説明

駆動装置およびその制御装置

【課題】車輪側からの過大入力に対するフェールセーフ機能を確立することができる駆動装置およびその駆動装置を提供する。
【解決手段】車輪Wとその車輪W毎に個別に設けられた駆動力源1との間で伝動軸4を含む動力伝達経路を構成し、伝動軸4を経由して動力を伝達させる駆動装置において、伝動軸4に、車輪Wに作用する外力に対する耐久性が動力伝達経路の他の部位と比較して最も低い最弱部位4cを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の駆動輪毎に設けられ、かつその駆動輪に直接動力を伝達し、駆動力あるいは制動力を作用させることのできる駆動装置およびその駆動装置を制御の対象とする制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車輪のホイール内部もしくはその近傍にモータを配置しそのモータにより車輪を直接駆動する、いわゆるインホイールモータ方式の駆動装置が開発されている。その一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたインホイールドライブユニットは、モータと遊星減速機と出力軸とホイールリムとを備え、出力軸に連結する遊星減速機の回転要素を回転自在に支持する軸受の少なくとも一方が、ホイールリムの幅方向中心面よりも車幅方向内側に配置されるとともに、軸受により出力軸が回転自在に支持されている。そして、モータと遊星減速機と出力軸とホイールリムとが、この順番で動力伝達可能に連結されていて、したがってモータの出力トルクがモータからホイールリムへ減速されながら伝達される構成となっている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−99106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載されているようなインホイールモータ方式の駆動装置は、車輪のホイール内部もしくはその近傍に駆動力源のモータが設置されて車輪に直接動力を伝達するものであるから、従来の車両における変速機やデファレンシャルなどの動力伝達機構を設ける必要がなくなり、車両の構成を簡素化することができる。一方、上記のようにインホイールモータ方式の駆動装置は、車輪との間で直接動力の伝達が行われる構成であることから、例えば、車両が凹凸や障害物等がある悪路を走行する場合などのように、車輪側から想定した範囲を超える大きな外力が駆動装置に直接伝達される可能性がある。
【0005】
このような車輪側からの想定外の過大な外力に対して、従来は、仮に上記のような想定外の外力が駆動装置に入力された場合であっても駆動装置内部の伝動軸や歯車あるいはモータに異常が生じることのないように、例えば安全率を通常よりも大きくとるなどして外力が作用する各部品の強度が高められていた。すなわち、上記のような想定外の過大入力を考慮せずに設定した場合と比較して、各部品が大型化されたり、あるいはより高強度の材質が採用されるなどしていた。その結果、駆動装置の体格増や重量増、あるいは製造コストの増大を招いていた。
【0006】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、車輪側からの過大な外力が入力される場合であっても、装置の大型化や重量増あるいはコストアップを招くことなく、過大入力の装置内の各部に対する影響を緩和することができる駆動装置およびその駆動装置を制御の対象とする制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、車輪と該車輪毎に個別に設けられた駆動力源との間で伝動軸を含む動力伝達経路を構成し、該伝動軸を経由して動力を伝達させる駆動装置において、前記伝動軸に、前記車輪に作用する外力に対する耐久性が前記動力伝達経路の他の部位と比較して最も低い最弱部位が形成されていることを特徴とする駆動装置である。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記最弱部位が、前記伝動軸としての断面積を前記伝動軸の他の部位の断面積と比較して最も小さくすることにより前記耐久性が低下させられていることを特徴とする駆動装置である。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記最弱部位が、オイルを流通させる油路を設けることにより前記耐久性が低下させられていることを特徴とする駆動装置である。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記最弱部位が、材質を前記伝動軸の他の部位の材質と比較して最も弱くすることにより前記耐久性が低下させられていることを特徴とする駆動装置である。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記伝動軸の前記最弱部位から前記駆動力源側の部分と前記最弱部位から前記車輪側の部分とが互いに離隔する方向の力を生じさせる機構が設けられていることを特徴とする駆動装置である。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記機構が、前記伝動軸と前記駆動力源との間および前記伝動軸と前記車輪との間でそれぞれ動力伝達を行う際に、それぞれ前記離隔する方向の推力を発生するはすば歯車を用いた歯車伝動機構を含むことを特徴とする駆動装置である。
【0013】
また、請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記伝動軸の前記駆動力源側の端部が、外周部と内周部とを有する円筒状に形成されていて、該外周部に一方の前記歯車伝動機構が設けられ、かつ該内周部に該伝動軸を回転自在に支持する軸受けが設けられていることを特徴とする駆動装置である。
【0014】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明において、前記伝動軸が、少なくとも一部が中空軸として構成されていて、前記伝動軸の中空部分に、オイルポンプの回転軸が該伝動軸と一体回転可能に挿入されていることを特徴とする駆動装置である。
【0015】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記回転軸が、前記伝動軸の前記最弱部位から前記駆動力源側の部分に一体回転可能に嵌合させられていることを特徴とする駆動装置である。
【0016】
また、請求項10の発明は、請求項8または9の発明において、前記回転軸が、前記伝動軸の前記最弱部位よりも前記車輪側の内周部まで挿入させられていることを特徴とする駆動装置である。
【0017】
また、請求項11の発明は、請求項8ないし10のいずれかの発明において、前記駆動力源が、前記伝動軸が前記最弱部位で分割された場合に、前記オイルポンプを駆動可能に構成されていることを特徴とする駆動装置である。
【0018】
そして、請求項12の発明は、請求項1ないし11のいずれかの発明において、前記駆動力源が、前記車輪のホイールに内蔵されたインホイールモータを含むことを特徴とする駆動装置である。
【0019】
一方、請求項13の発明は、車輪と該車輪毎に個別に設けられた電動機との間で伝動軸を含む動力伝達経路を構成し、該伝動軸を経由して動力を伝達させる駆動装置の制御装置において、前記伝動軸に、前記車輪に作用する外力に対する耐久性が前記動力伝達経路の他の部位と比較して最も低い最弱部位が形成されているとともに、前記伝動軸が前記最弱部位で分割された場合に前記電動機の出力トルクにより駆動可能なオイルポンプと、前記駆動装置の運転状態を検出するセンサと、前記センサの検出値に基づいて前記駆動装置に関連する各部の異常を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段により検出した前記異常の状態に基づいて前記電動機を制御する電動機制御手段とを備えていることを特徴とする駆動装置の制御装置である。
【0020】
また、請求項14の発明は、請求項13の発明において、前記センサが、前記車輪の回転数を検出する車輪速センサと、前記電動機の回転数を検出する回転数センサとを含み、前記異常検出手段が、前記車輪速センサの検出値に基づいて当該車輪速センサに異常はないと判断し、かつ当該車輪速センサにより検出した前記車輪の回転数と当該車輪に設けられた前記電動機の前記回転数センサにより検出した当該電動機の回転数とのずれが判断基準として定めた閾値を超えた場合に、前記最弱部位が分割されたと判断する手段を含むことを特徴とする駆動装置の制御装置である。
【0021】
また、請求項15の発明は、請求項13または14の発明において、前記センサが、前記電動機の回転角度を検出する回転角センサを更に含み、前記異常検出手段が、前記車輪速センサの検出値に基づいて当該車輪速センサに異常があると判断し、かつ当該車輪速センサにより検出した前記車輪の回転数と当該車輪に設けられた前記電動機の前記回転角センサにより検出した当該電動機の回転角度とのずれが判断基準として定めた閾値を超えた場合に、前記最弱部位が分割されたと判断する手段を含むことを特徴とする駆動装置の制御装置である。
【0022】
また、請求項16の発明は、請求項13ないし15のいずれかの発明において、前記センサが、前記オイルポンプによりオイルを供給する被供給部の温度を検出する温度センサを更に含み、前記電動機制御手段が、前記異常検出手段により前記最弱部位が分割されたと判断され、かつ前記温度センサにより検出した前記温度が前記被供給部へのオイルの供給を必要とする判断基準として定めた閾値を超えた場合に、前記電動機を制御して前記オイルポンプを駆動させる手段を含むことを特徴とする駆動装置の制御装置である。
【0023】
そして、請求項17の発明は、請求項13ないし16のいずれかの発明において、前記電動機が、前記車輪のホイールに内蔵されたインホイールモータを含むことを特徴とする駆動装置の制御装置である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、車輪と駆動力源との間の動力伝達経路の中で、伝動軸の一部分に、車輪に加わる外力に対する強度が他の部位と比較して最も弱い最弱部位が形成される。その結果、例えば走行中の車輪に想定した範囲を超える大きな外力が作用した場合に、車輪と駆動力源との間の動力伝達経路のうち伝動軸の最弱部位を最初に分割させることができる。言い換えると、車輪側からの過大入力が動力伝達経路の他の部位に伝達されないように伝動軸の最弱部位のみを分割させることができる。そのため、装置の大型化や重量増あるいはコストアップを招くことなく、車輪側からの過大入力が動力伝達経路の他の部位に影響を及ぼすことを回避もしくは緩和することができる。
【0025】
また、請求項2の発明によれば、伝動軸の一部分が、その軸方向に垂直な平面における断面積が伝動軸の他の部位と比較して最も小さくなるように形成される。そのため、伝動軸の一部分に、車輪に作用する外力に対する強度が他の部位と比較して最も低い最弱部位を容易に形成することができる。
【0026】
また、請求項3の発明によれば、伝動軸の一部分に、オイルを流通させるための油路が形成される。したがって、油路が形成された部分はその油路の分だけ断面積が伝動軸の他の部位と比較して小さくなる。そのため、伝動軸の一部分に、車輪に作用する外力に対する強度が他の部位と比較して最も低い最弱部位を容易に形成することができる。
【0027】
また、請求項4の発明によれば、例えば、伝動軸の一部分に対する熱処理や表面処理の条件もしくは方法を伝動軸のその他の部位と異ならせることなどにより、その伝動軸の一部分の材質が伝動軸の他の部位と比較して最も弱くなるように形成される。そのため、伝動軸の一部分に、車輪に作用する外力に対する強度が他の部位と比較して弱い最弱部位を容易に形成することができる。
【0028】
また、請求項5の発明によれば、伝動軸に、その伝動軸に形成した最弱部位から駆動力源側の部分と、その伝動軸に形成した最弱部位から車輪側の部分とが互いに離れようとする力を発生させる機構が設けられる。そのため、例えば車輪に想定した範囲を超える大きな外力が作用して伝動軸の最弱部位が分割された場合に、その最弱部位の分割個所同士が互いに干渉してしまうことを回避もしくは抑制することができる。
【0029】
また、請求項6の発明によれば、伝動軸と駆動力源との間および伝動軸と車輪との間に、はすば歯車による歯車伝動機構が設けられ、それらの間で動力伝達が行われる。その結果、伝動軸に、その伝動軸に形成した最弱部位から駆動力源側の部分と、その伝動軸に形成した最弱部位から車輪側の部分とが互いに離れようとする力を発生させることができる。すなわち、はすば歯車は、動力を伝達する際にその軸方向に推力(スラスト力)を生じさせる歯車であるので、その推力の方向が伝動軸の最弱部位から駆動力源側の部分と最弱部位から車輪側の部分とが互いに離隔する方向になるようにはすば歯車の歯のねじれ方向を設定し、伝動軸と駆動力源との間および伝動軸と車輪との間にそれぞれ設置することにより、伝動軸の最弱部位から駆動力源側の部分と最弱部位から車輪側の部分とを互いに離隔させる方向の力を容易に発生させることができる。
【0030】
また、請求項7の発明によれば、円筒形状に形成された伝動軸の駆動力源側の端部の外周部と内周部とに、駆動力源と伝動軸との間で動力伝達を行う歯車伝動機構と、伝動軸の駆動力源側の端部を支持する軸受けとがそれぞれ設置される。すなわち、伝動軸の駆動力源側の端部の軸方向でのほぼ同じ位置に、伝動軸に動力を伝える歯車伝動機構と、その伝動軸の一端を支持する軸受けとが設置される。そのため、例えば車輪に想定した範囲を超える大きな外力が作用して伝動軸の最弱部位が分割された場合であっても、分割された伝動軸の最弱部位から駆動力源側の部分の軸受けによる支持を容易にして、その分割された部分の回転状態あるいは支持状態を維持し易くなる。
【0031】
また、請求項8の発明によれば、中空構造として形成された伝動軸の中空部に、オイルポンプの回転軸が伝動軸と一体回転するように挿入されて嵌合させられる。そのため、例えば車輪に想定した範囲を超える大きな外力が作用して伝動軸の最弱部位が分割された場合に、オイルポンプおよびその回転軸によって分割された伝動軸を応急的に支持することができ、その分割された伝動軸の回転状態あるいは支持状態を維持することができる。
【0032】
また、請求項9の発明によれば、中空構造として形成された伝動軸の最弱部位から駆動力源側の部分の中空部に、オイルポンプの回転軸が伝動軸と一体回転するように挿入されて嵌合させられる。そのため、例えば車輪に想定した範囲を超える大きな外力が作用して伝動軸の最弱部位が分割された場合に、オイルポンプおよびその回転軸によって分割された伝動軸の最弱部位から駆動力源側の部分を応急的に支持することができ、その分割された部分の回転状態あるいは支持状態を維持することができる。
【0033】
また、請求項10の発明によれば、中空構造として形成された伝動軸の中空部に挿入して嵌合させられるオイルポンプの回転軸が、伝動軸の軸方向における最弱部位よりも車輪側の部分まで挿入される。そのため、例えば車輪に想定した範囲を超える大きな外力が作用して伝動軸の最弱部位が分割された場合に、オイルポンプおよびその回転軸によって分割された伝動軸の最弱部位を応急的に支持することができ、その分割された伝動軸の回転を維持することができる。
【0034】
また、請求項11の発明によれば、例えば車輪に想定した範囲を超える大きな外力が作用して伝動軸の最弱部位が分割された場合に、駆動力源の出力トルクによりオイルポンプを駆動することができる。そのため、伝動軸の最弱部位が分割された場合であっても、オイルポンプを駆動して、オイルの供給を必要とする個所に適切にオイルを供給することができる。
【0035】
そして、請求項12の発明によれば、車輪のホイール内部もしくはその近傍に設置されたインホイールモータを駆動力源とする駆動装置に対して、装置の大型化や重量増あるいはコストアップを招くことなく、車輪側からの過大入力が駆動装置内の各部に影響を及ぼすことを回避もしくは緩和することができる。別の言い方をすると、車輪側からの過大入力に対するいわゆるフェールセーフ機能を確立することができる。
【0036】
一方、請求項13の発明によれば、車輪と駆動力源である電動機との間の動力伝達経路の中で、伝動軸の一部分に、車輪に加わる外力に対する強度が他の部位よりも最も低い最弱部位が形成される。また、その最弱部位が分割された状態でも駆動することが可能なオイルポンプが設けられる。その結果、例えば走行中の車輪に想定した範囲を超える大きな外力が作用した場合に、車輪と電動機との間の動力伝達経路のうち伝動軸の最弱部位を最初に分割させることができる。言い換えると、動力伝達経路の他の部位における外力の影響を回避もしくは緩和して伝動軸の最弱部位のみを分割させることができる。また、そのように伝動軸の最弱部位が分割された場合であっても、オイルポンプを駆動することができる。すなわち、車輪側からの過大入力に対するいわゆるフェールセーフ機能を有した駆動装置が構成される。
【0037】
そして、そのフェールセーフ機能を有した構成の駆動装置を制御の対象にして、各センサの検出値から駆動装置内の異常の有無について判断され、その異常が検出された場合に、その異常の状態に応じて電動機の回転が適宜に制御される。そのため、例えば車輪に想定した範囲を超える大きな外力が作用して伝動軸の最弱部位が分割された状態で、オイルポンプによるオイルの供給が必要な場合に、電動機の回転を制御してオイルポンプの駆動状態を適切に制御し、オイルの供給を必要とする個所へ適切にオイルを供給することができる。すなわち、駆動装置の車輪側からの過大入力に対するフェールセーフ機能を確立することができる。
【0038】
また、請求項14の発明によれば、車輪速センサにより検出する車輪の回転数と、回転数センサにより検出する電動機の回転軸の回転数とに基づいて、伝動軸の最弱部位における分割の有無を容易にかつ適切に判断することができる。
【0039】
また、請求項15の発明によれば、車輪速センサにより検出する車輪の回転数と、回転角センサにより検出する電動機の回転軸の回転角度とに基づいて、伝動軸の最弱部位における分割の有無を容易にかつ適切に判断することができる。
【0040】
また、請求項16の発明によれば、温度センサにより検出するオイルの被供給部の温度に基づいて、その被供給部へのオイルの供給の必要性あるいは必要度を容易にかつ適切に判断することができる。そして、その被供給部へのオイルの供給が必要と判断された場合に、電動機の回転を制御し、オイルポンプの駆動状態を適切に制御して、被供給部へ適切にオイルを供給することができる。言い換えると、被供給部へのオイルの供給が必要でない場合には電動機を駆動させないでおくことができ、被供給部へのオイルの供給が必要な場合にのみ、電動機を効率良く駆動させてオイルを供給することができる。
【0041】
そして、請求項17の発明によれば、車輪のホイール内部もしくはその近傍に設置されたインホイールモータを駆動力源とする駆動装置に対して、装置の大型化や重量増あるいはコストアップを招くことなく、車輪側からの過大入力が駆動装置内の各部に影響を及ぼすことを回避もしくは緩和することができる。別の言い方をすると、車輪側からの過大入力に対するいわゆるフェールセーフ機能を確立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
この発明に係る駆動装置は、車輪に対してその車輪毎に個別に設けられた駆動力源の出力トルクを伝達させて車輪に駆動力もしくは制動力を発生させるものであり、その一例として、例えば、車輪のホイールに駆動力源としての電動機(モータ)が内蔵されたいわゆるインホイールモータ方式の駆動装置が挙げられる。このインホイールモータは、車体に支持されてホイールを直接駆動する電動機であり、その駆動の形態は、回転子(ロータ)と一体の出力軸をホイール取付部に直接連結してホイールを駆動する形態であってもよい。あるいは、出力軸とホイールとの間に、変速機構を介在させて、その変速機構で減速もしくは増速させたトルクをホイールに伝達する形態であってもよい。そのインホイールモータは、例えば、前輪などの操舵輪においてはナックルアーム、後輪などの非操舵輪についてはアッパーアームおよびロアーアームなどのアーム部材を介して車体に支持されている。
【0043】
図1に、この発明に係る駆動装置の一例を模式的に示してある。この図1に示す例は、上述したようないわゆるインホイールモータ方式の駆動装置を車両に適用した構成例である。図1において、符号Wは車両における車輪を示し、図示しないホイールとタイヤとから構成されている。そして、この車輪Wのホイールの内周部分であって、車輪1と同軸上にインホイールモータユニットMが配置されている。言い換えると、車輪Wのホイールに、インホイールモータユニットMが内蔵されている。
【0044】
このインホイールモータユニットMは、主として、車両を走行させる駆動トルクを出力するためのものであり、誘導モータや同期モータなどのモータ1が、ハウジング2の内部に収納されている。すなわち、このインホイールユニットMにおけるモータ1は、この発明に係る駆動装置の駆動力源であって、車輪W毎に設けられその車輪Wに出力トルクを伝達することができる電動機である。そして、このインホイールモータユニットMは、そのハウジング2をアーム部材(図示せず)に取り付けることにより、そのアーム部材を介して車両の車体(図示せず)に連結されて支持されている。
【0045】
そして、このモータ1には、その出力軸(もしくはロータ軸)1aの回転角度(回転位置)および回転数を検出するためのレゾルバ3が設けられている。このレゾルバ3により出力軸1aの回転角度を検出することができ、その回転角度の検出値を基に出力軸1aの回転数を求めることができる。したがって、このレゾルバ3は、この発明における回転角センサおよび回転数センサとして機能している。
【0046】
上記のモータ1の出力軸1aと平行に伝動軸4が配置されていて、それら出力軸1aと伝動軸4とがカウンタギヤ対5を介して動力伝達可能に連結されている。すなわち、出力軸1aの先端(図1での左端)に出力軸1aと一体に形成されたカウンタギヤ対5のカウンタドライブギヤ5aと、伝動軸4のモータ1側(図1での右側)の端部に一体に形成されたカウンタギヤ対5のカウンタドリブンギヤ5bとが互いに噛み合っている。
【0047】
ここで、上記のカウンタギヤ対5は、動力を伝達する際に軸方向へのスラスト力が生じるはすば歯車が採用されている。そして、出力軸1aと伝動軸4との間で動力伝達を行う際に、伝動軸4からモータ1側の方向のスラスト力が発生するように、そのはすば歯車の歯の傾斜方向(ねじれ方向)が設定されている。したがって、伝動軸4に動力が伝達される場合すなわち伝動軸4が回転させられる場合には、伝動軸4のモータ1側の端部に伝動軸4をモータ1側へ移動させようとする力が作用する。これは、後述するように、伝動軸4がその伝動軸4に設けた最弱部位で分割された際に、その分割された部分同士の干渉を防ぐためのものである。
【0048】
伝動軸4は、軸芯部分がくり抜かれた中空軸となっていて、その両端が、例えばハウジング2内部の固定部6に固定された軸受け7,8によりそれぞれ支持されている。より具体的には、伝動軸4は、中空の円柱状に形成された本体部4aと、その本体部4aと一体に形成されるとともに外周部分に前記のカウンタドリブンギヤ5bが一体に形成されかつ内周部分に前記の一方の軸受け7が配置された円筒部4bとから構成されている。言い換えると、伝動軸4は、中空の円柱状の本体部4aと、外周部4oと内周部4iとを有する円筒状の円筒部4bとから構成されていて、それら本体部4aと円筒部4bとが一体に形成されている。
【0049】
上記のように、外周部4oにカウンタドリブンギヤ5bが形成された円筒部4bの内周部4iに設けられた軸受け7は、より具体的には、円筒部4bの軸線方向においてカウンタドリブンギヤ5bと同じ位置もしくはほぼ同じ位置に配置されている。言い換えると、カウンタギヤ対5のカウンタドリブンギヤ5bと、伝動軸4の一端を支持する軸受け7とは、軸線方向での同じ位置もしくはほぼ同じ位置にそれぞれ配置されている。
【0050】
これにより、外周部4o側のカウンタドリブンギヤ5bがカウンタドライブギヤ5aから荷重を受ける際に、その荷重の径方向(図1での上下方向)の分力の反力を全てもしくはほとんど軸受け7で受け持たせることができる。そのため、伝動軸4がカウンタギヤ対5側から受ける荷重によって伝動軸4を傾かせる方向もしくは曲げる方向のモーメントが発生しない。したがって、例えば伝動軸4が本体部4aの途中で分割された場合に、その分割された伝動軸4のモータ1側の部分を軸受け7により片持ち状に支持して、その分割された部分の回転状態あるいはその分割された部分の支持状態を安定させて維持し易くなっている。
【0051】
この発明における伝動軸4は、図1に示す例では、伝動軸4の本体部4aのモータ1側(図1での右側)の部分に円筒部4bの車輪W側(図1での左側)の部分がそのフランジ部4fを介して互いに一体化された形状となっているが、それ以外の形状に構成することも可能である。すなわち、円筒部4bが前記の外周部4oと内周部4iとを備え、かつ後述するオイルポンプ10の回転軸10aを内周部4iの内周側を通過させて本体部4aの中空部分に挿入して配置できる形状であれば、例えば本体部4aの外径と円筒部4bの外径とが等しいもしくはほぼ等しい形状であってもよい。
【0052】
一方、伝動軸4の車輪W側(図1での左側)の端部は、その外周側に前記の他方の軸受け8が配置されている。そして、その車輪W側の端部と車輪Wとが、歯車伝動機構9を介して動力伝達可能に連結されている。この歯車伝動機構9は、図1に示す例では、外歯歯車であるサンギヤ9sと、これと同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ9rと、これらのサンギヤ9sとリングギヤ9rとに噛み合っているピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持しているキャリア9cとを回転要素とするシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0053】
この歯車伝動機構9すなわちプラネタリギヤ9のサンギヤ9sに、伝動軸4の車輪W側の端部が連結されている。言い換えると、伝動軸4の車輪W側の端部の外周部分に、プラネタリギヤ9のサンギヤ9sが一体に形成されている。そして、プラネタリギヤ9のキャリア9cに、車輪Wのホイール(図示せず)が連結されている。一方、プラネタリギヤ9のリングギヤ9rは、例えばハウジング2内部の固定部6に連結されていて、その回転が固定されている。そのため、このプラネタリギヤ9は、リングギヤ9rが反力要素となっていて、サンギヤ9sを入力要素とするとキャリア9cが出力要素となり、サンギヤ9sに入力されたトルクの回転数を減速してキャリア9cから出力するようになっている。すなわち、このプラネタリギヤ9は、カウンタギヤ対5を介して伝動軸4に伝達されるモータ1の出力トルクを減速して車輪Wへ伝達させる減速機構として機能している。
【0054】
ここで、上記のプラネタリギヤ9には、前述のカウンタギヤ対5と同様に、動力を伝達する際に軸方向へのスラスト力が生じるはすば歯車が採用されている。そして、伝動軸4と車輪Wとの間で動力伝達を行う際に伝動軸4から車輪W側の方向のスラスト力が発生するように、そのはすば歯車の歯の傾斜方向(ねじれ方向)が設定されている。したがって、伝動軸4に動力が伝達される場合すなわち伝動軸4が回転させられる場合には、伝動軸4の車輪W側の端部に伝動軸4を車輪W側へ移動させようとする力が作用する。これは、後述するように、伝動軸4がその伝動軸4に設けた最弱部位で分割された際に、その分割された部分同士の干渉を防ぐためのものである。
【0055】
このように、図1に例示したこの発明の駆動装置は、インホイールモータユニットMから車輪Wに動力を直接伝達できるように構成されている。したがって、駆動装置の外部から車輪Wに入力される外力もインホイールモータユニットMに直接伝達されるようになっている。すなわち、この発明の駆動装置は、カウンタギヤ対5および伝動軸4ならびにプラネタリギヤ9などから構成される動力伝達経路を介して、駆動力源であるインホイールモータユニットMのモータ1と車輪Wとの間で、互いに直接動力の伝達が可能な構成となっている。
【0056】
そのため、前述したように、例えば車両が凹凸や障害物等がある悪路を走行する場合などに、車輪W側からインホイールモータユニットMに対して、許容範囲を超える大きな外力が直接伝達されて、例えば、インホイールモータユニットM内のカウンタギヤ対5やプラネタリギヤ9の歯車に異常が生じてしまう可能性がある。このような許容範囲を超えるような過大な外力に対して、言い換えると、想定した範囲を超えるような過大な外力に対して、インホイールモータユニットM内の各部を設計する際に想定する荷重を上乗せしておくこと、あるいは安全率を相当に高めに設定しておくことにより、上記のような想定外の過大入力に対応することができる。しかしながら、その場合は、上記のような想定外の過大入力を考慮せずに設計した場合と比較して、各部品が大型化され、あるいはより高強度の材質が採用されることになり、その結果、インホイールモータユニットMの体格増や重量増、あるいはコストアップを招くことになる。
【0057】
そこで、この発明の駆動装置では、車輪W側から想定した範囲もしくは許容範囲を超える大きな外力が入力されてモータ1と車輪Wとの間の動力伝達経路で異常が発生してしまうような場合であっても、装置の大型化や重量増あるいはコストアップを招くことなく、過大入力がインホイールモータユニットM内の各部に及ぼす影響を緩和するために、伝動軸4の本体部4aに、車輪Wに作用する外力に対する耐久性が動力伝達経路の他の部位と比較して最も低い最弱部位4cが形成されている。
【0058】
具体的には、図2の拡大図で示すように、伝動軸4の本体部4aの軸線方向における所定の位置に、伝動軸4の他の部位よりも強度が低く、かつモータ1と車輪Wとの間の動力伝達経路内の各構成部材よりも車輪Wに作用する外力に対する耐久性が低くなる最弱部位4cが形成されている。この図2に示す例では、伝動軸4は、中空軸となっている伝動軸4の本体部4aにおける最弱部位4cの肉厚(すなわち伝動軸4の外周面と内周面との間の距離)が、伝動軸4の本体部4aにおけるその他の部位の肉厚よりも薄くなるように形成されている。言い換えると、伝動軸4は、最弱部位4cの軸としての断面積すなわち軸線方向に垂直な平面による断面の断面積が、伝動軸4の他の部位の断面積よりも小さくなるように形成されている。
【0059】
さらに、伝動軸4の最弱部位4cには、後述するオイルポンプ10により供給されるオイルが流通する油路4dが形成されている。この油路は、例えば伝動軸4の最弱部位4cの外周面から内周面まで貫通させた貫通孔であり、伝動軸4の最弱部位4cに1つ、もしくは最弱部位4cの円周方向における複数個所に設けられている。したがって、伝動軸4は、このような油路4dが形成されることによって、その分、その油路4dが形成された部位の耐久性が動力伝達経路の他の部位と比較して最も低くなる。すなわちこの発明における最弱部位4cが形成される。
【0060】
なお、図3にこの最弱部位4cの他の構成例を示す。この図3に示す駆動装置における伝動軸4の最弱部位4cは、その部位の材質が、伝動軸4の他の部位の材質と比較して最も弱くなるように形成されている。例えば、浸炭処理やショットピーニングなど、最弱部位4cに対する熱処理や表面処理の条件もしくは方法を伝動軸4のその他の部位と異ならせることにより、その最弱部位4cの材質的な強度が伝動軸4の他の部位よりも弱めて、最弱部位4cを形成することができる。
【0061】
この図3に示した例では、材質を変化させて形成した最弱部位4cの形状が、本体部4aの外周面および内周面がそれぞれ均一に形成された形状、すなわち最弱部位4cの軸としての断面積が伝動軸4の他の部位の断面積と等しくなるように形成された形状となっているが、前述の図2,3で示した例のように、最弱部位4cの軸としての断面積が伝動軸4の他の部位の断面積よりも小さくなるように形成された形状の部分に対して、さらに、例えば熱処理や表面処理を施すことによってその部分の材質の強度を低下させて、最弱部位4cを形成することもできる。
【0062】
ここで、伝動軸4の円筒部4bあるいは本体部4aと円筒部4bとの連結部分は、伝動軸4の本体部4aよりも強度が高くなるように、各部の形状・寸法が設定されて形成されている。また、モータ1と車輪Wとの間の動力伝達経路内の伝動軸4以外の各構成部材も、伝動軸4の本体部4aよりも強度が高くなるように、各部の形状・寸法が設定されて形成されている。したがって、モータ1と車輪Wとの間の動力伝達経路内において、伝動軸4に形成された最弱部位4cが最も強度が低い部位となっている。なお、当然、この最弱部位4cの強度は、この駆動装置における設計上の必要強度以上となるように設定されている。
【0063】
そして、この発明の駆動装置では、その駆動装置内の各駆動部分やモータ1の発熱部分などへオイルを供給するためのオイルポンプ10が設けられている。このオイルポンプ10は、駆動力源であるモータ1の出力トルクが伝達されることにより駆動されて油圧を発生するものであり、外部から動力を得てその回転軸10aを駆動することによって吸入口(図示せず)からオイルを吸引し、その吸入したオイルを吐出口(図示せず)から吐出するように構成されている。例えば、歯車ポンプ、トロコイドポンプ、ベーンポンプ、ねじポンプなどの回転ポンプや、あるいはピストンポンプなどの各種構成の公知のポンプを採用することができる。そしてこのオイルポンプ10は、ハウジング2内の底部に設けられたオイル溜まり11に貯留しているオイルを吸入し、例えばモータ1のロータやコイルエンド(共に図示せず)、あるいは駆動装置内の各回転部材を支持する軸受けや各回転部材の間で動力伝達を行う歯車等の伝動部材など、オイルによる冷却や潤滑を行う必要がある部位へ向けてオイルを吐出して供給するようになっている。
【0064】
オイルポンプ10の回転軸10aは、伝動軸4の本体部4aにおける中空部分に挿入させられていて、そして、それらオイルポンプ10の回転軸10aと伝動軸4の本体部4aとは、伝動軸4の本体部4aの、伝動軸4の軸線方向における最弱部位4cが形成されている位置からモータ1側の部分の間で、互いに一体回転するように嵌合させられている。例えば、回転軸10aの外周部分と本体部4aの内周部分とに形成したスプラインあるいはキー溝およびキーなどにより、それらオイルポンプ10の回転軸10aと伝動軸4の本体部4aとが、伝動軸4の本体部4aの最弱部位4cが形成されている位置からモータ1側の間で、一体回転可能なように互いに連結されている。
【0065】
このように、オイルポンプ10は、その回転軸10aが伝動軸4の最弱部位4cからモータ1側の部分に一体回転可能に嵌合させられていることにより、伝動軸4が最弱部位4cで分割された場合であっても、モータ1の出力トルクによってその分割された伝動軸4の最弱部位4cからモータ1側の部分と共に回転軸10aを回転させてオイルポンプ10を駆動させることができる。
【0066】
上記のオイルポンプ10の回転軸10aの先端、すなわち回転軸10aの伝動軸4の中空部分に挿入される側(図1,2での左側)の先端は、伝動軸4の軸線方向における最弱部位4cが形成されている位置よりも車輪W側の部分まで挿入されている。言い換えると、オイルポンプ10の回転軸10aは、伝動軸4の中空部分に挿入された際に、その先端部10bが伝動軸4の軸線方向における最弱部位4cが形成されている位置よりも車輪W側の部分に位置するように、各部の寸法・形状が設定されて形成されている。
【0067】
したがって、伝動軸4が最弱部位4cで分割された場合に、伝動軸4の最弱部位4cから車輪W側の部分と最弱部位4cからモータ1側の部分との両方の分割された部分が、オイルポンプ10の回転軸10aの先端部分で支持されることになる。そのため、伝動軸4が最弱部位4cで分割された状態で、伝動軸4の最弱部位4cから車輪W側の部分すなわち車輪Wの回転状態あるいは支持状態を維持することができる。すなわち、伝動軸4が最弱部位4cで分割された場合に、車輪Wを空転可能な状態にすることができる。
【0068】
なお、回転軸10aが伝動軸4の中空部分に挿入された際に、伝動軸4の軸線方向における最弱部位4cの位置よりも車輪W側の部分に位置する回転軸10aの外周面は、摩擦係数が低くなるように表面加工されること、あるいはコーティングなどの表面処理が施されることが好ましい。それにより、上記のように伝動軸4が最弱部位4cで分割され、その分割された部分の内周面を回転軸10aの外周面で受けて支持する場合に、それら分割された部分の内周面と回転軸10aの外周面との間の摩擦を低減し、焼き付きなどの発生を防止もしくは抑制することができる。
【0069】
また、オイルポンプ10の回転軸10aの内部には、オイルポンプ10から吐出されるオイルの流路(図示せず)が形成されていて、回転軸10aの先端部10bから、および回転軸10aが伝動軸4の中空部分に挿入された状態で、前述の伝動軸4の最弱部位4cに形成された油路4dと対応する個所からオイルを吐出して供給するように構成されている。そのため、上記のように伝動軸4が最弱部位4cで分割され、その分割された部分の内周面を回転軸10aの外周面で受けて支持する場合に、それら分割された部分をオイルポンプ10により供給されるオイルによって強制的に潤滑および冷却することができ、それら分割された部分における焼き付きなどの発生を防止もしくは抑制することができる。
【0070】
この駆動装置を制御するため、すなわちモータ1の回転を制御するための電子制御装置(ECU)12が設けられていて、この電子制御装置12に対してモータ1が制御信号の伝達が可能なように接続されている。
【0071】
この電子制御装置12には、この駆動装置を制御するための各種センサが接続されていて、具体的には、車輪W毎に設けられてその車輪Wの回転数すなわちプラネタリギヤ9のキャリア9cの回転数を検出する車輪速センサ13、伝動軸4の最弱部位4cに設けられてその最弱部位4cの温度を検出する温度センサ14、そして前述のモータ1のレゾルバ3などからの信号が入力されるように構成されている。
【0072】
これにより、電子制御装置12では、モータ1の回転軸1aの回転角度、モータ1の回転軸1aの回転数、各車輪Wの回転数(車輪速)、伝動軸4の最弱部位4cの温度状態などを検出することができる。これに対して、電子制御装置14からは、例えばインバータ(図示せず)等を介して各モータ1の回転をそれぞれ制御する信号が出力されるように構成されている。
【0073】
つぎに、上述した構成のこの発明に係る駆動装置を対象としたフェールセーフ制御、具体的には、この駆動装置におけるフェールの有無を判断する制御(フェール判定制御)の一例について説明する。なお、この発明に係る駆動装置を4輪の車両に適用した場合、例えば図4に示すように、車両の4輪全てに、この車輪WにインホイールモータユニットMを内蔵させたこの発明の駆動装置を設置することができる。あるいは、図示しないが、前輪もしくは後輪のいずれか一方の左右輪に、この発明の駆動装置を設置し、他方の左右輪を例えば内燃機関などの他の動力源により駆動するように構成することもできる。ここでは、図4に示すように、この発明に係る駆動装置を4輪の車両に適用し、その4輪全てにこの発明の駆動装置を設置した構成を対象にした制御例について説明する。
【0074】
図5は、その制御の一例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図5において、先ず、各車輪W毎に、それら各車輪Wの回転数が検出され、対象とする車輪(自輪)Wと、その他の車輪(他輪)Wとの回転数の検出値が互いに比較される(ステップS1)。これら各車輪Wの回転数は、前述したように、各車輪W毎に設けられている各車輪速センサ13により検出することができる。
【0075】
ついで、各車輪Wの回転数の検出値の比較結果から、自輪Wの車輪速センサ13に何らかの異常すなわちフェールが生じているか否かが判断される(ステップS2)。例えば車両が所定の車速で直進している場合、4輪の各車輪Wの回転数はいずれもほぼ等しい値になる。このとき、仮に自輪Wの回転数の検出値が、他の3つの他輪Wの回転数の検出値と比較して異なっていた場合、その自輪Wの車輪速センサ13はフェールしていると判断することができる。
【0076】
例えば、各車輪Wの回転数の検出値がいずれも等しく、自輪Wの車輪速センサ13にフェールは生じていないと判定されたことにより、このステップS2で否定的に判断された場合には、ステップS3へ進み、自輪Wに対して、他の3つの他輪Wに対するのと同様の制御が実行される。例えば、自輪Wに対して、他の3つの他輪Wに対するトルク制御と同様の制御指令が出力される。
【0077】
このようにして各車輪Wの回転制御が実行されている間、自輪Wに設けられているモータ1の回転数が常時もしくは定期的に検出されてモニターされている。そして、その自輪Wのモータ1の回転数が異常に増大したか否かが判断される(ステップS4)。モータ1の回転数は、前述したように、モータ1に備えられたレゾルバ3の検出値から求めることができる。また、モータ1の回転数の異常な増大とは、例えば、車輪Wの回転数に対するモータ1の回転数が、閾値とした設定した所定の値を超えて増大(上昇)した場合、言い換えると、車輪Wの回転数とモータ1の回転数との偏差が所定の値よりも大きくなった場合に、そのモータ1の回転数が異常に増大したと判断することができる。
【0078】
したがって、自輪Wのモータ1の回転数の検出値に異常が認められないことにより、このステップS4で否定的に判断された場合は、前記のステップS3へ戻り、従前の制御が繰り返される。すなわち、自輪Wのモータ1の回転数の検出値に異常が認められることなどによってこのステップS4で肯定的に判断されない限り、これらステップS3,S4の制御が繰り返し実行される。
【0079】
これに対して、例えば、自輪Wの回転数に対するその自輪Wに設けられたモータ1の回転数が、閾値として設定した所定の値を超えて増大(上昇)したことなどにより、ステップS4で肯定的に判断された場合、言い換えると、自輪Wの回転数とその自輪Wに設けられたモータ1の回転数とのずれが、判断基準として定められた閾値を超えたことにより、ステップS4で肯定的に判断された場合には、ステップS5へ進み、自輪WのインホイールモータユニットMにおける伝動軸4の最弱部位4cが分割されたと判断される。すなわち、何らかの要因により、自輪W側から許容範囲を超えた大きな外力がインホイールモータユニットM内に入力されて、前述したように、そのインホイールモータユニットMの動力伝達経路内で最も耐久性が低くなるように設定されている伝動軸4の最弱部位4cが分割されて、その結果、自輪Wの回転数とモータ1の回転数との値に乖離が発生したものと判断される。
【0080】
伝動軸4の最弱部位4cが分割されたと判断されると、その最弱部位4cの分割に対応するモータ1の制御、具体的にはモータ1によるオイルポンプ10の駆動制御が実行される(ステップS6)。すなわち、伝動軸4の最弱部位4cが分割された場合は、その分割部分における回転摺動部分の焼き付きとの防止や、分割後も依然として回転している自輪W側の例えば軸受け8やプラネタリギヤ9などの回転部材の潤滑や冷却のために、オイルポンプ10の駆動状態が適宜制御される。そのため、伝動軸4の最弱部位4cが分割された場合であっても、オイルポンプ10が継続して駆動制御され、上記のオイル必要部位に適切にオイルが供給されて、回転摺動部分の焼き付きや各回転部材の摩耗や過熱が防止もしくは抑制される。そして、その後このルーチンを一旦終了する。
【0081】
一方、例えば、自輪Wの回転数の検出値が、他の3つの他輪Wの回転数の検出値と比較して大きく異なっていて、自輪Wの車輪速センサ13にフェールが発生したと判定されたことにより、前述のステップS2で肯定的に判断された場合には、ステップS7へ進み、各車輪W毎に、それら各車輪Wのモータ1の回転角度(具体的にはモータ1のロータ軸1aの回転角度)が検出され、自輪Wのモータ1と、他の3つ他輪Wのモータ1との回転角度の検出値が互いに比較される。これら各モータ1の回転角度は、前述したように、各車輪Wのモータ1毎に設けられているレゾルバ3により検出することができる。
【0082】
ついで、各車輪Wの回転角度の検出値の比較結果から、自輪Wのレゾルバ3に何らかの異常すなわちフェールが生じているか否かが判断される(ステップS8)。前述の車輪速センサ13のフェールの判定制御と同様に、例えば車両が所定の車速で直進している場合、4輪の各車輪Wのモータ1の回転角度はいずれもほぼ等しい値になる。このとき、仮に自輪Wのモータ1の回転角度の検出値が、他の3つの他輪Wのモータ1の回転角度の検出値と比較して異なっていた場合、その自輪Wのモータ1のレゾルバ3はフェールしていると判断することができる。
【0083】
例えば、自輪Wのモータ1の回転角度の検出値が、他の3つの他輪Wのモータ1の回転角度の検出値と比較して大きく異なっていて、自輪Wのモータ1のレゾルバ3にフェールが発生したと判定されたことにより、このステップS8で肯定的に判断された場合には、ステップS9へ進み、その自輪Wのモータ1の回転制御が中止され、その後、このルーチンを一旦終了する。すなわち、モータ1のレゾルバ3にフェールが発生した場合は、そのモータ1を適正に制御することが不可能になるため、そのモータ1に対する制御が速やかに中止される。
【0084】
これに対して、例えば、各車輪Wのモータ1の回転角度の検出値がいずれも等しく、自輪Wのモータ1のレゾルバ3にフェールは生じていないと判定されたことにより、ステップS8で否定的に判断された場合には、ステップS10へ進み、そのレゾルバ3による検出値と、車輪速センサ13による検出値とが互いに比較される。
【0085】
そして、モータ1のレゾルバ3による検出値と自輪Wの車輪速センサ13による検出値とのずれが、インホイールモータユニットM内の駆動捻れの閾値よりも大きいか否かが判断される(ステップS11)。モータ1のレゾルバ3による検出値と自輪Wの車輪速センサ13による検出値とのずれとは、具体的には、車輪速センサ13による検出した自輪Wの回転数を基に求めた自輪Wの回転角度と、その自輪Wに設けられたモータ1のレゾルバ3により検出したモータ1の回転角度とのずれすなわち偏差のことである。また、インホイールモータユニットM内の駆動捻れとは、通常時すなわち伝動軸4の最弱部位4cが分割されていない状態で、モータ1の出力トルクにより車輪Wを駆動する場合に、モータ1から車輪Wに至る動力伝達経路において、軸の捻れや歯車のバックラッシなどの影響により不可避的に発生する捻れのことであり、その状態におけるモータ1の回転角度と車輪Wの回転角度とのずれすなわち偏差としてその大きさ(量)を表すことができる。そして、駆動捻れの閾値とは、例えば、上記の通常時に不可避的に発生する捻れの理論上の最大値であり、インホイールモータユニットM内の発生した駆動捻れが、通常時に不可避的に発生する程度の捻れ量であるか、あるいは通常時に不可避的に発生する捻れ量の範囲を超えた異状な捻れ量であるかを判定するための閾値として設定された所定の値である。
【0086】
したがって、モータ1のレゾルバ3による検出値と自輪Wの車輪速センサ13による検出値とのずれが、インホイールモータユニットM内の駆動捻れの閾値以下であることによって、このステップS11で否定的に判断された場合は、その時点におけるインホイールモータユニットM内において、伝動軸4の最弱部位4cが分割されるなどのフェールは発生していないと判断し、以降の制御は実行されずに、このルーチンを一旦終了する。
【0087】
これに対して、モータ1のレゾルバ3による検出値と自輪Wの車輪速センサ13による検出値とのずれが、インホイールモータユニットM内の駆動捻れの閾値よりの大きくなったことにより、ステップS11で肯定的に判断された場合には、ステップS5へ進み、自輪WのインホイールモータユニットMにおける伝動軸4の最弱部位4cが分割されたと判断される。すなわち、何らかの要因により、自輪W側から許容範囲を超えた大きな外力がインホイールモータユニットM内に入力されて、前述したように、そのインホイールモータユニットMの動力伝達経路内で最も耐久性が低くなるように設定されている伝動軸4の最弱部位4cで分割が生じ、その結果、自輪Wの回転角度とモータ1の回転角度との値に乖離が発生したものと判断される。
【0088】
伝動軸4の最弱部位4cが分割されたと判断されると、前述したように、ステップS6へ進み、その最弱部位4cの分割に対応するモータ1の制御、具体的にはモータ1によるオイルポンプ10の駆動制御が実行される。そして、その後このルーチンを一旦終了する。
【0089】
この発明に係る駆動装置を対象とした制御の他の例として、伝動軸4の最弱部位4cが分割されるなどのフェールが発生した場合のモータ1によるオイルポンプ10の制御(フェール発生時のオイルポンプ制御)の例を、図6のフローチャートで説明する。この図6のフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図6において、先ず、伝動軸4の最弱部位4cが分割されるフェールが発生したか否かが判断される(ステップS21)。これは、前述した図5のフローチャートで示すフェール判定制御の結果に基づいて判断することができる。
【0090】
伝動軸4の最弱部位4cが分割されるフェールが未だ発生していないことにより、このステップS21で否定的に判断された場合は、このフェール発生時のオイルポンプ制御を行う必要はないので、以降の制御は実行されずに、このルーチンを一旦終了する。
【0091】
これに対して、伝動軸4の最弱部位4cが分割されるフェールが発生したことにより、ステップS21で肯定的に判断された場合には、ステップS22へ進み、温度センサ14により伝動軸4の最弱部位4cにおける分割部分の温度(分割部温度)Tbが検出され、その分割部温度Tbが、焼き付き温度Tsよりも高いか否かが判断される。ここで、焼き付き温度Tsとは、伝動軸4の最弱部位4cが分割され、その分割部分が互いに摺動しながら相対回転した場合に焼き付きが発生するもしくは発生する可能性がある温度として設定した所定の温度であり、その分割部分で焼き付きが発生する可能性を判断するための閾値として設定した所定の値である。
【0092】
したがって、分割部温度Tbが焼き付き温度Tsよりも高くなったことにより、このステップS22で肯定的に判断された場合は、ステップS23へ進み、最弱部位4cの分割に対応するモータ1の制御、具体的にはモータ1によるオイルポンプ10の駆動制御が実行される。すなわち、分割部温度Tbが焼き付き温度Tsよりも高くなった場合は、最弱部位4cにおける分割部分で焼き付きが発生してしまう可能性があるので、その焼き付きの発生を回避するため、モータ1が制御されてオイルポンプ10が適宜駆動され、分割部分へオイルが強制的に供給される。そして、その後このルーチンを一旦終了する。
【0093】
一方、分割部温度Tbが未だ焼き付き温度Ts以下であることにより、ステップS22で否定的に判断された場合には、ステップS24へ進み、モータ1に設けられたサーミスタなどにより検出したモータ1の発熱部(例えばコイルエンド)の温度(サーミスタ温度)Tmが、閾値温度Taよりも高いか否かが判断される。ここで、閾値温度Taとは、例えばモータ1の発熱部が高温になってそのモータ1の回転制御に支障をきたす温度の下限値であり、通常時のオイルの供給によるモータ1の冷却に加えて、モータ1の冷却量すなわちモータ1への強制的なオイルの供給量を増大させる必要性を判断するための閾値として設定した所定の値である。
【0094】
したがって、サーミスタ温度Tmが未だ閾値温度Ta以下であることにより、このステップS24で否定的に判断された場合は、前述のステップS21へ戻り、従前の制御が繰り返される。これに対して、サーミスタ温度Tmが閾値温度Taよりも高くなったことにより、ステップS24で肯定的に判断された場合には、前述のステップS23へ進み、モータ1の高温状態に対応するモータ1の制御、具体的にはモータ1によるオイルポンプ10の駆動制御が実行される。すなわち、サーミスタ温度Tmが閾値温度Taよりも高くなった場合は、モータ1の発熱部分を一層冷却する必要があるので、モータ1が制御されてオイルポンプ10が適宜駆動され、モータ1の発熱部分へオイルが強制的に供給される。そして、その後このルーチンを一旦終了する。
【0095】
以上のように、この発明に係る駆動装置およびその制御装置によれば、車輪Wと駆動力源であるモータ1との間の動力伝達経路の中で、伝動軸4の一部分に、車輪Wに加わる外力に対する強度が他の部位と比較して最も低い最弱部位4cが形成される。また、その最弱部位4cが分割された状態でも駆動することが可能なオイルポンプ10が設けられる。その結果、例えば走行中の車輪Wに想定した範囲を超える大きな外力が作用した場合に、車輪Wとモータ1との間の動力伝達経路のうち伝動軸4の最弱部位4cを最初に分割させることができる。言い換えると、動力伝達経路の他の部位に対する外力の影響を回避もしくは緩和して伝動軸4の最弱部位4cのみを分割させることができる。また、そのように伝動軸4の最弱部位4cが分割された場合であっても、オイルポンプ10を駆動することができる。すなわち、車輪W側からの過大入力に対するいわゆるフェールセーフ機能を確立させることができる。
【0096】
そして、そのフェールセーフ機能を有した構成の駆動装置を制御の対象として、例えば、モータ1のレゾルバ3、車輪Wの車輪速センサ14、最弱部位4cの温度をモニターする温度センサ14などの各センサの検出値から駆動装置内の異常の有無について判断され、その異常が検出された場合に、その異常の状態に応じてモータ1の回転が適宜に制御される。そのため、例えば車輪Wに想定した範囲を超える大きな外力が作用して伝動軸4の最弱部位4cが分割された状態で、オイルポンプ10によるオイルの供給が必要な場合に、モータ1の回転を制御してオイルポンプ10の駆動状態を適切に制御し、オイルの供給を必要とする個所へ適切にオイルを供給することができる。
【0097】
なお、この発明は、上述した具体例に限定されないのであって、上述した具体例では、この発明に係る駆動装置を、車両のインホイールモータに適用した構成例を示しているが、インホイールモータに限らず、車輪毎にドライブシャフトや変速機構などを介して駆動力源としてモータ・ジェネレータなどが設けられた駆動装置に、この発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】この発明の駆動装置を適用可能な構成例を模式的に示す概念図である。
【図2】この発明の駆動装置における最弱部位の構成の一例を説明するための模式図である。
【図3】この発明の駆動装置における最弱部位の他の構成例を説明するための模式図である。
【図4】この発明の駆動装置を4輪の車両の搭載した状態を説明するための模式図である。
【図5】この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明の制御装置による他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
1…モータ(駆動力源)、 3…レゾルバ(回転数センサ,回転角センサ)、 4…伝動軸、 4a…本体部、 4b…円筒部、 4c…最弱部位、 4d…油路、 4i…内周部、 4o…外周部、 5…カウンタギヤ対、 7,8…軸受け、 9…プラネタリギヤ、 10…オイルポンプ、 10a…回転軸、 12…電子制御装置(ECU)、 13…車輪速センサ、 14…温度センサ、 M…インホイールモータユニット、 W…車輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と該車輪毎に個別に設けられた駆動力源との間で伝動軸を含む動力伝達経路を構成し、該伝動軸を経由して動力を伝達させる駆動装置において、
前記伝動軸に、前記車輪に作用する外力に対する耐久性が前記動力伝達経路の他の部位と比較して最も低い最弱部位が形成されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記最弱部位は、前記伝動軸としての断面積を前記伝動軸の他の部位の断面積と比較して最も小さくすることにより前記耐久性が低下させられていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記最弱部位は、オイルを流通させる油路を設けることにより前記耐久性が低下させられていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記最弱部位は、材質を前記伝動軸の他の部位の材質と比較して最も弱くすることにより前記耐久性が低下させられていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記伝動軸の前記最弱部位から前記駆動力源側の部分と前記最弱部位から前記車輪側の部分とが互いに離隔する方向の力を生じさせる機構が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項6】
前記機構は、前記伝動軸と前記駆動力源との間および前記伝動軸と前記車輪との間でそれぞれ動力伝達を行う際に、それぞれ前記離隔する方向の推力を発生するはすば歯車を用いた歯車伝動機構を含むことを特徴とする請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記伝動軸の前記駆動力源側の端部は、外周部と内周部とを有する円筒状に形成されていて、該外周部に一方の前記歯車伝動機構が設けられ、かつ該内周部に該伝動軸を回転自在に支持する軸受けが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記伝動軸は、少なくとも一部が中空軸として構成されていて、
前記伝動軸の中空部分に、オイルポンプの回転軸が該伝動軸と一体回転可能に挿入されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項9】
前記回転軸は、前記伝動軸の前記最弱部位から前記駆動力源側の部分に一体回転可能に嵌合させられていることを特徴とする請求項8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記回転軸は、前記伝動軸の前記最弱部位よりも前記車輪側の内周部まで挿入させられていることを特徴とする請求項8または9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記駆動力源は、前記伝動軸が前記最弱部位で分割された場合に、前記オイルポンプを駆動可能に構成されていることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項12】
前記駆動力源は、前記車輪のホイールに内蔵されたインホイールモータを含むことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項13】
車輪と該車輪毎に個別に設けられた電動機との間で伝動軸を含む動力伝達経路を構成し、該伝動軸を経由して動力を伝達させる駆動装置の制御装置において、
前記伝動軸に、前記車輪に作用する外力に対する耐久性が前記動力伝達経路の他の部位と比較して最も低い最弱部位が形成されているとともに、
前記伝動軸が前記最弱部位で分割された場合に前記電動機の出力トルクにより駆動可能なオイルポンプと、
前記駆動装置の運転状態を検出するセンサと、
前記センサの検出値に基づいて前記駆動装置に関連する各部の異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段により検出した前記異常の状態に基づいて前記電動機を制御する電動機制御手段とを備えている
ことを特徴とする駆動装置の制御装置。
【請求項14】
前記センサは、前記車輪の回転数を検出する車輪速センサと、前記電動機の回転数を検出する回転数センサとを含み、
前記異常検出手段は、前記車輪速センサの検出値に基づいて当該車輪速センサに異常はないと判断し、かつ当該車輪速センサにより検出した前記車輪の回転数と当該車輪に設けられた前記電動機の前記回転数センサにより検出した当該電動機の回転数とのずれが判断基準として定めた閾値を超えた場合に、前記最弱部位が分割されたと判断する手段を含む
ことを特徴とする請求項13に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項15】
前記センサは、前記電動機の回転角度を検出する回転角センサを更に含み、
前記異常検出手段は、前記車輪速センサの検出値に基づいて当該車輪速センサに異常があると判断し、かつ当該車輪速センサにより検出した前記車輪の回転数と当該車輪に設けられた前記電動機の前記回転角センサにより検出した当該電動機の回転角度とのずれが判断基準として定めた閾値を超えた場合に、前記最弱部位が分割されたと判断する手段を含む
ことを特徴とする請求項13または14に記載の駆動装置の制御装置。
【請求項16】
前記センサは、前記オイルポンプによりオイルを供給する被供給部の温度を検出する温度センサを更に含み、
前記電動機制御手段は、前記異常検出手段により前記最弱部位が分割されたと判断され、かつ前記温度センサにより検出した前記温度が前記被供給部へのオイルの供給を必要とする判断基準として定めた閾値を超えた場合に、前記電動機を制御して前記オイルポンプを駆動させる手段を含む
ことを特徴とする請求項13ないし15のいずれかに記載の駆動装置の制御装置。
【請求項17】
前記電動機は、前記車輪のホイールに内蔵されたインホイールモータを含むことを特徴とする請求項13ないし16のいずれかに記載の駆動装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−47121(P2010−47121A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213211(P2008−213211)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】