へ伝達するので、第1ギアと第2ギアとが配設される空間に無駄な空間が生じてしまう。さらに、一般的に、第1ギア及び第2ギアに使用される潤滑油と、各クラッチ機構に使用される潤滑油とが異なるので、第1ギア及び第2ギアが覆われるセンター部分と、各クラッチ機構が覆われるサイド部分とを遮蔽しなければならない。
【0005】
このように、センター部分とサイド部分との空間を遮蔽すると、第1ギア、第2ギア及びシャフトが覆われるセンター部分に無駄な空間が生じるので、その分、多くの潤滑油をセンター部分に供給しなければならないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、無駄な空間を削減し、第1及び第2ギアに用いられる潤滑油の量を減少することができる駆動力伝達装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載の駆動力伝達装置は、駆動力を発生する原動機と、その原動機により発生された駆動力が入力される入力軸と、その入力軸に入力された駆動力が伝達される一対の出力軸とを備えており、前記入力軸の外周部に連結される第1ギアと、その第1ギアの軸心に対して交わる方向に軸心が位置し、前記第1ギアと咬合する第2ギアと、その第2ギアの内周部に連結されるシャフトと、そのシャフトの内側に配設され、前記シャフトから伝達された駆動力を前記一対の出力軸にそれぞれ伝達する一対の出力ユニットとを備えている。
【0008】
請求項2記載の駆動力伝達装置は、請求項1記載の駆動力伝達装置において、前記一対の出力ユニットの対向する端部は、前記第1ギアの軸心方向視において、その第1ギアと重なる位置に配設されている。
【0009】
請求項3記載の駆動力伝達装置は、請求項2記載の駆動力伝達装置において、前記出力ユニットは、前記出力軸が軸心部に連結され、前記シャフトから伝達された駆動力を前記出力軸に断続的に出力可能なクラッチ機構と、そのクラッチ機構を、前記シャフトから伝達された駆動力を前記出力軸に出力する状態に遷移させる押圧力を発生するピストンとを備え、前記一対の出力ユニットは、前記クラッチ機構が互いに対向すると共に、前記ピストンが互いに離反して配設されている。
【0010】
請求項4記載の駆動力伝達装置は、請求項1から3のいずれかに記載の駆動力伝達装置において、前記クラッチ機構は、入力側の複数の入力側プレートと、その複数の入力側プレートの間にそれぞれ位置する出力側の複数の出力側プレートとを有し、その出力側プレートと入力側プレートとが断続されることで、前記シャフトから伝達された駆動力を前記出力軸に断続的に出力可能に構成されており、前記入力側プレートは、前記シャフトの内周部に直接嵌合されている。
【0011】
請求項5記載の駆動力伝達装置は、請求項1から4のいずれかに記載の駆動力伝達装置において、前記第1ギア、第2ギア、シャフト及び出力ユニットを覆うと共に、前記第1ギアの軸心に直交する方向の両側が開口するセンターカバーと、そのセンターカバーの両側の開口を塞ぐ一対のサイドカバーと備え、前記シャフトは、前記センターカバーの両側の開口まで延出されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の駆動力伝達装置によれば、原動機により発生された駆動力が入力軸に入力され、その入力軸に入力された駆動力が第1ギアに咬合する第2ギアに伝達され、その第2ギアの内周部に連結されるシャフトに伝達される。そして、シャフトの内側に配設される一対の出力ユニットによって、シャフトから伝達された駆動力が一対の出力軸にそれぞれ伝達される。よって、第1ギア、第2ギア、シャフト、一対の出力ユニット及び一対の出力軸を備える駆動力伝達装置において、第2ギアからの駆動力を出力ユニットに伝達するシャフトの内側に出力ユニットを配設するので、従来のようにシャフトの両端部に出力ユニットをそれぞれ配設する構成に比べて、第1ギア及び第2ギアが配設される空間における無駄な空間が少なくなる。従って、第1ギア及び第2ギアが配設される空間と、出力ユニットが配設されるシャフトの内側の空間とを遮蔽した場合には、第1ギア及び第2ギアに用いられる潤滑油の量を減少することができるという効果がある。
【0013】
請求項2記載の駆動力伝達装置によれば、請求項1記載の駆動力伝達装置の奏する効果に加え、一対の出力ユニットの対向する端部が、第1ギアの軸心方向視において、その第1ギアと重なる位置に配設されるので、第1ギアの軸心に直交する方向の大きさを小さくすることができるという効果がある。
【0014】
請求項3記載の駆動力伝達装置によれば、請求項2記載の駆動力伝達装置の奏する効果に加え、出力ユニットは、ピストンが発生する押圧力によって、シャフトから伝達された駆動力を出力軸に出力する状態にクラッチ機構が遷移すると、そのシャフトから伝達された駆動力が出力軸に断続的に出力されるものであり、一対の出力ユニットは、クラッチ機構が互いに対向すると共にピストンが互いに離反して配設されている。
【0015】
ここで、ピストンは、押圧力を発生させるものなので、その押圧力を発生させるための部屋やその部屋までの通路が必要となり構造が複雑になる。そのため、シャフトの内側においてピストンを互いに対向して配設すると、シャフトの内側の構造が複雑になり製作が困難になってしまう。
【0016】
しかし、シャフトの内側には、クラッチ機構が互いに対向して一対の出力ユニットが配設されるので、シャフトの内側の構造が複雑になることを抑制し、製作が困難になることを抑制することができるという効果がある。また、ピストンの押圧力を発生させる部屋や通路がシャフトの両側に位置するので、部屋や通路の製作がし易くなるという効果もある。
【0017】
請求項4記載の駆動力伝達装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の駆動力伝達装置の奏する効果に加え、クラッチ機構は、入力側の複数の入力側プレートと、その複数の入力側プレートの間にそれぞれ位置する出力側の複数の出力側プレートとが断続されることで、シャフトから伝達された駆動力を出力軸に断続的に出力可能にするものであり、その入力側プレートは、シャフトの内周部に直接嵌合されている。よって、シャフトの内部空間を有効に利用することができるので、各プレートが極端に小さくなりトルク容量を確保できないなどの弊害を防止することができるという効果がある。
【0018】
請求項5記載の駆動力伝達装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の駆動力伝達装置の奏する効果に加え、第1ギア、第2ギア、シャフト及び出力ユニットが、第1ギアの軸心に直交する方向の両側が開口するセンターカバーに覆われ、そのセンターカバーの両側の開口が一対のサイドカバーにより覆われる。また、シャフトは、センターカバーの両側の開口まで延出されているので、シャフトと各カバーとによって、第1ギア及び第2ギアが覆われる空間と、出力ユニットが覆われる空間とを遮蔽することができる。よって、第1ギア及び第2ギアが覆われる空間と、出力ユニットが覆われる空間とを遮蔽する板や壁などを別に設ける必要がなくなるので、コスト低減および小規模化を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態である駆動力調整機構60a,60bが搭載された四輪駆動車1について説明する。本実施の形態の駆動力調整機構60a,60bは、原動機10から出力される駆動力を後輪70a,70bにそれぞれ分配するものである。
【0020】
図1は、駆動力調整機構60a,60bが搭載された四輪駆動車1を示した概略図である。なお、図1に示す矢印Xは、四輪駆動車1の前後方向を示しており、矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向を示している。
【0021】
図1に示すように、四輪駆動車1は、内燃機関であり駆動力を発生する原動機10と、その原動機10から連結軸91を介して入力された駆動力を変速部21により変速して出力するトランスミッション20と、そのトランスミッション20から連結軸92を介して入力された駆動力を前後駆動力分配装置分配部31により連結軸96と中央ドライブシャフト94とに分配する前後駆動力分配装置30と、その前後駆動力分配装置30によって連結軸96に分配された駆動力を前側ドライブシャフト93a,93bに分配する前輪デファレンシャルギヤ部32と、その前輪デファレンシャルギヤ部32で前側ドライブシャフト93a,93bに分配された駆動力が伝達されて回転動作する一対の前輪40a,40bと、前後駆動力分配装置30によって中央ドライブシャフト94に分配された駆動力が伝達され、その伝達された駆動力を後側ドライブシャフト95a,95bに分配する駆動力分配機構50と、その駆動力分配機構50により後側ドライブシャフト95a,95bに分配される駆動力の割合を調整する駆動力調整機構60a,60bと、その駆動力調整機構60a,60bによって後側ドライブシャフト95a,95bそれぞれに調整された駆動力が伝達されて回転動作する一対の後輪70a,70bと、駆動力調整機構60a,60bの各種制御を行う制御装置80とを有して構成されている。なお、駆動力分配機構50と駆動力調整機構60a,60bとは、ケース61の内部に回転可能に固定されている。
【0022】
なお、前輪デファレンシャルギヤ部32は、連結軸96から伝達される駆動力を前側ドライブシャフト93a,93bに分配すると共に連結軸96の回転数を前側ドライブシャフト93a,93bに分配する作動装置である。
【0023】
駆動力分配機構50は、中央ドライブシャフト94と連結される入力ギヤユニット51と、入力ギヤユニット51に対して直交する方向(図1矢印Y方向)に配置される出力ギヤユニット52とを有して構成されている。よって、駆動力分配機構50は、入力ギヤユニット51に入力された駆動力を、出力ギヤユニット52により分配し、駆動力分配機構50の左右(図1矢印Y方向両側)に配置された駆動力調整機構60a,60bに駆動力を分配するものである。なお、駆動力分配機構50の詳細な説明は、図3を用いて後述する。
【0024】
駆動力調整機構60a,60bは、駆動力分配機構50の左右(図1矢印Y方向)に対称に設置され、出力ギヤユニット52の両端部にそれぞれ連結されている。なお、駆動力調整機構60a,60bは、駆動力分配機構50の右側(図1矢印Y方向右側)が駆動力調整機構60aであり、駆動力分配機構50の左側(図1矢印Y方向左側)が駆動力調整機構60bである。
【0025】
駆動力調整機構60aは、駆動力の伝達を調整する駆動力調整部100aと、駆動力調整部100aにオイルを送り出すオイル供給機構200aと、そのオイル供給機構200aにより圧送されたオイルの液圧を検出する圧力検出機構300aとを有して構成されている。駆動力調整部100aは、伝達される駆動力の調整をオイル供給機構200aがオイルを送り出すことで発生する液圧により行なわれる。また、その液圧は圧力検出機構300aにより検出され、その圧力検出機構300aの検出結果は制御装置80に入力される。駆動力調整機構60bは、駆動力調整機構60aと同様に構成されており、駆動力調整部100bと、オイル供給機構200bと、圧力検出機構300bとを有して構成されている。なお、駆動力調整機構60a,60bの詳細な説明は、図3から図8を用いて後述する。
【0026】
制御装置80は、圧力検出機構300a,300bからの入力線81a,81bとオイル供給機構200a,200bへの出力線82a,82bとが接続されるI/Oポート83と、主に液圧の情報に基づきオイル供給機構200a,200bを制御する圧力制御プログラム87と、その圧力制御プログラム87が書き込まれた記憶装置であるROM84と、その圧力制御プログラム87に基づき演算する演算装置であるCPU85と、I/Oポート83とROM84とCPU85とを電気的に接続する接続回路であるバスライン86とを有して構成されている。なお、本実施の形態では、制御装置80は、圧力検出機構300a,300bの検出結果に基づき、駆動力調整部100a,100bが作動するために必要なオイルを供給するオイル供給機構200a,200bを個別にフィードバック制御している。
【0027】
次に、図2を参照して、駆動力調整機構60b及び駆動力分配機構50の外観について説明する。図2は、駆動力調整機構60bと駆動力分配機構50とを拡大して示した側面図である。なお、図2に示す矢印Xは、四輪駆動車1の前後方向を示しており、矢印Zは、四輪駆動車1の上下方向を示している。
【0028】
駆動力調整機構60bは、上述したように、駆動力の伝達を調整する駆動力調整部100b(図1参照)と、駆動力調整部100bにオイルを送り出すオイル供給機構200bと、そのオイル供給機構200bより圧送されたオイルの液圧を検出する圧力検出機構300b(図1参照)とを有して構成されている。
【0029】
オイル供給機構200bは、ケース61の外部であり、駆動力調整機構60bの下方(駆動力調整機構60bの図2矢印Z方向下方)に配置されている。また、オイル供給機構200bは、そのオイル供給機構200bにより駆動力調整部100bに供給されたオイルがその駆動力調整部100bから自然落下により排出され、再度、オイル供給機構200bに溜まる構成となっている。
【0030】
なお、オイル供給機構208bから駆動力調整部100bにオイルを供給する通路および駆動力調整部100bからオイル供給機構200bにオイルが排出される通路は、ケース61に一体形成された通路形成部61b内に形成される。また、電動モータ201b(図6参照)は、通路形成部61bに取り付けられる。
【0031】
さらに、後述するが、本実施の形態では、オイル供給機構200bにオイル貯留室204b(図6参照)が設けられるので、従来のオートマチックトランスミッションやトランスファーケースの例にあるように、オイル貯留室がオイル供給機構200bの下方に配置される場合に比べてオイルを吸い上げて溜める仕事が不要になり、オイルを送り出す効率を向上することができる。
【0032】
なお、駆動力分配機構50は、後述するが、ハイポイドギヤを使用して駆動力を分配しているため、駆動力調整部100の回転軸心Pと駆動力分配機構50の回転軸心Tの延長線とは、交わらない構成となっている。
【0033】
次に、図3を参照して、駆動力分配機構50の構成と、駆動力調整機構60a,60bの構成の概略とを説明する。図3は、図2のIII−III線における駆動力分配機構50と駆動力調整機構60a,60bとの断面図である。なお、図3においては、断面線を省略して図示してある。また、図3において、矢印Xは、四輪駆動車1の前後方向であり駆動力分配機構50の回転軸心T方向を示しており、矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向であり駆動力調整部100a,100bの回転軸心P方向を示している。
【0034】
まず、駆動力分配機構50について説明する。上述したように、駆動力分配機構50は、中央ドライブシャフト94(図1参照)により伝達される駆動力の向きを変え、その駆動力を、四輪駆動車1の左右(図1矢印Y方向)それぞれに配置されている駆動力調整機構60a,60bに分配するものである。
【0035】
図3に示すように、駆動力分配機構50は、中央ドライブシャフト94(図1参照)により伝達された駆動力が入力される入力ギヤユニット51と、その入力ギヤユニット51に対して直交する方向(図3矢印Y方向)に配置され、入力ギヤユニット51に入力された駆動力を出力する出力ギヤユニット52とを有して構成されている。
【0036】
入力ギヤユニット51は、入力ギヤユニット51が有するハイポイドギヤ53に出力ギヤユニット52が有するハイポイドギヤ54が嵌合されることで出力ギヤユニット52に連結され、中央ドライブシャフト94(図1参照)により伝達された駆動力を出力ギヤユニット52へ伝達するものである。
【0037】
出力ギヤユニット52は、ハイポイドギア54の内周部にシャフト56が連結されており、そのシャフト56のさらに内側に配設される駆動力調整機構60a,60bに駆動力を分配するものである。
【0038】
よって、駆動力分配機構50は、ハイポイドギア53,54により入力ギヤユニット51と出力ギアユニット52とが連結され、その出力ギアユニット52と駆動力調整機構60a,60bとが連結されるので、中央ドライブシャフト94(図1参照)により入力ギヤユニット51に入力された駆動力を駆動力調整機構60a,60bに分配することができる。
【0039】
なお、入力ギヤユニット51と出力ギヤユニット52とは、ベアリングB1を介してケース61に回転可能に固定されている。よって、入力ギヤユニット51に入力された駆動力は、入力ギヤユニット51とケース61との摺動抵抗、及び、出力ギヤユニット52とケース61との摺動抵抗による大きな損失を受けることなく出力ギヤユニット52へ伝達することができる。
【0040】
次に、駆動力調整機構60a,60bの構成の概略について説明する。駆動力調整機構60a,60bは、上述したように、駆動力の伝達を調整する駆動力調整部100a,100bと、駆動力調整部100a,100bにオイルを送り出すオイル供給機構200a,200b(図1参照)と、そのオイル供給機構200a,200bより送り出されたオイルの液圧を検出する圧力検出機構300a,300b(図1参照)とを有して構成されている。
【0041】
また、駆動力調整部100a,100bは、駆動力分配機構50の出力ギヤユニット52により入力される駆動力が伝達される割合を調整する接続機構101a,101bと、その接続機構101a,101bに与える押圧力を増幅するカム機構131a,131bと、そのカム機構131a,131bに押圧力を与えるピストン機構151a,151bと、カム機構131a,131bにピストン機構151a,151bとは逆の付勢力を与えるリリース機構171a,171bとを有して構成されている。
【0042】
また、駆動力分配機構50及び駆動力調整部100a,100bは、ケース61により覆われており、そのケース61は、駆動力分配機構50及び駆動力調整部100a,100bの略全体を覆い両側(図3矢印Y方向両側)に開口が形成されたセンターカバー65と、そのセンターカバー65の開口を多うサイドカバー66a,66bとで構成されている。つまり、センターカバー65内に、入力ギアユニット51、出力ギアユニット52及び駆動力調整部100a,100bを組み付けた後に、サイドカバー66a,66bが組み付けられて、駆動力分配機構50及び駆動力調整部100a,100bの組み付けが行われる。
【0043】
なお、図2から解るように、サイドカバー66bは、略円筒形に形成されており、サイドカバー66bをセンターカバー65に螺着するボルトBの隣合う間隔が角度aずつ離されて配置されている。図示しないが、サイドカバー66aも、サイドカバー66bと同様に、サイドカバー66aをセンターカバー65に螺着するボルトBの隣合う間隔が角度aずつ離されて配置されている。さらに、図3から解るように、サイドカバー66a,66bは、略同一形状に形成されている。よって、サイドカバー66a,66bは、共通部品化することができるので、部品点数を削減でき、コスト低減を図ることができる。
【0044】
また、シャフト56は、駆動力調整部100a,100bの回転軸心P方向の長さが、センターカバー65より長く形成されており、センターカバー65の両側をサイドカバー66a,66bで覆うことにより、ハイポイドギヤ53,54が配設される空間(センター空間)と、駆動力調整機構60a,60bが覆われる空間(シャフト空間)とを遮蔽可能に構成されている。よって、シャフト56は、ハイポイドギヤ53,54が配設される空間と、駆動力調整機構60a,60bが覆われる空間とを遮蔽する遮蔽部材として作用するので、遮蔽部材を別に取り付ける必要がなくなり、小規模化および低コスト化を図ることができる。
【0045】
次に、図4及び図5を参照して、駆動力調整機構60a,60bのうち駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aについて説明する。なお、図4及び図5の説明においては、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aについて説明し、駆動力調整機構60bの駆動力調整部100bは、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aと同様に構成されているため、その詳細な説明は省略する。
【0046】
図4は、図3のA部分を拡大した断面図であり、駆動力調整機構60aの一部である駆動力調整部100aとケース61(センターカバー65とサイドカバー66a)の一部とを示している。図5は、カム機構131aの概略を示した図であり、(a)は、カム機構131aの側面図であり、(b)は、図5(a)のVb−Vb線におけるカム機構131aの断面図である。
【0047】
また、図4に示す矢印Xは、四輪駆動車1の前後方向であり駆動力分配機構50の回転軸心T方向を示しており、矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向であり駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aの回転軸心P方向を示しており、図5に示す矢印Rは、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aの回転軸心Pを中心とする円周方向(図2紙面垂直方向)を示している。
【0048】
まず、駆動力調整部100aの接続機構101a(図3参照)について詳細に説明する。図4に示すように、接続機構101aは、シャフト56の内側(回転軸心Pに向かう方向)に連結される複数のドライブプレート106a(本実施の形態では8個)と、その複数のドライブプレート106aの間に交互に一枚ずつ配置される複数のドリブンプレート107a(本実施の形態では8個)と、そのドリブンプレート107a及びドライブプレート106aに隣接して配置され、駆動力調整部100aの回転軸心P方向に並列される各プレート106a,107aの最も外側(矢印Y方向左側)に固定されるクラッチリテーナ108とを有して構成されている。なお、クラッチリテーナ108は、接続機構101bと共通に使用される。
【0049】
ドライブプレート106aは、略円板形状の板であり、ドライブプレート106aの外縁に形成される略台形形状の複数のドライブプレート突起部110aと、シャフト56の内側面に形成される略台形状の複数のシャフト溝部56aとによりスプライン継ぎ手が形成されており、シャフト56に内嵌されている。
【0050】
ドリブンプレート107aは、略円板形状の板であり、ドリブンプレート107aの内側面に形成されるドリブンプレート突起部111aと、シャフト113aの一部に成型されるスプライン溝部112aとによりスプライン継ぎ手が形成され、シャフト113aに外嵌されている。
【0051】
なお、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとは、後述するカム機構131aのメインカム132aからの押圧力を受けることで、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの微小な隙間を詰めながらクラッチリテーナ108に動きを規制されるまで、駆動力調整部100aの回転軸心P方向左側(図4矢印Y方向左側)に動作可能に構成されている。
【0052】
よって、後述するカム機構131aのメインカム132aからの押圧力をドライブプレート106aとドリブンプレート107aとが受けてドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間が詰められると、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に摩擦力が発生する。そのドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に発生する摩擦力は、カム機構131aのメインカム132aからの押圧力に応じて増加され、その押圧力に応じた駆動力がドライブプレート106aからドリブンプレート107aへと伝達される。その結果、シャフト56からシャフト113aへ伝達される駆動力の割合が調整される。
【0053】
次に、駆動力調整機構100aのカム機構131a(図3参照)について詳細に説明する。カム機構131aは、シャフト56から伝達される駆動力を利用した増幅機構であり、駆動力調整部100の回転軸芯P方向(図4矢印Y方向)においてクラッチリテーナ108と対向する位置に配置されている。
【0054】
また、カム機構131aは、後述するピストン機構151aにより押圧される複数(本実施の形態では2枚)のプライマリードライブプレート135aと、そのプライマリードライブプレート135aの間に配置されるプライマリードリブンプレート136aと、そのプライマリードリブンプレート136aに連結されるプライマリーカム133aと、シャフト113aに連結されるメインカム132aと、プライマリーカム133aとメインカム132aとに狭持される複数(本実施の形態では6個)のボール134aと、プライマリーカム133aに隣接するベアリングB2aとを有して構成されている。
【0055】
プライマリードライブプレート135aは、略円板形状の板であり、プライマリードライブプレート135aの外縁に形成される略台形状の複数のプライマリードライブプレート突起部137aと、シャフト56の内側面に形成される略台形状の複数のシャフト溝部56aとによりスプライン継ぎ手が形成され、シャフト56に内嵌されている。
【0056】
なお、ドライブプレート突起部110aとプライマリードライブプレート突起部137aとは同形状に形成されている。よって、ドライブプレート突起部110a及びプライマリードライブプレート突起部137aが内嵌されるシャフト溝部56aも同形状になる。よって、シャフト56のシャフト溝部56aを同一形状に製作でき諸元を統一できるので、シャフト56の製作が複雑にならず、製作効率を向上することができる。
【0057】
プライマリードリブンプレート136aは、略円板形状の板であり、プライマリードリブンプレート136aの内側面に形成されるプライマリードリブンプレート突起部138aと、プライマリーカム突起部139aとによりスプライン継ぎ手が形成され、プライマリーカム133aに外嵌されている。
【0058】
よって、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aは、後述するピストン機構151aからの押圧力を受けることでプライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの微小な隙間を詰めながら駆動力調整部100aの回転軸心Pの軸心方向左側(図4矢印Y方向左側)に動作可能に構成されている。また、プライマリードライブプレート135aは、シャフト56に内嵌されるスナップリングS2aにより、シャフト56に対して駆動力調整部100aの回転軸心Pの軸心方向左側(図4矢印Y方向左側)への動きが規制されている。
【0059】
このように、後述するピストン機構151aからの押圧力をプライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとが受けて、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの隙間が詰まると、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの間に摩擦力が発生する。
【0060】
そのプライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの間に発生する摩擦力は、ピストン機構151aからの押圧力に応じて増加され、その押圧力に応じた駆動力がプライマリードライブプレート135aからプライマリードリブンプレート136aへと伝達される。その結果、プライマリーカム133aへ伝達される駆動力の割合が調整される。
【0061】
また、プライマリーカム133aのメインカム132aに対向する面には、プライマリーカム溝部141aが形成されており、メインカム132aのプライマリーカム133aに対向する面には、メインカム溝部142aが形成されている。このプライマリーカム溝141aとメインカム溝142aとの間に、ボール134aが挟持されている。
【0062】
ここで、図4及び図5を参照して、プライマリーカム133aとメインカム132aとボール134aとの詳細な構成及び動作について説明する。なお、図5(a)は、図4の左側(図4矢印Y方向左側)から右側(図4矢印Y方向右側)を見た状態が図示されている。
【0063】
図5(a)に示すように、プライマリーカム133aは、略環状の部材であり、メインカム132aと対向する面(図5(a)に示すプライマリーカム133aにおいて紙面垂直方向奧側の面)に環状のプライマリーカム溝部141aが形成されている。
【0064】
また、メインカム132aは、略環状の部材であり、プライマリーカム133aと対向する面(図5(a)に示すメインカム132aにおいて紙面垂直方向視手前側の面)に環状のメインカム溝部142aが形成されている。
【0065】
プライマリーカム溝部141aとメインカム溝部142aとは、同形状に形成されており、そのプライマリーカム溝部141aとメインカム溝部142aとの間にボール134aが複数個(本実施の形態では6個)収容されている。
【0066】
また、メインカム132aの内周面には、メインカム突起部144aが形成されており、そのメインカム突起部144aとシャフト113aの一部に成型されるスプライン溝部112a(図4参照)とによりスプライン継ぎ手が形成される。
【0067】
なお、上述したドライブプレート突起部110aと、メインカム突起部144aとは同形状に形成されており、シャフト113aの一部に成型されるスプライン溝部112aも同形状に形成されるので、シャフト113aのスプライン溝部112aの諸元を統一でき、シャフト113aの製作が複雑にならず、製作効率をより向上することができる。
【0068】
次に、図5(b)を参照して、プライマリーカム133aに駆動力が伝達された時のメインカム132aと、プライマリーカム133aと、ボール134aとのそれぞれの動作について説明する。図5(b)に示すように、メインカム溝部142aとプライマリーカム溝部141aとは、溝部の深さが円周方向(図5(b)矢印R方向)に緩やかに変化している。
【0069】
また、図5(b)において、プライマリーカム133aの実線で示されている状態が、プライマリーカム133aにシャフト56からの駆動力が伝達されていない時の位置であり、ボール134aは、プライマリーカム溝部141aとメインカム溝部142aとの深い部分に収容されている。
【0070】
なお、後述するリリース機構171aの説明のため、この位置を基準位置と称す。また、プライマリーカム133aが基準位置にある場合のメインカム132aとの距離は、駆動力調整部100aの回転軸心P方向(図5(b)矢印Y方向)において幅L1となる。
【0071】
図5(b)において、プライマリーカム133aの破線で示されている状態が、プライマリーカム133aにシャフト56からの駆動力が伝達された時の位置であり、プライマリーカム133aがメインカム132aに対して円周方向(図5(b)矢印R方向右側)に移動している。この状態では、ボール134aは、プライマリーカム133aへ駆動力が伝達されていない時(実線で示した状態、基準位置)に比べて浅い部分に収容されている。
【0072】
なお、後述するリリース機構171aの説明のため、この位置を作動位置と称す。また、プライマリーカム133aが作動位置にある場合のメインカム132aとの距離は、駆動力調整部100aの回転軸心P方向(図5(b)矢印Y方向)において幅L2となる。
【0073】
図5(b)に示すように、プライマリーカム133aとメインカム132aとの幅は、幅L1に比べて幅L2の方が広くなっている。これは、プライマリーカム133aに伝達される駆動力により、プライマリーカム133aがメインカム132aに対して駆動力調整部100aの回転軸心Pを中心に回転した場合に、ボール134aが各溝部141a,142aの深さが浅い部分まで転がり、プライマリーカム133aとメインカム132aとの幅が広がるからである。その結果、プライマリーカム133aとメインカム132aとの間に、押圧力とその押圧力に対する反力とが発生する。また、その押圧力は、ピストン機構151aにより発生される押圧力の数十倍(本実施の形態では略20倍)に増幅されている。
【0074】
このように、カム機構131a(図3参照)は、ピストン機構151a(図3参照)によって発生された押圧力を簡単な構成で増幅できる。よって、ピストン機構151a(図3参照)は小さな押圧力を発生するだけで、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとを押しつける大きな押圧力が得られる。
【0075】
また、ピストン機構151a(図3参照)の押圧力は、カム機構131a(図3参照)によって増幅されるので、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとを押しつけている力の略20分の1でよい。すなわち、カム機構131aを省略してピストン機構151aにて直接ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとを押さえつける場合に比べて、オイルポンプ202aにより発生すべき圧力値を小さく設定することができる。
【0076】
よって、オイルポンプ202aを駆動させる電動モータ201aを小型化でき、駆動力調整機構60a(図1参照)の軽量化を図ることができる。さらに、電動モータ201aの消費電力を押さえることができるので車載された発電装置(図示せず)を小型化でき、四輪駆動車1の軽量化を図ることができる。また、電動モータ201aの消費電力が小さくなるので、その消費電力より大きな消費電力となる電動モータ201aを用いることができ、それにより、モータの選択肢が増える。その結果、流通量が多く価格が低いモータを選択することも可能となりコスト削減を図ることができる。
【0077】
また、カム機構131a(図3参照)は、シャフト56(図4参照)とシャフト113a(図4参照)との回転速度差によって接続機構101a(図3参照)を押しつける方向(図3矢印Y方向)に広がる。即ち、シャフト56(図4参照)とシャフト113a(図4参照)との回転速度差が大きいほど、カム機構131a(図3参照)が接続機構101a(図3参照)に向かって広がる速度が速くなる。
【0078】
よって、シャフト56(図4参照)とシャフト113a(図4参照)との回転速度差を大きく設定すれば、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間を広く設定したとしても、駆動力調整機構60a(図1参照)の応答性を損なうことがない。従って、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間を広く設定して引きずりを低減させつつ駆動力調整機構60a(図1参照)の応答性を確保することができる。
【0079】
また、カム機構131a(図3参照)を介してドライブプレート106a(図4参照)とドリブンプレート107a(図4参照)との隙間を詰めているので、ピストン機構151a(図3参照)は、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの隙間のみを詰めれば良い。よって、ピストン機構151a(図3参照)に対してオイル供給機構200a(図6参照)から送り出されるオイル量が少なくてもシャフト56(図4参照)からの駆動力をシャフト113a(図4参照)に伝えることができる。従って、オイル供給機構200aに設けられるオイルポンプ202a(図6参照)を小型化することができるので、駆動力調整機構60a(図1参照)の軽量化を図ることができる。
【0080】
次に、引きずりについて説明する。引きずりとは、メインカム132aが押圧力を発生しておらず、且つ、メインカム132aが作動位置から基準位置に戻りきってないときに発生する現象である。具体的には、ドライブプレート106aと、ドリブンプレート107aとの間に介在するオイルによって、ドリブンプレート107aがドライブプレート106aに張り付き、ドリブンプレート107aがドライブプレート106aに引きずられて回転する現象のことである。また、引きずりは、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの回転により軸方向へ動きが変動し、接触することでも発生する。
【0081】
リリース機構171aは、メインカム132aのドライブプレート106aに対向する面に形成される溝内に配設されており、コイルバネで構成されている。なお、リリース機構171aは、コイルバネに代えて皿バネで構成しても良いし、他の弾性部材を用いて構成しても良い。
【0082】
リリース機構171aは、メインカム132aが基準位置に向かって移動するようにメインカム132aを、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a、クラッチリテーナ108から離間する方向に(図4矢印Y方向右側)に付勢しており、複数のドライブプレート106aと、複数のドリブンプレート107aとの引きずりを低減させるものである。よって、メインカム132aが、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a、クラッチリテーナ108側(図4矢印Y方向左側)に移動すると、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a、クラッチリテーナ108から離間する方向(図4矢印Y方向右側)への付勢力が発生する。
【0083】
また、リリース機構171aは、メインカム132aとドライブプレート106aとに働くオイルの粘着力と、メインカム132aの内周面に形成されるメインカム突起部144aとシャフト113aに形成されるスプライン溝部112aとの摩擦力と、ボール134aの転がり抵抗力とプライマリードライブプレート135a及びプライマリードリブンプレート136aの引きずりにより発生されるメインカム132aの反力とをあわせた力を上回る付勢力を発生するように構成されている。
【0084】
つまり、リリース機構171aには、上記複数の力より大きな付勢力を発生するばね定数や初期荷重が設定されている。その結果、カム機構131aからの押圧力の供給がなくなると、リリース機構171aの付勢力によりメインカム132aは作動位置から基準位置に向かって移動し、ドライブプレート106aとメインカム132aとの引きずりを低減することができる。従って、引きずりによって余分な駆動力がシャフト56からシャフト113aに伝達されることを低減することができる。
【0085】
上述したように、本実施の形態では、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとは、後述するピストン機構151a(図3参照)により発生される押圧力によって摩擦力が発生する。そのプライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの間に発生する摩擦力によってシャフト56から伝達される駆動力をカム機構131a(図3参照)により増幅し、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に摩擦力を発生させる構成となっている。即ち、ピストン機構151aの押圧力によって、各プレート135a,136a,106a,107aとの間に摩擦力を発生させることができる。
【0086】
また、ピストン機構151a(図3参照)は、ピストン室154a内に発生する圧力の上昇によってピストン本体153aをプライマリードライブプレート135a及びプライマリードリブンプレート136aの方向(図4矢印Y方向)に移動して押圧力を発生する為、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの間に隙間を設定して引きずりを低減させることができる。
【0087】
これに対し、電磁力により押圧力を発生させ各プレート135a,136a,106a,107aとの間に摩擦力を発生させる方法があるが、この方法は、電磁力を発生させるためにコイルを通電し、アーマチャと呼ばれる部材の内部に磁束を発生させ、そのアーマチャをコイルが引きつけることで、押圧力を発生させることができる。即ち、アーマチャとコイルとの間に複数のプレート(本実施の形態では、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとを示す。)を配置し、アーマチャをコイルがひきつける力を複数のプレートの押圧力とし、その押圧力によりプレートとプレートとの間に摩擦力を発生させる構成となる。
【0088】
この電磁力により押圧力を発生させる方法は、オイルの液圧を使用しないため、オイルの粘度の影響を受けにくい特徴があるが、その代わりに、アーマチャとコイルの間には磁束を通す必要がある。そのため、電磁力を使って押圧力を発生する方法は、磁束を通す部材(主に鉄)のみを用いて複数のプレートを構成しなければならない。
【0089】
また、磁束を強く安定させるために、上述した複数のプレート(本実施の形態では、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとを示す。)とアーマチャとは常時接触させておく必要がある。その結果、プレートの引きずりが発生しその引きずりによってカム機構132aはスラスト力(図4矢印Y方向の力)を発生する。それにより、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間が詰まりさらに引きずりが発生する。そのため、リリース機構171aには、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間を詰めないように、そのスラスト力分の押圧力に勝るばね定数や初期荷重を設定する必要があり、リリース機構171aが大型化する。
【0090】
しかし、本実施の形態では、ピストン機構151aの押圧力によって摩擦力を発生させる構成であるので、磁束を通す部材でプレートを構成しなくても良い。よって、透磁性のない材料(金属以外の材料)を使うことができる。そこで、本実施の形態では、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136a、及び、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aは、透磁性のないペーパー材を用いて構成されている。
【0091】
このペーパー材は、金属材料を使った部材に比べて耐ジャダー性が良好な材料であるので、各プレート135a,136a及び106a,107aの摩擦面に金属材料を使ったプレートを使用する場合に対して、耐ジャダー性向上を目的とするプレートの表面形状の最適化や、プレートの表面処理による摩擦特性の安定化などの特殊加工や、摩擦特性を改善するための特殊オイルの使用などを行う必要がなくなる。その結果、プレートの表面形状の最適化や、プレートの表面処理による摩擦特性の安定化などの特殊加工を行うことによる製作工程の追加や、オイルに添加剤を追加しなくてよいので、製作工程におけるコスト削減を図れると共にランニングコスト削減を図ることができる。
【0092】
また、磁束により押圧力を発生しないので、磁束を強く安定させる必要がなく、複数のプレート(本実施の形態では、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとを示す。)の間に隙間を持たせることができる。よって、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの引きずりにより、カム機構132aがスラスト力を発生させドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間が詰まることがないので、スラスト力分の押圧力に勝るばね定数や初期荷重を設定する必要がなく、リリース機構171aが大型化することを防止することができる。
【0093】
また、電磁力を使って発生される押圧力と、オイルの液圧により発生される押圧力および駆動力によって増幅される押圧力とを混在しないので、プレートの材料の統一やオイル室の1室化及び同種オイルの使用が可能となり、コスト削減、部品管理工数削減および組み立て工数削減を図ることができる。
【0094】
以上のように、本実施の形態では、オイルの液圧により発生される押圧力、及び、駆動力によって増幅される押圧力を用いるので、電磁力を使って発生される押圧力を用いる場合に比べて、プレートの材料の選択範囲が広くなり、耐ジャダー性が良好なペーパー材を選択し、プレートの表面形状の最適化のための特殊加工や摩擦特性を改善する為の特殊オイルの使用の必要性がなくなる。さらに、引きずりが発生しづらいので小さな駆動力を伝達する場合の駆動力の制御精度を向上させることができる。
【0095】
次に、ピストン機構151a(図3参照)について説明する。図4に示すように、ピストン機構151aは、オイル供給機構200a(図2参照)から送られてくるオイルの液圧により、押圧力を発生し、その押圧力をカム機構131a(図3参照)に伝達する機構であり、オイル供給機構200aから送られてくるオイルで満たされるピストン室154aと、オイル供給機構200aから送られてくるオイルの液圧により押圧力を発生させるピストン本体部153aと、ピストン本体部153aに外嵌されるシリンダー部152aと、ピストン室154aに満たされたオイルに混入した気体(空気)を放出するステムブリーダ155a(図6参照)と、ピストン本体部153aに対して駆動力調整部100aの回転軸心Pを中心として回転しているカム機構131aにピストン本体部153aからの押圧力を円滑に伝達するベアリングB3aとを有して構成されている。
【0096】
ピストン室154aは、略環形状をしたピストン本体部153aが略環形状をしたシリンダー部152aに内嵌されることにより形成される空間であり、オイル供給機構200a(図2参照)から送られてくるオイルで満たされている。そのピストン室154aの上部(図6矢印Z方向上部)には、ピストン本体部153aの上部に形成される貫通孔であるステムブリーダ155aが配設されており、ピストン室154aは、オイル回収室64aとステムブリーダ155aを介して連通されている。よって、オイル供給機構200aからピストン室154aへ送られてきたオイルは、そのオイルに混入した気体(空気)と共にオイル回収室64aへと放出される。
【0097】
ステムブリーダ155aは、主にオイルに混入した気体(空気)をオイル回収室64aへ放出するものであり、オイルに混入した気体(空気)を通り易く、オイルを通り難くするために環状の隙間形状としてされている。このステムブリーダ155aの詳細な説明は、図6及び図7を参照して後述する。
【0098】
ベアリングB3aは、ピストン本体部153a(図3参照)と、カム機構131a(図3参照)との間に隣接して配置されおり、カム機構131aは、シャフト56の回転に伴って回転するのでピストン本体部153aに対して回転している。即ち、ベアリングB3aは、回転差による抵抗を発生させないように作動しており、ピストン本体部153aから伝達される押圧力は、カム機構131aに円滑に伝達されている。
【0099】
また、ピストン本体部153a(図3参照)から伝達される押圧力は、カム機構131a(図3参照)により増幅されるため、カム機構131aを有さない場合に比べて、そのピストン本体部153aから伝達される押圧力を十分小さくすることができる。よって、カム機構131aを有さない場合に比べて、ベアリングB3aを低負荷のものにすることができ、ベアリングB3aの選択肢が増えコスト削減を図ることができる。
【0100】
ここで、図4の他の構成について説明する。図4に示すように、センターカバー65の駆動力調整部100a側の内壁には、その内壁の一部から突起した一対の規制壁161aが形成されている。この規制壁161aは、ピストン本体部153aの回転方向Rへの回動を規制するために設けられている。この規制壁161aの詳細な説明については図7を参照して後述する。
【0101】
また、サイドカバー66aとシャフト56の外側との間には、オイルシール121aが配設されている。このオイルシール121aによって、シャフト56により覆われる空間(シャフト空間)と、センターカバー65により覆われる空間(センター空間)とを遮蔽することができる。よって、シャフト56により覆われ駆動力調整部100aを潤滑される潤滑油と、センターカバー65により覆われピニオンギア53,54を潤滑する潤滑油とを異なる種類とすることができ、駆動力調整部100a及びピニオンギア53,54に適した潤滑油を使用することができる。
【0102】
次に、図6を参照して、オイル供給機構200aの詳細な構成ついて説明する。図6は、図2のVI−VI線における駆動力調整機構60aを示した断面図である。なお、図6においては、接続機構101a、カム機構131a及びリリース機構171aに関係する符号は省略して図示する。また、図6に示す矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向であり駆動力調整部100aの回転軸心P方向を示しており、矢印Zは、四輪駆動車1の上下方向を示している。
【0103】
図6に示すように、オイル供給機構200aは、駆動力調整部100aにオイルを送り出すものであり、電動モータ201aと、その電動モータ201aにより駆動されるオイルポンプ202aと、そのオイルポンプ202aにより送り出されるオイルが貯留されるオイル貯留室204aと、電動モータ201aとオイルポンプ202aとの間でオイル貯留室204aの壁部を形成する電動モータ凸部203aとを有して構成されている。
【0104】
図6に示すように、電動モータ201aと、電動モータ凸部203aと、オイルポンプ202aとは、駆動力調整部100aの回転軸心P方向(図6矢印Y方向)に隣接して配置されている。なお、オイル貯留室204aは、電動モータ凸部203aの一方の端面(図6矢印Y方向左側の面)に密接される電動モータ201aと、電動モータ凸部203aの他方の端面(図6矢印Y方向右側の面)に密接されるオイルポンプ202aと、電動モータ凸部203aとに囲まれて形成されている空間である。即ち、電動モータ201aとオイルポンプ202aとがオイル貯留室204aの壁部を兼ねている。
【0105】
また、電動モータ201aは、回転力を出力する円柱形状の軸であるモータ軸部207aを有している。そのモータ軸部207aは、オイル貯留室204aを貫通してオイルポンプ202aと連結している。即ち、オイル貯留室204aの空間の一部にモータ軸部207aを配置し、電動モータ201aとオイルポンプ202aとが最短距離(直線上)で接続されている。よって、オイル貯留室204aの外部にモータ軸部207aを配置する場所を省略でき、電動モータ201aと電動モータ凸部203aとオイルポンプ202aとで構成される装置を小型化することができる。
【0106】
また、オイル貯留室204aは、オイルポンプ202aと水平な位置に隣接して配置されているので、例えば、オイル貯留室がオイルポンプ202aから離れた下方に配置され、その下方に配置されたオイル貯留室から吸い上げ通路を介してオイルを吸い上げる場合に比べて、オイルを吸い上げる仕事と通路内の管路抵抗とを削減することができる。
【0107】
また、オイルポンプ202aは、左側(図6矢印Y方向左側の面)にポンプ吸入口205aを配置すると共に、右側(図6矢印Y方向右側の面)にポンプ吐出口206aを配置している。即ち、オイル供給機構200aは、オイル貯留室204aからオイルを送り出す際にはオイルの送られる方向が直線方向となるので、管路抵抗の影響を受けにくく、効率よくオイルを送り出すことができる。
【0108】
また、電動モータ凸部203aは、オイルポンプ202aと同じ直径を有する略円筒形状の部材であり、オイル回収穴208aとポンプ内壁209aとを有している。オイル回収穴208aは、電動モータ凸部203aの上部(図6矢印Z方向上部)に設置される貫通孔であり、回収通路210aを介してオイル回収室64aに連結されている。また、ポンプ内壁209aは、オイル回収穴208aに連成される電動モータ凸部203aの内側の壁であり、オイル回収穴208aに向かって上昇傾斜して形成されている。
【0109】
よって、オイル回収室64aからオイル貯留室204aに気体(空気)を混入したオイルが流入した場合、オイル貯留室204aに気体(空気)を滞留させること無く、オイル回収穴208aへ移送し、回収通路210aを介して気体(空気)だけをオイル回収室64aに戻すことができる。
【0110】
さらに、ポンプ吸入口205aは、オイル貯留室204aの深部(図6矢印Z方向下部)に設置されている。よって、オイル貯留室204aの深部まで到達する気体(空気)の割合は非常に少ないので、気体(空気)がオイル貯留室204aに滞留している間でも、その気体(空気)がポンプ吸入口205aからオイルポンプ202aへ流入されることを非常に少なくすることができる。
【0111】
このように、混入した気体(空気)は、オイル回収室64aへ排出されやすく、且つ、オイルポンプ202aに流入し難いので、オイルポンプ202aにオイルと気体(空気)が混入したときに発生する異音を押さえることができると共に、オイルポンプ202aが送り出すオイルに気体(空気)が混入し難く、ダンパー効果を低減し、オイルポンプ202aによって発生されるオイルの液圧を早期に所望の液圧(ピストン機構151aを押圧するのに必要な液圧)にまで上昇させることができる。
【0112】
オイルポンプ202aと、電動モータ凸部203aとは同じ直径を有する略円柱形状の部材であり、ケース61の外縁に形成される凹部挿入孔213aに一体となって内嵌され、電動モータ201aをケース61に対して固定することによりオイルポンプ202aは電動モータ凸部203aによりケース61に押さえつけられて固定される。
【0113】
このように、電動モータ201aと、電動モータ凸部203aと、オイルポンプ202aとは水平方向(図6矢印Y方向)に隣接して配置されており、且つ、電動モータ201aと、電動モータ凸部203aとの直径が同一なので、電動モータ201aと、電動モータ凸部203aとを凹部挿入孔213aへ重ねて挿入でき、且つ、簡単に組みつけができる。
【0114】
また、電動モータ201aと電動モータ凸部203aとオイルポンプ202aとを回転軸心P方向に隣接して一体に形成しているので、オイル供給機構200aを小型化することができるだけでなく、電動モータ201aと電動モータ凸部203aとオイルポンプ202aとを組み合わせて他の装置に簡単に取り付けて使用することができる。よって、電動モータ201aと電動モータ凸部203aとオイルポンプ202aとが一体に形成された装置の汎用性を高めることができる。
【0115】
オイル供給機構200aは、気体(空気)が混入した循環後のオイルを回収し、気体(空気)を分離してから、そのオイルをピストン機構151aに送り出している。しかし、オイルに混入している気体(空気)を完璧に取り除くことは非常に難しい。そこで、ピストン機構151aは、オイルに混入している気体(空気)を取り除くために、ピストン室154aの上部(図6矢印Z方向上部)にステムブリーダ155aを配置している。
【0116】
よって、気体(空気)が混入したオイルがピストン機構151aに送り出された場合でも、気体(空気)はピストン室154aの上部に自然に移送され、そのピストン室154aに溜まった気体(空気)は、ステムブリーダ155aからオイルと一緒にオイル回収室64aへ排出される。
【0117】
このように、ピストン室154aに気体(空気)が混入したオイルが送られても、その気体(空気)は滞留することなく排出されるので、オイル供給機構200aから送られてくるオイルの液圧を安定してピストン本体部153aの押圧力に変えることができる。
【0118】
また、オイルポンプ202aが停止された状態が長く続くと、ピストン室154a内のオイルはオイルポンプ202aの隙間を通ってオイル回収室64aに徐々に逆流し、ピストン室154a内には、オイルの変わりにステムブリーダ155aを通って気体(空気)が流入する。
【0119】
このように、ピストン室154a内に気体(空気)が流入した状態からピストン室154a内の圧力を所定の圧力まで上昇させる場合には、ピストン室154a内をオイルで充満させる必要があり、オイルが充満されるまでは、気体(空気)が混在しているためピストン室154a内の圧力の上昇が鈍くなる。よって、所定の圧力値になるまでに時間がかかり制御精度が悪化する。
【0120】
ここで、本実施の形態では、電動モータ201aを常時運転させピストン室154a内に常にオイルが供給されるように構成されている。これにより、ピストン室154a内が常にオイルで充満され、ピストン室154aにオイルが充満される時間が省略される。よって、ピストン室154a内の圧力の上昇の遅れが無くなり、制御精度を改善することができる。
【0121】
また、ピストン室154a内の圧力値の大きさは、ピストンシール部材218a,219aの摺動抵抗より大きくしても良い。この場合、ピストン本体153aが押圧力を発生しプライマリープレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの隙間を詰めることができる。よって、ピストン室154aの圧力上昇に遅れることなくプライマリープレート135aからプライマリードリブンプレート136aに駆動力が伝達される。
【0122】
よって、ピストン室154a内の圧力上昇に対する駆動力伝達の応答遅れが無くなり、制御精度を改善しつつ応答性を速くすることができる。
【0123】
さらに、ピストン室154a内の圧力値の大きさを、その圧力値により接続機構101aが発生する押圧力がリリース機構171aの付勢力より小さくなるように設定しても良い。この場合、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとにカム機構131aからの押圧力が作用しないので、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとに引きずりを低減することができる。よって、余分な駆動力がシャフト56(図4参照)からシャフト113a(図4参照)に伝達されることを低減することができる。
【0124】
また、上述したリリース機構171aの付勢力は、量産された場合の下限の付勢力に設定しても良い。この場合、量産品においてもドライブプレート106aとドリブンプレート107aとにカム機構131aからの押圧力が作用しないので、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとに引きずりを低減することができる。よって、量産品においても余分な駆動力がシャフト56(図4参照)からシャフト113a(図4参照)に伝達されることを低減することができる。
【0125】
このように、本実施の形態では、オイルポンプ202aによりピストン室154a内に所定の圧力を常時発生させることにより、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に発生する引きずりを低減させ、余分な駆動力を伝えることなく応答性を向上させることができる。
【0126】
また、図2及び図6に示すように、電動モータ201aは、電動モータ201aの軸心Q方向と駆動力調整部100aの回転軸心P方向とが略並行となるように配置されている。オイル供給機構200aは、駆動力調整部100aから排出されたオイルを再度駆動力調整部100aに送り出すものなので、駆動力調整部100aの下方(図6矢印Z方向下側)に配置される。
【0127】
ここで、駆動力調整機構60aは、四輪駆動車1の下部に位置するので、地面との距離の観点から上下方向(図6矢印Z方向)の厚みを極力小さくすることが好ましい。そこで、本実施の形態では、電動モータ201aを、駆動力調整機構60aに一体的に取り付け、且つ、電動モータ201aの軸心Q方向が駆動力調整部100aの回転軸心P方向と略並行となる位置に配置し、更に、電動モータ201aを駆動力調整機構60aの回転軸心Pの真下(図2における回転軸心Pを通る矢印Z方向下方)ではなく若干外れた位置に設け、駆動力調整機構60aの上下方向の厚みが極端に大きくなることを抑制している。
【0128】
次に、図7を参照して、エアーブリーザ機構について説明する。図7は、ピストン本体部153a近傍の概略を示した図であり、図7(a)は、ピストン本体部153aをカム機構131a側から視た状態の正面図であり、図7(b)は、ピストン本体部153a及びサイドカバー66aの一部のを示した断面図である。
【0129】
なお、図7(a)においては、説明の便宜上、シャフト56の内側に位置するサイドカバー66aのみ図示し、シャフト56の外側に位置するサイドカバー66aの図示は省略してある。
【0130】
また、図7において、矢印Xは、四輪駆動車1の前後方向であり、矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向であり駆動力調整部100a,100bの回転軸心P方向を示しており、矢印Zは、四輪駆動車1の上下方向を示している。
【0131】
図7(a)に示すように、サイドカバー66aの内壁66a1には、その内壁66a1から突起した一対の規制壁161aが配設され、この一対の規制壁161aの間に介挿部162aが形成されている。また、規制壁161aの介挿部162aは、駆動力調整部100aの回転軸心Pを通る垂直線上(図7矢印Z方向の線上)から四輪駆動車1の前進方向(図7(a)矢印X右方向)に所定角度(本実施の形態では30度)ずれた位置に配置されている。
【0132】
ピストン本体部153aには、その外周部から外方(サイドカバー66a方向)に突起した突起部153a1が形成されており、その突起部153a1は、規制壁161aの介挿部162aに介挿して配置されている。
【0133】
よって、上述したように、電動モータ200aによりピストン室154aにオイルが供給され、ピストン本体部153aがプライマリードライブプレート135a(図4参照)を押圧して、そのプライマリードライブプレート135aの回動に伴う引きずりがピストン本体部153aに生じたとしても、突起部153a1が規制壁161aの端面に当接することで、ピストン本体部153aがサイドカバー66aに対して回動することを規制することができる。
【0134】
図7(a)に示すように、サイドカバー66aの内壁66a1であって一対の規制壁161a間および介挿部162aの中央には、ブリーザ穴66a2が形成されている。このブリーザ穴66a2は、サイドカバー66aにより覆われた空間(サイド空間)と外部とを連通する連通孔である。
【0135】
図7(b)に示すように、突起部153a1は、ピストン本体部153a側の押圧面153a2から更にピストン本体部153a側に突出し、且つ、ピストン本体部153aの外周から外方に突出して形成されている。
【0136】
また、サイドカバー66aの内壁には、ブリーザ穴66a2に連通するブリーザ連通路66a3が形成され、サイドカバー66aの外側には、ブリーザ連通路66a3に連通するブリーザ室66a4が配設されている。即ち、ブリーザ穴66a2は、ブリーザ連通路66a3およびブリーザ室66a4を介して外部と連通している。
【0137】
よって、プライマリードライブプレート135aの回動に伴い、そのプライマリードライブプレート135aの回動方向にピストン本体部153aが引きずられて、突起部153a1が規制壁161aの端面に当接したとしても、ブリーザ穴66a2と突起部153a1とは対向して配置される。従って、ブリーザ穴66a2がサイドカバー66aに覆われた空間内に完全に露出することを防止でき、ブリーザ穴66a2の連通を障蔽するプレートとして突起部153a1が機能する。即ち、突起部153a1は、サイドカバー66a内において駆動力調整部100aを潤滑する油がブリーザ穴65a2から外部に流出することを抑制するバッフルプレートとして機能する。よって、ブリーザ穴66a2を覆うプレートが不要になり、そのプレートを取り付けるスペースも不要になるので、コスト低減、軽量化および小規模化を図ることができる。
【0138】
また、ピストン本体部153aにおいてプライマリードライブプレート135aを押圧する部分は、押圧面153a2であり、突起部153a1ではプライマリードライブプレート135aを押圧しないので、突起部153a1は、プライマリードライブプレート135aを押圧可能な強度を持つ必要がない。よって、突起部153a1をピストン本体部153a程厚く形成する必要がないので、小規模化、コスト低減、軽量化を図りつつ、潤滑油がブリーザ穴66a2から流出することを抑制できる。
【0139】
さらに、上述したように、ピストン本体部153aは、シリンダ部152aに内嵌されているが、突起部153a1は、シリンダ部152aから突出し、サイドカバー66aの内壁66a1に対向配置されている。よって、サイドカバー66aの内壁66a1を、突起部153a1に応じた複雑な形状にしなくて良いので、サイドカバー66aの制作性も向上することができる。
【0140】
また、突起部153a1、規制壁161a(及び介挿部162a)、ブリーザ穴66a2は、回転軸心Pを通る垂直線上(図7矢印Z方向の線上)から四輪駆動車1の前進方向(図7(a)矢印X右方向)に所定角度(本実施の形態では30度)ずれた位置に配置されているので、四輪駆動車1の前進側(図7(a)右方)に傾いて配置されている。よって、シャフト56内の潤滑油などは、四輪駆動車1の後退側(図7(a)左方)に移動するので、ブリーザ穴66a2から離れる方向に移動する。従って、ブリーザ穴66a2から潤滑油などが流出することを効率良く抑制することができる。なお、突起部153a1、規制壁161a(及び介挿部162a)、ブリーザ穴66a2を傾けて配置することで、突起部153a1などに付着した潤滑油を自重により下方へ流れやすくすることもできる。
【0141】
なお、図7の説明では、サイドカバー66aとピストン本体部153aとの関係を説明したが、サイドカバー66bとピストン本体部153bとの関係も同様に構成されている。係る場合には、突起部153a1は突起部153b1、押圧面153a2は押圧面153b2、規制壁161aは規制壁161b、介挿部162aは介挿部162b、内壁66a1は内壁66b1、ブリーザ穴66a2はブリーザ穴66b2、ブリーザ連通路66a3はブリーザ連通路66b3、ブリーザ室66a4はブリーザ室66b4と読み替えるものとする。
【0142】
次に、図7及び図8を参照して、ステムブリーダ155aの詳細な構造について説明する。図8は、図6の矢印Bで示したステムブリーダ155aの近傍の拡大断面図である。
【0143】
図7に示すように、ステムブリーダ155aは、ピストン本体部153aのベアリングB3a(駆動力調整部100a)側の端面となる押圧面153a2に凹状の溝155a1が形成されている。この凹状の溝155a1は、回転軸心Pを通る垂直線上(図7において回転軸心Pを通る矢印Z方向の線上)に形成されており、その溝155a1の最上部には、ピストン室154aに連通する連通路155a3〜155a5(図8参照)の開口155a2が形成されている。
【0144】
よって、ピストン本体部153aの押圧面153a2には、開口155a2を含む溝155a1が形成されているので、ベアリングB3aが押圧面153a2に当接した状態となっても、溝155a1によって、連通路155a3〜155a5と駆動力調整部100aとの連通を確実に確保することもできる。
【0145】
図8に示すように、ピストン室154aとベアリングB3a(駆動力調整部100a(図6参照))側とを連通する連通路は、ピストン本体部153aに形成されている。その連通路は、開口155a2を端部に形成しベアリングB3a側の空間と連通する第1連通路155a3と、その第1連通路155a3より小さい内径で形成されピストン室154aに連通する第2連通路155a4と、その第2連通路155a4と第1連通路155a3とを連結し略皿状に形成される第3連通路155a5とで構成されている。
【0146】
第1連通路155a3内には、その第1連通路155a3の内径より若干小さい(例えば0.5mm小さい)外径となる円柱状のピン155a6が配設されている。この第1連通路155a3とピン155a6との間に環状の隙間が形成されて、油圧特性の低下を抑制しつつ、オイルと共に混入した気体(空気)が駆動力調整部100a側に排出され、最終的にオイル回収室64aへ流入する。
【0147】
第3連通路155a5は、略皿状に形成されており、第1連通路155a3と第2連通路155a4との間に設けられているので、第2連通路155a4の第1連通路155a3側の開口とピン155a6が当接することを防止することができ、ステムブリーダ155aを介して気体やオイルが排出されないなどの弊害を防止することができる。
【0148】
また、ピン155a6は、略皿状に形成された第3連通路155a5によりピストン室154a側への移動が規制されており、ベアリングB3aにより駆動力調整部100a側への移動が規制されている。即ち、ピン155a6の駆動力調整部100a側への飛び出しを、プライマリードライブプレート135aとピストン本体部153aとの差動を吸収するベアリングB3aにより規制することができる。よって、第1連通路155a3内からピン155a6が駆動力調整部100a側に飛び出すことを防止するための板部材などを別に取り付ける必要がなく、その板部材を取り付けるスペースも必要なくなるので、駆動力調整機構60a全体の低コスト化および小規模化を図ることができる。
【0149】
また、開口155a2からは気体だけでなく油も排出されるので、ベアリングB3aへの油の供給を確実に行うことができる。よって、開口155a2から排出される油をベアリングB3aの潤滑油として作用させることができ、ベアリングB3aの滑りを円滑に行うことができる。さらに、ベアリングB3aへの油を供給するための通路を別に設ける必要がなくなるので、その分のコスト低減および小スペース化も図ることができる。
【0150】
なお、連通路155a3〜155a5とピン155a6との関係を調整し、開口155a2から排出される油量を調整すれば、開口155a2から排出される油によって、ベアリングB3aだけでなく駆動力調整部100aに対しての潤滑油とすることもできる。開口155a2から排出される油のみで駆動力調整部100aの潤滑油を供給できる構成とすれば、潤滑油の供給通路が不要となるので、更に低コスト化および小規模化を図ることができる。
【0151】
ここで、サイドカバー66a,66bにステムブリーダ機構を形成する場合について説明する。一般的に、駆動力分配機構50や駆動力調整機構60aを覆うカバーは外形や内形状が複雑であるので鋳造により制作される。そのため、本実施の形態のようなステムブリーダ機構をサイドカバー66a,66bに形成しようとすると、サイドカバー66a,66bの内形状(構造)が複雑となり、鋳型が高価になると共にサイドカバー66a,66bの製作が困難になってしまう。
【0152】
しかし、本実施の形態によれば、ピストン本体部153aにステムブリーダ155aの連通路155a3〜155a5を制作しているので、センターカバー65の内形状(構造)が更に複雑になることを抑制することができる。よって、サイドカバー66a,66bを制作するための鋳型が高価になることを抑制できると共に、サイドカバー66a,66bの製作が困難になることを抑制することができる。
【0153】
また、ステムブリーダ155aの連通路155a3〜155a5を形成するための穴加工は、一般的に、基準点からの距離や角度から加工位置が設定され、所定の公差の範囲内にしなければならない。そのため、連通路155a3〜155a5を形成する部品が大きいほど加工位置のズレが生じやすくなる一方、部品が小さければ、加工位置のズレが少なくなる。本実施の形態では、サイドカバー66a,66bなどに対して小さい部品であるピストン本体部153aに連通路155a3〜155a5を形成しているので、加工位置のズレが少なくなり、精度確保が容易になる。
【0154】
以上、説明したように、本実施形態の駆動力分配機構50及び駆動力調整機構60a,60bでは、シャフト56の内側に駆動力調整機構60a,60bを配設しているので、入力ギアユニット51の両側に駆動力調整機構60a,60bを配設する場合に比較して、駆動力分配機構50が配設される空間、即ち、センターカバー65とシャフト56とにより覆われる空間(センター空間)を削減することができる。よって、駆動力分配機構50が配設される空間を削減することができるので、ハイポイドギア53,54に用いられる潤滑油の量を少なくすることができる。
【0155】
また、駆動力調整機構60a,60bは、接続機構101a,101bが互いに対向すると共に、ピストン機構151a,151bが互いに離反するように配置されている。よって、ピストン機構151a,151bにオイルを供給する第1供給通路211a,211b及び第2供給通路212a,212b(図示せず)やピストン室154a,154bをシャフト56の中央に形成しなくて良いので、シャフト56の内側の構造が複雑になることを抑制し、シャフト56の製作が困難になることを防止することができる。また、第1供給通路211a,211b及び第2供給通路212a,212bやピストン室154a,154bをサイドカバー66a,66bに形成できるので、製作が容易になる。
【0156】
また、クラッチリテーナ108を一体的に構成し、接続機構101a,101bの対向する部分を駆動力分配機構50の回転軸心T方向視において重なるように配設しているので、その分、駆動力調整機構60a,60bの回転軸心P方向の大きさが大きくなることを抑制することができる。
【0157】
また、シャフト56の内側にドライブプレート106a,106b及びプライマリードライブプレート135a,135bを直接連結しているので、駆動力調整部100a,100bを軽量化できると共に、駆動力調整部100a,100bの回転軸心P方向の大きさを小規模化することもできる。
【0158】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0159】
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0160】
また、上記各実施の形態では、ドライブプレート突起部110a、プライマリードライブプレート突起部137a、クラッチリテーナ突起部115a及びシャフト溝部56a、又は、ドリブンプレート突起部111a、メインカム突起部144a及びスプライン溝部112aを略台形状の突起または溝で形成するものとしたが、略矩形状に形成しても良いし、略三角形状に形成しても良いし、略半円状に形成しても良く、スプライン継ぎ手が構成できる形状であれば如何なる形状であっても良い。
【0161】
また、上記各実施の形態では、ピストン本体部153a,153bによって駆動力調整部100aの円周方向を均等に押圧するように構成したが、駆動力調整部100aの円周方向における一部を押圧するように構成しても良い。この構成の場合であっても、プレート161a,161bの切り欠き162a,162bと、ピストン本体部153a,153bの突起部153a1,153b1とを有し、突起部153a1,153b1によりブリーザ穴65a2,67b12を障蔽するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】本発明の一実施の形態における四輪駆動車1の概略図である。
【図2】駆動力調整機構の外観図である。
【図3】図2のIII−III線における駆動力分配機構と駆動力調整機構との断面図である。
【図4】図3のA部分を拡大した断面図である。
【図5】カム機構の概略を示した図であり、(a)は、カム機構の側面図である。(b)は、図5(a)のVb−Vb線におけるカム機構の断面図である。
【図6】図2のVI−VI線における駆動力調整機構の断面図である。
【図7】(a)は、ピストン本体部をカム機構側から視た状態の正面図であり、(b)は、ピストン本体部及びサイドカバーの一部のを示した断面図である。
【図8】図6の矢印Bで示したステムブリーダの近傍を拡大して示した拡大断面図である。
【符号の説明】
【0163】
10 原動機
50 駆動力分配機構(入力軸の一部)
51 入力ギヤユニット(入力軸の一部)
52 出力ギヤユニット(伝達シャフトの一部)
53 ハイポイドギヤ(第1ギア)
54 ハイポイドギヤ(第2ギア)
56 シャフト
60a,60b 駆動力調整機構(出力ユニットの一部)
61 ケース(センターカバー、サイドカバー、リテーナカバー)
65 センターカバー
66a,66b サイドカバー
94 中央ドライブシャフト(入力軸の一部)
95a,95b 後輪ドライブシャフト(出力軸の一部)
100a,100b 駆動力調整部(クラッチ機構)
106a,106b ドライブプレート(入力側プレートの一部)
107a,107b ドリブンプレート(出力側プレートの一部)
113a,113b シャフト(出力軸の一部)
P 駆動力調整部の回転軸心
Q 電動モータの軸心
R 回転軸心Pを中心とする円周方向
T 駆動力分配機構の回転軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生する原動機と、その原動機により発生された駆動力が入力される入力軸と、その入力軸に入力された駆動力が伝達される一対の出力軸とを備えた駆動力伝達装置において、
前記入力軸の外周部に連結される第1ギアと、
その第1ギアの軸心に対して交わる方向に軸心が位置し、前記第1ギアと咬合する第2ギアと、
その第2ギアの内周部に連結されるシャフトと、
そのシャフトの内側に配設され、前記シャフトから伝達された駆動力を前記一対の出力軸にそれぞれ伝達する一対の出力ユニットとを備えていることを特徴とする駆動力伝達装置。
【請求項2】
前記一対の出力ユニットの対向する端部は、前記第1ギアの軸心方向視において、その第1ギアと重なる位置に配設されていることを特徴とする請求項1記載の駆動力伝達装置。
【請求項3】
前記出力ユニットは、
前記出力軸が軸心部に連結され、前記シャフトから伝達された駆動力を前記出力軸に断続的に出力可能なクラッチ機構と、
そのクラッチ機構を、前記シャフトから伝達された駆動力を前記出力軸に出力する状態に遷移させる押圧力を発生するピストンとを備え、
前記一対の出力ユニットは、前記クラッチ機構が互いに対向すると共に、前記ピストンが互いに離反して配設されていることを特徴とする請求項2記載の駆動力伝達装置。
【請求項4】
前記クラッチ機構は、入力側の複数の入力側プレートと、その複数の入力側プレートの間にそれぞれ位置する出力側の複数の出力側プレートとを有し、その出力側プレートと入力側プレートとが断続されることで、前記シャフトから伝達された駆動力を前記出力軸に断続的に出力可能に構成されており、
前記入力側プレートは、前記シャフトの内周部に直接嵌合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の駆動力伝達装置。
【請求項5】
前記第1ギア、第2ギア、シャフト及び出力ユニットを覆うと共に、前記第1ギアの軸心に直交する方向の両側が開口するセンターカバーと、そのセンターカバーの両側の開口を塞ぐ一対のサイドカバーと備え、
前記シャフトは、前記センターカバーの両側の開口まで延出されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の駆動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−264536(P2009−264536A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117020(P2008−117020)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000154347)株式会社ユニバンス (132)
【Fターム(参考)】