説明

DLL回路

【課題】Delay Locked Loop回路(DLL回路)の源クロック停止、動作中の源クロック周波数変化などの異常動作時にも、自動的にリセットを行い、正常ロックさせることが可能な擬似ロック防止回路を提供することを目的とする。
【解決手段】1はチャージポンプ回路、2は位相遅延回路、3は位相比較器、4は位相制御回路、5はリセット回路、8はチャージポンプ電圧比較回路、9は擬似ロック基準電圧発生回路である。ロック周波数による必要電圧は1のチャージポンプの電圧によって決定されるため、このチャージポンプ電圧を8のチャージポンプ電圧比較回路によりモニターし、9の擬似ロック基準電圧発生回路によって生成される、周波数ごとに変化する擬似ロック判定電圧レベル、源クロック停止判定電圧レベルと比較することで擬似ロック、源クロック停止、源クロック周波数変動を認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DLL(Delay Locked Loop)回路におけるクロックの生成技術に関し、特に、DLL回路の擬似ロック防止および源クロック停止や、源クロックの周波数変動といった異常動作時の内部回路状態の自動初期化に有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DLL回路は、位相遅延回路、位相比較器、チャージポンプ、およびループフィルタなどから構成され、クロックの遅延時間をプロセスばらつき、電源電圧および温度などによらず、外部クロックの1周期分遅らせるように働くフィードバックループである。
【0003】
従来のDLL回路を図1に示す。
【0004】
図1において、1はチャージポンプ回路、2は位相遅延回路、3は位相比較器、4は位相制御回路、5はリセット回路である。外部から入力される源クロック(信号A)を、位相遅延回路2により遅延させ、源クロックから遅延した信号を作る(信号B)。一周期前の信号Aと信号Bの位相を、位相比較器3で比較を行い、信号Aの位相が進んでいる場合はUP、信号Bの位相が進んでいる場合はDOWNの信号(信号C)を出力する。このときのUP、DOWN信号は、1のチャージポンプ電圧が高い時に、2の位相遅延回路の遅延量が小さくなる場合であり、1のチャージポンプ電圧が低い時に、2の位相遅延回路の遅延量が小さくなるように設計された場合は、UP、DOWNの極性が反転することになる。3の位相比較器からUP信号が出力された場合は、1のチャージポンプ回路にUP信号が出力される間、定電流源からの電流を流し、電圧(信号D)として位相情報を蓄積する。3の位相比較器からDOWN信号が出力された場合は、1のチャージポンプ回路からDOWN信号が出力される間、定電流源で電流を引き出す。1のチャージポンプ回路の電圧(信号D)の値を4の位相制御回路に入力し、遅延回路2の遅延量を制御する。信号Aと信号Bの位相がそろった時に、UP、DOWNの信号は出力されなくなり、信号Dの電荷の出し入れはストップする。信号Dの電荷の出し入れがストップした状態をDLLのロック状態と呼ぶ。
【0005】
回路を初期状態にする場合は外部からのリセット制御(信号E)を入力することにより5のリセット回路を制御し、強制初期化をかける。
【0006】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−159822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
DLL回路は外部からの源クロックの入力信号と一周期分遅らせたクロックの位相をロックさせ、必要な位相の信号を得る回路である。遅延回路例を図2に、源クロックの入力信号と遅延素子最終段であるN段出力のクロックの位相がロックした状態を図3に示す。図のように各遅延素子からは外部から入力した源クロックの周期を遅延素子数で割った時間ごとに、源クロックから遅延して出力される。位相遅延回路により遅延されるクロックが、源クロックに対して、大きく遅延した場合、図4に示すように本来は一周期前の位相とロックすべきところを、二周期前の源クロックとロックするといった、擬似ロックが発生する。さらに遅延回路により、大きく遅延した場合は三周期前、四周期前の位相とロックを起こす擬似ロックも発生する。
【0008】
また、源クロックが停止した場合は、図5に示すように、停止後に遅延回路の最終段出力との比較相手となるべき源クロックが存在しないため、位相比較器からの出力信号は必ず、位相を遅らせる信号が出力される。このため、源クロックが停止した場合は、DLLのロックが外れ、大きく位相が遅れる状態になる。このため、再度クロックが再開した場合でも、擬似ロック状態からスタートするため、位相がロックされることはなくなる。また図6のように、遅延手段として、遅延回路を構成する電流量をコントロールして遅延量を変化させる回路をもつような場合、位相を大きく遅らせる設定になった場合は、電流が枯れてしまい、源クロックの入力が入った場合においても、遅延回路でクロックが伝播しなくなり、遅延回路最終段からクロックが出力されることがなくなる弊害も発生する。
【0009】
また、ある周波数レンジで駆動可能である設計を行ったDLL回路である場合は、源クロックがDLL回路動作中に周波数を変化する可能性がある。源クロックの周波数が変化した場合は、周波数が遅くなる場合は、変化後の周波数にロックすることが可能であるが、2倍以上に周波数が早くなる場合、擬似ロックが発生することになる。
【0010】
擬似ロックを解決する手段として図7の従来例2に示す。
【0011】
図7において1はチャージポンプ回路、2は位相遅延回路、3は位相比較器、4は位相制御回路、5はリセット回路、6は遅延検出回路、7は擬似ロック防止回路である。擬似ロックが発生した場合と、正常ロックの場合では、2の位相遅延回路の各遅延素子から出力される信号の状態が異なる。この各遅延素子からの出力される信号の状態が、擬似ロックのパターンであることを、6の遅延検出回路を用いて検出し、正常ロック状態か擬似ロック状態かを判断する。その結果を7の擬似ロック防止回路に入力し、擬似ロック発生時は、3の位相比較器のUP、DOWN信号を制御することで、1のチャージポンプ電圧を制御し、正常ロックさせることができる。
【0012】
しかし、上記擬似ロック防止の従来例2においても、四つの課題がある。
【0013】
一つ目に源クロックが停止した場合、3の位相比較器にクロック入力がなくなるため、正常ロックから必ず外れる。この時、各遅延素子から出力される信号の状態は、6の遅延検出回路にて判断するべき、擬似ロックの信号のパターンとは異なるため、擬似ロックであることを検出することが不可能である。また、二つ目に、源クロックの周波数が変化した場合においても、各遅延素子から出力される信号の状態は、6の遅延検出回路にて判断するべき、擬似ロックの信号のパターンとは異なるため、擬似ロックであることを検出することが不可能である。三つめにこれらの異常動作時は外部からのリセット信号を与えることで、内部状態を初期状態にする必要がある。また、四つ目に6の遅延検出回路の構成が、各遅延素子出力のパターンを検出するものであるため、検出回路数は遅延素子数分必要であることから、DLLの2の位相遅延回路を構成する遅延素子を増やすとその分、6の遅延検出回路の回路規模が増大する。
【0014】
そこで、本発明では、源クロック停止や、源クロックの周波数が変化した場合の自動リセット機構を含む。DLL回路の擬似ロック防止回路を小規模回路にて実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するために、本発明は、図8に示すようにロック周波数とチャージポンプの電圧は一意に決定されるため、このチャージポンプ電圧をモニターすることで、正常ロックであるか、擬似ロックであるかを確認する方法を用いる。擬似ロックは、内部遅延クロックが、2周期以上源クロックから遅延した場合に発生するため、擬似ロック判定基準電圧レベルを、ロックすべき周波数の半分の周波数の時にロックするチャージポンプ電圧よりも、ロックすべき周波数の時のチャージポンプ電圧側に設定すればよい。ある周波数レンジ幅をカバーするDLL回路を構成させたい場合は、この擬似ロック判定基準電圧レベルを、周波数に応じて変化させるように設計すると、どの周波数で動作しても擬似ロックを判定することが可能である。擬似ロックが発生したと判断した場合は強制的に位相比較器のUP、DOWN出力を反転させ、所望の電圧に収束するよう導く。また、強制的に初期値にリセットする方法でも擬似ロックを回避できる。
【0016】
また、源クロック停止時は、位相比較器からの出力信号は必ず位相を遅らせる信号が出力される。そのため、チャージポンプ電圧は常に遅延を遅らせる方向に変化するため、源クロック停止判定基準電圧レベルはDLL仕様上最も周波数の遅い周波数がロックするべきチャージポンプ電圧より、マージンを持たせ、若干遅い周波数でロックすべきチャージポンプ電圧に設定するとよい。この電圧は源クロック周波数にはよらないため、一定電圧に設定してもよい。チャージポンプ電圧が源クロック停止判定基準電圧を超えて、より遅延量が大きくなる方向へ変化した場合は、リセット回路を制御し、自動リセットすることで源クロックの再入力待ち状態を作る。
【0017】
また、源クロックの周波数変化時は、擬似ロック判定基準電圧レベルを、周波数に応じて変化させるように設計することにより、擬似ロックを回避できる。
【0018】
これらの擬似ロック判定基準電圧レベルや源クロック停止判定基準電圧とチャージポンプ電圧とを比較することで、擬似ロック、源クロック停止、源クロック周波数変動が発生していることを判定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、DLL回路において、必要な位相からはずれた場所での位相ロック(擬似ロック)が発生した場合は強制的に位相比較器の出力を遅延回路の遅延が少なくなるようにする信号を出力させ、所望の電圧に収束するよう導く。また、強制的に初期値にリセットする方法でも擬似ロックを回避できる。
【0020】
外部からの源クロックが停止した場合は、必ず、チャージポンプ回路が放電(充電)状態で固定され、チャージポンプ電圧はクロック停止判定電圧レベルを下回る(上回る)ため、源クロックが停止したことを認識し、回路内部状態を初期状態にリセットし、再度クロックが再開したときに自動的に位相ロックをスタートさせることが可能である。
【0021】
外部からの源クロックの周波数が変化した場合は、擬似ロック判定電圧が自動的に変化するため、擬似ロックを防ぐことができる。
【0022】
異常動作時外部からのリセット制御の必要がなくなる。
【0023】
必要回路がチャージポンプ電圧比較回路、周波数可変擬似ロック判定電圧発生回路のみであり、回路規模が小さい。かつ、遅延素子を増やしても回路規模が大きくなることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明において、擬似ロックを防止することが可能である。さらにこのDLL回路は、源クロックの停止、源クロックの周波数変化の異常状態が発生したときは、自動的に初期化させることが可能であり、外部からのリセットのシーケンスが不要となる。また、また、擬似ロック判定回路はチャージポンプ部に一つだけ必要であるのみであるため、回路規模は小さく、かつ、位相遅延回路の遅延素子を増やした場合でも、擬似ロック防止用回路規模が大きくなることはない。
【0025】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図9は本発明の一つの実施の形態における擬似ロック防止DLL回路の構成図を示すものである。
【0027】
図9において、1はチャージポンプ回路、2は位相遅延回路、3は位相比較器、4は位相制御回路、5はリセット回路、8はチャージポンプ電圧比較回路、9は擬似ロック基準電圧発生回路である。外部から入力される源クロック(信号A)を、位相遅延回路2により遅延させ、源クロックから遅延した信号を作る(信号B)。一周期前の信号Aと信号Bの位相を、位相比較器3で比較を行い、信号Aの位相が進んでいる場合はUP、信号Bの位相が進んでいる場合はDOWNの信号(信号C)を出力する。このときのUP、DOWN信号は、1のチャージポンプ電圧が高い時に、2の位相遅延回路の遅延量が小さくなる場合であり、1のチャージポンプ電圧が低い時に、2の位相遅延回路の遅延量が小さくなるように設計された場合は、UP、DOWNの極性が反転することになる。3の位相比較器からUP信号が出力された場合は、1のチャージポンプ回路にUP信号が出力される間、定電流源からの電流を流し、電圧(信号D)として位相情報を蓄積する。3の位相比較器からDOWN信号が出力された場合は、1のチャージポンプ回路からDOWN信号が出力される間、定電流源で電流を引き出す。1のチャージポンプ回路の電圧(信号D)の値を4の位相制御回路に入力し、遅延回路2の遅延量を制御する。信号Aと信号Bの位相がそろった時に、UP、DOWNの信号は出力されなくなり、信号Dの電荷の出し入れはストップする。また、8のチャージポンプ電圧比較回路により信号Dと9の擬似ロック基準電圧発生回路の出力電圧を比較する。図8に示すようにロック周波数とチャージポンプの電圧は一意に決定されるため、このチャージポンプ電圧をモニターすることで、正常ロックであるか、擬似ロックであるかが確認できる。擬似ロックは、内部遅延クロックが、2周期以上源クロックから遅延した場合に発生するため、擬似ロック判定基準電圧発生回路の出力電圧レベルを、ロックすべき周波数の半分の周波数の時にロックするチャージポンプ電圧よりも、ロックすべき周波数の時のチャージポンプ電圧側に設定すればよい。ある周波数レンジ幅をカバーするDLL回路を構成させたい場合は、この擬似ロック判定基準電圧レベルを、周波数に応じて変化させるように設計すると、どの周波数で動作しても擬似ロックを判定することが可能である。図10は本発明の一つの実施の形態におけるチャージポンプ電圧比較回路の構成図を示すものである。
【0028】
1はチャージポンプ回路、3は位相比較器、10はコンパレーター、9は擬似ロック基準電圧発生回路、11は位相比較器制御回路である。
【0029】
10のコンパレーターの入力には、1のチャージポンプ回路と9の擬似ロック基準電圧発生回路がそれぞれ接続され、1と9の電圧を比較する形をとる。1の電圧が高い場合は、10のコンパレーターの出力はLレベルとなる。9の電圧が1の電圧を上回ったとき、10のコンパレーターの出力は初めてHレベルとなる。10のコンパレーター出力は、11の位相比較器制御回路に入力し、位相比較器の出力を遅延クロックの位相を早める方向の出力を強制的に出力させる。
【0030】
図11に位相比較器制御回路の構成図を示す。
【0031】
2は位相遅延回路、3は位相比較器、8はチャージポンプ電圧比較回路、12はD−FF回路、13はインバーター、14はNAND回路、15はAND回路である。
【0032】
8のチャージポンプ電圧比較回路は二段のD−FFに接続される。D−FFのクロック入力は、源クロックを13のインバーターにて反転させたものを入力する。初段のD−FFの出力と、二段目のD−FF反転出力を14のNAND回路に入力する。この接続により、チャージポンプ電圧比較回路で擬似ロック電圧になったと判定された信号を源クロックの1T分の幅だけLとなる信号にすることができる。このNAND回路の出力は3の位相比較器に入力される、源クロックのラインに、15のAND回路を通して入力する。これにより、8のチャージポンプ電圧比較回路が擬似ロック電圧を判定した時に、3の位相比較器に入力される、源クロック側の信号を1T分マスクすることができる。これによって、位相比較器は擬似ロックから正常ロックへと移行することができる。3の位相比較器の源クロック側のみAND回路を挿入すると、源クロック側だけの信号遅延が発生するため、2の位相遅延最終段から3の位相比較器の間にも同サイズのAND回路を挿入し、片側入力はH固定にする。これにより、挿入したAND回路の遅延ずれを解消することができる。
【0033】
次に、源クロックが停止した場合の検知回路について説明する。図12に源クロック停止した場合の検知回路を加えた本発明の一つの実施の形態におけるチャージポンプ電圧比較回路の構成図を示すものである。
【0034】
1はチャージポンプ回路、3は位相比較器、5はリセット回路、10はコンパレーター、12はD−FF回路、9は擬似ロック基準電圧発生回路、15はAND回路、16は遅延素子である。
【0035】
10のコンパレーターの入力には、1のチャージポンプ回路と9の擬似ロック基準電圧発生回路がそれぞれ接続され、1と9の電圧を比較する形をとる。1の電圧が高い場合は、10のコンパレーターの出力はLレベルとなる設計とする。9の電圧が1の電圧を上回ったとき、10のコンパレーターの出力は初めてHレベルとなる。10のコンパレーター出力は12のD−FF回路の入力に接続されるが、源クロックは停止しているため、12のD−FF回路はラッチされず、D−FF回路の出力のポイントFはL、反転出力のポイントGはHのままである。10のコンパレーター出力は、あわせて、16の遅延素子に入力される。16により遅延されたコンパレーターの出力Hは、15のAND回路の入力に接続される。ポイントGとポイントHが同時にHとなったとき、5のリセット回路にリセット信号を与え、回路内部を初期状態にする。
【0036】
源クロック停止した場合の検知回路を加えた本発明の一つの実施の形態におけるチャージポンプ電圧比較回路において、源クロックが停止せず、擬似ロックが発生したときの説明をする。9の電圧が1の電圧を上回ったとき、10のコンパレーターの出力は初めてHレベルとなる。10のコンパレーター出力は12のD−FF回路の入力に接続される、D−FF回路の出力ポイントFはHとなる。また、D−FF回路の反転出力ポイントGはLとなる。10のコンパレーター出力は、あわせて、16の遅延素子に入力される。16により遅延されたコンパレーターの出力は、15のAND回路の入力に接続される。10のコンパレーター回路がL→Hとなった時、D−FF回路の反転出力ポイントGはH→Lとなり、また、ANDに入力されるポイントHのコンパレーター出力はL→Hとなるため、Hの期間を共有しない設計にすれば、5のリセット回路は機能しない。Hの期間を共有しないために、16の遅延素子を設置する。12のD−FF回路の出力は源クロックに同期しているため、10のコンパレーターの出力値が変化した後、最大1T後にD−FF回路の出力が変化する。そのため、15のAND回路に入力するポイントHでのコンパレーター出力は、ポイントGの変化点よりも遅くする必要があるため、16の遅延素子にて、駆動周波数内で最も周波数が遅い場合を考慮した、1T分の遅延が必要である。D−FF回路の出力ポイントFはHとなるため、擬似ロック検知信号は、3の位相比較器に入力し、位相比較器の出力を遅延クロックの位相を早める方向の出力を強制的に出力させる。以上のように、源クロックが停止した場合の検知回路を加えたチャージポンプ電圧比較回路においても、擬似ロック検知機能は問題なく動作する。
【0037】
また、源クロックが停止した場合の検知回路の、第二の実施の形態として、図13の源クロック停止した場合の検知回路を加えた本発明の一つの実施の形態におけるチャージポンプ電圧比較回路2を示す。前述の図中10のコンパレーター出力を直接5のリセット回路に接続する。擬似ロック発生した場合、源クロック停止した場合、源クロック周波数が変化した場合、どの異常状態を判定した場合においても強制的に内部回路を初期化することでも、問題を解決することが可能である。
【0038】
図14は本発明の一つの実施の形態における擬似ロック判定電圧発生回路の構成図を示すものである。
【0039】
17はカレントミラー回路、18は周波数電流可変回路、19は定電圧発生回路である。
【0040】
17のカレントミラー回路はトランジスタQ1のゲートとドレイン、Q1と同一サイズのトランジスタQ2のゲートを接続して形成されており、前述接続箇所は19の定電圧発生回路に接続される。また、18の周波数電流可変回路は定電圧発生回路19とアナログスイッチSW1を介してグランドとの間にコンデンサC1が設置され、定電圧発生回路19からアナログスイッチSW2を介してグランドに接続されている。また、アナログスイッチSW3、アナログSW4、コンデンサC2も同一構成にて、定電圧発生回路19に接続されている。アナログスイッチSW1はクロックによりON、OFFしアナログスイッチSW1がONした時のみ定電圧発生回路19からコンデンサC1に電荷がチャージされる。アナログスイッチSW2はクロックの反転信号によりON、OFFし、アナログスイッチSW1がOFFの時に、アナログSW2がONとなり、コンデンサC1にチャージされた電荷をグランドへ放電する。アナログスイッチSW3はクロックの反転信号によりON、OFFしアナログスイッチSW3がONした時のみ定電圧発生回路19からコンデンサC2に電荷がチャージされる。アナログスイッチSW4はクロックの反転信号によりON、OFFし、アナログスイッチSW3がOFFの時に、アナログSW4がONとなり、コンデンサC2にチャージされた電荷をグランドへ放電する。コンデンサC1とC2への電荷の充放電の時間的積分量により、18の周波数電流可変回路に流れる電流は変化するため、アナログスイッチSW1とSW2とSW3とSW4をON、OFFさせる周波数により電流は可変する。アナログスイッチSW1とSW2とSW3とSW4に接続するクロックは、DLL回路外部源クロックより生成することにより、DLL回路の周波数に応じた電流I1を生成することができる。定電圧発生回路に接続された抵抗R1は定電圧発生回路の電圧と抵抗値によりR1に流れる電流I2が決定する。電流I1とI2の合計電流I3はカレントミラー回路17により抵抗R2に流れる。I3とR2の抵抗値により出力に発生する電圧が決定する。R1、R2、C1、C2の定数により、周波数により可変する任意の出力電圧を得ることができる。
【0041】
よってこの擬似ロック判定電圧発生回路を使用することにより、ある周波数レンジを持ったDLL回路に対応した、擬似ロック防止回路が形成でき、また、源クロックの周波数が変化した場合も、基準電圧が変化するため、擬似ロック防止効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、DLL回路において、必要な位相からはずれた場所での位相ロック(擬似ロック)が発生した場合は強制的に位相比較器の出力を遅延回路の遅延が少なくなるようにする信号を出力させ、所望の電圧に収束するよう導く。また、強制的に初期値にリセットする方法でも擬似ロックを回避できる。
【0043】
外部からの源クロックが停止した場合は、必ず、チャージポンプ回路が放電(充電)状態で固定され、チャージポンプ電圧はクロック停止判定電圧レベルを下回る(上回る)ため、源クロックが停止したことを認識し、回路内部状態を初期状態にリセットし、再度クロックが再開したときに自動的に位相ロックをスタートさせることが可能である。
【0044】
外部からの源クロックの周波数が変化した場合は、擬似ロック判定電圧が自動的に変化するため、擬似ロックを防ぐことができる。
【0045】
異常動作時外部からのリセット制御の必要がなくなる。
【0046】
必要回路がチャージポンプ電圧比較回路、周波数可変擬似ロック判定電圧発生回路のみであり、回路規模が小さい。かつ、遅延素子を増やしても回路規模が大きくなることはない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来例のDLL回路の構成図
【図2】本発明の一つの実施の形態の位相遅延回路の構成図
【図3】DLL回路の正常ロックを示す図
【図4】DLL回路の擬似ロック(2周期ロック)を示す図
【図5】DLL回路のクロック停止時を示す図
【図6】本発明の一つの実施の形態の電流位相調整機能つき位相遅延回路の構成図
【図7】従来例2の擬似ロック防止機能つきDLL回路の構成図
【図8】DLL回路のロック周波数とチャージポンプ電圧の関係を示す図
【図9】本発明の一つの実施の形態の擬似ロック防止DLL回路の構成図
【図10】本発明の一つの実施の形態におけるチャージポンプ電圧比較回路の構成図
【図11】位相比較器制御回路の構成図
【図12】本発明の一つの実施の形態における源クロック停止した場合の検知回路を加えたチャージポンプ電圧比較回路の構成図
【図13】本発明の一つの実施の形態におけるチャージポンプ電圧比較回路の構成図(2)
【図14】本発明の一つの実施の形態における擬似ロック判定電圧発生回路の構成図
【符号の説明】
【0048】
1 チャージポンプ回路
2 位相遅延回路
3 位相比較器
4 位相制御回路
5 リセット回路
6 遅延検出回路
7 擬似ロック防止回路
8 チャージポンプ電圧比較回路
9 擬似ロック基準電圧発生回路
10 コンパレーター
11 位相比較器制御回路
12 D−FF回路
13 インバーター
14 NAND回路
15 AND回路
16 遅延素子
17 カレントミラー回路
18 周波数電流可変回路
19 定電圧発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力される源クロックと、遅延素子により源クロックをある時間遅延させたクロックを生成する遅延手段と、前記遅延手段により遅延したクロックと源クロックの位相差を検出する位相検出手段と、前記位相検出手段により検出した位相差を電荷情報に変換し位相差に相当する電荷の出し入れを行う手段と、前記電荷の出し入れを行う手段により発生する電荷を積分し、電圧に変換する電圧変換手段と、前記電圧変換手段の電圧から前記遅延手段の遅延量を制御する遅延量制御回路をもつDLL回路であって、前記電圧変換手段の電圧値が異常動作を判定する閾値電圧を超える電圧範囲にないかを検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段により異常動作の電圧閾値を超えたと判定された場合に、前記位相差に相当する電荷の出し入れを行う手段の信号を強制的に制御し、前記遅延する手段の遅延量を少なくする方向にする手段をもつことを特徴とする擬似ロック防止DLL回路。
【請求項2】
請求項1に記載のDLL回路であって、前記電圧検出手段により異常動作の電圧閾値を超えたと判定された場合に、内部回路を初期状態にする手段をもつことを特徴とする擬似ロック防止DLL回路。
【請求項3】
請求項1または、請求項2に記載の半導体集積回路であって、前記電圧検出手段の異常動作の閾値電圧は、外部から入力される源クロックの周波数により変動することを特徴とする擬似ロック防止DLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−259025(P2007−259025A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80294(P2006−80294)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】