説明

EUVミラー形状の測定法

【課題】 EUVミラーの母材自身では反射率が低い場合が多く、光を使った母材の形状測定の際に、その光量およびコントラストを得ることが困難であった。また、複数枚での評価の際は、反射率が確保できない場合は測定不可能であった。
【解決手段】 反射用の膜を母材に成膜することにより、測定精度を落とさず測定することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
EUVミラー形状の測定手法
【背景技術】
【0002】
従来は、反射膜を付けずに測定していた。
【0003】
従来例としては、例えば特許文献1と特許文献2をあげることが出来る。
【特許文献1】特開2001−131486号公報
【特許文献2】特開2001−59901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EUVミラーの母材自身では反射率が低い場合が多く、光を使った形状測定の際に、その光量およびコントラストを得ることが困難であった。また、EUVミラーの形状測定には、実際に使われる波長の他に、可視光やUV光などをも使う場合があり、この波長においても、同様に十分な反射率を得ることは困難であった。
【0005】
また、ミラーは最終的には単体ではなく複数枚組み合わせて、使用される。そのため、母材の形状には組み合わせた状態で最適になることも要求さる。その際、組み合わせた状態で収差など測定する際には、ミラー1枚の反射率が低い場合では、測定が困難となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、EUV波長で用いられる母材の形状測定をする際、測定波長での反射率を上げるために、母材に反射膜を付けることによって、解決することを特徴としており、特に13.5nm付近で使われるEUVミラーには、反射膜材料にSi、Ru、Mo、Cを使う。
【0007】
また、形状確認後にその反射膜を剥がすことなく、その上からEUV光を反射するための膜を付ける。
【発明の効果】
【0008】
反射膜を付けることにより、測定時に十分な光量を得ることが出来、測定精度の向上が図ることが可能となる。また、13.5nm付近のEUVミラーには、反射膜材料に13.5nm付近で吸収の小さいSi、Ru、Mo、Cを使うことにより、成膜の際のクロスコンタミを押さえることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施例1)
EUVミラー母材として石英基板を用いて干渉計にて、その面形状の計測を行うにおいて、干渉計の測定波長を488nmとした際、石英表面では、約3.5%の反射率となる。その石英表面にSi膜を10nmと保護膜としてSiO2を1nm成膜する(図1参照。その際、反射率は約50%に向上する。Siの膜厚が10nmの場合、成膜による膜厚分布が±1%あった場合、膜厚による形状エラーは±0.1nmとなる。また、干渉計での測定の際には反射位相が問題となるが、Siの膜厚エラー10nm±0.1nmの際には、反射位相差は±0.2nmとなり、トータル±0.3nmの精度にて測定できることとなる。このように、膜厚が10nm程度と薄い場合には、膜厚によるエラー分も小さくできる利点がある。
【0010】
(実施例2)
図2は、ミラー母材6枚を組み合わせたEUV露光装置投影系ミラー群の例である。このような結像系の収差を評価する際には、符号208の結像面における波面を評価する必要がある。しかし、本来ならばミラーにEUV多層膜などを成膜しEUV光にて、波面を測る必要があるが、ミラー面の精度や調整などを見るためには、必ずしもEUV光である必要はなく、大気中での測定が求められる。このような系において、ミラー面に本発明の反射膜を付けることにより、測定に必要な反射率が得られ、測定可能となる。
【0011】
測定波長に266nmを用い、ミラー母材201〜206には低膨張ガラスを用いる。測定用の光をレチクル面207から照射し、結像面208にて波面を測定する。266nmにおける低膨張ガラスの反射率は約6%であり、結像面へ到達する光量は、入射光量の0.06の6乗で、4.6656E−06%となり、実質的に測定が困難であるが、ミラー母材に図3に示す本発明のミラー面を成膜する。ミラー膜は母材側からMo30nm、Si50nm、SiO21nmの3層膜であり、この場合1面の反射率は60%を越え、結像面における光量は入射光量の4.5%得られることになり、測定に十分な光量が得られた。
【0012】
266nm付近の波長では、Siの膜厚が50nm程度以上になると、光が基板へ到達せず、基板との干渉を起こさなくなり、反射位相は膜の厚さ分布のみに依存する。そのため、膜の干渉による反射位相を考慮する必要はない利点がある。
【0013】
また、本実施例ではSi膜の応力に夜変形をキャンセルするために、逆応力のMoをアンダーコートとして成膜している。
【0014】
(実施例3)
測定用に本発明の反射膜を付け、母材の測定が完了した時点で、母材形状が規定に達していた場合、反射膜をはがす工程を経ずにその上にEUV用の多層膜ミラーを形成する。その際、下地となる測定用反射膜の表面荒さは0.2nmRMS以下であり、EUV多層膜の反射率は65%以上と、十分な性能が得られる。図4に本実施例の概念図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】測定用反射膜として、石英基板上にSi膜10nmおよびその上にSiO2膜1nmの合計2層成膜したEUV用ミラー母材
【図2】EUV用ミラー母材6枚を組み合わせたEUV露光装置投影系ミラー群
【図3】応力緩和層を下地に成膜した測定用反射膜を施した、EUV用ミラー母材
【図4】測定用反射膜として、石英基板上にSi膜10nmおよびその上にSiO2膜1nmを施し、さらにその上にEUV反射用多層膜を成膜したEUV用ミラー。
【符号の説明】
【0016】
101 石英ミラー母材
102 厚さ10nmのSi膜
103 厚さ 1nmのSiO2
201 露光装置投影系光学系ミラー母材1
202 露光装置投影系光学系ミラー母材2
203 露光装置投影系光学系ミラー母材3
204 露光装置投影系光学系ミラー母材4
205 露光装置投影系光学系ミラー母材5
206 露光装置投影系光学系ミラー母材6
207 露光装置レチクル面
208 露光装置結像面
301 ガラス母材
302 応力緩和用Mo膜30nm
303 厚さ50nmのSi膜
304 厚さ1nmのSiO2
401 ミラー母材
402 測定用反射膜
403 EUV多層膜ミラー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUV波長に用いられるミラーの母材の形状を測定する際において、反射率を上げるために、母材に1層以上からなる反射膜を付けることを特徴とする測定方法。
【請求項2】
EUV波長に用いられるミラーの母材形状を組上げて鏡筒形状にして測定する際において、反射率を上げるために、母材に1層以上からなる反射膜を付けることを特徴とする測定方法。
【請求項3】
請求項1および、2記載の反射膜とは、Si、Ru、Mo、C、のいずれか、もしくはそれらを含む材料であることを特徴とする。
【請求項4】
EUVミラーは、請求項1から3記載の反射膜を剥がさずにその上からEUV光反射用の膜を成膜されていることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−214809(P2006−214809A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26411(P2005−26411)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】