説明

EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクスの製造方法、および該マスクブランクス用の機能膜付基板の製造方法

【課題】スパッタリングターゲットに起因する異物低減可能なEUVマスクブランクスの製造方法の提供。
【解決手段】基板11上にMo/Si多層反射膜12、保護層13としてRu膜またはRu化合物膜を、イオンビームスパッタリング法を用いて実施し、Mo/Si多層反射膜12のSi膜成膜時、および、Ru膜またはRu化合物膜成膜時に、ターゲット角度、プロセスガス種類、プロセスガス圧力、イオンソースのRFパワー、サプレッサ電圧、イオンビーム電圧、および、イオンビーム電流をほぼ同一とし、Si膜成膜に使用したスパッタリングターゲットのエロージョン領域に基づき、Ru膜またはRu化合物膜成膜に使用するスパッタリングターゲットのエロージョン領域、非エロージョン領域を予測し、RuターゲットおよびRu化合物ターゲットの予測される非エロージョン領域に粗面化処理を施してから、Ru膜またはRu化合物膜成膜を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造等に使用されるEUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)リソグラフィ用反射型マスクブランクス(以下、本明細書において、「EUVマスクブランクス」という。)の製造方法、および、該EUVマスクブランクス用の機能膜付基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体産業において、シリコン基板等に微細なパターンからなる集積回路を形成する上で必要な微細パターンの転写技術として、可視光や紫外光を用いたフォトリソグラフィ法が用いられてきた。半導体デバイスの微細化のため、例えばArFレーザ(波長193nm)と液浸法の組み合わせにより、解像限界を微細化する試みがなされているが、このような従来のフォトリソグラフィ法では限界に近づいてきた。そこでさらなる微細化のための露光技術として、ArFレーザよりさらに短波長のEUV光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。本明細書において、EUV光とは、軟X線領域または真空紫外線領域の波長の光線を指し、具体的には波長10〜20nm程度、特に13.5nm±0.3nm程度の光線を指す。
【0003】
EUV光は、あらゆる物質に対して吸収されやすく、かつこの波長で物質の屈折率が1に近いため、従来の可視光または紫外光を用いたフォトリソグラフィのような屈折光学系を使用することができない。このため、EUV光リソグラフィでは、反射光学系、すなわち反射型フォトマスクとミラーとが用いられる。
【0004】
マスクブランクスは、フォトマスク製造に用いられるパターニング前の積層体である。EUVマスクブランクスの場合、ガラス製等の基板上にEUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収層とがこの順で形成された構造を有している。反射層としては、低屈折率層であるモリブデン(Mo)膜と高屈折率層であるシリコン(Si)膜とを交互に積層することで、EUV光を層表面に照射した際の光線反射率が高められたMo/Si多層反射膜が通常使用される。
吸収層には、EUV光に対する吸収係数の高い材料、具体的にはたとえば、クロム(Cr)やタンタル(Ta)を主成分とする材料が用いられる。
【0005】
上記反射層と吸収層の間には、通常、保護層が形成される。該保護層は、吸収層にパターン形成する目的で実施されるエッチングプロセスによって反射層がダメージを受けないように、該反射層を保護する目的で設けられるものである。したがって、保護層には、エッチングプロセスによる影響を受けにくい材料を用いることが好ましい。また、マスクブランクスの反射層には保護層を形成した状態でEUV光が照射されることから、保護層にはEUV光線反射率を低下させないことも求められる。これらの理由から、保護層の構成材料としては、RuやRu化合物(RuBやRuNb、RuZr等)が好ましいと考えられている。
【0006】
EUVマスクブランクスの製造時において、Mo/Si多層反射膜、保護層、および、吸収層の成膜には、スパッタリング法が均質な膜厚を作製し易い点、タクトが短い点、膜厚制御がしやすい点等の理由から好ましく用いられる。ここで、Mo/Si多層反射膜を構成するMo膜およびSi膜、ならびに保護層の成膜には、イオンビームスパッタリング法が好ましく用いられ、吸収層の成膜にはマグネトロンスパッタリング法が好ましく用いられる。
【0007】
スパッタリング法は、荷電粒子によりスパッタリングターゲット表面に衝撃を与え、ターゲットからスパッタ粒子を叩き出し、ターゲットと対向させて配置した基板上にスパッタ粒子を堆積させて薄膜を形成する成膜法である。このような成膜方法を適用する際に用いられるスパッタリングターゲットには、成膜材料からなるターゲット本体を、バッキングプレートと呼ばれる基板で保持した構造が一般的に適用されている。
【0008】
スパッタリング法は、半導体素子や液晶表示素子などの電子部品の製造時において、各種電子部品の配線膜、電極、素子構成膜などを形成する際にも従来用いられている。このような電子部品の製造時でのスパッタリング法による成膜工程において、ターゲットに起因するダストの発生が重大な問題として認識されている(特許文献1,2参照)。ここで言うダストとは、例えば直径が0.2μm以上の微細な粒子(パーティクル)であり、このような微細粒子が成膜した薄膜中に混入すると、配線間のショートや配線のオープン不良などの原因となるため、半導体素子や液晶表示素子などの電子部品の製造歩留を低下させることになる。
【0009】
スパッタリング法に用いられるターゲットには、その原理からターゲット本体にはエロージョン領域と非エロージョン領域とが存在する。
スパッタされた粒子は基板に到達するものと、周辺に飛ぶもの、さらには再びターゲット本体側に戻ってくるものとがある。ターゲット側に戻ってくる粒子のうち、非エロージョン領域に付着した粒子は基本的には再びスパッタされることがないため、スパッタの進行が進むにつれて再付着物として堆積していく。この再付着物が何等かの要因で剥離すると、ダストとして成膜した薄膜中に混入することになる。
【0010】
特許文献1,2には、各種電子部品の配線膜、電極、素子構成膜などを形成する際に用いられるスパッタリングターゲットとして、ターゲット本体の非エロージョン領域などからの再付着物の剥離、脱落やスプラッシュ現象を有効に抑制することによって、ダストの発生を大幅に低減することを可能にしたスパッタリングターゲット、および該スパッタリングターゲットを用いたスパッタリング装置が提案されている。
【0011】
特許文献1で提案されているスパッタリングターゲットでは、タターゲット本体の少なくとも非エロージョン領域の一部に、表面処理として、エッチング処理またはポリッシング処理を施しておくことによって、再付着物の緻密化や平坦化、さらには下地との密着強度の向上などを図ることができ、これらによってスパッタ後期でも再付着物の剥離、脱落によるダスト発生を有効に抑えることが可能であるとされている。
一方、特許文献2で提案されているスパッタリングターゲットでは、ターゲット本体の非エロージョン領域の少なくとも一部に、PVD法またはCVD法により再付着粒子剥離防止膜を形成することによって、再付着物の緻密化や平坦化、さらには下地との密着強度の向上などを図ることができ、これらによってスパッタ後期でも再付着物の剥離、脱落によるダスト発生を有効に抑えることが可能であるとされている。
なお、特許文献1,2で提案されているスパッタリングターゲットは、マグネトロンスパッタリング法に用いられるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−69627号公報
【特許文献2】特開2002−146523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
EUVマスクブランクスの製造時においても、スパッタリングターゲットに起因するパーティクルの発生は重大な問題となる。特に、反射層および保護層の成膜時においては、パーティクルのEUVマスクブランクス中の存在数の規格が厳しいため、スパッタリングターゲットに起因するパーティクルの発生はより重大な問題となる。すなわち、スパッタリングターゲットに起因する70nm以上のサイズのパーティクルが、成膜した薄膜(反射層、保護層)中に混入すると、製造されるEUVマスクブランクスに欠点を生じさせるので問題となる。ここで、反射層および保護層の成膜時において、スパッタリングターゲットに起因するパーティクルの発生が問題となるのは、上記サイズのパーティクルが混入すると、EUVマスクブランクスから作製した反射型フォトマスクを用いてEUVリソグラフィを実施した際に、露光時の転写パターンに欠けや歪み等の異常が発生する等の問題があるためである。
【0014】
しかしながら、特許文献1,2で提案されているスパッタリングターゲットは、以下の理由から、EUVマスクブランクスの製造時に使用するスパッタリングターゲットには適用できないと考えられる。
【0015】
第1の理由として、使用するスパッタリング方法が異なる点が挙げられる。
EUVマスクブランクスの製造時において、Mo/Si多層反射膜および保護層の成膜には、上述したように、イオンビームスパッタリング法が好ましく用いられるが、特許文献1,2で提案されているスパッタリングターゲットは、マグネトロンスパッタリング法に用いられるものである。
イオンビームスパッタリング法と、マグネトロンスパッタリング法では、その原理の違いにより、ターゲットにおけるエロージョン領域、および、非エロージョン領域の位置関係が異なってくる。
【0016】
第2の理由として、使用するスパッタリングターゲットの数が異なる点が挙げられる。
特許文献1,2で提案されているスパッタリングターゲットは、各種電子部品の配線膜、電極、素子構成膜などを形成する際に用いられるものであるが、これらの場合、形成する膜に応じた組成の1種類のスパッタリングターゲットを用いて成膜を行うことになる。したがって、形成する膜に応じた組成の1種類のスパッタリングターゲットについて、非エロージョン領域の一部に表面処理としてエッチング処理またはポリッシング処理を施す、または、非エロージョン領域の少なくとも一部にPVD法またはCVD法により再付着粒子剥離防止膜を形成することにより、再付着物の緻密化や平坦化、さらには下地との密着強度の向上などを図ることができ、これらによってスパッタ後期でも再付着物の剥離、脱落によるダスト発生を有効に抑えることが可能であるとされている。
一方、EUVマスクブランクスの製造時には、Mo/Si多層反射膜を構成するMo膜およびSi膜、保護層、ならびに、吸収層を成膜するため、少なくとも4種類のスパッタリングターゲットを用いて成膜を行うことになる。ここで、形成にマグネトロンスパッタリング法が好ましく用いられる吸収層の場合、形成にイオンビームスパッタリング法が好ましく用いられるMo/Si多層反射膜および保護層とは異なる成膜チャンバ内で形成されるが、Mo/Si多層反射膜を構成するMo膜およびSi膜、ならびに保護層は、Mo/Si多層反射膜の各層の酸化、特に多層反射膜最上層の酸化を防止し反射率の低下を抑制する点、タクトが短い点などの理由から同一の成膜チャンバ内で成膜することが好ましい。
この場合、少なくとも3種類のスパッタリングターゲットを用いて、同一の成膜チャンバ内で成膜を行うことになるが、これらのスパッタリングターゲットの全てについて、非エロージョン領域を特定し、該非エロージョン領域の一部に表面処理としてエッチング処理またはポリッシング処理を施す、または、非エロージョン領域の少なくとも一部にPVD法またはCVD法により再付着粒子剥離防止膜を形成することは煩雑であり、EUVマスクブランクス製造時における生産性の低下につながるので好ましくない。
【0017】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、スパッタリングターゲットに起因する異物を低減することができるEUVマスクブランクスの製造方法、および、該マスクブランクス用の機能膜付基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
(1)EUVマスクブランクスの製造時に使用するスパッタリングターゲットの中でも、保護層の成膜時に使用するRuターゲットまたはRu化合物ターゲットのように、Mo/Si多層反射膜を構成するMo膜およびSi膜の成膜時に使用するMoターゲットおよびSiターゲットに比べて膜応力が非常に高い材料を用いてイオンビームスパッタリングを実施した際に、非エロージョン領域に再付着した粒子が剥離してパーティクルとなる傾向が強い。
(2)EUVマスクブランクスの製造時に使用するスパッタリングターゲットの中でも、Mo/Si多層反射膜を構成するSi膜の成膜に使用するSiターゲットが、エロージョン領域と非エロージョン領域との境界が明確であり、目視によってエロージョン領域および非エロージョン領域を確認できる。
(3)Mo/Si多層反射膜の成膜と保護層をなすRu膜またはRu化合物膜の成膜を同一の成膜チャンバ内でイオンビームスパッタリング法を用いて実施し、かつ、Mo/Si多層反射膜のSi膜の成膜時、および、Ru膜またはRu化合物膜の成膜時において、ターゲット角度、プロセスガス種類、プロセスガス圧力、イオンソースのRFパワー、サプレッサ電圧、イオンビーム電圧、および、イオンビーム電流を、後述するようにほぼ同一とした場合、Mo/Si多層反射膜のSi膜の成膜に使用するSiターゲットと、保護層をなすRu膜またはRu化合物膜の成膜時に使用するRuターゲットまたはRu化合物ターゲットと、では、ターゲットにおける実際のエロージョン領域の範囲がほぼ一致し、かつ、Siターゲットのほうが目視確認可能なエロージョン領域の範囲が広い。
【0019】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、基板上に、モリブデン(Mo)膜とシリコン(Si)膜とを交互に成膜させて、Mo/Si多層反射膜を形成する工程、および、該多層反射膜上に保護層としてルテニウム(Ru)膜またはRu化合物膜を成膜する工程を有するEUVリソグラフィ(EUVL)用反射層付基板の製造方法であって、
前記Mo膜、前記Si膜、および、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜を、同一の成膜チャンバ内においてイオンビームスパッタリング法を用いて実施し、かつ、前記Si膜の成膜、および、Ru膜またはRu化合物膜の成膜を下記(1)〜(3)を満たす条件で実施し、
前記Si膜の成膜に使用したスパッタリングターゲット(Siターゲット)のエロージョン領域に基づいて、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜に使用するスパッタリングターゲット(RuターゲットまたはRu化合物ターゲット)のエロージョン領域および非エロージョン領域を予測し、前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域に粗面化処理を施してから、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜を実施することを特徴とするEUVL用反射層付基板の製造方法を提供する。
(1)Si膜の成膜と、Ru膜またはRu化合物膜の成膜と、で同一種類のプロセスガスを使用する。
(2)Ru膜またはRu化合物膜の成膜におけるターゲット角度、プロセスガス圧力、イオンソースのRFパワー、サプレッサ電圧、イオンビーム電圧、および、イオンビーム電流を、Si膜の成膜時における条件に対して±5%以下の変動量差とする。
(3)(2)における変動量差の絶対値の和を10%以下とする。
【0020】
本発明のEUVL用反射層付基板の製造方法において、前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域の表面粗さRaが1μm以上となるように粗面化処理を施すことが好ましい。
【0021】
また、本発明のEUVL用反射層付基板の製造方法において、前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域のうち、少なくとも前記予測されるエロージョン領域と前記予測される非エロージョン領域の境界線から、ターゲット最大寸法の1/15以上ターゲット外縁側に離れた全てに粗面化処理を施すことが好ましい。
【0022】
また、本発明は、基板上に、モリブデン(Mo)膜とシリコン(Si)膜とを交互に成膜させて、Mo/Si多層反射膜を形成する工程、該多層反射膜上に保護層としてルテニウム(Ru)膜またはRu化合物膜を成膜する工程、および、前記Ru膜またはRu化合物膜上にEUV光を吸収する吸収層を形成する工程を少なくとも有するEUVリソグラフィ(EUVL)用反射型マスクブランクスの製造方法であって、
前記Mo膜、前記Si膜、および、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜を、同一の成膜チャンバ内においてイオンビームスパッタリング法を用いて実施し、かつ、前記Si膜の成膜、および、Ru膜またはRu化合物膜の成膜を下記(1)〜(3)を満たす条件で実施し、
前記Si膜の成膜に使用したスパッタリングターゲット(Siターゲット)のエロージョン領域に基づいて、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜に使用するスパッタリングターゲット(RuターゲットまたはRu化合物ターゲット)のエロージョン領域および非エロージョン領域を予測し、前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域に粗面化処理を施してから、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜を実施することを特徴とするEUVL用反射型マスクブランクスの製造方法を提供する。
(1)Si膜の成膜と、Ru膜またはRu化合物膜の成膜と、で同一種類のプロセスガスを使用する。
(2)Ru膜またはRu化合物膜の成膜におけるターゲット角度、プロセスガス圧力、イオンソースのRFパワー、サプレッサ電圧、イオンビーム電圧、および、イオンビーム電流を、Si膜の成膜時における条件に対して±5%以下の変動量差とする。
(3)(2)における変動量差の絶対値の和を10%以下とする。
【0023】
本発明のEUVL用反射型マスクブランクスの製造方法において、前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域の表面粗さRaが1μm以上となるように粗面化処理を施すことが好ましい。
【0024】
本発明のEUVL用反射型マスクブランクスの製造方法において、前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域のうち、少なくとも前記予測されるエロージョン領域と前記予測される非エロージョン領域の境界線から、ターゲット最大寸法の1/15以上ターゲット外縁側に離れた領域全てに粗面化処理を施すことが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、EUVマスクブランクス(またはEUVL用反射層付基板)の製造時に使用するスパッタリングターゲットに起因するパーティクルを抑制することができる。それにより、欠点のないEUVマスクブランクス(またはEUVL用反射層付基板)を得ることができる。
本発明では、Mo/Si多層反射膜のSi膜の成膜時に使用するSiターゲットの、非エロージョン領域との境界が明確なエロージョン領域に基づいて、保護層の成膜時に使用するRuターゲットまたはRu化合物ターゲットのエロージョン領域および非エロージョン領域を予測するため、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットにおける非エロージョン領域を特定し、該非エロージョン領域に粗面化処理を施すのに要する時間を短縮することができ、EUVマスクブランクス製造時における生産性が向上する。
しかも、Mo/Si多層反射膜の成膜と保護層をなすRu膜またはRu化合物膜の成膜を同一の成膜チャンバ内でイオンビームスパッタリング法を用いて実施し、かつ、Mo/Si多層反射膜のSi膜の成膜時、および、Ru膜またはRu化合物膜の成膜時において、ターゲット角度、プロセスガス種類、プロセスガス圧力、イオンソースのRFパワー、サプレッサ電圧、イオンビーム電圧、および、イオンビーム電流を、後述するようにほぼ同一とした場合、Siターゲットと、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットにおける実際のエロージョン領域の範囲がほぼ一致し、かつ、Siターゲットのほうが目視確認可能なエロージョン領域の範囲が広いため、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットのエロージョン領域に粗面化処理を施すおそれがなく、Ru膜またはRu化合物膜の成膜時に、新たなパーティクルの発生源を生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の方法により製造されるEUVマスクブランクスの1実施形態を示す概略断面図である。
【図2】図2は、実施例1でRuターゲットのエロージョン領域および非エロージョン領域の予測に使用したSiターゲットを示した写真である。
【図3】図3は、図2に示すSiターゲットとともにMo/Si多層反射膜の成膜に使用したMoターゲットを示した写真である。
【図4】図4は、図2に示すSiターゲット、および、図3に示すMoターゲットとともに反射層付基板の製造に使用したRuターゲットを示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の方法により製造されるEUVマスクブランクスの1実施形態を示す概略断面図である。図1に示すマスクブランクス1は、基板11上にEUV光を反射する反射層12、該反射層12を保護するための保護層13、および、EUV光を吸収する吸収層14がこの順に形成されている。
ここで、反射層12は、モリブデン(Mo)膜とシリコン(Si)膜とを交互に積層させたMo/Si多層反射膜であり、保護層13は、Ru膜またはRu化合物(RuBやRuNb、RuZr等)膜である。吸収層14は、具体的な膜材料については後述するが、EUV光に対する吸収係数の高い材料で形成される膜である。
【0028】
上述したように、EUVマスクブランクスの反射層および保護層の成膜にはイオンビームスパッタリング法が好ましく用いられる。本発明においても、反射層12をなすMo/Si多層反射膜を構成するMo膜およびSi膜、ならびに、保護層13をなすRu膜またはRu化合物膜の成膜にはイオンビームスパッタリング法を用いる。より具体的には、反射層12をなすMo/Si多層反射膜を構成するMo膜およびSi膜、ならびに、保護層13をなすRu膜またはRu化合物膜の成膜は、同一の成膜チャンバ内においてイオンビームスパッタリング法を用いて実施する。
反射層12をなすMo/Si多層反射膜を構成するMo膜およびSi膜、ならびに、保護層13をなすRu膜またはRu化合物膜の成膜を同一の成膜チャンバ内で実施することは、Mo/Si多層反射膜の各層の酸化、特に多層反射膜最上層の酸化を防止し反射率の低下を抑制する点、タクトが短い点などの理由から好ましい。また、これらの成膜を同一の成膜チャンバ内においてイオンビームスパッタリング法を用いて実施することで、後述する手順によって、Ru膜またはRu化合物膜の成膜に使用するスパッタリングターゲットの非エロージョン領域を予測することができる。
【0029】
本発明では、反射層12をなすMo/Si多層反射膜を構成するMo膜およびSi膜のうちSi膜の成膜時、および、保護層13をなすRu膜またはRu化合物膜の成膜時において、ターゲット角度、プロセスガス種類、プロセスガス圧力、イオンソースのRFパワー、サプレッサ電圧、イオンビーム電圧、および、イオンビーム電流を、後述するようにほぼ同一とする。具体的には、Si膜の成膜、および、Ru膜またはRu化合物膜の成膜を下記(1)〜(3)を満たす条件で実施する。
(1)Si膜の成膜と、Ru膜またはRu化合物膜の成膜と、で同一種類のプロセスガスを使用する。
(2)Ru膜またはRu化合物膜の成膜におけるターゲット角度、プロセスガス圧力、イオンソースのRFパワー、サプレッサ電圧、イオンビーム電圧、および、イオンビーム電流を、Si膜の成膜時における条件に対して±5%以下の変動量差とする。
(3)(2)における変動量差の絶対値の和を10%以下とする。
(2)については、これらの条件の変動量差を±3%以下とすることがより好ましい。
これらの条件をほぼ同一とする理由については後述する。
【0030】
本発明では、Si膜の成膜時に使用するSiターゲットにおけるエロージョン領域に基づいて、Ru膜またはRu化合物膜の成膜時に使用するRuターゲットまたはRu化合物ターゲットにおけるエロージョン領域および非エロージョン領域を予測する。
Siターゲットにおけるエロージョン領域に基づいて、Ru膜またはRu化合物膜の成膜時に使用するRuターゲットまたはRu化合物ターゲットにおけるエロージョン領域および非エロージョン領域を予測するのは以下の理由による。
【0031】
本発明において、Mo/Si多層反射膜のSi膜の成膜時、および、保護層をなすRu膜またはRu化合物膜の成膜時において、ターゲット角度、プロセスガス種類、プロセスガス圧力、イオンソースのRFパワー、サプレッサ電圧、イオンビーム電圧、および、イオンビーム電流を、上述したようにほぼ同一とするのは、後述する実施例に示すように、これらの膜を同一の成膜チャンバ内でイオンビームスパッタリング法を用いて成膜した場合、成膜時に使用するターゲットにおけるエロージョン領域がほぼ一致するからである。より具体的には、Si膜の成膜時に使用するSiターゲットと、Ru膜またはRu化合物膜の成膜時に使用するRuターゲットまたはRu化合物ターゲットと、では、ターゲットにおける実際のエロージョン領域の範囲がほぼ一致し、かつ、Siターゲットのほうが目視確認可能なエロージョン領域の範囲が広くなる。
なお、本発明では、Mo/Si多層反射膜のSi膜の成膜時、および、保護層をなすRu膜またはRu化合物膜の成膜時において、上述した条件をほぼ同一にすればよく、成膜時のおける他の条件はほぼ同一にする必要はない。このような他の条件としては、例えば、成膜時間が挙げられる。成膜時間をほぼ同一とする必要がないのは、成膜時間は形成する膜の厚さに応じて変えるべきものであり、かつ、ターゲットにおけるエロージョン領域および非エロージョン領域の位置には何ら影響を及ぼさないからである。
また、Mo/Si多層反射膜を構成するMo膜およびSi膜のうち、Si膜の成膜時に使用するSiターゲットのエロージョン領域に基づいて、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットにおけるエロージョン領域および非エロージョン領域を予測するのは、後述する実施例に示すように、MoターゲットよりもSiターゲットのほうが、ターゲットにおけるエロージョン領域と非エロージョン領域との境界が明確であり、目視によってエロージョン領域および非エロージョン領域を確認できるからである。
【0032】
本発明では、Siターゲットのエロージョン領域に基づいて予測されるRuターゲットまたはRu化合物ターゲットのエロージョン領域および非エロージョン領域のうち、非エロージョン領域に粗面化処理を施してから、Ru膜またはRu化合物膜の成膜を実施する。
RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの非エロージョン領域に粗面化処理を施してから、Ru膜またはRu化合物膜の成膜を実施する理由は以下の通り。
【0033】
上述したように、EUVマスクブランクスの製造時において、反射層および保護層の成膜時におけるスパッタリングターゲットに起因するパーティクルの発生は重大な問題となる。
本願発明者らは、反射層および保護層の成膜に使用するスパッタリングターゲット、具体的には、Mo/Si多層反射膜の成膜に使用するMoターゲットおよびSiターゲット、Ru膜の成膜に使用するRuターゲット、Ru化合物の成膜に使用するRu化合物ターゲット(具体的には、RuBターゲット、RuNbターゲット、RuZrターゲット等)について、イオンビームスパッタリング実施時におけるスパッタリングターゲットに起因するパーティクルの発生の有無を確認したところ、RuターゲットおよびRu化合物ターゲットのように、Mo/Si多層反射膜を構成するMo膜およびSi膜の成膜時に使用するMoターゲットおよびSiターゲットに比べて膜応力が非常に高い材料を用いてイオンビームスパッタリングを実施した際に、非エロージョン領域に再付着した粒子が剥離してパーティクルとなる傾向が強いことを確認した。MoターゲットおよびSiターゲットの場合、EUVマスクブランクスの製造時において、Mo/Si多層反射膜の成膜時に想定される条件では、イオンビームスパッタリングの実施時に非エロージョン領域に再付着した粒子が剥離してパーティクルとなることはなかった。
【0034】
本発明では、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの非エロージョン領域に粗面化処理を施してから、Ru膜またはRu化合物膜の成膜を実施することにより、Ru膜またはRu化合物膜の成膜時において、スパッタリングターゲットに起因するパーティクルの発生を抑制する。
RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの非エロージョン領域に粗面化処理を施すことによって、非エロージョン領域に再付着した粒子と、非エロージョン領域と、の密着性が向上するので、非エロージョン領域に再付着した粒子が剥離してパーティクルとなることが抑制され、スパッタリングターゲットに起因するパーティクルの発生が抑制される。
【0035】
本発明において、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの非エロージョン領域の表面粗さRaが1μm以上となるように粗面化処理を施すことが、非エロージョン領域に再付着した粒子の剥離を抑制するうえで好ましい。
本発明において、非エロージョン領域の表面粗さRaが1.7μm以上となるように粗面化処理を施すことがより好ましく、7.5μm以上となるように粗面化処理を施すことがさらに好ましく、20μm以上となるように粗面化処理を施すことが特に好ましい。
【0036】
本発明において、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの非エロージョン領域のうち、少なくともエロージョン領域と非エロージョン領域の境界線から、ターゲット最大寸法の1/15以上ターゲット外縁側に離れた領域全てに粗面化処理を施すことが、非エロージョン領域に再付着した粒子の剥離を抑制するうえで好ましく、前記境界線から、ターゲット最大寸法の1/30以上ターゲット外縁側に離れた領域全てに粗面化処理を施すことがより好ましく、前記境界線から、ターゲット最大寸法の1/60以上ターゲット外縁側に離れた領域全てに粗面化処理を施すことがさらに好ましく、非エロージョン領域全てに粗面化処理を施すことが特に好ましい。
但し、前記境界線からターゲット中心側の領域にも粗面化処理を施すとエロージョン領域にも粗面化処理を施すことになる。エロージョン領域に粗面化処理を施すと、エロージョン領域の粗面化処理された部分がスパッタされることとなり、エロージョン領域の粗面化処理された面積に応じて、スパッタリングターゲットに起因するパーティクルがかえって増加するおそれがあるため好ましくない。このため、エロージョン領域と非エロージョン領域の境界線からターゲット中心側への距離が、ターゲット最大寸法の1/30より大きいターゲット中心側の領域には粗面化処理を施さないことが好ましく、前記境界線からターゲット中心側への距離が、ターゲット最大寸法の1/60より大きいターゲット中心側の領域には粗面化処理を施さないことがより好ましい。
なお、上述したように、Siターゲットと、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットと、では、ターゲットにおける実際のエロージョン領域の範囲がほぼ一致し、かつ、Siターゲットのほうが目視確認可能なエロージョン領域の範囲が広いため、Siターゲットのエロージョン領域に基づいて、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットのエロージョン領域および非エロージョン領域を予測し、該非エロージョン領域に粗面化処理を施すことで、上述した部位への粗面化処理を容易に達成することができる。
【0037】
後述する実施例では、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの非エロージョン領域に粗面化処理を施す目的で、該非エロージョン領域に市販のパーティクルゲッター(株式会社サンリック製)を取りつけた。パーティクルゲッターは、スパッタリング装置のような薄膜形成装置におけるパーティクルの発生を防止する目的で、装置内壁や、シャッター、シールド等の装置内の機器に取り付けられるものである。パーティクルゲッターとしては、たとえば、以下の特許文献にも開示されたものを用いることができる。
特開平3−87357号公報、特開平5−140745号公報、特開平7−18423号公報、特開2001−234325号公報、特開2004−315948号公報。
但し、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの非エロージョン領域に施す粗面化処理は、エロージョン領域表面の改質、汚染等の問題を生じない限り特に限定されず、金属表面を対象とした各種粗面化処理であってよい。
このような粗面化処理の具体例としては、エッチング処理、ポリッシング処理、研磨処理等が挙げられる。また、ターゲットの非エロージョン領域に所望の表面粗さを有する金属薄膜を形成することや粗面化された材料を貼付することもできる。また、ターゲットの非エロージョン領域を直接粗面化しなくても、粗面化した金属板等を該非エロージョン領域直上に配置してもよい。
【0038】
本発明では、EUVマスクブランクスを20枚程製造する過程で、Mo/Si多層反射膜成膜後のSiターゲットのエロージョン領域を確認し、確認されたSiターゲットのエロージョン領域に基づいてRuターゲットまたはRu化合物ターゲットのエロージョン領域および非エロージョン領域を予測し、該非エロージョン領域に対し粗面化処理を施した後、非エロージョン領域に対し粗面化処理が施されたRuターゲットまたはRu化合物ターゲットを用いてRu膜またはRu化合物膜の成膜を実施することも可能であるが、過去に実施したEUVマスクブランクスの製造工程から得られた知見に基づいて、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの非エロージョン領域を予測し、該非エロージョン領域に対し粗面化処理が施されたRuターゲットまたはRu化合物ターゲットを用いて、EUVマスクブランクスの製造を行ってもよい。すなわち、これから実施するEUVマスクブランクスの製造とSi膜の成膜条件を同一条件で実施したEUVマスクブランクスの製造工程で使用したSiターゲットのエロージョン領域に基づいて、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットのエロージョン領域および非エロージョン領域を予測し、該非エロージョン領域に対し粗面化処理が施されたRuターゲットまたはRu化合物ターゲットと、MoターゲットおよびSiターゲットをスパッタリング装置の所定の位置に取り付けた後に、新たなEUVマスクブランクスの製造に使用する基板をスパッタリング装置の所定の位置に配置し、基板上にMo/Si多層反射膜を成膜する工程、および、該多層反射膜上に保護層としてRu膜またはRu化合物膜を成膜する工程を実施してもよい。この場合、RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの非エロージョン領域に予め粗面化処理が施されているため、Mo/Si多層反射膜の成膜後にSiターゲットのエロージョン領域を確認し、確認されたSiターゲットのエロージョン領域に基づいてRuターゲットまたはRu化合物ターゲットのエロージョン領域および非エロージョン領域を予測し、該非エロージョン領域に対し粗面化処理を施す操作が不要である。
【0039】
以下、EUVマスクブランクスの製造に使用する材料や、反射層、保護層および吸収層の成膜条件などについて説明する。
【0040】
[基板]
基板は、EUVマスクブランクスの基板としての特性を満たすことが要求される。そのため、基板は、露光時の温度において、低熱膨張係数(0±1.0×10-7/℃であることが好ましく、より好ましくは0±0.3×10-7/℃、さらに好ましくは0±0.2×10-7/℃、さらに好ましくは0±0.1×10-7/℃、特に好ましくは0±0.05×10-7/℃)を有し、平滑性、平坦性、およびマスクブランクスまたはマスクパターン形成後のEUVマスクの洗浄等に用いる洗浄液への耐性に優れたものが好ましい。基板としては、具体的には低熱膨張係数を有するガラス、例えばSiO2−TiO2系ガラス等を用いるが、これに限定されず、β石英固溶体を析出した結晶化ガラスや石英ガラスやシリコンや金属などの基板を用いることもできる。また、基板上に応力補正膜のような膜を成膜してもよい。
基板は、0.15nm rms以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度を有していることが、製造後のEUVマスクにおいて高反射率および高い転写精度が得られるために好ましい。
基板の大きさや厚みなどは、製造されるEUVマスクの設計値等により適宜決定されるものである。例えば、一例を挙げると、外形6インチ(152.4mm)角で、厚さ0.25インチ(6.35mm)基板である。
基板の多層反射膜が成膜される側の表面(成膜面)には欠点が存在しないことが好ましい。しかし、存在している場合であっても、凹状欠点および/または凸状欠点によって位相欠点が生じないように、凹状欠点の深さおよび凸状欠点の高さが2nm以下であり、かつこれら凹状欠点および凸状欠点の半値幅(FWHM(full width of half maximum))が60nm以下であることが好ましい。
【0041】
[反射層]
上述したように、本発明により製造されるEUVマスクブランクスの反射層は、モリブデン(Mo)膜とシリコン(Si)膜とを交互に積層させたMo/Si多層反射膜である。これは、低屈折率膜であるMo膜と、高屈折率膜であるSi膜と、を交互に複数回積層させることで、高EUV光線反射率を達成できるからである。
ここで、EUV光線反射率とは、EUV光の波長域の光線を入射角2〜10度で照射した際の12〜15nmの波長範囲内におけるEUV光線の反射率を意図している。
反射層におけるEUV光線反射率は、最大値が60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。
Mo/Si多層反射膜の場合に、EUV光線反射率の最大値が60%以上の反射層とするには、膜厚2.3±0.1nmのMo層と、膜厚4.5±0.1nmのSi層とを繰り返し単位数が30〜60になるように積層させればよい。
Mo/Si多層反射膜は、基板上にMo膜およびSi膜をこの順に交互に積層させたもの、基板上にSi膜およびMo膜をこの順に交互に積層させたもののいずれであってもよい。但し、後者の場合、最後に形成するMo膜の上にSi膜をさらに形成することが最上層の酸化防止の点から好ましい。
【0042】
上述したように、本発明ではイオンビームスパッタリング法を用いてMo/Si多層反射膜を成膜する。成膜の手順としては、スパッタリングターゲットとしてMoターゲットを用い、プロセスガスとしてArガス(ガス圧1.3×10-2Pa〜2.7×10-2Pa)を使用して、イオン加速電圧300〜1500V、成膜速度0.03〜0.30nm/secで膜厚2.3nmとなるようにMo膜を成膜し、次に、同一の成膜チャンバ内で、ターゲットとしてSiターゲットを用い、プロセスガスとしてArガス(ガス圧1.3×10-2Pa〜2.7×10-2Pa)を使用して、イオン加速電圧300〜1500V、成膜速度0.03〜0.30nm/secで膜厚4.5nmとなるようにSi膜を成膜することが好ましい。これを1周期として、Mo膜およびSi膜を40〜50周期積層させることによりMo/Si多層反射膜が成膜される。
また、上記同様の手段で、成膜の順序を逆にし、Si膜を成膜した後にMo膜を成膜し、これを1周期としてSi膜およびMo膜を40〜50周期積層させてSi/Mo多層反射膜としてもよい。この場合、最後の周期のMo膜の上に上記同様の手段で4.5nmのSi膜を成膜することが最上層の酸化防止の点から好ましい。
【0043】
[保護層]
上述したように、本発明により製造されるEUVマスクブランクスの保護層は、Ru膜またはRu化合物(RuBやRuNb、RuZr等)膜である。
EUVマスクブランクスにおいて、保護層は、エッチングプロセス、通常はドライエッチングプロセスにより吸収層にパターン形成する際に、反射層がエッチングプロセスによるダメージを受けないよう反射層を保護する目的で設けられる。したがって保護層の材質としては、吸収層のエッチングプロセスによる影響を受けにくい、つまりこのエッチング速度が吸収層よりも遅く、しかもこのエッチングプロセスによるダメージを受けにくい物質が選択される。また、保護層は、保護層を形成した後であっても反射層でのEUV光線反射率を損なうことがないことが求められる。
保護層として、Ru膜またはRu化合物(RuBやRuNb、RuZr等)膜を形成することで、上記の条件を満足することができる。
保護層がRu化合物層である場合、Ruの含有率は50at%以上、80at%以上、特に90at%以上であることが好ましい。但し、保護層がRuNb膜の場合、保護層中のNbの含有率が10〜40at%程度であることが好ましい。
【0044】
パターンが微細になるに従いエッジラフネスの影響が顕著になるため、吸収層表面は平滑であることが要求される。吸収層表面が平滑でないと、該吸収層に形成されるパターンのエッジラフネスが大きくなり、パターンの寸法精度が悪くなるからである。
その上に吸収層が形成されることから、保護層表面も平滑であることが求められる。保護層表面の表面粗さが大きいと、該保護層上に形成される吸収層の表面粗さが大きくなるからである。
このような観点から、保護層表面の表面粗さが0.5nm rms以下であることが好ましい。保護層表面の表面粗さが0.5nm rms以下であれば、該保護層上に形成される吸収層表面が十分平滑であるため、エッジラフネスの影響によってパターンの寸法精度が悪化するおそれがないからである。保護層表面の表面粗さは0.4nm rms以下であることがより好ましく、0.3nm rms以下であることがさらに好ましい。
【0045】
保護層の厚さは、1〜10nmであることが、EUV光線反射率を高め、かつ耐エッチング特性を得られるという理由から好ましい。保護層の厚さは、1〜5nmであることがより好ましく、2〜4nmであることがさらに好ましい。
【0046】
上述したように、本発明ではイオンビームスパッタリング法を用いて、保護層としてのRu膜またはRu化合物膜を成膜する。保護層としてRu膜またはRu化合物(RuBやRuNb、RuZr等)膜を成膜する場合、成膜の手順としては、スパッタリングターゲットとしてRuターゲットまたはRu化合物(RuBやRuNb、RuZr等)ターゲットを用い、プロセスガスとしてArガス(ガス圧1.3×10-2Pa〜2.7×10-2Pa)を使用して、イオン加速電圧300〜1500V、成膜速度0.03〜0.30nm/secでRu膜またはRu化合物(RuBやRuNb、RuZr等)膜を成膜すればよい。
【0047】
なお、本発明のEUVマスクブランクスの吸収層を形成する前の状態、すなわち、図1に示すマスクブランクス1の吸収層14を除いた構造が本発明の反射層付基板である。本発明の反射層付基板は、EUVマスクブランクスの前駆体をなすものである。
【0048】
[吸収層]
EUVマスクブランクスの吸収層に特に要求される特性は、EUV光線反射率が極めて低いことである。具体的には、EUV光の波長領域の光線を吸収層表面に照射した際に、波長13.5nm付近の最大光線反射率が0.5%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましい。
上記の特性を達成するため、EUV光の吸収係数が高い材料で構成されることが好ましい。EUV光の吸収係数が高い材料の具体例としては、タンタル(Ta)を主成分とする材料が挙げられる。
タンタル(Ta)を主成分とする材料で構成される吸収層の具体例としては、Ta、B、Siおよび窒素(N)を以下に述べる比率で含有する吸収層(TaBSiN膜)が挙げられる。
Bの含有率 1at%以上5at%未満、好ましくは1〜4.5at%、より好ましくは1.5〜4at%
Siの含有率 1〜25at%、好ましくは1〜20at%、より好ましくは2〜12at%
TaとNとの組成比(Ta:N) 8:1〜1:1
Taの含有率 好ましくは50〜90at%、より好ましくは60〜80at%
Nの含有率 好ましくは5〜30at%、より好ましくは10〜25at%
【0049】
上記組成の吸収層(TaBSiN膜)は、その結晶状態はアモルファスであり、表面の平滑性に優れている。
上記組成の吸収層(TaBSiN膜)であれば、吸収層表面の表面粗さを0.5nm rms以下とすることができる。吸収層表面の表面粗さが大きいと、吸収層に形成されるパターンのエッジラフネスが大きくなり、パターンの寸法精度が悪くなる。パターンが微細になるに従いエッジラフネスの影響が顕著になるため、吸収層表面は平滑であることが要求される。
吸収層表面の表面粗さが0.5nm rms以下であれば、吸収層表面が十分平滑であるため、エッジラフネスの影響によってパターンの寸法精度が悪化するおそれがない。
【0050】
吸収層の厚さは、50〜100nmであることが好ましい。
【0051】
上記組成の吸収層(TaBSiN膜)は、マグネトロンスパッタリング法を用いて成膜することができる。具体的には、下記(1)〜(3)の方法で成膜することができる。
(1)Taターゲット、BターゲットおよびSiターゲットを使用し、Arで希釈した窒素(N2)雰囲気中でこれらの個々のターゲットを同時に放電させることによって吸収層(TaBSiN膜)を成膜する。
(2)TaB化合物ターゲットおよびSiターゲットを用いて、これらのターゲットをArで希釈したN2雰囲気中で同時放電させることによって吸収層(TaBSiN膜)を成膜する。
(3)TaBSi化合物ターゲットを用いて、この3元素が一体化されたターゲットをArで希釈したN2雰囲気中で放電させることによって吸収層(TaBSiN膜)を成膜する。
なお、上述した方法のうち、2以上のターゲットを同時に放電させる方法((1)、(2))では、各ターゲットの投入電力を調節することによって、形成される吸収層の組成を制御することができる。
上記の中でも(2)および(3)の方法が、放電の不安定化や膜の組成や膜厚のばらつきを回避できる点で好ましく、(3)の方法が特に好ましい。TaBSi化合物ターゲットは、その組成がTa=50〜94at%、Si=5〜30at%、B=1〜20at%であることが、放電の不安定化や膜の組成や膜厚のばらつきを回避できる点で特に好ましい。
【0052】
上記例示した方法で吸収層(TaBSiN膜)を形成するには、具体的には以下の成膜条件で実施すればよい。
TaB化合物ターゲットおよびSiターゲットを使用する方法(2)
プロセスガス:ArとN2の混合ガス(N2ガス濃度3〜80vol%、好ましくは5〜30vol%、より好ましくは8〜15vol%。ガス圧1.0×10-1Pa〜10×10-1Pa、好ましくは1.0×10-1Pa〜5×10-1Pa、より好ましくは1.0×10-1Pa〜3×10-1Pa。)
投入電力(各ターゲットについて):30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W
成膜速度:2.0〜60nm/sec、好ましくは3.5〜45nm/sec、より好ましくは5〜30nm/sec
TaBSi化合物ターゲットを使用する方法(3)
プロセスガス:ArとN2の混合ガス(N2ガス濃度3〜80vol%、好ましくは5〜30vol%、より好ましくは8〜15vol%。ガス圧1.0×10-1Pa〜10×10-1Pa、好ましくは1.0×10-1Pa〜5×10-1Pa、より好ましくは1.0×10-1Pa〜3×10-1Pa。)
投入電力:30〜1000W、好ましくは50〜750W、より好ましくは80〜500W
成膜速度:2.0〜60nm/sec、好ましくは3.5〜45nm/sec、より好ましくは5〜30nm/sec
【0053】
本発明のEUVマスクブランクスの製造方法では、反射層、保護層および吸収層以外に、EUVマスクブランクスの分野において公知の機能膜をEUVマスクブランクスに設けてもよい。このような機能膜の具体例としては、例えば、特表2003−501823号公報に記載されているもののように、基板の静電チャッキングを促すために、基板の裏面側(成膜面に対して)に施される高誘電性コーティングが挙げられる。このような目的で基板の裏面に施す高誘電性コーティングは、シート抵抗が100Ω/□以下となるように、構成材料の電気伝導率と厚さを選択する。高誘電性コーティングの構成材料としては、公知の文献に記載されているものから広く選択することができる。例えば、特表2003−501823号公報に記載の高誘電率のコーティング、具体的には、シリコン、窒化チタン、モリブデン、クロム、タンタルシリサイドからなるコーティングを適用することができる。高誘電性コーティングの厚さは、例えば10〜1000nmとすることができる。
高誘電性コーティングは、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、電解メッキ法を用いて成膜することができる。
機能膜の具体例としては、他にも、マスクパターンの検査時のコントラストを向上させる目的で吸収層上に必要に応じて形成されるマスクパターンの検査光に対する低反射層、露光によるマスクパターン形成に必要で、吸収層(吸収層上に低反射層が形成されている場合には低反射層)上に塗布されるレジスト膜等が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例1
本実施例では、基板上に、反射層としてのMo/Si多層反射膜、および、保護層としてのRu膜が成膜された反射層付基板を以下の手順で作製した。
成膜用の基板11として、SiO2−TiO2系のガラス基板(外形6インチ(152.4mm)角、厚さ6.35mm)を使用した。このガラス基板の熱膨張率は0.2×10-7/℃、ヤング率は67GPa、ポアソン比は0.17、比剛性は3.07×1072/s2である。このガラス基板を研磨により、rmsが0.15nm以下の平滑な表面と100nm以下の平坦度に形成した。
【0056】
基板の裏面側には、マグネトロンスパッタリング法を用いて厚さ100nmのCrN膜を成膜することによって、シート抵抗100Ω/□の高誘電性コーティング(図示していない)を施した。
平板形状をした通常の静電チャックに、形成したCrN膜を用いて基板(外形6インチ(152.4mm)角、厚さ6.35mm)を固定して、該基板の表面上にイオンビームスパッタリング法を用いてMo膜およびSi膜を交互に成膜することを50周期繰り返すことにより、合計膜厚340nm((2.3nm+4.5nm)×50)のMo/Si多層反射膜を成膜した。
【0057】
Mo膜およびSi膜の成膜条件は以下の通りである。ここでターゲット角度0度とはターゲットがイオンソースに対向した場合である。
Mo膜の成膜条件
ターゲット:Moターゲット
プロセスガス:Arガス(ガス圧0.027Pa)
イオンソースのRFパワー:350W
サプレッサ電圧:−500V
イオンビーム電圧:600V
イオンビーム電流:0.3A
ターゲット角度:54度
成膜速度:0.044nm/sec
膜厚:2.3nm
Si膜の成膜条件
ターゲット:Siターゲット(ホウ素ドープ)
プロセスガス:Arガス(ガス圧0.027Pa)
イオンソースのRFパワー:350W
サプレッサ電圧:−500V
イオンビーム電圧:600V
イオンビーム電流:0.3A
ターゲット角度:54度
成膜速度:0.094nm/sec
膜厚:4.5nm
【0058】
次に、保護膜としてRu膜を、Mo/Si多層反射膜の成膜に使用したのと同一の成膜チャンバ内で、イオンビームスパッタ法を用いて成膜して反射層付基板を得た。ここで、Mo膜、Si膜およびRu膜の成膜時におけるMoターゲット、SiターゲットおよびRuターゲットの基板に対する設置位置、およびイオンソースに対するMoターゲット、Siターゲット、およびRuターゲットのターゲット角度は同一である。
Ruターゲットとしては、実施例1と同一の条件で反射層付基板を製造する際に使用したSiターゲット、すなわち、実施例1と同一の条件でSi膜を成膜するのに使用したSiターゲット、のエロージョン領域に基づいて予測したエロージョン領域および非エロージョン領域のうち、前記非エロージョン領域にパーティクルゲッター(株式会社サンリック製)を取りつけることによって粗面化処理を施したものを使用した。
図2は、Ruターゲットのエロージョン領域および非エロージョン領域の予測に使用したSiターゲットを示す。図2に示すSiターゲットは、実施例1と同一の条件で反射層付基板を製造するのに用いたもの、すなわち、実施例1と同一の条件でMo/Si多層反射膜のSi膜を成膜するのに用いたものである。図2に示すSiターゲットでは、エロージョン領域と非エロージョン領域との境界が明確であり、目視によってエロージョン領域および非エロージョン領域を確認できる。
図3に、図2に示すSiターゲットとともに、Mo/Si多層反射膜を成膜するのに使用したMoターゲットを示す。図3に示すMoターゲットは、実施例1と同一の条件で反射層付基板を製造するのに用いたもの、すなわち、実施例1と同一の条件でMo/Si多層反射膜のMo膜を成膜するのに用いたものである。図3から明らかなように、Moターゲットは、Siターゲットにくらべてエロージョン領域と非エロージョン領域との境界が明確ではなく、目視によってエロージョン領域および非エロージョン領域を確認するのに適していない。
図4に、図2に示すSiターゲットとともに、EUVマスクブランクスを製造するのに使用したRuターゲットを示す。図4に示すRuターゲットは、実施例1と同一の条件で反射層付基板を製造するのに用いたもの、すなわち、実施例1と同一の条件で保護層としてのRu膜を成膜するのに用いたものである。図2、4の比較から明らかなように、Ruターゲットと、Siターゲットと、はターゲットにおける実際のエロージョン領域の範囲がほぼ一致し、かつ、Siターゲットのほうが目視確認可能なエロージョン領域の範囲が広くなっている。ここで、Ruターゲットの実際のエロージョン領域のうち、目視確認不可能なエロージョン領域がエロージョンされていることは、パーティクルゲッターを同領域に取りつけてRu膜の成膜を実施した際に、パーティクルゲッターの素材であるCuが基板上に多く散見されたことから間接的に判断した。ここで、Cuの検出および分析には後述する欠点測定方法および欠点分析方法と同様の手順を用いた。
なお、Ruターゲットの実際のエロージョン領域のうち、目視確認不可能なエロージョン領域を特定するためのその他の方法としては、デプスメータを用いてエロージョンプロファイルを測定してもよい。これによりターゲットの掘れ具合(エロージョン具合)を正確に知ることができる。
保護層としてのRu膜の成膜条件は以下の通りである。
ターゲット:Ruターゲット
プロセスガス:Arガス(ガス圧0.027Pa)
イオンソースのRFパワー:350W
サプレッサ電圧:−500V
イオンビーム電圧:600V
イオンビーム電流:0.3A
ターゲット角度:54度
成膜速度:0.054nm/sec
膜厚:2.5nm
【0059】
上記の手順にしたがって、反射層付基板を20枚作製し、EUVマスクブランクス用欠点検査機(レーザーテック株式会社製M1350)を用いて大きさ70nm以上の欠点を測定し、そのうち大きさ100nm以上の全ての欠点について、FIB/SEM(FEI社製Altula835)およびEDX(Oxford Instruments社製INCA mics/x−stream//SEM Si(Li))を用いて欠点の組成分析を実施したところ、Ruパーティクルの個数は平均で1.550個/枚、標準偏差は0.887個/枚であった。
【0060】
比較例1
Ruターゲットにパーティクルゲッターを取りつけなかった点を除いて、実施例1と同様の手順を実施して、反射層付基板を45枚作製した。
実施例と同様の手順で大きさ70nm以上の欠点を測定し、そのうち大きさ100nm以上の全ての欠点について組成分析を実施し、Ruパーティクルの個数を測定したところ、平均で2.178個/枚、標準偏差は1.419個/枚であった。
実施例1および比較例1で得られた結果の差について、有意差と判断できるかどうかは、2群間の有意差検定を行えばよい。そこで、以下の手順で検定を実施した。
(1)まず、有意差検定を行う検定法を判断するため、2群それぞれの標本数、平均、標準偏差を用いてF検定を行い2群が等分散か、異分散であるかの判定を行った。
その結果、有意水準5%(信頼度95%)で異分散である、との結論を得た。
(2)次に、2群それぞれの標本数、平均、標準偏差を用いて、異分散である2群間の有意差検定に用いられる、ウェルチのt検定を用いて2群間の有意差検定を行ったところ、有意水準5%(信頼度95%)で2群間に有意差がある、との結論を得た。
これらより、実施例1および比較例1で得られた結果の差は偶然ではなく、有意差である、と判断した。
【符号の説明】
【0061】
1:マスクブランクス
11:基板
12:反射層(多層反射膜)
13:保護層
14:吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、モリブデン(Mo)膜とシリコン(Si)膜とを交互に成膜させて、Mo/Si多層反射膜を形成する工程、および、該多層反射膜上に保護層としてルテニウム(Ru)膜またはRu化合物膜を成膜する工程を有するEUVリソグラフィ(EUVL)用反射層付基板の製造方法であって、
前記Mo膜、前記Si膜、および、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜を、同一の成膜チャンバ内においてイオンビームスパッタリング法を用いて実施し、かつ、前記Si膜の成膜、および、Ru膜またはRu化合物膜の成膜を下記(1)〜(3)を満たす条件で実施し、
前記Si膜の成膜に使用したスパッタリングターゲット(Siターゲット)のエロージョン領域に基づいて、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜に使用するスパッタリングターゲット(RuターゲットまたはRu化合物ターゲット)のエロージョン領域および非エロージョン領域を予測し、前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域に粗面化処理を施してから、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜を実施することを特徴とするEUVL用反射層付基板の製造方法。
(1)Si膜の成膜と、Ru膜またはRu化合物膜の成膜と、で同一種類のプロセスガスを使用する。
(2)Ru膜またはRu化合物膜の成膜におけるターゲット角度、プロセスガス圧力、イオンソースのRFパワー、サプレッサ電圧、イオンビーム電圧、および、イオンビーム電流を、Si膜の成膜時における条件に対して±5%以下の変動量差とする。
(3)(2)における変動量差の絶対値の和を10%以下とする。
【請求項2】
前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域の表面粗さRaが1μm以上となるように粗面化処理を施すことを特徴とする請求項1に記載のEUVL用反射層付基板の製造方法。
【請求項3】
前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域のうち、少なくとも前記予測されるエロージョン領域と前記予測される非エロージョン領域の境界線から、ターゲット最大寸法の1/15以上ターゲット外縁側に離れた領域全てに粗面化処理を施すことを特徴とする請求項1または2に記載のEUVL用反射層付基板の製造方法。
【請求項4】
基板上に、モリブデン(Mo)膜とシリコン(Si)膜とを交互に成膜させて、Mo/Si多層反射膜を形成する工程、該多層反射膜上に保護層としてルテニウム(Ru)膜またはRu化合物膜を成膜する工程、および、前記Ru膜またはRu化合物膜上にEUV光を吸収する吸収層を形成する工程を少なくとも有するEUVリソグラフィ(EUVL)用反射型マスクブランクスの製造方法であって、
前記Mo膜、前記Si膜、および、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜を、同一の成膜チャンバ内においてイオンビームスパッタリング法を用いて実施し、かつ、前記Si膜の成膜、および、Ru膜またはRu化合物膜の成膜を下記(1)〜(3)を満たす条件で実施し、
前記Si膜の成膜に使用したスパッタリングターゲット(Siターゲット)のエロージョン領域に基づいて、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜に使用するスパッタリングターゲット(RuターゲットまたはRu化合物ターゲット)のエロージョン領域および非エロージョン領域を予測し、前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域に粗面化処理を施してから、前記Ru膜またはRu化合物膜の成膜を実施することを特徴とするEUVL用反射型マスクブランクスの製造方法。
(1)Si膜の成膜と、Ru膜またはRu化合物膜の成膜と、で同一種類のプロセスガスを使用する。
(2)Ru膜またはRu化合物膜の成膜におけるターゲット角度、プロセスガス圧力、イオンソースのRFパワー、サプレッサ電圧、イオンビーム電圧、および、イオンビーム電流を、Si膜の成膜時における条件に対して±5%以下の変動量差とする。
(3)(2)における変動量差の絶対値の和を10%以下とする。
【請求項5】
前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域の表面粗さRaが1μm以上となるように粗面化処理を施すことを特徴とする請求項4に記載のEUVL用反射型マスクブランクスの製造方法。
【請求項6】
前記RuターゲットまたはRu化合物ターゲットの前記予測される非エロージョン領域のうち、少なくとも前記予測されるエロージョン領域と前記予測される非エロージョン領域の境界線から、ターゲット最大寸法の1/15以上ターゲット外縁側に離れた領域全てに粗面化処理を施すことを特徴とする請求項4または5に記載のEUVL用反射型マスクブランクスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−129520(P2012−129520A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259967(P2011−259967)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】