説明

高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュール

【課題】バッテリーセルの組立ての間違いを防止すると共に、パッケージサイズの自由度の面で有利な高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュールを提供する。
【解決手段】上下方向に積層され、相互に一定の間隔を維持するように組立てられる複数枚のホルダープレート10と、ホルダープレート10の間に一枚ずつ挿入され、ホルダープレート10によって支持される複数のバッテリーセル20と、複数のホルダープレート10を一体結合させる固定部材30と、を含み、
ホルダープレート10は、バッテリーセル20が装着され、バッテリーセル20を支持し、バッテリーセル20を冷却する機能を有する金属板部材11と、金属板部材11の縁部を形成するように金属板部材11と一体形成され、バッテリーセル0の側部を支持するケース部材12と、を含んでなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高電圧バッテリーパックを用いるバッテリーモジュールに係り、より詳しくは複数枚のバッテリーセルを積層してモジュール化した高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハイブリッド車、燃料電池自動車、及び電気自動車は、いずれも電気モーターを用いて駆動される車両であるため、電気モーターに駆動電力を提供するための高電圧バッテリーパックが装着される。高電圧バッテリーパックは、車両の運行中に充電と放電を繰り返しながら車両に所要電力を供給する。
【0003】
通常、高電圧バッテリーパックは、バッテリーケースと、バッテリーケース内に装着された多数のバッテリーモジュールと、バッテリーモジュールを構成する単位電池の電圧、電流、及び温度などを検知してバッテリーパックの作動を制御するBMS(Battery Management System)と、を備える(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
図1は、従来のバッテリーモジュールの斜視図である。図1に示すように、従来のバッテリーモジュールは複数のバッテリーセル1、及びバッテリーセル1の上下を支持する上部プレート2と下部プレート3とを有する。
バッテリーセル1は直立状態となるように下部プレート3に挿入され、バッテリーセル1の上部が上部プレート2に挿入されて組立てられる。上部プレート2及び下部プレート3それぞれには、バッテリーセル1を挿着するための挿着溝2a及び3aがそれぞれに複数個形成される。
【0005】
ところが、従来のバッテリーモジュールは、バッテリーセル1の上端及び下端それぞれを上部プレート2及び下部プレート3それぞれの挿着溝2a及び3aに挿着する過程で、組立ての間違いが起こりやすく、不良発生率が高いという問題点があった。また、挿着溝2a及び3aの溝の個数のバッテリーセル1しかモジュール化できないため、パッケージするバッテリーセル1の数を変更できないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−306726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたものであって、バッテリーセルの組立ての際、組立ての間違いによる不良の発生を防止すると共に、所要個数のバッテリーセルを積層式で組立ててモジュール化することができ、パッケージするバッテリーセルの数が変更可能な高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような目的を達成するための本発明は、上下方向に積層され相互に一定の間隔を維持するように組立てられる複数枚のホルダープレートと、ホルダープレートの間に一枚ずつ挿入されホルダープレートによって支持される複数のバッテリーセルと、複数のホルダープレートを一体結合させる固定部材と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明のホルダープレートは、バッテリーセルが装着され、バッテリーセルを保持し、バッテリーセルを冷却する機能を有する金属板部材と、金属板部材の縁部を形成するように金属板部材と一体形成され、バッテリーセルの側部を支持するケース部材と、を含んでなる。
【0010】
また本発明は、バッテリーセルそれぞれに電極が設けられ、電極はバッテリーセルの端部から突出するように設けられ、バッテリーセルがホルダープレートに積層された状態で最下端に位置する電極と最上端に位置する電極とが連結された構造となるように、電極はジグザグ状に連結される。
【0011】
また本発明は、ケース部材の両端に、バッテリーセルに電極を挿着するように電極挿着開口部が形成される。
また本発明の金属板部材には、金属板部材下側に位置するバッテリーセルと接触してバッテリーセルを支持する複数の突部が一体形成される。
【0012】
また本発明の金属板部材は、バッテリーセルの冷却性能を向上させるためにアルミニウムで形成され、ケース部材は、プラスチックで形成される。
また本発明の固定部材は、ホルダープレートの角部を貫通する複数の長ボルトと、長ボルトにそれぞれ締結されるナットと、を含んでなる。
また本発明は、積層式で組立てられたホルダープレートと、バッテリーセルと、の間に冷却空気が通過するように空気通路が設けられる。
【0013】
また本発明は、ホルダープレートが積層されるとき、複数のホルダープレート相互間の組立位置を規定するためのプレート突起及びプレート溝がホルダープレートに設けられる。
また本発明は、プレート突起とプレート溝とは一直線上に位置するようにホルダープレートを構成するケース部材の上面との下面にそれぞれ形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるバッテリーモジュールは、複数枚のバッテリーセルが上下方向に積層された構造となるので、組立ての間違いによる不良発生がない利点がある。
また、本発明によるバッテリーモジュールは、所望個数のバッテリーセルを積層してモジュール化することができるので、パッケージするバッテリーセルの数が変更可能であるという利点がある。
【0015】
また本発明によるバッテリーモジュールは、アルミニウムで製作された金属板部材の突部がバッテリーセルと接触した状態に組立てられることにより、熱伝導性の高いアルミニウムの特性によってバッテリーセルの冷却性能が一層向上する。
また本発明によるバッテリーモジュールは、積層されたバッテリーセルの上下部に冷却空気が通過することができる空気通路が形成されることにより、バッテリーセルの冷却性能が一層向上する。
【0016】
また本発明によるバッテリーモジュールは、複数枚のホルダープレートを積層するときに、プレート突起がプレート溝に挿着される構造となるので、ホルダープレートの組立ての間違いを防止するとともに、組立位置を規定することができるという利点がある。
また、本発明によるバッテリーモジュールは、ホルダープレートのケース部材がプラスチックで形成されているので、軽量化、耐久性の向上、外部から熱浸透の防止、及び電気絶縁性向上効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来のバッテリーモジュールの斜視図である。
【図2】本発明によるバッテリーモジュールの組立状態を示す斜視図である。
【図3】本発明によるバッテリーモジュールの組立過程を示す分解斜視図である。
【図4】図2のI−I線に沿った断面図である。
【図5】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図6】図2のII−II線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュールについて詳細に説明する。
図2は、本発明によるバッテリーモジュールの組立状態を示す斜視図であり、図3は、本発明によるバッテリーモジュールの組立過程を示す分解斜視図である。
図2及び図3に示すように、本発明の高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュールは、上下方向に積層式で各層間に一定の間隔を維持するように組立てられる複数枚のホルダープレート10と、ホルダープレート10の間に1枚ずつ挿入され、ホルダープレート10によって支持される複数のバッテリーセル20と、複数のホルダープレート10を一体的に結合させる固定部材30と、を有する。
【0019】
ホルダープレート10は、バッテリーセル20が装着され、バッテリーセル20を保持し、バッテリーセル20を冷却する機能を有する金属板部材11と、金属板部材11の縁部を形成するように金属板部材11と一体形成され、バッテリーセル20の側部を支持するケース部材12と、を含んでなる。
【0020】
図4は、図2のI−I線に沿った断面図である。図4に示すように、バッテリーセル20それぞれに電極21が設けられる。電極21はバッテリーセル20の端部から突出して設けられる。バッテリーセル20は、ホルダープレート10に積層式で組立てられた状態で、最下端に位置する電極21から最上端に位置する電極21までが連結された構造となるように、ジグザグ状に連結される。
【0021】
また、ケース部材12の両端には、バッテリーセル20に電極21を挿着するように電極挿着開口部13が形成される。
金属板部材11には、金属板部材11の下側に位置するバッテリーセル20の上面と接触して、バッテリーセル20を支持して遊動を抑制する複数の突部14が形成される。
【0022】
ホルダープレート10は、金属板部材11がバッテリーセル20の冷却性能を向上させるようにアルミニウム(Al)で形成され、ケース部材12がプラスチックで形成された構造である。
アルミニウムで形成された金属板部材11は、熱伝導性に優れたアルミニウムの特性によってバッテリーセル20の冷却性能を向上させ、プラスチックで形成されたケース部材12は、軽量化、耐久性の向上、及び電気絶縁性などの機能を有する。
【0023】
ホルダープレート10は、例えば金属板部材11とケース部材12とのインサート射出によって一体成型されることが好ましい。
図3に示すように、固定部材30は、積層式で組立てられたホルダープレート10の角部を貫通する複数の長ボルト31と、長ボルト31それぞれに締結される複数のナット32と、から構成される。
【0024】
図5は、図2のIII−III線沿った断面図である。図5に示すように、ホルダープレート10が積層式で組立てられるとき、複数のホルダープレート10相互間の組立位置を規定するためのプレート突起15及びプレート溝16がホルダープレート10にそれぞれ一体成型される。プレート突起15とプレート溝16とはケース部材12に形成される。
また、プレート突起15とプレート溝16とは一直線上に位置するようにケース部材12の上面と下面とにそれぞれ形成される。
【0025】
図6は、図2のII−II線に沿った断面図である。図6に示すように、積層式で組立てられたホルダープレート10とバッテリーセル20の間には、冷却空気が通過するように空気通路17が設けられる。
【0026】
以下、本発明によるバッテリーモジュールの組立手順について説明する。
図3に示すように、金属板部材11とケース部材12とからなる一枚のホルダープレート10を底面に置き、ホルダープレート10上に一枚のバッテリーセル20を載置する。
バッテリーセル20は、複数枚が一列に直列で連結され、複数枚のバッテリーセル20の電極21が連結された形態で準備する。
【0027】
ホルダープレート10上に一番目のバッテリーセル20を載置すると、バッテリーセル20は金属板部材11上に装着され、バッテリーセル20の縁部はケース部材12に装着され、電極21はケース部材12の両端に形成された電極挿着開口部13に挿入される。
【0028】
一枚のホルダープレート10上に一枚のバッテリーセル20を装着した後、バッテリーセル20上に一枚の新しいホルダープレート10を装着し、次いで二番目のバッテリーセル20を、一番目のバッテリーセルと切り離し、図3の矢印R1のように180℃回転させて載置する。その上に更に一枚の新しいホルダープレート10を装着し、その上に三枚目のバッテリーセル20を、二番目のバッテリーセルと切り離し、図3の矢印R2のように180度回転させて(元の向きに戻して)装着する。このような操作を繰り返して必要な枚数のホルダープレート10とバッテリーセル20とを組立てる。
【0029】
図4に示すように、複数枚のホルダープレート10と複数枚のバッテリーセル20は上下方向に積層された構造となり、各バッテリーセル20を電極21で連結すると複数枚のバッテリーセル20は電極21を介してジグザグ状に互いに連結された構造となる。
【0030】
図3、4に示すように、積層された複数枚のホルダープレート10と、複数枚のバッテリーセル20と、を長ボルト31及びナット32でなる固定部材30によって互いに固定すると、バッテリーセル20は金属板部材11に形成された突部14によって遊動しないように支持された構造となる。
【0031】
また、図5に示すように、複数枚のホルダープレート10と複数枚のバッテリーセル20が上下方向に積層されると、ホルダープレート10とバッテリーセル20の間には冷却空気が通過することができる空気通路17が形成される。
【0032】
したがって、本発明によるバッテリーモジュールは、複数枚のバッテリーセル20が上下方向に積層式で組立てられた構造となるので、組立ての間違いによる不良発生がない利点がある。
また、本発明によるバッテリーモジュールは、所望個数のバッテリーセル20を積層してモジュール化することができる構造なので、パッケージするバッテリーセルの数が変更可能であるという利点がある。
【0033】
また、アルミニウムで製作された金属板部材11の突部14がバッテリーセル20と接触した状態に組立てられることにより、熱伝導性の高いアルミニウムの特性によってバッテリーセル20の冷却性能が一層向上する。
また、積層されたバッテリーセル20の上下部に冷却空気が通過することができる空気通路17が形成されることにより、バッテリーセル20の冷却性能を一層向上させることができる。
【0034】
また、複数枚のホルダープレート10を積層するときにプレート突起15がプレート溝16に挿着される構造となるので、ホルダープレート10の組立ての間違いを防止するとともに組立位置を規定することができるという利点がある。
また、本発明によるバッテリーモジュールは、ホルダープレート10のケース部材12がプラスチックで形成されているので、軽量化、耐久性の向上、外部から熱浸透の防止、及び電気絶縁性向上効果がある。
【0035】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、バッテリーセルの組立ての際、組立ての間違いによる不良の発生をなくし、所要個数のバッテリーセルを積層してモジュール化することができる構造なので、パッケージするバッテリーセルの数が変更可能であり、サイズの自由度が有利であるので、高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュールに適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 ホルダープレート
11 金属板部材
12 ケース部材
13 電極装着開口部
14 突部
15 プレート突起
16 プレート溝
17 空気通路
20 バッテリーセル
21 電極
30 固定部材
31 長ボルト
32 ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に積層され、相互に一定の間隔を維持するように組立てられる複数枚のホルダープレート(10)と、
前記ホルダープレート(10)の間に一枚ずつ挿入され、前記ホルダープレート(10)によって支持される複数のバッテリーセル(20)と、
前記複数のホルダープレート(10)を一体結合させる固定部材(30)と、
を含むことを特徴とする高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュール。
【請求項2】
前記ホルダープレート(10)は、
前記バッテリーセル(20)が装着され、前記バッテリーセル(20)を保持し、前記バッテリーセル(20)を冷却する機能を有する金属板部材(11)と、
前記金属板部材(11)の縁部を形成するように前記金属板部材(11)と一体形成され、前記バッテリーセル(20)の側部を支持するケース部材(12)と、
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュール。
【請求項3】
前記バッテリーセル(20)それぞれに電極(21)が設けられ、前記電極(21)は前記バッテリーセル(20)の端部から突出するように設けられ、
前記バッテリーセル(20)が前記ホルダープレート(10)に積層された状態で最下端に位置する電極(21)と最上端に位置する電極(21)とが連結された構造となるように、前記電極(21)はジグザグ状に連結されることを特徴とする請求項1に記載の高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュール。
【請求項4】
前記ケース部材(12)の両端には、前記バッテリーセル(20)に電極(21)を挿着するように電極挿着開口部(13)が形成されることを特徴とする請求項2に記載の高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュール。
【請求項5】
前記金属板部材(11)には、金属板部材(11)の下側に位置するバッテリーセル(20)と接触して前記バッテリーセル(20)を支持する複数の突部(14)が一体形成されることを特徴とする請求項2に記載の高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュール。
【請求項6】
前記金属板部材(11)は、前記バッテリーセル(20)の冷却性能を向上させるためにアルミニウムで形成され、前記ケース部材(12)は、プラスチックで形成されることを特徴とする請求項2に記載の高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュール。
【請求項7】
前記固定部材(30)は、前記ホルダープレート(10)の角部を貫通する複数の長ボルト(31)と、前記長ボルト(31)にそれぞれ締結されるナット(32)と、を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュール。
【請求項8】
積層式で組立てられた前記ホルダープレート(10)と、前記バッテリーセル(20)と、の間に冷却空気が通過するように空気通路(17)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュール。
【請求項9】
前記ホルダープレート(10)が積層されるとき、複数の前記ホルダープレート(10)相互間の組立位置を規定するためのプレート突起(15)及びプレート溝(16)が前記ホルダープレート(10)に設けられることを特徴とする請求項1に記載の高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュール。
【請求項10】
前記プレート突起(15)と前記プレート溝(16)とは一直線上に位置するように前記ホルダープレート(10)を構成するケース部材(12)の上面との下面にそれぞれ形成されることを特徴とする請求項9に記載の高電圧バッテリーパック用バッテリーモジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38054(P2013−38054A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237091(P2011−237091)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】