説明

EGRおよびIGRを備えたエンジン気筒内の既燃ガス部分を調節する方法

【課題】過渡条件の下での気筒内の既燃ガス部分を調節することができる内燃機関の制御方法を提供する。
【解決手段】内燃機関の制御方法は、内燃機関(1)用のトルク設定値Tspを取得する工程と、第1のアクチュエータ(8)用の位置設定値VVTintおよび第2のアクチュエータ(9)用の位置設定値VVTexhを内燃機関トルク設定値Tspに関係付ける、気筒充填モデル(MR)を有する既燃ガス流モデル(MEGB)を適用することによって、これらのアクチュエータの位置設定値を求める工程と、位置設定値VVTintおよびVVTexhを各可変タイミング手段(8、9)に適用することによって気筒内の既燃ガス部分を調節する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御の分野に関し、特に、VVT型(可変バルブタイミング)の可変タイミング手段と低圧排気ガス用の外部再循環回路(EGR)とを備えたガソリンエンジンの空気システム制御の一部に関する。可変タイミングは、燃焼機関においていくつかのパラメータ、特に吸気弁および排気弁のタイミングと開弁時間とリフト量のうちの少なくとも1つを変化させるのを可能にする技術である。
【背景技術】
【0002】
注:本明細書、特許請求の範囲、要約書、および図面においては原出願における記号の一部が下記のように置き換えられている。
【0003】
【数1】

【0004】
【数2】

【0005】
この種のエンジンでは、吸気弁を閉じたときに各気筒に存在する既燃ガスの量は、2つの方法、すなわちVVTアクチュエータと呼ばれる可変タイミング手段である吸気弁アクチュエータおよび排気弁アクチュエータを介した内部既燃ガス再循環(IGR)ならびにEGR回路を介した外部再循環によって得られる。
【0006】
実際、可変タイミングは、吸気弁および排気弁の開閉を制御することによって既燃ガスの内部再循環を実現するのを可能にする。排気ガスは、吸気弁と排気弁が同時に開くと排気配管から吸気配管に戻る。同時開弁の持続時間および振幅は、内部ガス再循環の場合、再循環されるガスの量を決定する。この場合、可変タイミング手段は、少なくとも1つの吸気弁が気筒内のピストン上死点に至る前に開くように制御されるのを可能にし、一方、少なくとも1つの排気弁は、このピストン上死点に至る直前に閉じるように制御される。次いで、両方の弁が同時に開き、排気ガスが再循環される。外部再循環と比べて内部ガス再循環の有利な点は、システムの反応が高速であり、再循環されたガスの分散が良好であることである。
【0007】
これら2つの既燃ガス源は、非常に異なる応答時間を有する。すなわち、IGRは各弁の位相シフトによって制御され、非常に高速である。一方、EGR制御は、排気ガス再循環回路が長いために排気ガス再循環回路内の既燃ガス滞留時間が長いので非常に低速である。(EGR弁を介して)EGRの速度が遅いことを補償するように過渡条件の下で高速量を制御する(VVTアクチュエータを介してIGRを制御する)のが適切であると考えられ、すなわち、過渡条件には高速応答時間が必要である。
【0008】
過渡条件の代表的な例には、高負荷の下でアクセルを離すことがある。過渡状態の開始時には、EGR率が高く、実際、高負荷の下では、エンジンノックの範囲を縮小させるようにEGR率が高くなる。過渡状態の終了時には、部分負荷の下でEGR率が零になり、一方、IGR率が高くなり、すなわち、IGR率は、部分負荷の下では、エンジンポンピングロスを減らすためのバルブオーバラップによって高くなる。しかし、過渡条件の下では、吸気配管全体にわたって既燃ガスが存在するので、各気筒に入るEGRの量は零ではない。したがって、燃焼室内の既燃ガスの量(EGRとIGRを加算した量)が過度に多くなり、したがって、エンジンフレームアウトが生じる可能性が高くなる。したがって、この過渡状態の場合の目標は、吸気配管に含まれる既燃ガスが無くなるまでIGRの量をできるだけ制限することである。
【0009】
図3は、従来技術によるEGRおよびIGRを備えたガソリンエンジンのエアループ(10)についての設定値決定方式を示している。エンジンマップ(MAP)は、エンジントルク設定値Tspおよびエンジン速度測定値Nから、吸込空気質量設定値mairsp、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分に対する設定値Xintsp、エンジントルク設定値Tspに必要とされる定常状態を得るための吸気弁アクチュエータおよび排気弁アクチュエータの位置に対する設定値VVTintspおよびVVTexhspを定めるのを可能にする。次いで、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分の値Xintを使用して空気質量設定値mairspが吸込質量設定値maspspに修正される。吸気マニフォルド内のこの既燃ガス部分は、任意の手段、特に推定方法または測定方法によって得られてもよい。充填モデル(MR)は、吸込質量設定値maspspならびに排気弁(13)および吸気弁(12)の各アクチュエータ(8、9)の位置の測定値VVTexhおよびVVTintから、吸気マニフォルド内の圧力設定値pintspを得るのを可能にする。
【0010】
コントローラ(15)は、圧力設定値pintsp、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分設定値Xintsp、ならびに定常状態の吸気弁アクチュエータおよび排気弁アクチュエータの位置VVTintspおよびVVTexhspを確保するように吸気圧力、EGR、および各可変タイミング手段(8、9)を制御するのを可能にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】T.リロイ、J.ショービン、F.レビア、A.デュパシー、G.アリックス(T. Leroy, J. Chauvin, F. Le Beer, A. Duparchy and G.Alix)著、「二重独立可変バルブタイミングSIエンジン上での新しい空気のチャージと残留ガス部分のモデリング(Modeling Fresh Air Charge and Residual Gas Fraction on a Dual Independent Variable Valve Timing SI Engine)」、プロシーディングス・オブ・SAEコンフェレンス(Proceedings of SAE Conference)、2008年4月14日、論文番号 2008-01-0983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、図3において説明する方法では、過渡条件の下での気筒内の既燃ガス部分を調節することはできない。
【0013】
本発明によるエンジン制御方法は、過渡条件の下での気筒内の既燃ガス部分を最適化することによってEGRとIGRの組合せを有する気筒内の既燃ガス部分を調節するのを可能にする。本発明による方法は、気筒充填モデルに基づく既燃ガス流モデルを使用した吸気弁および排気弁のアクチュエータの制御に基づく方法である。この方法は、各気筒内の吸込質量および既燃ガス質量を推定する気筒充填モデルを使用することを除いて較正を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも1つの気筒と、前記気筒内の少なくとも1つの吸気弁と、前記気筒から既燃ガスを排出するための少なくとも1つの排気弁とを有する内燃機関を制御する方法であって、前記内燃機関が、排気ガス再循環回路と可変タイミング手段とを備え、前記可変タイミング手段が、前記吸気弁の第1のアクチュエータと前記排気弁の第2のアクチュエータとから成る方法に関する。前記方法は、
前記内燃機関のトルク設定値Tspを取得する工程と、
前記第1のアクチュエータの位置設定値VVTintおよび前記第2のアクチュエータの位置設定値VVTexhをエンジントルク設定値Tspに関係付ける、気筒充填モデル(MR)を有する既燃ガス流モデル(MEGB)を適用することによって、これらのアクチュエータの位置設定値を求める工程と、
位置設定値VVTintおよびVVTexhを前記可変タイミング手段に適用することによって既燃ガス部分を制御する工程と、を含む。
【0015】
有利なことに、前記充填モデル(MR)は、吸込空気質量および既燃ガス質量をエンジン速度N、吸気マニフォルド内の温度Tintおよび圧力Pint、ならびにアクチュエータの位置VVTexhおよびVVTintの関数として推定する静的気筒充填モデルである。
【0016】
一実施態様によれば、既燃ガス流モデル(MEGB)は、前記気筒の前記充填モデル(MR)に関連する前記内燃機関のトルク設定値Tspの関数としてのエンジンマップ(MAP)を使用して構成される。
【0017】
前記気筒の前記充填モデル(MR)は以下のように書くことができる:
【0018】
【数3】

【0019】
上式において、
cyl:気筒内の既燃ガス部分、
int:前記気筒の上流において前記内燃機関に組み込まれ、空気と既燃ガスの混合物が吸気から取り出される吸気マニフォルド内の圧力、
int:前記吸気マニフォルド内の既燃ガス質量部分、
VVTint:第1のアクチュエータの位置、および
VVTexh:第2のアクチュエータの位置である。
【0020】
好ましくは、充填モデル(MR)は次の方程式:
【0021】
【数4】

【0022】
ここで:
【0023】
【数5】

【0024】
および、次の方程式から得られる。
【0025】
【数6】

【0026】
上式において、
cyl:気筒内の既燃ガス質量部分、
int:吸気マニフォルド内の圧力、
int:吸気マニフォルド内の既燃ガス質量部分、
aspint:吸気弁を通して各気筒に吸い込まれる質量、
aspexh:IGRからの吸込質量、
α、α、およびα:PintおよびNの関数としての公知の充填モデル較正パラメータ、
ivc:少なくとも1つの吸気弁のアクチュエータの位置VVTintの関数としてのivc(吸気弁閉弁)時の気筒容積、
evc:第2のアクチュエータの位置VVTexhの関数としてのevc(排気弁閉弁)時の気筒容積、
OF:吸気弁および排気弁の各アクチュエータの位置VVTintおよびVVTexhの関数としての重なり因子である。
【0027】
一実施態様によれば、前記既燃ガス流モデル(MEGB)は、
a)吸気マニフォルド内の圧力pintsp、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分Xintsp、ならびに定常状態において望ましい各可変タイミング手段の位置VVTintspおよびVVTexhspに対する設定値を、エンジントルク設定値Tspの関数として求める工程と、
b)前記気筒充填モデル(MR)を適用することによって、吸気圧力設定値pintsp、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分設定値Xintsp、ならびに定常状態の前記各アクチュエータの位置設定値から前記気筒内の既燃ガス部分の設定値Xcylspを求める工程と、
c)前記気筒充填モデル(MR)を反転させることによって、吸気マニフォルド内の推定された既燃ガス部分Xint、気筒内の既燃ガス部分設定値Xcylsp、および吸気マニフォルド内の推定された圧力Pintから前記各アクチュエータの位置設定値VVTintおよびVVTexhを求める工程と、を実施することによって構成される。
【0028】
有利なことに、吸気マニフォルド内の圧力に対する設定値pintsp、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分に対する設定値Xintsp、ならびに定常状態において望ましい各可変タイミング手段の位置に対する設定値VVTintspおよびVVTexhspは、
i)前記気筒内の空気質量設定値mairsp、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分設定値Xintsp、ならびに定常状態において望ましい吸気弁アクチュエータおよび排気弁アクチュエータの位置設定値VVTintspおよびVVTexhspを、エンジン速度Nおよびエンジントルク設定値Tspに依存する前記内燃機関の各マップ(MAP)から求める工程と、
ii)吸気マニフォルド内の既燃ガス部分を推定する方法または吸気マニフォルド内の既燃ガス部分を測定する方法によって吸気マニフォルド内の既燃ガス部分Xintおよび前記気筒内の空気質量mairspの推定値から前記気筒内の吸込質量設定値maspspを求める工程と、
iii)前記逆気筒充填モデル(IMR)によって前記気筒内の吸込空気質量設定値maspspならびに吸気弁アクチュエータおよび排気弁アクチュエータの推定された位置VVTintおよびVVTexhから吸気圧力設定値pintspを求める工程と、を実施することによって得られる。
【0029】
好ましくは、前記各アクチュエータの位置設定値VVTintおよびVVTexhの決定は、
i)第2のアクチュエータの位置VVTexhを定常状態におけるその設定値VVTexhspに設定する工程と、
ii)次式のように前記逆気筒充填モデル(IMR)を適用することによって、第2のアクチュエータの位置設定値VVTexhから第1のアクチュエータの位置設定値VVTintを求める工程と、
【0030】
【数7】

【0031】
iii)第1のアクチュエータの位置設定値VVTintが飽和状態に入った場合に、前記逆気筒充填モデル(IMR)を使用して、次式のように第1のアクチュエータの位置VVTintから第2のアクチュエータの位置設定値を求め、
【0032】
【数8】

【0033】
第1のアクチュエータの位置設定値VVTintが飽和状態に入らない場合に、第2のアクチュエータの位置を定常状態におけるその設定値VVTexhspとして求める(VVTexh=VVTexhsp)工程と、を実施することによって行われる。
【0034】
さらに、本発明は、少なくとも1つの気筒と、前記気筒内の少なくとも1つの吸気弁と、前記気筒から既燃ガスを排出するための少なくとも1つの排気弁とを有する内燃機関であって、前記内燃機関は既燃ガス再循環回路と可変タイミング手段とを備え、前記可変タイミング手段は少なくとも1つの吸気弁の第1のアクチュエータと少なくとも1つの排気弁の第2のアクチュエータとから成る、内燃機関に関する。前記内燃機関は、本発明による制御方法を適用するのに適しており、かつ本発明による制御方法を適用することを目的とした、内燃機関用の制御手段を有する。
【0035】
本発明は、上述のような内燃機関を有する車両、特に自動車にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】EGR回路と可変タイミング手段とを備えるエンジンの実施形態を示す図である。
【図2】図1のエンジンの一部を示し、気筒の周囲の変数を示す図である。
【図3】従来の技術において使用されるような定常条件の下でのエアループ設定値を求める方式を示す図である。
【図4】本発明によるエアループ設定値を求める方式を示す図である。
【図5】空気質量設定値マップを示す図である。
【図6】第1のアクチュエータの位置に関する設定値マップを示す図である(0は、重なりAOA=−10°を伴う吸気開弁リードに相当し、40は、重なりAOA=30°を伴う吸気開弁リードに相当する)。
【図7】第2のアクチュエータの位置に関する設定値マップを示す図である(0は、排気閉弁遅延RFE=−29°に相当し、40は、RFE=11°に相当する)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明による方法の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非制限的な例による各実施形態についての以下の記述を読んだときに明らかになろう。
【0038】
図1は、既燃ガス再循環回路EGRと可変タイミング手段とを備えるガソリンエンジン(1)の実施形態を示している。この実施形態では、このエンジンは低圧EGR回路である。燃焼機関(1)の少なくとも1つの気筒(2)には、吸気マニフォルド(3)から空気および既燃ガスが供給される。吸気回路は、冷却器(4)とターボチャージャ(7)の圧縮器とを備えている。排気配管は、排気マニフォルドと、ターボチャージャ(7)のタービンと、既燃ガスの一部を吸気回路に噴射するバイパス配管とから成っている。対象となる既燃ガス再循環回路は、ターボチャジャ(7)のタービンの下流に配置された触媒(11)の出口の所でエンジン排気から既燃ガスを取り出し、ターボチャージャ(7)の圧縮機の上流において気筒(2)の吸気に既燃ガスを再噴射する。この回路のこの部分は特に、冷却器(4’)とERG弁(6)と呼ばれる被制御弁とを備えている。さらに、図1に示されているようなエンジンは、EGR回路を通じて噴射された既燃ガスの量を判定する検出器(5)を、ここではEGR弁の近傍に備えている。この検出器は、流量計または圧力検出器であってもよく、直接噴射装置も備えている。上述の最後の3つの部材は、図1の実施形態に存在し、通常は(容量が小さくされた)小型のエンジンに存在するが、それらの存在は、本発明による方法に直接関与しない。
【0039】
さらに、前記エンジンは、吸気弁(12)および排気弁(13)用の2つのアクチュエータ(一部が示されている)(8、9)から成る可変タイミング手段を備えている。アクチュエータ(8、9)は、吸気弁(12)および排気弁(13)の開閉を駆動するように制御されてもよく、したがって、各気筒内の既燃ガス部分を調節することが可能である。これらのアクチュエータは、各弁の動作を可能にするカムシャフトに結合された羽根型移相器として構成されてもよい。
【0040】
本発明による制御方法は、燃焼機関(1)の気筒(2)内の既燃ガス部分を調節するのを可能にする。この制御方法は、吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の制御に基づく方法である。本発明による方法は、
前記エンジンのトルク設定値Tspを取得する工程と、
少なくとも1つの吸気弁(12)の前記第1のアクチュエータ(8)の位置設定値VVTintおよび少なくとも1つの排気弁(13)の前記第2のアクチュエータの位置設定値VVTexhをエンジントルク設定値Tspに関係付ける、気筒充填モデル(MR)を有する前記既燃ガス流モデル(MEGB)を適用することによって、吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置設定値を求める工程と、
位置設定値VVTintおよびVVTexhを前記各可変タイミング手段に適用することによって前記気筒内の既燃ガス部分を調節する工程と、を含む。
【0041】
表記
この説明では、語「上流」および「下流」は、ガスエアループ(10)の流れの方向に対して定義されている。さらに、以下の表記が使用される。
【0042】
エンジンパラメータ
int、Tint:吸気マニフォルド(3)内の圧力および温度。これら2つの量は測定される。
VVTadm:吸気弁(12)の第1のアクチュエータ(8)の位置。この位置は、基準位置に対する、度単位の位相シフトに相当する。
VVTexh:排気弁(13)の第2のアクチュエータ(9)の位置。この位置は、基準位置に対する、度単位の位相シフトに相当する。
:エンジントルク。
:エンジン速度(測定値)。
【0043】
既燃ガス循環モデルの変数
int:吸気マニフォルド(3)内の既燃ガス部分。この既燃ガスは外部排気ガス再循環回路(EGR)から得られる。
cyl:気筒内の既燃ガス部分。この既燃ガスは、EGR回路および可変タイミングによる内部循環(IGR)から得られる。
aspint:吸気弁(12)を通じて各気筒に吸い込まれた質量。この質量は、新しい空気と既燃ガスとから構成される(EGR弁が開いている場合)。
aspexh:IGRから得られる吸込質量。この質量は、エンジンの動作が化学量論的な動作であるため既燃ガスのみから構成される。
air:気筒に吸い込まれた空気質量、mair=maspint+maspexh
α、α、およびα:PintおよびNの関数としての充填モデルの公知の較正パラメータ。これらのパラメータは、エンジンテストベンチ上での実験によって決定される。
ivc:第1のアクチュエータ(8)の位置VVTintの関数としてのivc(吸気弁閉弁)時の気筒容積。
evc:第2のアクチュエータ(9)の位置VVTexhの関数としてのevc(排気弁閉弁)時の気筒容積。
OF:吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置VVTintおよびVVTexhの関数としての重なり因子。
intおよびAexh:吸気弁(12)および排気弁(13)の流路面積。
θ:クランク角度(14)。
θivo:第1のアクチュエータ(8)の位置VVTintの関数としてのivo(吸気弁(12)の開弁)時のクランク角度(14)。
θevc:第2のアクチュエータ(9)の位置VVTexhの関数としてのevc(排気弁(13)の閉弁)時のクランク角度(14)。
θiv=θev:各弁(12;13)が同じ流路面積を有するクランク角度(14)。
【0044】
既燃ガス流モデルの定数
r:ここで対象となるすべてのガス(空気および排気ガス)について同じであり、値288J/kg/Kを有する特定の理想気体定数。
【0045】
これらの表記は、指数_spを含むとき、対象とされる量に関連する設定値を表す。本発明による方法によって得られた吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置設定値は、VVTintおよびVVTexhによって示され、VVTintspおよびVVTexhspによって示される吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置設定値は、定常条件の下で到達すべき各アクチュエータ(8、9)の位置設定値を示す。
【0046】
さらに、過渡状態と呼ばれるものは、エンジンの2つの定常状態間のエンジンの動作モードである。過渡状態は、あるトルクから別のトルクに切り替わるとき、たとえば高負荷の下でアクセルを離したときのエンジンの挙動である。
【0047】
工程1)−トルク設定値の取得
本発明による方法は、熱機関に適用されるトルク設定値の関数としての気筒内の既燃ガス部分を調節するのを可能にする。このトルク設定値を選択する必要があり、このトルク設定値は、トルク要求を熱機関に与えることによって直接的または間接的に得られる。トルク設定値は、エンジン制御によって得ることができ、車両のアクセルペダルの踏込みによって決まり、すなわち、このトルク設定値は、運転者の要求を象徴的に表すものである。
【0048】
工程2)−設定値VVTintおよびVVTexhの決定
本発明による方法は、IGRを制御し、それによって気筒内の既燃ガス部分を調節するのを可能にする、吸気弁アクチュエータおよび排気弁アクチュエータの位置設定値VVTintおよびVVTexhを求めることに基づく方法である。この方法は、排気ガス流モデル(MEGB)を使用することに基づく方法である。排気ガス流モデル(MEGB)と呼ばれるものは、EGR回路内の既燃ガス流を可変タイミング手段によって特徴付けるのを可能にするモデルである。このモデルは、吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置設定値をエンジントルク設定値Tspに関係付ける。このモデルは、エンジン速度Nに依存するものであってもよい。このモデルは、一方では、エンジンの各マップ(MAP)(図5〜図7)を前記エンジンのトルク設定値Tspの関数として実現することにより、他方では、これらのマップに関連付けられた前記気筒の充填モデル(MR)によって構成される。このモデル(MEGB)は、各過渡状態の間IGRを制御するのを可能にする。
【0049】
好ましくは、充填モデル(MR)と呼ばれるものは、気筒内の吸込空気質量および既燃ガス質量を、エンジン速度N、吸気マニフォルド(3)内の温度Tintおよび圧力Pint、ならびに各アクチュエータ(8、9)の位置VVTintおよびVVTexhの関数として推定する静的気筒充填モデルである。充填モデル(MR)は、気筒内の既燃ガス部分を知るのを可能にし、したがって、過渡条件の下での気筒内の既燃ガス制御のためにEGRおよびIGRを制御するのを可能にする。そのようなモデルは、たとえば非特許文献1に記載されている。
【0050】
空気質量maspintおよび既燃ガス質量maspexhを次式のように定義する。
【0051】
【数9】

【0052】
重なり因子OFは以下の関係式によって決定される。
【0053】
【数10】

【0054】
次いで、次式のように定義される関数fおよびgを導入する。
【0055】
【数11】

【0056】
数式を明確にするために、エンジン速度および吸気温度を数式から除去する。実際、これら2つの値が測定され、それらの影響は、方程式の他の要素の影響よりも小さい。以下の方程式が得られる。
【0057】
【数12】

【0058】
気筒内の既燃ガス部分は、総質量に対して許容される各既燃ガス質量の和に等しい。すなわち、次式が成立する。
【0059】
【数13】

【0060】
この式において、分子では、吸気からの既燃ガス質量Xintaspint(EGR回路から既燃ガスが得られないときには零に等しい)と排気からの既燃ガス質量maspexhが加算される(この場合、走行条件が化学量論的な条件であるため、既燃ガスのみが存在する)。最終的に、次式のように書かれる気筒内の既燃ガス部分の推定値が得られる。
【0061】
【数14】

【0062】
気筒内の既燃ガス部分の制御を同じく過渡条件の下で実現されるように行う必要がある。したがって、本発明による制御方法の第1の工程は、必要な定常状態が得られるように気筒内の既燃ガス部分を求めることにある。
【0063】
図2は、熱機関(1)の気筒(2)およびその近傍を周囲の変数を示すことによって表している。XintおよびPintは、吸気マニフォルド(3)内の既燃ガス質量部分および圧力の値である。単一の吸気弁(12)および単一の排気弁(13)が示されているが、公知のように、各気筒にいずれかの種類の複数の弁を備えてもよい。さらに、各弁(12、13)の各アクチュエータ(8、9)の位置がVVTintまたはVVTexhによって示されている。
【0064】
図4に示されているような本発明による方法は、(マップによって得られる)定常状態の吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置設定値を、吸気工程においてガス組成物の速度が遅いことを補償するように修正することにある。したがって、次式のように方程式(1)のモデル(MR)の逆数を算出し、吸気弁アクチュエータおよび排気弁アクチュエータに必要な位置(ここでは、吸気弁アクチュエータと排気弁アクチュエータの両方について同様にVVTによって示される)を求める。
【0065】
【数15】

【0066】
この式において、Φは、次式のように関数φの逆関数である。
【0067】
【数16】

【0068】
この式において、xは気筒内の既燃ガス部分の任意の値に相当する。xが、方程式(2)において使用される吸気組成Xintの推定値であり、設定値Xintspではないことに留意することが重要である。したがって、実施される方法は、過渡条件の下での吸気弁(12)および排気弁(13)の各高速アクチュエータ(8、9)の設定値VVTintおよびVVTexhを、従来技術を示す図3に対して修正する。
【0069】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記既燃ガス流モデルは、
a)吸気マニフォルド内の圧力に対する設定値pintsp、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分に対する設定値Xintsp、ならびに定常状態において望ましい各可変タイミング手段の位置に対する設定値VVTintspおよびVVTexhspを求める工程と、
b)前記気筒充填モデル(MR)を適用することによって、吸気圧力設定値pintsp、吸気マニフォルド(3)内の既燃ガス部分設定値Xintsp、ならびに定常状態において望ましい吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置設定値VVTintspおよびVVTexhspから前記気筒内の既燃ガス部分の設定値Xcylspを求める工程と、
c)前記気筒充填モデル(MR)の逆モデルを生成することによって、吸気マニフォルド(3)内の推定された既燃ガス部分Xint、気筒(2)内の既燃ガス部分設定値Xcylsp、および吸気マニフォルド(3)内の測定された圧力Pintから吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置設定値VVTintおよびVVTexhを求める工程と、を実施することによって構成される。
【0070】
したがって、吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置設定値VVTintおよびVVTexhは、最初に充填モデル(MR)を適用し、次に逆充填モデル(IMR)を適用することによって得られる。逆充填モデル(IMR)が設定値pintspおよび設定値Xintspではなくこれらの値の推定値と測定値の少なくとも一方に依存することに留意されたい。この充填モデル(MR)を使用すると、気筒内の既燃ガス質量部分の設定値Xcylspを求め、それによって最適なIGR制御を行うことができる。さらに、充填モデル(MR)とその逆充填モデル(IMR)を組み合わせると、吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置設定値VVTintおよびVVTexhを定常状態において望ましい吸気弁(12)および排気弁(12)の各アクチュエータ(8、9)の位置設定値VVTintspおよびVVTexhspに収束させることができる。したがって、過渡状態の終了時に次式が得られる。
【0071】
【数17】

【0072】
【数18】

【0073】
実際、過渡状態の終了時には、吸気マニフォルド内の圧力Pintがその設定値pintspに達し、同様に、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分Xintがその設定値Xintspに達する。その場合、このモデルとその逆モデルは、各値が同じになる。
【0074】
従来、上記の工程a)において説明したように、吸気マニフォルド内の圧力に対する設定値pintsp、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分に対する設定値Xintsp、ならびに定常状態において望ましい可変タイミング手段の位置に対する設定値VVTintspおよびVVTexhspの決定は、
i)前記気筒内の空気質量設定値mairsp、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分設定値Xintsp、ならびに定常状態において望ましい吸気弁アクチュエータおよび排気弁アクチュエータの位置設定値VVTintspおよびVVTexhspを、エンジン速度Nおよびエンジントルク設定値Tspに依存する、図5〜図7に示されているような前記エンジンの各マップ(MAP)から求める工程と、
ii)吸気マニフォルド(3)内の既燃ガス部分を推定する方法または吸気マニフォルド(3)内の既燃ガス部分を測定する方法によって、吸気マニフォルド内の既燃ガス部分Xintの推定値および前記気筒内の空気質量mairspの推定値から前記気筒内の吸込空気質量設定値maspspを求める工程と、
iii)前記逆気筒(2)充填モデル(IMR)によって、前記気筒内の吸込空気質量設定値maspexhならびに吸気弁アクチュエータおよび排気弁アクチュエータ(8、9)の推定された位置VVTintおよびVVTexhから吸気圧力設定値pintspを求める工程と、を実施することによって実現される。
【0075】
有利なことに、上述の工程c)の、吸気弁(12)および排気弁(13)の前記アクチュエータ(8、9)の位置設定値VVTintおよびVVTexhの決定は、
i)第2のアクチュエータ(9)の位置VVTexhを定常状態におけるその設定値VVTexhspに設定する工程と、
ii)次式のように、逆気筒充填モデル(IMR)を適用することによって第2のアクチュエータ(9)の位置設定値VVTexhから第1のアクチュエータ(8)の位置設定値VVTintを求める工程と、
【0076】
【数19】

【0077】
iii)第2のアクチュエータ(9)の位置設定値VVTexhを求め、すなわち、
第1のアクチュエータ(8)の位置設定値VVTintが飽和状態に入った場合には、前記逆気筒充填モデル(IMR)を使用して、次式のように第1のアクチュエータ(8)の位置VVTintから第2のアクチュエータ(9)の位置設定値を求め、
【0078】
【数20】

【0079】
第1のアクチュエータ(8)の位置設定値VVTintが飽和状態に入らない場合には、第2のアクチュエータ(9)の位置設定値を定常状態におけるその設定値VVTexhspとして求める(VVTexh=VVTexhsp)工程と、を実施することによって行われる。
【0080】
上述の工程i)〜工程iii)では、吸気量と排気量を逆にしてもよく、最初にVVTintを設定し、次にVVTexhを算出し、VVTintを推定することが可能である。
【0081】
第1のアクチュエータ(8)の位置設定値VVTintの飽和状態は、アクチュエータに関連付けられた機械的制約、すなわちアクチュエータによって許容される位相シフトの最小値と最大値によって定義される。
【0082】
工程3)−既燃ガス部分の調節
次に、吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)をそれらの設定値VVTintおよびVVTexhに制御することによって、気筒内の既燃ガス部分Xcylが調節される。したがって、応答がより高速であるIGRを制御し、定常状態でも制御することによって、気筒内の既燃ガスの割合が各過渡状態に対して最適化される。すなわち、定常状態に達した後、吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置設定値VVTintおよびVVTexhは、各エンジンマップ(MAP)から与えられる値に調整される。
【0083】
したがって、本発明による制御方法は、
EGRシステムとVVT型(可変バルブタイミング)手段とを備えたガソリンエンジンの気筒内のガスの組成を調節するのを可能にし、
吸気工程におけるガスの組成の推定値を考慮して既燃ガス部分過渡応答を改善するのを可能にし、
既燃ガス部分過渡応答を改善し、それによって運転性を向上させるのを可能にする。(EGR回路が長いために)吸気工程においてガス組成物が低速であることは、既燃ガス部分に関する要請を満たすために各バルブアクチュエータの位置設定値を修正することによって補償される。
【0084】
さらに、本発明は、少なくとも1つの気筒(2)と、前記気筒内の少なくとも1つの吸気弁(12)と、前記気筒(2)から既燃ガスを排出できるようにする少なくとも1つの排気弁(13)とを有する内燃機関(1)に関する。前記内燃機関は、既燃ガス再循環回路と可変タイミング手段とを備える。前記可変タイミング手段は、少なくとも1つの吸気弁(12)の第1のアクチュエータ(8)と少なくとも1つの排気弁(13)の第2のアクチュエータ(9)とから成る。前記内燃機関(1)は、本発明による制御方法を適用するのに適しており、かつ本発明による制御方法を適用することを目的とした、前記内燃機関を制御する手段を有する。
【符号の説明】
【0085】
1 ガソリンエンジン
2 気筒
3 吸気マニフォルド
4、4’ 冷却器
5 検出器
7 ターボチャージャ
8、9 アクチュエータ
10 エアループ
12 吸気弁
13 排気弁
IMR 逆気筒充填モデル
MAP マップ
MEGB 排気ガス流モデル
MR 気筒充填モデル
cyl 気筒内の既燃ガス部分
int 吸気マニフォルド内の圧力
int 吸気マニフォルド内の既燃ガス質量部分
VVTint 第1のアクチュエータの位置
VVTexh 第2のアクチュエータの位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの気筒(2)と、前記気筒(2)内の少なくとも1つの吸気弁(12)と、前記気筒(2)から既燃ガスを排出するための少なくとも1つの排気弁(13)と、を有する内燃機関(1)を制御する方法であって、
前記内燃機関は排気ガス再循環回路と可変タイミング手段とを備え、前記可変タイミング手段は前記吸気弁の第1のアクチュエータ(8)と前記排気弁の第2のアクチュエータ(9)とから成る方法において、
前記内燃機関のトルク設定値Tspを取得する工程と、
前記第1のアクチュエータ(8)の位置設定値VVTintおよび前記第2のアクチュエータ(9)の位置設定値VVTexhを前記エンジントルク設定値Tspに関係付ける、気筒充填モデル(MR)を有する既燃ガス流モデル(MEGB)を適用することによって、前記各アクチュエータの位置設定値を求める工程と、
前記位置設定値VVTintおよびVVTexhを前記可変タイミング手段(8、9)に適用することによって前記気筒内の既燃ガス部分を制御する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記充填モデル(MR)は、前記気筒内の吸込空気質量および既燃ガス質量をエンジン速度N、吸気マニフォルド(3)内の温度Tintおよび圧力Pint、ならびに前記各アクチュエータ(8、9)の位置VVTexhおよびVVTintの関数として推定する静的気筒充填モデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記既燃ガス流モデル(MEGB)は、前記気筒の前記充填モデル(MR)に関連する前記内燃機関(1)の前記トルク設定値Tspの関数としてのエンジンマップ(MAP)を用いて構築されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記気筒の前記充填モデル(MR)は次式のように書かれ、
【数1】


上式において、
cyl:気筒(2)内の既燃ガス部分、
int:前記気筒(2)の上流において前記内燃機関に組み込まれ、吸気から空気と既燃ガスの混合物が回収される吸気マニフォルド(3)内の圧力、
int:前記吸気マニフォルド(3)内の既燃ガス質量部分、
VVTint:第1のアクチュエータ(8)の位置、および
VVTexh:第2のアクチュエータ(9)の位置である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記充填モデル(MR)は次の方程式、
【数2】


および次の方程式、
【数3】


から得られ、ここで
【数4】


であり、
cyl:気筒(2)内の既燃ガス質量部分、
int:吸気マニフォルド(3)内の圧力、
int:吸気マニフォルド(3)内の既燃ガス質量部分、
aspint:吸気弁(12)を通して各気筒に吸い込まれる質量、
aspexh:IGRからの吸込質量、
α、α、およびα:PintおよびNの関数としての公知の充填モデル較正パラメータ、
ivc:少なくとも1つの吸気弁のアクチュエータ(8)の位置VVTintの関数としてのivc(吸気弁閉弁)時の気筒容積、
evc:第2のアクチュエータ(9)の位置VVTexhの関数としてのevc(排気弁閉弁)時の気筒容積、
OF:吸気弁(12)および排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の位置VVTintおよびVVTexhの関数としての重なり因子である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記既燃ガス流モデル(MEGB)は、
a)前記吸気マニフォルド内の前記圧力に対する設定値pintsp、前記吸気マニフォルド(3)内の前記既燃ガス部分に対する設定値Xintsp、ならびに定常状態において望ましい前記各可変タイミング手段の位置VVTintspおよびVVTexhspに対する設定値を、前記エンジントルク設定値Tspの関数として求める工程と、
b)前記気筒充填モデル(MR)を適用することによって、前記吸気圧力設定値pintsp、前記吸気マニフォルド(3)内の前記既燃ガス部分設定値Xintsp、ならびに前記定常状態の前記各アクチュエータ(8、9)の位置設定値から前記気筒内の前記既燃ガス部分の設定値Xcylspを求める工程と、
c)前記気筒充填モデル(MR)を反転させることによって、前記吸気マニフォルド(3)内の推定された既燃ガス部分Xint、前記気筒(2)内の前記既燃ガス部分設定値Xcylsp、および吸気マニフォルド(3)内の推定された圧力Pintから前記各アクチュエータ(8、9)の位置設定値VVTintおよびVVTexhを求める工程と、を実施することによって構成される、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記吸気マニフォルド内の前記圧力設定値pintsp、前記吸気マニフォルド内の前記既燃ガス部分設定値Xintsp、ならびに前記定常状態において望ましい前記各可変タイミング手段の位置設定値VVTintspおよびVVTexhspは、
i)前記気筒内の空気質量設定値mairsp、前記吸気マニフォルド内の既燃ガス部分設定値Xintsp、ならびに前記定常状態において望ましい前記吸気弁アクチュエータおよび前記排気弁アクチュエータの位置設定値VVTintspおよびVVTexhspを、エンジン速度Nおよび前記エンジントルク設定値Tspに依存する前記内燃機関の各マップ(MAP)から求める工程と、
ii)前記吸気マニフォルド(3)内の前記既燃ガス部分を推定する方法または測定する方法によって前記吸気マニフォルド内の前記既燃ガス部分Xintおよび前記気筒内の前記空気質量mairspの推定値から前記気筒内の吸込空気質量設定値maspspを求める工程と、
iii)前記逆気筒(2)充填モデル(IMR)によって前記気筒内の前記吸込空気質量設定値maspspならびに前記吸気弁(12)および前記排気弁(13)の各アクチュエータ(8、9)の推定された位置VVTintおよびVVTexhから吸気圧力設定値pintspを求める工程と、を実施することによって得られる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記各アクチュエータ(8、9)の前記位置設定値VVTintおよびVVTexhの決定は、
i)第2のアクチュエータ(9)の前記位置VVTexhを前記定常状態におけるその設定値VVTexhspに設定する工程と、
ii)次式のように前記逆気筒充填モデル(IMR)を適用することによって、第2のアクチュエータ(9)の前記位置設定値VVTexhから第1のアクチュエータ(8)の前記位置設定値VVTintを求める段階と、
【数5】


iii)第1のアクチュエータ(8)の前記位置設定値VVTintが飽和状態に入った場合には、前記逆気筒充填モデル(IMR)を使用して、次式のように第1のアクチュエータ(8)の前記位置VVTintから前記第2のアクチュエータの前記位置設定値VVTintを求め、
【数6】


第1のアクチュエータの前記位置設定値VVTintが飽和状態に入らない場合には、第2のアクチュエータ(9)の前記位置を前記定常状態におけるその設定値VVTexhspとして求める(VVTexh=VVTexhsp)工程と、を実施することによって行われる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの気筒(2)と、前記気筒内の少なくとも1つの吸気弁(12)と、前記気筒(2)から既燃ガスを排出するための少なくとも1つの排気弁(13)とを有し、既燃ガス再循環回路と可変タイミング手段とを備え、前記可変タイミング手段が、少なくとも1つの吸気弁(12)の第1のアクチュエータ(8)と少なくとも1つの排気弁(13)の第2のアクチュエータ(9)とから成る内燃機関であって、前記内燃機関は、本発明による前記制御方法を適用するのに適しており、かつ本発明による前記制御方法を適用することを目的とした、前記内燃機関用の制御手段を有することを特徴とする内燃機関。
【請求項10】
請求項9に記載の内燃機関を有する車両、特に自動車。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108496(P2013−108496A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−251801(P2012−251801)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】