説明

3−5族化合物半導体の製造装置用耐熱耐摩耗部材

【課題】 三族元素の有機化合物やアンモニア等の反応活性な雰囲気下、1300〜1400℃に達する高温で、InGaNAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体を有機金属気相成長法により製造する装置において、安定して使用可能な耐熱耐摩耗部材を提供する。
【解決手段】 InGaNAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体を有機金属気相成長法により製造する装置において、相対密度97%以上かつSiCの最大粒子径が4.0μm以下のSiC−BN複合焼結体を用いる3−5族化合物半導体の製造装置用耐熱耐摩耗部材。1400℃の窒素ガス中で6時間加熱した後の減量が0.1質量%以下、かつ耐ブラスト性試験が0.05質量%/回以下のSiC−BN複合焼結体を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、InGaNAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体の製造装置用部材、特にヒーター及びその周辺部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
InGaNAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体は、紫外領域を中心とした発光素子材料として注目されており、高輝度白色光用素子、殺菌・滅菌光用素子などに実用化が進んでいる。高温でも半導体特性を持つことから耐熱性の素子となることが期待されている。
【0003】
当該化合物半導体の製造方法にはいくつかあるが、現在は主として有機金属気相成長法(以下MOVPE法)が用いられている。有機金属化合物とアンモニア等の窒素化合物を高温に保持された基板上に供給し、目的の化合物半導体を基板上にエピタキシャル成長させる方法で、結晶成長のパラメータである温度、圧力、材料ガス供給量などを広範に操作可能であり、薄膜結晶成長を得意とすることなどから多彩な積層構造が可能であり、研究用途から産業用途まで広く利用されている。
【0004】
MOVPE法においては、GaAsのように比較的低温で合成を行う場合を除いて、1000℃以上で活性なガスを混合しながら結晶成長させる。製造装置の部材は、高温で有機金属化合物やアンモニアガス等の非常に反応性に富んだ原料ガス雰囲気に晒されるため、化学的に高い安定性が求められ、高純度の半導体を製造するために不純物の放出が少ないことが必要である。特に、InGaNAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体の場合、合成温度は最高1300℃程度であり、ヒーターやその周辺では更に高温となる、当然ながら部材は、この温度域で安定でなければならない。
【0005】
MOVPE法において、安定操業を繰り返すためには、目的とする場所以外に析出してしまうデポ物の除去が必要である。不活性雰囲気で反応温度より100〜300℃高温にしてデポ物を取り除く「加熱クリーニング処理」を行う場合、更に高い耐熱性が要求されている。また、InGaNAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で、z≠0の場合は、AlNに近い組成のデポ物も生じるが、AlNは高温でも安定な材料であるため、「加熱クリーニング処理」での除去は難しく、物理的に研磨剤を吹き付けて除去する方法が採用される。この方法は、ショットブラスト、ホーニング、或いはボンバーディングなどと称されているが、AlNより十分耐摩耗性が高い素材を使用しないと、部材が削れてしまうため、繰り返しの使用には耐えられないという問題がある。
【0006】
現在、これらの部材にはSiC或いはSiCを表面にコーティングした黒鉛が使用されている。これらの内、SiCは代表的な難焼結性材料であって、高純度で緻密な焼結体は非常に高価である上、難加工性材料でもあり、精密な加工を施すのは難しく、精密加工を行えば、更に高価な材料となる。一方、SiCコーティング黒鉛は、1300℃以上の高温に晒された場合や1000℃以上の高温と室温付近への熱履歴の繰り返しを行うとコーティング層に亀裂やピンホールが生じ、アンモニアガス等によって内部の黒鉛への腐食が生じるという問題があった。また、SiCコーティング黒鉛も高価である上、コーティング層を厚くして耐食性を上げると寸法精度が低下してしまい、カーボンとの熱膨張差によって反りや変形等の歪みが生ずる、剥離が発生する等の問題があった。更に、SiC層そのものが不完全であるため、1300℃以上では、昇華や分解による重量減少が生じるため、高温用途には根本的に不向きな材料である。
【0007】
SiCやSiCコーティング黒鉛に変わる材料として、窒化ホウ素を含有する技術(特許文献1)が提案されているが、例示された材料は、BN単身系を除いては重量減少が大きいため、高温用途の実用にはとうてい耐え得ないものである。一方、BN単身系は、耐熱性はあるものの、強度、硬度が低く簡単に削れてしまうため、ダストが発生しやすく、高純度な半導体の製造装置としては、ごく限られた部品にしか使えない。一般に、ヒーターやその周辺部材は結晶成長が生じる部材の直ぐ側に配置され、ダストの発生が容易な素材は、不適切である。
【特許文献1】特開2001−44128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、3−5族化合物半導体の製造装置用耐熱耐摩耗部材として、十分な高温安定性を有して、揮発分が少なく、機械部品としての寸法精度を確保出来、かつ研磨材を吹き付けてデポ物を除去する際に、AlNより十分摩耗量が少ない部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)InGaNAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体を有機金属気相成長法により製造する装置において、相対密度97%以上かつ下記の測定方法によるSiCの最大粒子径が4.0μm以下のSiC−BN複合焼結体を用いることを特徴とする3−5族化合物半導体の製造装置用耐熱耐摩耗部材。
[最大粒子の測定方法]
破断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で5000倍に拡大し、SEM写真上で各粒子の同一方向における最大長さを測り、無作為に1000個の粒子を測定して、その中の最大値を求める。
(2)1400℃の窒素ガス中で6時間加熱した後の減量が0.1質量%以下、かつ下記の条件を用いた耐ブラスト性試験が0.05質量%/回以下のSiC−BN複合焼結体を用いることを特徴とする前記(1)に記載の3−5族化合物半導体の製造装置用耐熱耐摩耗部材。
[耐ブラスト性試験条件]
装置:不二製作所 PNEUMA BLASTER ニューマブラスター
型式:SG−7BAR−406−R200
研磨剤:不二製作所 コランダム WA−220
ノズル:5本
搬送速度:100rpm(2.5min./回)
被研磨試料:直径50mm×厚さ1mm
(3) InGaNAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体を有機金属気相成長法により製造する装置において、SiCが62質量%以上82質量%以下、BNが15質量%以上35質量%以下、Y23が1質量%以上3質量%以下の原料を用いてホットプレス焼成する前記(1)又は(2)に記載のSiC−BN複合焼結体の製造方法。
【0010】
InGaNAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体を有機金属気相成長法により製造する装置において、SiCが62質量%以上82質量%以下、BNが15質量%以上35質量%以下、Y23が1質量%以上3質量%以下の原料を用いてホットプレス焼成するSiC−BN複合焼結体の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分な耐熱性を有し、揮発分が少なく、機械部品としての寸法精度を確保出来、かつ研磨材を吹き付けてデポ物を除去する際に、AlNより摩耗量が十分少ないことより、3−5族化合物半導体の製造装置用に好適な耐熱耐摩耗部材を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の3−5族化合物半導体の製造装置用耐熱耐摩耗部材は、SiC−BN系複合体である。従来の技術と異なるのは、実使用温度、即ち1400℃、窒素ガス中で6時間加熱した際の減量が0.1質量%以下である点である。そのためには、不可避的な混入を除いて、焼結助剤を含む酸化物系の添加物を厳密に制御することが重要である。BNやSiCは代表的な難焼結性材料であるため、通常、HP(熱間加圧焼成)やHIP(熱間等方圧加圧焼成)など特殊な方法を用い、更には焼結助剤を添加して焼成する。例えば、複合焼結体において、当該業者が、SiC−BN系焼結体と言えば、通常はSiCとBNと助剤成分からなる材料を指す。
【0013】
助剤としては、通常、酸化物が用いられる。BNの助剤としては、酸化ホウ素や酸化カルシウム、アルミナ、シリカなど用いられ、SiCの助剤としては、イットリアをはじめとした希土類酸化物やアルミナ、シリカ、ベリリアなどが用いられる。しかしながら、これらの酸化物は、高温で徐々に揮発するものが多い。本発明に於いては、1400℃、窒素ガス中で6時間加熱した際の減量が0.1質量%以下でなければならないため、これらの酸化物の内、イットリア(Y)1〜3質量%に制限される。但し、SiCとBNを原料として用いた場合に不可避的に混入する不純物はこの限りではない。SiCやBNのような非酸化物粉末は、不可避的に酸素を含有し、更にその酸素量は混合等のハンドリング操作によって増加してしまうが、Yを除いて2質量%以下であれば、十分に高温で焼成することによって、1400℃、窒素ガス中で6時間加熱した際の減量が0.1質量%以下となる。
【0014】
本発明において、SiC−BN系複合焼結体に限るのは、他の材料では十分な特性が得られないからである。酸化物は助剤と同様に揮発分となる。他の利用可能な非酸化物に於いても、SiCより熱的に安定なものを得ることは難しい。Siは一般的には1600℃程度の耐熱性を持つとされているが、窒素ガス中で6時間加熱した際の減量が0.1質量%以下にはならない。SiとNの分解蒸気圧が比較的大きいためであると考えられる。また、BCのような炭化物は、窒素ガス中で徐々に窒化反応を生じる。BCの場合、BNを生じるため、質量減少ではなく質量増加となるが、同様に不適当である。TiBのようなホウ化物も窒化反応が生じるため好ましくない。TiBにおいては、表面からTiNが形成される。MOVPE法においては、アンモニアがプロセスガスとして使用されるため、窒素ガス中や窒素ガス−水素ガス中で質量や特性が変化する材料は使用出来ない。
【0015】
本発明のSiC−BN複合焼結体におけるSiCの比率は、SiC62質量%以上82質量%以下に限定される。62質量%未満では、BNが多過ぎるため、強度、硬度が低く、使用時にダストを発生しやすい等の問題を生じることがあり、82質量%超では、BNが少な過ぎて加工性が低下してしまう。また、本発明に於いては、1400℃、窒素ガス中で6時間加熱した際の減量が0.1質量%以下でなければならない。前述のように本願発明の耐熱耐摩耗部材が使用される3−5族化合物半導体の合成温度は、最高1300℃程度であり、ヒーターやその周辺部材では、更に高温となる。従って、ヒーターやその周辺部材は1400℃で、かなり厳密な耐熱性を持つ必要がある。揮発分があると合成された半導体の特性が劣化し、甚だしい場合には、合成そのものが出来なくなる。本願発明者らは、これを簡便に見分ける方法として1400℃、窒素ガス中で6時間加熱した際の質量変化を測定することを見出した。勿論少ない方が好ましいが、0.1質量%以下であれば実用に耐える。好ましくは0.05質量%以下である。
【0016】
次に本願発明の部材は、耐摩耗性、すなわち、デポ物をブラスト処理して取り除いて繰り返し使用するための耐ブラスト性を有していなければならない。具体的には、以下の条件で耐ブラスト性試験を行って、0.05質量%/回以下である。
装置:不二製作所 PNEUMA BLASTER ニューマブラスター
型式:SG−7BAR−406−R200
研磨剤:不二製作所 コランダム WA−220
ノズル:5本
搬送速度:100rpm(2.5min./回)
被研磨試料:直径50mm×厚さ1mm
上記の条件は、試料形状を除けばブラストを行うに当たって一般的に使用される条件であって、研磨量を定量化するために特定化したに過ぎない。試料形状を定めたのも研磨量を定量化するためであり、耐ブラスト性試験では、上記条件で5回繰り返してブラストし、ブラスト前後の質量減少から1回当たりの研磨量を求める。0.05質量%回以下であれば、数十回以上のブラストに耐えて繰り返し使えると考えて良い。研磨量は少ない方が耐ブラスト性に優れるが、同時に硬い材料であることを示し、加工性も低下する。加工性については、前述のようにBNの配合量で調整する。
【0017】
本願発明は、既述の部材を造るためのSiC−BN系素材を提供するものである。即ち、SiC−BN複合焼結体の
(1)相対密度97%以上、
(2)SiCの最大粒子径が4.0μm以下
である。
(1)については、素材の相対密度97%未満では、耐食性や耐摩耗性に劣り、熱伝導率が低下する。また、インゴットが緻密化不足で連通細孔が残留すると加工時にガスや異物が残る原因となり易い。従って、97%以上の高密度材であることが必要で、好ましくは98%以上である。BNもSiCも難焼結性の物質であるので、大きな粒子同士の焼結体では粒子間に空隙が生じて緻密な焼結体は得られない。前述のようにSiCの最大粒子径4.0μm以下の微細な構造を取るためには、BN粒子も、粒界や一部は粒内に取り込まれた微細な構造を取らなくてはならない。
(2)は精密加工性と強度を維持するために必要である。非酸化物セラミックスの加工では、粒子の脱落が発生し易いため、加工精度は粒径と密接な関係があり、加工精度は少なくとも最大粒子径の2.5倍、好ましくは5倍程度の値を取る。従って本願発発明の部材の如く精密な機械部品に求められる10μmレベルの加工精度を得るためには、最大粒子径は4.0μm以下でなければならない。好ましくは、2.0μm以下、更に好ましくは1.0μm以下である。本願発明の部材では、SiCが母相を形成するため、SiCの最大粒子径を定める。同様に粗大粒子が増加すると強度も低下するため、加工時やハンドリング時に破損し易くなり、薄型の部品には対応できなくなるが、最大粒子径が4.0μm以下であれば、実用的には問題ない。最大粒子径は、破断面を拡大観察して測定される。破断面は、最大粒子が存在する可能性が高いので、4.0μm以下が十分鮮明に観察できるように拡大、具体的に例示すれば、SEM(走査型電子顕微鏡)で、5000倍に拡大して(1cmが2μmに相当)、無作為に1000個の粒子を観察してそのなかの最大の粒子を求める方法により決定される。通常は5〜10視野程度から求められる。粒子径の測定方法には各種の方法が提案されているが、本願発明では、インタセプト法を取る。直径法とも言い、SEM写真上で各粒子の同一方向における最大長さを測る方法である。比較的簡便で、本願発明のように異方性が殆ど出ない粒子の場合は、分布を正確に測定することが出来る。
【0018】
しかし、BN−SiC系で、高密度の焼結体を得るためには、高温、長時間、高圧力などの厳しい焼成条件が必要となる。HIPは設備的な制約が大きくコストアップの原因となるので、HPが好ましい。更に、前述の微構造を有する素材を安定製造するには以下に述べる方法が好ましい。
【0019】
ナノコンポジットと呼ばれる複合材においては、前述の(1)〜(2)の条件を満たすSiC−BN複合焼結体が比較的容易に得られる。これは、既に公知の技術であって、以下に文献の例を挙げることが出来る。

文献1 Takafumi KUSUNOSE,Journal of Ceramic Societyof Japan 114[2]167-173(2006)
文献2 楠瀬尚史、坂柳伸彰、関野徹、セラミックス基礎科学討論会講演要旨集vol.45、pp502-503(2007)

作製方法の一例を挙げると、SiCの表面にホウ酸と尿素を析出させ、これを加熱反応させてBNの超微粉をSiC粒子の表面に分散させた原料粉末を得、焼成してナノコンポジットを得るというものである。また、シリカのマイクロビーズとホウ酸ガラスとカーボン粉末を混合後、窒素ガス中で加熱してホウケイ酸ガラスを生成し、更に加熱してナノ複合粉を得、これをホットプレス法で焼結してナノコンポジット焼結体を得る方法もある。これらは、精密加工が容易で半導体製造装置用耐熱耐摩耗部材には好適である。
【0020】
本願発明の耐熱耐摩耗性部材とは、MOVPE法により3−5族化合物半導体を製造する装置において、特に高温となり、アンモニアや有機金属ガスに一部または全部が晒されることのある部材であって、研磨剤で除去するデポ物が発生することがあるものを指す。詳細形状等は装置によって異なるが、精密機械部品であるので寸法公差は厳しく、温度分布が制限されるため材料の均質性が求められる。一部を例示すれば、ヒーターサセプタやそのカバー、ガス流の制御板やスリット板、ハニカム、あるいは、それらを固定、位置決めするピンやネジ、ギヤやスペーサーなど、更には、サセプタの上にディスクを設置し、その上に基板を置いて結晶成長させる場合等は、ディスクも含まれる。
【0021】
更に、本発明の部材となる素材は、高純度であることが必要である。半導体製造装置に用いることからも、金属不純物は少ない方が好ましく、例示すれば、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、タングステン等の重金属やナトリウム等のアルカリ金属不純物の合計が、0.02質量%以下、好ましくは、0.01質量%以下である。
【実施例】
【0022】
以下実施例により、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。先ず原料粉末は以下の方法で調整した。市販の六方晶窒化ホウ素粉末(比表面積35m/g、平均粒径4.0μm)及び市販のSiC粉末(純度99質量%以上、平均粒径1.0μm)を、表1に示す所定の割合に混合した。混合は特級エタノール試薬を溶媒としてアルミナ製のボールを混合媒体とするボールミルで42時間行って、濾過、真空乾燥した。また、一部は、ホウ酸(試薬)と市販のシリカビーズ(純度99質量%以上、平均粒径0.3μm)及び市販のカーボン粉末(比表面積70m/g、平均粒径0.03μm)をBNとSiCで表1の割合となるよう所定の比率で配合し、水を溶媒としてボールミルで24hrs混合した。その際に、カーボンは、SiCの還元反応に対して1.2倍の過剰量とした。乾燥後、窒素ガス雰囲気下で1400℃まで加熱、冷却してSiC−BNの原料粉末とした。比較例の原料も同様に作製したが、組成や混合条件は表1に示す。尚、現行材の比較例として、市販のSiCコーティング黒鉛(コーティング厚さ50nm)及び耐摩耗性の比較材として市販のAlN白板(厚さ1.0mm、熱伝導率180W/mK)を用いた。
【0023】
次に各原料を内径60mmの黒鉛製のダイスにセットしてHP焼結した。焼結条件も表1に示す。焼結体を取り出した後、外形を1mm程度研削し、乾燥質量及び水中質量を測定してアルメデス法で密度を算出し、10mmW×40mmL×1mmTのサンプルに加工して、窒素ガス中、1400℃、6hrsの加熱を行い、前後の質量変化から耐熱性を求めた。また、同じ試料破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で5000倍に拡大し、1000個のSiC粒子を測定して最大粒子径を決定した。次に、50mmφ×1.0mmTのサンプルを切り出して、段落0016に記載の耐ブラスト性試験を行い、前後の質量変化から耐摩耗性を算出した。最後に、加工性を確認するため、マシニングセンターで直径80μmのマイクロエンドミルの穴加工を乾式で行った。穴センターで150μmピッチの穴を連続30穴開けて、裏面のセンター位置の最大のズレを、CNC光学測定器(測定精度5μm)を用いて測定した。加工条件は、回転数10000rpm.、加工速度5mm/min.である。結果を表2に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
表2から明らかなように、本発明の実施例では、いずれも緻密化しているが粒成長は抑制されているため、窒素ガス中、1400℃、6hrsの高温での減量が小さく、加工性も良好で、サセプタのような精密加工部品に好適であり、耐摩耗性もあり、比較例の9のAlNより摩耗量が小さいので、ブラストによる再生処理にも耐えられる。これに対して比較例ではいずれにも先ず高温減量に劣るため、耐熱部材としては不適当である。緻密化が不十分な比較例1、3、4、7では、AlNより耐摩耗性に劣り、繰り返しのブラスト処理にはあまり耐えられない。原料BNの添加量が少ない比較例6やSiCコーティング黒鉛の比較例8、AlN白板の比較例9では、エンドミルが折れ、加工性に劣ることが判った。また、助剤としてAlを添加した比較例2やYの添加量が多すぎる比較例5では、粒径が大きくなって、加工性が低下したため、精密部品には不適当である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によって製造された3−5族化合物半導体の製造装置用耐熱耐摩耗部材は、コーティング等によらず安定的に使用することができるため、熱履歴を気にせずに昇降温速度が決定でき、バッチ毎のピンホールやマイクロクラックのチェックも不要である。更には、1400℃程度までの加熱処理で除去できないデポ物を取り除くために、研磨剤を吹き付ける処理を行っても繰り返し使用することが出来、非常に効率的に設備運用が可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
InGaNAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体を有機金属気相成長法により製造する装置において、相対密度97%以上かつ下記の測定方法によるSiCの最大粒子径が4.0μm以下のSiC−BN複合焼結体を用いることを特徴とする3−5族化合物半導体の製造装置用耐熱耐摩耗部材。
[最大粒子の測定方法]
破断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で5000倍に拡大し、SEM写真上で各粒子の同一方向における最大長さを測り、無作為に1000個の粒子を測定して、その中の最大値を求める。
【請求項2】
1400℃の窒素ガス中で6時間加熱した後の減量が0.1質量%以下、かつ下記の条件を用いた耐ブラスト性試験が0.05質量%/回以下のSiC−BN複合焼結体を用いることを特徴とする請求項1に記載の3−5族化合物半導体の製造装置用耐熱耐摩耗部材。
[耐ブラスト性試験条件]
装置:不二製作所 PNEUMA BLASTER ニューマブラスター
型式:SG−7BAR−406−R200
研磨剤:不二製作所 コランダム WA−220
ノズル:5本
搬送速度:100rpm(2.5min./回)
被研磨試料:直径50mm×厚さ1mm
【請求項3】
InGaNAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表される3−5族化合物半導体を有機金属気相成長法により製造する装置において、SiCが62質量%以上82質量%以下、BNが15質量%以上35質量%以下、Y23が1質量%以上3質量%以下の原料を用いてホットプレス焼成する請求項1又は2に記載のSiC−BN複合焼結体の製造方法。

【公開番号】特開2010−153699(P2010−153699A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332248(P2008−332248)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】