説明

(3R,4R)−N−(4−クロロフェニル)−1−(2,2−ジフルオロエチル)−N’−[2−フルオロ−4−(2−オキソ−1(2H)−ピリジニル)フェニル]−3,4−ピロリジンジカルボキサミドの製造方法

本発明は、式(I)で示されるピロリジン−3,4−ジカルボキサミド誘導体の製造方法及びこの方法に有用な中間体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(X):
【0002】
【化1】


で示されるピロリジン−3,4−ジカルボキサミド誘導体、すなわち(3R,4R)−1−(2,2−ジフルオロエチル)−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸 3−[(5−クロロピリジン−2−イル)−アミド] 4−{[2−フルオロ−4−(2−オキソ−2H−ピリジン−1−イル)−フェニル]−アミド}の製造方法に関する。さらに、本発明は、この方法に有用な中間体に関する。
【0003】
国際公開第2005/092881号に開示される式(X)で示される化合物は、活性化合物であり、そして凝固第Xa因子を阻害する。その結果として、この化合物は血液凝固に影響を及ぼし、それゆえトロンビンの形成を阻害し、そしてとりわけ動脈及び静脈血栓、深部静脈血栓、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、不安定狭心症、心筋梗塞、冠動脈疾患、肺塞栓、心房細動に起因する脳卒中(脳血栓)、炎症及び動脈硬化などの血栓障害の治療及び/又は予防に使用することができる。この化合物は、例えば経腔的冠動脈形成術(PTCA)又は冠動脈もしくは末梢動脈のバイパス移植後の、血栓溶解療法及び再狭窄に関連する急性血管閉鎖の治療、ならびに長期血液透析患者における血管アクセス開存性の維持における利益を潜在的に有する。式(X)で示される化合物は、異なる作用様式を有する抗凝固剤との、又は血小板凝集阻害剤のと、又は血栓溶解剤との併用療法の一部を形成しうる。さらに、式(X)で示される化合物は、腫瘍細胞に対する効果を有し、そして転移を防止する。それゆえ、この化合物を、抗腫瘍剤として使用することもできる。
【0004】
国際公開第2005/092881号は、式(X)で示される化合物の製造方法を開示する。しかし、国際公開第2005/092881号に(実施例に)記載される方法は、式(X)で示される化合物の調製について低い全収率をもたらした。また、[3+2]付加環化反応のためのジエチルフマラートの熱溶液へのパラホルムアルデヒド/N−Bn−グリシン混合物の多回固体添加、自然発火性トリメチルアルミニウムを使用するワインレブアミド化工程の低くそして変動する収率、最終工程における大過剰のアルキル化剤(ジフルオロエチルトリフラート)の使用および中程度の収率、ならびに高温での(N−アリール化工程のための)KCO及びDMSOの潜在的に安全でない組み合わせなどのいくつかの問題が、この方法のスケールアップに適切ではない。
【0005】
従って、本発明は、式(X)で示される化合物を製造するための改良法を提供する。
【0006】
別段示さない限り、本明細書において本発明を記載するために使用する種々の用語の意味及び範囲を例示及び定義するために、以下の定義を示す。
【0007】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指し、フッ素、塩素及び臭素が好ましい。
【0008】
「C1−5アルキル」という用語は、単独で又は他の基と組み合わせて、1〜5個の炭素原子の、分岐又は直鎖の一価アルキル基を指す。この用語は、さらに、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチルなどの基により例示される。「C1−3アルキル」という用語は、単独で又は他の基と組み合わせて、1〜3個の炭素原子の、分岐又は直鎖の一価アルキル基を指す。
【0009】
「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルなどの、3〜10個の炭素原子、好ましくは3〜6個の炭素原子の一価炭素環基を指す。
【0010】
「アルコキシ」という用語は、基R’−O−を指し、ここで、R’は、アルキルである。「低級アルコキシ」という用語は、基R’−O−を指し、ここで、R’は、低級アルキルである。
【0011】
「チオ−アルコキシ」という用語は、基R’−S−を指し、ここで、R’は、アルキルである。「チオ−低級アルコキシ」という用語は、基R’−S−を指し、ここで、R’は、低級アルキルである。
【0012】
「フルオロ−低級アルコキシ」という用語は、基R”−O−を指し、ここで、R”は、フルオロ−低級アルキルである。フルオロ−低級アルコキシ基の例は、例えばCFH−O、CFH−O、CF−O、CFCH−O、CF(CH−O、(CFCH−O、及びCFH−CF−Oである。
【0013】
「アルケニル」という用語は、単独で又は他の基と組み合わせて、オレフィン結合及び2〜20個、好ましくは2〜16個の炭素原子、より好ましくは2〜10個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐の炭化水素残基を意味する。下記の低級アルケニル基もまた、好ましいアルケニル基である。「低級アルケニル」という用語は、オレフィン結合及び2〜7個、好ましくは2〜4個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の炭化水素残基、例えば2−プロペニルを指す。
【0014】
「アルキニル」という用語は、単独で又は他の基と組み合わせて、三重結合及び20個まで、好ましくは16個までの炭素原子を含む、直鎖又は分岐の炭化水素残基を意味する。「低級アルキニル」という用語は、三重結合及び2〜7個、好ましくは2〜4個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の炭化水素残基、例えば2−プロピニルを指す。低級アルキニル基は、例えばヒドロキシにより置換されることができる。
【0015】
「アルキレン」という用語は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜16個の炭素原子、より好ましくは10個までの炭素原子の、直鎖又は分岐の二価飽和脂肪族炭化水素基を指す。下記の低級アルキレン基もまた、好ましいアルキレン基である。「低級アルキレン」という用語は、1〜7個、好ましくは1〜6個又は3〜6個の炭素原子の、直鎖又は分岐の二価飽和脂肪族炭化水素基を指す。直鎖アルキレン基又は低級アルキレン基が好ましい。
【0016】
「アリール」という用語は、フェニル又はナフチル基、好ましくはフェニル基に関し、これらの基は、低級アルケニル、低級アルキニル、ジオキソ−低級アルキレン(例えばベンゾジオキシル基を形成する)、ハロゲン、ヒドロキシ、CN、CF、NH、N(H,低級アルキル)、N(低級アルキル)、アミノカルボニル、カルボキシ、NO、低級アルコキシ、チオ−低級アルコキシ、低級アルキルスルホニル、アミノスルホニル、低級アルキルカルボニル、低級アルキルカルボニルオキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキル−カルボニル−NH、フルオロ−低級アルキル、フルオロ−低級アルコキシ、低級アルコキシ−カルボニル−低級アルコキシ、カルボキシ−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ヒドロキシ−低級アルコキシ、NH−低級アルコキシ、N(H,低級アルキル)−低級アルコキシ、N(低級アルキル)−低級アルコキシ、ベンジルオキシ−低級アルコキシ、及び低級アルキル(これらは、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、N(H,低級アルキル)又はN(低級アルキル)によって場合により置換されることができる)からなる群より独立して選択される1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基によって場合により置換されることができる。好ましい置換基は、ハロゲン、低級アルコキシ、フルオロ−低級アルコキシ、チオ−低級アルコキシ、及びアミノである。
【0017】
本明細書において使用する「ヘテロシクリル」という用語は、窒素、酸素及び硫黄より選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含む、4又は6個の環員を有する非芳香族単環式複素環を表す。適切な複素環の例は、ピロリジニル、オキソピロリジニル、イソオキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジニル、2−オキソ−ピペリジニル、3−オキソ−モルホリニル、2−オキソ−ピペラジニル、2−オキソ−オキサゾリジニル、2−オキソ−アゼチジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、4,5−ジヒドロ−オキサゾリル、4,5−ジヒドロ−チアゾリルである。好ましい複素環は、モルホリニル、3−オキソ−モルホリニル、2−オキソ−ピペラジニル及び2−オキソ−ピペリジニルである。ヘテロシクリル基は、「アリール」という用語に関連して前述した置換パターンを有してもよい。
【0018】
「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素及び/又は硫黄より選択される1、2又は3個の原子を含みうる、芳香族の5〜6員単環又は9〜10員二環、例えばフリル、ピリジル、ピリダジニル、オキソ−ピリダジニル、ピリミジニル、2−オキソ−ピリジニル、2−オキソ−ピリミジニル、ピラジニル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、インダゾリルを指す。好ましいヘテロアリール基は、2−オキソ−ピリジニル、2−オキソ−ピリミジニル、ピリジニル、及びインドリルである。ヘテロアリール基は、「アリール」という用語に関連して前述した置換パターンを有してもよい。好ましい置換基は、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ又はCNである。
【0019】
一般的合成法
本発明によれば、式(X)で示される化合物は、以下のように製造される:
I 酵素的経路A
【0020】
【化2】

【0021】
スキーム1において、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルを意味する。式(6)で示される化合物は水和物であることができる。特に、式(6)[式中、Rは、Etである]で示される化合物の水和物(6’):
【0022】
【化3】


を、対応する含水結晶(6’)として容易に単離することができる。
【0023】
この経路は、以下の工程を含む:
1. ベンジル保護されたピロリジン2を提供するための、インサイチュで生成したアゾメチンイリドの間の双極[3+2]付加環化。
2. 3を提供するための、ピロリジン2の脱ベンジル化。
3. ラセミ体ジエステル4を提供するための、3のBoc保護。
4. (R,R)−ジエステル5を提供する、(S,S)−鏡像異性体を加水分解しそして洗浄する酵素的分割。
5. (R,R)−一酸6を提供する、選択的モノ加水分解(monohydrolysis)。
6. アミドエステル7を与える、アニリン11とのアミドカップリング。
7. ビス−アミド8を提供する、2−アミノ−5−クロロピリジンとの塩基性アミド化。
8. ピロリジン9を提供する、Boc脱保護。
9. ジフルオロエチルアミン10を提供する、アルキル化。
【0024】
1−1. 付加環化工程
文献に見出されるように(Rodriguez Sarmiento et al., Tetrahedron: Asymm. 2003, 1547-1551;M. Joucla, J. Mortier, Bull. Soc. Chim. Fr. 1988, 579;O. Tsuge, S. Kanemasa, M. Ohe, S. Takenaka, Bull. Chem. Soc. Jpn. 1987, 4079;O. Tsuge, S. Kanemasa, M. Ohe, S. Takenaka, Chem. Letters 1986, 973;M. Joucal, J. Mortier, J. Chem. Soc. Chem. Comm. 1985, 1566.)、付加環化を、フマル酸ジエステルの、N−ベンジルグリシン及びホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒド)との反応により行うことができる。付加環化を、フマル酸ジエステルをN−ベンジル−トリメチルシリルメチルアミン1のN−(アルコキシメチル)又はN−(ベンゾトリアゾール−メチル)誘導体などのアゾメチンイリド前駆体と、一般に酸/ルイス酸触媒作用又は熱条件下で反応させることによって行うこともできる(Hosomi et al., Chemistry Letters 1984, 1117;Katritzky et al., Tetrahedron 1994, 12571;Karlsson and Horberg, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 2002, 1076;Kazuo et al., Chem. & Pharm. Bull. 1985, 896;I.F. Cottrell, D. Hands, D.J. Kennedy, K.J. Paul, S.H.B. Wright, K. Hoogsteen, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 1991, 1091;J. S. Cavey, J. Org. Chem. 2001 2526;C. Savarin, "Organic Process Research and Development", Scientific Update conference proceedings, Nice, March 30th 2006)。イリド前駆体は一般に単離されており、そしてインサイチュで生成したイリドのクエンチを防止するために、水は一般に反応混合物から排除される。
【0025】
しかし、N−ベンジル−トリメチルシリルメチルアミン1をホルムアルデヒド水溶液と反応させることにより、アゾメチンイリド前駆体が提供され、これを事前乾燥なしにフマル酸ジエステルとの付加環化に直接使用することができることが見出された。実際、適切な条件下で、フマル酸エステルを用いた生成したイリドの付加環化と、水を用いたイリドのクエンチとの間の競合は、付加環化に有利であり、環付加物(水を用いた競合的イリドクエンチの指標であるN−メチル−N−ベンジルアミンが粗反応混合物中に検出される)の優れた収率を与える。これは、N−ベンジル−トリメチルシリルメチルアミン1及びホルムアルデヒド水溶液からの単純な方法を提供し、そしてイリド前駆体の単離を回避する。
【0026】
そこで、まずN−ベンジル−トリメチルシリルメチルアミン1を、THF、ジオキサン、トルエン、酢酸エチル及びDMEなどの適切な溶媒に溶解させる。THFが好ましい。ホルムアルデヒド水溶液(好ましくは濃溶液、典型的には約36%溶液、少なくとも1当量)を室温で添加する(イリドの生成に続いて水を用いたイリドクエンチが起こりうるので、フマル酸ジエステルの不在下でこの溶液を加熱することは不利益である)。
【0027】
得られた混合物を、例えば純粋に熱の条件下で、好ましくは50℃超でフマル酸ジエステルと反応させる。
【0028】
フマル酸ジエステルとの反応を、より低い温度(例えば室温)で行うこともでき、この場合、反応を、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸、トリフリン酸(triflic acid)、ギ酸及び酢酸などの適切な酸の添加により触媒する必要がありうる。トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸又はリン酸が好ましい。トリフルオロ酢酸がより好ましい。酸触媒反応を、上昇した温度で、例えば還流THF中で行ってもよい。
【0029】
好ましい条件は、THF中のN−ベンジル−トリメチルシリルメチルアミン1の溶液への濃ホルムアルデヒド溶液(少なくとも1当量、好ましくは1〜1.5当量)の添加を含む。付加環化は、得られた反応混合物を、フマル酸ジエステルのTHF溶液及び触媒量のトリフルオロ酢酸(好ましくは1当量より低い、より好ましくは1〜5mol%)と室温で反応させることにより行われる。これらの条件下で、付加環化部分を、0℃〜60℃、好ましくは20℃〜60℃、より好ましくは室温で行うことができる。
【0030】
他の添加順序、例えばTHF中の、フマル酸ジエステル、トリフルオロ酢酸、及びホルムアルデヒドの混合物へのN−ベンジル−トリメチルシリルメチルアミン1の添加、またはTHF中の、N−ベンジル−トリメチルシリルメチルアミン1、トリフルオロ酢酸及びフマル酸ジエステルの混合物へのホルムアルデヒドの添加、又は対応する逆の添加様式が可能である。
【0031】
代替の方法は、フマル酸ジエステルの熱混合物に、N−ベンジル−トリメチルシリルメチルアミン1とホルムアルデヒドとの混合物を添加することにある(例えばTHF中で40℃〜還流温度で、好ましくは還流で)。イリドが生成し、そして水によりクエンチされるので、フマル酸ジエステルの非存在下でN−ベンジル−トリメチルシリルメチルアミン、ホルムアルデヒド及びトリフルオロ酢酸を混合することは、好ましくない。
【0032】
適切な条件下で、環付加物の純度は、それが次の工程に直接導入されるために十分である。しかし、必要であれば、環付加物を、当業者に公知の方法、例えば蒸留、クロマトグラフィー又は塩形成により精製することができる。
【0033】
1−2.及び3. 脱ベンジル化−Boc保護
化合物2を、例えばパラジウム担持炭又は水酸化パラジウム担持炭などの触媒の存在下での水素化分解を含む、当業者に公知の標準条件下で脱ベンジル化することができる。水素化分解を、エタノール、THF、酢酸エチル及び酢酸などの適切な溶媒中で行うことができる。エタノールが好ましい。塩酸などの酸を添加することができるが、反応は、好ましくは遊離塩基に対して行われる。脱保護されたアミン3を、当業者に公知の標準条件により、Boc保護して、化合物4を提供することができる。好ましい条件は、エタノール、THF、MTBE、酢酸エチル及びトルエンなどの溶媒中で、好ましくはエタノール又はTHF中で、0℃〜100℃、好ましくは20℃〜40℃の間の温度で、より好ましくは室温で、化合物3をBocOと反応させることを含む。過剰のBocOを破壊するために、粗生成物を、水性THF中で、DMAP又はグリシンと、好ましくはDMAPと反応させることができる。
【0034】
適切な条件下で(実験の部参照)、粗生成物は、それが次の工程に直接導入されるために適切な純度のものである。しかし、必要であれば、当業者に公知の方法により、例えば蒸留又はクロマトグラフィーによりそれを精製することができる。
【0035】
1−4.及び5. 酵素的分割/モノ加水分解
【0036】
【化4】

【0037】
スキーム2において、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである。式(6)で示される化合物は、水和物でありうる。特に、式6[式中、Rは、Etである]で示される化合物を、対応する水和物6’:
【0038】
【化5】


として容易に単離することができる。
【0039】
式(6)で示される(R,R)−N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸モノエステルは、式(X)で示される化合物を調製するための中間体として使用される。Rについて好ましいC1−5アルキルは、メチル、エチル又はn−プロピルであり、より好ましくはメチル又はエチル、特にエチルである。式(4)で示されるジエステルは、前記のように調製される。
【0040】
中間体(6)を、下記の動力学的ラセミ分割に基づく化学酵素的手順により調製することができる。
1. スキーム2に概略を示すような、trans−ラセミ体N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸ジエステル(4)のエナンチオ選択的酵素的加水分解
及び
2. スキーム2による、水性緩衝液中での保持された(R,R)−N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸ジエステル(5)の選択的モノ加水分解。
【0041】
エナンチオ選択的加水分解は、保持されたジエステル(5)が鏡像異性体の高い過剰(>50%の転換)に達するまで、水性緩衝液中に乳化したジエステル基質(4)と酵素を激しい撹拌によって接触させることにより実施される。
【0042】
文献(Rodriguez Sarmiento, Wirz & Iding (2003) Tetrahedron: Asymm. 14, 1547-1551)に記載される専用酵素 ESP-ESL 1199(Diversa Corporation)を用いたジエチルエステル4の分割に加えて、適切な反応条件を適用すれば、以下のさらなるエナンチオ選択的酵素を見出すことができる:Esterase NE09(Selectchemie AG [Etzelstrasse 42, P.O. Box 772, CH-8038 Zurich, Switzerland]から購入されるThermogen)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)由来リパーゼ及びサーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)由来リパーゼ。好ましいのは、リゾプス・オリゼ由来リパーゼ(その市販調製物は、Amano Enzymes Inc.(Nagoya, Japan)からのLipase Dである)及びサーモミセス・ラヌギノサス由来リパーゼであり、もっとも好ましいのは、サーモミセス・ラヌギノサス由来リパーゼであり、その市販されている代表は、Novozymes(Bagsvaerd, Denmark)からのLipolase 100L Type EXであり、これは、基質の質に関してEsterase 1199よりも強いことが判明した廉価商品酵素である。
【0043】
適切な緩衝液は、pH5〜10、好ましくは6〜9の範囲の、生化学において一般に使用される従来の緩衝液である。反応の過程で、反応混合物のpHは、塩基、優先的にはNaOH又はKOH溶液の添加により、選択された値で一定に保たれる。
【0044】
Lipolase 100L Type EXの場合、n−ヘプタン(例えば5%v/v)又は塩化アンモニウム(例えば0.5M)などの非極性有機溶媒の存在下でのリン酸緩衝液(例えばpH7)の使用は、選択性に正の影響を及ぼす(E≧25)。より高濃度のリン酸緩衝液(例えば100mM)は、酵素活性を強く増強し、それが今度は、エナンチオ選択性の増加のために温度を低下させる。基質濃度は、1〜20%w/w、好ましくは5〜15%w/wの範囲でありうる。
【0045】
エナンチオ選択性を増強するために、全ての酵素を、より低い温度(0〜25℃)で適用しうる。より高い温度で作業することによって酵素の活性を増加させることができるが、しかし選択性が犠牲にされる。代替として、酵素を固定化形態で使用してもよい。反応の終了後、ジエステル生成物を抽出により従来どおりに処理する。
【0046】
次いで、保持された鏡像異性的に純粋な(典型的には99% e.e.超で得られる)(R,R)−ジエステル(5)を、文献に記載されるように(Rodriguez Sarmiento, Wirz & Iding (2003) Tetrahedron: Asymm. 14, 1547-1551)、カンジダ・シリンドラセ(Candida cylindracea)由来の市販酵素であるLipase OF(C.ルゴサ(C. rugosa);Meito Sangyo; Tokyo, Japan)を使用して鏡像異性的に純粋な(R,R)−モノエステル(6)にモノ加水分解する。より高く、技術的により関連する5〜15%の基質濃度では、二酸の形成がより顕著であったが、酵素の性能を改善することができた。
【0047】
より高い基質濃度でのLipase OFの選択性は、水性緩衝液に糖(例えば1M D−グルコース)を添加することにより引き起こされた。抽出剤(例えば酢酸エチル)として技術的に関連する溶媒を用いる生成物の単離のために、生成物であるモノエステル及び二酸副生成物を含有する水相のpHを、4.0〜4.5に調整した。
【0048】
場合により、(R,R)−モノエステル6を、高度に(R,R)選択性の酵素を使用して、エナンチオ選択的モノ加水分解によりジエステル4から直接合成しうる。
【0049】
1−6. 第1のアミドカップリング
アミドエステル7を提供するための、式6で示される化合物(無水形態として)および化合物11の反応に適切な条件は、当業者に周知である。このような反応を、ジクロロメタン、DMF、アセトニトリル、THF、NMP及びDMAなどの適切な溶媒中で、好ましくはTHF又はアセトニトリル中で、より好ましくはTHF中で、EDC、DIC、DCC、CDI、TBTU、HBTU、EEDQ、CIP、HOBt、HATU、PyBOP、PyBrOP、BOP、BOP−Cl及びTFFHなどの適切なカップリング剤の存在下で、−20℃〜120℃の範囲で選択されうる適切な温度で実施することができる。さらなる反応条件は、CDMT(2−クロロ−4,6−ジメトキシ−[1,3,5]トリアジン)、トリクロロトリアジン又はそれらの対応するN−メチルモルホリン付加物(すなわち、4−(4,6−ジメトキシ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−4−メチル−モルホリニウムクロリド)などのカップリング剤の使用を含んでもよい。
【0050】
あるいは、酸6を、クロロギ酸アルキル又はクロロギ酸アリール、好ましくはクロロギ酸アルキル、好ましくはクロロギ酸低級アルキル、より好ましくはクロロギ酸イソブチルの使用により、ジクロロメタン、DMF、アセトニトリル、THF、NMP及びDMAなどの溶媒中で、好ましくはDMF、THF又はアセトニトリル中で、より好ましくはTHF中で、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン及びコリジンなどの塩基と組み合わせて、好ましくはN−メチルモルホリン又はコリジンと組み合わせて、より好ましくはN−メチルモルホリンと組み合わせて活性化しうる。活性化は、−50℃〜50℃、好ましくは−20℃〜40℃、より好ましくは−10℃〜20℃より選択される適切な温度で行われる。クロロギ酸エステルを、酸6と適切なアミンとの混合物に添加することができるか、またはクロロギ酸エステルへのアミンと酸6との混合物の逆の添加によることができ、好ましくは後者の添加順序である。
【0051】
次いで、活性化した酸を、0℃〜120℃、好ましくは20℃〜60℃、好ましくは50℃〜60℃より選択される温度で、アニリン11と反応させる。反応を室温で容易に行わせる塩化リチウムなどの無機塩の添加により、反応速度を劇的に増加させることができることが見出された。塩化リチウムは、1,3−ジカルボニルフラグメントの錯体化により混合無水物を活性化する見込みが高い。
【0052】
あるいは、酸を、当業者に周知の条件下でアニリン11と反応させる前に、対応する酸塩化物に転換することができる。好ましい条件は、SOCl、OPCl、オキサリルクロリド又はテトラメチルケテンイミニウムクロリド、好ましくはオキサリルクロリドを用いた活性化を含む。使用する試薬に応じて、Boc脱保護を回避するために、生成した塩酸を第三級塩基の使用によりクエンチすることが必要でありうる。
【0053】
1−7. 第2のアミドカップリング
アミドエステル7を、2−アミノ−5−クロロピリジンを用いて、当業者に公知の条件下で、トリアルキルアラン又はジアルキルアルミニウムクロリド又はアルキルアルミニウムジクロリドの存在下で、好ましくはトリアルキルアランの存在下で、THF、ジオキサン、DME及びトルエンなどの適切な溶媒中で、好ましくはジオキサン又はトルエン中で、より好ましくはトルエン中で、−10℃〜120℃、好ましくは50℃〜120℃、より好ましくは90℃〜110℃の範囲で選択される適切な温度で、ビス−アミド8に直接転換することができる。
【0054】
あるいは、アミドエステル7を、当業者に公知の条件下で、NaH、LiH、KH、LDA、LiHMDS、KHMDS、NaHMDS、LiOtBu、KOtBu、NaOtBu、リチウムt−アミラート、カリウムt−アミラート及びナトリウムt−アミラートなどの強塩基の存在下で、好ましくはLiHMDS、LDA又はリチウムt−アミラートの存在下で、より好ましくはLiHMDS又はリチウムt−アミラートの存在下で、さらにより好ましくはLiHMDSの存在下で、THF、ジオキサン、DME、トルエン又はDMSOなどの適切な溶媒中で、好ましくはTHF、ジオキサン又はDME中で、より好ましくはTHF中で、例えば−20℃〜80℃から選択することのできる適切な温度で、ビス−アミド8に直接転換することができる。好ましい条件は、−10℃〜60℃、好ましくは0℃〜40℃、より好ましくは0℃〜室温の温度でのTHF中のLiHMDSの使用を含む。
【0055】
反応混合物の処理後に、生成物8は、最良にはエタノールから結晶化される。
【0056】
あるいは、ビス−アミド8を、アミドエステル7から、対応する酸アミドにけん化し、続いて5−クロロ−2−アミノ−ピリジンとカップリングさせることにより得ることができる。エステルのけん化に使用すべき条件は、当業者に周知である。同じことは5−クロロ−2−アミノ−ピリジンとのカップリングに当てはまり、このための一般的な条件も本発明の説明中に見出すことができる。
【0057】
1−8.及び9. Boc脱保護−アルキル化
ビス−アミド8を、当業者に周知の条件下で、トルエン、エタノール、酢酸エチル、アセトン、ジオキサン、THF、イソプロパノール及び水などの適切な溶媒中で、好ましくはTHF、イソプロパノール又は水中で、より好ましくは水中で、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、HBr、硫酸、トリフリン酸、トリフルオロ酢酸及び塩酸などの酸の存在下で、好ましくはトリフルオロ酢酸又は塩酸の存在下で、より好ましくは塩酸の存在下で、Boc−脱保護することができる。
【0058】
脱保護されたアミン9を、当業者に公知の処理により、塩として(例えば、iPrOH中でHClを用いてBoc脱保護を行う場合に、塩酸塩9・nHCl(nは典型的には1.8〜2.6)が濾過により単離されうる)、又は遊離塩基として、単離することができる。しかし、遊離塩基の水溶性に起因して、生成物は、好ましくは後の工程、すなわちアルキル化工程に直接導入される。適切な反応条件下で、粗反応混合物を、次の工程に直接導入することができる(下記参照)。
【0059】
アミン9を、アセトニトリル、THF、ジオキサン、ジクロロメタン、DMF、DMSO、DMA、NMP及び酢酸エチルなどの適切な溶媒中で、好ましくはTHF、DMSO、ジクロロメタン又はアセトニトリル中で、より好ましくはジクロロメタン又はアセトニトリル中で、さらにより好ましくはアセトニトリル中で、2,2−ジフルオロエチルハロゲニド(ヨージド、ブロミド、クロリド)、2,2−ジフルオロエチルトシラート、2,2−ジフルオロエチルメタンスルホナート、2,2−ジフルオロエチルn−ニトロベンゼンスルホナート(n=2、3もしくは4)又は2,2−ジフルオロエチルトリフラートなどのアルキル化剤を用いて、好ましくは2,2−ジフルオロエチルn−ニトロベンゼンスルホナート(n=2、3、4)又は2,2−ジフルオロエチルトリフラートを用いて、より好ましくは2,2−ジフルオロエチル3−ニトロベンゼンスルホナート又は2,2−ジフルオロエチルトリフラートを用いて、例えば20℃〜130℃より選択される適切な温度で、トリエチルアミン、エチル−ジイソプロピルアミン、コリジン、ピリジン、ルチジン、NaCO、NaHCO、KCO及びCsCOなどの適切な塩基の存在下で、好ましくはエチル−ジイソプロピルアミン又はコリジンの存在下で、より好ましくはエチル−ジイソプロピルアミンの存在下で、アルキル化することができる。遊離塩基のアルキル化のための好ましい条件は、アセトニトリル中で、20℃〜80℃、好ましくは50℃〜80℃の温度で、より好ましくは還流アセトニトリル中で、エチル−ジイソプロピルアミンなどの第三級アミンの存在下で、2,2−ジフルオロエチル−3−ニトロベンゼンスルホナートと反応させることを含む。アミン9のアルキル化のための他の好ましい条件は、THF、アセトニトリル、酢酸エチル又はジクロロメタン中で、好ましくはTHF、アセトニトリル又はジクロロメタン中で、より好ましくはジクロロメタン中で、−10℃〜80℃、好ましくは0℃〜50℃、より好ましくは0℃〜室温の温度で、エチル−ジイソプロピルアミンなどの第三級アミンの存在下で、2,2−ジフルオロエチルトリフラートと反応させることを含む。
【0060】
酸塩としての脱保護されたアミンを、遊離塩基について上記したのと同様の条件下でアルキル化することができ、後者は、適切な塩基の作用によりインサイチュで生成する。しかし、この塩の対陰イオン部分が求核剤として作用し(塩化物イオンのように)、そしてアルキル化剤と競合的に反応することもできる場合、過剰のアルキル化剤を導入することが必要である。この場合、二相性の水性/有機溶媒条件下で作用させることが好ましくありうる。適切な条件下で、対陰イオンを、水相中に隔離することができ、そしてこれは有機相に存在するアルキル化剤と反応することができない。適切な塩基の使用によりインサイチュで生成した遊離アミンは、部分的に水溶性であるが、有機相中に連続的に抽出され、ここでそれは適切なアルキル化剤によりアルキル化される。
【0061】
Boc脱保護/二相性アルキル化のために最も好ましい条件は、酢酸エチル、THF、イソプロパノール又は水中での、好ましくはTHF、イソプロパノール又は水中での、より好ましくは水中でのBoc脱保護を含む。アルキル化工程は、粗Boc脱保護反応混合物から、水、ならびにエチル−ジイソプロピルアミン、NaCO、NaHCO、KHCO、KCO、NaOH、KOHなどの適切な塩基、又はその混合物、例えばエチル−ジイソプロピルアミンとNaOH(又はKOH)との混合物、エチル−ジイソプロピルアミンとNaHCO(又はKHCO)との混合物、NaHCOとNaOH(KOH)との混合物及びKHCOとKOH(又はNaOH)との混合物の存在下で、より好ましくはNaHCOの存在下で、ならびに酢酸エチル、酢酸イソプロピル、2−メチル−THF、MTBE及びトルエンなどのさらなる有機溶媒の存在下で、好ましくは酢酸エチル、酢酸イソプロピル又は2−メチル−THFの存在下で、より好ましくは酢酸エチルの存在下で、ならびに2,2−ジフルオロエチルn−ニトロベンゼンスルホナート(n=2、3、4)及び2,2−ジフルオロエチルトリフラートなどのアルキル化剤の存在下で、好ましくはジフルオロエチル3−ニトロベンゼンスルホナート又は2,2−ジフルオロエチルトリフラートの存在下で、より好ましくは2,2−ジフルオロエチルトリフラートの存在下で、0℃〜100℃、好ましくは20℃〜50℃より選択される適切な温度で行われる。
【0062】
至適条件下で、等量又はほんのわずかに過剰のアルキル化剤を使用することが可能である(反応及び類似の例の実験の説明を参照されたい)。
【0063】
II 付加環化/Boc保護によりBoc−ピロリジン中間体4を得るための代替経路
Boc−ピロリジン中間体4の調製のための代替方法は、トリメチルシリルメチル−アミン12から[3+2]付加環化して、アミナール13を提供することからなり、これを、所望のBoc−ピロリジンに直接転換するか、またはピロリジン3に遊離させることができ、これは、上記のように容易にBoc保護されて、4を提供する。この順序は、脱ベンジル化工程を不要にし、そしてより原子効率的でもある。
【0064】
【化6】

【0065】
スキーム3において、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである。
【0066】
II−1. 新たな[3+2]付加環化
トリメチルシリルメチルアミンとフマル酸ジエステルとの間の[3+2]付加環化を、1から2への転換について記載した付加環化に類似した条件下で行うことができる。しかし、同一条件下では、低〜中程度の収率が得られる。反応の最良の成果に重要なのは、使用するホルムアルデヒドの量である。反応は、1.3当量を超える、好ましくは1.5〜3当量、より好ましくは2当量の過剰のホルムアルデヒドを使用して最良に行われる。1から2への転換について記載した酸触媒作用による活性化は可能ではあるが、反応は、40℃〜120℃、好ましくは50℃〜80℃、より好ましくは55℃〜65℃より選択される温度での純粋な熱条件下で、THF、ジオキサン、NMP、DMSO、DMA、DME、DMF、酢酸エチル及びトルエンなどの溶媒中で、好ましくはTHF、ジオキサン、DMSO又はトルエン中で、より好ましくはTHF又はジオキサン中で最良に行われる。
【0067】
II−2. Boc保護
アミナールを、水/有機溶媒混合物中でBocOとの反応によりBoc保護されたピロリジン4に直接転換することができる。反応の間に、アミナールは、対応するピロリジン3にインサイチュで加水分解され、これは、次いでBocOと反応して4を与える。反応は、水と、THF、ジオキサン、トルエン、酢酸エチル、MTBE、酢酸イソプロピル、アセトン及びジクロロメタンなどの有機溶媒との混合物中で最良に行われる。好ましい有機溶媒は、THF、ジオキサン、トルエン、酢酸エチル、MTBE又は酢酸イソプロピル、より好ましくは酢酸エチル、MTBE又はTHFである。反応を、NaHCO、KHCO、トリエチルアミン、NaCO及びKCOなどの塩基の存在下で行うこともできる。好ましい塩基は、NaHCO又はKHCO、特にNaHCOである。あるいは、アミナールを、例えば水/有機溶媒混合物中で、塩酸ヒドロキシルアミンと反応させて、処理後にピロリジン3を提供することができる。この反応は、場合により、NaHCO、KHCO、トリエチルアミン、NaCO及びKCOなどの塩基の存在下で行われる。好ましい塩基は、NaHCO又はKHCO、特にNaHCOである。必要であれば、Boc−ピロリジン4を、当業者に公知の方法、例えばクロマトグラフィー又は蒸留により精製することができる。
【0068】
III 脱保護/遊離塩基形成/アルキル化/アミド形成によりアミドエステル7を化合物(X)に転換するための代替経路
【0069】
【化7】

【0070】
スキーム4において、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである。
【0071】
アミドエステル7を化合物(X)に転換するための代替法は、a)Boc脱保護、b)アルキル化(好ましくは遊離塩基に対する)、及び第2のアミド形成を含む反応順序にある。
【0072】
Boc脱保護は、当業者に公知の条件下で行われる。脱保護されたピロリジンを、適切な処理により塩酸塩又は遊離塩基として単離することができる。例えば、RがEtである塩酸塩14を、適切な溶媒中でNH(例えばエタノール溶液として)との反応により遊離アミン15に転換することができる。適切な溶媒は、エタノール、又はエタノールと、酢酸エチル、トルエン、MTBE、アセトン、酢酸イソプロピル、ジイソプロピルエーテル及びTHFなどの有機溶媒との、好ましくは酢酸エチルとの混合物を含む。
【0073】
次いで、遊離アミン15を、類似の基質についてすでに上記した条件によりアルキル化する。好ましい条件は、適切な溶媒又は溶媒混合物中で、適切な塩基の存在下で、ジフルオロエチルトリフラート及びジフルオロエチル3−ニトロベンゼンスルホナートを使用することを含む。
【0074】
IV 酵素的経路B
【0075】
【化8】

【0076】
スキーム5において、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである。Rは、好ましくは、場合によりハロゲン、メトキシ又はヒドロキシにより置換されているC1−3アルキル、より好ましくはC1−3アルキル、特にメチルである。
【0077】
化合物(X)はまた、先のスキームに概略を示すようなN−(2,2−ジフルオロエチル)−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸ジエステルの酵素的分割によって入手可能である。経路を、上記で定義するようなエステル系列で実施することができるが、好ましくはメチルエステル系列で行う。
【0078】
ラセミ体エステルを、すでに上記した条件下で、適切なフマル酸ジエステルと、アミン1及びホルムアルデヒドの組み合わせに由来するアゾメチンイリドとの間の[3+2]付加環化により調製する。得られたN−ベンジル−ピロリジンジカルボン酸ジエステルを、当業者に公知の条件下で脱保護する。次いで、ピロリジンを、類似の基質について先に記載した条件下で(すなわち、適切な溶媒又は溶媒混合物中で、適切な塩基の存在下で、ジフルオロエチルトリフラート又はジフルオロエチル3−ニトロベンゼンスルホナートとの反応により)アルキル化する。次いで、ラセミ体ジエステルを分割し、所望の(R,R)−ピロリジンジエステルをもたらす。次いで、後者を、一酸モノエステルにモノ加水分解し、これを、今度は類似の基質について本特許において記載する条件下で、化合物(X)に転換する。
【0079】
この順序は、以下を含む:
1. ピロリジン17を提供するための、フマル酸ジエステルと、アミン1及びホルムアルデヒドの組み合わせに由来するアゾメチンイリドとの間の[3+2]付加環化
2. 18を提供するための、17の脱ベンジル化。
3. 化合物19を提供する、ピロリジン18のアルキル化
4. (rac)−ピロリジンジエステル19の(R,R)−ピロリジンジエステル20への分割
5. ピロリジンジエステル20の(R,R)−一酸モノエステル21へのモノ加水分解。
6. モノアミドモノエステル22を得るための、一酸モノエステル21のアニリン11とのカップリング
7. モノエステルモノアミド22の2−アミノ−5−クロロピリジンとの直接カップリング。
【0080】
あるいは、ピロリジン19を、以下を含む工程により直接入手することができる:
1. トリメチルシリルメチルアミンを、2,2−ジフルオロエチルトリフラート、2,2−ジフルオロエチルトシラート、2,2−ジフルオロエチルn−ニトロベンゼンスルホナート(n=2,3,4)、2,2−ジフルオロエチル2,4−ジクロロベンゼンスルホナート及び2,2−ジフルオロエチルメシラートなどのアルキル化剤、好ましくは2,2−ジフルオロエチルトリフラート又は2,2−ジフルオロエチル3−ニトロベンゼンスルホナート、より好ましくは2,2−ジフルオロエチルトリフラートを用いてアルキル化し、N,N,−(トリメチルシリルメチル)−(ジフルオロエチル)−アミン29をもたらす。
2. 今度は、試薬29を、酸(アルキル化工程で使用する任意の過剰の塩基を少なくともプロトン化するために十分な量の)の存在下で、ホルムアルデヒド、フマル酸ジエステルと反応させ、対応する[3+2]付加環化生成物、すなわちピロリジン19をもたらす。あるいは、付加環化工程を、熱条件下で行うことができる。
【0081】
【化9】

【0082】
スキーム6において、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである。Rは、好ましくは、場合によりハロゲン、メトキシ又はヒドロキシにより置換されているC1−3アルキル、より好ましくはC1−3アルキル、特にメチルである。
【0083】
あるいは、アミドエステル22を、当業者に公知の条件下で、対応するアミド酸へのエステル加水分解及び酸官能基の2−アミノ−5−クロロピリジンとのカップリングにより、10に転換することができる。
【0084】
酵素的分割/モノ加水分解
【0085】
【化10】

【0086】
スキーム7において、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである。Rは、好ましくは、場合によりハロゲン、メトキシ又はヒドロキシにより置換されているC1−3アルキル、より好ましくはC1−3アルキル、特にメチルである。
【0087】
式21の(R,R)−N−(2,2−ジフルオロエチル)−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸モノエステルは、式(X)で示される化合物を調製するための中間体として使用される。Rについての好ましいC1−3アルキルは、メチル又はエチルである。式19、20及び21において、Rは、優先的にエチル又はメチルであり、最も好ましいのはメチルである。
【0088】
中間体21を、下記の動力学的ラセミ分割に基づく化学酵素的手順により調製することができる。
1. スキーム7に概略を示すような、trans−ラセミ体N−(2,2−ジフルオロエチル−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸ジエステル19のエナンチオ選択的酵素的加水分解
および
2. スキーム7による、水性緩衝液中での保持された(R,R)−N−(2,2−ジフルオロエチル)−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸ジエステル20の選択的モノ加水分解。
【0089】
エナンチオ選択的加水分解(スキーム7)を、保持されたジエステル20が高い鏡像異性体過剰(>50%の転換)に達するまで、水性緩衝液中に乳化したジエステル基質19と酵素を激しい撹拌よって接触させることにより実施する。
【0090】
適切な反応条件を適用すれば、いくつかのエナンチオ選択的酵素を見出すことができる:カンジダ・アンタルクチカB型(Candida antarctica form B)由来リパーゼ、フィコミセス・ニテンス(Phycomyces nitens)由来リパーゼ、バチルス種(Bacillus sp.)由来プロテアーゼ(Esperase 4.0 T; Novozymes)、バチルス種由来ズブチリシン(Alcalase 2.5L; Novozymes)及びエステラーゼ ESP-ESL-1199。好ましいのは、カンジダ・アンタルクチカB型由来リパーゼ、フィコミセス・ニテンス由来リパーゼ(Lipase PN, Wako Pure Chemical Industries Ltd.; Osaka, Japan)及びエステラーゼ ESP-ESL-1199(Diverasa Corporation; San Diego, USA)であり、最も好ましいのは、カンジダ・アンタルクチカB型由来リパーゼ(その市販調製物はLipozyme CALB L又はNovozyme CALB L; Novozymes; Bagsvaerd, Denmarkである)である。
【0091】
適切な緩衝液は、pH5〜9、好ましくは6〜8の範囲の、生化学において一般に使用される従来の緩衝液である。反応の過程で、反応混合物のpHは、塩基、優先的にはNaOH又はKOH溶液の添加により、選択された値で一定に保たれる。
【0092】
エステラーゼ ESP-ESL-1199の場合、pH7.2のリン酸緩衝液(例えば30mM)を、酢酸マグネシウム(例えば飽和)、アセトニトリル(例えば5%v/v)及びエタノール(例えば5%v/v)などの添加剤と共に使用することが、選択性にとって有益である(E≫40)。また、7未満のpH(例えばMES緩衝液、pH6.2)は、選択性を増強する。
【0093】
カンジダ・アンタルクチカB型由来リパーゼの場合、pH7.2のリン酸緩衝液(例えば30mM)を、硫酸カリウム(例えば0.5M)、塩化カリウム(例えば0.5M)、ロダンリチウム(例えば0.1M)、酢酸マグネシウム(例えば飽和)、ポリエチレングリコール6000(例えば10%w/v)、塩化グアニジウム(例えば0.1M)、D−グルコース(例えば0.5M)、DMSO(例えば5%v/v)及びエタノール(例えば5%v/v)などの添加剤と共に使用することが、選択性にとって有益である(E≫40)。また、7未満のpH(例えば酢酸緩衝液又はMES緩衝液)は、選択性を増強する。
【0094】
エナンチオ選択性を増強するために、全ての酵素を、より低い温度(0〜25℃)で適用しうる。より高い温度で作業することによって酵素の活性を増加させることができるが、しかし選択性が犠牲にされる。代替として、固定化形態で酵素を使用してもよい。
【0095】
反応の終了後に、ジエステル生成物を抽出により従来どおりに処理する。
【0096】
次いで、保持された鏡像異性的に純粋な(R,R)−ジエステル20を、それを水性系中でリパーゼ、エステラーゼ、コレステラーゼ又はプロテアーゼと接触させることにより、鏡像異性的に純粋な(R,R)−モノエステル21にモノ加水分解する。ブタ肝臓エステラーゼ(その市販調製物は、例えばRoche Applied SciencesからのPLE Technical Grade(3.12MU/L;カタログ番号10491228;Penzberg, Germany)である)及びカンジダ・シリンドラセ由来Lipase OF(C.ルゴサ;Meito Sangyo; Tokyo, Japan)が最も適切な酵素であると判明した。
【0097】
基質濃度は、1〜20%w/w、好ましくは5〜15%w/wの範囲でありうる。
【0098】
モノエステル生成物を、酢酸エチルを用いたpH3.5〜4での(抽出工程の間にpHを調整して、又は強pH3.5〜4リン酸緩衝液を使用して)反復した抽出により、水相から抽出する。
【0099】
場合により、(R,R)−モノエステル21を、高度に(R,R)選択的な酵素を使用するエナンチオ選択的モノ加水分解により、ジエステル19から直接合成してもよい。
【0100】
V 環状無水物経路
【0101】
【化11】

【0102】
スキーム8において、Rは、メチル、エチル、シンナミル、ベンジル又はフェネチルである。
【0103】
この経路は、以下の工程を含む:
1. ジフルオロエチルピロリジン23をもたらす、[3+2]付加環化反応
2. cis−ビス−酸24を提供する、ベンジルエステル水素化分解
3. 環状無水物25の形成
4. cis一酸モノエステル26を形成させるための、無水物脱対称化(desymmetrization)
5. αエステル中心の対応するtrans一酸モノエステル27へのエピマー化
6. アミドエステル28を与える、アニリン11を用いた第1のアミドカップリング
7. 化合物10をもたらす、エステルアミド28の2−アミノ−5−クロロピリジンとの直接カップリング
【0104】
付加環化工程(23の形成)のための条件は、試薬29による(トリメチルシリル−メチル)−アミンからのピロリジン19の調製について記載したものと同様である。
【0105】
23の24への水素化分解は、当業者に公知の条件下で行われる。使用する条件に応じて、水素化分解の間に結晶化が起こりうる。これを、トリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミンなどの第三級アミンの存在下で、好ましくはトリエチルアミンの存在下で水素化分解を行うことにより、回避することができる。ビス酸24は、酢酸、又は酢酸と、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及びMTBEなどの溶媒との混合物から、好ましくは酢酸とMTBEの混合物中で最良に結晶化される。対応するtrans 酸へのエピマー化が、例えばcis 酸24を酢酸中で加熱した場合に起こりうることに留意しなければならない。このエピマー化を回避するために、処理条件を慎重に選択しなければならない。しかし、より強烈な条件下ではあるが、24のtrans 異性体を環状無水物に転換することが可能である(下記参照)。
【0106】
環状無水物の形成は、cisビス酸24を、塩化スルホニル、酸化リン(OPCl、P)、ハロゲン化リン(PCl、PCl、PBr)又は無水プロピオン酸及び無水酢酸などの無水カルボン酸などの脱水剤と反応させることにより行われる。好ましい条件は、適切な溶媒、好ましくは酢酸中で無水酢酸を使用することを含む。
【0107】
式26で示される化合物は、式25のメソ環状無水物の脱対称化反応により入手される(例えばBolm et al, Tetrahedron: Asymmetry 2003, 3455;Bolm et al, J. Org. Chem. 2000, 6984;Deng et al., 米国特許出願公開第2004/0082809号;Deng et al, J. Am. Chem. Soc. 2000、9542を参照されたい)。
【0108】
アルコールを用いた選択的開環による環状無水物脱対称化は、キラルアミン、特にキナアルカロイド又はその誘導体などのキラル試薬の存在下で、好ましくはキニーネの存在下で行われる。反応を、THF、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、MTBE、2−メチル−THF及びアセトニトリルなどの有機溶媒中で、好ましくはTHF、トルエン又は2−メチル−THF中で、より好ましくはトルエン又はTHF中で行うことができる(以下の表を参照されたい)。
【0109】
プロモーターとしてのキニーネ及び求核剤としてのBnOHを用いて行ったスクリーニングからの結果:
【0110】
【表1】

【0111】
溶媒の混合物もまた可能である。しかし、試薬の溶解度、反応性及び選択性の間の至適バランスを見出さなければならない。
【0112】
この反応を、準化学量論的な量のキニーネを用いて行うことができる。しかし、この場合、反応は、添加剤、好ましくはヒューニッヒ塩基及びテトラメチルピペリジンなどの非求核塩基の存在下で、好ましくはヒューニッヒ塩基の存在下で最良に行われる。反応は、−80℃〜50℃、好ましくは−40℃〜25℃、より好ましくは約−20℃より選択される温度で行われる。
【0113】
キニーネがプロモーターとして使用される場合、無水物を、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール及び2−フェニル−エタノールなどのアルコールを用いて、好ましくはメタノール、エタノール、ベンジルアルコール、シンナアミルアルコール又は2−フェニル−エタノールを用いて、より好ましくはエタノール、ベンジルアルコール又は2−フェニル−エタノールを用いて、より好ましくは2−フェニル−エタノールを用いて開環することができる。至適条件下で、生成物は、90〜95:10〜5の鏡像異性体比で得られる。
【0114】
生成物を、抽出などの、当業者に公知の処理により単離することができる。いくつかの場合、そのキニーネ塩を、反応混合物から直接に、又は適切な溶媒交換後に、単離することができる。
【0115】
一酸モノエステルの鏡像異性体純度を、場合によっては、アミン、例えばキニーネを用いるそれらの塩の結晶化/再結晶化により向上させることができる。鏡像異性体純度を、一酸モノエステル26(ここで、Rは、PhCHCHである)の場合と同様に、水から酸を結晶化することにより向上させることができる。
【0116】
cis一酸モノエステル26の対応するtrans一酸モノエステル27へのエピマー化は、>1当量、好ましくは1.05〜3当量、より好ましくは1.1〜2当量、より好ましくは1.3〜1.6当量の強塩基、例えばLiHMDS、KHMDS、NaHMDS、LDA、KOtBu、NaOtBu、LiOtBu、リチウムt−アミラート、カリウムt−アミラート及びナトリウムt−アミラートを使用して、塩基性条件下で行われる。好ましい塩基は、KOtBu又はカリウムt−アミラート、特にKOtBuである。反応は、トルエン、THF、DME及びジオキサンなどの溶媒中で、好ましくはトルエン又はTHF中で、より好ましくはTHF中で行われる。反応は、−80℃〜50℃、好ましくは−80℃〜室温、より好ましくは−80℃〜−15℃、さらにより好ましくは−80℃〜−60℃より選択される温度で行われる。
【0117】
出発一酸モノエステル26の塩基との反応を可能にするように、それが完全に溶解しているか、又は少なくとも十分な溶解度を示すことに注意を払わなければならない。好ましくない溶解度の場合、可溶性塩を形成する第三級アミンの添加で、問題が解決されうる。好ましいアミンは、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン、より好ましくはトリエチルアミンである。
【0118】
ジアステレオマー純度(trans:cis)は、一般に粗混合物中約99%である。RがPhCHCHの場合、これは、処理及び水からの結晶化後にさらに増加しうる。
【0119】
RがPhCHCHの場合、エナンチオ純度とジアステレオマー純度の両方を、例えば酢酸エチルとヘプタンとの混合物中で(再)結晶化することにより向上させることができる。
【0120】
27の10への転換は、類似の基質について本特許においてすでに記載した条件下で行われる。
【0121】
環状無水物25を、以下のスキームに示す順序により入手することもでき、以下の工程を含む:
1. アミナール30(異性体の混合物、隣接エステル基の間ですべてtransの相対立体配置、ここでRはベンジルである)をもたらす、12の13への転換についてすでに記載した条件と同様の条件下でのトリメチルシリルメチルアミン/ホルムアルデヒド/ジベンジルフマラートの間での付加環化。
2. アミナールの対応するアミンへのインサイチュでの開裂(これは塩酸塩31として単離される)。
3. 類似の基質について本特許においてすでに記載した条件下での、32をもたらす、31の対応する遊離アミンのアルキル化。
4. transビス酸33をもたらす、ベンジルエステル水素化分解
5. 無水物形成。
【0122】
【化12】

【0123】
trans ビス酸33を、cis 無水物25に直接転換することができる。実際、適切な反応条件下で、33のcis及びtrans異性体の間に平衡が存在する。次いで、cis 異性体を無水酢酸によりトラップし、所望の無水物に転換する。反応条件は、十分に速やかにtrans−cis 異性化をさせるために反応温度を上げなければならない以外、24から25への転換に使用する条件と同様である。好ましい条件は、60℃〜140℃、好ましくは80℃〜120℃、より好ましくは100℃〜110℃の温度で、適切な溶媒、好ましくは酢酸中で、ビス酸33を無水酢酸と反応させることを含む。
【0124】
ビス酸33を、対応するエステル(例えばジメチル−、ジエチル−、ジ−ベンジル−、ジプロピル、ジイソプロピル−、ジブチル−エステル)の加水分解及びpH3〜3.5の水からの結晶化により得ることもできる。
【0125】
1−(4−アミノ−3−フルオロ−フェニル)−1H−ピリジン−2−オン(化合物11)の調製
米国特許出願公開第2005/0215599号に記載される方法、すなわち4−ブロモ−2−フルオロアニリンを用いた2−ヒドロキシピリジンの銅触媒N−アリール化は、重大な安全上の問題を抱えている。
【0126】
【化13】

【0127】
実際、KCOとDMSOとの混合物は高温で潜在的に暴走事象(runaway event)をもたらし、これは、非常に高い断熱温度上昇を伴う。暴走事象についての最大速度までの時間(ARCの測定から)はおよそ反応時間であり、従ってこのような方法を、そのままスケールアップすることができない。この方法の第1の改変は、DMSOをNMP又はDMAに、好ましくはDMAに置き換えることを含んだ。
【0128】
銅(I)供給源は、CuI、CuCl、CuBr、CuO、好ましくはCuI及びCuO、より好ましくはCuOでありうる。
【0129】
N−アリール化のための好ましい条件は、DMA中、KCOの存在下で、110℃〜150℃、より好ましくは120〜140℃、さらにより好ましくは130〜140℃の温度で、0.05〜1当量、好ましくは0.05〜0.5当量、より好ましくは0.1〜0.2当量のCuOを使用することを含む。
【0130】
他の好ましい条件は、100〜150℃、好ましくは100〜120℃(沸点を超える温度についてはオートクレーブを使用する)の温度で、溶媒としてのピリジン及び0.1〜1当量、より好ましくは0.25〜0.75当量、さらにより好ましくは約0.5当量のCuOを使用することを含む。
【0131】
両方の場合に、生成物は、水の添加により、結晶化により単離される。
【0132】
必要であれば、生成物を、活性炭処理及び/又はエタノールもしくはメタノール、好ましくはメタノール中の再結晶化によりさらに精製することができる。
【0133】
N−アリール化を、トルエン中で、trans−シクロヘキシル−1,2−ジアミン、TMEDA、エチレンジアミン、trans−N,N’−ジメチル−シクロヘキシル−1,2−ジアミン、N,N’−ジメチルエチレン−1,2−ジアミン、好ましくはtrans−N,N’−ジメチル−シクロヘキシル−1,2−ジアミン及びTMEDAなどのリガンド、好ましくはTMEDAの存在下で行うこともできる。
【0134】
アニリン11を、まず4−ブロモ−2−フルオロアニリンの保護、続いてN−アリール化(非保護アニリンに関して上記したものと同様の条件下で)、続いて脱保護を含む順序により調製することもできる。4−ブロモ−2−フルオロアニリンは、好ましくはビス−ベンジル化により保護される。結晶性中間体を、各工程で得る。ピリドン環の水素化を回避するために、脱保護工程は、水素化分解の慎重なモニタリングを必要とする。触媒の適切な選択もまた重要であり、本発明者らの手持ちでは、Johnson Mattheyからの5% Pd/Cが最良の結果を与えた。
【0135】
【化14】

【0136】
実施例
下記の実施例は、本発明を更に詳細に説明するために役立つ。しかし、これらは本発明の範囲をどのようにも制限することを意図しない。
【0137】
実施例1 酵素的経路A
工程1:[3+2]付加環化
【0138】
【化15】

【0139】
N−ベンジル−N−トリメチルシリルメチル−アミン900g(4654mmol)を、THF 5.6Lに20〜25℃で溶解した。温度を20〜25℃の間に保持しながら、36%ホルムアルデヒド水溶液450ml(5880mmol、1.26当量)を15分間かけて加えた。15分後、ジエチルフマラート760ml(1当量)、THF 2.25L及びトリフルオロ酢酸11.2ml(0.03当量)の混合物を15分間かけて加えた。温度を20〜30℃に保持しながら、反応混合物を一晩撹拌した(GCによる工程内管理(in process control))。1N HCl 3.5Lを加え、続いてヘプタン2.3Lを加えた。水相を分離し、ヘプタン3.4Lで洗浄した。ヘプタン相を1N HCl 3.5Lで順次洗浄した。MTBE 4.5Lを、合わせた水相に加えた。32% NaOH水溶液720mlを激しく撹拌しながら加えた(pH 13)。水相を分離し、MTBE 4.5Lで再抽出した。MTBE相を水2.2Lで順次洗浄し、合わせ、45℃で濃縮乾固して、粗(rac)−trans−N−ベンジル−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸ジエチルエステル1.295kgを得た。必要であれば、粗環付加物を蒸留することができる。
【0140】
工程1:[3+2]付加環化(代替条件)
N−ベンジル−N−トリメチルシリルメチル−アミン200g(1035mmol)を、THF 800mlに溶解した。この溶液に、37%ホルムアルデヒド水溶液98.3ml(1.26当量)を室温で加えた。室温で15分間撹拌した後、得られた溶液をジエチルフマラート181.8g(1035mmol)、THF 1.2L及びトリフルオロ酢酸2.5ml(0.03当量)からなる熱(50〜55℃)溶液に2時間かけて加えた。反応が完了した後(GC又はHPLCによるIPC)、反応混合物を室温に冷まし、先の実施例に記載されているように処理して、予想される環付加物301.8gを得た。
【0141】
工程2〜3:脱ベンジル化/Boc保護
【0142】
【化16】

【0143】
(rac)−trans−1−ベンジル−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸ジエチルエステル1.295kgを、EtOH 6.5L中で、10% Pd/C 触媒100gを用いて室温にて水素化した。反応が完了した後、触媒を濾過し、EtOH 480ml中のジ−t−ブチル−ジカルボナート935g(1.01当量)の溶液を加えた。反応が完了した後(GCによる工程内管理)、反応混合物を蒸発させ、THF 9.7Lに溶解した。水8mlを加え、続いてDMAP 5.3g(0.01当量)を加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌し、濃縮乾固した。残留物をMTBE 6.5Lに溶解し、5%クエン酸水溶液1.29L、10% NaHCO水溶液3.3L及び水3.3Lで洗浄した。水相をMTBE 6.5Lで順次再抽出した。合わせた有機相をNaSOで乾燥させ、40℃で濃縮乾固して、粗(rac)−trans−N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸ジエチルエステル1.233kgを得た。
【0144】
注: 酵素的分割をLipolase 100L Type EX 酵素を用いて実施する場合、DMAPクエンチを省略してもよい。
【0145】
工程4:酵素的分割(Lipolase)
【0146】
【化17】

【0147】
(rac)−trans−N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸ジエチルエステル 32g(96.19mmol、95a% GC)を、ヘプタン32ml及び0.1M リン酸ナトリウム緩衝液pH 7.0 256ml中で激しく撹拌しながら乳化した。エマルションを0〜1℃に冷却した。Novozyme Lipolase 100L Type EX(Novozyme)2.30mlを加え、1.0M NaOH溶液の自動添加(pH−スタット)によりpHを7.0で一定に保持した。目標の鏡像異性体過剰に達した後(典型的には>99%、反応時間約45時間、0.55当量 NaOHを添加、GC工程内管理)、ジクロロメタン250mlを加えた。水相を分離し、ジクロロメタン500mlで2回抽出した。合わせた有機相を蒸発させ、その間に白色の沈殿物が形成された。残留物を酢酸エチル250mlに再溶解し、白色の沈殿物を濾別した。濾液を重炭酸ナトリウム飽和水溶液75mlで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させ、高真空下で一晩乾燥させて、(3R,4R)−trans−N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸ジエチルエステル 13.47gを明黄色の油状物(GCにより純度96%)として得た。
【0148】
あるいは、生成物をヘプタン又はMTBEで、好ましくはヘプタンで抽出することができる。相分離を促進するために、NaClもまた水相に加えることができる。
【0149】
工程5:選択的モノ加水分解
【0150】
【化18】

【0151】
(3R,4R)−trans−N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸ジエチルエステル2.95kgを、5mM リン酸カリウム/1M D−グルコース緩衝液の水溶液26.5L中で撹拌して、エマルションを形成した。水0.5Lに溶解したLipase OF(Meito Sangyo)5.9gを加えた。1M NaOHを加えることによりpHを7.2に保持した。反応が完了した後(1M NaOH 8.4kg、反応時間24時間、GC工程内管理)、MTBE 10Lを加えた。有機層を分離し、廃棄した。酢酸エチル40Lを加え、HSOを加えることによりpHを4に調整した。有機層を分離し、水相を酢酸エチル40Lで再抽出した。合わせた有機相を蒸発乾固して、(3R,4R)−trans−N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸モノエチルエステル2.35kgを得た。
【0152】
(3R,4R)−trans−N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸モノエチルエステルをアセトン/水中で結晶化させることができる:
(3R,4R)−trans−N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸モノエチルエステル3.2kgを、アセトン3.2Lに溶解した。この溶液に、0.1%酢酸水溶液3.2Lを室温で加えた。混濁した溶液に播種した。結晶化が15分後に開始した。さらなる30分の後、水30Lを加え、懸濁液を室温で22時間撹拌した。懸濁液を濾過した。フィルターケーキを合計7Lの水少量ずつで洗浄し、恒量に乾燥させて、(3R,4R)−trans−N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸モノエチルエステル一水和物3.295kgを白色の粉末として得た。
【0153】
工程6:第1のアミドカップリング
【0154】
【化19】

【0155】
trans−N−Boc−ピロリジン−3,4−ジカルボン酸モノエチルエステル一水和物135gを、トルエン700mlに懸濁し、150〜200mlに濃縮した(約100mbar下、ジャケット温度60℃;水の共沸除去、カールフィッシャー分析により残留含水量をチェック)。THF 400mlを加え、続いてN−メチルモルホリン 55ml(1.11当量)を加えた。得られた溶液を、THF 900ml中のクロロギ酸イソブチル60ml(1.04当量)の冷(0〜5℃)溶液に30分間かけて加えた。添加漏斗をTHF 50mlで洗浄した。白色の懸濁液を0〜5℃で15分間撹拌した。フルオロアニリン90g(1.0当量)を一度に加え、反応混合物を加熱還流した。反応が完了した後(HPLC工程内管理)、反応混合物を室温に冷ました。トルエン900mlを加え、続いて1M HCl 500mlを加えた。水相を分離し、トルエン900mlで抽出した。有機相を1M HCl 500ml及び5% NaHCO水溶液500mlで順次洗浄した。有機相を合わせ、NaSOで乾燥させ、約500mlに濃縮した(ジャケット温度60℃)。イソブタノールを、トルエン約1Lを用いる定容量での共沸蒸留により除去した(イソブタノール除去をGCによりチェック)。次に、粗生成物溶液を337gに濃縮した(トルエン中の60% m/m 溶液、それを次の工程に直接使用した、収率97%に対応)。
【0156】
あるいは、反応をLiCl活性化で室温にて実施することができる:一水和物としての一酸モノエステル 10g(32.75mmol 1当量)を、THF 100mlに溶解し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮乾固して、THF 30mlにN−メチルモルホリン4.15ml(1.15当量)と一緒に再溶解した。この溶液を、THF 50ml中のクロロギ酸イソブチル4.46ml(1.0当量)の冷0〜5℃溶液に15分間かけて加えた。0〜5℃での1.5時間の後(活性化工程は主に供給制御されるので、保持時間をより短くすることができる。これはまた、いかなる混合無水物の分解も減少させる)、塩化リチウム1.4g(1.0当量)を加え、続いてアニリン6.88gを加えた(最初にアニリンを、続いてLiClを加えることも可能である)。室温で18時間反応させた後、トルエン 150mlを加えた。反応混合物を、1N HCl 60ml、5% NaHCO水溶液 60ml及びNaCl半飽和水溶液60mlで2回洗浄した。水相をトルエン100mlで順次再抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下45℃で濃縮乾固して、泡状物15.92gを得た(収率約97%、約4%トルエンを含有する)。イソブタノール除去を確実にしなければならない。さらなる共沸除去が可能である。先の実施例を参照のこと。
【0157】
工程7:第2のアミドカップリング
【0158】
【化20】

【0159】
トルエン中の60% m/m アミドエステル(前記工程を参照)溶液337g(431mmol、1当量)を反応器に入れ、続いてTHF 650mlを入れた。5−クロロ−2−アミノピリジン86g(1.5当量)を加えた。温度を20〜25℃の間に保持しながら、THF中の1M LiHMDS溶液1.2Lを30分間かけて加えた。反応が完了した後(HPLC工程内管理)、水1.2L中の37% HCl水溶液300mlからなる溶液を加えた(pH 1〜2)。ジクロロメタン2Lを加え、有機相を分離し、水1Lで洗浄した。水相をジクロロメタン1Lで順次抽出した。合わせたジクロロメタン相を2.5〜3.5Lの容量に濃縮した。エタノールへの溶媒交換を定容量で実施し(ジャケット温度60℃、400〜100mbar、合計でエタノール5L)、その間に結晶化が開始した。懸濁液を室温に冷まし、室温で一晩撹拌し、0〜5℃で2時間撹拌した。懸濁液を濾過し、フィルターケーキを冷(−20℃)EtOH 250mlで4回洗浄した。結晶を減圧下45℃で恒量に乾燥させて、予想されるBoc−ピロリジンビス−アミド180gを白色の粉末として得た(収率75%)。
【0160】
工程8〜9:Boc脱保護/アルキル化
【0161】
【化21】

【0162】
Boc−ピロリジンビス−アミド53.2g(95.7mmol、1当量)を、水160ml及び37% HCl水溶液160ml(20当量)からなる溶液に室温で少量ずつ加えた。反応が完了した後(約30分間、HPLC工程内管理)、得られた溶液を重炭酸ナトリウム197g(24.5当量)、水320ml、酢酸エチル530ml及び2,2−ジフルオロエチルトリフラート23g(1.1当量)からなる熱(50℃)溶液に1時間かけて加えた。添加漏斗を水15mlで洗浄した。反応が完了した後(約30分間、HPLC工程内管理)、反応混合物を室温に冷ました。水相を分離し、酢酸エチル530mlで再抽出した。有機相をNaCl半飽和溶液265mlで順次洗浄した。合わせた酢酸エチル相をNaSOで乾燥させ、濾過した。NaSOフィルターケーキを酢酸エチル230mlで洗浄した。エタノールに溶媒交換し、室温で一晩結晶化させた後、得られた懸濁液を−20℃に冷却した。−20℃での1時間の後、懸濁液を濾過し、冷(−20℃)エタノール合計100mlで少量ずつ洗浄した。結晶を恒量に乾燥させて(50℃/減圧)、白色の粉末40gを得た(収率78%)。
【0163】
実施例2 付加環化/Boc保護によるBoc−ピロリジン中間体4を得るための代替経路
1. 新たな[3+2]付加環化
【0164】
【化22】

【0165】
トリメチルシリルメチルアミン50g(475mmol、1当量)を、THF 500mlに溶解し、37%ホルムアルデヒド水溶液71.7ml(2当量)で室温にて処理した。この温度での15分の後、得られた溶液を、THF 500ml中のジエチルフマラート83.4mlの60℃の熱溶液に10分間かけて加えた。反応混合物を一晩還流した。反応混合物を室温に冷まし、濃縮乾固した。残留物をMTBE 1Lに再溶解し、1M HCl水溶液500mlで抽出した。MTBE 500mlを水相に加え、続いて1M NaOH 500mlを激しく撹拌しながら加えた。水相を分離し、MTBE 250mlで再抽出した。合わせた有機相をNaCl飽和水溶液250mlで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮乾固して、粗環付加物アミナール83.3gを油状物として得た(収率80%)。生成物は、いくらかの量の加水分解したアミナールを含有してもよい。
【0166】
2. アミナールからの直接Boc保護
【0167】
【化23】

【0168】
前記工程からの環付加物アミナール79.8g(180mmol、1当量)を、THF 798mlに溶解した。水320ml及びジ−t−ブチル−ジカルボナート86.8g(2.16当量)を、撹拌しながら連続して室温で加えた。清澄で二相性の反応混合物を室温で一晩撹拌した(TLC工程内管理)。反応が完了した後、DMAP 225mgを加えて過剰量のジ−t−ブチル−ジカルボナートを破壊した。THFを減圧下で蒸発させ、MTBE 1Lを加えた。粗生成物溶液を1N HCl水溶液0.8Lで洗浄した。水相をMTBE 1Lで再抽出した。合わせた有機相を水500mlで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮乾固して、予想されるBoc保護ピロリジン96.6gを油状物として得た(収率87%)。
【0169】
あるいは、Boc保護を、容易な直接的抽出を可能にするMTBE/水混合物中で実施することができる。しかし、この場合、DMAPを用いたBocOクエンチは上記のように可能ではない。しかし、実施例1:工程4のLipolaseを用いた分割に記載されるように、粗生成物を続く酵素の工程に直接使用することができるのでこれは問題ではない。
【0170】
実施例3 酵素的経路B
工程1:付加環化
【0171】
【化24】

【0172】
N−ベンジル−トリメチルシリルメチル−アミン180g(903mmol、1当量)を、THF 1.25Lに溶解し、37%ホルムアルデヒド水溶液87.2ml(1.28当量)で処理した。室温での15分の後、THF 625ml中のジメチルフマラート134g(1当量)及びトリフルオロ酢酸1.4ml(0.02当量)の懸濁液を加えた。温度を20〜35℃の間に保持しながら、反応混合物を完了するまで(GC工程内管理、約5時間)撹拌した。ヘプタン1Lを加え、続いて1M HCl水溶液966mlと水200mlのと混合物を加えた。有機相を分離し、1M HCl水溶液450mlと水1Lとの混合物で抽出した。MTBE 1Lを、合わせた水相に加え、続いて32% NaOH水溶液150mlを激しく撹拌しながら加えた。水相を分離し、MTBE 1Lで再抽出した。合わせた有機相を水500mlで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、環付加物238gを黄色の油状物として得た(収率95%)。
【0173】
工程2:脱ベンジル化
【0174】
【化25】

【0175】
N−ベンジルピロリジン235gを、MeOH 2.35Lに溶解し、20% Pd(OH)/C 47gの存在下、大気水素圧下、室温で水素化した。反応が完了した後、触媒を濾別し、濾液を減圧下で濃縮乾固して、アミン147.7gを得た(収率93%)。あるいは、Pd担持炭もまた使用できる。
【0176】
工程3:アルキル化
【0177】
【化26】

【0178】
アミン125g(668mmol、1当量)を、アセトニトリル625mlに溶解した。ジフルオロエチル 3−ニトロベンゼンスルホナート178g(1当量)及びエチルジイソプロピルアミン114ml(1当量)を加えた。反応が完了するまで(GC工程内管理、約20時間)、反応混合物を加熱還流した。反応混合物を室温に冷まし、濃縮乾固した。MTBE 500ml及び10% NaCO水溶液250mlを加えた。有機相を分離し、25% NHCl水溶液で2回洗浄した。水相をMTBE 500mlで順次再抽出した。有機相を合わせ、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮乾固して、ジフルオロエチルアミン生成物162.8gを得た(収率84%、GCにより約86a%)。
【0179】
生成物を、必要であれば精製することができ、又は次の工程に直接使用することができる。
【0180】
工程4:酵素的分割
【0181】
【化27】

【0182】
例a):
(rac)−trans−ジメチルエステル132.5g(454mmol、1当量、GCにより純度86%)を、0.05M 酢酸マグネシウムpH6水溶液1.2L中で撹拌した。酢酸を加えることにより、得られたエマルション(pH 8.2)のpHを6.5に調整した。次にNovozyme CALB L(Novozyme)9.7mlを加え、反応を引き起こした。1M NaOHの自動添加により(pH−スタット)、pHを6.5で一定に保持した。反応が完了した後(目標のe.e.に到達、典型的には>99%e.e.、反応時間約90時間、NaOH 0.57当量添加、GC工程内管理)、ジクロロメタン1Lを加えた。pHを7に調整した。水相を分離し、ジクロロメタン1Lで3回再抽出した。有機相をNaHCO飽和溶液400ml及び水400mlで洗浄した。有機相を合わせ、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固して、粗(R,R)−ジエステル64.2gを得た(収率49%、GCにより純度88%)。
【0183】
例b):
(rac)−trans−ジメチルエステル500g(1.839mol、1当量、GCにより純度92.4%)を、0.05M 酢酸マグネシウムpH 6水溶液4.5L中で撹拌した。酢酸を加えることにより、得られたエマルションのpHを6.5に調整した。次にNovozymes CALB L(Novozyme)40mlを加え、反応を引き起こした。1M NaOHの自動添加により(pHスタット)、pHを6.5で一定に保持した。反応が完了した後(目標のe.e.に到達、典型的には>99%e.e.、反応時間約69時間、NaOH 0.55当量添加、GC工程内管理)、ジクロロメタン100mlを加えた。塩化ナトリウム1kgを加え、反応混合物をMTBE 5Lで2回抽出した。合わせた有機相をNaHCO飽和溶液2L及び水2Lで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固して、粗(R,R)−ジエステル215.5gを得た(収率43%、GCにより純度92%)。
【0184】
工程5:酵素的モノ加水分解
【0185】
【化28】

【0186】
例a):
粗(R,R)−ジエステル 63.1gを、0.1M NaCl水溶液/3.8M リン酸ナトリウム pH 7緩衝液730ml中で撹拌した。得られたエマルションに、工業グレードのブタ肝臓エステラーゼ 210μl(Technical grade;Catalogue No. 10491228; Roche Applied Sciences)を室温で加えた。1M NaOH水溶液の自動添加により、pHを7.0で保持した。反応が完了した後(1M NaOH 240ml消費、反応時間約75時間、GC工程内管理)、ジクロロメタン1Lを加えた。有機相を分離し、廃棄した。25% HCl水溶液を加えることにより水相のpHを3.5に調整した。水相を酢酸エチル1Lで抽出した。pH調整及び抽出の工程を4回繰り返した。合わせた有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮乾固して、一酸モノエステル41.8gを得た(GCにより純度98%、収率78%)。
【0187】
例b):
機械式撹拌機、温度計、pHプローブ及びpH−スタットに接続された滴定薬剤注入口を備えた750mlの4つ口フラスコ中で、(R,R)−ジエステル38g(141.3mmol;GC−純度93.4%)を、0.1M 塩化ナトリウム/3.8mM リン酸ナトリウム緩衝液pH 7.0 340ml中で激しく撹拌しながら乳化した。ブタ肝臓エステラーゼ(Technical Grade、3.12M U/L; Roche Applied Sciences)240μlを加えることにより反応を開始し、激しく撹拌しながら1.0M NaOH溶液の自動添加により(pH−スタット)、pHを7.0で一定に保持した。1.0M NaOH溶液137.3ml(137mmol、97.2%転換、46時間後)の消費後、ジクロロメタン20mlを加えることにより反応を停止し、MTBE 760mlで洗浄した。濃リン酸ナトリウム溶液139ml(28% NaOH 76mlに対してリン酸63ml)を加えることにより、水相をpH 3.6に調整し、酢酸エチル3×760mlで抽出した。合わせた酢酸エチル相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させ、乾燥させて、(R,R)−一酸29.4g(86%)を白色の固体として得た。
【0188】
粗一酸モノエステルの結晶化: 粗一酸モノエステル56.37gを、酢酸エチル200mlに加熱しながら溶解した。溶液を室温に冷まし、ヘプタン400mlをゆっくり加えた。混濁した溶液に播種した。室温での1時間の後、懸濁液を濾過した。フィルターケーキを減圧下45℃で乾燥させて、白色の粉末46.82gを得た。母液を蒸発させ、酢酸エチル20mlに再溶解した。ヘプタン60mlを加えた。室温での3時間の後、懸濁液を濾過した。フィルターケーキを減圧下45℃で乾燥させて、白色の粉末7.12gを得た。合計で53.94gの一酸モノエステルを単離した。
【0189】
工程6:第1のアミドカップリング
【0190】
【化29】

【0191】
例a):
一酸モノエステル1g(4.2mmol、1当量)を、N−メチルモルホリン465μl(1当量)と一緒にTHF 3mlに溶解した。この溶液を、THF 5ml中のクロロギ酸イソブチル575μlの冷0〜5℃溶液に20分間かけて滴下した。0〜5℃での1時間の後、塩化リチウム181mg(1当量)を加え、続いてフルオロアニリン861mg(1当量)を加えた。反応が完了するまで(HPLC工程内管理、約1〜3時間)、反応混合物を室温で撹拌した。水7ml、酢酸エチル20ml及び1M HCl水溶液10mlを加えた。有機相を分離し、1M HCl水溶液10mlで再抽出した。飽和NaCOを加えることにより、合わせた水相のpHを9〜10に調整し、酢酸エチル50mlで2回抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固して、アミドエステル1.72gを得た(HPLCにより純度96%、収率96%)。
【0192】
例b):
一酸モノエステル20g(84.3mmol、1当量)を、N−メチルモルホリン(1当量)9.29mlと一緒にTHF 60mlに溶解した。得られた溶液を、THF 100ml中のクロロギ酸イソブチルの冷(0〜5℃)溶液11.49ml(1当量)に20分間かけて滴下した。0〜5℃での1時間の後(活性化は供給制御されるので、この保持時間はより短くすることができる)、フルオロアニリン17.22g(1当量)を加え、続いて塩化リチウム3.57g(1当量)を加えた。反応混合物を室温に温めた。3時間反応させた後、水140ml、酢酸エチル400ml及び1M HCl 200を加えた。有機相を分離し、1M HCl 200mlで再抽出した。水相を合わせ、NaCO飽和水溶液160mlを加えることによりpHを約10に調整した。得られた混合物を酢酸エチル400mlで2回抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で約140mlの容量に濃縮した(結晶化がすでに開始しうる)。ヘプタン420mlをゆっくり加えた。得られた懸濁液を室温で3時間撹拌し、濾過した。フィルターケーキを減圧下で乾燥させて、生成物31.1gを得た(収率87%)。
【0193】
工程7:第2のアミドカップリング
【0194】
【化30】

【0195】
例a):
5−クロロ−2−アミノピリジン465mg(1.5当量)を、アミドエステル1g(2.36mmol、1当量)と一緒にTHF 8mlに溶解した。溶液を0〜2℃に冷却し、THF中の1M LiHMDS溶液7.1ml(3当量)を滴下した。反応が完了した後(約2時間、HPLC工程内管理)、2M HCl水溶液(約6ml、5当量)を加えることにより、pHを3.5に調整した。反応混合物を酢酸エチル15mlで2回抽出した。有機相を水13mlで順次洗浄した。合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固して、式(X)の粗化合物1.27gを得た。
【0196】
例b):
2−アミノ−5−クロロピリジン13.94g(1.5当量)及びモノエステルモノアミド30g(70.85mmol、1当量)を、THF 240mlに溶解した。溶液を0〜2℃に冷却し、THF中の1M LiHMDS溶液212.6ml(3当量)を20分間かけて加えた。1.5時間反応させた後(HPLCによる工程内管理)、温度を0〜10℃の間に保持しながら、2M HCl水溶液245mlを15分間かけて加えた(得られた混合物のpH:3.2)。得られた混合物を酢酸エチル350mlで2回抽出した。有機相をNaCl半飽和水溶液200mlで順次洗浄し、合わせ、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得て、次にそれを1:2 エタノール/ヘプタン混合物からの結晶化により精製した(収率85%)。
【0197】
ブランチ1:ジフルオロエチル 3−ニトロ−ベンゼンスルホナート
【0198】
【化31】

【0199】
3−ニトロ−ベンゼンスルホニルクロリド194g(1.13当量)を反応器に入れ、続いて酢酸イソプロピル1.3Lを入れて、溶液を0〜5℃に冷却した。2,2−ジフルオロエタノール65g(753mmol、1当量)、トリエチルアミン163ml(1.55当量)及び酢酸イソプロピル325mlの溶液を、温度を0〜5℃の間に保持しながら30分間かけて滴下した。4時間反応させた後(HPLC工程内管理)、反応混合物を水650mlで洗浄した。水相を酢酸イソプロピル650mlで再抽出した。有機相を1M HCl水溶液650ml及び10% NaCl水溶液650mlで洗浄した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固して、2,2−ジフルオロエチル 3−ニトロベンゼンスルホナート196gを粘性の油状物として得て(収率97%)、それを静置して結晶化させた。生成物をイソプロパノール(30℃で播種、濃度:約13L/kg生成物)から結晶化させることもできる。
【0200】
ブランチ2:フルオロアニリン法A:
【0201】
【化32】

【0202】
4−ブロモ−2−フルオロアニリン44g(229mmol、1当量)、2−ヒドロキシピリジン31.5g(1.4当量)、炭酸カリウム34.80g(1.1当量)、ヨウ化銅(I)6.55g(0.15当量)を反応器に入れ、続いてN,N−ジメチルアセトアミド100mlを入れた。懸濁液を155℃(ジャケット温度)で4時間加熱した(HPLC工程内管理)。反応混合物を120℃(ジャケット温度)に冷却し、水400mlを30分間かけて加え、反応混合物を室温にゆっくり冷ました。30分後、反応混合物を0〜5℃に冷却し、この温度で1時間保持して、濾過した。フィルターケーキを水(0〜5℃)200mlで洗浄し、結晶を減圧下70℃で一晩乾燥させて、粗生成物43.1gを得た。粗生成物を活性炭Norit SX-3 5gと一緒にエタノール1Lに懸濁し、30分間加熱還流した。熱懸濁液を圧力濾過器(木炭プレートを有する)で濾過した。フィルターケーキを熱エタノール200mlで洗浄した。濾液を約180mbar下、60℃で約500mlに濃縮した。次に懸濁液を室温で30分間、続いて0〜2℃で30分間撹拌し、最後に濾過した。結晶を冷0℃エタノール合計50mlで少量ずつ洗浄し、減圧下60℃で恒量まで乾燥させて、生成物33.9gを得た(収率72%)。
【0203】
ブランチ2:フルオロアニリン法B:
4−ブロモ−2−フルオロアニリン50g(263mmol)、2−ヒドロキシピリジン25g(263.1mmol)及び酸化銅(I)19.4g(0.5当量)を反応器に入れた。ピリジン100mlを加え、懸濁液を14時間加熱還流した(HPLC工程内管理、<3a% 4−ブロモ−2−フルオロアニリン)。温度を85〜95℃の間に保持しながら、ピリジン100mlを暗反応混合物に加えた。水200mlを85〜95℃で15〜30分間かけて加えた。暗溶液を0℃に3時間かけて冷却した(結晶化が40℃で自発的に起こらない場合、溶液に種結晶0.5gを40℃にて播種する − 播種を必要に応じて30〜40℃の間で繰り返すことができる)。暗懸濁液を0℃で30分間〜1時間撹拌し、濾過した。フィルターケーキを冷(4〜10℃)水100mlで3回洗浄した。結晶を減圧下60〜65℃で恒量まで乾燥させて、生成物28.9gを得た(純度94% m/m、収率50%)。
【0204】
粗生成物の品質が適切でない場合、それを、熱MeOH中で活性炭処理し、続いて熱濾過し、そしてMeOH中で結晶化させることにより、向上させることができる。
【0205】
ブランチ2:フルオロアニリン法C:
4−ブロモ−2−フルオロアニリン3.0g(15.8mmol)、2−ヒドロキシピリジン1.5g(15.8mmol.1.0当量)、酸化銅(I)0.47g(3.16mol、0.2当量)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン347μl(3.16mmol、0.2当量)及び炭酸カリウム2.4g(17.4当量、1.1当量)を反応器中に入れた。トルエン34mlを加え、懸濁液を16時間加熱還流した(HPLC工程内管理、<1a% 4−ブロモ−2−フルオロアニリン)。温度を85〜95℃に保持しながらトルエン10mlを暗反応混合物に加えた。水45mLを85〜95℃で15〜30分間かけて加えた。暗溶液を0℃に冷却することにより結晶化させ、0℃で30分間〜1時間撹拌して、濾過した。フィルターケーキを冷(4〜10℃)水25mlで3回洗浄した。結晶を減圧下60〜65℃で恒量まで乾燥させて、生成物3.0gを得た(純度79% m/m、収率75%)。
【0206】
粗生成物の品質が適切でない場合、それを、熱MeOH中で活性炭処理し、続いて熱濾過し、そしてMeOH中で結晶化させることにより、向上させることができる。
【0207】
ブランチ2:フルオロアニリン法D:
4−ブロモ−2−フルオロアニリン20g(103mmol、1当量)及び2−ヒドロキシピリジン15.16g(155mmol、1.5当量)を反応器に入れ、続いてジメチルアセトアミド40mlを入れた。炭酸カリウム15.7g(1.1当量)及びCuO 760mg(0.05当量)を加えた。懸濁液を130℃で18時間加熱した(HPLC工程内管理)。N,N−ジメチルアセトアミド 70mlを加えた。反応混合物を100℃に冷却した。水60mlを加え、反応混合物を室温にゆっくり冷ました(結晶化が約40℃で開始した、必要に応じて播種を行うことができる)。2M HCl水溶液27mlを加えることにより、pHを8に調整した。懸濁液を0℃に冷却し、0℃で2時間撹拌した。懸濁液を濾過し、フィルターケーキを水50ml及びMTBE 80mlで洗浄した。結晶を60℃で恒量まで乾燥させて、生成物15.2gを得た(93a% 収率約67%)。
【0208】
粗生成物の品質が適切でない場合、それを、熱MeOH中で活性炭処理し、続いて熱濾過し、そしてMeOH中で結晶化させることにより、向上させることができる。
【0209】
ブランチ2:フルオロアニリン法E:
工程1:
【0210】
【化33】

【0211】
4−ブロモ−2−フルオロアニリン10g(51.6mmol、1当量)、NaCO 8.26g(1.5当量)及びDMF 60mlを反応器に入れ、続いて臭化ベンジル13.13ml(2.1当量)を入れた。反応混合物を100〜110℃に約2〜4時間加熱し(HPLC工程内管理)、次に室温に冷ました。反応混合物を、水120mlとMTBE 200mlとの混合物に加えた(撹拌しながら)。有機相を分離し、水120mlで洗浄し、MgSOで乾燥させて、濾過した。溶媒を、約1:3 m/v 生成物/ヘプタンの最終濃度でヘプタンに交換した。得られた混合物を約70℃で加熱し、そして室温に、次に0℃に1時間冷却した。得られた白色の懸濁液を濾過し、冷(0〜5℃)ヘプタンで洗浄し、恒量まで乾燥させて(50℃/5〜10mbar)、オフホワイトの粉末14.4gを得た。
【0212】
工程2:
【0213】
【化34】

【0214】
ジベンジルアニリン20g(48.64mmol、1当量)を、N,N−ジメチルアセトアミド40mlに室温で溶解した。2−ヒドロキシピリジン7.15g(1.5当量)、CuO 717mg(0.1当量)及びKCO 7.39g(1.1当量)を順次加えた。反応混合物を130℃に約23時間加熱し(HPLC工程内管理)、次に室温に冷ました。ジクロロメタン100ml及び2M HCl 200mlを加えた。有機相を分離し、2M HCl 200mlで洗浄した。水相をジクロロメタン100mlで抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、減圧下45℃で恒量まで濃縮した。得られた粗固体(約20g)を、AcOEt 150ml中で溶解するまで加熱した。混濁した溶液が得られるまでヘプタン100mlをゆっくり加えた。混合物を室温にゆっくり冷ました。約30分後、結晶化が開始した(開始しない場合、播種を実行することができる)。室温でさらに1時間撹拌した後、懸濁液を濾過した。フィルターケーキをヘプタンとAcOEtとの1:1の混合物40mlで洗浄し、減圧下50℃で恒量まで乾燥させて、オフホワイトの粉末16gを得た(収率83%)。
【0215】
工程3:
【0216】
【化35】

【0217】
ジベンジルアミン4gを、MeOH 80mlとAcOEt 80mlとの混合物に溶解した。5% Pd/C(Johnson Matthey)400mgを入れた。水素化を大気圧のH2下、室温で実施した。過水素化(ピリドン環の)を回避するために、水素化をガス取り込み及びHPLCによりモニターした。反応が完了した後、反応混合物を濾過して触媒を除去し、フィルターケーキをMeOH 40mlで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して、粗生成物2gを得た。MeOH 25mlを加え、溶解が完了するまで混合物を加熱した。溶液を室温に冷まし、4時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過した。フィルターケーキを冷(0〜5℃)MeOH 2mlで洗浄し、減圧下50℃で恒量まで乾燥させて、オフホワイトの粉末1.5gを得た(収率72%)。
【0218】
実施例4 脱保護/遊離塩基形成/アルキル化/アミド形成によりアミドエステルを化合物(X)に転換するための代替経路
工程1:Boc脱保護
【0219】
【化36】

【0220】
粗Boc−ピロリジン15g(31.68mmol、1当量)を、エタノール150mlに溶解した。塩化アセチル13.64ml(6当量)を室温で20分間かけて加えた。その間に懸濁液が形成される20時間の反応の後、MTBE 150mlを5分間かけて加えた。90分後、懸濁液を濾過し、フィルターケーキを減圧下45℃で乾燥させて、塩酸塩12.07gを得た(約2〜3 HCl、収率約90%)。
【0221】
工程2:遊離塩基形成
【0222】
【化37】

【0223】
塩酸塩 1.79g(4mmol、1当量、ビス塩酸塩として取得、n=2)(前記工程を参照)を、AcOEt 50mlとエタノール9mlとの混合物に懸濁した。5M エタノールNH溶液10ml(20mmol、5当量)を加え、懸濁液を室温で70時間撹拌して、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、遊離アミン1.5gを得た(定量収率)。
【0224】
あるいは、アミン塩酸塩を塩基性pH下で抽出することにより遊離することができる。
【0225】
工程3:アルキル化
【0226】
【化38】

【0227】
アミン3g(8mmol、1当量)を、ジフルオロエチル−3−ニトロ−ベンゼンスルホナート2.39g(1当量)及びエチル−ジイソプロピルアミン1.5ml(1.1当量)と一緒に、アセトニトリル15mlに溶解した。溶液を80℃で22時間加熱した(HPLC工程内管理)。反応混合物を室温に冷まし、減圧下で濃縮した。残留物をAcOEt 30mlに再溶解した。10% KCO水溶液15mlを加えた。混合物を濾過した。二相性の濾液からの有機相を分離し、10% KCO水溶液15mlで2回洗浄した。水相をAcOEt 30mlで順次再抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥させ、減圧下で約10mlの容量に濃縮した。MTBE 35mlをゆっくり加え、混濁した溶液がもたらされた。混濁した溶液に播種し、室温で1時間撹拌して、部分的に濃縮すると、結晶化が開始した。室温で2時間撹拌した後、懸濁液を濾過した。フィルターケーキを減圧下45℃で乾燥させて、明黄色の結晶2.56gを得た(収率72%)。
【0228】
あるいは、a)生成物を、例えばクロマトグラフィーにより精製することもできる。b)NaCO水溶液を、抽出の間、炭酸カリウム溶液の代わりに使用することもできる。
【0229】
工程4:第2のアミド形成
【0230】
【化39】

【0231】
5−クロロ−2−アミノピリジン1.04g(7.9mmol、1.5当量)、アミドエステル2.3g(5.3mmol、1当量)及びTHF 18.4mlを反応器に入れ、得られた混合物を0〜5℃に冷却した。THF中の1M LiHMDS溶液15.8ml(3当量)を20分間かけて加えた。3時間反応させた後(HPLC工程内管理)、2M HCl水溶液18ml(6.85当量)を加えた(pH 3.3)。得られた混合物をAcOEt 92mlで2回抽出した。有機相をNaCl飽和水溶液23mlで順次洗浄し、合わせ、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗生成物2.78gを得た。
【0232】
生成物を、クロマトグラフィー、又はEtOHもしくはエタノール/ヘプタンからの結晶化により精製することができる。
【0233】
実施例5 環状無水物アプローチ
工程1: 付加環化
【0234】
【化40】

【0235】
ジフルオロエチルトリフラート25g(117mmol、1当量)を、THF 225ml中のトリメチルシリルメチル−アミン16ml(1当量)及びエチルジイソプロピルアミン20ml(1当量)の溶液に20〜25℃で滴下した。2時間後、反応混合物を37%ホルムアルデヒド水溶液11.46ml(1.3当量)で処理した。室温での10分の後、ジベンジルマレアート34.61g(1当量)、THF 12.5ml及びトリフルオロ酢酸913μl(0.1当量)からなる溶液を加えた。17時間反応させた後、反応混合物を約80mlに濃縮した。MTBE 125ml及び1M HCl水溶液104ml(2.5当量)を加えた。水相を分離し、MTBE 62.5mlで再抽出した。有機相を水125ml及びNaHCO半飽和水溶液167mlで洗浄し、合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固して、粗環付加物45.5gを得た(収率約86%、約11% m/m ジベンジルマレアートを含有)。
【0236】
粗生成物を、例えばクロマトグラフィーにより精製することができるが、より好都合にはこれを精製しないで次の工程に導入する。
【0237】
工程2:水素化
【0238】
【化41】

【0239】
粗ジベンジルエステル45.5g(100mmol、1当量、純度89% m/m、前記工程を参照)を、エタノール364mlに溶解し、続いてトリエチルアミン32.15ml(2.3当量)及び10% Pd/C 2.1gを加えた。ジベンジルエステルを大気水素圧下で水素化した。反応が完了した後、触媒を濾別し、酢酸80.7mlを加え、続いて種結晶を加えた。エタノールを減圧下40℃で留去した(60℃で、有意なcisからtransへの異性化が観察される)。得られた懸濁液を室温で一晩撹拌し、濾過した。結晶を酢酸20ml、MTBE 60mlで洗浄し、減圧下で乾燥させて、ビス−酸 14.6gを白色の粉末として得た(収率60%、約9%m/m 残留酢酸を含有)。
【0240】
工程3:環状無水物形成:
【0241】
【化42】

【0242】
ビス酸14.3g(58.6mmol、1当量、92% m/m)を酢酸143mlに懸濁した。無水酢酸27.7ml(5当量)を加え、反応混合物を60℃に加熱した。1時間後、溶液を得た。3時間後、反応混合物を室温に冷まし、濃縮して無色の油状物とし、それにジイソプロピルエーテル50mlを加えた。溶液に播種した。室温で1時間撹拌した後、懸濁液を濾過した。結晶をジイソプロピルエーテルで洗浄し、減圧下50℃で乾燥させて、無水物7.8gを白色の粉末として得た。母液を濃縮乾固し、残留油状物をジイソプロピルエーテル50ml及び種結晶で処理して、濾過、洗浄及び乾燥の後、無水物の第2産生物(3.2g)を得た。合計収率:91%。
【0243】
工程4:環状無水物開環:
【0244】
【化43】

【0245】
例a):
THF 120ml中のキニーネ16.94g(1当量)及び2−フェニルエタノール9.3ml(1.5当量)からなる溶液を、−20〜−15℃に冷却した。THF 30ml中の無水物10.5g(51.2mmol、1当量)の溶液を滴下した。4時間反応させた後(HPLC工程内管理、又は ReactIR iC10 システムを用いたインラインFTIR分光法)、得られた懸濁液を室温に一晩温め、濃縮乾固して、キニーネ塩としての粗エステル酸43.5g(HPLCにより92:8 d.r.)を得た。粗塩を、酢酸イソプロピル50mlと水50mlとの混合物に懸濁した。25% HCl水溶液20mlを加えることによりpHを1に調整した。水相を分離し、酢酸イソプロピル50mlで洗浄した。有機相を1M HCl 25mlで再抽出した。水相を合わせ、0〜2℃に冷却し、32% NaOH水溶液を加えることによりpHを3.0に調整した。生成物が結晶し始めた。0〜2℃で2時間撹拌した後、懸濁液を濾過した。フィルターケーキを冷0〜2℃水50mlで洗浄し、減圧下60℃で乾燥させて、生成物14.8gを白色の粉末を得た(収率88%、95:5 d.r.)。
【0246】
例b):
THF 150ml中の無水物40g(195mmol、1当量)の溶液を、THF 750ml中のキニーネ71g(1.1当量)及び2−フェニルエタノール36.1g(1.5当量)からなる溶液に−20〜−15℃の間で滴下した。一晩反応させた後(HPLC工程内管理、又は ReactIR iC10 システムを用いたインラインFTIR分光法)、得られた懸濁液を室温に温め、水250mlを加えた。THFを減圧下40℃で留去した。MTBE 125mlを得られた水性懸濁液に加え、25%HCl水溶液125mlを加えることによりpHを約1に調整した。水相を分離し、MTBE 125mlで洗浄した。有機相を1M HCl水溶液62.5mlで順次洗浄した。酸性の水相を合わせ、0〜5℃に冷却した。32% NaOH水溶液 55mlを加えることによりpHを3.0に調整すると、生成物が沈殿した。懸濁液を0〜5℃で4時間撹拌し、濾過した。フィルターケーキを冷(0〜5℃)水125mlで2回洗浄し、減圧下60℃で恒量まで乾燥させて、ヘミエステル59.9gを白色の粉末として得た(95:5e.r.、定量的HPLCにより98.7%w/w、収率93%)。
【0247】
工程5:エピマー化
【0248】
【化44】

【0249】
例a)
(cis)−酸エステル10.6g(32.4mmol、1当量)を、THF 212ml(溶液を有するために重要である)に溶解した。溶液を−70℃に冷却し、カリウム t−ブトキシド5.56g(1.5当量)を加えた。30分間反応させた後(HPLC工程内管理)、酢酸9.3ml(5当量)を加えた。反応混合物を水100ml(pH 6.5)に加え、1M HCl(約60ml、1.85当量)を加えることによりpHを3.0に調整した。THFを減圧下40℃で除去すると、結晶化が開始した。白色の懸濁液を室温で30分間撹拌し、濾過した。フィルターケーキを冷水で洗浄した。結晶を減圧下50℃で乾燥させて、trans−エステル一酸8.0gを白色の粉末として得た(収率76%、>99% trans:<1% cis)。
【0250】
あるいは、反応をジオキサン中のHClを加えることによりクエンチすることができる。
【0251】
KOtBu添加の前に溶液を得るのは重要である。実際、出発物質溶液を−70℃に冷却している間に、若干の沈殿が時々観察された。これらの場合、本発明者らは、出発物質の溶解度が非常に低いために出発物質が完全には反応せずに、低trans/cis 選択性がもたらされたことを後に示した。ここにこの問題を回避する改善方法がある。出発物質を、適切な可溶性アミン塩、例えばそのトリエチルアミン塩の形成により、THF中の溶液中に保持することができる:
【0252】
例b)
cis−一酸モノエステル50g(151mmol、1当量)を反応器に入れ、続いてTHF 850ml及びトリエチルアミン21ml(1当量)を入れた。得られた溶液を−70℃に冷却し、THF 100ml中のKOtBu 25.9g(1.5当量)の溶液を、温度を<−65℃に維持しながら滴下した。45分間反応させた後(HPLCによる工程内管理)、酢酸12.9ml(1.5当量)を加えることにより反応物をクエンチした。反応混合物を室温に温め、水250mlを加えた(得られたpH約7.8)。THFを減圧下40℃で留去した。酢酸エチル300mlを加え、2M HCl(約180ml、2.4当量)を加えることによりpHを3.0に調整した。水相を分離し、酢酸エチル150mlで再抽出した。有機相を水250mlで洗浄し、合わせ、40℃/約150mbarで約250mlに濃縮した。ヘプタン500mlを加え、懸濁液を溶解するまで加熱還流した。加熱を停止し、溶液を室温にゆっくり冷まし、その間に結晶化が開始した。室温で一晩撹拌した後、懸濁液を濾過した。フィルターケーキを1:2 酢酸エチル/ヘプタンの混合物200mlで洗浄し、減圧下50℃で恒量まで乾燥させて、trans ヘミエステル42.5gを白色の粉末として得た(収率86%、HPLCによりe.r.およびd.r. >99:<1、検出限界未満)。
【0253】
工程6:第1のアミドカップリング
【0254】
【化45】

【0255】
例a)
trans−酸エステル500mg(1.58mmol、1当量)を、N−メチルモルホリン168μl(1.0当量)と一緒にTHF 1.5mlに溶解した。この溶液を、THF 2.5ml中のクロロギ酸イソブチル208μl(1当量)の冷0〜5℃溶液に加えた。30分間反応させた後、塩化リチウム65mg(1当量)を加え、続いてアニリン312mg(1当量)を加えた。次に反応混合物を室温で2時間撹拌した(TLC又はHPLC工程内管理)。水3.5ml、酢酸エチル15ml及び1M HCl水溶液 5mlを加えた。有機相を分離し、1M HCl水溶液3.6mlで再抽出して、廃棄した。NaCO 1.5mlを加えることにより、合わせた水相のpHを9〜10に調整し、酢酸エチル25mlで2回抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固して、粗アミドエステル720mgを得た(収率90%)。
【0256】
例b)
THF 120ml中のtrans 酸エステル40g(122mmol、1当量)及びN−メチル−モルホリン13.46ml(1当量)の溶液を、THF 200ml中のクロロギ酸イソブチルの冷(0〜5℃)溶液に30分間かけて加えた。0〜5℃での60分の後(反応を供給制御し、それでこの保持時間を減ずることができる)、アニリン24.95g(1当量)及び塩化リチウム5.23g(1当量)を加えた。反応混合物を室温に温めた。反応が完了した後(約3時間、HPLCによる工程内管理)、水280ml、酢酸エチル400ml及び1M HCl 400mlを加えた。有機相を分離し、1M HCl 200mlで抽出した。水相を合わせ、飽和NaCO水溶液170mlを加えることによりpHを約9〜10に調整して、酢酸エチル200mlで2回抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下45℃で濃縮して、アミドエステル54.2gを半固体の油状物として得た(収率84%、2%残留酢酸エチルのために補正)。
【0257】
工程7:第2のアミドカップリング:
【0258】
【化46】

【0259】
例a)
2−アミノ−5−クロロピリジン197mg(1.5当量)及びアミドエステル500mg(0.97mmol、1当量)を、THF 4mlに溶解した。溶液を0〜5℃に冷却した。THF中の1M LiHMDS溶液2.9ml(3当量)を5分間かけて加えた。反応が完了した後(HPLC工程内管理)、1M HCl 2.5mlを15分間かけて加えて反応をクエンチし、pHを3.5に調整した。二相性の混合物を酢酸エチル7.5mlで2回抽出した。有機相をNaCl半飽和水溶液6.3mlで洗浄し、合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固して、式(X)の粗化合物720mgを得た。
【0260】
例b)
2−アミノ−5−クロロピリジン8.9g(1.5当量)及びアミドエステル25g(45.3mmol、1当量)を、THF 200mlに溶解した。溶液を0〜5℃に冷却した。THF中の1M LiHMDS溶液136ml(3当量)を20分間かけて滴下した。1時間反応させた後(HPLC工程内管理)、2M HCl水溶液171mlを加えることによりpHを3.5に調整した。反応混合物を酢酸エチル100mlで2回抽出した。有機相を半飽和NaCl 100mlで順次洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下45℃で濃縮して、粗化合物X 34.8gを得た。粗生成物をエタノール260mlに溶解し、ヘプタン260mlを10分間かけて加えた。清澄な溶液に播種した。懸濁液を約15分後に得た。室温での60分の後、ヘプタン260mlを30分間かけて加えた。懸濁液を室温で30分間、0℃で2時間撹拌し、濾過した。フィルターケーキをエタノール/ヘプタンの冷(0〜5℃)1:3混合物50mlで洗浄し、減圧下50℃で乾燥させて、化合物X 21.5gを白色の粉末として得た(収率86%、3%残留ヘプタンのために補正、及び97.5a%HPLC、(S,S)鏡像異性体及びcis 異性体はHPLCにより検出されない)。
【0261】
あるいは、環状無水物を下記の順序により調製することができる:
【0262】
工程1:[3+2]付加環化:
【0263】
【化47】

【0264】
(トリメチルシリルメチル)−アミン69.5g(660mmol、1当量)を、THF 765mlに溶解した。温度を20〜25℃の間に維持しながら、37%ホルムアルデヒド水溶液99.7ml(2当量)を加えた。室温で15分間撹拌した後、得られた溶液をTHF 765ml中のジベンジルフマラート200g(1当量)の還流している溶液に40分間かけて加えた。20時間反応させた後、反応混合物を室温に冷まし、THF 400ml中のヒドロキシルアミン塩酸塩52.3g(1.14当量)の懸濁液に10分間かけて加えた。得られた清澄な溶液に播種すると、混濁した溶液が得られた。結晶化がすぐに開始した。白色の懸濁液を室温で1時間撹拌し、P3ガラスフィルターで濾過した。フィルターケーキを水72mlで、そしてMTBE 400mlで2回洗浄した。結晶を減圧下50℃で恒量まで乾燥させて、ピロリジン塩酸塩215gを得た(収率86%)。
【0265】
工程2:遊離塩基形成/アルキル化:
【0266】
【化48】

【0267】
塩酸塩188.5g(501.5mmol、1当量)を、MTBE 700mlに懸濁した。1M NaOH 597mlを0〜5℃で加えた。得られた清澄で二相性の混合物を分離し、水相(pH 13)をMTBE 350mlで再抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥させ、減圧下40℃で濃縮して、無色の油状物166gを得た(収率98%)。
【0268】
得られた油状物145g(427mmol、1当量)を、アセトニトリル1.16Lに再溶解した。ジフルオロエチル−3−ベンゼンスルホナート114g(427mmol、1当量)を加え、続いてエチル−ジイソプロピルアミン87.8ml(1.2当量)を得た。溶液を24時間加熱還流し(>90%転換)、室温に冷まし、減圧下で40℃にて粘性で橙色の油状物に濃縮した。粗混合物をAcOEt 750mlに溶解し、NaCO水溶液、NHCl水溶液及び水で洗浄した。水相をAcOEtで順次再抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、粗生成物178.5gを得た(80〜85% m/m、収率>90%)。
【0269】
工程3:脱ベンジル化:
【0270】
【化49】

【0271】
前記工程からの粗ビスエステル175gを酢酸1.6Lに溶解し、10% Pd/C 9.2gで大気圧にて60℃で水素化した。水素化が完了した後、反応混合物を60℃で濾過した。触媒を熱(60℃)酢酸175mlで洗浄した。濾液を室温に冷まし、MTBE 800mlを加え、混濁した溶液を得た。溶液に播種し、室温で1時間撹拌した。MTBE 950mlを懸濁液に加え、これを次に室温で一晩、次に0℃で3時間撹拌した。懸濁液を濾過し、フィルターケーキをMTBE 100mlで2回洗浄した。結晶を減圧下60℃で乾燥させて、生成物89.7gを白色の粉末として得た(収率90%)。
【0272】
MTBE/AcOH中の結晶化は、粗反応混合物の純度に感受性である。あるいは、反応混合物を濃縮し、生成物をEtOH中で結晶化させることができる。水からの(再)結晶化もまた可能である。
【0273】
工程4:環状無水物形成:
【0274】
【化50】

【0275】
ビス酸50g(221mmol、1当量)を、酢酸150mlと無水酢酸24ml(1.15当量)との混合物に懸濁し、105℃で加熱した。1時間後、清澄な溶液を得た。反応が完了した後(約5時間、NMRによるIPC)、反応混合物を50℃に冷却し、約80mbar下60℃で約40〜50mlの容量(90gの溶液)に濃縮した。t−アミルアルコール400mlを60℃で加え、溶液を約80mbar下60℃で150gに濃縮した(溶媒をt−アミルアルコールに交換し、AcOHを除去した)。橙色の溶液を40℃にゆっくり冷却すると、結晶化が開始した。ヘプタン300mlを40℃で30分間かけて加えた。懸濁液を室温で一晩撹拌し、濾過した。フィルターケーキをヘプタン100mlで洗浄し、減圧下45〜50℃で恒量まで乾燥させて、明褐色の粉末41gを得た(収率約90%)。
【0276】
ビス酸33の代替調製
【0277】
【化51】

【0278】
ビスエステル20g(74.75mmol、1当量)を、THF40mlと水20mlとの混合物に溶解した。32% NaOH水溶液20.8ml(3当量)を加え、反応混合物を50℃で2時間加熱した(TLCによるIPC、AcOEt/ヘプタン 3:1、KMnOを用いて可視化)。THFを減圧下40℃で蒸留により除去した。水相を室温に冷まし、AcOEt 20mlで洗浄した。水相中の残留有機溶媒を減圧下40℃で蒸留により除去した。水相を室温に冷まし、25% HCl水溶液(約27ml)を加えることによりpHを3.5に調整すると、生成物が結晶化した。高粘度の懸濁液を室温で一晩撹拌し、濾過した。フィルターケーキを冷(0〜5℃)水20mlで洗浄し、減圧下50℃で恒量まで乾燥させて、予想されるビス−酸13.5gを白色の粉末として得た(収率81%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(X):
【化52】


で示される化合物の製造方法であって、式(9):
【化53】


で示される化合物の遊離塩基又は式(9)で示される化合物の塩を、ジフルオロエチル−トリフラート及びジフルオロエチル−ペルフルオロブタンスルホナートからなる群より選択されるアルキル化剤と、二相性の水性/有機溶媒条件で反応させる工程を含む、方法。
【請求項2】
式(X):
【化54】


で示される化合物の製造方法であって、
a)式(4):
【化55】


で示される化合物のラセミ混合物にエナンチオ選択的酵素的加水分解を行って、
式(5):
【化56】


で示される化合物を得る工程、
b)式(5)で示される化合物を選択的にモノ加水分解して、式(6):
【化57】


で示される化合物又はその水和物を得る工程、
c)式(6)で示される化合物又はその水和物の1−(4−アミノ−3−フルオロ−フェニル)−1H−ピリジン−2−オンとのカップリングを行って、式(7):
【化58】


で示される化合物を得る工程、
d)式(7)で示される化合物の5−クロロ−2−アミノピリジンとのカップリングを行って、式(8):
【化59】


で示される化合物を得る工程、
e)式(8)で示される化合物にBoc脱保護を行って、式(9):
【化60】


で示される化合物又はその塩を得る工程、及び
f)式(9)で示される化合物の遊離塩基又は式(9)で示される化合物の塩をアルキル化剤と反応させて、式(X)で示される化合物を得る工程を含み、
式中、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである、方法。
【請求項3】
工程(a)が、リゾプス・オリゼ由来リパーゼ又はサーモミセス・ラヌギノサス由来リパーゼを使用することにより行われ、そして工程(b)が、カンジダ・シリンドラセ由来リパーゼを使用することにより行われる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
式(6’):
【化61】


で示される化合物。
【請求項5】
式(6):
【化62】


で示される化合物又はその水和物の製造方法であって、
式(4):
【化63】


で示される化合物のラセミ混合物に、リゾプス・オリゼ由来リパーゼ又はサーモミセス・ラヌギノサス由来リパーゼを使用して、エナンチオ選択的酵素的加水分解を行って、式(5):
【化64】


で示される化合物を得る工程、及び
カンジダ・シリンドラセ由来リパーゼにより、式(5)で示される化合物を選択的にモノ加水分解する工程を含み、
式中、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである、方法。
【請求項6】
式(X):
【化65】


で示される化合物の製造方法であって、請求項5記載の方法を含む、方法。
【請求項7】
式(X):
【化66】


で示される化合物の製造方法であって、
a)式(4):
【化67】


で示される化合物のラセミ混合物にエナンチオ選択的酵素的加水分解を行って、式(5):
【化68】


で示される化合物を得る工程、
b)式(5)で示される化合物を選択的にモノ加水分解して、式(6):
【化69】


で示される化合物又はその水和物を得る工程、
c)式(6)で示される化合物又はその水和物の1−(4−アミノ−3−フルオロ−フェニル)−1H−ピリジン−2−オンとのカップリングを行って、式(7):
【化70】


で示される化合物を得る工程、
d)式(7)で示される化合物にBoc脱保護を行って、式(14’):
【化71】


で示される化合物又はその塩を得る工程、
e)式(14)で示される化合物の遊離塩基又は式(14)で示される化合物の塩をアルキル化剤と反応させて、式(16):
【化72】


で示される化合物を得る工程、
f)式(16)で示される化合物の5−クロロ−2−アミノピリジンとのカップリングを行って、式(X)で示される化合物を得る工程を含み、
式中、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである、方法。
【請求項8】
工程(a)が、リゾプス・オリゼ由来リパーゼ又はサーモミセス・ラヌギノサス由来リパーゼを使用することにより行われ、そして工程(b)が、カンジダ・シリンドラセ由来リパーゼを使用することにより行われる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程e)におけるアルキル化剤が、式(XX):
【化73】


で示される化合物又はジフルオロエチルトリフラートである、請求項7及び8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
式(X):
【化74】


で示される化合物の製造方法であって、式(14’):
【化75】


で示される化合物又は式(14’)で示される化合物の塩を、式(XX):
【化76】


で示されるアルキル化剤又はジフルオロエチルトリフラートと反応させて、式(16):
【化77】


で示される化合物を得る工程を含み、
式中、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである、方法。
【請求項11】
式(16):
【化78】


[式中、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである]で示される化合物。
【請求項12】
式(X):
【化79】


で示される化合物の製造方法であって、
a)式(18):
【化80】


で示される化合物のラセミ混合物をアルキル化剤と反応させて、式(19):
【化81】


で示される化合物のラセミ混合物を得る工程、
b)式(19)で示される化合物のラセミ混合物にエナンチオ選択的酵素的加水分解を行って、式(20):
【化82】


で示される化合物を得る工程、
c)式(20)で示される化合物を選択的にモノ加水分解して、式(21):
【化83】


で示される化合物を得る工程、
d)式(21)で示される化合物の1−(4−アミノ−3−フルオロ−フェニル)−1H−ピリジン−2−オンとのカップリングを行って、式(22):
【化84】


で示される化合物を得る工程、
e)式(22)で示される化合物の5−クロロ−2−アミノピリジンとのカップリングを行って、式(X)で示される化合物を得る工程を含み、
式中、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである、方法。
【請求項13】
工程a)におけるアルキル化剤が、式(XX):
【化85】


で示される化合物又はジフルオロエチルトリフラートである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
式(X):
【化86】


で示される化合物の製造方法であって、式(18):
【化87】


で示される化合物のラセミ混合物を、式(XX):
【化88】


で示されるアルキル化剤又はジフルオロエチルトリフラートと反応させて、式(19):
【化89】


で示される化合物のラセミ混合物を得る工程を含み、
式中、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである、方法。
【請求項15】
式(X):
【化90】


で示される化合物の製造方法であって、式(14’):
【化91】


で示される化合物又は式(14’)で示される化合物の塩を、式(XX):
【化92】


で示されるアルキル化剤又はジフルオロエチルトリフラートと反応させて、式(16):
【化93】


で示される化合物を得る工程を含み、
式中、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである、方法。
【請求項16】
式(19):
【化94】


で示される化合物のラセミ混合物であって、式中、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである、ラセミ混合物。
【請求項17】
式(20):
【化95】


[式中、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである])で示される化合物。
【請求項18】
式(21):
【化96】


[式中、Rは、C1−5アルキル、又はヒドロキシル、メトキシ、エトキシ及びハロゲンからなる群より選択される一つ以上の置換基により置換されているC1−3アルキルである]で示される化合物。
【請求項19】
式(X):
【化97】


で示される化合物の製造方法であって、
a)式(23):
【化98】


で示される化合物にベンジルエステル水素化分解を行って、式(24):
【化99】


で示される化合物を得る工程、又は
a’)式(32):
【化100】


で示される化合物のラセミ混合物にベンジルエステル水素化分解を行って、式(33):
【化101】


で示される化合物のラセミ混合物を得る工程、又は
a”)式(19):
【化102】


で示される化合物のラセミ混合物にエステル加水分解を行って、式(33):
【化103】


で示される化合物のラセミ混合物を得る工程、
b)式(24)で示される化合物又は式(33)で示される化合物を、式(25):
【化104】


で示される化合物に転換する工程、
c)ROH及びキラル試薬を用いて式(25)で示される化合物に環状無水物脱対称化を行って、式(26):
【化105】


で示される化合物を得る工程、
d)式(26)で示される化合物のエピマー化を行って、式(27):
【化106】


で示される化合物を得る工程、
e)式(27)で示される化合物の1−(4−アミノ−3−フルオロ−フェニル)−1H−ピリジン−2−オンとのカップリングを行って、式(28):
【化107】


で示される化合物を得る工程、
f)式(28)で示される化合物の5−クロロ−2−アミノピリジンとのカップリングを行って、式(X)で示される化合物を得る工程含み、
式中、Rは、メチル、エチル、シンナミル、ベンジル又はフェネチルである、方法。
【請求項20】
式(23):
【化108】


で示される化合物。
【請求項21】
式(24):
【化109】


で示される化合物。
【請求項22】
式(33):
【化110】


で示される化合物のラセミ混合物。
【請求項23】
式(25):
【化111】


で示される化合物。
【請求項24】
式(26):
【化112】


[式中、Rは、メチル、エチル、シンナミル、ベンジル又はフェネチルである]で示される化合物。
【請求項25】
式(27):
【化113】


[式中、Rは、メチル、エチル、シンナミル、ベンジル又はフェネチルである]で示される化合物。
【請求項26】
式(XX’):
【化114】


で示される化合物。
【請求項27】
式(32):
【化115】


で示される化合物のラセミ混合物。
【請求項28】
本明細書中上記で定義する発明。

【公表番号】特表2010−513381(P2010−513381A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541998(P2009−541998)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063833
【国際公開番号】WO2008/077797
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】