説明

3次元座標計測装置

【課題】精度良くセンサ座標系を世界座標系に変換する。
【解決手段】基準プレート50を世界座標系でキャリブレーションされた3次元絶対座標計測器60で計測して、世界座標系における基準プレート50の基準点の3次元座標、法線ベクトル、及びエッジベクトルを演算する。また、3次元座標計測ロボット10の3次元センサ部8を指令値に応じた位置に移動させ、基準プレート50にスリット光を投射して撮像し、撮像した画像からセンサ座標系における基準プレート50の基準点の3次元座標、法線ベクトル、及びエッジベクトルを演算する。世界座標系及びセンサ座標系の各々における基準点の3次元座標、法線ベクトル、及びエッジベクトルを用いて、センサ座標系を世界座標系に変換する変換パラメータを、指令値毎に算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元座標計測装置に係り、特に、センサ座標系を世界座標系に変換する3次元座標計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサ座標系とロボット座標系とを結合する方法として、一直線上に並ばない少なくとも3つの位置で、センサ座標系上で同一対象物に関する位置を表すセンサ出力を得て、3つの位置をロボット座標系上で表現するデータとセンサ出力を表すデータに基づくソフトウェア処理によって、ロボット座標系とセンサ座標系との相対的な位置関係を求める座標系結合方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、互いに直交する二つの平面状の交線を対象物体に照射した状態を撮像装置によって撮像し、画像上の線と実際の位置との対応関係を参照して実際の座標系に変換する物体の位置及び姿勢検出方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、直交しない十字スリット光を物体に照射して、撮像手段により撮像された画像から、十字スリット光が物体の輪郭と交わる4つの交点の位置を求め、この4つの交点の位置から物体の位置及び方向を求める物体位置検出方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−132373号公報
【特許文献2】特開昭59−65203号公報
【特許文献3】特開平10−318716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、ロボットに支持された3次元センサは、重力によるたわみなどの影響を受けて、指示した位置と実際の位置との間に位置決め誤差が生じることが考慮されておらず、この位置決め誤差により精度良くセンサ座標系から世界座標系に変換することができない、という問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2及び3に記載の方法では、物体の3次元座標を計測しているものの、センサ座標系から世界座標系への変換方法については記載されていない。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、精度良くセンサ座標系を世界座標系に変換することができる3次元座標計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の3次元座標計測装置は、計測対象を撮像する撮像手段と、前記撮像手段を、指令値に応じた位置に移動させる移動手段と、前記撮像手段により計測対象を撮像した画像から抽出した前記計測対象の特徴点の3次元座標を、前記撮像手段の座標系で演算する演算手段と、前記撮像手段の座標系を世界座標系に変換するための変換パラメータであって、前記世界座標系における位置及び姿勢が既知の基準プレートの予め定めた基準点の前記世界座標系における3次元座標と、前記基準プレートを前記撮像手段により撮像した画像から抽出した前記基準点の前記撮像手段の座標系における3次元座標とに基づいて、前記指令値毎に予め求められた変換パラメータを用いて、前記計測対象の特徴点の前記撮像手段の座標系における3次元座標を前記世界座標系における3次元座標に変換する変換手段と、を含んで構成されている。
【0010】
本発明の3次元座標計測装置によれば、計測対象を撮像する撮像装置の座標系を世界座標系に変換するための変換パラメータであって、世界座標系における位置及び姿勢が既知の基準プレートの予め定めた基準点の世界座標系における3次元座標と、基準プレートを撮像手段により撮像した画像から抽出した基準点の撮像手段の座標系における3次元座標とに基づく変換パラメータを、測定ポイントにあたる指令値毎に予め求めておく。
【0011】
計測対象の3次元座標の計測時には、移動手段により、指令値に応じた位置に撮像手段を移動し、撮像手段により計測対象を撮像する。そして、演算手段が、撮像手段により計測対象を撮像した画像から抽出した計測対象の特徴点の3次元座標を、撮像手段の座標系において演算し、変換手段が、指令値に応じた変換パラメータを用いて、計測対象の特徴点の撮像手段の座標系における3次元座標を世界座標系における3次元座標に変換する。
【0012】
このように、撮像手段を指令値に対応した位置に移動させる場合の繰り返し位置精度が高いことを利用して、世界座標系における位置及び姿勢が既知の基準プレートを計測して得た指令値毎の変換パラメータを用いて、撮像手段の座標系における3次元座標を世界座標系における3次元座標に変換するため、精度良く座標変換を行うことができる。
【0013】
また、本発明の3次元座標計測装置は、前記計測対象に少なくとも1本のスリット状の光を投射するスリット光投射手段を含んで構成することができ、前記演算手段は、前記撮像手段により撮像された画像から抽出されたエッジ、及び前記スリット光投射手段によりスリット上の光が投射されているときに前記撮像手段により撮像された画像上のスリットに基づいて、前記特徴点を抽出することができる。これにより、精度良く特徴点を抽出することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、撮像手段を指令値に対応した位置に移動させる場合の繰り返し位置精度が高いことを利用して、世界座標系における位置及び姿勢が既知の基準プレートを計測して得た指令値毎の変換パラメータを用いて座標変換を行うため、精度良くセンサ座標系を世界座標系に変換することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態の3次元座標計測ロボットの構成を示す概略図である。
【図2】本実施の形態の3次元座標計測ロボットの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】変換パラメータを算出する際の装置構成を示す概略図である。
【図4】基準プレートの外観図である。
【図5】本実施の形態における変換パラメータ算出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】本実施の形態の3次元座標計測ロボットによる計測を説明するための図である。
【図7】スリット特徴点を説明するための図である。
【図8】本実施の形態における計測処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】基準プレートの基準点及びスリット特徴点の他の例を示す図である。
【図10】基準プレートの基準点及びスリット特徴点の他の例を示す図である。
【図11】基準プレートの他の例を示す外観図である。
【図12】基準プレートの他の例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態では、本発明の3次元座標計測装置を3次元座標計測ロボットに適用した場合について説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態の3次元座標計測ロボット10は、ロボットアームの先端に取り付けられた3次元センサ部18と、3次元座標の計測を実行するコンピュータ20とを含んで構成されている。
【0018】
図2に示すように、3次元センサ部18は、計測対象を撮像する撮像装置12と、計測対象にスリット状の光(以下、「スリット光」という)を投射するスリット光源14とを含んで構成されている(図6も参照)。撮像装置12は、計測対象を含む領域を撮影し、画像信号を生成する撮像部(図示省略)、撮像部で生成されたアナログ信号である画像信号をデジタル信号に変換するA/D変換部(図示省略)、及びA/D変換された画像信号を一時的に格納するための画像メモリ(図示省略)を備えている。
【0019】
コンピュータ20は、3次元座標計測ロボット10全体の制御を司るCPUと、後述する計測処理のプログラム等各種プログラムを記憶した記憶媒体としてのROMと、ワークエリアとしてデータを一時的に格納するRAMと、各種情報が記憶された記憶手段としてのメモリと、入出力ポート(I/Oポート)またはPLCからの入出力信号と、これらを相互に接続するバスと、を含んで構成されている。また、記憶手段としてHDDを含んで構成してもよい。
【0020】
また、コンピュータ20は、機能的には、図2に示すように、ロボットアームの駆動を制御して3次元センサ部18を指令値に応じた位置に移動させると共に、撮像装置12による撮像処理及びスリット光源14によるスリット光の投射処理を制御する駆動制御部22と、撮像装置12により撮像された画像から計測対象のエッジを抽出するエッジ抽出部24と、画像からスリット反射像の中心であるスリット中心位置を抽出するスリット抽出部26と、エッジ及びスリット中心位置からスリットの特徴点を抽出するスリット特徴点抽出部28と、特徴点の座標から3次元座標を演算する3次元座標演算部30と、センサ座標系を世界座標系に変換するための指令値毎の変換パラメータが記憶された変換パラメータ記憶部32と、演算されたセンサ座標系の3次元座標を、変換パラメータを用いて世界座標系の3次元座標に変換して出力する座標変換部34とを含んだ構成で表すことができる。
【0021】
ここで、本実施の形態の原理について説明する。
【0022】
本実施の形態のように、3次元センサ部18がロボットアームの先端に取り付けられ、任意の位置に移動させて計測対象の3次元座標を計測する構成では、重力によるたわみなどで、正確に位置決めすることは困難である。また、ロボットアームの先端への取付位置の誤差などにより、3次元センサ部18のセンサ座標系を機械的に世界座標系に一致させるのは困難である。しかし、同じ座標への3次元センサ部18の移動を指令した場合の繰り返し位置精度は十分高いといった性質がある。この性質を利用して、3次元センサ部18を指令した位置に移動させたときに世界座標系における位置及び姿勢が既知の基準プレートを計測することにより、指令値毎にセンサ座標系における3次元座標を世界座標系における3次元座標に変換するための変換パラメータを算出するものである。
【0023】
次に、変換パラメータ記憶部32に記憶される指令値毎の変換パラメータの算出方法について説明する。図3に示すように、本実施の形態の3次元座標計測ロボット10、基準プレート50、及び3次元絶対座標測定器60を用いて、後述する変換パラメータ算出処理を実行することにより、指令値毎の変換パラメータを算出する。
【0024】
基準プレート50は、3次元座標計測ロボット10の3次元センサ部18を指令値に応じた位置に移動させた状態で、3次元センサ部18に対向する位置に配置する。基準プレート50は、図4に示すように、薄い直方体で、面内に丸穴が穿設されている。基準プレート50の直方体の面精度、丸穴の位置精度、及び全体の寸法精度は高精度に加工されている。基準プレート50のサイズは、撮像装置12で撮像可能なサイズとし、丸穴のサイズは、スリット光の投射部分が十分な長さが得られるサイズとする。例えば、計測範囲が5cmであれば、丸穴の直径を2cm、プレート幅(短手方向)を3cm等のように設定することができる。プレートの長さ(長手方向)は、3次元絶対座標測定器60での計測精度を確保するための長さとすることができる。なお、基準プレート50は、後述するスリット光が短手方向の辺にかからないように配置する。
【0025】
3次元絶対座標測定器60は、アームの先端に取り付けられたプローブを対象物に接触させて対象物の世界座標系における位置及び姿勢を計測するものである。本実施の形態の3次元座標計測ロボット10と比較して、プローブ部の位置決めが高精度に行えるものを用いる。なお、ここでは、接触式で計測する場合について説明するが、レーザセンサ等を用いて非接触で計測を行うものでもよい。
【0026】
次に、図5を参照して、変換パラメータ算出処理について説明する。
【0027】
ステップ100で、3次元絶対座標測定器60で基準ブロック62を計測する。基準ブロック62は、世界座標系の3軸(X軸、Y軸、Z軸)に対応して高精度に加工された立方体または直方体のブロックである。この基準ブロック62を計測することにより、3次元絶対座標測定器60の座標系を基準ブロックの座標系、すなわち世界座標系に一致させるキャリブレーションを行う。
【0028】
次に、ステップ102で、3次元絶対座標測定器60で基準プレート50の各辺及び丸穴の円周部を接触計測し、計測結果及び基準プレート50の既知の寸法を用いて、世界座標系における丸穴の中心Cの3次元座標、基準プレート50の面方向の法線ベクトル、及び長手方向のエッジを示すエッジベクトルを演算する。
【0029】
次に、ステップ104で、3次元座標計測ロボット10に設けられた入力操作部(図示省略)から指令値を入力し、3次元座標計測ロボット10のロボットアームを駆動して、3次元センサ部18を指令値に応じた位置に移動させる。
【0030】
次に、ステップ106で、3次元座標計測ロボット10に取り付けた3Dセンサ18(センサ座標系の原点位置が既知のキャリブレーションを行ったものとする。また、既知の原点に面する3面があり直交しているものとする。)は、センサ座標系における基準プレート50の丸穴の中心Cの3次元座標、基準プレート50の面方向の法線ベクトル、及び長手方向のエッジを示すエッジベクトルを計測する。具体的には、図6に示すように、撮像装置12及びスリット光を用いた三角測量法を採用する。
【0031】
先ず、スリット光源14により基準プレート50にスリット光を投射し、撮像装置12により、基準プレート50を撮像する。次に、撮像された画像から、センサ座標系におけるスリット幅方向の代表位置であるスリット中心座標を抽出する。スリット中心座標の抽出方法としては、スリット長手方向に垂直な方向にある値以上の輝度値を持つ画素についてそれらの輝度重心の位置を求める方法や、単純に中心位置を求める方法がある。
【0032】
次に、撮像された画像から、丸穴の円周部及び各辺に相当するエッジを抽出する。具体的には、画像処理技術を用いて、撮像された画像からスリット光を消去した後にエッジを抽出する。また、撮像のステップでスリット光をOFFにした状態で撮像した濃淡画像からエッジを抽出するようにしてもよい。そして、エッジとスリット中心線の交差する点をスリット特徴点33として抽出する。スリット特徴点33は、図7に示すように、丸穴の円周から4点(a〜d)、長手方向の辺から4点(e〜h)が抽出される。これらのスリット特徴点33の画像上の座標をセンサ座標系の3次元座標に変換し、丸穴の中心Cの3次元座標、基準プレート50の面方向の法線ベクトル、及び長手方向のエッジを示すエッジベクトルを演算する。
【0033】
次に、ステップ108で、上記ステップ102で計測した世界座標系における基準プレート50の丸穴の中心Cの3次元座標、法線ベクトル、及びエッジベクトルと、上記ステップ106で計測したセンサ座標系における丸穴の中心Cの3次元座標、法線ベクトル、及びエッジベクトルとに基づいて、センサ座標系を世界座標系に変換するための変換パラメータを算出する。具体的には、世界座標系の3軸(X,Y,Z)の各々の軸周りの回転をθx、θy、θzとし、各々の軸に沿った平行移動をTx、Ty、Tzとすると、センサ座標系における座標(x,y,z)と世界座標系における座標(u,v,w)の座標変換は下記(1)式で表すことができる。
【0034】
【数1】

【0035】
従って、変換パラメータとして、θx、θy、θz、Tx、Ty、Tzを、世界座標系及びセンサ座標系の各々における基準プレート50の丸穴の中心Cの3次元座標、法線ベクトル、及びエッジベクトルに基づいて算出しておけばよい。
【0036】
実際に3次元座標計測ロボット10が計測対象を計測する際に必要となる3次元センサ部18の位置、すなわち指令値毎に、本処理を実行することにより、指令値毎の変換パラメータを算出する。算出した指令値毎の変換パラメータは変換パラメータ記憶部32に記憶する。
【0037】
次に、図8を参照して、3次元座標計測ロボット10で計測対象を計測する計測処理ルーチンについて説明する。ここでは、計測対象を丸穴が穿設された部材とし、その丸穴の中心の3次元座標を計測する場合について説明する。本ルーチンは、3次元座標計測ロボット10の電源(図示省略)がオンされることによりスタートする。
【0038】
ステップ120で、計測対象に対応した位置に3次元センサ部18を移動させるための指令値が入力されたか否かを判定する。指令値が入力された場合には、ステップ122へ移行し、指令値が入力されない場合には、入力されるまで待機状態となる。
【0039】
ステップ122では、3次元座標計測ロボット10のロボットアームを駆動して、3次元センサ部18を指令値に応じた位置に移動させる。
【0040】
次に、ステップ124で、センサ座標系における計測対象の丸穴の中心Cの3次元座標を計測する。具体的には、上記変換パラメータ算出処理のステップ106で述べたのと同様に、スリット光源14により計測対象の丸穴部にスリット光を投射し、撮像装置12により撮像する。次に、撮像された画像から、スリット中心線及び丸穴の円周部のエッジを抽出する。そして、エッジとスリット中心線の交差する点をスリット特徴点33として抽出する。スリット特徴点33は、図7に示すような、丸穴の円周の4点(a〜d)が抽出される。これらのスリット特徴点33の画像上の座標をセンサ座標系の3次元座標に変換し、丸穴の中心Cの3次元座標を演算する。
【0041】
次に、ステップ126で、上記ステップ120で入力された指令値に対応する変換パラメータを、変換パラメータ記憶部32から読み出す。
【0042】
次に、ステップ128で、上記ステップ124で計測したセンサ座標系における丸穴の中心Cの3次元座標を、上記ステップ126で読み出した変換パラメータ及び(1)式を用いて世界座標系における3次元座標に変換し、変換した値を計測値として出力する。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態の3次元座標計測ロボットによれば、3次元センサ部を指令値に対応した位置に移動させる場合の繰り返し位置精度が高いことを利用して、世界座標系における位置及び姿勢が既知の基準プレートを計測して得た指令値毎の変換パラメータを用いて、センサ座標系における3次元座標を世界座標系における3次元座標に変換するため、精度良く座標変換を行うことができる。
【0044】
なお、上記実施の形態では、変換パラメータを算出する際に、世界座標系及びセンサ座標系の各々における基準プレート50の丸穴の中心の3次元座標、法線ベクトル、及びエッジベクトルに基づいて、世界座標系の3軸の各々の軸周りの回転及び各々の軸に沿った平行移動を用いる場合について説明したが、一直線上にない3点を基準点として、3次元絶対座標測定器及び3次元座標計測ロボットで3次元座標を計測して、変換パラメータを算出するようにしてもよい。
【0045】
具体的には、3次元座標計測ロボット10で基準プレート50を計測して求めた丸穴の中心座標をC(Xc,Yc,Zc)、法線ベクトルN(Xn,Yn,Zn)、エッジベクトルE(Xe,Ye,Ze)とする。中心座標Cから距離Lだけ法線方向及びエッジ方向に離れた点Cl及びCeを演算で求め、C、Cl、Ceの3点の3次元座標を得る。同様に、3次元絶対座標計測器60で基準プレート50を計測して、丸穴の中心座標C、法線ベクトルN、エッジベクトルEを求めて、上記のC、Cl、Ceの3点の3次元座標を得る。この3点の3次元座標の対応関係から変換パラメータを算出する。
【0046】
また、以下のように、変換パラメータを算出するようにしてもよい。
【0047】
まず、図9に示すように、3次元絶対座標測定器60で基準プレート50の各辺及び丸穴の円周部を接触計測し、計測結果及び基準プレート50の寸法に基づいて、丸穴の中心Cの3次元座標を求め、丸穴の中心Cから辺a(長手方向の上辺)に下ろした垂線の足に位置する点P1、丸穴の中心Cから辺b(長手方向の下辺)に下ろした垂線の足に位置する点P2、丸穴の中心Cから辺c(短手方向の辺)に下ろした垂線の足に位置する点P3の3次元座標を求める。これらの点P1、P2、P3が基準プレートの基準点となる。各点の3次元座標は、丸穴の中心Cの3次元座標、及び基準プレート50の寸法から既知となるCP1、CP2、CP3の距離を用いて演算する。
【0048】
また、3次元座標計測ロボット10では、撮像された画像から、基準プレート50の各辺のエッジを抽出し、図9に示すように、スリット中心線と交差する特徴点E1、E2、E3、E4を抽出して、画像上の座標をセンサ座標系の3次元座標に変換する。そして、丸穴の中心CからベクトルE1E2に下ろした垂線の足に位置する点P1、丸穴の中心CからベクトルE3E4に下ろした垂線の足に位置する点P2、丸穴の中心Cを通りE1E2に平行な直線上のCから既知の距離にある点P3のセンサ座標系における3次元座標を演算する。
【0049】
この世界座標系及びセンサ座標系の各々における基準点の3次元座標を用いて、変換パラメータを算出してもよい。
【0050】
また、図10に示すように、直角三角形の板状のプレートに丸穴を穿設した基準プレート51を用いて、基準点3点の3次元座標を求めることもできる。この場合、3次元絶対座標測定器60で基準プレート51の各辺及び丸穴の円周部を接触計測し、計測結果及び基準プレート51の寸法に基づいて、丸穴の中心Cの3次元座標を求め、丸穴の中心Cから辺aに下ろした垂線の足に位置する点P1、直角三角形の頂点P2の3次元座標を求める。これらの点C、P1、P2が基準プレート51の基準点となる。各点の3次元座標は、丸穴の中心Cの3次元座標、及び基準プレート51の寸法から既知となるCP1、P1P2の距離を用いて演算する。
【0051】
また、3次元座標計測ロボット10では、撮像された画像から、基準プレート51の各辺のエッジを抽出し、図10に示すように、スリット中心線と交差する特徴点E1、E2を抽出して、画像上の座標をセンサ座標系の3次元座標に変換する。そして、丸穴の中心CからベクトルE1E2に下ろした垂線の足に位置する点P1、ベクトルE1E2方向に点Pから既知の距離にある点P2のセンサ座標系における3次元座標を演算する。
【0052】
また、基準プレートとして、図11に示すようなエッジ方向に沿った溝状のガイドを設けた基準プレート52を用いてもよい。この場合、接触式の3次元絶対座標測定器60で面上の3点を計測して基準プレート52の面を規定して法線ベクトルを演算する。次に、ガイドに沿って2点以上を計測することによりエッジベクトルを演算する。このエッジベクトル、基準プレートの面上でエッジベクトルと直交するベクトル、及び法線ベクトルにより座標軸を構成する。そして、丸穴の円周部の少なくとも3点を計測して、丸穴の中心の3次元座標を演算する。このような基準プレート52を用いることにより、3次元絶対座標測定器60による計測精度を向上させることができる。
【0053】
また、図12(A)に示すように、円錐状の丸穴を穿設した基準プレート53を用いてもよい。この場合、スリット光を投射すると、同図(B)に示すように、丸穴の前面の円周部及び背面の円周部の各々からスリット特徴点が抽出される。これを用いて、前面の円周部の中心と背面の円周部の中心を結んで法線ベクトルを演算することができ、法線ベクトルの演算精度を向上させることができる。
【0054】
なお、上記変換パラメータ算出処理、及び計測処理をプログラムとして規定し、記憶媒体に記憶して提供することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 3次元座標計測ロボット
12 撮像装置
14 スリット光源
18 3次元センサ部
20 コンピュータ
22 駆動制御部
24 エッジ抽出部
26 スリット抽出部
28 スリット特徴点抽出部
30 3次元座標演算部
32 変換パラメータ記憶部
33 スリット特徴点
34 座標変換部
50、51、52、53 基準プレート
60 3次元絶対座標測定器
62 基準ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段を、指令値に応じた位置に移動させる移動手段と、
前記撮像手段により計測対象を撮像した画像から抽出した前記計測対象の特徴点の3次元座標を、前記撮像手段の座標系で演算する演算手段と、
前記撮像手段の座標系を世界座標系に変換するための変換パラメータであって、前記世界座標系における位置及び姿勢が既知の基準プレートの予め定めた基準点の前記世界座標系における3次元座標と、前記基準プレートを前記撮像手段により撮像した画像から抽出した前記基準点の前記撮像手段の座標系における3次元座標とに基づいて、前記指令値毎に予め求められた変換パラメータを用いて、前記計測対象の特徴点の前記撮像手段の座標系における3次元座標を前記世界座標系における3次元座標に変換する変換手段と、
を含む3次元座標計測装置。
【請求項2】
前記計測対象に少なくとも1本のスリット状の光を投射するスリット光投射手段を含み、
前記演算手段は、前記撮像手段により撮像された画像から抽出されたエッジ、及び前記スリット光投射手段によりスリット上の光が投射されているときに前記撮像手段により撮像された画像上のスリットに基づいて、前記特徴点を抽出する
請求項1記載の3次元座標計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−145381(P2012−145381A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2477(P2011−2477)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】