説明

CアーチX線システムを用いた脳卒中検査および治療装置および方法

【課題】患者が被る脳卒中のタイプの診断を助けるための診断または治療装置ならびに脳卒中診断方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの画像化モダリティと、
画像化モダリティのデータから画像を描くように構成されたプロセッサ、患者の動きを検出するセンサ、患者の動きの影響について画像を補正するように構成されたプロセッサ、患者モニタ、血糖分析装置、血液分析装置、画像融合ユニット、コンピュータおよび患者データを入力するためのインターフェイス、の内から選択された2つ以上の装置と
を含み、画像化モダリティと前記2つ以上の装置とがデータインターフェイスを利用して通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者が被る脳卒中のタイプの診断を助けるための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中は最も一般的で重大な血管障害である。世界的に見て、脳卒中として知られる症候群は死亡原因のうちの第2位である。患者およびその血縁者の両方にとって、脳卒中は広範囲にわたる負担を意味する。病後一年の時点で、日々の活動に制約がない者は脳卒中の生存者の約40%だけである。3時間の治療時間枠内に緊急治療室に到着した患者は脳卒中に特有の神経系の問題が生じた患者の半分だけであった。
【0003】
脳卒中は危険因子に起因し、この危険因子には制御可能なものもあれば、制御不可能なものもある。血管障害(脳卒中、心臓麻痺、動脈硬化)に関する危険因子は互いに影響を及ぼし、この有害な相互作用によって、総合的な危険度が高まることになる。医療費は、変えることが可能な危険因子の予防的減少によって、また、例えば、虚血性脳卒中の場合、脳卒中後3時間以内にrTPA(遺伝子組換え型組織プラスミノーゲン活性化因子)を用いた血栓溶解治療を施すといった、迅速な治療によって抑制することが可能である。
【0004】
患者が病院に収容されると、医療スタッフは、診断および治療の次のステップを決定するため、データおよび既往歴(患者自身が述べる完全な病歴)を収集する。この評価によって、その症状が脳卒中に起因し、低血糖または他の何らかの神経障害のような系統的疾患に起因していない可能性があるという疑いを確かめることができる。
【0005】
さらに、緊急治療室において、関連する心不整を排除するためのECG、深刻な狭窄または閉塞を検出するための頚動脈のソノグラム、および、各種臨床検査を含む初期診断がなされる。例えば、脳卒中の症状と同様の症状が、血糖値および電解質値の変化のせいにされる可能性もある。肝不全また腎不全における代謝の変化でさえ、同様の症状を発生する可能性がある。さらに、臨床試験によって、血球および血液凝固系の状態に関する情報が得られる。
【0006】
脳卒中の場合、虚血型(脳梗塞)と出血型(脳出血)との区別がなされる。両方とも、脳への血液供給が妨げられ、そのために神経細胞が死ぬことになる。虚血性脳卒中は、閉塞、すなわち脳動脈が塞がることによって生じる。動脈は、血栓すなわち血塊によって、あるいは、塞栓すなわち体内の別の位置から移動した小さい凝集塊によって詰まることがある。全脳卒中患者のうち約3/4が虚血性脳卒中を患っている。出血性脳卒中は血管からまわりの脳組織に血液が漏出する脳内出血によって生じる。神経細胞の死をもたらす血液供給の中断以外に、血液の集積によって、脳組織に対する圧力も高まり、神経細胞の死をさらに早める。脳卒中患者の約1/4が出血性脳卒中を患っている。
【0007】
2つの脳卒中タイプの治療形態はかなり異なる。虚血性脳卒中の場合、血行を促進しなければならないが、出血性脳卒中の場合、出血を止めなければならない。虚血性脳卒中の場合、これは、rTPA(遺伝子組換え型組織プラスミノーゲン活性化因子)を用いた血栓溶解治療によって最も有効に行われる。しかしながら、このタイプの治療は出血性脳卒中には禁忌である。
【0008】
出血性脳卒中の場合、頭蓋骨内の圧力を低下させるために、穿刺によって脳から血液を除去することが可能である。破裂した動脈瘤からの出血の場合、外科的侵襲が必要になることがある。出血性脳卒中の治療には、脳圧力を測定するためにプローブを埋め込むだけではなく、圧力除去穿孔術またはシャントの移植を施すことも必要になる。場合によっては、血液凝固を促進する薬剤を用いて出血を減らすか止めることも可能である。クモ膜下出血または破裂した脳動脈瘤からの出血の場合、控えめな治療法の選択肢だけではなく、金属クリップで留めることによって破裂した動脈瘤からの出血源を閉じることを意図した早期手術、または遅延手術のような脳外科的侵襲も利用される。
【0009】
現在用いられている治療方針およびガイドラインの場合、病歴審査および身体検査に続いて、虚血性脳卒中を検出し出血性脳卒中を排除するためにCTスキャンが実施される。
【0010】
既知の治療方針には欠点がある。出血性脳卒中の患者の場合、CTスキャンを施すと、かなりの時間が浪費され、その後さらに出血を止めるために外科的または脳外科的侵襲室に患者を輸送しなければならない。CT中は、患者への接近性が低いので、侵襲は困難である。
【0011】
CアーチX線システムを用いた血管造影および軟部組織3D画像を得るための方法および装置が知られている。例えば、頭蓋骨および血管の3D画像は、造影剤が血管に注入されるシーメンス社の商品名「AXIOM ARTIS FA/FB」によって作成することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、患者が被る脳卒中のタイプの診断を助けるための装置および方法、特に、診断または治療装置ならびに脳卒中診断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
診断または治療装置に関する課題は、本発明によれば、
少なくとも1つの画像化モダリティ(画像化装置)と、
画像化モダリティのデータから画像を描くように構成されたプロセッサ、
患者の動きを検出するセンサ、
患者の動きの影響について画像を補正するように構成されたプロセッサ、
患者モニタ、
血糖分析装置、
血液分析装置、
画像融合ユニット、
コンピュータおよび患者データを入力するためのインターフェイス
の内から選択された2つ以上の装置と
を含み、画像化モダリティと前記2つ以上の装置とがデータインターフェイスを利用して通信を行うことによって解決される。
【0014】
診断または治療装置に関する本発明の実施態様は次の通り列記される。
画像化モダリティはCアーチX線装置である。
画像化モダリティは、コンピュータ断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像化装置(MRI)、陽電子放出型断層撮影装置(PET)、単一光子放出型コンピュータ断層撮影装置(SPECT)、または、超音波画像化モダリティのうちの1つ又はそれ以上から選択される。
患者モニタは、心電図(ECG)、呼吸数、血圧または血液酸素飽和度(SpO2)のうちの少なくとも1つを測定するように構成されている。
画像融合ユニットは、画像セグメンテーション処理、患者の動きの補正処理、または、複数の画像化モダリティからの画像の融合処理のうち少なくとも1つの処理を実施するように構成されている。
さらに、ローカルエリアネットワークまたは広域ネットワークとのデータインターフェイスが含まれる。
画像化モダリティのデータから画像を描くように構成されたプロセッサと、患者の動きを検出するセンサと、患者の動きの影響について画像を補正するように構成されたプロセッサと、患者モニタと、血糖分析装置と、血液分析装置と、画像融合ユニットとから選択された3つ以上の装置が含まれる。
【0015】
脳卒中診断方法に関する課題は、本発明によれば、
検査台上に患者を位置決めするステップと、
患者を識別するステップと、
患者モニタのセンサを取り付け患者パラメータを測定して記録するステップと、
画像化モダリティを利用して患者の一部のコンピュータ断層撮影画像を得るステップと、
患者の少なくとも一部の画像を再構成するステップと、
モニタまたはプロジェクタによって画像を表示するステップと
を含むことによって解決される。
【0016】
脳卒中診断方法に関する本発明の実施態様は次の通り列記される。
画像化モダリティはCアーチX線装置である。
画像化モダリティは、コンピュータ断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像化装置(MRI)、陽電子放出型断層撮影装置(PET)、単一光子放出型コンピュータ断層撮影装置(SPECT)、または、超音波装置のうちの少なくとも1つである。
さらに、患者の動きの影響について画像化モダリティからの画像化データを補正する。
さらに、血液値およびマーカを測定する、あるいは、アクセス可能メモリに既に記憶されているそのようなデータを検索する。
さらに、画像化モダリティから得られた画像データをセグメント化する。
さらに、センサによって得られたデータを通信ネットワークを介して伝送する。
データが、搬送波上の情報を変調することによって伝送される。
【0017】
脳卒中診断方法に関する課題は、本発明によれば、
患者識別情報を受信し、
患者に取り付けられたセンサから得られた患者パラメータを測定して記録し、
超音波を用いる第1の画像化モダリティから画像データを受信し、
電磁放射を用いる第2の画像化モダリティから画像データを受信し、
補正された受信画像データから患者の少なくとも一部の画像を再構成し、
モニタまたはプロジェクタによって画像を表示する
ように構成されたプロセッサを設けるステップが含まれていることによっても解決される。
【0018】
このような脳卒中診断方法に関する本発明の実施態様は次の通り列記される。
電磁放射を用いる第2の画像化モダリティはCアーチX線装置である。
プロセッサはマシン可読媒体に記憶された命令によって構成される。
さらに、センサから受信したデータを通信ネットワークを介して伝送する。
さらに、患者の動きに関する情報を受信し、患者の動きについて画像データを補正する。
データは搬送波上の情報を変調することによって伝送される。
【0019】
図面を参照することによって、典型的な実施形態についてより理解を深めることができるであろう。明確にするために、本明細書に記載の実施例に関する通常の特徴が全て解説されるわけではない。もちろん、明らかなことではあるが、こうした実際の実施例の開発において、システムおよびビジネスに関連した制約の遵守のような、開発者によって異なる目標を達成するためには、実施例によって異なる幾多の決定をしなければならないし、これらの目標が実施例によって異なることになる。
【0020】
診断および治療の個々のステップ間であちらこちらに患者を輸送する必要のない「脳卒中治療装置」について述べる。このような脳卒中治療装置には、患者の診断および監視を実施するためのプラットフォームとして統合された下記のタイプの装置を含むことが可能である。
画像化モダリティと、
画像化モダリティによって得られた軟部組織データおよび血管造影データの少なくとも一方のデータのための画像処理プロセッサ、
患者の動きを検出するセンサ、
患者の動きに関して画像の動き補正を行うためのプロセッサ、
患者モニタ、
画像融合ユニット、
血糖分析装置、
血液分析装置、
患者のデータを入力するためのコンピュータおよびインターフェイス、
ローカルエリアネットワークまたは広域ネットワークとのデータインターフェイス
のうちの1つ又はそれ以上の装置。
【0021】
画像化モダリティは、CアーチX線装置、または、CT(コンピュータ断層撮影装置)、MRI(磁気共鳴画像化装置)、PET(陽電子放出型断層撮影装置)、SPECT(単一光子放出型コンピュータ断層撮影装置)、超音波装置等のような他の画像化モダリティ、あるいは、今後開発される画像化テクノロジとすることが可能である。
【0022】
本書に記載のタスクを実施するためのハードウェアとソフトウェアの組み合わせは、プラットフォームまたは「治療装置」と称することにする。プラットフォームのプロセスを実施するための命令はコンピュータ可読記憶媒体またはメモリ(例えば、キャッシュ、バッファ、RAM、取り外し可能媒体、ハードドライブまたは他のコンピュータ可読記憶媒体)で与えることができる。コンピュータ可読記憶媒体には各種の揮発性記憶媒体および不揮発性記憶媒体が含まれる。図に例示のまたは本明細書に記載の機能、動作またはタスクは、コンピュータ可読記憶媒体内または上に記憶された1組以上の命令に応答して実行することが可能である。これらの機能、動作またはタスクは、特定タイプの命令セット、記憶媒体、プロセッサまたは処理方式とは無関係にすることが可能であり、単独または組み合わせで機能する、ソフトウェア、ハードウェア、集積回路、ファームウェア、マイクロコード等によって実施することが可能である。これらの機能、動作またはタスクの態様の中には、専用ハードウェアによって、あるいは、オペレータが手動で実施することが可能なものもある。
【0023】
実施態様の1つでは、命令は、ローカルシステムまたは遠隔システムによる読み取りのために取り外し可能な媒体装置に記憶することが可能である。他の実施態様においては、命令を、遠隔地で記憶し、コンピュータネットワーク、ローカルネットワークまたは広域ネットワークを介して無線技法によってまたは電話回線を通じて転送することが可能である。さらに他の実施態様において、命令はある特定のコンピュータ、システムまたは装置内に記憶されていてもよい。
【0024】
用語「データネットワーク」、「ウェブ」または「インターネット」が用いられる場合、その意図は、定義済み伝送プロトコルを利用して、多種多様な、おそらく地理的に分散しているエンティティ間の通信を促進するローカルエリアネットワークおよび広域ネットワークの両方を含むインターネットワーキング環境を表わすことにある。こうした環境の一例はワールドワイドウェブ(WWW)、および、TCP/IPデータパケットプロトコルの利用、および、イーサネット(登録商標)、または、データ経路のいくつかに関する他の既知のまたは今後開発されるハードウェアおよびソフトウェアプロトコルの利用である。
【0025】
装置、システム、および、アプリケーション間の通信は、有線または無線接続の利用によって可能になる。無線通信には、送信装置と対応する受信装置との間に物理的接続を必要としない音声、無線、光波または他の技術を含むことができる。通信は送信器から受信器への伝送として説明されるが、これは逆経路を排除するものではなく、無線通信装置は送信機能と受信機能との両方を含んでいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1には、治療装置の一例に関するブロック図が示されている。治療装置の他の実施形態には、図1に示す装置または機能の全部の数より少ない数の装置または機能を含むことが可能である。CアーチX線装置10は利用可能な画像化モダリティを代表している。CアーチX線装置10は、患者20のX線源11とは反対側に配置されたX線検出器14によって一連の投影X線画像が得られるように、回転させられる。これらの画像は、断層撮影画像を実現するための任意の処理技術によって再構成される。追加の構成要素または異なる構成要素を設けることも可能であり、または、構成要素を少なくすることも可能である。図示の装置および機能は、代表的なものであって、全てを含んでいるわけではない。個々のユニット、装置または機能は、ケーブルによってまたは無線で互いに通信することが可能であり、接続の一部に用いられている破線は代替接続手段の利用が可能であることを示唆している。
【0027】
CアーチまたはCアームX線ユニットおよび関連する画像処理は、参考までに本明細書において援用されている、2005年11月21日に提出された、「Angiographic X−ray Diagnostic Device for Rotational Angiography」と題する米国特許出願公開第2006/0120507号明細書に記載のタイプとすることが可能である。このような装置は、例えば、CT装置に匹敵する血管造影および軟部組織断層撮影画像を作成することが可能であり、同時に、治療手順の間、患者に簡便に接近できるようにすることが可能である。
【0028】
治療装置のセンサ部分は治療室に配置することが可能であり、信号およびデータ処理およびデータ表示装置の一部または全ても治療室に配置することが可能であるが、患者の検知に直接関係のない装置および機能の一部または全ては遠隔に配置することが可能である。このような遠隔配置は、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワークおよびインターネットによる高速データ通信によって促進される。データおよび画像を表わした信号は、光波、無線波、または、有線接続で伝搬する信号のような、電磁信号によるデータの表現を変調することによって伝送可能である。
【0029】
従って、治療装置は、診断を施し、適切な治療方針を決定する専門医から遠く離して配置することが可能である。もちろん、専門医は患者と一緒にいることも可能である。
【0030】
図1には、設置可能な装置および機能のいくつかが例示されている。X線装置10には、関連する高電圧発生器12、制御システム13、および、検出器14と共に、放射源11を含むことが可能である。商品名「AXIOM Artis dTA DynaCT」(独国エルランゲン市のシーメンス株式会社から入手可能)のようなX線システムを利用して、血管造影コンピュータ断層撮影(ACT)を実施する場合、操作中に、コンピュータ断層撮影(CT)に似た画像を得ることが可能である。こうした利用の場合、画像収集は、Cアームを約200度回転させて、約10秒で行うことが可能である。
【0031】
一部または全ての検査ステップ中、患者支持台16を利用して、例えば、各種センサ間において患者20を移動させるか、あるいは、患者20を他の位置に位置決めすることが可能である。画像化装置は、ロボット位置決めを行うCアーチ装置、または、任意の適切なX線装置、または、他の電磁画像化モダリティ(例えばCT、MRI、PETスキャナ)、または、超音波装置とすることが可能であり、診断用画像化および治療目的のために2つ以上の画像化モダリティを利用することが可能である。例えば、治療段階中、X線装置を利用することも可能である。
【0032】
検査中、患者20の動き(モーション)を検出し、画像再構成処理31の前に、モーションプロセッサ32においてその動きを考慮に入れるためにモーションセンサ15を設けることが可能である。モーションセンサ15は、米国特許出願公開第2002/0163994号明細書「In−Line Correction of Patient Motion in Tree−Dimensional Positron Emission Tomography」に記載のような、例えば、画像信号自体から導き出す数学的動き検出器とすることが可能である。もう1つの態様では、モーションセンサは、米国特許第6,661,240号明細書「Method and System for Capacitive Motion Sensing and Position Control」におけるような容量センサ、欧州特許第0993804号明細書「Method and System for tracking an object」におけるような磁気センサ、欧州特許第1034738号明細書「Positioning based on ultrasound emission」におけるような音響センサ、または、光学または赤外線カメラによっておよびパターン認識の計算方法によって患者の位置を検出することが可能な光学センサとすることが可能である。患者はレーザビームで走査することが可能である。患者の移動またはシフトが求められると、画像処理ユニット32で補正される。この処理ユニットは、単一プロセッサ内に組み込むこともでき、あるいは、マルチプロセッサとすることも可能であり、処理機能は、ハードウェア、ソフトウェア、または、それらの組合せとして表わすことが可能である。
【0033】
モーションセンサ15は有線接続を介してまたは無線形式で画像処理ユニット32にデータを伝送することができる。検査の開始前に、モーションセンサ15は、各種検査装置の空間座標に対して較正し、患者支持台16に対して較正することが可能である。
【0034】
モーションアーチファクトを除去する機能には、呼吸に起因する動き、心臓の動き(例えば、「ECGゲーティング」による)および血管の動きを含むことが可能である。呼吸アーチファクトを除去するために、胸部ベルトを利用して適切なセンサを用いることにより呼吸の振幅および頻度を求め、画像処理ユニット32において、再構成された画像におけるモーションアーチファクトを最小限に抑える補正計算を開始することが可能である。あるいはまた、心電図(ECG)信号の包絡線から呼吸の振幅および頻度を計算して、画像プロセッサ32または画像融合ユニット31に供給することも可能である。
【0035】
米国特許第6,221,012号明細書「Transportable Modular Patient Monitor with Data Acqusition Modules」に記載のような、あるいは、製品として商品名「Infinity Gamma」(独国リューベック市のドレーガー メディカル ドイチュラント有限会社から入手可能)のような患者モニタ40によって、血圧、心拍数、酸素飽和度およびECGを検知することが可能であり、これらのデータは、画像および各種センサから得られた他のデータと共に、メモリ80に記憶することが可能である。
【0036】
超音波装置50(例えば、Sonosite、http://www.sonosite.comからのiLook装置、および/または、PrimedicからのHandyScan)を用いて、深刻な狭窄または閉塞の検出、脳出血の予備診断、および、穿刺ノズルのセッティングおよび誘導のために、心臓動脈の二重超音波検査を実施することが可能である。さらに、超音波装置50の場合、X線を放射することなく、血栓溶解治療の進捗状況を見守ることが可能である。
【0037】
米国特許出願公開第2004/0249279号明細書「Patient Minitor for Processing Signals from an Ultrasound Probe」に記載のように、患者モニタ40と超音波装置50とを1つのユニットに統合してもよい。もう1つの態様では、まだ公開されていない独国特許出願第102005031642.5号に記載のように、患者モニタ40と、超音波装置50と、除細動器(図示されていない)とを1つのユニットに統合してもよい。
【0038】
脳卒中は心房細動によって引き起こされる可能性がある。深部静脈血栓症の場合のように、塞栓は静脈系で発生する可能性がある。脳血管塞栓は、心臓シャントを取り付けた患者、心房中隔欠損のある患者、または、卵円孔遺残のある患者に生じる可能性もある。従って、とりわけ心房細動を生じた患者にはTEE(経食道心エコー)検査を実施することが可能である。従って、経食道心エコー検査を実施するのに適したTEE超音波装置60を、装置の残りと一体化することもあり得る。TEE装置は、例えば、米国特許第6,142,941号明細書「Device for Carrying Out a Transoesophageal Echocardiography and a Cardioversion」によって知られている。
【0039】
もう1つの態様では、シーメンス株式会社(独国エルランゲン市)の商品名「ACUNAV」カテーテル62を利用することができる。このカテーテル62は、静脈系を介して心臓に送り込まれ、心室から超音波画像を作成するのに利用することができる。TEE検査のための音響ヘッドまたはカテーテルと体外音響ヘッドの両方に超音波装置を設けてもよい。
【0040】
画像融合ユニット31または機能(記録、セグメント化、スーパーインポーズ)によって、異なる画像化装置からの情報を組み合わせることができる。例えば、ソノグラムは、2D、3D、または、4D画像表現のX線および血管造影画像と融合させることができる。
【0041】
Roche Diagnostics有限会社(独国マンハイム市)による商品名「Accu−Check」のようなコンパクトな血糖分析装置53を利用して、血糖値を測定することができる。さらに、シーメンス株式会社によって開発されている商品名「Lab on a Chip」のような血液分析装置54を利用して、それ以外の血液値またはいくつかの遺伝標識または分子マーカを測定することもできる(例えば、脳卒中に関する遺伝子検査および分子マーカによる試験については、国際公開第00/56922号パンフレット「Genetic Polymorphism and Polymorphic Pattern for Assessing Disease Status,and Compositions for Use Thereof」、および、西独国特許第69919885号明細書「Method for Measuring Cellular Adhesion」を参照されたい)。さらに、利用可能な装置および方法の例として、国際公開第2005/106024号パンフレット「Method and Assembly for DNA Isolation with Dry Reagents」、および、国際公開第2005/106023号パンフレット「PCR Process and Arrangement for DNA Amplification using Dry Reagents」も参照されたい。医療知識が増すにつれて、治療室にさらなる試験装置および方法を追加することが可能になる。
【0042】
コンピュータ装置70は、商品名「SIMpad」(独国エルランゲン市のシーメンス株式会社製)のようなノートブック、または、患者の人口統計、病歴、診断および/または治療に関するデータを記録し要求し病院の医療情報管理システムとそれらのデータのやりとりを行うことができる他の処理装置とすることが可能である。コンピュータ装置70は、HMO(健康維持機関)または健康保険証からデータを読み出すためのインターフェイスを備えることもでき、あるいは、無線接続によって治療室の残りの装置に接続することも可能である。手動入力および制御のために、キーボード、コンピュータディスプレイ装置およびマウスのようなユーザ入力装置71を設けることが可能である。さらに、このコンピュータ装置において、投与済み薬剤または未投与薬剤を含めて、既に施された検査および治療措置を文書化することが可能である。データの一部または全ては、診断、請求書作成および管理の目的に利用するために、あるいは、DICOMおよびSOARIANのような既知のインターフェイス、または、専用のまたは今後開発されるデータフォーマッティングおよび処理技法を利用したさらなる画像処理および記憶のために、別のエンティティに転送することが可能である。SOARIANは、臨床治療、財務、画像、および患者管理機能を統合し、患者情報の検索および記憶、および、分析タスクの実行を容易にする医療用ウェブブラウザベースの情報管理システムである(ペンシルベニア州マルヴァーン市のSiemens Medical Solutions Health Service Corporationから入手可能である)。
【0043】
脳卒中治療装置は下記に要約された段階に従って任意の所望の順序で操作することができる。異なる段階、追加の段階またはもっと少ない段階を実施することもできる。
【0044】
患者を脳卒中治療装置まで運んで識別することが可能である。患者を識別するためのデータは、手動で、または、DICOM(医用ディジタル通信)のようなインターフェイスを介して健康保険証または他の識別カードを読み取ることによって、あるいは、オプションにより患者に面接して人口統計学的データおよび病歴データを入力するか、または、アクセス可能なメモリに既に記憶されている場合にはこのようなデータを検索することによって得られる。識別番号(ID)が患者とまだ対応付けられていない場合、患者には自動または手動でこのような識別番号が割り当てられる。患者モニタのセンサが取り付けられ、ECG、血圧およびSpO2のような患者パラメータが測定され記録される。血糖値が測定され記録されるか、あるいは、既存の臨床検査結果が呼び出される。その他の血液値(凝固因子のような)およびマーカを測定または呼び出すことが可能である。患者は検査台上に配置される。オプションの超音波造影剤の利用を含む超音波検査が実施され記録される。CT(コンピュータ断層撮影)、X線または他の画像診断検査が実施され記録される。CアーチX線装置を用いることによって、造影剤を用いるか又は用いない少なくとも2つの投影画像を利用した少なくとも180°の方位角にわたる回転X線画像が得られ記録される。得られた画像データはモーションアーチファクトの補正を施すことができる。3Dボリューム画像または2D画像を作成または再構成することができる。これらの画像はモニタまたはプロジェクタによって表示することができる。
【0045】
オプションにより、例えば、画像プロセッサ31におけるセグメント化、記録またはスーパインポーズによって、軟部組織画像および造影剤強化画像を融合することが可能である。各種センサから個々にまたは組み合わせて得られるデータおよび画像(2D、3D、4D、スーパインポーズ、セグメント化等)は、治療室内に配置することが可能であるビジュアルディスプレイ100で表示することもでき、あるいは、患者から任意の物理的距離をあけることが可能な遠隔地で同様に再現することができる。
【0046】
もう1つの実施形態において、脳卒中診断方法には、患者識別に関連した情報を受信して処理し、患者に取り付けられたセンサから得られたパラメータを測定して記録し、血糖値を測定するかまたは呼び出すように構成されたプロセッサを設ける段階が含まれている。超音波装置または電磁放射(X線を含む)を利用した画像化モダリティから追加データを受信することができる。画像化データは、モーションセンサからのデータを利用して補正し、例えば、少なくとも患者の一部の3Dボリューム画像に形成することができる。この画像はディスプレイモニタまたはプロジェクタに伝送することができる。
【0047】
ある観点では、この方法の超音波画像化部分を用いて、例えば、脳出血を排除し、狭窄を識別するための頚動脈検査を実施することができる。代替として、同様の目的に放射線検査を利用することもできる。経食道心エコー検査(TEE)を実施することも可能である。造影剤を使わずに、CTまたはCアームX線CT検査を実施して、出血を見つけるか(治療経路A)または出血を排除する(治療経路B)ことができる。代替的にまたは補足的に、造影剤を用いて頭蓋骨の神経系放射線検査を実施して、出血を見つけるか(治療経路A)または出血を排除する(治療経路B)こともできる。
【0048】
治療経路Aは、出血性脳卒中に利用することができ、穿刺によって脳から血液を除去して頭蓋骨内の圧力を低下させるステップを含むことができる。破裂した動脈瘤からの出血の場合、患部血管を手術することもあり得る。外科的侵襲には、脳圧力を測定するためのプローブの移植(例えば、患者モニタに接続可能である)、および、圧力を除去する頭蓋開口を含むことができる。脳神経外科の場合、頭蓋開口には、頭蓋骨内部に外科的侵襲を施すか、あるいは、頭蓋骨の内圧を低下させるために頭蓋骨の外科的開口が必要になる。オプションにより、出血は血液凝固を促進する薬剤を用いて抑えられるかまたは止められる。
【0049】
クモ膜下出血または破裂した脳動脈瘤による出血の場合、控えめな治療法の選択肢だけではなく、金属クリップで留めることによって、破裂した動脈瘤からの出血源を閉じることを意図した早期手術、または遅延手術のような脳外科的侵襲も利用される。他の治療法を利用してもよい。
【0050】
治療は、造影剤を用いないあるいはオプションにより造影剤を用いた電磁画像化および/または超音波画像によって監視することができる。
【0051】
治療経路Bは、虚血性脳卒中に用いられ、rTPA(遺伝子組み換え型組織プラスミノゲン活性化因子)の投与を含むことができる。治療は、造影剤を用いないあるいはオプションにより造影剤を用いた電磁画像化および/または超音波画像によって監視することが可能である。他の治療法を用いることも可能である。
【0052】
治療経路AまたはBに関する治療の終末には、統合コンピュータ装置において診断および治療を文書化する段階、監視に適した位置に患者を移送する段階、できればSOARIANまたはDICOMのような医療データネットワークを介して、文書化された診断および治療データおよび他のデータを送る段階、すなわち、モダリティによって実施される手順ステップ(MPPS)を含むことが可能である。
【0053】
オプションにより、患者の退院前に、対照CTを実施してもよい。
【0054】
本明細書に開示の方法は、特定の順序で実施される特定のステップに関連して解説され示されてきたが、もちろん、これらのステップを組み合わせ、再分割し、あるいは、記録して、本発明の教示から逸脱することなく、同等の方法を形成することが可能である。従って、特に指示のない限り、このステップの順序およびグループ分けは本発明を制限するものではない。
【0055】
上記では、本発明のいくつかの典型的な実施形態について詳述したが、当該技術者にはすぐに分かるように、本発明の新規の教示および利点をほとんど逸脱することなく、典型的な実施形態に多くの修正を加えることが可能である。従って、こうした修正は、付属の請求項において規定される本発明の範囲内に含まれることを意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】治療室の一例を示すブロック図
【符号の説明】
【0057】
10 CアーチX線装置
11 X線源
12 高電圧発生器
13 制御システム
14 X線検出器
15 モーションセンサ(動き検出器)
16 患者支持台
20 患者
31 画像融合ユニット
32 画像処理ユニット
40 患者モニタ
50 超音波装置
60 TEE超音波装置
62 カテーテル
70 コンピュータ装置
71 ユーザ入力装置
80 メモリ
100 ビジュアルディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの画像化モダリティと、
画像化モダリティのデータから画像を描くように構成されたプロセッサ、
患者の動きを検出するセンサ、
患者の動きの影響について画像を補正するように構成されたプロセッサ、
患者モニタ、
血糖分析装置、
血液分析装置、
画像融合ユニット、
コンピュータおよび患者データを入力するためのインターフェイス
の内から選択された2つ以上の装置と
を含み、画像化モダリティと前記2つ以上の装置とがデータインターフェイスを利用して通信を行う
ことを特徴とする診断または治療装置。
【請求項2】
画像化モダリティはCアーチX線装置であることを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項3】
画像化モダリティは、コンピュータ断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像化装置(MRI)、陽電子放出型断層撮影装置(PET)、単一光子放出型コンピュータ断層撮影装置(SPECT)、または、超音波画像化モダリティのうちの1つ又はそれ以上から選択されることを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項4】
患者モニタは、心電図(ECG)、呼吸数、血圧または血液酸素飽和度(SpO2)のうちの少なくとも1つを測定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項5】
画像融合ユニットは、画像セグメンテーション処理、患者の動きの補正処理、または、複数の画像化モダリティからの画像の融合処理のうち少なくとも1つの処理を実施するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項6】
さらに、ローカルエリアネットワークまたは広域ネットワークとのデータインターフェイスが含まれることを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項7】
画像化モダリティのデータから画像を描くように構成されたプロセッサと、
患者の動きを検出するセンサと、
患者の動きの影響について画像を補正するように構成されたプロセッサと、
患者モニタと、
血糖分析装置と、
血液分析装置と、
画像融合ユニットと
から選択された3つ以上の装置が含まれることを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項8】
検査台上に患者を位置決めするステップと、
患者を識別するステップと、
患者モニタのセンサを取り付け患者パラメータを測定して記録するステップと、
画像化モダリティを利用して患者の一部のコンピュータ断層撮影画像を得るステップと、
患者の少なくとも一部の画像を再構成するステップと、
モニタまたはプロジェクタによって画像を表示するステップと
を含むことを特徴とする脳卒中診断方法。
【請求項9】
画像化モダリティはCアーチX線装置であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
画像化モダリティは、コンピュータ断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像化装置(MRI)、陽電子放出型断層撮影装置(PET)、単一光子放出型コンピュータ断層撮影装置(SPECT)、または、超音波装置のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
さらに、患者の動きの影響について画像化モダリティからの画像化データを補正することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
さらに、血液値およびマーカを測定する、あるいは、アクセス可能メモリに既に記憶されているそのようなデータを検索することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
さらに、画像化モダリティから得られた画像データをセグメント化することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
さらに、センサによって得られたデータを通信ネットワークを介して伝送することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項15】
データが、搬送波上の情報を変調することによって伝送されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
患者識別情報を受信し、
患者に取り付けられたセンサから得られた患者パラメータを測定して記録し、
超音波を用いる第1の画像化モダリティから画像データを受信し、
電磁放射を用いる第2の画像化モダリティから画像データを受信し、
補正された受信画像データから患者の少なくとも一部の画像を再構成し、
モニタまたはプロジェクタによって画像を表示する
ように構成されたプロセッサを設けるステップが含まれていることを特徴とする脳卒中診断方法。
【請求項17】
電磁放射を用いる第2の画像化モダリティがCアーチX線装置であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
プロセッサが、マシン可読媒体に記憶された命令によって構成されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
さらに、センサから受信したデータを通信ネットワークを介して伝送することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
さらに、患者の動きに関する情報を受信し、患者の動きについて画像データを補正することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
データが、搬送波上の情報を変調することによって伝送されることを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−73523(P2008−73523A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238778(P2007−238778)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】