説明

駐車スペース案内装置、駐車スペース案内方法および駐車スペース案内プログラム

【課題】案内するスペースの下限を設定する操作を運転者に行わせることなく当該下限以上のスペースを案内する駐車スペース案内装置、駐車スペース案内方法および駐車スペース案内プログラムを提供する。
【解決手段】車両を駐車するスペースを示す情報を取得するスペース情報取得手段と、所定の閾値以上の長さの前記スペースを案内するスペース案内手段と、前記スペース案内手段で案内したスペースに前記車両が駐車されたか否かを判定する駐車判定手段と、前記駐車判定手段で前記案内したスペースに駐車されたと判定されると、前記駐車されたスペースの長さで前記閾値を更新する閾値更新手段と、を備える駐車スペース案内装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車するスペースを案内する駐車スペース案内装置、駐車スペース案内方法および駐車スペース案内プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を駐車するスペースを運転者に案内する駐車スペース案内装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の駐車スペース検出装置では、車両の大きさに一定のマージンを加えた長さ以上のスペースを運転者に案内している。そして、特許文献1にはそのマージンを運転者が設定してもよいと記載されている。これにより運転者は自身が駐車し易い長さ以上のスペースのみが案内されるようになる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−131169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の駐車スペース検出装置によると、運転者はマージンの大きさを示す数字を入力したりマージンの大きさを大中小の選択肢から選択したりするなどの何らかの設定操作をしなければならないという問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、案内するスペースの下限を設定する操作を運転者に行わせることなく当該下限以上のスペースを案内する駐車スペース案内装置、駐車スペース案内方法および駐車スペース案内プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明においては、車両を駐車するスペースを示す情報をスペース情報取得手段で取得し、取得した情報が示すスペースのうち所定の閾値以上の長さのスペースをスペース案内手段により運転者に案内する。そして、案内したスペースに車両が駐車されたか否かを駐車判定手段で判定し、案内したスペースに車両が駐車されると、駐車されたスペースの長さで閾値を更新する。
【0006】
車両が駐車されたスペースの長さで閾値を更新するので、次回駐車するときの案内では今回駐車されたスペース未満のスペースは案内されなくなる。例えば、あるスペースを案内したとき、運転者はそのスペースを狭いと感じてその案内に従わず、より長いスペースが案内されたときにその長いスペースに駐車したとする。この場合、次回駐車するときの案内では、狭いと感じたスペースと同程度の長さのスペースは閾値未満となり案内されない。すなわち、今回駐車されたスペースの長さが案内の下限となる。よって本発明によると、案内するスペースの下限を設定する操作を運転者に行わせることなく当該下限以上のスペースを案内できる。
【0007】
なお、ここでは、少なくとも次回駐車するときの案内において、今回駐車されたスペースに基づいて今回の駐車に際して無視された比較的小さなスペースを案内しないように構成すればよい。
【0008】
スペース情報取得手段は、「車両を駐車するスペースを示す情報」として、例えばスペースを検出する検出手段の出力信号を取得することができる。具体的には例えば測距センサの出力信号やカメラで撮像した画像を「車両を駐車するスペースを示す情報」として取得することができる。スペース情報取得手段は測距センサの出力信号やカメラで撮像した画像を解析して車両の周囲のスペースを認識することにより、駐車するスペースの位置と長さを特定することができる。
【0009】
なお、スペース情報取得手段は、スペースを検出する検出手段の出力信号を外部の装置で解析した結果を「車両を駐車するスペースを示す情報」として当該外部の装置から取得する構成とすることもできる。
【0010】
スペース案内手段は、「車両を駐車するスペースを示す情報」が示すスペースのうち長さが所定の閾値以上のスペースを運転者に案内するが、その案内は画面表示によって行ってもよいし、音声によって行ってもよい。画面表示によって行う場合は案内のための専用のディスプレイを備えてもよいし、ナビゲーション装置等のディスプレイを用いてもよい。画面表示による案内では、例えば上方から見たときの車両とスペースとの位置関係を表示することにより案内してもよいし、ディスプレイの上下左右を車両の前後左右に対応させ、スペースの方向を示す矢印を画面に表示することによって案内してもよい。また、音声による案内の場合はスペースの方向を音声で案内することによって行ってもよい。
【0011】
また、スペースの案内は、運転者がスペースの位置を認識できるようなタイミングで実施されればよい。例えば、縦列駐車をするスペースを案内する場合は、スペースの横を通り過ぎたタイミングで「駐車可能です」とだけ音声案内してもよい。通り過ぎたタイミングで案内が行われることを運転者が知っていれば、運転者は今通り過ぎたスペースが自身の望む下限以上のスペースであることを理解するからである。
【0012】
駐車判定手段は、スペース案内手段で案内したスペースに車両が駐車されたか否かを判定するが、この判定は、例えば現在位置を示す情報を用いて行うことができる。より具体的には、駐車された車両の現在位置をナビゲーション装置などの位置情報取得手段から取得し、現在位置と案内したスペースの位置とが一致すれば、スペース案内手段で案内したスペースに車両が駐車されたと判定できる。また、駐車判定手段は、スペースを案内した後の車両の移動軌跡を特定し、移動後の位置と案内したスペースの位置とが一致すれば案内したスペースに車両が駐車されたと判定してもよい。駐車の判定は例えば、車両の車速が0である状態でドアロック状態のオンからオフへの変化、変速機のポジションのパーキングへのシフト、シートベルトが締められている状態からはずされた状態への変化、イグニッションのオンからオフへの変化、パーキングブレーキのオフからオンへの変化、ハザードランプのオフからオンへの変化、ドアレバーへの接触などを検知して判定することができる。
【0013】
閾値更新手段は、駐車されたスペースの長さで閾値を更新することができればよく、これにより、駐車されたスペースより小さなスペースを次回は案内対象にしないように構成することができればよい。なお、閾値更新手段は「車両が駐車されたスペースの長さ」で閾値を更新するが、この「車両が駐車されたスペースの長さ」は「車両を駐車するスペースを示す情報」から特定できる。
更に、スペース案内手段は、案内したスペースの長さを、当該スペースに車両が駐車されたか否かを示す識別情報とともに履歴に記録してもよい。そして、閾値更新手段は、車両が駐車されると、履歴を参照して、当該駐車されたスペース未満のスペースを案内した回数を合計し、合計した回数が所定回数以上であれば当該駐車されたスペースの長さで閾値を更新してもよい。つまり、その長さ未満のスペースの案内を運転者が望まないというある程度の確証を得られたときその長さで閾値を更新してもよい。これにより、むやみに案内するスペースの長さの下限が上がってしまうことを防止できる。
【0014】
また、閾値更新手段は、当該駐車されたスペース未満のスペースを案内した回数のうち案内したスペースに車両が駐車されなかった回数を合計し、合計した回数が所定回数以上であれば当該駐車されたスペースの長さで閾値を更新してもよい。
履歴には、案内したスペースのうち車両が駐車されなかったスペースの長さのみを記録するようにしてもよい。案内に従って駐車された履歴は必ずしも必要ないからである。
本発明の手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような駐車スペース案内装置、プログラム、方法は、単独の駐車スペース案内装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような駐車スペース案内装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、駐車スペース案内装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)第一実施形態:
(1−1)ナビゲーション装置の構成:
(1−2)駐車スペース案内処理:
(2)第二実施形態:
(3)他の実施形態:
【0016】
以下、上述した順で説明する。
(1)第一実施形態:
(1−1)ナビゲーション装置の構成:
図2は、本発明にかかる駐車スペース案内装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU、RAM、ROM等を備える制御部11と記憶媒体12とを備えており、記憶媒体12やROMに記憶されたプログラムを制御部11で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラムを実行可能であり、当該ナビゲーションプログラムはその機能の一つとして車両を駐車するスペースを案内する機能を備えている。
【0017】
本実施形態における車両(ナビゲーション装置10が搭載された車両)は、ナビゲーションプログラムによる機能を実現するために車速センサ13、GPS(Global Positioning System)受信部14、測距センサ15、舵角センサ16、ジャイロセンサ17、表示装置18、音声出力装置19を備えている。これら各部と制御部11とが協働することによってナビゲーションプログラムによる機能を実現する。また、車両は案内したスペースに駐車するための運転操作を支援する駐車支援装置20も備えている。
【0018】
車速センサ13は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部11は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の速度を取得する。
GPS受信部14は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部11はこの信号を取得して車両の現在位置を取得する。
【0019】
測距センサ15は、車両の進行方法に垂直な方向(車両の左右方向)へ超音波や光などの送信波を送信し、車両の左右にある物体で反射した反射波を受信して車両と車両の左右にある物体との距離を測定し、距離に応じた出力信号を出力する。制御部11は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得する。本実施形態では測距センサ15は車両の側面に設けられているものとする。
舵角センサ16は、車両のステアリングの回転角に対応した信号を出力する。制御部11は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、ステアリングの回転角を示す情報を取得する。
【0020】
車速センサ13や舵角センサ16は、各センサの出力信号が示す情報を取得するために利用されるとともに、GPS受信部14の出力信号から特定される車両の現在位置を補正するためにも利用される。
むろん、車両の現在位置を取得するための構成は上述の構成に限られず、ジャイロセンサ17等を利用して車両の動作を取得する構成を採用してもよいし、車速センサ13やジャイロセンサ17等の出力信号や車両の軌跡に基づいて現在位置を補正する構成を採用しても良い。なお、車両の動作を示す情報を取得するための構成は、ほかにも種々の構成を採用可能であり、自車両の現在位置をセンサやカメラによって特定する構成や、GPSからの信号や地図上での車両の軌跡、車車間通信、路車間通信等によって自車両動作情報を取得する構成等を採用可能である。
【0021】
表示装置18は例えばLCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイ、ディスプレイを制御するディスプレイ制御部などで構成されている。
音声出力装置19は、音声信号を増幅するアンプ部、増幅された音声信号を発音するスピーカなどで構成されている。
制御部11は、ナビゲーションプログラムを実行することにより、GPS受信部14の出力情報や記憶媒体12に記憶されている地図情報21等に基づいて車両の経路探索等を行い、表示装置18や音声出力装置19を介して経路案内等を行う。
【0022】
また、制御部11は、ナビゲーションプログラムを実行することにより、測距センサ15や車速センサ13の出力信号に基づいて所定の閾値以上のスペースを判定し、表示装置18や音声出力装置19を介して運転者に案内する。
【0023】
(1−2)駐車スペース案内処理:
図1(1A)、図1(1B)および図1(1C)は、駐車するスペースの案内を説明するための模式図である。ここでは本発明にかかる駐車スペース案内装置を搭載している車両31を進行方向左側にあるスペースに縦列駐車する場合を例に説明する。
図1(1A)に示す例ではスペース35とスペース36とがあり、スペース35はスペース36より狭いとする。そして、いずれのスペースの長さも現在設定され記憶媒体12に記憶されている閾値以上であるとする。ここでスペースの「長さ」とは、スペースの、車両の進行方向に平行な方向の幅のことをいう。閾値については後述する。
【0024】
まず、運転者は駐車スペース案内装置に縦列駐車をするためのスペースを案内するよう指示し、図1(1A)に示すようにスペース35の横を通り過ぎるように車両31を走行させる。このとき測距センサ15により車両31と車両31の左側の物体との距離Hが所定時間間隔で測定され、その距離Hを用いてスペース35が検出される。そして、検出されたスペース35の長さが現在設定されている閾値以上であれば、測距センサ15がスペース35を通り過ぎた後の所定のタイミングで、スペース35が運転者に案内される。
【0025】
このとき運転者はスペース35を狭いと感じ、その案内に従わず更に車両31を前進させ、スペース35と同様にしてスペース36が検出され、その検出されたスペース36が案内されたときにその案内に従ってスペース36に駐車したとする。図1(1B)は車両31がスペース36に駐車された状態を示している。スペース36に車両31が駐車されると、現在設定され記憶媒体12に記憶されている閾値をスペース36の長さで更新する。スペース36の長さで閾値を更新するので、スペース36より狭いスペース35は結果として閾値未満となる。この結果、図1(1C)に示すように、次回縦列駐車をするときはスペース35を通過してもスペース35は運転者に案内されなくなる。一方、スペース36は閾値以上なので、スペース36を通り過ぎたときには前回と同じく案内される。
つまり、スペース36に駐車したことでスペース36の長さが案内するスペースの長さの下限となり、運転者は何らかの設定操作をすることなく案内するスペースの長さの下限を設定できたことになる。
【0026】
次に、上述した処理を実行する駐車スペース案内装置の処理について説明する。
図3は、駐車スペース案内装置の処理の流れを示すフローチャートである。本処理は所定時間間隔で実行される。
S105では、CPUはスペースの案内を開始するか否かを判定する。具体的には、CPUは所定のスイッチの状態を判定し、スイッチがオンであればS110に進む。このスイッチは運転者が駐車スペース案内装置に縦列駐車をするためのスペースの案内開始を指示するためのものである。CPUはスイッチがオフであれば処理を終了し、所定時間経過後に再度本処理を実行する。
運転者は上述したスイッチをオンにして案内を指示した後、図1(1A)で説明したように車両を走行させる。
【0027】
S110では、CPUは測距センサ15から出力信号(測定結果)を取得して車両の左側にあるスペースを検知する。以下、具体的に説明する。
図1(1A)に示すようにCPUは車両と車両の左側にある物体との距離Hを測定した測定結果を測距センサ15から所定時間間隔で取得する。
この間に車両は前進しているので、進行方向に離間する複数の測定位置で距離Hが測定される。測定位置と測定位置との間隔は、測距センサ15が距離Hを測定する時間間隔と車速センサ13から取得する車速とから特定できる。なお、各測定位置でGPS受信部14により位置情報を取得することにより各測定位置を特定し、それにより各測定位置間の間隔を特定するようにしてもよい。
CPUは、各測定位置における距離Hおよび測定位置間の間隔から、車両の側方(図に示す例では左側)にあるスペースを検知する。
測距センサ15から取得する測定結果および車速センサ13から取得する車速は特許請求の範囲に記載の「車両を駐車するスペースを示す情報」に相当する。
【0028】
S115では、CPUは検知したスペースに縦列駐車が可能であるか否かを判定する。縦列駐車をするためには車両の全長分の縦幅に加え、前後車両との間に車両の全長や旋回半径などから特定される前後移動のための一定以上のマージンが必要である。このため、CPUは検知したスペースに車両の全長と前後一定のマージンとを合計した以上の縦幅(進行方向に平行な方向の幅)があり、かつ車両の横幅以上の横幅(進行方向に垂直な方向の幅)があれば、縦列駐車が可能であると判定する。
ここで、スペースの横幅は前述した距離Hから特定することができる。一方、スペースの縦幅は例えば距離Hの変化に車両の横幅以上の増加があった測定位置から、車両の横幅以上の減少があった測定位置までの間隔として特定することができる。
CPUは縦列駐車が可能であればS120に進み、縦列駐車が可能でなければ処理を終了する。
【0029】
S120では、CPUは案内するスペースの閾値を読み出す閾値読み出し処理を実行する。閾値読み出し処理の詳細は後述する。
S125では、CPUはスペースを案内する処理を実行するかしないかを判定する案内判定処理を実行する。具体的には、CPUはS110で検出したスペースの長さとS120で読み出した閾値とを比較し、検出したスペースの長さが閾値以上であれば案内フラグをオンに設定し、閾値未満であれば案内フラグをオフに設定する。案内判定処理の詳細は後述する。
【0030】
S130では、CPUは案内フラグがオンであるかを判定する。CPUは案内フラグがオンであればS135に進み、オフであれば処理を終了する。
S135では、CPUはスペースの案内を実行する。スペースの案内は、運転者がスペースの位置を認識できるようなタイミングで実施されればよい。例えば、測距センサ15がスペースの横を通り過ぎた後の所定のタイミングで案内してもよい。また、この場合の具体的な案内方法としては、例えば「駐車可能です」とだけ音声案内してもよい。通り過ぎたタイミングで案内が行われることを運転者が知っていれば、「駐車可能です」とだけ音声案内すれば運転者は今通り過ぎたスペースが自身の望む下限以上のスペースであることを理解するからである。
【0031】
S140では、CPUは案内したスペースの長さを履歴に記録する。
図4(4A)は、履歴の一例を示す模式図である。図示する例は過去に500cm、520cm、600cm、510cm、550cmという長さのスペースが案内されたことを示している。
【0032】
次に、車両が駐車された後に実行する閾値更新処理について説明する。
以下の説明では、運転者は図4(4A)に示す500cm、520cm、600cmおよび510cmのスペースが案内されたときその案内に従わず、550cmのスペースが案内されたときその案内に従って550cmのスペースに駐車した場合を例に説明する。
【0033】
図5は、閾値を更新する処理のフローチャートである。本処理は車両が駐車されると実行される。
S205では、CPUは案内したスペースに車両が駐車されたか否かを判定する。
案内したスペースに車両が駐車されたか否かは、例えば車両の現在位置を示す情報を用いて判定することができる。より具体的には、車両の現在位置を示す情報をGPS受信部14から取得し、取得した情報が示す位置と案内したスペースの位置とが一致すれば、案内したスペースに車両が駐車されたと判定できる。なお、スペースを案内した後の車両の移動軌跡を車速センサ13、舵角センサ16、ジャイロセンサ17などの出力信号を用いて特定し、移動後の位置と案内したスペースの位置とが一致すれば、案内したスペースに車両が駐車されたと判定してもよい。
【0034】
S210では、CPUは過去にスペースを案内した履歴があるかを判定する。CPUは履歴に一つでもスペースの長さが記録されていれば履歴があると判定し、一つも記録されていなければ履歴がないと判定する。
S215では、CPUは履歴を参照し、一定の範囲毎に案内した回数を合計する。
図4(4B)は図4(4A)に示す履歴を参照して一定の範囲毎に案内した回数を合計した結果を示す模式図である。図4(4B)に示す例では20cm間隔毎に回数を合計している。より具体的に説明すると、長さを500cm以下、500cmより長く520cm以下、520cmより長く540cm以下、540cmより長く560cm以下、560cmより長く580cm以下、580cmより長く600cm以下、600cmより長い範囲の7範囲に分けて回数を合計している。
【0035】
S220では、CPUは一定の範囲毎に回数を合計した結果から、今回駐車されたスペース以下の長さについての合計結果を抽出する。
図4(4C)は、今回駐車されたスペース以下の長さについての合計結果を抽出した結果を示す模式図である。今回駐車されたスペースの長さは550cmであるので、図4(4C)に示すように540cmより長く560cm以下の範囲以下の合計結果のみが抽出される。
【0036】
S225では、CPUはS220で抽出した結果から、今回駐車されたスペース未満のスペースを案内した回数を合計し、合計回数を所定回数と比較する。CPUは合計回数が所定回数以上であればS230に進み、所定回数未満であれば処理を終了する。
図4(4C)に示す例の場合、今回駐車されたスペースの長さは550cmであり、この550cmのスペースが案内される前に、運転者には550cmのスペース未満のスペースの案内として、500cm以下の範囲のスペースについて1回、500cmより長く520cm以下の範囲のスペースについて2回の案内がされている。従って、今回駐車されたスペース未満のスペースを案内した回数の合計は3回となる。そして、前述したように運転者はそのいずれの案内にも従っておらず、それらのスペースに車両は駐車されていない。
【0037】
例えば運転者がある長いスペースに車両を駐車した場合に、たまたまその長いスペースが案内されたので駐車したに過ぎず、運転者はそのスペース未満のスペースが案内されてもよいと考えている場合もある。にもかかわらず今回駐車されたスペースの長さで直ちに閾値を更新してしまうと、運転者が案内されてもよいと考えている長さのスペースまで案内されなくなる。そのため、車両が駐車されたスペースの長さで直ちに閾値を更新するのではなく、今回駐車されたスペース未満のスペースが案内されることを運転者は望んでいないかどうか判断し、望んでいないというある程度の確証を得られたとき更新することが望ましい。
【0038】
そこで、CPUは今回駐車されたスペース未満のスペースを案内した回数のうち案内したスペースに車両が駐車されなかった回数を所定回数と比較する。CPUは今回駐車されたスペース未満のスペースを案内した回数のうち案内したスペースに車両が駐車されなかった回数が所定回数以上であれば、今回駐車されたスペース未満のスペースが案内されることを運転者は望んでいないと判定する。
【0039】
逆に、所定回数未満であれば、CPUは今回駐車されたスペース未満のスペースが案内されることを運転者は望んでいないとは必ずしもいえないと判定し、閾値を更新しないで処理を終了する。これによりむやみに下限が上がってしまうことを防止する。
例えば「所定回数」を2回とすると、図4(4C)に示す例では合計回数は3回なので、CPUは所定回数以上であるとしてS230に進む。なお、「所定回数」を何回とするかは適宜選択可能な設計事項であり、例えば3回としてもよいし、4回としてもよい。
なお、本実施形態では一定の範囲毎に案内した回数を合計し、合計した結果から今回駐車されたスペース以下の長さについての合計結果を抽出し、抽出した結果から今回駐車されたスペース未満のスペースを案内した回数を合計する場合を例に説明したが、範囲毎の合計などは行わず、図4(4A)の履歴の数値をそのまま利用して「今回駐車されたスペース未満のスペースを案内した回数」を算出してもよい。
【0040】
S230では、CPUは駐車されたスペースの長さが車両の全長の2倍以下であるか否かを判定する。CPUは駐車されたスペースの長さが車両の全長の2倍以下であればS235に進み、2倍よりも大きければ閾値を更新することなく処理を終了する。これは、あまりに大きな値で閾値を更新すると案内できるスペースが少なくなってしまうので、ある一定以上の長さのときは閾値を更新しないようにすることにより、閾値に上限を設けたものである。なお、閾値の上限を車両の全長の2倍とするか否かは適宜選択可能な設計事項であり、例えば2.5倍としてもよい。
【0041】
S235では、CPUは車両が駐車されたスペースの長さで閾値を更新する。上述した例の場合であれば、閾値を550cmに更新する。この結果、次回の案内では550cm未満のスペースはS125において閾値未満と判定され、運転者に案内されなくなる。
S240では、CPUは履歴を全て削除する。履歴を全て削除するのは、古い履歴を残しておくとS225においてそれら古い履歴が常に合計回数に含まれてしまい、長いスペースに駐車する度に閾値が更新されてしまうようになってしまうので、それを防止するためである。
【0042】
次に、前述したS120の閾値読み出し処理について説明する。
図6は、閾値読み出し処理のフローチャートである。
S305では、CPUは記憶媒体12から閾値を読み出す。
S310では、CPUは駐車操作の上達を考慮して閾値を一定値小さくする。これは、徐々に小さいスペースへ案内することで、運転者が気付かないうちに狭いスペースに駐車できるようにするためである。なお、当該ステップS310の処理は省略してもよい。
【0043】
次に、前述したS125の案内判定処理の詳細について説明する。
図7は、案内判定処理のフローチャートである。
S405では、CPUは検出したスペースの長さと閾値とを比較する。CPUは検出したスペースの長さが閾値以上であればS410に進み、閾値未満であればS415に進む。
S410では、CPUは案内フラグをオンにする。これにより、前述したS135で運転者にスペースが案内される。
【0044】
S415では、CPUは案内フラグをオフにする。これにより、前述したS135での運転者への案内は行われなくなる。
【0045】
これにより、検出したスペースの長さが閾値未満の場合は案内フラグをオフにすることにより、運転者への案内は行われなくなる。
以上説明した本発明の第一実施形態による駐車スペース案内装置によると、駐車を案内するスペースの下限を設定する操作を運転者に行わせることなく当該下限以上のスペースを案内できる。
【0046】
図2に示すスペース情報取得部22、スペース案内部23、駐車判定部24、及び閾値更新部25はナビゲーションプログラムを構成するモジュールの一部であり、制御部11はこれらのモジュールを実行することによりスペース情報取得手段、スペース案内手段、駐車判定手段、及び閾値更新手段として機能する。具体的には、図3のS110〜S115はスペース情報取得部22、S120〜140はスペース案内部23の処理に相当する。図5のS205は駐車判定部24、S210〜S225、S235は閾値更新部25の処理に相当する。図8のS505はスペース情報取得部22、S510はスペース案内部23の処理に相当する。
【0047】
(2)第二実施形態:
前述した第一実施形態では、500cm、520cm、600cm、510cm、550cmの順でスペースを案内し、500cm、520cm、600cmおよび510cmのスペースには駐車されず、550cmのスペースに駐車された場合を例に説明した。
しかし、例えば520cmのスペースを案内したときにその520cmのスペースに車両が駐車される場合もある。この場合、520cmは履歴に記録されるが、520cm未満のスペースを案内して運転者がその案内に従わなかった回数は500cmの1回のみであるため所定回数に達しておらず、閾値を520cmで更新する処理はされない。そして、次回の駐車のときに600cm、510cm、550cmの順で案内され、550cmのスペースに車両が駐車されたとする。この場合、履歴において550cm未満のスペースが記録されている回数をそのまま「550cm未満のスペースを案内した回数のうち案内したスペースに駐車されなかった回数」としてしまうと、520cmのスペースは駐車されているにもかかわらず駐車されなかった回数として合計されてしまう。そこで、第二実施形態では、案内したスペースの長さを、当該スペースに車両が駐車されたか否かを示す識別情報とともに履歴に記録する。
【0048】
図8は、第二実施形態にかかるフローチャートである。このフローチャートはS505を追加したことと、S215をS510に変更したことを除いて第一実施形態の図5に示すフローチャートと同一である。図5に示すフローチャートと同一の処理には同一の符号を付して説明を省略する。
S505では、CPUは案内したスペースの履歴に、車両が駐車されたか否かを示す識別情報を付加する。
S510では、CPUは車両が駐車されなかったことを示す識別情報が付加されている長さについてのみ回数を合計する。
【0049】
図9は第二実施形態の履歴の一例を示す模式図である。上段は案内したスペースの長さを示している。下段はそのスペースに車両が駐車されたか否かを示す識別情報を示しており、「1」は駐車されたことを意味し、「0」は駐車されなかったことを意味している。
次回の駐車のときに550cmのスペースに車両が駐車されたとする。この場合、CPUは図8に示すS510において、車両が駐車されなかったことを示す識別情報が付加されている長さ、すなわち「0」が設定されている長さについてのみ回数を合計する。これにより、案内に従って駐車された回数は合計に含まれなくなるので、「今回駐車されたスペース未満のスペースを案内した回数のうち案内したスペースに駐車されなかった回数」をより正確に合計できる。これにより、運転者が案内を望むか否かの判断をより正確に行うことができる。
【0050】
なお、履歴には、案内したスペースのうち車両が駐車されなかったスペースの長さのみを記録するようにしてもよい。履歴は駐車されたスペース未満のスペースを案内した回数のうち案内したスペースに車両が駐車されなかった回数を得るためのものであり、案内に従って駐車された履歴は必ずしも必要ないからである。
【0051】
(3)他の実施形態:
なお、上述した実施形態では測距センサ15の出力信号および車速センサ13の出力信号を「車両を駐車するスペースを示す情報」として取得する場合を例に説明したが、測距センサ15の出力信号および車速センサ13の出力信号を外部の装置で解析した結果を「車両を駐車するスペースを示す情報」として当該外部の装置から取得する構成とすることもできる。
【0052】
また、検出手段はカメラであってもよく、制御部11はカメラで撮像した画像を「車両を駐車するスペースを示す情報」として取得してもよい。
また、上述した実施形態ではスペースを音声で案内する場合を例に説明したが、案内は画面表示によって行ってもよい。画面表示によって行う場合は案内のための専用のディスプレイを備えてもよいし、ナビゲーション装置10の表示装置18を用いてもよい。画面表示による案内では、例えば上面視したときの車両とスペースとの位置関係を表示することにより案内してもよいし、ディスプレイの上下左右を車両の前後左右に対応させ、スペースの方向を示す矢印を画面に表示することによって案内してもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では縦列駐車するためのスペースを案内する場合を例に説明したが、並列駐車をするためのスペースを案内してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(1A)、(1B)および(1C)は駐車するスペースの案内を説明するための模式図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる駐車スペース案内装置のブロック図。
【図3】本発明の一実施形態にかかるフローチャート。
【図4】(4A)、(4B)および(4C)は本発明の一実施形態にかかる履歴の模式図。
【図5】本発明の一実施形態にかかるフローチャート。
【図6】本発明の一実施形態にかかるフローチャート。
【図7】本発明の一実施形態にかかるフローチャート。
【図8】本発明の一実施形態にかかるフローチャート。
【図9】本発明の一実施形態にかかる履歴の模式図。
【符号の説明】
【0055】
10 ナビゲーション装置、11 制御部(駐車スペース案内装置、スペース情報取得手段、スペース案内手段、駐車判定手段、閾値更新手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駐車するスペースを示す情報を取得するスペース情報取得手段と、
所定の閾値以上の長さの前記スペースを案内するスペース案内手段と、
前記スペース案内手段で案内したスペースに前記車両が駐車されたか否かを判定する駐車判定手段と、
前記駐車判定手段で前記案内したスペースに駐車されたと判定されると、当該駐車されたスペースの長さで前記閾値を更新する閾値更新手段と、
を備える駐車スペース案内装置。
【請求項2】
前記スペース案内手段は、案内したスペースの長さを、当該スペースに前記車両が駐車されたか否かを示す識別情報とともに履歴に記録し、
前記閾値更新手段は、前記車両が駐車されると、前記履歴を参照して、当該駐車されたスペース未満のスペースを案内した回数を合計し、前記回数が所定回数以上であれば当該駐車されたスペースの長さで前記閾値を更新する請求項1に記載の駐車スペース案内装置。
【請求項3】
車両を駐車するスペースを示す情報を取得するスペース情報取得工程と、
所定の閾値以上の長さの前記スペースを案内するスペース案内工程と、
前記スペース案内工程で案内したスペースに前記車両が駐車されたか否かを判定する駐車判定工程と、
前記駐車判定工程で前記案内したスペースに駐車されたと判定されると、当該駐車されたスペースの長さで前記閾値を更新する閾値更新工程と、
を含む駐車スペース案内方法。
【請求項4】
車両を駐車するスペースを示す情報を取得するスペース情報取得機能と、
所定の閾値以上の長さの前記スペースを案内するスペース案内機能と、
前記スペース案内機能で案内したスペースに前記車両が駐車されたか否かを判定する駐車判定機能と、
前記駐車判定機能で前記案内したスペースに駐車されたと判定されると、当該駐車されたスペースの長さで前記閾値を更新する閾値更新機能と、
をコンピュータに実現させる駐車スペース案内プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−56894(P2009−56894A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224679(P2007−224679)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】