説明

高さ測定装置及び高さ測定方法

【課題】鏡面性を持つ試料の各位置の高さを正確に求めることができる技術を提供する。
【解決手段】撮像部2は、例えば所定のフレームレートで、試料Sの画像である試料画像を撮像する。輝線抽出部は、撮像部2により順次に撮像された試料画像から輝線を抽出し、所定の基準高さ及び基準傾きを示す基準輝線に対する各輝線のずれw(x)を求める。高さ算出部は、w(x)=2L・(d/dx)・d(x)+2sinθ・d(x)に、輝線抽出部により抽出された輝線のずれw(x)を代入することで、基準高さからの試料Sの高さd(x)を順次に算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の形状分布を測定する技術であり、特に半導体基板の凹凸、圧延材の歪による凹凸などを測定する記述に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、実装部品の上面に光ビームを照射し、実装部品からの正反射光をスクリーンに投影し、スポット光を観測し、スポット光の位置の変化に基づいて実装部品の高さを測定する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。そして、特許文献1では、測定した高さが基準高さと一致しない場合、実装部品の高さの公称値を用いて、測定位置をずらす技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の手法では、実装部品の高さの公称値を予め取得しておく必要があり、公称値が未知の部品については高さを測定することができないという問題がある。
【0004】
特許文献2には、板材に写った棒状光源の虚像をX座標及びY座標で規定される各ブロックに分割し、2値化処理を行い、輝線の各分割領域のデータに基づき、輝線の形態に適応した関数式(Y=a0+a1X+a2X+a3X+a4X+a5X+a6X)を設定する。そして、この関数式を用いて輝線の各分割領域のX方向位置を求め、輝線を関数式で近似し、輝線の検出精度の向上を図る技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2では、試料に凹凸がある場合、棒状光源の虚像が曲がって観測され、試料の凹凸を精度良く検出することができないという問題がある。
【0006】
特許文献3には、下記の技術が開示されている。まず、搬送されているアルミ圧延板の鏡面反射光をカメラにより連続撮像し、アルミ圧延板の凹凸を示す高輝度部を含むフレーム画像データを順次に取得する。このフレーム画像データは、圧延板の凹凸がY座標で示され、圧延板の幅方向がX座標で示されている。そして、各X座標について、連続する複数のフレーム画像データでの高輝度部のY座標の差を求め、高輝度部のY座標の最大差を特定し、特定した最大差が所定の値より大きい場合、該当するX座標の1ライン上に凹凸が存在すると判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−140932号公報
【特許文献2】特開平6−94439号公報
【特許文献3】特開2010−139455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3の手法では、単に、高さの変化が一定以上であるX座標を特定し、そのX座標上に凹凸が存在するか否かを判定しているにすぎず、圧延板の各位置の高さを求めるものではない。
【0009】
本技術の目的は、鏡面性を持つ試料の各位置の高さを正確に求めることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明による高さ測定装置は、鏡面性を有する試料を搬送する搬送部と、前記試料に拡散光を照射する光源と、前記光源により照射された試料からの鏡面反射光を受光し、前記鏡面反射光を示す輝線を含む試料画像を順次に撮像する撮像部と、前記撮像部により順次に撮像された試料画像から輝線を抽出し、所定の基準高さ及び基準傾きを示す基準輝線に対する各輝線のずれを求める輝線抽出部と、前記基準高さからの前記試料の高さに基づく前記基準輝線からの前記輝線のずれを示す高さずれ成分と、前記基準傾きからの前記試料の傾きに基づく前記基準輝線からの前記輝線のずれを示す傾きずれ成分との一次結合で前記基準輝線に対する前記輝線のずれを表す方程式に、前記輝線抽出部により抽出された輝線のずれを代入することで、前記試料の高さを順次に算出する高さ算出部とを備えている。
【0011】
この構成によれば、搬送されている試料を連続撮像することで、正反射光を示す輝線を含む試料画像が順次に取得される。そして、基準高さからの試料の高さに基づく基準輝線からの輝線のずれを示す高さずれ成分と、基準傾きからの試料の傾きに基づく基準輝線からの輝線のずれを示す傾きずれ成分との一次結合によって基準輝線に対する輝線のずれを表す方程式を用いて試料の高さが求められている。そのため、鏡面性を持つ試料の高さを精度良く求めることができる。
【0012】
また、搬送されている試料が連続撮像されているため、試料の搬送方向における各位置の高さを順次に求めることができ、試料の表面形状を求めることができる。
【0013】
(2)前記高さずれ成分は、2sinθ・d(x)で表され、前記傾きずれ成分は、2L・(d/dx)・d(x)で表され、前記方程式は、w=2L・(d/dx)・d(x)+2sinθ・d(x)で表されることが好ましい。
【0014】
但し、xは前記搬送方向に対する前記試料の測定位置を示し、w(x)は前記基準輝線からの輝線のずれを示し、Lは前記鏡面反射光の光路長であり、d(x)は前記基準高さからの前記試料の高さを示し、(d/dx)・d(x)は前記基準傾きからの前記試料の傾きを示し、θは前記鏡面反射光の反射角を示す。
【0015】
この構成によれば、基準輝線に対する輝線のずれw(x)を代入し、d(x)について方程式を解くことで、位置xにおける高さd(x)を求めることができる。
【0016】
(3)前記試料は、筋状の凹凸を持ち、前記光源は、長手方向が前記試料の凹凸の長手方向と直行するように配置された棒状光源であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、棒状光源の長手方向が試料の凹凸の長手方向と直交するように配置されているため、例えば、太陽電池ウェハやアルミ圧延材等の筋状の凹凸を持つ試料に鏡面性を持たせることができる。
【0018】
(4)前記基準輝線は、初期の測定位置における前記試料の輝線であることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、初期位置の輝線が基準輝線とされるため、試料とは別の基準試料を別途用いて初期位置の輝線を測定することなく、基準輝線を得ることができる。
【0020】
(5)前記試料に対して光切断線を照射するレーザ光源と、前記レーザ光源により照射された光切断線を前記撮像部で撮像し、得られた光切断線画像に基づき、前記試料の幅方向の初期の各測定位置の高さを算出する基準高さ算出部とを更に備え、前記高さ算出部は、前記基準高さ算出部により算出された初期の各測定位置の高さを用いて前記試料の各位置の高さの測定位置を算出することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、(1)に示す方程式を解く際に必要となる初期値を得ることができ、試料の高さを精度良く求めることができる。また、試料の幅方向の初期の各測定位置の高さを得ることができ、以後、この初期の高さを用いて幅方向の各位置に対する搬送方向の各位置の高さを求めることができ、試料の幅方向の相対的な高さの差異を考慮に入れて試料の高さを算出することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、搬送されている試料を連続撮像することで、正反射光を示す輝線を含む試料画像が順次に取得される。そして、基準高さからの試料の高さに基づく基準輝線からの輝線のずれを示す高さずれ成分と、基準傾きからの試料の傾きに基づく基準輝線からの輝線のずれを示す傾きずれ成分との一次結合によって基準輝線に対する輝線のずれを表す方程式を用いて試料の高さが求められている。そのため、鏡面性を持つ試料の高さを精度良く求めることができる。
【0023】
また、搬送されている試料を連続撮像されているため、試料の搬送方向における各位置の高さを順次に求めることができ、試料の表面形状を示すデータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態による高さ測定装置の全体構成図である。
【図2】試料画像の一例を示した図であり、(A)は試料が平坦な場合の試料画像を示し、(B)は試料に凹凸がある場合の試料画像を示している。
【図3】本発明の原理を説明するための図であり、図1において、試料をj軸方向から見た図である。
【図4】図1に示す高さ測定装置のブロック図である。
【図5】光切断法を用いて初期の高さを算出する場合の高さ測定装置の全体構成図である。
【図6】x軸方向視におけるレーザ光源5と試料Sとの位置関係を示した図である。
【図7】本発明の実施の形態による高さ測定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の実施の形態による高さ測定装置の全体構成図である。図1に示すように高さ測定装置は、光源1、撮像部2、及び搬送部3を備えている。試料Sは筋状の凹凸を持つ鏡面性を有する板材により構成されている。
【0026】
また、試料Sとして、筋状の凹凸を周期的に持つ平板状の物体を採用することができる。具体的には、試料Sとして、円筒状のインゴットを長手方向に直行する方向に切断することで得られた太陽電池ウェハや、アルミを圧延して得られた圧延材を採用することができる。圧延材は圧延する際に筋状の圧延疵が一定方向に向けて形成される。また、太陽電池ウェハはインゴットを切断する際にソーマークと呼ばれる筋状の凹凸が一定方向に向けて形成される。本実施の形態では、このような、筋状の凹凸を持つ試料Sを測定対象としている。そして、試料Sは筋状の凹凸の長手方向が搬送方向Aとほぼ平行になるように配置されている。
【0027】
以下の説明では、試料Sの主面に直交する高さ方向にy軸を設定し、搬送方向Aと平行な方向にx軸を設定し、x方向及びy方向のそれぞれに直交する試料Sの幅方向にj軸を設定する。
【0028】
光源1は、試料Sを真上から見た場合、長手方向が試料Sの搬送方向Aに直行するように、つまり、j軸方向を向くように配置された棒状光源で構成され、試料Sに対し、拡散光を照射する。具体的には光源1としては、蛍光灯が採用されている。ここで、光源1の長手方向の長さとしては、例えば、試料Sの幅方向の全域に対して拡散光を照射することができる長さを持つことが好ましく、具体的には、試料Sの幅方向よりも長い長さを持つことが好ましい。
【0029】
撮像部2は、例えば所定のフレームレートで、試料Sの画像である試料画像を撮像する動画カメラにより構成されている。ここで、撮像部2は、光源1から照射された光L1の鏡面反射光L2を受光する。また、撮像部2は、レンズ及び受光素子(図略)を備え、受光素子はレンズを介して鏡面反射光L2を受光する。
【0030】
ここで、光源1と撮像部2とは、図3に示すように、x軸方向のある測定位置である位置x及び光源1間の距離と、位置x及び撮像部2間の距離とが共にLとなるように配置されている。また、位置xにおける試料Sの法線H1と撮像部2とのなす角と、法線H1と光源1とのなす角とは共にθであり等しい。
【0031】
したがって、撮像部2は、光L1の位置xにおける鏡面反射光L2が輝線として表された試料画像、つまり、光源1の試料Sに対する鏡像1’が輝線として表われた試料画像を得ることができる。
【0032】
なお、本実施の形態では、各測定位置は、j軸上に一定の間隔で配置された複数の座標と、x軸上に一定の間隔で配置された複数の座標とによって規定されている。つまり、測定位置はj−x平面おいてマトリックス状に分布している。よって、試料Sの主面の全域の高さを得ることができる。
【0033】
図1に戻り、搬送部3は複数の搬送ローラ31により構成される。図1では、3つの搬送ローラ31が示されているが、これは一例であり、4,5,6つ以上であってもよく、試料Sを搬送方向Aに沿ってがたつくことなく搬送するために搬送ローラ31の間隔は試料Sのx方向の長さよりも短いことが好ましい。
【0034】
搬送ローラ31の上側には試料Sが載置され、図略のモータによって搬送ローラ31が回転駆動され、試料Sが搬送される。ここで、搬送部3は、搬送方向Aに向けて一定の速度で試料Sを搬送する。そして、試料Sは搬送方向Aに向けて一定速度で搬送されながら撮像部2によって一定のフレームレートで撮像される。そのため、一定の周期で試料画像が順次に取得される。
【0035】
図2は、試料画像の一例を示した図であり、(A)は試料Sが平坦な場合の試料画像G1を示し、(B)は試料Sに凹凸がある場合の試料画像G1を示している。
【0036】
図2(A)、(B)において、i軸は試料画像G1の垂直座標を示し、j軸は試料画像G1の水平座標を示している。なお、j軸は図1に示すj軸に対応しており、試料Sの幅方向を示している。図2(A)では、試料Sのj軸方向の形状が地表面に対して平行であり平坦である。そのため、図2(A)の試料画像G1において輝線KLはj軸と平行に現れている。
【0037】
一方、図2(B)の試料画像G1において、輝線KLはj軸の中央付近で突出している。そのため、図2(B)の試料画像G1ではj軸の中央に向かうにつれてi軸の値が徐々に増大し、凸形状を有している。
【0038】
図4は、図1に示す高さ測定装置のブロック図である。図4に示すように高さ測定装置は光源1、撮像部2、搬送部3、制御部4、及びレーザ光源5を備えている。制御部4は、例えばマイクロコントローラにより構成され、搬送制御部41、光源制御部42、輝線抽出部43、高さ算出部44、及び基準高さ算出部45を備えている。
【0039】
搬送制御部41は、搬送部3を制御するものであり、例えば、搬送ローラ31を駆動するモータに制御信号を出力し、モータを駆動させて搬送ローラ31を駆動する。ここで、搬送制御部41は、例えば、オペレータにより測定開始ボタンが押されることで、搬送部3の駆動を開始させる。
【0040】
光源制御部42は、光源1に駆動信号を供給して光源1を点灯させるものであり、例えば測定開始ボタンが押されることで、光源1の点灯を開始させる。
【0041】
輝線抽出部43は、撮像部2により順次に撮像された試料画像G1から輝線KLを抽出し、所定の基準高さ及び基準傾きを示す基準輝線KL_0に対する各輝線KLのずれを求める。ここで、輝線抽出部43は、例えば、図2(A)に示すように、試料画像G1に対し、i軸と平行に注目ラインCL(j)を設定し、注目ラインCL(j)上において、最も輝度の高い画素gmax(j)を探索する。注目ラインCL(j)の探索が終了すると、次に、jを1インクリメントして、次の注目ラインCL(j)において最も輝度の高い画素gmax(j)を探索する。そして、この探索をj=0からj=Jまで、jを1ずつ増大させながら、各注目ラインCL(i)に対して繰り返し実行する。そして、gmax(0)〜gmax(J)からなる画素群を輝線KLとして抽出する。つまり、輝線抽出部43は、1枚の試料画像G1から1本の輝線KLを抽出する。なお、Jはj軸上における試料Sの測定位置の最大値を示している。
【0042】
この場合、最も輝度の高い画素gmax(j)をサブピクセル単位で探索してもよい。具体的には、注目ラインCL(j)に配列された各画素の輝度を例えばスプライン補間等の補間処理を用いて補間することで、注目ラインCL(j)の輝度の曲線を求め、この曲線の重心のi座標を例えば小数点第1位まで求め、画素gmax(j)として探索すればよい。
【0043】
そして、輝線抽出部43は、基準輝線KL_0に対する輝線KLのずれを求める。図3に示すように、上側の試料Sがずれる前の試料Sを示し、下側の試料Sがy軸に沿って下側にd(x)ずれた後の試料Sを示している。ずれる前の試料Sに光L1を照射したときに試料画像に現れる輝線KLを基準輝線KL_0とする。本実施の形態では、基準輝線KL_0としてはx=0の初期の測定位置における輝線KLを採用する。また、基準高さはx=0の試料Sの高さを示し、基準傾きはx=0の試料Sの傾きを示す。
【0044】
そして、輝線抽出部43は、基準輝線KL_0のあるj(=0〜J)におけるi軸の値をi_KL_0(j)とし、輝線KLのあるjにおけるi軸の値をi_KL(j)とすると、i_KL(j)−i_KL_0(j)を基準輝線KL_0に対する輝線KLのずれw(x)として求める。つまり、輝線抽出部43は、基準輝線KL_0及び輝線KLにおいて、jを同じとするi軸の値の差分をとることで、基準輝線KL_0に対する輝線KLのずれを求める。これにより、高さ算出部44は、jにより規定される幅方向の各位置における高さd(x)を求めることになる。
【0045】
高さ算出部44は、基準高さからの試料Sの高さに基づく基準輝線KL_0からの輝線KLのずれを示す高さずれ成分と、基準傾きからの試料Sの傾きに基づく基準輝線KL_0からの輝線KLのずれを示す傾きずれ成分との一次結合で基準輝線KL_0に対する輝線KLのずれを表す方程式に、輝線抽出部43により抽出された輝線KLのずれを代入することで、試料Sの高さd(x)を順次に算出する。
【0046】
具体的には、高さずれ成分は2sinθ・d(x)で表され、傾きずれ成分は2L・φ(x)で表され、方程式は式(1)で表される。
【0047】
w(x)=2L・φ(x)+2sinθ・d(x) (1)
但し、w(x)は基準輝線KL_0からの輝線KLのずれを示し、Lは鏡面反射光L2の光路長を示し、d(x)は基準高さからの試料Sの高さを示し、φ(x)は基準傾きからの試料Sの傾きを示し、θは鏡面反射光L2の反射角を示す。
【0048】
図3は、本発明の原理を説明するための図であり、図1において、試料Sをj軸方向から見た図である。試料Sが光L1を鏡面反射する場合、撮像部2では光源1の鏡像1’が、試料画像G1における輝線KLとして現れる。
【0049】
以下、試料Sが平坦であるものとして、輝線KLのずれw(x)と、基準傾きからの試料Sの傾きφ(x)と、基準高さからの試料Sの高さd(x)との関係を説明する。
【0050】
鏡像1’は、光源1を試料Sに対して線対称に折り返した位置に位置している。試料Sがy軸に沿って距離d(x)だけ下に変化した場合、鏡像1’はy軸に沿って2d(x)だけ下に移動したように観測される。そのため、鏡面反射光L2と直交する方向における鏡像1’の変化は2sinθ・dと表すことができる。したがって、試料Sがy軸に沿って距離d(x)だけ下に変化した場合の撮像部2で観測される鏡像1’のずれw(x)、つまり、高さずれ成分は2sinθ・dとなる。
【0051】
一方、試料Sが位置xを中心にφだけ傾いたとすると、鏡像1’はφが小さいとき、撮像部2において近似的に2L・φだけ回転したように観測される。そのため、鏡面反射光L2と直交する方向における鏡像1’のずれは2L・φと表すことができる。よって、傾きずれ成分は2L・φによって表される。
【0052】
以上より、位置xにおける輝線KLのずれw(x)は、高さずれ成分と傾きずれ成分との一次結合によって表される。したがって、x=0における高さd(0)の値である初期値が分かれば、以降、基準輝線KL_0に対する各輝線KLのずれw(x)から基準高さに対する試料Sの高さd(x)を順次に算出することができる。
【0053】
ここで、試料Sはx方向に移動するため、凹凸の影響を受け、輝線KLのずれw(x)の値が変化する。よって、輝線KLのずれw(x)が分かれば基準高さからの試料Sの高さd(x)を求めることができる。
【0054】
一方、傾きφ(x)も同様にxの関数であるが、この値は試料Sの傾きの変化であるため、d(x)のx方向の微分値と一致する。すなわち、式(1)は、下記の式(2)のように表される。
【0055】
d(x)=2L・(d/dx)・d(x)+2sinθ・d(x) (2)
式(2)は、微分方程式となっており、積分定数をCとし、d(x)について解くと、式(3)のように表される。
【0056】
d(x)=exp(-sinθ・x/L)∫(w(x)/2L)・exp(sinθ・x/L)dx+C (3)
なお、測定にあたり試料Sの相対的変化がわかれば十分であり、Cの値は必ずしも測定する必要はない。
【0057】
本実施の形態では、高さ算出部44は、d(0)=0とし、以降、d(1),d(2),d(3),・・・,d(x)を順次に算出する。よって、x=0においてj軸上の各測定位置の高さd(0)は全て0とみなされ、x軸方向の相対的な高さの変化のみが観測される。
【0058】
太陽電池ウェハや圧延材には筋状の凹凸が存在し、表面に粗さを持っている。このような表面粗さを持つ部材を試料Sとした場合、光L1は鏡面反射されないのが一般的である。一方、表面粗さを持つ試料Sであっても、凹凸の長手方向をx軸方向と直交するように配置すると、図3に示すように光L1を鏡面反射させることができる。これにより、試料Sに鏡面性を持たせることができる。
【0059】
図2(A)に示すように、試料Sが平面とみなせる場合、撮像部2で観測される鏡像1’は、j軸と平行である。一方、試料Sに凹凸がある場合、撮像部2で観測される鏡像1’は、凹凸に応じてi軸方向に変化する。そのため、図2(A)に示す輝線KLに対する図2(B)に示す輝線KLのずれw(x)が分かれば、基準高さからの高さd(x)が分かる。
【0060】
そして、このような高さd(x)をj軸上の値ごとに求めることによって、試料Sの幅方向の全域の各位置における高さd(x)を求めることができる。
【0061】
式(3)は式(4)に示す積和計算によって表すことができる。
【0062】
d(n,j)=(1/2sinθ)・w(n,j)-(L/sinθ)・(d/dx)d(n,j) (4)
ここで、x軸方向の測定間隔をΔxとし、nフレーム目における鏡像1’のずれをw(n,j)、高さをd(n,j)とすると、式(4)は式(5)で近似できる。
【0063】
d(n,j)=(1/2sinθ)・w(n,j)-(L/sinθ)・((d(n-1,j)-d(n-2,j))/Δx) (5)
なお、式(4)、(5)で示すd(n,j)は式(2)のd(x)に相当している。
【0064】
式(5)を用いて、順次にd(n,j)を算出する際、d(0,j),d(1,j)を予め定めておく必要がある。本実施の形態では、d(1,j)=d(0,j)=0とおき、d(2,j)=(1/2sinθ)・w(2,j)を求める。以後、順次にd(n,j)を求めていく。
【0065】
なお、精度を高めるためには、光切断法を用いてd(1,j)とd(0,j)とを求め、求めたd(1,j)とd(0,j)とを用いてd(2,j)を求めても良い。
【0066】
これを実現するのが、図4に示す基準高さ算出部45である。すなわち、基準高さ算出部45は、レーザ光源5が試料Sに照射した光切断線を撮像部2に撮像させ、n=0,1における光切断線画像を取得する。そして、基準高さ算出部45は、n=0,1のそれぞれにおいて、光切断線画像に含まれる光切断線を抽出する。そして、抽出したn=0,1における光切断線の座標からd(0,j),d(1,j)を試料Sの初期の高さを算出する。
【0067】
図5は、光切断法を用いて初期の高さを算出する場合の高さ測定装置の全体構成図である。図5に示す高さ測定装置は、図1に示す高さ測定装置に対して、レーザ光源5が配置されている。レーザ光源5は、例えば半導体レーザと半導体レーザから出力された光を扇状に広げる光学系とを含み、試料Sに光切断線JLを照射する。
【0068】
ここで、レーザ光源5は、試料Sに対して上方向から光切断線JLを照射する。具体的には、レーザ光源5は、試料Sに対する仰角が90度となるように配置されている。
【0069】
撮像部2は、光切断線JLが照射された試料Sを撮像し、光切断線画像を得る。基準高さ算出部45は、光切断線画像に含まれる光切断線JLを、上記の輝線KLを抽出した手法と同じ手法を用いて抽出する。
【0070】
具体的には、基準高さ算出部45は、j軸上の各位置における光切断線JLのi座標の値と、レーザ光源5の仰角と、撮像部2の仰角とを用いて、j軸上の各位置に対する高さyを求める。
【0071】
図6は、x軸方向視におけるレーザ光源5と試料Sとの位置関係を示した図である。図6に示すようにレーザ光源5は、試料Sの幅方向の中心を通る法線H1上に設けられ、試料Sの真上に配置されている。
【0072】
ここで、法線H1に対する撮像部2の仰角をα、法線H1に対するレーザ光源5の仰角をβ(図略)とすると、j軸上の各位置に対する高さは式(6)を用いて算出される。
【0073】
y=k×i_JL(j)×cosβ/sin(α+β) (6)
但し、kは撮像部2の画素分解能を示し、i_JL(j)は光切断線JLのj軸上の各位置におけるi軸の値を示し、βはレーザ光源5の仰角を示し、αは撮像部2の仰角を示す。また、画素分解能kは既知である。図5、6の例では、レーザ光源5の仰角βはβ=0であるため、高さyは、y=k×g_JL(j)/sin(α)により求められる。
【0074】
図6に示すように、レーザ光源5と撮像部2とは鏡面反射条件を満たしていない。そのため、撮像部2はレーザ光源5の鏡面反射光が入射されず、光切断線JLを観察し難い。しかしながら、時間をかけて光切断線JLを撮像すれば、光切断線JLが明確に現れた光切断線画像が得られる。
【0075】
具体的には、試料Sを固定した状態で、試料Sに光切断線JLを一定時間照射し、n=0における光切断線画像を取得する。同様に試料Sを固定した状態で、n=1における光切断線画像を取得すればよい。
【0076】
このように、初期位置の高さd(0,j)、d(1,j)として、光切断法を用いた高さを採用することで、j軸方向の高さの相対的な差異も考慮に入れて、試料Sの高さを観測することができる。
【0077】
図7は、本発明の実施の形態による高さ測定装置の動作を示すフローチャートである。まず、光源制御部42は、オペレータから測定開始の指示を受け付けると光源1を点灯させる(S1)。次に、搬送制御部41は、試料Sの搬送を開始させる(S2)。これにより、試料Sは、光源1により照射されながら搬送される。
【0078】
次に、輝線抽出部43は、撮像部2に試料Sを撮像させ、試料画像を取得する(S3)。これにより、図2(A)、(B)に示すような輝線KLが示された試料画像G1が取得される。
【0079】
次に、輝線抽出部43は、試料画像G1から輝線KLを抽出する(S4)。次に輝線抽出部43は基準輝線KL_0に対する現フレームの輝線KLのずれw(n,j)を算出する(S5)。なお、n=0の輝線KLが基準輝線KL_0である。
【0080】
次に、高さ算出部44は、2フレーム前の試料Sの高さd(n−2,j)と1フレーム前の試料Sの高さd(n−1,j)と、現フレームの輝線KLのずれw(n,j)とを式(5)に代入し、現フレームにおける試料Sの高さd(n,j)を算出する(S6)。なお、高さ算出部44は、高さd(0,j)=d(1,j)=0として高さd(n,j)を算出してもよいし、光切断法を用いて算出した高さd(0,j),d(1,j)を用いて高さd(n,j)を算出してもよい。
【0081】
次に、高さ算出部44は、試料Sが搬送中であり、測定が終了していない場合(S7でNO)、フレームを特定する変数nを1増大させ、処理をS3に戻す。
【0082】
一方、高さ算出部44は、試料Sの搬送が終了し、測定が終了した場合(S7でYES)、処理を終了する。
【0083】
このように、本実施の形態による高さ測定装置は、式(1)に示すように、試料Sの傾きφ(x)に基づく輝線KLのずれと、試料Sの高さd(x)に基づく輝線KLのずれw(x)とを考慮に入れて、高さd(x)を算出している。そのため、試料Sの各位置の高さを精度良く求めることができる。
【0084】
<変形例1>
本実施の形態による高さ測定装置が測定対象とする試料Sの凹凸は長手方向に向けて限られた空間周波数を持って変化することが想定される。そこで、試料Sの高さd(n,j)を示すデータ群に対し、x軸に向けてフィルタリング処理を行い、想定される空間周波数帯の高さ成分d’(n,j)を抽出してもよい。具体的には、想定される空間周波数帯のデータを抽出するための1行×所定列の1次元フィルタを、x軸に沿った1列の高さd(n,j)からなるデータ群に適用して、想定される空間周波数帯の高さ成分d’(n,j)を抽出すればよい。これにより、高さd(d,n)に含まれるノイズ成分を除去することができる。
【符号の説明】
【0085】
1’ 鏡像
1 光源
2 撮像部
3 搬送部
4 制御部
5 レーザ光源
31 搬送ローラ
41 搬送制御部
42 光源制御部
43 輝線抽出部
44 高さ算出部
45 基準高さ算出部
A 搬送方向
G1 試料画像
JL 光切断線
KL 輝線
KL_0 基準輝線
L1 光
L2 鏡面反射光
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡面性を有する試料を搬送する搬送部と、
前記試料に拡散光を照射する光源と、
前記光源により照射された試料からの鏡面反射光を受光し、前記鏡面反射光を示す輝線を含む試料画像を順次に撮像する撮像部と、
前記撮像部により順次に撮像された試料画像から輝線を抽出し、所定の基準高さ及び基準傾きを示す基準輝線に対する各輝線のずれを求める輝線抽出部と、
前記基準高さからの前記試料の高さに基づく前記基準輝線からの前記輝線のずれを示す高さずれ成分と、前記基準傾きからの前記試料の傾きに基づく前記基準輝線からの前記輝線のずれを示す傾きずれ成分との一次結合で前記基準輝線に対する前記輝線のずれを表す方程式に、前記輝線抽出部により抽出された輝線のずれを代入することで、前記試料の高さを順次に算出する高さ算出部とを備える高さ測定装置。
【請求項2】
前記高さずれ成分は、2sinθ・d(x)で表され、
前記傾きずれ成分は、2L・(d/dx)・d(x)で表され、
前記方程式は、w=2L・(d/dx)・d(x)+2sinθ・d(x)で表される請求項1記載の高さ測定装置。
但し、xは前記搬送方向に対する前記試料の測定位置を示し、w(x)は前記基準輝線からの輝線のずれを示し、Lは前記鏡面反射光の光路長であり、d(x)は前記基準高さからの前記試料の高さを示し、(d/dx)・d(x)は前記基準傾きからの前記試料の傾きを示し、θは前記鏡面反射光の反射角を示す。
【請求項3】
前記試料は、筋状の凹凸を持ち、
前記光源は、長手方向が前記試料の凹凸の長手方向と直行するように配置された棒状光源である請求項1又は2記載の高さ測定装置。
【請求項4】
前記基準輝線は、初期の測定位置における前記試料の輝線である請求項1〜3のいずれかに記載の高さ測定装置。
【請求項5】
前記試料に対して光切断線を照射するレーザ光源と、
前記レーザ光源により照射された光切断線を前記撮像部で撮像し、得られた光切断線画像に基づき、前記試料の幅方向の初期の各測定位置の高さを算出する基準高さ算出部とを更に備え、
前記高さ算出部は、前記基準高さ算出部により算出された初期の各測定位置の高さを用いて前記試料の各位置の高さの測定位置を算出する請求項1〜4のいずれかに記載の高さ測定装置。
【請求項6】
鏡面性を有する試料を搬送する搬送ステップと、
前記試料に拡散光を照射する照射ステップと、
前記光源により照射された試料からの鏡面反射光を受光し、前記鏡面反射光を示す輝線を含む試料画像を順次に撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップにより順次に撮像された試料画像から輝線を抽出し、所定の基準高さ及び基準傾きを示す基準輝線に対する各輝線のずれを求める輝線抽出ステップと、
前記基準高さからの前記試料の高さに基づく前記基準輝線からの前記輝線のずれを示す高さずれ成分と、前記基準傾きからの前記試料の傾きに基づく前記基準輝線からの前記輝線のずれを示す傾きずれ成分との一次結合で前記基準輝線に対する前記輝線のずれを表す方程式に、前記輝線抽出ステップにより抽出された輝線のずれを代入することで、前記試料の高さを順次に算出する高さ算出ステップとを備える高さ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96859(P2013−96859A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240344(P2011−240344)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】