説明

FRP製グレーチングの成形方法

【課題】側面が鉛直方向に対して傾斜している構成部材を有する繊維強化合成樹脂製の格子状体の新規の製造方法の提供。
【解決手段】底板41上に2つ以上の駒5が縦方向および/または横方向に配列するように突出して形成された型4に硬化性樹脂を充填し、連続繊維を前記駒の配列方向に延在させて、前記型の端部に位置する駒で前記連続繊維をコの字状に折り返して反対方向に延在させることを繰り返すことにより、前記連続繊維を前記型上に格子形状に配置して、前記連続繊維を硬化性樹脂に含浸させて、その後、前記硬化性樹脂を硬化させて、繊維強化合成樹脂製の格子状体を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化合成樹脂製の格子状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化合成樹脂(FRP)は、耐食性に優れ、軽量で強度もあり、かつ柔軟性にも優れる。このため、FRP製の構成部材を互いに交差させて格子形状としたFRP製の格子状体(グレーチング)は、補強目的で地盤やコンクリート構造物に埋設させるなどして、土木分野や建設分野等、多くの分野で使用されている。
【0003】
FRP製の格子状体は、その優れた特性により、建造物の壁面や屋根に設けられた窓等の開口部に取り付けられるルーバーとしても使用されている。このようなルーバーには、以下の特性が求められる。
・通風性に優れる。
・採光性に優れており、建造物内部に閉塞感を生じさせない。
・十分な強度を有しており、容易に破壊できず、外部からの侵入を防止する。
・外部から中の様子を見ることができない(目隠し効果)。
【0004】
このようなルーバーとして、アルミニウム製等の金属製の外枠に、アルミニウム製、またはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂製の板材(目隠し板)を傾斜させて取り付けることで目隠し効果を高めたものが広く使用されている。
FRP製の格子状体においても、傾斜した構成部材を有する、すなわち、側面が鉛直方向に対して傾斜した構成部材を有する格子状体を製造できれば、これに対して新たな需要が生じると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、側面が鉛直方向に対して傾斜した構成部材を有する繊維強化合成樹脂製の格子状体の新規の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的のため、底板上に2つ以上の駒が縦方向および/または横方向に配列するように突出して形成された型に硬化性樹脂を充填し、
連続繊維を前記駒の配列方向に延在させて、前記型の端部に位置する駒で前記連続繊維をコの字状に折り返して反対方向に延在させることを繰り返すことにより、前記連続繊維を前記型上に格子形状に配置して、前記連続繊維を硬化性樹脂に含浸させて、
その後、前記硬化性樹脂を硬化させて、繊維強化合成樹脂製の格子状体を製造する方法であって、
前記駒は、その側面が前記底板に対して前記縦方向および/または横方向に傾斜している駒を含み、
前記底板上の、前記駒の側面の傾斜方向に対して垂直方向における前記型の端部に位置する駒の外側には、前記底板とのなす角度が鈍角である前記駒の側面よりも前記駒の側面の傾斜方向奥側の位置に、各々少なくとも1つのガイドピンが設けられており、
少なくとも前記駒の側面と前記底板とのなす角度が鈍角となる側から前記駒の側面の傾斜方向に対して垂直方向に前記連続繊維を延在させる際には、前記型の端部に位置する駒ではなく、前記駒の側面の傾斜方向奥側の位置のガイドピンで前記連続繊維を折り返すことを特徴とする、側面が鉛直方向に対して傾斜した構成部材を有する繊維強化合成樹脂製の格子状体を製造する方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、底板上に2つ以上の駒が縦方向および/または横方向に配列するように突出して形成された型に硬化性樹脂を充填した後、
硬化性樹脂を含浸させた連続繊維を前記駒の配列方向に延在させて、前記型の端部に位置する駒で前記連続繊維をコの字状に折り返して反対方向に延在させることを繰り返すことにより、前記連続繊維を前記型上に格子形状に配置し、
その後、前記硬化性樹脂を硬化させて、繊維強化合成樹脂製の格子状体を製造する方法であって、
前記駒は、その側面が前記底板に対して前記縦方向および/または横方向に傾斜している駒を含み、
前記底板上の、前記駒の側面の傾斜方向に対して垂直方向における前記型の端部に位置する駒の外側には、前記底板とのなす角度が鈍角である前記駒の側面よりも前記駒の側面の傾斜方向奥側の位置に、各々少なくとも1つのガイドピンが設けられており、
少なくとも前記駒の側面と前記底板とのなす角度が鈍角となる側から前記駒の側面の傾斜方向に対して垂直方向に前記連続繊維を延在させる際には、前記型の端部に位置する駒ではなく、前記駒の側面の傾斜方向奥側の位置のガイドピンで前記連続繊維を折り返すことを特徴とする、側面が鉛直方向に対して傾斜した構成部材を有する繊維強化合成樹脂製の格子状体を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維強化合成樹脂製の格子状体を製造する方法は、その側面が傾斜した駒を使用するにもかかわらず、該側面による連続繊維のずれ上がりが防止されるため、側面が鉛直方向に対して傾斜している構成部材を有する繊維強化合成樹脂製の格子状体を製造するのに好ましい。
本発明の方法で製造される繊維強化合成樹脂製の格子状体は、構成部材中に連続繊維が均等かつ密に存在することになり、強度等の特性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。但し、図面は例示を目的とするものであり、本発明は図示した形態に限定されない。
図1は、本発明の方法を用いて製造される繊維強化合成樹脂(FRP)製の格子状体の1実施形態を示した斜視図である。図1に示す格子状体1は、互いに直交する縦部材(外枠部材)20および横部材(外枠部材)30によって定義される外枠11を有している。外枠11内には、各々複数本の縦部材21と、横部材31とが、互いに交差して配置され格子形状をなしている。すなわち、図1の格子状体1は、縦部材20と、横部材30と、からなる矩形をした外枠11内に、縦部材21と、横部材31と、からなる井桁状の格子形状が設けられた構造をしている。
図から明らかなように、格子状体1を構成する縦部材20、21および横部材30、31は、格子形状が置かれた平面から上方に延びる側面を有している。すなわち、ある程度の厚みを持った桁状の形状をしている。
【0010】
図2は、図1に示す格子状体1を矢印A方向から見た側面透視図である。図2から明らかなように、格子状体1において、縦部材21は、その側面が直立している。
図3は、図1に示す格子状体1を矢印B方向から見た側面透視図である。図3から明らかなように、格子状体1において、横部材31は、その側面が鉛直方向に対して傾斜している。
【0011】
図1に示す格子状体1は、構成部材、すなわち縦部材20、21および横部材30、31がFRP製の部材である。ここで、強化材をなす繊維は連続繊維であって、格子状体1の構成部材の長手方向に配向することが好ましい。
【0012】
従来のFRP製の格子状体、すなわち格子状体の構成部材の側面が傾斜していないFRP製の格子状体は、底板上に複数の駒が突出して形成された型を用いて、以下の手順(1)〜(3)を実施することにより製造されていた。
(1)格子状体の形状に対応する駒が設けられた型に硬化性樹脂を充填する。
(2)駒に沿って連続繊維を延在させる。
(3)硬化性樹脂を硬化させる。
慣例として、工程(1)および(2)は、どちらを先に実施してもよく、両者を平行して実施してもよい。
【0013】
図4は、図1に示す格子状体1の形状に対応する駒が設けられた成形用の型の斜視図である。図4中、矢印C方向は、図1の矢印B方向に対応し、矢印D方向は図1の矢印A方向に対応する。以下、本明細書において、横方向と言った場合図4の矢印C方向を意味し、縦方向と言った場合図4の矢印D方向を意味する。
図4に示す型4では、底板41上、その外縁部に沿って外枠42が設けられている。外枠42の内側部分の底板41上には、複数の駒5(51,52)が碁盤の目をなすように、縦方向および横方向に配列するように突出して形成されている。
図5は、図4の型4を矢印C方向から見た側面図であり、手前側の外枠42が省略されている。図5から明らかなように、縦方向に向いた駒5の側面のうち、駒51側に位置する側面は底板41に対する角度が鋭角になるように傾斜し、駒52側に位置する側面は底板41に対する角度が鈍角になるように傾斜している。ここで、駒5の側面の傾斜角度は、製造される格子状体の構成部材、ここでは図1に示す格子状体1の横部材31の鉛直方向に対して傾斜する側面の傾斜角度に対応している。
駒51側を縦方向手前側、駒52側を縦方向奥側とした場合、駒5は縦方向手前側に向かって傾斜していることになる。
【0014】
図4に示す型を用いて、上記した従来の製造手順を実施する場合、上記した手順(2)が問題となる。図6は、図4に示す型4を真上から見た平面図であり、手順(2)を実施している状態を示している。図4において、駒5(51)の傾斜している側面のうち、上側から見える側面、すなわち、駒5(51)の側面と底板41がなす角度が鈍角となる側の側面をハッチングで示している。
図6に示すように、手順(2)では、連続繊維7,7′は、各々駒5(51,52)の配列方向に沿って延在させて、端部に位置する駒5(51,52)でコの字状に折り返して反対方向に延在させることを繰り返すことで、型4の底板41上にジグザグに配置されている。そして、連続繊維7および7′は、底板41上において、格子形状をなしている。
【0015】
ここで、底板41と駒5の側面とがなす角度が鈍角となる側(駒52の側)から、駒5の側面の傾斜方向に対して垂直方向に連続繊維を延在させる場合、すなわち、図6において、連続繊維7を配置する場合に、傾斜した駒5の側面と、連続繊維7との関係が問題となる。
図7は、図5と同様の図であり、駒52および駒5の間には、連続繊維7が示されている。ここで、連続繊維7は、図6に示す手順で配置されている。図7に示すように、連続繊維7には矢印F方向の力が作用し、連続繊維7は、駒5の鈍角面へと押し付けられる。本明細書において、鈍角面とは、底板41とのなす角度が鈍角である駒5(51)の側面をいう。これに対して、底板41とのなす角度が鋭角である駒5(52)の側面を鋭角面という。
矢印F方向の力が作用することで、連続繊維7は駒5の鈍角面に沿って上方向にずれ上がってしまう。この結果、型4を用いて製造されるFRP製の格子状体は、構成部材中の連続繊維の分布が不均一になるため、強度等の特性に重要な影響を受ける。
【0016】
本発明の方法によれば、上記した連続繊維7のずれ上がり、およびそれによる弊害を解消することができる。図8は、本発明の方法に使用する成形用の型の1実施形態を示した斜視図である。図8中、矢印C方向は、図1の矢印B方向に対応し、矢印D方向は図1の矢印A方向に対応する。図8の型4′は、横方向、すなわち駒5(51,52)の側面の傾斜方向に対して垂直方向における両端部に位置する駒5(51,52)の外側(駒5と外枠42の間)にガイドピン6が設けられていること以外は、図4の型4と同様の構成である。
図9は、図8の型4′を矢印C方向から見た側面図であり、図5と同様に手前側の外枠42が省略されている。図9に示すように、各ガイドピン6は、図8の縦方向、すなわち駒5(51,52)の側面の傾斜方向において、最も近くに位置する駒5(52)の鋭角面付近に位置している。このような配置により、個々のガイドピン6は、最も近くに位置する駒5(51)の鋭角面よりも、駒5(51,52)の側面の傾斜方向奥側(縦方向奥側)に位置している。
【0017】
本発明の方法では、図8の型4′を用いて、上記した手順(1)〜(3)を実施して、FRP製の格子状体を製造する。図10は、上記した手順(2)を実施している状態を示した図であり、図8の型4′を上から見た平面図である。図10において、連続繊維7は、底板41と駒5の側面とがなす角度が鈍角となる側(駒52の側)から、駒5の側面の傾斜方向に対して垂直方向に連続繊維を延在させた状態で示されている。
図10において、連続繊維7は、図7と同様に型4′の底板41上にジグザグに配置されている。但し、本発明の方法では、連続繊維7は、型4′の端部に位置する駒5ではなく、駒5の外側に位置するガイドピン6で折り返されることを特徴とする。
【0018】
図11は、図8の型4′について、図7と同様に示した図である。上述したように、図7に示す連続繊維7は、矢印F方向の力が作用するため、駒5の鈍角面に沿ってずり上がってしまう。これに対して、本発明の方法では、型4′の端部に位置する駒5ではなく、ガイドピン6で連続繊維7を折り返すことにより、連続繊維7のずり上がりが防止される。
図11に示すように、型4′では、ガイドピン6が駒5の鈍角面よりも駒5の側面の傾斜方向奥側であって、より具体的には、駒5の傾斜方向奥側、隣の位置にある駒52の鋭角面付近に位置している。このような位置にあるガイドピン6で折り返すことで、連続繊維7には矢印F′方向の力が作用する。すなわち、連続繊維7は、駒5の鈍角面ではなく、駒52の鋭角面へと押し付けられる。これによって駒52の鋭角面によって連続繊維7には下方向の力が作用する。以上の結果として、本発明の方法で製造されるFRP製の格子状体は、構成部材中に連続繊維が均等かつ密に存在することになり、強度等の特性に優れたものとなる。
なお、連続繊維を折り返すガイドピンは、駒の鈍角面よりも該駒の側面の傾斜方向奥側位置する限り特に限定されない。したがって、図11において、駒51と駒5との間の凹部に沿って連続繊維を延在させた際に、駒52の鋭角面付近に位置するガイドピン6で連続繊維を折り返してもよい。但し、図11に示すように、駒5の鈍角面に対して、該駒5の傾斜方向奥側、隣の位置にある駒52(駒5)の鋭角面付近に位置しているガイドピン6で連続繊維7を折り返すことが、構成部材中に連続繊維がより均等かつ密に存在できるので好ましい。
【0019】
本発明の方法では、上記したように駒52の側から矢印C方向に連続繊維7を延在させる際に、型4′の端部に位置する駒5ではなく、該駒5の外側に位置するガイドピン6、さらに言えば、駒5の鈍角面よりも該駒5の側面の傾斜方向奥側に位置するガイドピン6で連続繊維7を折り返すことが必須であり、その反対方向、すなわち駒51の側から矢印C方向に連続繊維を延在させる際、別の言い方をすると、駒5の側面と底板41とのなす角度が鋭角となる側から駒5の側面の傾斜方向に対して垂直方向に連続繊維7を延在させる際は、ガイドピン6で連続繊維7を折り返すことは必ずしも必要ではなく、型4′の端部に位置する駒5で連続繊維7をコの字状に折り返してもよい。但し、製造されるFRP製の格子状体の構成部材における連続繊維の配向がより均一になるため、駒51の側から矢印C方向に連続繊維7を延在させる場合も、型4′の端部に位置する駒5ではなく、駒5の外側に位置するガイドピン6で連続繊維7を折り返すことが好ましい。この場合、駒5の鈍角面よりも該駒5の側面の傾斜方向奥側のガイドピン6で連続繊維7を折り返す。
【0020】
図12は、本発明の方法の別の実施形態を示す図であり、図10とは連続繊維7を配置する手順が異なっている。すなわち、図12では、型4′の端部に位置する駒5で連続繊維7を折り返した場合に、図7に示す矢印F方向の力が作用する場合にのみ、駒5の外側に位置するガイドピン6、さらに言えば、駒5の鈍角面よりも該駒5の側面の傾斜方向奥側のガイドピン6で連続繊維7を折り返す。別の言い方をすると、駒5の鈍角面に沿って連続繊維7を折り返す場合のみ、型4′の端部に位置する駒5ではなく、該駒5の外側に位置するガイドピン6、さらに言えば、駒5の鈍角面よりも該駒5の側面の傾斜方向奥側のガイドピン6で連続繊維7を折り返す。したがって、駒5の鋭角面に沿って連続繊維7を折り返す場合は、ガイドピン6ではなく、型4′の端部に位置する駒5で連続繊維7を折り返す。この方法であっても、連続繊維7のずり上がりを防止する効果は発揮される。但し、製造されるFRP製の格子状体1の構成部材における連続繊維7の配向が一様になることから、図10に示す手順のほうが好ましい。
【0021】
本発明の方法においても、図6に示す連続繊維7′と同様に、図10の矢印D方向にも連続繊維を延在させる。この場合、連続繊維と接する駒の側面は直立しているため、連続繊維は矢印D方向において、型4′の端部に位置する駒51、52でコの字状に折り返して、型4′の底板41上にジグザグに配置すればよい。
【0022】
本発明の方法において、上記した手順(1)および(3)については、従来のFRP製の格子状体を製造する方法と同様の手順で実施すればよい。したがって、本発明の方法は、以下の手順で実施することができる。
まず始めに、図8に示す型4′に硬化性樹脂を流し込んで充填する。硬化性樹脂は、FRPのマトリクス材として使用される樹脂材料から広く選択することができる。具体的には、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の硬化性樹脂から適宜選択される。
【0023】
次に、上記した手順で型4′の底板41上に連続繊維を格子形状をなすように配置する。連続繊維としては、FRPの強化材として使用されるものから広く選択することができる。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維が主として挙げられるが、他の繊維、例えば、金属繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素のようなセラミック繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維のような合成樹脂繊維等であってもよい。
【0024】
そして、型4′の底板41上に所望量の連続繊維を格子形状に配置した後、連続繊維および硬化性樹脂を上方から押圧して、連続繊維に硬化性樹脂を含浸させる。この手順は、硬化性樹脂の脱泡も兼ねている。但し、本発明の方法において、連続繊維に硬化性樹脂を含浸させるのは、この段階に限定されない。例えば、硬化性樹脂を充填させた型4′に、予め硬化性樹脂を含浸させた連続繊維を格子形状に配置させてもよい。この場合、予め連続繊維に硬化性樹脂を含浸させているので、連続繊維を格子形状に配置した後、上方から押圧する手順は実施しなくてもよい。なお、上記いずれの手順であっても、連続繊維を格子形状に配置した後、さらに型4′に硬化性樹脂を流し込んでもよい。さらにまた、硬化性樹脂を流し込む前に、型4′の底板41上に所望量の連続繊維を格子形状に配置し、その後樹脂を流し込んでもよい。また、予め硬化性樹脂を含浸させた連続繊維を、硬化性樹脂で充填されていない型4′の底板41上に格子形状に配置させてもよい。
【0025】
次に、硬化性樹脂を熱硬化または光硬化させた後、得られた格子状体を脱型することで図1に示すFRP製の格子状体が得られる。格子状体1を型4′から脱型するには、図9から明らかなように、駒5のその面の傾斜に沿って斜め方向に脱型する。この際、駒52と、外枠42のうち駒51と対面する部分は、脱型を容易にするため取り外される。
【0026】
以上、図面を参照して本発明の方法を説明したが、本発明の方法はこれに限定されない。型上のガイドピンの配置に関して、図8に示した型4′では、端部に位置する全ての駒5に対応するように、矢印C方向の両端部の駒5の外側で、かつ該駒5の鈍角面よりも駒5の傾斜方向奥側となる位置にガイドピン6が設けられているが、本発明の方法はこれに限定されない。例えば、図12に示す手順で連続繊維7を配置する場合、ガイドピン6は連続繊維7がコの字状に折り返す際に使用される部分にのみ設けたのでよく、型4′の端部に位置する全ての駒5に対応するように、矢印C方向の両端部に位置する駒5の外側にガイドピン6を設ける必要はない。
さらに、本発明の方法では、駒5の鈍角面よりも該駒5の側面の傾斜方向奥側の位置に形成するのであれば、型4′の矢印C方向の両端部に位置する駒5の外側部分に、各々少なくとも1つのガイドピンを設けることで上記した連続繊維7のズレ上がりを防止することができる。したがって、全ての駒5(51,52)の鈍角面よりも該駒5(51,52)の側面の傾斜方向奥側の位置になるように設けるのであれば、ガイドピン6は矢印C方向の両端部に位置する駒5の外側部分に各々1つずつ形成したのでもよい。要するに、図8に示す型4′は、駒52の近くに位置する2本のガイドピン6のみを有していたのでもよい。この場合、連続繊維7をコの字状に折り返す際には、この2本のガイドピン6が常に使用される。
但し、製造されるFRP製の格子状体の構成部材中に、連続繊維がより均一かつ密に存在することから、側面が傾斜している全ての駒5に対応する数のガイドピン6を、矢印C方向の両端部に位置する駒の外側に設けて、駒5の鈍角面に対して、該駒5の傾斜方向奥側、隣の位置にある駒5(駒52)の鋭角面付近に位置しているガイドピン6で連続繊維7を折り返すことが好ましい。
【0027】
また、型の形状は、製造されるFRP製の格子状体の形状に応じて適宜変更することができる。駒の形状や数は、製造される格子状体における格子の形状や数に応じて適時変更することができる。また、図1に示す格子状体1は、構成部材31の側面のみが傾斜していたが、本発明の方法によれば、構成部材21および31の側面が傾斜している格子状体を製造することもできる。この場合、構成部材21および31の形状に対応する駒5(51,52)を使用して、矢印D方向の両端部に位置する駒51,52の外側にも、駒5(51,52)の鈍角面よりも該駒5(51,52)の側面の傾斜方向奥側の位置になるようにガイドピン6を設けて、型の端部に位置する駒51,52で連続繊維7を折り返す際に、駒51,52ではなくガイドピン6で連続繊維7を折り返す。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明の方法をさらに説明する。
本実施例では、図8および図9に示した型4′(型の寸法は図中にmm表記で記載されている。)にビニルエステル樹脂を流し込んだ後、図10に示す手順でガラス連続繊維7(E−ガラスロービング、フィラメント径20μm、ストランド番手2700tex)を配置しつつ、型4′上に格子形状をなすように連続繊維7を所望量配置し、その後上方から押圧して、ガラス連続繊維7にビニルエステル樹脂を含浸させた。この状態でビニルエステル樹脂を熱硬化させた。ビニルエステル樹脂の硬化後、成形体を脱型し、型4′のガイドピン6の位置に相当する部分を切断することで、図1に示す格子状体(格子状体全体の寸法:126cm×18.2cm×4cm、格子の寸法:0.6cm×4cm×4cm、格子の傾斜角度:45度)を得た。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の方法で製造されるFRP製の格子状体の1実施形態の斜視図である。
【図2】図1の格子状体を矢印A方向から見た側面透視図である。
【図3】図1の格子状体を矢印B方向から見た側面透視図である。
【図4】図1の格子状体に対応する形状をした成形用の型の斜視図である。
【図5】図4の型を矢印C方向から見た側面図であり、手前側の外枠が省略されている。
【図6】図4の型に連続繊維を配置する手順を説明するための図であり、図4の型を上から見た平面図である。
【図7】図5と同様に、図4の型を矢印C方向から見た側面図であり、手前側の外枠が省略されている。
【図8】本発明の方法で図1の格子状体を製造する際に使用する型の斜視図である。
【図9】図8の型を矢印C方向から見た側面図であり、手前側の外枠が省略されている。
【図10】図8の型に連続繊維を配置する手順を説明するための図であり、図8の型を上から見た平面図である。
【図11】図9と同様に、図8の型を矢印C方向から見た側面図であり、手前側の外枠が省略されている。
【図12】図10と同様の図であるが、図8の型に連続繊維を配置する手順が図10とは異なっている。
【符号の説明】
【0030】
1:格子状体
11:外枠
20:縦部材(外枠部材)
21:縦部材
30:横部材(外枠部材)
31:横部材
4,4′:型
41:底板
42:外枠
5、51、52:駒
6:ガイドピン
7、7′:連続繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板上に2つ以上の駒が縦方向および/または横方向に配列するように突出して形成された型に硬化性樹脂を充填し、
連続繊維を前記駒の配列方向に延在させて、前記型の端部に位置する駒で前記連続繊維をコの字状に折り返して反対方向に延在させることを繰り返すことにより、前記連続繊維を前記型上に格子形状に配置して、前記連続繊維を硬化性樹脂に含浸させて、
その後、前記硬化性樹脂を硬化させて、繊維強化合成樹脂製の格子状体を製造する方法であって、
前記駒は、その側面が前記底板に対して前記縦方向および/または横方向に傾斜している駒を含み、
前記底板上の、前記駒の側面の傾斜方向に対して垂直方向における前記型の両端部に位置する駒の外側には、前記底板とのなす角度が鈍角である前記駒の側面よりも前記駒の側面の傾斜方向奥側の位置に、各々少なくとも1つのガイドピンが設けられており、
少なくとも前記駒の側面と前記底板とのなす角度が鈍角となる側から前記駒の側面の傾斜方向に対して垂直方向に前記連続繊維を延在させる際には、前記型の端部に位置する駒ではなく、前記駒の側面の傾斜方向奥側の位置のガイドピンで前記連続繊維を折り返すことを特徴とする、側面が鉛直方向に対して傾斜した構成部材を有する繊維強化合成樹脂製の格子状体を製造する方法。
【請求項2】
底板上に2つ以上の駒が縦方向および/または横方向に配列するように突出して形成された型に硬化性樹脂を充填した後、
硬化性樹脂を含浸させた連続繊維を前記駒の配列方向に延在させて、前記型の端部に位置する駒で前記連続繊維をコの字状に折り返して反対方向に延在させることを繰り返すことにより、前記連続繊維を前記型上に格子形状に配置し、
その後、前記硬化性樹脂を硬化させて、繊維強化合成樹脂製の格子状体を製造する方法であって、
前記駒は、その側面が前記底板に対して前記縦方向および/または横方向に傾斜している駒を含み、
前記底板上の、前記駒の側面の傾斜方向に対して垂直方向における前記型の両端部に位置する駒の外側には、前記底板とのなす角度が鈍角である前記駒の側面よりも前記駒の側面の傾斜方向奥側の位置に、各々少なくとも1つのガイドピンが設けられており、
少なくとも前記駒の側面と前記底板とのなす角度が鈍角となる側から前記駒の側面の傾斜方向に対して垂直方向に前記連続繊維を延在させる際には、前記型の端部に位置する駒ではなく、前記駒の側面の傾斜方向奥側の位置のガイドピンで前記連続繊維を折り返すことを特徴とする、側面が鉛直方向に対して傾斜した構成部材を有する繊維強化合成樹脂製の格子状体を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−159833(P2006−159833A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358125(P2004−358125)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000207595)旭硝子マテックス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】