説明

BGAパッケージの実装構造

【課題】 BGAパッケージのパッドの径に対するプリント配線板のパッドの径の最適化を図り、プリント配線板に曲げストレスが印加された時のはんだ接合の信頼性を確保することができるBGAパッケージの実装構造を提供する。
【解決手段】 電子部品と、その端子となるはんだボール6を取り付ける取付けパッド5とを有するBGAパッケージ10を、プリント配線板7に設けたパッド8に上記はんだボール6を接合して実装するBGAパッケージの実装構造において、上記プリント配線板7への曲げストレスの印加時に、上記BGAパッケージ10側及びプリント配線板7側のパッド5、8にそれぞれ発生する相当応力の差が所定の範囲となるように、上記BGAパッケージ側パッド5の径に対するプリント配線板側のパッド8の径を設定した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、BGA( Ball Grid Array )パッケージとして形成された電子部品を、その端子となるはんだボールを介してプリント配線板に接合して実装すると共に、はんだ接合の信頼性を向上することができる実装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、BGAパッケージを実装する場合には、BGAパッケージに設けられるはんだボールの取り付け用のパッドの径と、BGAパッケージを実装するプリント配線板に設けられるはんだボール接合用のパッドの径とを一致させることにより、冷熱衝撃試験などにおける熱ストレスに対するはんだ接合の信頼性で、長寿命を得ることができるようにしていた。(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】富士通半導体デバイスDATA BOOK,FBGAパッケージ実装マニュアル、DB81-00004-1、p20
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のBGAパッケージは上記のように構成され、BGAパッケージ側のはんだボール取り付け用のパッドの径とプリント配線板側のパッドの径とを一致させる構造とされていた。その理由は、次のようなものである。即ち、プリント配線板に冷熱衝撃などの熱ストレスが印加された時に、はんだ接合に発生する応力が、BGAパッケージ側のはんだボール取り付けパッドとプリント配線板側のパッドとで不均衡となり、両パッド間に応力差が発生すれば、応力の高い側へ全ての応力が集中し、はんだ接合部の接合信頼性を低下させる原因となるため、それぞれの接合面積を同じにすることで各パッドに発生する応力の不均衡を防ごうとしたものである。
【0005】
熱ストレスによって発生する応力は、プリント配線板とBGAパッケージの線膨張係数の差に起因するせん断方向の応力が主であったため、BGAパッケージのはんだボール取り付けパッドとプリント配線板のパッドの径を同寸法とすることにより、発生する応力の不均衡を防ぎ、はんだ接合部の接合信頼性の低下を防ぐことができていた。
【0006】
しかし、携帯電話に代表される携帯型端末においては、消費電力が低減され、発熱量が少なくなると共に、過酷な環境下に設置されるものではないため、熱に関するストレスよりも、キーの押し下げに伴なってプリント配線板に繰り返し発生する曲げ力によってはんだボールのパッド部に生じる外部ストレス(以下、曲げストレスという)への耐性が求められ、プリント配線板に曲げストレスが印加された場合、BGAパッケージとプリント配線板には、それぞれの材料や寸法に依存する剛性の違いにより、はんだボールがそれぞれのパッドから剥離する方向の応力が発生するため、BGAパッケージとプリント配線板の各パッドとはんだボールとの接合面積を同じにしていても応力の不均衡が生じ、はんだ接合部の接合信頼性を低下させる原因となっていた。
【0007】
このため、従来のように、BGAパッケージのはんだボール取り付けパッドの径とプリント配線板のパッドの径を一致させる構造では、はんだ接合の信頼性を確保することができないという問題点があった。
【0008】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、BGAパッケージのパッドの径に対するプリント配線板のパッドの径の最適化を図り、プリント配線板に曲げストレスが印加された時のはんだ接合の信頼性を確保することができるBGAパッケージの実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るBGAパッケージの実装構造は、電子部品と、その端子となるはんだボールを取り付ける取付けパッドとを有するBGAパッケージを、プリント配線板に設けたパッドに上記はんだボールを接合して実装するBGAパッケージの実装構造において、上記プリント配線板への曲げストレスの印加時に、上記BGAパッケージ側及びプリント配線板側のパッドにそれぞれ発生する相当応力がほぼ一致するように、上記BGAパッケージ側パッドの径に対するプリント配線板側のパッドの径を設定したものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、BGAパッケージのパッドの径に対するプリント配線板のパッドの径の最適化を図ることができるため、プリント配線板に曲げストレスが印加された時に、プリント配線板のパッド部とBGAパッケージのはんだボール取り付けパッド部にそれぞれ発生する応力を均衡させることが可能となり、各パッドとはんだボールとの接合部への応力集中を防ぎ、はんだ接合の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図にもとづいて説明する。図8は、BGAパッケージ10の一般的な構成を示す概略図で、サブストレートとなるプリント配線板1上にシリコンチップ2を配設し、シリコンチップ2の所定の電極とプリント配線板1とをリード線3で接続すると共に、全体をプラスチックモールド4で覆う構成とされている。また、プリント配線板1の外部への接続電極としてプリント配線板1の下面にはんだボール取り付けパッド5が複数個設けられ、それぞれの取り付けパッド5にはんだボール6が固定されている。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態1におけるベストの構成を示す概略図で、はんだボール6のピッチ(間隔)が0.4mm、はんだボール取り付けパッド5の径がφ200μm及びピッチが0.5mm、パッド径が250μmの場合を例示している。また、図中の符号7はBGAパッケージ10を実装するプリント配線板であり、8はプリント配線板7の表面に複数個設けられ、BGAパッケージ10の実装時に、はんだボール6を固定するプリント配線板側のパッドを示す。
【0013】
今、プリント配線板7への曲げストレスの印加時に、BGAパッケージ側、プリント配線板側、それぞれのはんだ接合部に発生する相当応力を確認するため、BGAパッケージのはんだボール6のピッチを0.4mm、パッド5の径を200μmとした構成に対してプリント配線板のパッド8の径を種々変化させた場合の接合部応力解析シミュレーションの結果を図2(a)に示す。また、BGAパッケージのはんだボール6のピッチを0.5mm、取り付けパッド5の径を250μmとした構成について、同様なシミュレーションをした結果を図2(b)に示す。
【0014】
また、それぞれのシミュレーション結果をパッド径の寸法差毎にプロットしたものが図3のグラフである。図2及び図3の説明では、BGAパッケージ10をPKGと表示し、プリント配線板7をPWBと表示している。
【0015】
図2及び図3から明らかなように、BGAパッケージのはんだボール取り付けパッド5とプリント配線板のパッド8にそれぞれ発生する相当応力は、両パッドの寸法差(パッド5の径に対するパッド8の径の比)が小さい状態から所定値に至るまでは応力の差が次第に縮小し、所定値でほぼ0となって、それぞれの応力が均衡し、所定値を越えると応力の差が再び拡大する傾向となっている。
【0016】
そして、図3からも明らかなように、プリント配線板7のパッド8の径が、BGAパッケージのパッド5の径に対して所定値、即ち130%の時に応力の差が最も小さくなり、この時に、はんだ接合の信頼性が最も高くなることが分かる。
これは、BGAパッケージのパッド5の径が200μmの場合も250μmの場合もほぼ同様である。
【0017】
従って、プリント配線板のパッド8の径は、BGAパッケージのパッド5の径がφ200μmの場合には、φ200μm×130%=φ260μm、BGAパッケージのパッド5の径がφ250μmの場合には、φ250μm×130%=φ325μmに設定される。
【0018】
しかし、この設定はベストの数値であって、この数値の上下に実用上支障のないはんだ接合の信頼性が得られる範囲があり、その範囲でも十分な信頼性が得られるため、この発明はベストの数値を含めて実用上支障のない範囲でプリント配線板のパッド8の径を設定することを特徴とするものである。なお、この範囲は、種々の実験結果から応力差がほぼ-1.0から+1.0の間であることが確認された。
【0019】
応力差がほぼ-1.0から+1.0の範囲は、プリント配線板7のパッド8の径に置き換えれば、図2のデータからも明らかなように、BGAパッケージ10のパッド5の径に対し、おおむね120%〜140%の径に相当する。
【0020】
このように設定したプリント配線板7のパッド8上にクリームはんだを印刷し、BGAパッケージのはんだボール6を位置合わせして搭載し、リフローによりクリームはんだを溶融させて、はんだボール6と融合し、はんだ付けを完了させて図1に示す実装構造を得る。図1では、プリント配線板7のパッド8の径をベストの値としてBGAパッケージ10のパッド5の径に対して130%とした構成を例示している。
【0021】
上記の説明では、BGAパッケージ10のはんだボールのピッチが0.4mm、パッド径がφ200μm及びピッチが0.5mm、パッド径がφ250μmの場合について例示したが、BGAパッケージのピッチとパッド径が更に異なる数値の場合も同様の方法により、プリント配線板のパッド寸法を求めることができる。
【0022】
上述した構成とすることにより、BGAパッケージのはんだボール取り付けパッド部に対して応力差が所定の範囲となるか、あるいは応力を均衡させることのできるプリント配線板のパッド寸法を容易に求めることができる。
【0023】
次に、実施の形態1の作用について説明する。
【0024】
一般的に、BGAパッケージ10の多くは、上述したように、図8に示す構成を有しているため、BGAパッケージ10が実装されるプリント配線板7よりもその剛性は高い。
このため、図4に示すように、プリント配線板7に矢印Aで示すように曲げストレスが印加された場合、プリント配線板7が図示のように、撓むのに対し、BGAパッケージ10は撓みにくいため、はんだボール6の接合部に応力が発生する。
【0025】
図5、図6は応力が発生した場合のはんだ接合部の変化を説明するため図4の破線丸印Bの部分を拡大して示す概略図で、図5はBGAパッケージのパッド径とプリント配線板のパッド径とが同寸法である従来の構成を示し、図6はBGAパッケージのパッド径よりプリント配線板のパッド径が大きくされているこの発明の構成を示している。
【0026】
上述のように、プリント配線板7に曲げストレスが印加された場合、従来の構成では、プリント配線板側のパッド8の面は図5に示すように破線で示す状態から矢印Cで示すように傾き、はんだボール6とのはんだ接合部のエッジにはモーメントが発生し、ねじりのような負荷がプリント配線板側パッド8に生じる。
【0027】
このためプリント配線板側パッド8のはんだ接合部のエッジが破線で示す状態のθから実線で示す状態のθまで変化し、θ<θとなるため応力が増大し、BGAパッケージ10側のパッド5に発生する応力と均衡がとれない状態になる。
【0028】
一方、図6に示すこの発明の場合には、プリント配線板7のパッド8の寸法をBGAパッケージ10のパッド5より大きくしているため、曲げストレスの印加によるプリント配線板側のパッド8のはんだ接合部のエッジは破線で示す状態のθから実線で示す状態のθまで矢印Dで示すように傾くが、θ>θとなり、変形が小さくなってプリント配線板7のパッド8に発生する応力が減少するため、BGAパッケージ側のパッド5に発生する応力と均衡をとることができる。
【0029】
このことは図2、図3のシミュレーション結果からも確認することができる。従って、BGAパッケージ側、プリント配線板側に分けて応力シミュレーションを実施し、それぞれの応力が同じ、または所定の範囲で応力差が小さくなるパッド寸法を求めることにより、はんだ接合部への応力集中を起こすことなく、はんだ接合の信頼性を向上させることができる。
【0030】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る携帯機器としての携帯電話機の構成を、この構成を示す図7にもとづいて説明する。
プリント配線板7の表面には、金属製端子(接合部)11が形成されると共に、スイッチシート12が貼着されている。また、このスイッチシート12を覆うようにキーラバー13がプリント配線板7に搭載されている。また、プリント配線板7が有する面のうち、スイッチシート12が貼着されている面とプリント配線板7を介して反対の面に、BGAパッケージ10が接合されている。BGAパッケージ10は、プリント配線板7のうち、スイッチシート12が貼着されている個所と連なる位置に配置されている。また、この構成では、プリント配線板7の厚み方向でスイッチシート12と重なる位置に、BGAパッケージ10が配置されている。
【0031】
スイッチシート12は薄いフィルムで形成されており、このスイッチシート12とプリント配線板7の表面との間に、半球体状に形成された金属製の部材であるメタルドーム14が部分的に複数貼着されている。このメタルドーム14は金属製端子11を覆う位置に配置されており、通常時は、金属製端子11と導通していない構成になっている。
【0032】
キーラバー13は突出して形成されたキーが複数連設されており、各キーは各メタルドーム14と対応する位置に配置される。
プリント配線板7とBGAパッケージ10との接合部の構成及びその他の構成については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0033】
次に、実施の形態2に係る携帯電話機の動作について説明する。
携帯電話機の利用者は携帯電話機に信号を入力する場合、キーラバー13に設けられている各キーを押下する。キーラバー13が押下されることによって、スイッチシート12を介してメタルドーム14が押圧され、メタルドーム14の表面がくぼみ、くぼんだ部分がプリント配線板7の表面に設けられた金属製端子11と導通する。この導通によって携帯電話機に信号が入力されることになる。
【0034】
この携帯電話機は以上のように構成されており、携帯電話機の利用者が携帯電話機に信号入力を行ないたい場合に、金属製端子(接合部)11に荷重が加わる構成である。
また、金属製端子11に荷重が加わることから、プリント配線板7及びBGAパッケージ10に曲げ応力が印加されることになる。また、信号入力は繰り返し行なわれ、その回数も多い。
【0035】
しかし、この携帯電話機は、プリント配線板7及びBGAパッケージ10に加わる曲げ応力に対して強い構成になっている。従って、携帯電話機の利用者が信号入力を繰り返すことにより、プリント配線板7とBGAパッケージ10とが剥離することを防止できる。
携帯電話機等の携帯機器では信号入力の回数は多く、曲げ応力に対する強さは故障防止へ大きく寄与する。例えば、メール機能が搭載された携帯電話機のように、文字入力機能が搭載された携帯機器では、信号入力回数は大幅に増加する。そのため、文字入力機能が搭載された携帯機器では、曲げ応力に対して強いことは携帯機器の故障防止へ特に大きく寄与する。
【0036】
一方、携帯電話機のような携帯端末は、過酷な条件で用いられることが少ないことや、消費電流の低減が進んでいることから、熱により加わるストレスも小さい。そのため、プリント配線板7とBGAパッケージ10との接合部において、プリント配線板7側のパッド径と、BGAパッケージ10側のパッド径との大きさが一致していないことは携帯電話機等の携帯機器の故障へ与える影響は小さい。
【0037】
従って、実施の形態2に係る携帯電話機によれば、故障の防止を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の実施の形態1におけるベストの構成を示す概略図である。
【図2】実施の形態1におけるプリント配線板の曲げシミュレーションの結果を示す図である。
【図3】実施の形態1におけるプリント配線板の曲げシミュレーションの結果を示すグラフである。
【図4】プリント配線板に曲げストレスが印加される状態を示す説明図である。
【図5】従来のプリント配線板に曲げストレスが印加された時の変形状態を拡大して示す説明図である。
【図6】実施の形態1のプリント配線板に曲げストレスが印加された時の変形状態を拡大して示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2の構成を示す概略図である。
【図8】一般的なBGAパッケージの断面構造を示す概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1 BGAパッケージのプリント配線板、 2 シリコンチップ、 3 リード線、
4 プラスチックモールド、 5 パッド、 6 はんだボール、 7 プリント配線板、 8 パッド、 10 BGAパッケージ、 11 ボタン基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と、その端子となるはんだボールを取り付ける取付けパッドとを有するBGAパッケージを、プリント配線板に設けたパッドに上記はんだボールを接合して実装するBGAパッケージの実装構造において、上記プリント配線板への曲げストレスの印加時に、上記BGAパッケージ側及びプリント配線板側のパッドにそれぞれ発生する相当応力の差が所定の範囲となるように、上記BGAパッケージ側パッドの径に対するプリント配線板側のパッドの径を設定したことを特徴とするBGAパッケージの実装構造。
【請求項2】
上記相当応力の差の範囲を−1.0〜+1.0としたことを特徴とする請求項1記載のBGAパッケージの実装構造。
【請求項3】
上記プリント配線板側のパッドの径を上記BGAパッケージ側のパッドの径に対して120%〜140%に設定したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のBGAパッケージの実装構造。
【請求項4】
上記プリント配線板側のパッドの径を上記BGAパッケージ側のパッドの径に対して130%に設定したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のBGAパッケージの実装構造。
【請求項5】
電子部品と、その端子となるはんだボールを取り付ける取付けパッドとを有するBGAパッケージを、プリント配線板に設けたパッドに上記はんだボールを接合して実装するBGAパッケージの実装構造を有する携帯機器において、利用者の信号入力用に押圧される接合部が搭載されているプリント配線板と、このプリント配線板に接合されるBGAパッケージとからなるBGAパッケージの実装構造に、上記プリント配線板への曲げストレスの印加時に、上記BGAパッケージ側及びプリント配線板側のパッドにそれぞれ発生する相当応力の差が所定の範囲になるようにしたBGAパッケージの実装構造が適用されていることを特徴とする携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−156453(P2006−156453A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340423(P2004−340423)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】