説明

3次元計測装置

【課題】手振れによる影響を低減する手持ち可能な3次元計測装置を提供する。
【解決手段】この3次元計測装置1は、測定すべき対象物体2に所定角度ずつ位相をずらした1組の縞パターンを投影する投影部4と、物体2上の1組の縞パターンの画像を撮影して各々の画素について1組の輝度値を得る撮影部5と、各々の画素について1組の輝度値から復元位相値を算出する位相復元手段61、及び復元位相値から絶対位相値を求める位相接続手段62、を有する画像処理部6と、を備えることによって物体2の表面形状を計測するものにおいて、投影部4は、1個の画像の撮影のために撮影部5が必要とする露光時間を複数回分割して得られるスライス時間ごとに1組の縞パターンの各々を順次切り換えて繰り返し投影し、撮影部5は、スライス時間ごとに1組の縞パターンの各々の画像を1組の受光素子51、52、53に順次取り込んでそれを繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフト法を用いて物体表面の3次元形状を計測する3次元計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の3次元形状を非接触で計測する方法として、位相シフト法が知られている。この位相シフト法は、次のようなものである。まず、測定すべき対象物体の表面に輝度が正弦波状に変化する縞パターンを投影し、その画像を別の方向から撮影する。次に、同様の投影・撮影を縞パターンの位相をπ/2ずつ、或いは2π/3ずつずらして1周期分だけ行う。これにより、1組の、すなわち4枚或いは3枚の撮影画像を得る。次に、画像処理により、それらの撮影画像間の輝度差から、物体の表面形状に応じて変化した縞パターン画像の位相値(復元位相値)を算出する。次に、0〜2πの復元位相値に適切なnの2π×nを加算する。ここで、nは整数であり、縞パターンの端からの本数に対応している。これにより、復元位相値の画像の不連続部分を接続し(位相接続し)、縞パターンの端部から略単調増加する絶対的な位相値(絶対位相値)の画像が得られる。以上の一連の手順で、対象物体上の縞パターンの位相が再現され、それを基に対象物体の表面形状の3次元座標値が求められる。
【0003】
なお、位相接続のためには、補助的な撮影を行うもの(例えば特許文献1)とそれを行わないもの(例えば特許文献2)が知られている。特許文献1には、波長が長い縞パターンで補助的な撮影を行って別の復元位相値を求め、その別の復元位相値を基に位相接続を行うことが記載されている。また、特許文献2には、補助的な撮影を行わず、1個の復元位相値の画像を特別なフィルタにより処理することで位相接続を行うことが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−66527号公報
【特許文献2】特開平11−14327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、3次元計測装置は様々な分野で用いられている。その1つに、工場施設における部品を3次元計測することで、その耐用残年数の検査を行うものがある。すなわち、パイプなどの部品の表面形状は腐食によって変化するが、その表面形状の変化から耐用残年数を知ることができるのである。しかし、3次元計測装置を部品(対象物体)に合わせて設置するのは一般に大掛かりな作業を要し、一方、部品をはずして3次元計測装置が設置されている場所まで移動させることは更に困難である。
【0006】
そこで、本願発明者は、現場で簡便に計測できるように手持ち可能な3次元計測装置について鋭意研究を継続してきたところ、手持ち可能な3次元計測装置の最大の課題は手振れによる影響であり、それを低減することが最も重要であると思料するに至り、以下に詳述する3次元計測装置を案出するに至った。
【0007】
本発明は、上記事由に鑑みてなしたもので、その目的とするところは、手振れによる影響を低減し、測定すべき対象物体上の縞パターンの位相を正確に再現することができる手持ち可能な3次元計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る3次元計測装置は、測定すべき対象物体に所定角度ずつ位相をずらした1組の縞パターンを投影する投影部と、少なくとも1個よりなる1組の受光素子を有し、物体上の1組の縞パターンの画像を撮影して各々の画素について1組の輝度値を得る撮影部と、各々の画素について1組の輝度値から復元位相値を算出する位相復元手段、及び復元位相値に2π×nを(但し、nは整数)加算して絶対位相値を求める位相接続手段、を有する画像処理部と、を備えて対象物体の表面形状を計測する3次元計測装置において、前記投影部、前記撮影部、前記画像処理部を収容する手持ち可能な筐体を有し、前記投影部は、1個の画像の撮影のために前記撮影部が必要とする露光時間を複数回分割して得られるスライス時間ごとに1組の縞パターンの各々を順次切り換えて繰り返し投影し、前記撮影部は、スライス時間ごとに1組の縞パターンの各々の画像を前記受光素子に順次取り込んでそれを繰り返すことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る3次元計測装置は、請求項1に記載された3次元計測装置において、前記撮影部は、スライス時間ごとに反射面の角度を変えて1組の縞パターンの各々の画像を反射する反射鏡を更に有し、1組の前記受光素子に該反射鏡からの像が入力されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る3次元計測装置は、請求項1に記載された3次元計測装置において、前記撮影部は、前記受光素子を1個とし、その受光素子に1組の縞パターンの画像が全て入力され、前記画像処理部は、スライス時間ごとに各々の画素について輝度値を読み込んでそれを繰り返し、1組の輝度値の各々についての合算を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る3次元計測装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載された3次元計測装置において、前記投影部と前記撮影部は、波長kの縞パターンを投影して撮影する主撮影、及び略1画面の大きさに相当する波長mの縞パターンを投影して撮影する補助撮影、を行い、前記位相復元手段は、画素iについて主撮影の復元位相値Φi,kと補助撮影の復元位相値Φi,mとを算出し、前記位相接続手段は、最もΦi,m×m/kに近くなるnのΦi,k+2π×nを絶対位相値とすることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る3次元計測装置は、請求項4に記載された3次元計測装置において、前記位相接続手段は、主撮影の復元位相値Φi,kの復元画像から抽出されたエッジ成分と、補助撮影の復元位相値Φi,mの復元画像から抽出されたエッジ成分と、により位置合わせを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の3次元計測装置は、1個の画像の撮影に要する露光時間を複数回分割して得られるスライス時間ごとに、1組の縞パターンの各々を順次切り換えて繰り返し投影し、1組の縞パターンの各々の画像を受光素子に順次取り込んでそれを繰り返すので、手振れによる影響が低減され、物体上の縞パターンの位相を正確に再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の望ましい実施形態に係る3次元計測装置1の外観を示す斜視図である。この3次元計測装置1は、位相シフト法によって測定すべき対象物体2の表面形状を計測するものである。
【0015】
3次元計測装置1は、手持ち可能なようにコンパクトな筐体3を有し、筐体3の内部には、投影部と撮影部の機構や、それら回路を構築する電子部品を搭載したプリント基板3aを収容している。筐体3には、投影する縞パターンを通過させる投光部3bと、対象物体2から反射してきた縞パターンの画像が通過する受光部3cとが同一の側面に設けてある。投光部3bと受光部3cとの距離は例えば約20cmである。また、筐体3には、対象物体2を3次元表示する表示パネル(例えば液晶表示パネル)3dが取り付けられ、画像データを保存するメモリカード3eの差し込み口3fが設けられている。なお、筐体3の形状や部品(投光部3bなど)の配置は、図1に示したものに限らず任意に変更可能である。
【0016】
図2は、3次元計測装置1の構成を示す模式図である。3次元計測装置1は、投影部4と、撮影部5と、画像処理部6と、スライス時間生成部7と、投影パターン生成部8と、を有する。以下、これらの各部を説明する。
【0017】
投影部4は、対象物体2に2π/3(所定角度)ずつ位相をずらした1組を構成する3個の縞パターン(第1、第2及び第3の縞パターン)P1〜P3を投影する。これらの縞パターンP1〜P3は、輝度が正弦波状に変化するものであり、投影パターン生成部8で生成される。なお、縞パターンは横方向に輝度が正弦波状に変化する横波と縦方向に変化する縦波が可能であるが、以下の説明では横波としたものについて説明する。
【0018】
投影部4は、所定のスライス時間Tごとに1組の縞パターンP1〜P3を順次切り換えて繰り返し投影する。スライス時間Tは、1個の画像の撮影のために撮影部5が必要とする露光時間Tを均等に複数回分割したものである。以下の表1に示す例ではTは10ミリ秒であり、Tを10等分してTを1ミリ秒としている。表1は投影する1組の縞パターンP1〜P3の切り換えを示すものである。先ず、第1の縞パターンP1を投影し、1ミリ秒経過すると第2の縞パターンP2を投影する。次に1ミリ秒経過すると第3の縞パターンP3を投影し、更に1ミリ秒経過すると第1の縞パターンP1を投影する。このようにして、1ミリ秒ごとに1組の縞パターンP1〜P3を順次切り換えて繰り返し投影する。
【0019】
【表1】

【0020】
投影部4は、例えば、DLP(Digital Light Processing)プロジェクタを用いることができる。DLPプロジェクタは、角度(2値が可能)を毎秒数千回の高速で切り換えられる画素ごとの微小な鏡(DMD(Digital Micromirror Device))を敷き詰めたものであり、2値の時間の割合で輝度が設定される。この実施形態においては、2値の時間の割合をスライス時間T毎に変えて1組の縞パターンP1〜P3の各々を投影する。このようなDLPプロジェクタは、例えば、単枚式のものにおいて、フレームメモリのRGBの3個の領域に1組の縞パターンP1〜P3を対応させ、光源からの光を3色のカラーフィルタを介さずにDMDに入射させることによって実現できる。
【0021】
撮影部5は、反射面の角度が可変である反射鏡50と、その前段の反射面の角度が一定の固定反射鏡54と、1組を構成する3個の受光素子51〜53と、を有する。反射鏡50は、スライス時間Tごとに反射面の角度を変え(例えば20度ずつ)、固定反射鏡54からの1組の縞パターンP1〜P3の各々の画像を反射し、1組の受光素子51、52、53に、反射鏡50からの像をそれぞれ入力する。すなわち、第1の縞パターンP1の画像は第1の受光素子51に入力され、第2の縞パターンP2の画像は第2の受光素子52に入力され、第3の縞パターンP3の画像は第3の受光素子53に入力される。これらの受光素子51〜53は、モノクロのものでもRGB対応のものでもよい。また、受光素子51〜53は、例えばCCDである。
【0022】
撮影部5は、対象物体2上の1組の縞パターンP1〜P3の画像を撮影し、それらの撮影画像をスライス時間Tごとに1組の受光素子51、52、53に順次取り込み、それを繰り返す。そうすることで、画像の各々の画素について1組の輝度値を得る。
【0023】
以下の表2は、投影する1組の縞パターンP1〜P3の切り換え(前述の表1と同じ)と1組の受光素子51、52、53の切り換えを示したものである。第1の縞パターンP1の投影と同期してその撮影を第1の受光素子51で行い、第2の縞パターンP2の投影と同期してその撮影を第2の受光素子52で行い、第3の縞パターンP3の投影と同期してその撮影を第3の受光素子53で行っている。
【0024】
【表2】

【0025】
撮影時間30ミリ秒の撮影が終了したときの第1の受光素子51には、時間0、3、・・・、24、27に入射された光量が足されたもの、すなわち10ミリ秒(露光時間T)に入射された光量に対応する電荷が蓄積され、それに応じた1組の輝度値を得る。第2、第3の受光素子52、53についても同様である。
【0026】
なお、1個の画像撮影のために撮影部5が必要とする露光時間Tは、受光素子51〜53の種類、ランダムノイズ、暗電流等の一定ノイズなどによって変わるものである。一方、スライス時間Tは、投影部4における1組の縞パターンP1〜P3の切り換えの能力、反射鏡50の角度切り換えの能力、などによって変わるものである。
【0027】
画像処理部6は、位相復元手段61と、位相接続手段62と、3次元演算手段63と、表示パネル制御手段64と、メモリカード制御手段65と、を有する。
【0028】
位相復元手段61は、撮影部5から読み出された各々の画素について1組の輝度値から0〜2πの復元位相値を算出する。具体的には、以下の計算により、各々の画素について1組の輝度値から0〜2πの復元位相値を算出する。第1、第2及び第3の縞パターンP1〜P3の画像の画素iの輝度値をそれぞれP1,i、P2,i、P3,iとすると、それらは次の式で表される。
1,i=K×(IBASE+I×cos(Φ))
2,i=K×(IBASE+I×cos(Φ+2π/3))
3,i=K×(IBASE+I×cos(Φ+4π/3))
ここで、Kは画素iに対応した被写体(物体)の反射率、IBASEは縞パターンの光量の中心値、Iは縞パターンの光量の振幅値、Φは画素iの位相値(復元位相値)である。よって、次の式(数1)が導き出される。
【0029】
【数1】

【0030】
復元位相値Φは、数1により算出される。すなわち、復元位相値Φは、縞パターンP1〜P3の画像の画素iの輝度値であるP1,i、P2,i、P3,iの相対的な差のみに基づいているのである。
【0031】
ここで、復元位相値Φは、横方向に沿った輝度の勾配の大きい程、復元精度が高い。従って、例えば、1組の受光素子51、52、53としてRGB対応のものを用いた場合、Rの画像、Gの画像、Bの画像の内で最も輝度の勾配の大きいものを選択して復元位相値Φを算出することもできる。
【0032】
図3は撮影(後で説明する主撮影)及びその位相値の復元を説明するためのものであり、縞パターンの波長kを64画素としている。(a)は1組の縞パターンP1〜P3のイメージ図、(b)は復元位相値Φi,kの横方向の変化を示す特性図である。図3(b)に示すように、画素iの復元位相値Φi,kは0〜2πの値であり、復元位相値Φi,kの画像は波長kと同じ周期で不連続になっている。なお、値が0から2πに増加するところの線の形は対象物体2の表面形状に応じて変わる。また、波長kの縞パターンについての画素iの復元位相値ΦをΦi,k、後述の波長mの縞パターンについての画素iの復元位相値ΦをΦi,mと記す。
【0033】
位相接続手段62は、復元位相値Φi,kに2π×nを(但し、nは整数)加算する。画素iの復元位相値Φi,kの画像は不連続であるため、その次の画像処理として、復元位相値Φi,kに適切なnの2π×nを加算し、復元位相値Φi,kの画像の不連続部分を接続(位相接続)する。そうすることで、縞パターンの端部からの絶対的な位相値(絶対位相値)が求まる。ここで、nは縞パターンの端からの本数に対応している。なお、背景技術の項で述べたように、位相接続のためには補助的な撮影を行うものとそれを行わないものとがあるが、本実施形態の3次元計測装置1は補助的な撮影を行って位相接続するものである。以下、この3次元計測装置1が用いる補助的な撮影を補助撮影、本来の高精度で復元位相値Φi,kを算出するための撮影を主撮影、とする。
【0034】
主撮影と補助撮影の撮影の方法は、用いる1組の縞パターンP1〜P3の波長の他は実質的に同じである。主撮影の波長kは64画素と短いが、補助撮影の波長mは略1画面の画像の大きさに相当する長さの1024画素である。画像処理部6の位相復元手段61は、本来の高精度な復元位相値Φである主撮影の復元位相値Φi,kを算出すると共に、補助撮影の復元位相値Φi,mを算出する。
【0035】
図4は補助撮影及びその位相値の復元を説明するためのものであり、(a)は1組の縞パターンP1〜P3のイメージ図、(b)は復元位相値Φi,mの横方向の変化を示す特性図である。図4(b)に示すように、復元位相値Φi,mは略1画面の端部から端部までが1波長になっている。なお、破線の直線は物体2の表面に凹凸がない場合の理想値を示している。
【0036】
位相接続手段62は、補助撮影の復元位相値Φi,mに補助撮影の波長mと主撮影の波長kの比を乗じる。すなわち、Φi,m×m/kを計算する。図5(a)は、この結果を特性図に表したものである。一方、主撮影の復元位相値Φi,kに2π×nを加算する。すなわち、Φi,k+2π×nを計算する。そして、Φi,k+2π×nが最もΦi,m×m/kに近くなるnを適切なnの値とする。図5(b)は、この結果を特性図に表したものである。
【0037】
ここで、補助撮影の波長mは非常に長く、受光素子における輝度値の分解能の影響やノイズの影響を受け易いため、復元位相値Φi,mの復元精度は低い。しかし、この復元の誤差は±(π×k/m)以内にする必要がある。このため、撮影(主撮影又は補助撮影)の前に、復元の誤差を考慮して、投影部4における投影の光量、撮影部5における露光時間や絞りの設定を行う。
【0038】
また、主撮影の復元位相値Φi,kの画像と補助撮影の復元位相値Φi,mの画像とは位置合わせを行ったうえで位相接続を行う。すなわち、手振れにより、画素iにおける復元位相値Φi,kと復元位相値Φi,mとが対象物体2の同じ位置に対応するものでないならば、そうなるように位置合わせをする。このためには、主撮影の復元位相値Φi,kの画像からエッジ成分を抽出し、更に、補助撮影の復元位相値Φi,mの画像からエッジ成分を抽出し、それらのエッジ成分の画像をマッチングさせて位置合わせを行う。
【0039】
このようにして、復元位相値Φi,kの画像の不連続部分を接続し(位相接続し)、縞パターンの端から略単調増加する絶対位相値の画像が得られる。
【0040】
3次元演算手段63は、縞パターンの端部から連続している絶対位相値を基に、物体の表面形状の3次元座標値を求める。そして、それを基に、表示パネル制御手段64は表示パネル3dに物体を3次元表示し、メモリカード制御手段65はメモリカード3eに記憶する画像データを制御する。
【0041】
次に、3次元計測装置1の全体の動作を説明する。図6は、3次元計測装置1の全体の動作を示すフロー図である。撮影の前に、先ず、基準距離の設定(ステップS101)を行う。ここでは、対象物体2までの距離を計測し、投影と撮影のフォーカスを設定する。次に、光量(投影の光量、露光時間、絞り)の設定(ステップS102)を行う。次に、縞パターンの波長の設定(ステップS103)を行う。最初は主撮影なので、その波長をkに設定する。次に、撮影を行う(ステップS104)。
【0042】
図7は、撮影の詳細フロー図である。先ず、1組の縞パターンP1〜P3を生成する(ステップS201)。反射鏡50が、第1の受光素子51に対象物体2からの画像が当たるよう反射面の角度を変えるべく回転し、投影部4は第1の縞バターンP1を対象物体2に投影する(ステップS202A)。その投影と同期して第1の受光素子51用のシャッタがオンする(ステップS202B)。それにより、第1の受光素子51には第1の縞バターンP1の画像が入力され、この状態をスライス時間Tの間だけ続ける。その後、第1の受光素子51用のシャッタがオフし(ステップS203B)、投影部4は第1の縞バターンP1の投影を止める(ステップS203A)。
【0043】
次に、反射鏡50が、第2の受光素子52に対象物体2からの画像が当たるよう反射面の角度を変えるべく回転し、投影部4は第2の縞バターンP2を対象物体2に投影する(ステップS204A)。その投影と同期して第2の受光素子52用のシャッタがオンする(ステップS204B)。それにより、第2の受光素子52には第2の縞バターンP2の画像が入力され、この状態をスライス時間Tの間だけ続ける。その後、第2の受光素子52用のシャッタがオフし(ステップS205B)、投影部4は第2の縞バターンP2の投影を止める(ステップS205A)。
【0044】
次に、反射鏡50が、第3の受光素子53に対象物体2からの画像が当たるよう反射面の角度を変えるべく回転し、投影部4は第3の縞バターンP3を対象物体2に投影する(ステップS206A)。その投影と同期して第3の受光素子53用のシャッタがオンする(ステップS206B)。それにより、第3の受光素子53には第3の縞バターンP3の画像が入力され、この状態をスライス時間Tの間だけ続ける。その後、第3の受光素子53用のシャッタがオフし(ステップS207B)、投影部4は第3の縞バターンP3の投影を止める(ステップS207A)。
【0045】
次に、ステップS202A〜207A(又はS202B〜207B)の繰り返しがN回(=T/T)に達すると次(ステップS209)に進み、達していなければ再度繰り返す(ステップS208)。ステップS209では、第1、第2及び第3の受光素子51、52、53の輝度値が画像処理部6に読み出される。
【0046】
このようにして主撮影が終わると、図6に示すように、補助撮影用に縞パターンの波長をmに設定し(ステップS106)、補助撮影を行う(ステップS104)。
【0047】
補助撮影が終わる(ステップS105)と、画像処理部6は、主撮影と補助撮影のそれぞれの復元位相値Φi,k、Φi,mを算出する(ステップS107)。次に、位相接続を行い(ステップS108)、3次元座標値を算出し(ステップS109)、表示パネル3dに3次元表示する(ステップS110)。こうして、以上の一連のフローにより、対象物体2上の縞パターンの位相が再現され、物体の3次元形状が計測されることになる。
【0048】
次に、この3次元計測装置1により、手振れによる影響が低減されることについて説明する。撮影のステップ(前述のステップS104)における手振れによる影響の低減は、投影部4がスライス時間Tごとに第1、第2及び第3の縞パターンP1〜P3を順次切り換えて繰り返し投影し、1組の受光素子51、52、53がスライス時間Tごとに1組の縞パターンの画像を順次切り換えて取り込むことにより、実現される。
【0049】
図8は、手振れがあった場合の復元位相値Φi,kのシミュレーション結果を示している。同図において、破線の曲線Aは手振れがない場合の理想的な復元位相値Φi,k、実線の曲線Bは3次元計測装置1において手振れがあった場合の復元位相値Φi,kである。30ミリ秒の間に15画素のずれが生じた場合、3次元計測装置1は1ミリ秒(スライス時間T)ごとに順次切り換えて繰り返し投影・撮影しているので、1組の縞パターンP1〜P3はそれぞれほぼ同じだけずれたことになる。すなわち、物体上の1組の縞パターンP1〜P3の画像は30ミリ秒間の積分画像であるから、全体としてのずれ量は平均した値の7.5画素となるが、相対的なずれ量は1ミリ秒(スライス時間T)当たりのずれの0.5画素となる。位相値に換算すると、64画素の波長の場合、相対的なずれ量は0.5/64×2πとなる。この相対的なずれ量は非常に小さいので、図8に示すように、前述の式(数1)により算出された復元位相値Φi,kの線形性への影響は極めて少ない。なお、全体のずれ量が7.5画素であるため、復元位相値Φi,kは、図8に示すように、全体として7.5画素シフトしているが、これは種々の方法により補正可能である。
【0050】
図8における一点鎖線の曲線Cは、1ミリ秒(スライス時間T)ごとに順次切り換えて繰り返し投影することはせず、1組の縞パターンP1〜P3の画像の撮影を順番にそれぞれ10ミリ秒(露光時間T)をかけて行ったものにおいて、手振れがあった場合の復元位相値Φi,kのシミュレーション結果である。第1の縞パターンP1の撮影開始から10ミリ秒後の第2の縞パターンP2の撮影開始時には、5画素のずれが生じ、第3の縞パターンP3の撮影開始時には、10画素のずれが生じている。前述のように平均し、ずれた量は、第1の縞パターンP1の画像は2.5画素、第2の縞パターンP2の画像は7.5画素、第1の縞パターンP1の画像は12.5画素のずれとなる。従って、全体としてのずれ量は、第1の縞パターンP1の画像のずれと等しく2.5画素となり、相対的なずれ量は5画素となる。位相値に換算すると、64画素の波長の場合、相対的なずれ量は5/64×2πとなる。この相対的なずれ量は大きいので、図8に示すように、復元位相値Φi,kの線形性がなくなり、非線形が大きく補正不可能の状態になっている。
【0051】
このように、3次元計測装置1は、1個の画像の撮影に要する露光時間Tを複数回分割して得られるスライス時間Tごとに、1組の縞パターンP1〜P3の各々を順次切り換えて繰り返し投影し、1組の縞パターンP1〜P3の各々の画像を1組の受光素子51、52、53に順次取り込んでそれを繰り返すので、手振れによる影響が低減され、対象物体2上の縞パターンP1〜P3の位相を正確に再現することができる。
【0052】
なお、主撮影が終わって補助撮影を始めるまでの手振れによる位相接続への影響は、前述のように、主撮影の復元位相値Φi,kの画像からのエッジ成分の画像と、補助撮影の復元位相値Φi,mの画像からのエッジ成分の画像をマッチングさせて位置合わせを行うことで低減させる。
【0053】
次に、本発明の望ましい別の実施形態に係る3次元計測装置9を説明する。この3次元計測装置9は、図9に示すように、主に、3次元計測装置1の撮影部5を撮影部10に変形したものである。それに伴って、画像処理部6は、輝度値合算手段60を新たに有することになる。
【0054】
この撮影部10は、受光素子を1個とし、その受光素子11に順次切り換えて繰り返し投影される1組の縞パターンP1〜P3の画像が全て入力される。画像処理部6は、スライス時間Tごとに各々の画素について輝度値を読み込んでそれを繰り返す。画像処理部6は、全ての輝度値を読み込んだ後或いは並行して、1組の縞パターンP1〜P3に対応する1組の輝度値の各々についての合算を行う。前述の表1の例では、時間0、3、・・・、24、27の輝度値の合算、時間1、4、・・・、25、28の輝度値の合算、時間2、5、・・・、26、29の輝度値の合算、を行う。
【0055】
この3次元計測装置9の撮影部10は、高速に輝度値を画像処理部6に転送できるものでなければならない。つまり、表1の例では、1ミリ秒について1画像以上を転送できなければならない。このようなものは、高価ではあるが、高速カメラとして市販されているものを使用できる。従って、この3次元計測装置9は、撮影部10に市販の高速カメラを使用できる利点がある。
【0056】
以上、本発明の望ましい実施形態に係る3次元計測装置について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、投影する縞パターンをπ/4ずつ位相をずらして4個を1組とすることも可能である。また、波長kの長さは状況に合わせて任意に変えることが可能である。また、補助的な撮影を行わない3次元計測装置にも適用でき、その場合は、補助撮影に関する機能は省くことになる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の望ましい実施形態に係る3次元計測装置の外観を示す斜視図である。
【図2】同上の3次元計測装置の構成を示す模式図である。
【図3】同上の3次元計測装置における主撮影及びその位相値の復元を説明するものであり、(a)は1組の縞パターンのイメージ図、(b)は復元位相値の特性図である。
【図4】同上の3次元計測装置における補助撮影及びその位相値の復元を説明するものであり、(a)は1組の縞パターンのイメージ図、(b)は復元位相値の特性図である。
【図5】同上の3次元計測装置における位相接続を説明する特性図である。
【図6】同上の3次元計測装置の全体の動作を示すフロー図である。
【図7】同上の3次元計測装置における撮影の詳細フロー図である。
【図8】同上の3次元計測装置において手振れがあった場合の復元位相値のシミュレーション図である。
【図9】本発明の望ましい別の実施形態に係る3次元計測装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1、9 3次元計測装置
2 対象物体
4 投影部
5、10 撮影部
50 反射鏡
51、52、53、11 受光素子
6 画像処理部
61 位相復元手段
62 位相接続手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定すべき対象物体に所定角度ずつ位相をずらした1組の縞パターンを投影する投影部と、
少なくとも1個よりなる1組の受光素子を有し、物体上の1組の縞パターンの画像を撮影して各々の画素について1組の輝度値を得る撮影部と、
各々の画素について1組の輝度値から復元位相値を算出する位相復元手段、及び復元位相値に2π×nを(但し、nは整数)加算して絶対位相値を求める位相接続手段、を有する画像処理部と、
を備えて対象物体の表面形状を計測する3次元計測装置において、
前記投影部、前記撮影部、前記画像処理部を収容する手持ち可能な筐体を有し、
前記投影部は、1個の画像の撮影のために前記撮影部が必要とする露光時間を複数回分割して得られるスライス時間ごとに1組の縞パターンの各々を順次切り換えて繰り返し投影し、
前記撮影部は、スライス時間ごとに1組の縞パターンの各々の画像を前記受光素子に順次取り込んでそれを繰り返すことを特徴とする3次元計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載された3次元計測装置において、
前記撮影部は、スライス時間ごとに反射面の角度を変えて1組の縞パターンの各々の画像を反射する反射鏡を更に有し、1組の前記受光素子に該反射鏡からの像が入力されることを特徴とする3次元計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載された3次元計測装置において、
前記撮影部は、前記受光素子を1個とし、その受光素子に1組の縞パターンの画像が全て入力され、
前記画像処理部は、スライス時間ごとに各々の画素について輝度値を読み込んでそれを繰り返し、1組の輝度値の各々についての合算を行うことを特徴とする3次元計測装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された3次元計測装置において、
前記投影部と前記撮影部は、波長kの縞パターンを投影して撮影する主撮影、及び略1画面の大きさに相当する波長mの縞パターンを投影して撮影する補助撮影、を行い、
前記位相復元手段は、画素iについて主撮影の復元位相値Φi,kと補助撮影の復元位相値Φi,mとを算出し、
前記位相接続手段は、最もΦi,m×m/kに近くなるnのΦi,k+2π×nを絶対位相値とすることを特徴とする3次元計測装置。
【請求項5】
請求項4に記載された3次元計測装置において、
前記位相接続手段は、主撮影の復元位相値Φi,kの復元画像から抽出されたエッジ成分と、補助撮影の復元位相値Φi,mの復元画像から抽出されたエッジ成分と、により位置合わせを行うことを特徴とする3次元計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−139428(P2007−139428A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329448(P2005−329448)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(505399007)アイディンシステム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】