説明

高温鉛フリーはんだペースト

【課題】 パワー半導体素子のダイボンディングや各種電子部品の組立て等に好適であり、接合したチップの割れや剥れをなくし、高い接合信頼性を確保できるZn系の高温鉛フリーはんだペーストを提供する。
【解決手段】 Znを70質量%以上含有するZn合金はんだ粉と、Ni又はCuを主成分とする金属粉と、残部のフラックスとからなるZn系の高温鉛フリーはんだペーストであり、金属粉は平均粒径1〜100μmのNi粉又はCu粉、その表面にAu又はAgからなる膜厚1μm以下の皮膜を設けた被覆Ni粉又は被覆Cu粉であって、金属粉とZn合金はんだ粉の合計を100質量%としたとき、金属粉の合計が5〜65質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体素子のダイボンディング等に用いられる高温鉛フリーはんだペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子のダイボンディングや各種電子部品の組立て等に用いるはんだ材料には、被接合材に対する濡れ性等の通常のはんだ材料に要求される特性に加えて、1)380℃程度以下の温度ではんだ付けが可能なこと、2)はんだ付けした部品をプリント基板へ実装する際に240℃程度の温度で再溶融しないこと、3)はんだ接合部の信頼性が確保できること、即ち比較的高温の使用環境下において接合部の劣化が生じないこと等の性能が要求される。
【0003】
これらの性能を有するはんだ材料として、パワー半導体素子のダイボンディング等の用途には、従来からPb−5質量%Snに代表される高温はんだが使用されている。しかし、近年では環境汚染防止への配慮から、はんだ材料で使用されている鉛を排除しようとする活動がなされ、鉛を含まない、いわゆる鉛フリーはんだの開発が進められている。
【0004】
その結果、プリント基板への実装に用いられるSn−40質量%Pbはんだについては、Sn−Ag−Cuはんだに代表される低温鉛フリーはんだが開発され、既に代替が進みつつある。一方、高温はんだの領域においては、上記1)〜3)の全ての条件を満足するような好適な材料が見出されておらず、鉛系はんだから鉛フリーはんだへの代替がほとんど進んでいないのが現状である。
【0005】
例えば、特許文献1には、高温鉛フリーはんだとして、Alと共にGeやMgを含むZnはんだ合金を用いることが提案されている。また、特許文献2にも、Alと共にMgやGaを含むZnはんだ合金が記載されている。しかしながら、Zn合金には、はんだ付け後に条件によっては収縮が生じ、接合したチップが割れたり剥れたりしてしまうという欠点がある。上記特許文献1及び2のZn合金も、このようなチップの割れや剥がれがおきやすく、必ずしも満足できるものではなかった。
【0006】
Zn−Al系合金においてチップ割れが起きる原因は、CuとSiの熱膨張係数の差に加え、凝固時収縮率(+は収縮、−は膨張)がZnで+4.9〜+6.9%及びAlで+6.4〜+6.8%であることも原因の一つと考えられる。また、Zn−Al状態図における280℃付近での相変態のために、例えばダイアタッチ後、冷却時に280℃付近で相の変態が起こるため体積変化を起こし、高い残留応力を発生してしまうことも原因と考えられる。
【0007】
一方、非特許文献1には、Zn−Al系鉛フリーはんだのダイアタッチ時のチップ割れ現象について報告されている。即ち、チップ割れの原因は、基板材料であるCuとチップ材料であるSiの熱膨張係数の差が5倍以上であるため、ダイアタッチ後冷却すると熱膨張の差で応力が発生し、Pb−5質量%Snの場合は塑性変形するが、Zn−Al系はんだは硬く、応力を緩和できないことに起因すると報告されている。
【0008】
このZn−Al系鉛フリーはんだにおけるチップ割れ対策として、上記非特許文献1には、チップ厚さを薄くすることが提案されている。しかし、実際にチップを薄くするには限界があるため、この対策で全てのケースが解決できるとは考え難い。特にZnが70質量%を越えるZn系Pbフリーはんだにおいては、チップ厚みの調整だけでは、チップの割れや剥れの問題は解決困難な場合が多いと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3850135号公報
【特許文献2】特許第3945915号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】6th on “Microjoining and Assembly Technology in Electronics” February 3−4,2000,Yokohama p.339−p.344
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した従来の事情に鑑み、パワー半導体素子のダイボンディングや各種電子部品の組立て等に好適な高温鉛フリーはんだ材料を提供すること、更に具体的には、接合したチップの割れや剥れをなくし、高い接合信頼性を確保できるZn系の高温鉛フリーはんだペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、Zn合金にNiあるいはCuの金属粉を混合することにより、接合後におけるチップの割れや剥れ等の問題を解決したものである。ただし、Zn合金に金属粉を均一に分散させる必要があることから、はんだペーストの形態をとることで工業的に利用可能なものとなった。
【0013】
即ち、本発明の高温鉛フリーはんだペーストは、Znを70質量%以上含有するZn合金はんだ粉と、Ni又はCuを主成分とする金属粉と、残部のフラックスとからなり、金属粉が平均粒径1〜100μmのNi粉、該Ni粉の表面にAu、Agの少なくとも1元素からなる膜厚1μm以下の皮膜を設けた被覆Ni粉、平均粒径1〜100μmのCu粉、及び該Cu粉の表面にAu、Agの少なくとも1元素からなる膜厚1μm以下の皮膜を設けた被覆Cu粉から選ばれた少なくとも1種であって、金属粉とZn合金はんだ粉の合計を100質量%としたとき、金属粉の合計が5〜65質量%であることを特徴とする。
【0014】
本発明の高温鉛フリーはんだペーストにおいて、前記Zn合金はんだ粉としては、(1)Alを1.0〜7.0質量%含有し、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金、(2)Alを1.0〜7.0質量%含有すると共に、Geを1.5質量%以下及び/又はMgを6.0質量%以下含有し、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金のいずれかが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い熱伝導性を有するだけでなく、接合したチップの割れや剥れをなくすことができ、高い接合信頼性を確保できるZn系の高温鉛フリーはんだペーストを提供することができる。従って、本発明の高温鉛フリーはんだペーストは、各種電子部品の組立て等において用いられているPb系はんだの鉛フリー化を達成し、特にパワー半導体素子のダイボンディングに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の高温鉛フリーはんだペーストは、Znを70質量%以上含有するZn合金はんだ粉と、Ni又はCuを主成分とする金属粉と、残部のフラックスとから構成されている。尚、本発明の高温鉛フリーはんだペーストにおいては、パワー半導体素子のダイボンディングや各種電子部品の組立て等における接合温度は450℃以下である。
【0017】
本発明で用いるNi又はCuを主成分とする金属粉は、Ni粉又はCu粉をそのまま用いてもよいが、表面にAg、Auの少なくとも1元素からなる皮膜を設けた被覆Ni粉又は被覆Cu粉を用いることがより好ましい。Au又はAgの皮膜を施すことで、Ni粉又はCu粉の酸化が防止されると同時に、Znはんだ合金との濡れ性が高くなり、溶融したZn合金中に金属粉を均一に分散させる効果を高めることができる。
【0018】
被覆Ni粉及び被覆Cu粉のAu又はAgの皮膜の膜厚は1μm以下とする。皮膜の膜厚を1μm以下とする理由は、1μmを越えると上記した酸化防止や濡れ性向上の効果が飽和するだけでなく、皮膜材料の使用量が増えてコストが高くなるからである。また、被覆Ni粉及び被覆Cu粉は、Ni粉又はCu粉の表面に電解メッキや無電解メッキを施すことで得られるほか、湿式法による金属粉製造の最終工程でAu又はAgの塩を含む水溶液を添加し、ヒドラジン等の還元剤を用いて還元する方法によって製造することも可能である。
【0019】
上記Ni粉及びCu粉の平均粒径は、1〜100μmの範囲とする。Ni粉及びCu粉の平均粒径が1μm未満では、Zn合金中でNi粉やCu粉が均一に分散しにくくなるからであり、逆に平均粒径が100μmを超えるとZn合金はんだからなる接合層の破壊起点として働き、接合部の信頼性が低下する。尚、本発明では、粒径として粉末の最大径を用いる。また、Ni粉及びCu粉の純度や形状は、特に限定されないが、純度については塑性変形し易いものがよいため合金よりも純金属又は共晶合金に近いものが好ましい。形状については、アトマイズ粉の様な真球状、電解粉の様な不規則状、フレーク粉の様な平板状のいずれでもよい。
【0020】
一方、Zn合金はんだ粉は、溶融して金属粉(Ni粉又は被覆Ni粉、Cu粉又は被覆Cu粉)同士を接合すると同時に、通常のはんだとしての働きをする。Znをはんだの主成分として選定した理由は、Znの持つ高い熱伝導性による。つまり、ZnはPbに比較して約3倍の熱伝導率を有し、大電流が流れるため、高温になるパワー半導体素子の接合に好適である。ただし、純Znでは実用的なはんだとしての加工性や濡れ性を有しないため、Znを70質量%以上含有するZn合金を用いる必要がある。尚、Zn合金はんだ粉の粒径については、特に限定されないが、製造のしやすさから10〜50μm程度の粉末を用いる場合が多い。
【0021】
Zn合金はんだ粉としては、従来から使用され又は提案されているZn系Pbフリーはんだ材料の粉末を用いることができる。好ましいZn合金はんだ粉としては、下記(1)及び(2)のZn合金からなるものがある。即ち、Zn合金(1)は、Alを1.0〜7.0質量%含有し、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金である。ZnにAlを添加することによって、AlがZn中に溶解して脆さを改善することができる。特にZnの含有割合が95.0質量%においてZn−Alの共晶点になるが、この付近では特に脆さ改善の効果が大きく、加工性を格段に向上させることができる。
【0022】
Zn合金(2)は、Alを1.0〜7.0質量%含有すると共に、Geを1.5質量%以下及び/又はMgを6.0質量%以下含有し、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金である。Mgの添加は、Alと同様に加工性の向上に効果があると共に、融点を下げる効果も有する。また、Geは特に融点調整を目的として添加する元素であり、はんだ分野においては比較的高い419℃という融点をもつZnの融点を下げるために添加される。
【0023】
本発明における金属粉とZnはんだ合金粉の割合は、両者の合計を100質量%としたとき、金属粉の合計を5〜65質量%の範囲とする。金属粉の含有量が5質量%未満では、添加量が少なすぎるため、Zn合金はんだの収縮を緩和するには不十分である。逆に65質量%を超えると、Zn合金はんだの量が少なくなりすぎて、電子部品と基板を十分な強度で接合できず、チップ剥れ等の問題が生じてしまう。
【0024】
本発明の高温鉛フリーはんだペーストは、上記した金属粉とZn合金はんだ粉に、液状フラックスを加えて混練することにより製造することができる。フラックスについては、Sn系やPb系のはんだペーストで用いられるものをそのまま用いてよく、高温用のものは更に好ましい。好ましいフラックスとしては、例えば、ロジン化合物、有機酸、有機アミン化合物などを、アルコール類、エチレングリコール類、グリセリン類などの溶剤に溶かしたものを挙げることができる。
【0025】
フラックスの添加量は、金属粉とZn合金はんだ粉の合計を100質量%としたとき、7〜13質量%の範囲であることが好ましい。フラックスの添加量が7質量%未満では、フラックス量が不足して十分な還元性が得られないうえ、ペーストの粘性が高すぎるため接合時の取り扱いが困難となる。また、13質量%を超えると、ボイド率が高くなって必要な接合強度を得られなかったり、熱伝導性が極端に低下したり、更には粘性が低くなりすぎるため取り扱いが不便になる。
【実施例】
【0026】
[実施例1]
金属原料として純度99.9質量%以上のZnと純度99.95%以上のAlを用いて、下記表1に示す試料1〜20の各Zn合金はんだ粉を製造した。即ち、これらの金属原料を、酸化を防ぐために金属原料1kgあたり700ml/分以上の流速で窒素を流しながら高周波溶解炉で溶解し、Zn−Al合金鋳塊を得た。これらのZn−Al系合金鋳塊の組成をそれぞれICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100)を用いて測定した。各Zn−Al合金鋳塊をスタンプミルで粉砕した後、篩い分けすることにより、平均粒径が約25μmのZn合金はんだ粉を得た。尚、平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計(日本レーザー(株)製)によって測定した(以下、平均粒径は同様の装置で測定した)。一方、金属粉については、下記表2に示す平均粒径のNi粉及びCu粉をアトマイズ法により製造した。
【0027】
【表1】

【0028】
得られたZn合金はんだ粉と金属粉(Ni粉又はCu粉)を、下記表2に示す添加量で混合し、アルコールと還元性有機材料からなるフラックス(青木メタル(株)製)を加え、混合機((株)シンキー製SR−500)を用いて撹拌混合することにより、下記表2に示す試料1〜20の各はんだペーストを得た。尚、試料1〜20の全ての試料において、フラックスの添加量はZn合金はんだ粉と金属粉の合計100質量%に対し8質量%とした。
【0029】
【表2】

【0030】
次に、上記試料1〜20の各はんだペーストについて、以下の方法により、ダイボンディング性、高温はんだ特性、接合信頼性を評価した。得られた結果を下記表3に示した。尚、接合信頼性の評価は、直接評価することが困難な応力緩和性の評価に代わるものである。
【0031】
(ダイボンディング性)
はんだダイボンダー(dage社製、EDB−200)を用いて、Agメッキを施したCu製リードフレームに、表面上に順番にNiとAgを蒸着したダミーチップを、420±3℃の温度範囲内において上記各試料のはんだペーストを使用して接合した。はんだペーストの供給は、リードフレームのAgメッキ上に予め適量のはんだペーストを滴下することで行った。得られたリードフレームとダミーチップの接合部を、X線透過装置(東研X線検査(株)製、TUX−3000W)を用いて観察し、ボイド率が5%未満を「○」、5%以上8%未満を「△」、8%以上を「×」と評価した。尚、上記ボイド率は、X線透過装置によりはんだ接合部を接合面に対し垂直方向から観察し、ボイド面積と接合部面積を求め、下式により算出した。
ボイド率(%)=ボイド面積÷(ボイド面積+接合部面積)×100
【0032】
(高温はんだ特性)
高温はんだとしての使用適性を、JIS Z 3198−7:2003に準じる高温シェア試験により評価した。即ち、上記ダイボンディング後の試料を、ボンドテスタ(テクノアルファ(株)製)にセットし、窒素を流しながら240℃に再加熱し、その状態でチップとはんだ接合部にせん断力を加えた。詳しくは、シェア試験用冶具をはんだとダミーチップ接合面に水平方向にチップ引っかけ、90Nのせん断力を加えた。チップ部には割れが発生したが、接合部やはんだ部に割れや変形がなかった場合を「○」、チップが動いてずれたり、接合部やはんだ部で割れや変形があった場合を「×」と評価した。
【0033】
(接合信頼性)
信頼性評価1として、上記ダイボンディングを行った後、トランスファーモールド型モールド機により、エポキシ樹脂(住友ベークライト(株)製、EME−6300)をモールドした試料について、温度80℃及び湿度80%にて1000時間保持の恒温恒湿試験を施した後、樹脂を開封して接合部の観察を行い、チップや接合部界面に割れや剥離の発生が無い場合を「○」、割れや剥離があった場合を「×」と評価した。
【0034】
また、接合信頼性における信頼性評価2として、上記と同様のエポキシ樹脂をモールドした試料について、−50℃と125℃の冷却と加熱を1サイクルとし、このサイクルを400回繰り返した後、樹脂を開封して接合部の観察を行い、チップや接合部界面に割れの発生が無い場合を「○」、割れや剥離があった場合を「×」と評価した。
【0035】
【表3】

【0036】
これらの結果から明らかなように、本発明による試料1〜12の各はんだペーストは、高温はんだとして良好なダイボンディング性と高温はんだ特性を具え、優れた接合信頼性を有している。一方、金属粉であるNi粉又はCu粉の添加量あるいは平均粒径が本発明の範囲から外れている比較例の試料13〜20の各はんだペーストでは、各評価の1つ以上において不十分な結果となった。
【0037】
[実施例2]
Zn合金はんだ粉として、上記実施例1と同様の方法により、下記表4に示す組成を有する試料21〜28の各Znはんだ合金粉を製造した。一方、金属粉として、上記実施例1と同様に通常のアトマイズ法を用いてCu粉を製造し、無電解処理により、下記表5に示す膜厚のAu又はAgからなる皮膜を有する被覆Cu粉を製造した。このCu粉を樹脂に埋め込み、研磨機を用い粗い研磨紙から順に細かいものを用いて研磨し、最後にバフ研磨を行い、その後、EPMA(装置名:SHIMADZU EPMA−1600)を用いてライン分析を行い、皮膜の膜厚を測定した。
【0038】
【表4】

【0039】
得られたZn合金はんだ粉と被覆Cu粉を下記表5に示す添加量で混合し、上記実施例1と同様にアルコールと還元性有機材料からなるフラックスを加えて混合することにより、下記表5に示す本発明による試料21〜28の各はんだペーストを製造した。尚、試料21〜28の全ての試料において、フラックスの添加量はZn合金はんだ粉と金属粉の合計100質量%に対し8質量%とした。
【0040】
【表5】

【0041】
上記試料21〜28の本発明による各はんだペーストについて、上記実施例1と同様の方法により、ダイボンディング性、高温はんだ特性、及び接合信頼性を評価した。得られた結果を、下記表6に示した。
【0042】
【表6】

【0043】
これらの結果から明らかなように、本発明による被覆Cu粉を用いた各はんだペーストは、高温はんだとして良好なダイボンディング性と高温はんだ特性を具え、優れた接合信頼性を有している。
【0044】
[実施例3]
金属原料として、純度99.9質量%以上のZn、Al、Mgと、純度は99.95%以上のGeを用い、上記実施例1と同様の方法により、下記表7に示す組成を有する試料29〜37の各Zn合金はんだ粉を製造した。一方、金属粉として、上記実施例2と同様にして、Cu粉をアトマイズ法で製造した後、Cu粉の表面にAg皮膜を施して被覆Cu粉を製造した。
【0045】
【表7】

【0046】
得られた被覆Cu粉とZn合金はんだ粉とを、被覆Cu粉が30質量%となるように混合し、上記実施例1と同様にアルコールと還元性有機材料からなるフラックスを加えて混合することによって、下記表8に示す試料29〜37の各はんだペーストを製造した。尚、試料29〜37の全ての試料において、フラックスの添加量はZn合金はんだ粉と金属粉の合計100質量%に対し8質量%とした。
【0047】
【表8】

【0048】
上記試料29〜37の各はんだペーストについて、上記実施例1と同様の方法により、ダイボンディング性、高温はんだ特性、及び接合信頼性を評価した。得られた結果を、下記表9に示した。
【0049】
【表9】

【0050】
これらの結果から分かるように、試料29〜34の各はんだペーストは、ダイボンディング性、高温はんだ特性及び接合信頼性の全てに優れており、高温はんだとして極めて良好なものであることが分かる。一方、試料35〜37の各はんだペーストは、Zn合金はんだ粉の組成が適切でないため、被覆Cu粉を用いていても、ダイボンディング性、高温はんだ特性及び接合信頼性の各評価において不十分な結果となっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Znを70質量%以上含有するZn合金はんだ粉と、Ni又はCuを主成分とする金属粉と、残部のフラックスとからなり、金属粉が平均粒径1〜100μmのNi粉、該Ni粉の表面にAu、Agの少なくとも1元素からなる膜厚1μm以下の皮膜を設けた被覆Ni粉、平均粒径1〜100μmのCu粉、及び該Cu粉の表面にAu、Agの少なくとも1元素からなる膜厚1μm以下の皮膜を設けた被覆Cu粉から選ばれた少なくとも1種であって、金属粉とZn合金はんだ粉の合計を100質量%としたとき、金属粉の合計が5〜65質量%であることを特徴とする高温鉛フリーはんだペースト。
【請求項2】
前記Zn合金はんだ粉が、下記(1)又は(2)のZn合金からなることを特徴とする、請求項1に記載の高温鉛フリーはんだペースト。
(1)Alを1.0〜7.0質量%含有し、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金。
(2)Alを1.0〜7.0質量%含有すると共に、Geを1.5質量%以下及び/又はMgを6.0質量%以下含有し、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金。

【公開番号】特開2011−251330(P2011−251330A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128478(P2010−128478)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】