説明

ECU基板接続構造

【課題】 複数のECU基板を積層するように配置してECU基板の設置スペースを縮小すると共に、各ECU基板間の接続を一括して接続できるようにし、且つ配索系統別に分類して配置した端子接続部に配索系統別のワイヤハーネスに接続させてコネクタ数を大幅に低減し、且つ容易な配索を可能とするECU基板接続構造を提供すること。
【解決手段】 接続基板23は、その電気回路パターン29と電気的に接続され且つ、パッド29aが接続されるECU基板21の接続部27の配索系統ごとに分類されながら当該配索系統ごとに纏めて配置された端子接続部29bを有する。ECU基板接続構造では貫通穴25aがそれぞれ整列されながら複数のECU基板21が積層されるようにそれらのベースボード25がそれぞれ間隔をあけて並べられ、貫通穴25aそれぞれに接続基板23が挿通されることにより、接続基板23のパッド29aが複数のECU基板21の接続部27に一括して接触し、電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECU基板(即ち、電子制御ユニット基板)の接続構造に関し、より詳細には、積層されるように間隔をあけて配設された複数のECU基板を電気的に接続させるECU基板接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、多数の電装品および該電装品を制御する電子制御ユニット(以下、『電子制御ユニット』或いはその略称として『ECU』と記述する。)が各部に分散して搭載されている。各ECUは、ECUが搭載された電気回路基板(換言すれば、ECU基板)が個別に収容ケースに収容されて適宜、車両の各部に配置される。自動車等の車両の高付加価値化に伴ってECUも増加する傾向にあるため、ECUの設置スペースが増大すると共に、各電装品とECUを接続するワイヤハーネスおよびこれらを接続させるためのコネクタ数が著しく増加している。このため、コネクタ嵌合およびワイヤハーネスの配索が複雑化し、更にまたその配索空間も増大している。このように、ECU設置のために必要となる空間は、ますます高まる自動車等の車両の高付加価値化と共に増大し続けている。
【0003】
一方、快適な車室内空間を提供できるように車室内空間を広げることが強く要求されており、車室内空間の確保とECUの設置スペース、ワイヤハーネスの配索空間の確保との相反する問題の解決が急務となっている。
【0004】
従来、複数のECU基板を積層状態で配置し、隣接して配置されたECU基板同士を基板間コネクタで接続するようにしたものが知られている。具体的には、図12に示されるように、第1ECU基板1および第2ECU基板2にそれぞれ雄基板間コネクタ6および雌基板間コネクタ7を設け、雄基板間コネクタ6と雌基板間コネクタ7を嵌合させて集積配置した複数のECU基板1,2を接続し、設置スペースの削減を図ったものが知られている。
【0005】
また、複数のECU基板を積層させてケース内に収容し、ECUの設置スペースを低減するようにしたECU集中収容箱が知られている(特許文献1参照)。ECU集中収容箱は、複数のECU基板をケース内に積層状態で収容すると共に、それぞれのECU基板の一端に形成された導体端部にバスバーを接続し、バスバーによって各ECU基板の共通回路となるバッテリー回路、アクセサリー回路、イグニッション回路、アース回路を構成して、複数のECU基板の共通回路を一括して接続している。また、各ECU基板の他端には、各部に配索されるワイヤハーネスのコネクタに接続される直付けコネクタが固定されている。
【特許文献1】特開2003−304083号公報(第5−6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12に示される積層配置され、基板間コネクタによって互いに接続されたECU基板によると、隣接するECU基板の間隔(換言すれば、ECU基板の集積密度)は、基板間コネクタの高さによって制限されることになり、ECU基板に搭載された電子部品の高さが低くても、それ以上接近させて配置することができなかった。即ち、ECU基板の間隔を狭めてECU基板の設置スペースを十分に小さくすることができなかった。
【0007】
また、特許文献1に開示されているECU集中収容箱は、複数のECU基板をケース内に積層状態で収容すると共に、各ECU基板をバスバーで接続させて共通回路を形成している。従って、ECUを分散配置し、ワイヤハーネスによって各ECU間を接続させた場合と比較すると、設置スペースおよび接続コネクタ数を低減させる効果がある。しかし、図13に示されるように、一配索系統のワイヤハーネスが複数のECU基板に接続される場合(同一の制御信号等が複数の制御に使用されるので、通常このような接続がなされる。)、同一の配索系統であるにも拘わらず、それぞれのECU基板に接続するための多数のコネクタが必要となる問題があった。また、これにより、コネクタ接続が複雑となってコネクタ接続に多くの工数を要するばかりでなく、誤接続(誤配索)の虞があった。また、ワイヤハーネスも、複数のコネクタに分岐させた複雑なものとなり、製作し難い。
【0008】
具体的には、図13に示されるように、例えば、インストルメントパネル系のワイヤハーネス10が第1ECU基板1、第2ECU基板2および第3ECU基板3の3枚のECU基板に接続され、フロア系のワイヤハーネス11が第2ECU基板2および第3ECU基板3の2枚のECU基板に接続され、エンジンメイン系のワイヤハーネス12が第2ECU基板2、第3ECU基板3および第4ECU基板4の3枚のECU基板に接続される。従って、ECU基板1,2,3,4およびワイヤハーネス10,11,12は、それぞれコネクタを設ける必要があり、コネクタ数が多くなるばかりでなく、嵌合させるべきコネクタ同士を探して接続させる煩雑な接続作業が要求される。
【0009】
また、このような煩雑な接続作業を容易化するため、図14に示されるように、同一のECU基板5に異なる系統のワイヤハーネス10,11,12のコネクタ13,14,15を接続する場合、それぞれのコネクタ13,14,15をコネクタケース16に嵌合させて合体させ、一括してECU基板5に接続するようにしたものも提案されている。しかし、ワイヤハーネス10,11,12およびECU基板5のコネクタ数はこれにより低減することはなく、組立てラインで各コネクタ13,14,15をコネクタケース16に組み付けて合体させる新たな作業が発生することになり、更なる改善が要望されていた。
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のECU基板を積層するように配置してECU基板の設置スペースを縮小すると共に、各ECU基板間の接続を一括して接続できるようにし、且つ配索系統別に分類して配置した端子接続部に配索系統別のワイヤハーネスに接続させてコネクタ数を大幅に低減し、且つ容易な配索を可能とするECU基板接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明に係るECU基板接続構造は、下記(1)、(2)、(3)、(4)、および(5)を特徴としている。
(1) 回路パターンを有するベースボードと、当該ベースボードを貫通する貫通穴と、前記回路パターンに電気的に接続されるように前記ベースボードに搭載された電子制御ユニットと、前記回路パターンに電気的に接続されると共に前記貫通穴へ延設された複数の接続部と、を有するECU基板を複数備え、
電気回路パターンと、前記ECU基板の接続部にそれぞれ電気的に接続するために前記電気回路パターン上に形成された複数のパッドと、前記電気回路パターンと電気的に接続され且つ、前記パッドが接続される前記ECU基板の接続部の配索系統ごとに分類されながら前記配索系統ごとに纏めて配置された端子接続部と、を有する接続基板を更に備え、
前記貫通穴がそれぞれ整列されながら複数の前記ECU基板が積層されるようにそれらの前記ベースボードがそれぞれ間隔をあけて並べられ、前記貫通穴それぞれに前記接続基板が挿通されることにより、前記接続基板のパッドが複数の前記ECU基板の接続部に一括して接続されること。
(2) 上記(1)の構成のECU基板接続構造の前記接続基板は、複数層に電気回路パターンが積層されて形成された多層基板であること。
(3) 上記(1)または(2)の構成のECU基板接続構造の前記接続部が、前記貫通穴を形成する前記ベースボードの内周面から前記貫通穴内に部分的に突出するように配置された導電性弾性部材であること。
(4) 上記(1)または(2)の構成のECU基板接続構造の前記接続部は中空コネクタであり、当該中空コネクタは、挿通穴が形成された枠形ハウジングおよび前記挿通穴を画成する前記枠形ハウジングの内周面から前記挿通穴内に突出するように配置された電気接触部を有し、且つ前記挿通穴が前記貫通穴に対して整列されるように前記ベースボードに固定されること。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかの構成のECU基板接続構造が、前記接続基板の前記端子接続部と、分散配置された電装品とを、それぞれ前記配索系統ごとに独立して接続するための複数のワイヤハーネスを更に備えていること。
【0012】
上記(1)の構成のECU基板接続構造によれば、貫通穴がそれぞれ整列されながら、複数のECU基板が積層されるようにそれらのベースボードがそれぞれ間隔をあけて並べられ、そして貫通穴それぞれに接続基板が挿通されることにより、接続基板のパッドが複数のECU基板の接続部に一括して接続されるので、各ECU基板のコネクタを大幅に削減することができる。従って、複数のECU基板の貫通穴に接続基板を挿通させるだけの簡単な作業により、複数のECU基板の接続部の接続作業を短時間で行なうことができる。また、部品点数(特に、コネクタ数)を削減して製作費を低減させると共に、ECU基板の重量を軽減することができる。これによって、配索の作業工数を大幅に低減させ、且つコネクタの誤嵌合、即ち、誤配索を確実に防止することができ、信頼性の高い配索を行なうことができる。尚、部品点数の削減、配索作業工数の低減、および誤配索の防止効果は、接続されるべきECU基板の枚数が増加すればする程、その効果が顕著となる。
また、積層するように並べられたECU基板(ベースボード)の間隔は、隣接するECU基板同士を基板間コネクタで接続し、ECU基板の間隔が基板間コネクタの高さにより制限されていた従来のものと比較して、電子制御ユニットを構成する電子部品の高さのみによって制限されるようになるので、ECU基板の間隔を最小間隔として配置することができる。従って、狭いスペースにより多くのECU基板を集中して配置することができる。これによって、高機能化されているにも拘わらず車室内空間を広げて快適な車室内空間を確保することができる。
更に、端子接続部が、配索系統ごとに分類され且つ纏められて接続基板に配置されているので、配索系統ごとに一本ずつ準備されたワイヤハーネスを接続基板の端子接続部に接続するだけで極めて簡単に、且つ整理された状態でワイヤハーネスを接続することができる。従って、1本のワイヤハーネスが分岐されて複数のコネクタが設けられた複雑な形状のワイヤハーネスが不用となり、ワイヤハーネスの製作が容易となる。更に、1つの配索系統の配索は、1つのコネクタを接続基板の端子接続部に接続させるだけで極めて簡単に行なうことができ、複数のコネクタを区分けしながらそれぞれのECU基板に接続する煩雑な作業がなくなる。これにより、コネクタの誤組付けが確実に防止され、且つワイヤハーネスを整理した状態で配索することができる。また、ワイヤハーネスが整理した状態で配索されているので、以後のメンテナンスも容易となる。
上記(2)の構成のECU基板接続構造によれば、接続基板は複数層に電気回路パターンが積層された多層基板により構成されているので、複数のECU基板の接続部を配索系統ごとに分類し、その配置を入れ替え、配索系統ごとに纏めて端子接続部を一箇所に配置するために複雑な回路構成が必要となっても、この要求を満たす電気回路パターンを支障なく形成することができる。
上記(3)の構成のECU基板接続構造によれば、接続部が、貫通穴を形成するベースボードの内周面から貫通穴内に部分的に突出するように配置された導電性弾性部材であるので、接続部をベースボードの板厚と略同じ厚さに形成することができる。これにより、接続部は、積層されるように配置されたECU基板の間隔の制約事項とはならず、複数のECU基板を狭い間隔で配置することができる。また、接続部の構造が簡素化され、安価に製作することができる。更に、パッドは、導電性弾性部材の弾性力によって押圧されるので、自動車等の車両の走行に伴う振動があっても電気的接続を確実に維持することができる。
上記(4)の構成のECU基板接続構造によれば、接続部は、挿通穴が形成された枠形ハウジングおよび挿通穴を画成する枠形ハウジングの内周面から挿通穴内に突出するように配置された電気接触部を有する中空コネクタであり、当該中空コネクタはその挿通穴をECU基板の貫通穴に一致させながら(即ち、挿通穴がECU基板の貫通穴に対して整列されながら)ベースボードに配置されるので、各ECU基板に共通した形状の中空コネクタを大量生産して予め準備しておくことにより、安価な中空コネクタを用いて容易に接続部を形成することができる。
上記(5)の構成のECU基板接続構造によれば、配索系統ごとに分類されて配置された接続基板の端子接続部と、各部に分散配置された電装品とは、それぞれ配索系統ごとに独立して設けられたワイヤハーネスによって接続されるので、配索系統ごとに一本のワイヤハーネスを端子接続部に接続するだけで、ワイヤハーネスを極めて簡単且つ整理された状態で接続することができる。これにより、コネクタの誤組付けを確実に防止することができる。また、ワイヤハーネスは整理された状態で接続されているので、以後のメンテナンスが容易となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コネクタ数を大幅に減少させることができ、且つ多くのECU基板を狭い設置スペースに収容することができる。また、本発明によれば、ワイヤハーネスを系統ごとに整理して配索することができるので配索が容易であり、またワイヤハーネスのコネクタの誤嵌合を防止できるので信頼性の高い配索を行なうことができる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明するが、自動車等の車両に搭載された各種電装品を制御するための電子制御ユニット(ECU)が搭載された複数のECU基板を電気的に接続するのに好適なECU基板接続構造を例にとり説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態であるECU基板接続構造を示す分解斜視図、図2は図1における楕円IIで囲まれた部分の拡大図、図3は図1における楕円IIIで囲まれた部分の拡大図、図4は積層するように並べられた複数のECU基板の貫通穴に接続基板を挿通した後、更に接続基板にワイヤハーネスのエッジコネクタを接続する直前の状態を示す斜視図、図5はECU基板収容箱の斜視図、図6は接続基板の端子接続部の変形例にエッジコネクタが接続される直前の状態を示す斜視図、図7は接続基板の端子接続部の他の変形例にエッジコネクタが接続される直前の状態を示す斜視図、図8は接続基板の製造方法の一例を示す斜視図、図9は接続基板の更なる変形例の斜視図、図10は接続基板の電気回路パターン例を示す平面図、そして図11はECU基板の接続部として中空コネクタを用いたECU基板接続構造の変形例を示す分解斜視図である。
【0017】
図1および図4に示されるように、ECU基板21は、プリント回路基板であり、ベースボード25上に形成された回路パターン26と、当該回路パターン26に電気的に接続されるようにベースボード25上に搭載された各種電子部品によって構成された電子制御ユニット(ECU)20と、を備える。電子制御ユニット20は、ワイヤハーネス31,35,39および接続基板23を介して入力される信号に基づいて制御信号を生成し且つワイヤハーネス31,35,39および接続基板23を介して出力し、車両における各部に分散配置された電装品(不図示)を制御するようになっている。電子制御ユニット20により制御される対象となる機能としては、例えば、車体の傾斜やハンドル操作に応じてヘッドライトの向きを調整するヘッドライト調整機能、自動検知ワイパーの制御を行なうオートワイパー機能、障害物検知を制御するソナー機能、等が挙げられる。複数のECU基板21は、図1および図4に示される実施形態においては、それぞれ機能の異なる4枚(4層)のECU基板21A,21B,21C,21Dからなる。
【0018】
図2に示されるように、各ECU基板21のベースボード25には、同一箇所に矩形内縁部(即ち、内周面)により画成された貫通穴25aがベースボード25の板厚方向に貫通形成されている。貫通穴25aの大きさは、接続基板23の断面輪郭と略同じ大きさとなっており、貫通穴25aに接続基板23が挿通可能である。また、ベースボード25上に形成された回路パターン26の一端26aは、貫通穴25aを囲むように貫通穴25aの矩形内縁部近傍に集積配置されている。貫通穴25a内には、一端が半田付け等により回路パターン26の一端26aに電気的に接続された針金状或いは板状の複数の導電性弾性部材(接続部)27が部分的にベースボード25の板厚方向に延設されて配置されている。
【0019】
ECU基板21と同様に接続基板23もプリント回路基板であるが、接続基板23は、複数層に電気回路パターン29が板厚方向に積層されて形成された、所謂、多層基板であって、接続基板23の表面(片面であっても両面であってもよい)に形成された電気回路パターン29の間隔は、ECU基板21の貫通穴25aに設けられた導電性弾性部材(接続部)27の間隔と同じ間隔となっている。即ち、電気回路パターン29は、接続基板23がECU基板21の貫通穴25aに挿通されたとき、導電性弾性部材(接続部)27にそれぞれ一対一に対応して接続するようになっている。
【0020】
また、図3に示されるように、各電気回路パターン29は、接続基板23の長手方向に所定の間隔で配置され、回路幅が広げられて形成されたパッド29aを備えている。各パッド29aは、複数のECU基板21の導電性弾性部材27(以後、接続部27と記述する。)と一対一で対応し、互いに接触して接続する。尚、長手方向の所定の間隔とは、積層するように並べられた複数のECU基板21のベースボード25の間隔と同じ間隔である。これにより、接続基板23を貫通穴25aに挿通させるだけで、パッド29aを複数のECU基板21の接続部27に一括して接続することができる。また、接続基板23の端部には、電気回路パターン29の回路幅をそれぞれ広げて形成した端子接続部29bが配置されている。つまり、パッド29aおよび端子接続部29bは電気回路パターン29に一体に形成される。各パッド29aは、電気回路パターン29を介して配索系統ごとに分類されて纏められ、所定の端子接続部29bに電気的に導通する。
【0021】
即ち、端子接続部29bは、配索系統(例えば、エンジン系、インストルメントパネル系、フロア系等)ごとに分類され、纏められて接続基板23の端部に配置されている。より具体的には、端子接続部29bは、端子接続部29bに電気的に導通するパッド29aが接触する接続部27の配索系統に応じて、電気回路パターン29により分類され、纏められて接続基板23の端部に配置されている。尚、接続基板23は、多層基板により製作されるので、各パッド29aと端子接続部29bをつなぐ電気回路パターン29が配索系統ごとに分類するために複雑な回路構成となっても、これを満足させる電気回路パターン29を支障なく構成することができる。
【0022】
図1および図4に示されるように、接続基板23の端部(図においては上端)に形成された端子接続部29bは、例えば、エンジン系のワイヤハーネス31のエッジコネクタ33、インストルメントパネル系のワイヤハーネス35のエッジコネクタ37、そしてフロア系のワイヤハーネス39のエッジコネクタ41にそれぞれ接続される。そして、エンジン系のワイヤハーネス31はエンジンルーム(不図示)へ、インストルメントパネル系のワイヤハーネス35はインストルメントパネル(不図示)へ、またフロア系のワイヤハーネス39は車室内(不図示)へ、それぞれ配索される。
【0023】
次に、ECU基板21と電装品との接続について説明する。
尚、貫通穴25aがそれぞれ整列されながら複数のECU基板21A,21B,21C,21Dが積層されるようにそれらのベースボード25をそれぞれ間隔をあけて並べる手段は任意であるが、その手段として例えば図5に示されるECU基板収容箱101を用いると好ましい。ECU基板収容箱101は、収容箱本体103と、図1および図4にも部分的に示される上面カバー(蓋体)53と、を有する。収容箱本体103は、前面および上面が開放された矩形箱であり、その両側壁103aの内面それぞれに4本の溝103bが対向するように形成されている。上面カバー53は、その板厚方向に貫通する挿入スロット53aを備える。上面カバー53は、収容箱本体103に重ね合わされて収容箱本体103の上面を塞ぎ、ねじ等の締結部材(不図示)によって収容箱本体103に固定される。複数のECU基板21A,21B,21C,21Dは、対向配置された四対の溝103bにそれぞれ案内されながら後板103dに当接するまで収容箱本体103に挿入され、収容箱本体103内に収容される。これにより、複数のECU基板21A,21B,21C,21Dが整列され、この際、上面カバー53の挿入スロット53aに対して貫通穴25aがそれぞれ整列されながら複数のECU基板21A,21B,21C,21Dが積層されるようにそれらのベースボード25がそれぞれ間隔をあけて並べられる。そして、接続基板23が、上面カバー53の挿入スロット53aから、ベースボード25の電気回路パターン26が形成された面と交差する方向(より詳細には、該面に直交する方向)に貫通穴25aに収容箱本体103の内底面に当接するまで挿通され、接続基板23と複数のECU基板21A,21B,21C,21Dが電気的に接続される。これにより、接続基板23の複数のパッド29aは、複数のECU基板21A,21B,21C,21Dそれぞれの接続部27に一括して同時に接触し、電気的に接続する。即ち、接続基板23を貫通穴25aに挿通させるだけで、複数のパッド29aと接続部27とをそれぞれ極めて短時間で簡単に接続することができる。
【0024】
そして、ECU基板収容箱101の上面カバー53の挿入スロット53aから外部に突出する接続基板23の端部(上端)に設けられた各端子接続部29bに、エッジコネクタ33,37,41を接続(嵌合)させ、ワイヤハーネス31,35,39をそれらに対応する電装品が装着されたエリアまで配索する(或いは、ワイヤハーネス31,35,39をそれらに対応する電装品に予め電気的に接続しておいてもよい)。接続基板23の端部に設けられた端子接続部29bは、電気回路パターン29によって配索系統ごとに分類され、纏められて配置されているので、それぞれのエッジコネクタ33,37,41が接続されるべき端子接続部29bを容易に識別することができ、確実に所定の端子接続部29bに接続することができる。これにより、ワイヤハーネス31,35,39の接続が簡単になると共に、コネクタ33,37,41の誤嵌合が確実に防止される。
【0025】
尚、図6および図7に示されるように、接続基板23に形成される電気回路パターン29の間隔を狭めて高密度に形成し、且つ端子接続部29bを接続基板23の長手方向にずらして2列に形成すれば、更に省スペースの構成にすることができる。電気回路パターン29は、接続基板23の両面に設け、更に省スペースの構成としてもよいことは言うまでもない。図6に示されるエッジコネクタ33は、操作部43を押圧することにより係止ピン(不図示)を突出させて接続基板23に設けられた係止穴23aに係合させて接続基板23とエッジコネクタ33を確実に結合させるようになっている。また、図7に示されるエッジコネクタ33は、操作部45を押圧することにより係止部(不図示)を接続基板23の係合凹部23bに接続基板23の横方向から係合させて、接続基板23とエッジコネクタ33を確実に結合させるようにしたものである。
【0026】
また、電気回路パターン29が単なる直線等の単純な形状で各パッド29aと端子接続部29bを接続可能な場合、図8に示されるように、接続基板23の数個分となる幅を有する接続基板原板47を製作し、必要に応じて必要回路数の電気回路パターン29を含むように2点鎖線で示すカットラインCLで分割し、接続基板23として用いることもできる。この場合には、より効率的に接続基板23を製作することができ、接続基板23を更に安価に提供することができる。
【0027】
また、図9および図10に示されるように、部分的にパッド29aと接続部27との接続が不要である場合、不要部分の電気回路パターン29を予め削除したパターン形状で接続基板23を製作し、或いは電気回路パターン29の一部を切除することにより適宜必要となる電気回路パターン29を構成するようにしてもよい。また、可能であれば複数の電気回路パターン29を統合してパターン数を削減することもでき、より省スペースとしてもよい。具体的には、図10(a)に示されるように、例えば、第1列の電気回路パターン29−1においては端子接続部29b−1と第4行のパッド29a−14のみが接続され、第2列の電気回路パターン29−2においては第3行のパッド29a−23、第2行のパッド29a−22および第1行のパッド29a−21が接続され、第3列の電気回路パターン29−3においては端子接続部29b−3と第4行のパッド29a−34のみが接続され、第4列の電気回路パターン29−4においては第3行のパッド29a−43と第2行のパッド29a−42が接続されるパターンが必要である場合、図10(b)に示されるように、第1列の電気回路パターン29−1と第2列の電気回路パターン29−2を、また第3列の電気回路パターン29−3と第4列の電気回路パターン29−4を統合して電気回路パターン29B−1、29B−2を形成し、4列の電気回路パターン29(29−1,29−2,29−3,29−4)を2列の電気回路パターン29(29B−1,29B−2)に集約することができ、同一機能を有し且つ更に省スペースの接続基板23Bとすることができる。
【0028】
本実施形態によれば、貫通穴25aがそれぞれ整列されながら複数のECU基板21A,21B,21C,21Dが積層されるようにそれらのベースボード25がそれぞれ間隔をあけて並べられ、そして貫通穴25aそれぞれに接続基板23が挿通されることにより、接続基板23のパッド29aと複数のECU基板21の接続部27とが一括して接続されるので、各ECU基板21のコネクタを大幅に削減することができる。従って、複数のECU基板21の貫通穴25aに接続基板23を串刺し状に挿通させるだけの簡単な作業により、複数のECU基板21の接続部27の接続作業を短時間で行なうことができる。また、部品点数(特に、コネクタ数)を削減して製作費を低減させると共に、ECU基板21の重量を軽減することができる。これによって、配索の作業工数を大幅に低減させ、且つコネクタの誤嵌合、即ち、誤配索を確実に防止することができ、信頼性の高い配索を行なうことができる。尚、部品点数の削減、配索作業工数の低減、および誤配索の防止効果は、接続されるべきECU基板21の枚数が増加すればする程、その効果が顕著となる。
【0029】
また、積層するように並べられたECU基板21(ベースボード25)の間隔は、隣接するECU基板1,2同士を基板間コネクタ6,7で接続し、ECU基板1,2の間隔が基板間コネクタ6,7の高さにより制限されていた従来のものと比較して、電子制御ユニット20を構成する電子部品の高さのみによって制限されるようになるので、ECU基板21の間隔を最小間隔として配置することができる。従って、狭いスペースにより多くのECU基板21を集中して配置することができる。これによって、高機能化されているにも拘わらず車室内空間を広げて快適な車室内空間を確保することができる。
【0030】
更に、端子接続部29bが、配索系統ごとに分類され且つ纏められて接続基板23の端部に配置されているので、配索系統ごとに一本ずつ準備されたワイヤハーネス31,35,39を接続基板23の端子接続部29bに接続するだけで極めて簡単に、且つ整理された状態でワイヤハーネス31,35,39を接続することができる。従って、1本のワイヤハーネスに複数のコネクタが分岐して設けられた複雑な形状のワイヤハーネスが不用となり、ワイヤハーネス31,35,39の製作が容易となる。更に、複数のコネクタを区分けしながらECU基板21にそれぞれ接続する必要がなくなり、1つの配索系統の配索は1つのコネクタ33,37または41を接続基板23の端子接続部29bに接続させるだけで極めて簡単に配索することができる。これにより、コネクタ33,37,41の誤組付けを確実に防止し、且つワイヤハーネス31,35,39を整理した状態で配索することができ、以後のメンテナンスも容易となる。
【0031】
本実施形態によれば、接続基板23は複数層に電気回路パターン29が積層された多層基板により構成されているので、複数のECU基板21の接続部27を配索系統ごとに分類し、その配置を入れ替え、配索系統ごとに纏めて端子接続部29bを一箇所に配置するために複雑な回路構成が必要となっても、この要求を満たす電気回路パターン29を支障なく形成することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、接続部27が、貫通穴25aを形成するベースボード25の内周面から貫通穴25a内に部分的に突出するように配置された導電性弾性部材であるので、接続部27をベースボード25の板厚と略同じ厚さに形成することができる。これにより、接続部27は、積層されるように配置されたECU基板21の間隔の制約事項とはならず、複数のECU基板21を狭い間隔で配置することができる。また、接続部27の構造が簡素化され、安価に製作することができる。更に、パッド29aは、接続部27の弾性力によって押圧されるので、自動車等の車両の走行に伴う振動があっても電気的接続を確実に維持することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、配索系統ごとに分類されて配置された接続基板23の端子接続部29bと、各部に分散配置された電装品とは、それぞれ配索系統ごとに独立して設けられたワイヤハーネス31,35,39によって接続されるので、配索系統ごとに一本のワイヤハーネス31,35または39を端子接続部29bに接続するだけで、ワイヤハーネス31,35,39を極めて簡単且つ整理された状態で接続することができる。これにより、コネクタ33,37,41の誤組付けを確実に防止することができる。また、ワイヤハーネス31,35,39は整理された状態で接続されているので、以後のメンテナンスが容易となる。
【0034】
次に、図11を参照してECU基板接続構造の変形例について説明する。
図11に示されるように、この変形例におけるECU基板21は、接続部27として中空コネクタ55を備える点が、図1、図2および図4に示されるECU基板21と異なり、その他の部分については、同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。尚、図11においては、理解を容易にするために、複数枚が積層するように配置されたECU基板21の内、1枚のECU基板21のみを図示する。
【0035】
中空コネクタ55は、合成樹脂等によって形成され且つ、上下方向に貫通する挿通穴57aを有する枠形ハウジング57と、ECU基板21の回路パターン26と電気的に接続され且つ、挿通穴57aを画成する枠形ハウジング57の内周面から挿通穴57a内に突出するように配置された電気接触部59と、を有する。中空コネクタ55は、その挿通穴57aがECU基板21の貫通穴25aに一致した状態(即ち、挿通穴57aがECU基板21の貫通穴25aに対して整列された状態)で、電気接触部59を有し且つ枠形ハウジング57の外面から突出する端子金具(不図示)が回路パターン26の一端に半田付け等により接続されることにより、ECU基板21のベースボード25に固定される。そして、挿通穴57aがそれぞれ整列されながら複数のECU基板21が積層されるようにそれらのベースボード25がそれぞれ間隔をあけて並べられ、挿通穴57aそれぞれおよび貫通穴25aそれぞれに接続基板23が挿通されることにより、接続基板23のパッドが複数のECU基板21の中空コネクタ55の電気接触部59に一括して接触し、電気的に接続される。
【0036】
本実施形態によれば、接続部27が中空コネクタ55であり、その挿通穴57aをECU基板21の貫通穴25aに一致させながらベースボード25に配置されるので、各ECU基板21に共通した形状の中空コネクタ55を大量生産して予め準備しておくことにより、安価な中空コネクタ55を用いて接続部27を容易に構成することができる。
【0037】
ECU基板接続構造の他の作用や効果については、図1〜図4における上記説明から容易に類推可能であるため説明を省略する。
【0038】
尚、本発明は、前述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態及び変形例における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
また、前述した実施形態および変形例では、多層基板である接続基板を採用したが、本発明はこれに限定されず、ECU基板に接続されるパッドを配索系統ごとに分類し、纏めて端子接続部を配置できるものであればどのようなものであってもよく、例えば、基板の表面にのみ電気回路パターンが形成された簡単な構成のプリント回路基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態であるECU基板接続構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1における楕円IIで囲まれた部分の拡大図である。
【図3】図1における楕円IIIで囲まれた部分の拡大図である。
【図4】積層するように並べられた複数のECU基板の貫通穴に接続基板を挿通した後、更に接続基板にワイヤハーネスのエッジコネクタを接続する直前の状態を示す斜視図である。
【図5】ECU基板収容箱の斜視図である。
【図6】接続基板の端子接続部の変形例にエッジコネクタが接続される直前の状態を示す斜視図である。
【図7】接続基板の端子接続部の他の変形例にエッジコネクタが接続される直前の状態を示す斜視図である。
【図8】接続基板の製造方法の一例を示す斜視図である。
【図9】接続基板の更なる変形例の斜視図である。
【図10】接続基板の電気回路パターン例を示し、(a)はパターン統合前の電気回路パターン例を示す平面図、そして(b)はパターン統合後の電気回路パターン例を示す平面図である。
【図11】ECU基板の接続部として中空コネクタを用いたECU基板接続構造の変形例を示す分解斜視図である。
【図12】基板間コネクタにより接続された従来のECU基板の側面図である。
【図13】同一配索系統のワイヤハーネスから分岐されたコネクタが複数のECU基板に接続される従来の接続構造を示す斜視図である。
【図14】複数の配索系統のコネクタが統合されて一枚のECU基板に接続される従来の接続構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
20 ECU(電子制御ユニット)
21 ECU基板
23 接続基板
25 ベースボード
25a 貫通穴
26 回路パターン
27 接続部(導電性弾性部材)
29 電気回路パターン
29a パッド
29b 端子接続部
31 ワイヤハーネス
35 ワイヤハーネス
39 ワイヤハーネス
55 接続部(中空コネクタ)
57 枠形ハウジング
57a 挿通穴
59 電気接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターンを有するベースボードと、当該ベースボードを貫通する貫通穴と、前記回路パターンに電気的に接続されるように前記ベースボードに搭載された電子制御ユニットと、前記回路パターンに電気的に接続されると共に前記貫通穴へ延設された複数の接続部と、を有するECU基板を複数備え、
電気回路パターンと、前記ECU基板の接続部にそれぞれ電気的に接続するために前記電気回路パターン上に形成された複数のパッドと、前記電気回路パターンと電気的に接続され且つ、前記パッドが接続される前記ECU基板の接続部の配索系統ごとに分類されながら前記配索系統ごとに纏めて配置された端子接続部と、を有する接続基板を更に備え、
前記貫通穴がそれぞれ整列されながら複数の前記ECU基板が積層されるようにそれらの前記ベースボードがそれぞれ間隔をあけて並べられ、前記貫通穴それぞれに前記接続基板が挿通されることにより、前記接続基板のパッドが複数の前記ECU基板の接続部に一括して接続されることを特徴とするECU基板接続構造。
【請求項2】
前記接続部が、前記貫通穴を形成する前記ベースボードの内周面から前記貫通穴内に部分的に突出するように配置された導電性弾性部材であることを特徴とする請求項1に記載のECU基板接続構造。
【請求項3】
前記接続部は中空コネクタであり、当該中空コネクタは、挿通穴が形成された枠形ハウジングおよび前記挿通穴を画成する前記枠形ハウジングの内周面から前記挿通穴内に突出するように配置された電気接触部を有し、且つ前記挿通穴が前記貫通穴に対して整列されるように前記ベースボードに固定されることを特徴とする請求項1に記載のECU基板接続構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載した前記ECU基板接続構造が、前記接続基板の前記端子接続部と、分散配置された電装品とを、それぞれ前記配索系統ごとに独立して接続するための複数のワイヤハーネスを更に備えていることを特徴とするECU基板接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−164537(P2006−164537A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349572(P2004−349572)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】