説明

GDF−8阻害剤を使用する、糖尿病、肥満、および心臓血管疾患のための併用療法

治療上有効な量のGDF−8阻害剤と、目的とする症候群を治療する治療上有効な量の少なくとも1種のその他の治療薬とを対象に投与することを含む、対象の肥満、心臓血管疾患、およびインスリン代謝障害を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その内容が出典明示により本明細書の一部とされる、2004年8月12日出願の米国仮出願第60/600784号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、併用療法を使用して、肥満、心臓血管疾患、および糖尿病やX症候群などのインスリン代謝異常の少なくとも1つを治療する方法に関する。新規な併用療法は、成長分化因子−8(GDF−8)の少なくとも1種の阻害剤、および少なくとも1種のその他の治療薬を用いる。
【背景技術】
【0003】
ミオスタチンとしても知られる成長分化因子−8(GDF−8)は、分泌タンパク質であり、また構造上関連ある成長因子のトランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーの構成要素であり、これらの全ては、生理学的に重要な成長調節および形態形成の性質を有する(Kingsley他,Genes Dev.8:133〜146(1994);Hoodless他,Curr.Topics Microbiol.Immunol.228:235〜272(1998))。TGF−βと同様に、ヒトGDF−8は、375アミノ酸長の前駆タンパク質として合成される。前駆GDF−8タンパク質はホモダイマーを形成する。処理中、アミノ末端プロペプチドはArg−266で切断される。「潜伏関連ペプチド」(LAP)として知られる切断されたプロペプチドは、ホモダイマーに対して非共有結合のままであり、それによって複合体を不活性化することができる(Miyazono他,J.Biol.Chem.263:6407〜6415(1988);Wakefield他,J.Biol.Chem.263:7646〜7654(1988);Brown他,Growth Factors 3:35〜43(1990);およびThies他,Growth Factors 18:251〜259(2001))。成熟GDF−8とプロペプチドとの複合体を、一般に、「小潜在複合体(small latent complex(SLC)」と呼ぶ(Gentry他,Biochemistry 29:6851〜6857(1990);Derynck他,Nature,316:701〜705(1995);およびMassague,Ann.Rev.Cell Biol.12:597〜641(1990))。その他のタンパク質も成熟GDF−8に結合し、その生物活性を阻害することが知られている。そのような阻害タンパク質には、フォリスタチンおよびフォリスタチン関連タンパク質が含まれる(Gamer他,Dev.Biol.,208:222〜232(1999))。
【0004】
様々な種からの推定されるアミノ酸配列のアライメントは、GDF−8がその進化の全体を通して高度に保存されることを実証している(McPherron他,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.94:12457〜12461(1997))。実際に、ヒト、マウス、ラット、ブタ、およびニワトリのGDF−8の配列は、C末端領域で100%同一であり、一方、ヒヒ、ウシ、およびヒツジの場合は3つ以下のアミノ酸が異なっている。ゼブラフィッシュGDF−8が最も異なっているが、それでもヒトに対して88%が同一である。
【0005】
高度な保存は、GDF−8が必須の機能を有することを示唆している。GDF−8は、発育中および成体の骨格筋で高度に発現し、筋肉および骨形成における極めて重要な生物学的プロセスの調節に関与することがわかった。例えば、GDF−8ノックアウトトランスジェニックマウスは、骨格筋の著しい肥大および過形成(McPherron他,Nature 387:83〜90(1997))と、変性した皮質骨構造(Hamrick他,Bone 27:343〜349(2000))とを特徴とする。同様に、骨格筋の質量の増加は、ウシにおけるGDF−8の天然に生ずる変異で明らかである(Ashmore他,Growth,38:501〜507(1974);Swatland他,J.Anim.Sci.38:752〜757(1994);McPherron他,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.94:12457〜12461(1997);およびKambadur他,Genome Res.7:910〜915(1997))。研究は、HIV感染に関連した筋萎縮が、GDF−8発現の増加を伴うことを示していた(Gonzalez−Cadavid他,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.95:14938〜14943(1998))。GDF−8は、筋特異的酵素(例えばクレアチンキナーゼ)の生成および筋芽細胞の増殖(WO 00/43781)にも関係する。その成長調節および形態形成の性質に加えて、GDF−8は、2型糖尿病の発症におけるグルコースホメオスタシス、耐糖能異常、代謝症候群(例えばX症候群)、火傷や窒素不均衡などの外傷により誘発されたインスリン抵抗症候群、および脂肪組織障害(例えば肥満)を含めたその他の生理学的プロセスのいくつかにも関わると考えられる(Kim 他,BBRC 281:902〜906(2001))。
【0006】
その他の研究は、脂質生成およびグルコースホメオスタシスにおけるGDF−8の役割を広げている。例えば、マウスへのGDF−8分泌腫瘍細胞の注射によって、その血糖値が増加し(高血糖症)、その体重および筋肉質量が低下する。またGDF−8は、GLUT4のインスリン誘発性発現も阻止し、前脂肪細胞のインスリン媒介性分化も阻止する。まとめると、GDF−8の研究は、GDF−8の阻害によって血糖および体脂肪が減少し、グルコースのインスリン媒介性輸送が増加することが示唆され、即ちこの状態は、2型糖尿病またはX症候群、あるいはグルコースヘモスタシスに関わるその他の症候群に罹っておりまたは最終的にはこれらの症候群になる患者の利益になり得る。
【0007】
肥満、心臓血管疾患、および/または糖尿病および/またはX症候群などのインスリン代謝障害は、いくつかの異なる療法を使用して治療してきた。これらの療法は、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、スルホニル尿素剤、抗脂血剤、ビグアニド剤、チアゾリジンジオン剤、インスリン、α−グルコシダーゼ阻害剤、およびアルドースレダクターゼ阻害剤を含むが、全ての療法が、記述される全ての疾患および障害の治療に認められているとは限らない。これらの療法は、いずれもGDF−8に関係していない様々なメカニズムによって作用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、有効量のGDF−8を少なくとも1種のその他の治療薬と併せて投与することによって、肥満と、心臓血管疾患と、糖尿病およびX症候群を含めたインスリン代謝障害との少なくとも1つを治療する方法に関する。
【0009】
肥満と、心臓血管疾患と、糖尿病やX症候群などのインスリン代謝障害との少なくとも1つは、これらの標的とされた症候群を治療するその他の治療薬と組み合わせたGDF−8の阻害剤で治療することができる。この治療の手法を、併用療法と呼ぶ。グルコース輸送を刺激する薬剤(例えばインスリン、スルホニル尿素剤、ビグアニド剤、チアゾリジンジオン剤)、血糖を制御する薬剤(例えばα−グルコシダーゼ阻害剤)、心臓血管の健康を改善する薬剤(例えば抗脂血剤およびACE阻害剤)、眼および神経における毒性ソルビトール生成を低下させる薬剤(例えばアルドースレダクターゼ阻害剤)を含む様々なその他の療法が、これら標的とされた症候群に関連した種々の原因および疾患を治療するのに使用されている。したがって本発明の主な目的は、GDF−8阻害剤と、標的とされた症候群を治療する少なくとも1種のその他の治療薬とを組み合わせて使用した、肥満と、心臓血管疾患と、糖尿病やX症候群などのインスリン代謝障害との少なくとも1つのための、併用療法の形をとる改善された治療を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの目的は、対象に、治療上有効な量のGDF−8阻害剤と、治療上有効な量の、標的とされた症候群を治療する少なくとも1種のその他の治療薬とを投与することを含む、対象の肥満、心臓血管疾患、およびインスリン代謝障害の少なくとも1つを治療する方法を作り出すことである。
【0011】
本発明の別の目的は、対象に、治療上有効な量のGDF−8阻害剤と、治療上有効な量の、標的とされた症候群を治療する少なくとも1種のその他の治療薬とを投与することを含む、対象の肥満、心臓血管疾患、およびインスリン代謝障害の少なくとも1つを治療するための医薬組成物を生成することである。
【0012】
本発明の追加の目的および利点は、その一部については以下の記述で示し、一部についてはその記述から明らかになるであろうし、または本発明の実施によって学ぶことができる。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘された要素および組合せによって、理解されかつ実現されるであろう。
【0013】
前述の全体的な記述および以下の詳細な記述の両方は、単に例示的および説明的なものであり、特許請求の範囲で主張されるように、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【0014】
本明細書に組み込まれ本明細書の一部を構成する添付図面は、その説明と一緒に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0015】
配列の簡単な説明
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
I.定義
本発明をより容易に理解することができるように、ある用語について最初に定義する。追加の定義は、詳細な説明の全体を通して示す。
【0019】
「抗体」という用語は、免疫グロブリンまたはその断片を指し、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する。この用語は、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多特異性、非特異性、ヒト化、ヒト、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異、移植、および生体外生成抗体を含むが、これらに限定するものではない。前に「無傷」という用語がない限り、「抗体」という用語は、FabやF(ab’)、Fv、scFv、Fd、dAb、および抗体結合機能を保持するその他の抗体断片などの抗体断片を含む。典型的な場合、そのような断片は、抗原結合を含むと考えられる。
【0020】
「有効量」という用語は、併用療法を使用して、肥満、心臓血管疾患、および糖尿病やX症候群などのインスリン代謝障害の少なくとも1つに罹っている個体の臨床症状を回復させるのにまたは所望の生物学的結果を実現するのに十分な、投薬または量を指す。
【0021】
「GDF−8」という用語は、特定の成長分化因子−8を指し、適切な場合には、構造的または機能的にGDF−8に関係する因子、例えばBMP−11およびTGF−βスーパーファミリーに属するその他の因子を指す。この用語は、完全長未処理前駆形態のGDF−8、ならびに翻訳後切断から得られる成熟およびプロペプチド形態を指す。この用語は、本明細書で論じられるように、修飾された配列を含む成熟GDF−8に関連した少なくともいくつかの生物活性を維持するGDF−8の任意の断片および変種も指す。成熟ヒトGDF−8のアミノ酸配列は、配列番号1で示される。本発明は、ヒト、ウシ、ニワトリ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、シチメンチョウ、ヒヒ、および魚を含むがこれらに限定することのない、全ての脊椎動物種からのGDF−8に関する(配列情報に関しては、例えばMcPherron他,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.94:12457〜12461(1997)参照)。
【0022】
「GDF−8阻害剤」という用語は、GDF−8の活性、発現、プロセッシング、または分泌を阻害することが可能な任意の薬剤、あるいは医薬上許容されるその誘導体を含む。そのような阻害剤には、GDF−8に対する抗体(Myo−29やMyo−28、Myo−22、およびJA−16など)や、GDF−8受容体に対する抗体、修飾された可溶性受容体(ActRIIB−Fc融合などの受容体融合を含む)、GDF−8に結合するその他のタンパク質(GDF−8プロペプチドやGDF−8プロペプチドの変異体、フォリスタチン、フォリスタチン−含有タンパク質、およびこれらタンパク質のFc融合など)、GDF−8受容体に結合するタンパク質およびこれらタンパク質のFc融合、および前述の全ての模倣体などの、GDF−8阻害剤が含まれる。非タンパク質様阻害剤(核酸など)も、GDF−8阻害剤という用語に包含される。そのような阻害剤は、活性GDF−8タンパク質に関連した生理学的成長調節または形態形成活性の少なくとも1つを「阻害し」、「中和し」、または「低下させる」と言われる。例えばGDF−8は、血糖値を上昇させる可能性があり(高血糖症)、あるいは体重または筋肉質量を低下させる可能性がある。GDF−8は、GLUT4のインスリン誘導性発現も阻止し、前脂肪細胞のインスリン媒介性分化を阻止する。活性の低下は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上でよい。
【0023】
「特異的結合」という用語は、GDF−8阻害剤という文脈で使用する場合、阻害剤が少なくとも1つのGDF−8抗原に結合することを意味する。この用語は、例えば抗体またはその他の阻害剤の抗原結合ドメインが、いくつかの抗原上に示される特定のエピトープに特異的である場合に適用可能であり、抗原結合ドメインを保持する特異的結合阻害剤は、エピトープを保持する様々な抗原に結合することができる。典型的な場合、結合は、親和定数Kが10−1よりも高い場合に特異的であると考えられる。抗体またはその他の阻害剤は、適切に選択された条件下でそのような結合が十分に阻害されず、それと同時に非特異的結合が阻害される場合、抗原に「特異的に結合する」と言われる。
【0024】
「高度にストリンジェントな」または「高ストリンジェンシー」という用語は、核酸−核酸相互作用を決定するのに使用されるハイブリダイゼーションおよび洗浄のための状態について述べている。そのような状態は当業者に知られており、例えば、“Current Protocols in Molecular Biology,”John Wiley & Sons,N.Y.6.3.1〜6.3.6(1989)に見出すことができる。当技術分野で記述されるように、水性および非水性の両方の状態を使用することができる。高度にストリンジェントはハイブリダイゼーション条件の一例は、約45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイゼーションした後、少なくとも1回、0.2×SSC、0.1%SDS中で50℃で洗浄することである。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の第2の例は、約45℃の6×SSC中でハイブリダイゼーションした後、少なくとも1回、0.2×SSC、0.1%SDS中で55℃で洗浄することである。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、約45℃の6×SSC中でハイブリダイゼーションした後、少なくとも1回、0.2×SSC、0.1%SDS中で60℃で洗浄することである。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、約45℃の6×SSC中でハイブリダイゼーションした後、少なくとも1回、0.2×SSC、0.1%SDS中で65℃で洗浄することである。高度にストリンジェントな条件には、0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS中で、65℃でハイブリダイゼーションした後に、少なくとも1回、0.2×SSC、0.1%SDS中で65℃で洗浄することが含まれる。
【0025】
「中程度にストリンジェントな」または「中程度のストリンジェンシー」ハイブリダイゼーションという文言は、核酸と、この核酸に対して少なくとも約60%、少なくとも約75%、少なくとも約85%同一であり、またはこの核酸に対して少なくとも約90%同一である相補核酸とを結合させる条件を指す。中程度にストリンジェントな条件は、例えば50%ホルムアミド、5×デンハート液、5×SSPE、0.2%SDS中で、42℃でハイブリダイゼーションした後に、0.2×SSPE、0.2%SDS中で65℃で洗浄することを含むが、これに限定するものではない(例えば、Sambrook他,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)参照)。
【0026】
「実質的に同一」または「実質的に類似」という文言は、本発明のGDF−8阻害剤の場合のような関連あるアミノ酸またはヌクレオチド配列が、開示される配列に対して同一でありまたは開示される配列と比べて非実質的な相違(保存アミノ酸置換を通して)を有することを意味する。本発明のヌクレオチドおよびポリペプチドは、例えば、開示される核酸分子およびポリペプチドに対して、配列が少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%同一であるものを含む。
【0027】
ポリペプチドの場合、少なくとも20、30、50、100、またはそれ以上のアミノ酸について、元のポリペプチドと、この元のポリペプチドに実質的に同一な変種ポリペプチドとの間で比較する。核酸の場合、少なくとも50、100、150、300、またはそれ以上のヌクレオチドについて、元の核酸と、この元の核酸に実質的に同一な変種核酸との間で比較する。したがって、ある変種は、1つまたは複数の領域で実質的に同一であるがその他の領域では異なっており、それでも依然として「実質的に同一」の定義を満たす。2つの配列間の同一性%は、例えばAltschul他,J.Mol.Biol.215:403〜410(1990)に記載されているBasic Local Alignment Tool(BLAST)や、Needleman他,J.Mol.Biol.48:444〜453(1970)のアルゴリズム、またはMeyers他,Comput.Appl.Biosci.4:11〜17(1988)のアルゴリズムなどの、標準的なアライメントアルゴリズムによって決定される。
【0028】
「治療」という用語は、治療または予防の手段を指す。治療は、障害または再発する障害の1つまたは複数の症状を予防し、治癒させ、遅延させ、その重症度を低下させ、または回復させるために、あるいはそのような治療がない場合に予想されるよりも長く対象を生存させるために、医学的障害を有しまたは最終的に障害を持つ可能性のある対象に施すことができる。
【0029】
「標的とされる症候群」という用語は、本明細書に開示される方法および組合せによって治療される、肥満、心臓血管疾患、およびインスリン代謝障害の少なくとも1つを指す。
【0030】
心臓血管障害の例には、冠動脈疾患(アテローム性動脈硬化症)、狭心症(急性狭心症および不安定狭心症を含む)、心臓発作、卒中(虚血性卒中を含む)、心臓血管疾患、冠動脈疾患、高血圧症関連の心臓血管疾患、冠動脈疾患、高血圧症、高脂血症、末梢動脈疾患、および末梢血管疾患が含まれる。インスリン代謝障害の例には、2型糖尿病、X症候群、耐糖能異常、火傷や窒素不均衡などの外傷によって誘発されるインスリン抵抗性、代謝症候群、糖尿病前症、耐糖能異常、および異脂肪血症が含まれる。
【0031】
「治療薬」という用語は、医学的障害を治療しまたは治療を補助する物質である。
【0032】
本明細書で使用する、GDF−8阻害剤および治療薬の「治療上有効な量」は、障害または再発する障害の少なくとも1つを治療し、予防し、治癒させ、遅延させ、その重症度を低下させ、回復させ、またはそのような治療がない場合に予想されるよりも長く対象を生存させる際、対象(ヒト患者など)に1回または複数回投与したときに有効な量を指す。
【0033】
「変種」という用語は、提供されたGDF−8阻害剤(ならびにGDF−8そのもの)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列に対してそれぞれ実質的に同一または類似のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を指す。変種は、天然に生ずることができ、例えば天然に生ずるヒトおよび非ヒトヌクレオチド配列であり、または人工的に生成することができる。変種の例は、3’および5’スプライス変種の両方を含むmRNAの選択的スプライシング、点変異およびその他の変異、またはタンパク質のタンパク質分解性切断から得られるものである。変種は、核酸分子またはその断片とアミノ酸配列およびその断片とであって、その他の核酸(または適切な挿入または欠失に合わせて最適に配列させた場合のその相補鎖)またはアミノ酸配列にそれぞれ実質的に同一でありまたは類似するものを含む。一実施形態では、本発明の核酸分子またはタンパク質と別の核酸分子またはタンパク質との間では、最適に整列させた場合、それぞれ少なくとも約50%同一、少なくとも約55%同一、少なくとも約60%同一、少なくとも約65%同一、少なくとも約70%同一、少なくとも約75%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約92%同一、少なくとも約93%同一、少なくとも約94%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一である。さらに変種は、本出願で論じられるように、GDF−8活性を示しまたはGDF−8活性を阻害するタンパク質またはポリペプチドを含む。
【0034】
II.GDF−8阻害剤
GDF−8阻害剤は、肥満、心臓血管疾患、および糖尿病やX症候群などのインスリン代謝障害の治療に有用である。これらの阻害剤の使用は、本発明の併用療法で特に有用である。GDF−8阻害剤には、抗体(GDF−8および/またはGDF−8受容体に対する)、修飾された可溶性受容体、その他のタンパク質(GDF−8および/またはGDF−8受容体に結合するものを含む)、プロペプチド、ペプチド、およびこれら阻害剤の全ての模倣体が含まれる。非タンパク質様阻害剤には、例えば核酸が含まれる。
【0035】
GDF−8とActRIIB(GDF−8受容体)との結合を阻止する阻害剤は、ActRIIBアッセイを使用して試験することができる。GDF−8は、EZ−結合スルホ−NHS−ビオチン(Pierce,Rockford,Illinois,Cat.No.21217)が20モルとGDF−8が1モルという比で、氷上で2時間、ビオチニル化することができる。反応は、0.5%TFAを使用してpHを低下させることにより終了させることができ、複合体を、CJupiter250×4.6mmカラム(Phenomenex)上でクロマトグラフィにかけて、成熟GDF−8をGDF−8プロペプチドから分離することができる。TFA/CHCNで溶出したビオチニル化成熟GDF−8画分を溜め、濃縮し、MicroBCAタンパク質アッセイ試薬キット(Pierce,Rockford,IL,Cat.No.23235)により定量した。
【0036】
組換えActRIIB−Fcキメラ(R&D Systems,Minneapolis,MN,Cat.No.339−RB/CF)は、4℃で一晩、0.2M炭酸ナトリウム緩衝液中1μg/mlで、96ウェル平底アッセイプレート(Costar,NY,Cat.No.3590)に被覆することができる。次いでプレートを、1mg/mlウシ血清アルブミンで遮断し、標準的なELISAプロトコルに従って洗浄することができる。様々な濃度(10ng/mlなど)のビオチニル化GDF−8の一定分量100μlを、GDF−8阻害剤と共にまたはこの阻害剤無しで(10−11Mから10−7Mに及ぶ濃度など)、遮断されたELISAプレートに添加し、1時間インキュベートし、洗浄し、結合したGDF−8の量をストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ(SA−HRP,BD PharMingen,San Diego,CA,Cat.No.13047E)により検出し、その後、TMB(KPL,Gaithersburg,MD,Cat.No.50−76−04)を添加することができる。比色測定を、Molecular Devicesマイクロプレートリーダで、450nMで行うことができる。
【0037】
本発明の阻害剤は、レポーター遺伝子アッセイを使用して試験をすることもできる。Thies他,Growth Factors 18:251〜259(2001)を参照されたい。例えば、GDF−8の活性を実証するために、ルシフェラーゼを発現するレポーターベクターpGL3(CAGA)12を使用したレポーター遺伝子アッセイ(RGA)が開発されている。CAGA配列は、TGF−β誘発遺伝子PAI−1のプロモーター内のTGF−β応答配列であることが、以前報告された(Denner他,EMBO J.17:3091〜3100(1998))。
【0038】
12個のCAGAボックスを含有するレポーターベクターは、塩基性ルシフェラーゼレポータープラスミドpGL3(Promega,Madison,WI)を使用して作製される。TATAボックスおよびアデノウイルス主後期プロモーターからの転写開始部位(−35/+10)を、BGIII部位とHindIII部位との間に挿入する。CAGAボックスAGCCAGACAの12の反復単位を含有するオリゴヌクレオチドをアニールし、XhoI部位にクローニングする。次いでヒトラブドミオサルコーマ細胞系A204(ATCC HTB−82)を、FuGENE6トランスフェクション試薬(Boehringer Manheim,ドイツ)を使用して、pGL3(CAGA)12で一時的にトランスフェクトする。トランスフェクションの後、細胞を、2mMグルタミン、100U/mlストレプトマイシン、100μg/mlペニシリン、および10%ウシ胎児血清が補われたMcCoyの5A培地48ウェルプレート上で16時間培養する。次いで細胞を、グルタミン、ストレプトマイシン、ペニシリン、および1mg/mlウシ血清アルブミンを含むMcCoyの5A培地中で、37℃で6時間、阻害剤のタイプに依存する試験を行うために10ng/mlのGDF−8でまたはこのGDF−8無しで、かつ様々な濃度GDF−8阻害剤でまたはこの阻害剤無しで処理する。阻害剤の濃度は、例えば、約50nMから50μMまでの中から選択される。例示的な濃度には、1nM、10nM、50nM、100nM、500nM、1μM、5μM、10μM、および50μMのGDF−8阻害剤が含まれる。ルシフェラーゼは、ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)を使用して、処理された細胞内で定量することができる。GDF−8活性のそのようなアッセイは、GDF−8阻害剤が効果的に機能するかどうかを実証することになる。
【0039】
Park他,Circulation 104:815〜819(2001)に記載されている肥満Zucker糖尿病ラットなどの動物をベースにした試験を使用することができる。肥満Zuckerラットは、過体重、インスリン抵抗性、高インスリン血症、および中度高血糖症によって特徴付けられ、2型糖尿病の十分に確立されたモデルである。例えば、8から9週齢の肥満Zuckerラットを糖尿病モデルとして使用し、11から14週齢の痩せたZuckerラットを対照として使用する。本発明の併用療法は、評価されることが求められる治療計画に従ってラットに施すことができる。次いで研究者等は、例えば血液の化学作用および形態の変化を経時的に追跡して、GDF−8阻害剤の有効性を評価する。
【0040】
A.GDF−8阻害剤
GDF−8の活性を遮断することができるGDF−8阻害剤は、本発明で有用である。そのような阻害剤は、GDF−8そのものと相互に作用することができる。あるいは阻害剤は、例えば、GDF−8受容体(ActRIIBなど)またはその他の結合パートナーと相互に作用することができる。阻害剤は、GDF−8とその受容体との結合、および/またはGDF−8の結合後の受容体活性を低下させまたは阻止することができる。阻害剤は、当然ながら、GDF−8およびその受容体などの第2の要素の両方と、相互に作用することができる。これに関して、GDF−8阻害剤には、抗体(GDF−8および/またはGDF−8受容体)、修飾された可溶性受容体、その他のタンパク質(GDF−8および/またはGDF−8受容体と結合するものを含む)、修飾形態のGDF−8またはその断片、プロペプチド、ペプチド、およびこれら阻害剤の全ての模倣体が含まれる。非タンパク質様阻害剤には、例えば核酸が含まれる。
【0041】
本発明のGDF−8阻害剤は、症状の重症度および疾患の進行に応じて、約1μg/kgから約20mg/kgの投薬量で投与することができる。適切な有効用量は、下記の範囲、例えば約1μg/kgから約20mg/kg、約1μg/kgから約10mg/kg、約1μg/約1mg/kg、約10μg/約1mg/kg、約10μg/kgから約100μg/kg、約100μgから約1mg/kg、および約500μg/kgから約1mg/kgの範囲から、治療臨床医によって選択される。GDF−8阻害剤は、局所、経口、静脈内、腹膜内、筋肉内、腔内、皮下、または経皮手段を介して投与することができる。
【0042】
当業者なら、任意のタンパク質の配列中のあるアミノ酸を、そのタンパク質の活性に悪影響を及ぼすことなく、他のアミノ酸の代わりに用いることができることが理解されよう。したがって、本発明のGDF−8阻害剤の配列のアミノ酸配列、またはそのようなGDF−8阻害剤をコード化するDNA配列には、その生物活性または有用性に目に見える損失を与えることなく様々な変化を加えることができると考えられる。そのような変化には、欠失、挿入、切断、および置換を含めることができるが、これらに限定するものではない。
【0043】
GDF−8阻害剤は、所望によりグリコシル化され、ペグ化され、または別の非タンパク質様ポリマーに結合される。本発明のGDF−8阻害剤は、変性グリコシル化パターンを有するように(即ち元のまたは天然のグリコシル化パターンから変性される)修飾することができる。本明細書で使用する「変性」は、元の阻害剤と比較した場合、添加されまたは欠失した1つまたは複数の炭水化物部分を有すること、および/または添加されまたは欠失した1つまたは複数のグリコシル化部位を有することを意味する。GDF−8阻害剤へのグリコシル化部位の付加は、当技術分野で周知のグリコシル化部位コンセンサス配列が含有されるようにアミノ酸配列を変化させることによって実現することができる。炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、グリコシドと阻害剤のアミノ酸残基との化学結合または酵素結合による。これらの方法は、WO 87/05330およびAplin他,Crit.Rev.Biochem.22:259〜306(1981)に記載されている。受容体上に存在する炭水化物部分の除去は、Sojer他,Arch.Biochem.Biophys.259:52〜57(1987);Edge他,Anal.Biochem.118:131〜137(1981);およびThotakura他,Meth.Enzymol.138:350〜359(1987)に記載されるように、化学的にまたは酵素作用によって実現することができる。
【0044】
本発明のGDF−8阻害剤は、検出可能なまたは機能的な標識で標識してもよい。検出可能な標識には、当技術分野で知られている従来の化学作用を使用してGDF−8阻害剤に結合させることができる、131Iや99Tcなどの放射能標識が含まれる。標識には、ホースラディッシュペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼなどの酵素標識も含まれる。標識にはさらに、特定の同種の検出可能な部分、例えば標識されたアビジンとの結合を介して検出することができる、ビオチンなどの化学部分が含まれる。
【0045】
1.抗体
GDF−8活性を阻害する抗体は、本発明の範囲内である。抗体は、例えば、伝統的なハイブリドーマ技法(Kohler他,Nature 256:495〜499(1975))、組換えDNA法(米国特許第4816567号)、または抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ技法(Clackson他,Nature 352:624〜628(1991);Marks他,J.Mol.Biol.222:581〜597(1991))によって作製することができる。様々なその他の抗体生成技法については、例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow他編,Cold Spring Harbor Laboratory(1988);およびAntibody Engineering,第2版,Oxford University Press編,Borrebaeck(1995)を参照されたい。抗体は、完全にまたは部分的にヒトまたはヒト化されてよい。ある実施形態では、抗体は、後続のセクションで記述されるように、変性または変異Fc領域を有することができる。
【0046】
本明細書で述べる併用療法で使用される抗体の親和性は、モル当たり10とモル当たり1011との間でよく、モル当たり10とモル当たり1010との間でよい。ある場合には、抗体は、例えばActRIIB結合の阻害およびレポーター遺伝子アッセイによって実証されるように、生体外および/または生体内でGDF−8活性を阻害することができる。開示される抗体は、骨格筋質量および骨密度の負の調節に関連したGDF−8活性を阻害することができる。GDF−8配列に対する抗体は、例えば米国特許第5827733号および第6096506号で論じられている。
【0047】
a.GDF−8に対する抗体
上述の方法によれば、GDF−8タンパク質そのものに結合する抗体を発生させることができる。これらの抗体は、GDF−8の活性を阻害する場合、例えばGDF−8とその受容体との結合を阻止する場合に、本発明で有効になる。本発明で最も有効な抗体は、GDF−8またはGDF−8/GDF−8受容体の複合体に特異的に結合する性質を有することになる。そのような抗体は、高親和性を有する成熟GDF−8を結合することが可能と考えられ、モノマー形態で、活性ダイマー形態で、かつ/またはGDF−8潜伏複合体の一部として、成熟タンパク質を結合することができる。
【0048】
i.Myo−29、Myo−28、およびMyo−22
その関連ある部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2004/0142382−A1号(出願第10/688925号)に記載されているMyo−29、Myo−28、およびMyo−22抗体は、本発明の方法で使用することができる。これらの抗体は、高親和性の成熟GDF−8を結合し、例えばActRIIB結合の阻害およびレポーター遺伝子アッセイによって実証されるようにGDF−8活性を生体外および生体内で阻害し、骨格筋質量および骨密度の負の調節に関連したGDF−8活性を阻害することが可能である。
【0049】
Myo−29、Myo−28、およびMyo−22抗体、それらのscFv断片、VおよびVドメイン、およびCDRの例示的なDNAおよびアミノ酸(AA)配列を配列表に示し、表1に示されるように列挙する。VおよびVドメインを除く重鎖および軽鎖の配列は、Myo−29、Myo28、およびMyo22と同一である。
【0050】
ii.JA−16
その両方の関連部分が参照により本明細書に援用されるWhittemore他,Bioch.Biophys.Res.Commun.300:965〜971(2003)ならびに米国特許公開第2003/0138422−A1号(出願第10/253532号)に、さらに詳述されるJA−16抗体は、配列番号1に示される成熟GDF−8タンパク質に結合する。
【0051】
b.GDF−8受容体に対する抗体
上述の方法によれば、GDF−8受容体に結合する抗体を発生させることができる。これらの抗体は、GDF−8とその受容体との結合を阻止する場合、またはGDF−8の結合後に受容体の活性を阻止する場合に、本発明で有用になる。抗体は、受容体タンパク質全体に対して、または細胞外ドメインだけに対して発生させることができる。抗体は、ActRIIB、ActRIIB変種、およびGDF−8に対するその他の受容体に対して発生させることができる(例えば、米国特許公開第2004/0223966−A1号;米国特許公開第2004/0077053−A1号;WO 00/43781参照)。
【0052】
2.修飾可溶性受容体
GDF−8の修飾可溶性受容体を、本発明で使用することができる。可溶性受容体は、ActRIIBなどの、GDF−8受容体の細胞外ドメインの全てまたは一部を含むことができる。細胞外ドメインの記述を含むActRIIB受容体、この受容体の特定の断片および変種の配列は、例えば、米国特許第6656475号に記載されている。さらなるGDF−8受容体の構造的および機能的特性に関しては、米国特許第6696260号および米国特許公開第2004/0077053−A1号も参照されたい。
【0053】
そのような受容体は、組換えによって、あるいは無傷の受容体の化学的なまたは酵素作用による切断によって、生成することができる。本発明の修飾可溶性受容体は、血流中でGDF−8を結合し、このGDF−8が体内の未変性GDF−8受容体と結合する能力を低下させることになる。そのような方法で、これらの修飾可溶性受容体は、GDF−8活性を阻害する。
【0054】
a.受容体融合
本発明の修飾可溶性受容体は、別のタンパク質または別タンパク質の一部に融合することによって、より安定にすることができる。高い安定性は、より低い用量でまたは頻度の少ない間隔で投与することができるので、治療に有利である。免疫グロブリンの少なくとも一部、例えば抗体の定常領域など、即ち所望により疫グロブリンのFc断片との融合は、修飾可溶性受容体または本発明のその他のタンパク質の安定性を高めることができる(例えば、Spiekermann他,J.Exp.Med.196:303〜310(2002)参照)。
【0055】
i.ActRIIB Fc融合
その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2004/0223966−A1号(出願第10/689677号)にさらに詳述されるActRIIB Fc融合阻害剤は、GDF−8に結合しその活性を生体外および生体内で阻害する修飾アクチビンII型受容体ActRIIBからなる。特に、ActRIIB融合ポリペプチドは、骨格筋質量および骨密度の負の調節に関連するGDF−8活性を阻害する。本明細書に記述されるActRIIB融合ポリペプチドは、可溶性であり、治療の用途に適したものにする薬物動態特性を有し、例えば、循環半減期が延長され、かつ/またはタンパク質分解による劣化に対する保護が改善される。
【0056】
本発明の組成物および方法で使用されるActRIIB融合ポリペプチドは、ActRIIBの細胞外ドメインから得られる第1のアミノ酸配列と、安定部分または第2のアミノ酸配列、例えば抗体の定常領域から得られる配列などを含む。ActRIIB融合タンパク質の特定の例示的な実施形態の、完全アミノ酸およびDNA配列を、配列番号60および配列番号61にそれぞれ示す。
【0057】
第1のアミノ酸配列は、ActRIIB細胞外ドメインの全てまたは一部から得られ、GDF−8に特異的に結合することが可能である。いくつかの実施形態では、そのようなActRIIB細胞外ドメインの一部を、BMP−11および/またはアクチビン、あるいはその他の成長因子に結合してもよい。ある実施形態では、第1のアミノ酸配列は、アミノ酸(aa)23あたりからaa138あたりまで配列番号60と同一または配列番号60に実質的に示される通りであり、あるいはaa19あたりからaa144あたりまで配列番号62と同一または配列番号62に実質的に示される通りである。配列番号62と配列番号60との相違は、配列番号62のaa64がAlaであるのに対し、対応する配列番号60のaa68がArgであることである。さらに、ActRIIBの配列中のその他の変異が可能であり、例えば配列番号62のaa16およびaa17は、それぞれCysおよびAlaで置換することができる。いくつかのその他の実施形態では、第1のアミノ酸配列は、配列番号60のaa23あたりからaa138あたりまで、または配列番号62のaa19あたりからaa144あたりまで、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、または120の隣接するアミノ酸を含む。そのような配列は、切断された配列がGDF−8に特異的に結合することが可能である限り、切断することができる。
【0058】
第2のアミノ酸配列は、抗体の定常領域、特にFc部分から得られ、またはそのような配列の変異である。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、IgGのFc部分から得られる。関連する実施形態では、Fc部分は、IgG、IgG、または別のIgGイソタイプであるIgGから得られる。特定の実施形態では、第2のアミノ酸配列は、配列番号60に示されるヒトIgGのFc部分(アミノ酸148から378)を含み、このヒトIgGのFc部分は、Fc部分のエフェクター機能が最小限に抑えられるように修飾されたものである。そのような修飾には、Fc受容体結合などのエフェクター機能を変化させる可能性のある特定のアミノ酸残基の変化(Lund他,J.Immun.147:2657〜2662(1991)およびMorgan他,Immunology 86:319〜324(1995))、または定常領域がそこから得られる化学種の変化が含まれる。抗体は、重鎖のC2領域中に、エフェクター機能、即ちFc受容体結合および補体活性化を低下させる変異を有することができる。例えば抗体は、米国特許第5624821号および第5648260号に記載されるような変異を有することができる。例えば、IgGまたはIgG重鎖では、そのような変異を、IgGまたはIgGの完全長配列中のアミノ酸234から237に対応するアミノ酸残基で作製することができる。抗体は、Angal他,Mol.Immunol.30:105〜108(1993)に開示されているように、IgGのヒンジ領域中の変異など、免疫グロブリンの2つの重鎖間のジスルフィド結合を安定させる変異を有することもできる。
【0059】
ある実施形態では、第2のアミノ酸配列は、リンカー配列によって結合されまたは結合しない状態で、第1のアミノ酸配列のC末端またはN末端に結合する。リンカーの正確な長さおよび配列と、結合した配列に対するその向きは、様々でよい。リンカーは、例えば(Gly−Ser)(配列番号63)でよい。リンカーは、2、10、20、30、またはそれ以上のアミノ酸を含むことができ、溶解度、長さおよび立体分離、免疫原性などの所望の性質に基づいて選択される。ある実施形態では、リンカーは、エンテロキナーゼ切断部位Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号64)などのタンパク質分解切断部位の配列、あるいは例えば融合タンパク質の精製、検出、または修飾に有用なその他の機能的配列を含むことができる。
【0060】
3.その他のタンパク質
GDF−8活性を阻害するその他のタンパク質は、本発明の組成物および方法に使用することができる。そのようなタンパク質は、GDF−8そのものと相互に作用して、その活性またはその受容体との結合を阻害することができる。あるいは阻害剤は、GDF−8受容体(ActRIIB)と相互に作用することができ、GDF−8とその受容体との結合を阻害する場合、またはGDF−8の結合後に受容体の活性を阻止する場合に、組成物または方法に役立てることができる。阻害剤は、当然ながら、GDF−8とその受容体との両方と相互に作用することができる。阻害剤は、成熟GDF−8に結合しかつその活性を阻害する、プロペプチドを切断するメタロプロテアーゼを阻害するなど、その他の方法でGDF−8活性に影響を及ぼすこともできる(例えば米国特許公開第2004/0138118−A1号参照)。
【0061】
a.GDF−8とのタンパク質結合
GDF−8に結合しかつその活性を阻害する(またはその受容体に結合する)タンパク質は、本発明の組成物および方法での使用に受け入れられる。いくつかのタンパク質が知られているが、追加のタンパク質を、上述のスクリーニング技法、ActRIIB結合アッセイ、またはレポーター遺伝子アッセイを使用して単離することができる。タンパク質のサンプルは、タンパク質のライブラリーと同様にスクリーニングすることができる。
【0062】
i.GDF−8プロペプチド
GDF−8プロペプチドは、GDF−8の阻害剤として使用することができる。天然に生ずるGDF−8プロペプチドは、短い生体内半減期を有し、それによって、GDF−8活性の薬理学的阻害剤としてのプロペプチドの有効性が低下するので、GDF−8プロペプチド阻害剤は、薬物動態特性が改善された、特に循環半減期が改善された、修飾され安定化したGDF−8プロペプチドを含む。その関係ある部分が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2003/0104406−A1号を参照されたい。
【0063】
そのような修飾GDFプロペプチドは、GDFプロペプチドおよびIgG分子のFc領域を含む(安定化タンパク質として)融合タンパク質を含む。これらのGDF阻害剤は、GDFプロペプチド(例えば配列番号5または11で述べたように)、あるいはGDFプロペプチドの1つまたは複数の生物活性を保持する前記プロペプチドの断片または変種を含むことができる。本発明で使用されるGDF−8プロペプチドは、合成により生成することができ、天然に生ずる(未変性の)GDF−8プロペプチドから得ることができ、あるいは、遺伝子工学の分野で周知の様々な試薬、宿主細胞、および方法使用する組換えによって生成することができる。一実施形態では、修飾GDF−8プロペプチドは、IgG分子またはその断片に共有結合したヒトGDF−8プロペプチドを含む。GDF−8プロペプチドは、IgI分子のFc領域に直接結合することができ、またはリンカーペプチドを介してIgG分子のFc領域に結合することができる。GDF−8のプロペプチドを含めたGDF−8に結合するその他のタンパク質は、WO 00/43781に示されている。
【0064】
iii.フォリスタチンおよびフォリスタチン−ドメイン含有タンパク質
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、成長分化因子−8(GDF−8)のレベルまたは活性を調節し、GDF−8のレベルまたは活性の調節に関する障害を治療するのに使用することができる。フォリスタチンそのものおよびフォリスタチンドメイン含有タンパク質の両方(その両方の関連ある部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2003/0162714−A1号および第2003/0180306−A1号(出願第10/369736号および第10/369738号)に記載されている)は、本発明の組成物および方法で使用することができる。
【0065】
少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含有するタンパク質は、GDF−8に結合し阻害する。少なくとも1つのフォリスタチンドメインを有するタンパク質の例には、フォリスタチン、フォリスタチン様関連遺伝子(FLRG)、FRP(flik、tsc36)、アグリン、オステオネクチン(SPARC、BM40)、ヘビン(SC1、mast9、QR1)、IGFBP7(mac25)、およびU19878が含まれるが、これらに限定するものではない。GASP1およびGASP2は、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質のその他の例である。
【0066】
上述のフォリスタチンドメインは、システインリッチな反復単位を特徴とする、アミノ酸ドメインまたはアミノ酸ドメインをコード化するヌクレオチドドメインと定義される。フォリスタチンドメインは、典型的には65〜90アミノ酸スパンを包含し、10個の保存システイン残基と、Kazalセリンプロテアーゼ阻害剤ドメインに類似した領域を含有する。一般に、システイン残基間のループ領域は、フォリスタチンドメイン内の配列のばらつきを示すが、いくらかの保存は明らかである。第4と第5のシステイン間のループは、通常は小さく、1または2アミノ酸しか含有しない。第7と第8のシステイン間のループ内のアミノ酸は、一般に最も高度に保存され、(G,A)−(S,N)−(S,N,T)−(D,N)−(G,N)のコンセンサス配列の後に(T,S)−Yモチーフが続くものを含有している。第9と第10のシステイン間の領域は、一般に、別のアミノ酸によって切り離された2つの疎水性残基(特にV、I、またはL)を含有するモチーフを含有する。
【0067】
フォリスタチンドメイン含有タンパク質は、少なくとも1つであるが可能なら複数のフォリスタチンドメインを含むことになる。この用語は、未変性タンパク質に関連した既知の生物活性を維持するようなタンパク質の任意の変種(断片;置換、付加、または欠失変異を有するタンパク質;および融合タンパク質を含む)、特に、GDF−8結合活性に関与するものであって、アミノ酸配列に対して保存または非保存変化で修飾された配列も指す。これらのタンパク質は、天然または合成の任意の供給源から得ることができる。タンパク質は、ヒトでよく、またはウシ、ニワトリ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、シチメンチョウ、ヒヒ、および魚を含めた動物源から得ることができる。
【0068】
GDF−8に結合することができる、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、様々な方法を使用して単離することができる。例えば、GDF−8を使用したアフィニティー精製を使用することができる。さらに、cDNAライブラリーの低ストリンジェンシースクリーニングを使用することができ、またはフォリスタチンドメインに向けたプローブを使用した縮重PCR技法を使用することができる。ゲノムデータがより利用可能になるにつれて、MotifSearch(Genetics Computer Group,Madison,WI)やProfileSearch(GCG)、BLAST(NCBI)などのいくつかの配列プロファイリングおよび分析プログラムを使用した類似性検索を使用することにより、既知のフォリスタチンドメインに対して著しい相同性を有する新規なタンパク質を見出すことが可能になる。
【0069】
当業者なら、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むGDF−8またはタンパク質、ならびに本明細書に記載されるその他のタンパク質は、この生物学的性質を変化させることなく、このそれぞれのアミノ酸配列に対して任意の数の保存変化を含むことができることを理解するであろう。そのような保存アミノ酸修飾は、アミノ酸鎖置換の相対的な類似性、例えばその疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づいている。様々な前述の特徴が考慮される例示的な保存置換は、当業者に周知であり、アルギニンおよびリジン;グルタメートおよびアスパルテート;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;バリン、ロイシン、およびイソロイシンが含まれる。さらに、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質を使用して、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含む機能的断片を生成することができる。そのような断片は、GDF−8に結合し阻害することが予想される。本発明の実施形態では、少なくとも1つのフォリスタチンドメインを含むタンパク質は、それがモノマー形態であろうと、活性ダイマー形態であろうと、またはGDF−8潜在複合体であろうと、0.001から100nMの間、または0.01から10nMの間、または0.1から1nMの間の親和性で、成熟GDF−8またはその断片に特異的に結合する。
【0070】
b.GDF−8受容体とのタンパク質結合
GDF−8受容体(ActRIIBなど)に結合し、GDF−8と受容体との結合または受容体そのものの活性を阻害するタンパク質は、本発明の範囲内での使用に受け入れられる。そのようなタンパク質は、スクリーニング技法および上述のActRIIB結合アッセイまたはレポーター遺伝子アッセイを使用して単離することができる。タンパク質のサンプルは、タンパク質のライプラリーと同様にスクリーニングすることができる。
【0071】
c.GDF−8またはGDF−8受容体に結合するタンパク質のいずれかとの融合
GDF−8またはGDF−8受容体に結合するタンパク質のいずれかの融合タンパク質は、別のタンパク質または別のタンパク質の一部と融合することによって、より安定にすることができる。安定性の増大は、より低い用量またはそれほど頻度の高くない間隔で投与することができるので、療法に有利である。免疫グロブリンの少なくとも一部、例えば定常領域などであって、所望により免疫グロブリンのFc断片との融合は、これらタンパク質の安定性を増大させることができる。そのような融合タンパク質の調製は、当技術分野で周知であり、容易に実施することができる(例えば、Spiekermann他,J.Exp.Med.,196:303〜310(2002)参照)。
【0072】
その関連ある部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2003/0104406−A1号(出願第10/071499号)に、より詳細に記述されているGDF−8プロペプチドFc融合阻害剤は、IgG分子のFc領域またはその断片に共有結合したGDF−8前駆タンパク質のアミノ末端ドメインから切断されたポリペプチドを含む。
【0073】
GDF−8プロペプチドFc融合阻害剤は、ヒトGDF−8プロペプチドまたはGDF−8プロペプチドの変異体と、IgG(配列番号66)、IgG、または低下したエフェクター機能用に修飾されたIgG(配列番号67)のFc領域を含む。GDF−8プロペプチドは、修飾を安定化させることを含むように修飾することができる。
【0074】
GDF−8プロペプチド阻害剤のそれぞれは、治療上有効な量で投与することができる。本明細書で使用するGDF−8プロペプチド阻害剤の「有効量」は、骨格筋質量の増加など所望の生物学的結果を実現させるため、GDF−8タンパク質の活性を低下させるのに十分な投薬量である。一般に、治療上有効な量は、対象の年齢、体重、身体状態、および性別、ならびに対象の医学的状態の重症度に応じて変化してよい。投薬量は、医師により決定することができ、必要に応じて観察される治療効果に適合するよう調節することができる。組成物は、約50μg/kgから20mg/kg、例えば約50μg/kgから約10mg/kg、約1mg/kgから約10mg/kg、および約5mg/から約10mg/kgなどの用量で与えることができる。GDF−8プロペプチド阻害剤は、投薬後の最長時間にわたってGDF−8プロペプチドの循環レベルを最大限にするために、大量瞬時用量として与えることができる。
【0075】
d.GDF−8小潜伏複合体のプロテアーゼ活性の阻害剤
GDF−8小潜伏複合体のプロテアーゼ活性の阻害剤は、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2004/0138118−A1号(出願第10/662438号)に記載されている。あるプロテアーゼは、遊離形態でまたは成熟GDF−8ダイマーに結合したときにプロペプチドを切断し、それによって成熟GDF−8ダイマーに結合できないように、かつこのダイマーの活性が阻害されないようにする。したがって、プロテアーゼは、小潜伏複合体(プロペプチドに結合し、プロペプチドによって阻害される成熟GDF−8)を、活性GDF−8に変換することができる。プロペプチドが切断されると、成熟GDF−8ダイマーに結合することができず、このダイマーを不活性化することができない。GDF−8小潜伏複合体のプロテアーゼ活性化の阻害剤は、成熟GDF−8ダイマーとのプロペプチド結合を高め、GDF−8活性を阻害することになる。これらの阻害剤は、プロテアーゼに競合的に結合して、未変性の小潜伏複合体に結合するのを防ぐことができ、またはこれらの阻害剤は、成熟GDF−8ダイマーにも結合して、不活性でありかつ所望によりプロテアーゼ切断に対して抵抗することができる、阻害剤−成熟ダイマーの複合体を生成することができる。
【0076】
メタロプロテアーゼは、4種の哺乳類タンパク質、即ちそれぞれが参照により本明細書に組み込まれるBMP−1(Wozney他,Science 242:1528〜1534(1988));哺乳類Tolloid(mTLD)(Takahara他,J.Biol.Chem.269:32572〜32578(1994));哺乳類Tollod−like−1(mTLL−1)(Takahara他,Genomics 34:157〜165(1996));および哺乳類Tolloid−like−2(mTLL−2)(Scott他,Devel.Biol.213:283〜300(1999))を含む、メタロプロテアーゼのBMP−1/TLDファミリーによって例示される。
【0077】
メタロプロテアーゼのBMP−1/TLDファミリーは、より大きいタンパク質ファミリー、即ちアスタシンファミリーの構成要素であり、例えば、アフリカツメガエル(Xolloid;UVS.2)、魚(コリオリシンHおよびL;ゼブラフィッシュTolloid)、ウニ(BP−10およびSpAN)、およびヒドラ(HMP−1;例えば、参照により本明細書に組み込まれるLi他,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 93:5127〜5130(1996)参照)を含めた様々な脊椎動物および非脊椎動物で発現するプロテアーゼが含まれる。
【0078】
GDF−8小潜在複合体のプロテアーゼ活性の阻害剤は、本発明による障害の治療に使用することができる。様々なメタロプロテアーゼ阻害剤GDF−8調節剤は、抗体、核酸、およびペプチドベースの薬剤も含めて米国特許公開第2004/0138118−A1号に記載されている。メタロプロテアーゼ活性を阻害する薬剤は、例えば、ペプチド、ペプチドヒドロキサメートやホスフィン酸ペプチドなどのペプチド誘導体、またはペプトイドを含めた任意のタイプの分子を含むことができ、例えば、米国特許公開第2004/0138118−A1号のスクリーニングアッセイを通して同定することができる(米国特許公開第2005/0043232−A1号も参照)。
【0079】
GDF−8小潜在複合体のプロテアーゼ活性を阻害する特定の薬剤は、メタロプロテアーゼ酵素を得ようとしてプロペプチドGDF−8と競合するペプチドを含む。これらのペプチドは、プロペプチドの一部、プロペプチド部分を含有する完全長GDF−8ポリペプチドの一部、またはメタロプロテアーゼに関する切断部位の変異を有するGDF−8ポリペプチドの誘導体を含むことができる。一実施形態では、GDF−8のペプチド部分の誘導体は、GDF−8プロペプチドに対応するペプチドである。この実施形態の一態様では、誘導体は、メタロプロテアーゼ切断部位の変異、例えばアミノ酸の置換、欠失、または挿入を、このメタロプロテアーゼがペプチド剤に対して切断活性を変化させた切断部位に、またはそのような切断部位に十分近接して有するプロペプチドである。一態様では、メタロプロテアーゼ切断に抵抗する薬剤は、メタロプロテアーゼで媒介されるGDF−8活性を阻害しまたは調節する。この実施形態の別の態様では、GDF−8のペプチド部分の誘導体は、1つまたは複数のD−アミノ酸および/またはL−アミノ酸;および/または1つまたは複数のアミノ酸類似体、例えば誘導体化されまたはその他の方法でその反応性側鎖またはそのペプチド結合が修飾されたアミノ酸を含有することができるペプチド剤である。誘導体または修飾ペプチドは、プロテアーゼ、酸化剤、またはペプチドが生物学的環境で遭遇する可能性のあるその他の反応性材料に対して、改善された安定性を有することができる。
【0080】
天然に生ずるプロペプチドのメタロプロテアーゼ切断を調節する薬剤は、第2の分子に動作可能に結合することができ、それによって薬剤の動作または活性が促進し、薬剤の生物学的局在性が変化し、または特定の環境における薬剤の安定性が増す。例えばペプチド剤は、このペプチド剤を、異種ペプチドなどのポリペプチドに動作可能に結合させることによって安定化させることができる。例えば、抗体分子のFcドメインに結合することができ、それによって生体内でのペプチド剤の半減期が延びる。
【0081】
メタロプロテアーゼ酵素に対する遮断抗体も、本発明で使用することができ、当技術分野で知られている技法によって容易に生成することができる。
【0082】
ペプチド剤は、その長さが10、20、30、40、または50アミノ酸残基であって野生型または変異体配列を含有するもの、あるいはその誘導体でよい。例えば、P1位置(切断部位のまさに上流)またはP1’位置(切断部位のまさに下流)に1つまたは複数のアミノ酸変化を有するペプチドは、変化させることができる。P1’位置でのアスパラギン酸からアラニンへの置換を、野生型GDF−8プロペプチド配列に関連する長さが10、20、30、40、および50アミノ酸の一連のペプチドで試験した。さらに、P1位置でアルギニンからグルタミンへの置換を有するペプチドは、野生型GDF−8プロペプチド配列のように、生体外または生体内阻害剤に役立てることができる。特に、プロテアーゼ切断に対して高い安定性および/または抵抗力を有する変性および誘導体ペプチド剤が、考えられる。
【0083】
メタロプロテアーゼ酵素の個々のペプチド阻害剤には、
(1)
KDVIRQLLPKAPPLRELIDQYDVQRADSSDGSLEDDDYHATTETIITMPT (配列番号68);
QLLPKAPPLRELIDQYDVQRADSSDGSLEDDDYHATTETI (配列番号69);
APPLRELIDQYDVQRADSSDGSLEDDDYHA (配列番号70);
ELIDQYDVQRADSSDGSLED (配列番号71);および
YDVQRADSSD (配列番号72)
などの、P1’位置にアスパラギン酸からアラニンへの置換を有するペプチド、
(2)
KDVIRQLLPKAPPLRELIDQYDVQRDDSSDGSLEDDDYHATTETIITMPT (配列番号73);
QLLPKAPPLRELIDQYDVQRDDSSDGSLEDDDYHATTETI (配列番号74)
APPLRELIDQYDVQRDDSSDGSLEDDDYHA (配列番号75);
ELIDQYDVQRDDSSDGSLED (配列番号76);および
YDVQRDDSSD (配列番号77)
などの、P1およびP1’位置に野生型メタロプロテアーゼ切断配列を有するペプチド
が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0084】
4.GDF−8阻害剤の模倣体
本発明のGDF−8阻害剤の模倣体を、使用することができる。これらGDF−8阻害剤の任意の合成類似体、特に、より長い半減期を有し、または消化系によってそれほど容易には分解されないような、改善された生体外特性を有するものが有用である。
【0085】
GDF−8に対する抗体の模倣体、GDF−8受容体に対する抗体、修飾された可溶性受容体および受容体融合、およびGDF−8に結合するその他のタンパク質であって、GDF−8プロペプチドや変異GDF−8プロペプチド、フォリスタチンおよびフォリスタチン−ドメイン含有タンパク質、これらのFc融合などは、全て本発明で使用することができる。
【0086】
これらの模倣体は、GDF−8の活性を阻止する場合、即ちGDF−8とその受容体との結合を阻止する場合、本発明で有効になる。本発明で最も有効な模倣体は、GDF−8またはGDF−8/GDF−8受容体複合体に、特異的に結合する性質を有することになる。そのような模倣体は、高親和性を有する成熟GDF−8に結合することが可能であり、モノマー形態であろうと、活性ダイマー形態であろうと、またはGDF−8潜伏複合体として複合体形成していようと、成熟タンパク質に結合することができる。本発明の模倣体は、例えばActRIIB結合の阻害およびレポーター遺伝子アッセイによって実証されるように、生体外および生体内のGDF−8活性を阻害することができる。さらに、開示された模倣体は、骨格筋質量および骨密度の負の調節に関連したGDF−8活性を阻害することができる。
【0087】
B.非タンパク質様阻害剤
非タンパク質様阻害剤は、例えば核酸を含む。
【0088】
1.核酸
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸」という用語はデオキシリボ核酸(DNA)を指し、適切な場合には、リボ核酸(RNA)、またはペプチド核酸(PNA)を指す。この用語は、ヌクレオチド類似体、および1本鎖または2本鎖ポリヌクレオチド(例えばsiRNA)も含むと理解すべきである。ポリヌクレオチドの例には、プラスミドDNAまたはその断片、ウイルスDNAまたはRNA、アンチセンスRNAなどが含まれるが、これらに限定するものではない。「プラスミドDNA」という用語は、環状の2本鎖DNAを指す。本明細書で使用する「アンチセンス」は、配列相補性によってmRNAのコードおよび/または非コード領域の一部とハイブリダイズし、それによってmRNAからの翻訳を妨げることが可能な核酸を指す。「siRNA」および「RNAi」という用語は、mRNAの分解を引き起こすことができ、それによって遺伝子発現をサイレンシングさせる2本鎖RNAである核酸を指す。典型的な場合、siRNAは、その長さが少なくとも15〜50ヌクレオチドであり、例えばその長さは20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドである。
【0089】
GDF−8の活性を阻止することができる核酸は、本発明で有用である。そのような阻害剤は、GDF−8そのものと相互に作用するタンパク質を、コード化することができる。あるいは、そのような阻害剤は、GDF−8受容体(ActRIIBなど)と相互に作用することができるタンパク質をコード化することができ、コード化されたタンパク質がGDF−8とその受容体との結合を阻止する場合、またはGDF−8の結合後に受容体の活性を阻止する場合に、本発明に役立てることができる。阻害剤は、当然ながら、GDF−8およびその受容体と相互に作用するタンパク質をコード化することができる。そのような核酸は、本発明のGDF−8阻害剤を発現させるのに使用することができる。
【0090】
あるいは、アンチセンス核酸を使用して、GDF−8またはGDF−8の受容体(ActRIIBなど)の生成を阻害することができる。アンチセンス配列は、相補的コード配列と相互に作用して機能を低下させることができ、それによって、GDF−8またはGDF−8受容体の生成を阻害するのに役立てることができる。
【0091】
本発明で使用される核酸は、上述のActRIIB結合アッセイおよびレポーター遺伝子アッセイを使用して同定することができる。
【0092】
核酸は、実質的に純粋なまたは均質な形で、その天然の環境から得ることができ、単離することができ、かつ/または精製することができる。様々な異なる宿主細胞でポリペプチドをクローニングし発現させるための系は、周知である。適切な宿主細胞には、細菌、哺乳類細胞、および酵母、およびバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドを発現させるために当技術分野で利用可能な哺乳類細胞系には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウスメラノーマ細胞、および多くのその他のものが含まれる。一般的な細菌宿主はイー・コリ(E.coli)である。核酸からタンパク質を生成するのに適したその他の細胞に関しては、Gene Expression Systems,Eds.Fernandez他,Academic Press(1999)を参照されたい。
【0093】
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、選択またはマーカー遺伝子、およびその他の配列を必要に応じて含む、適切な調節配列を含有する適切なベクターを、選択しまたは構成することができる。ベクターは、必要に応じてプラスミドまたはウイルス、例えばファージまたはファージミドでよい。さらなる詳細に関しては、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook他,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)を参照されたい。核酸を処理するための多くの知られている技法およびプロトコル、例えば核酸構成体の調製、DNAの変異誘発、配列決定、細胞への導入、および遺伝子発現、およびタンパク質の分析は、Current Protocols in Molecular Biology,Eds.Ausubel他,第2版,John Wiley & Sons(1992)に詳述されている。
【0094】
核酸は、別のポリペプチド配列、例えばマーカーまたはレポーターとして機能する配列をコード化するその他の配列と融合することができる。マーカーまたはレポーター遺伝子の例には、β−ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(ネオマイシン(G418)抵抗性の原因)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ヒグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、lacZ(β−ガラクトシダーゼをコード化する)、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)、ルシフェラーゼ、および当技術分野で知られている多くのその他のものが含まれる。
【0095】
本発明の方法は、免疫応答を高めるために、B7−H3の発現を低下させるための短鎖干渉RNA(si RNA)およびアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用も包含する。siRNAは、Hannon,Nature 418:244〜251(2002);McManus他,Nat.Reviews 3:737〜747(2002);Heasman,Dev.Biol.243:209〜214(2002);Stein,J.Clin.Invest.108:641〜644(2001);およびZamore,Nat.Struct.Biol.,8:746〜750(2001)に記載されるような標準的な技法を使用して生成することができる。アンチセンス核酸は、Antisense Drug Technology:Principles,Strategies,and Applications,第1版,Ed.Crooke,Marcel Dekker(2001)に記載されている標準的な技法を使用して生成することができる。
【0096】
核酸は、症状の重症度および疾患の進行に応じて、約1μg/kgから約20mg/kgの剤形で投与することができる。適切な有効用量は、下記の範囲から、即ち約1μg/kgから約20mg/kg、約1μg/kgから約10mg/kg、約1μg/kgから約1mg/kg、約10μg/kgから約1mg/kg、約10μg/kgから約100μg/kg、約100μg/kgから約1mg/kg、および約500μg/kgから約1mg/kgの範囲から、治療臨床医によって選択される。核酸阻害剤は、局所、経口、静脈内、腹膜内、筋肉内、腔内、皮下、または経皮手段を介して投与することができる。
【0097】
III.GDF−8阻害剤と組み合わせて使用されるその他の治療薬
A.インスリン
本発明の方法および組合せで有用なインスリンには、即時作用型インスリン、中時間作用型インスリン、長時間作用型インスリン、中時間および即時作用型インスリンの組合せが含まれる。インスリン療法は、身体により生成されないインスリンの代わりになる。即時または短時間作用型と、中時間または長時間作用型のインスリンの組合せは、正常なまたは正常により近いレベル内に血糖値を保つ助けをする。これらの薬剤の使用は、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2002/0187980−A1号(出願第10/164235号)に、さらに詳述されている。
【0098】
即時作用型の市販のインスリン製品には、HUMALOG(登録商標)Brand Lispro Injection(rDNA由来)、HUMULIN(登録商標)R Regular Human Injecsion、USP[rDNA由来]、HUMULIN(登録商標)R Regular U−500 Concentrated Human Injection、USP[rDNA由来]、Eli Lilly and Co.から入手可能なREGULAR ILETIN(登録商標)II(インスリン注射、USP、精製ポーク)、およびNOVOLIN(登録商標)Human Insulin InjectionおよびVENOSULIN(登録商標)BR Buffered Regular Human Injectionであって、それぞれがNovo Nordisk Pharmaceuticalsから入手可能なものが含まれる。
【0099】
本発明で有用な市販の中時間作用型インスリンには、HUMULIN(登録商標)LブランドLENTE(登録商標)ヒトインスリン(組換えDNA由来)亜鉛懸濁液、HUMULIN(登録商標)N NPHヒトインスリン(組換えDNA由来)イソファン懸濁液、LENTE(登録商標)ILETIN(登録商標)IIインスリン亜鉛懸濁液、USP、精製ポーク、およびNPH ILETIN(登録商標)IIイソファンインスリン懸濁液、USP、精製ポーク、Eli Lilly and Companyから入手可能、LANTUS(登録商標)インスリングラルギン(組換えDNA由来)注射液、Aventis Pharmaceuticalsから入手可能、およびNOVOLIN L Lente(登録商標)ヒトインスリン亜鉛懸濁液(組換えDNA由来)、およびNOVOLIN(登録商標)N NPHヒトインスリンイソファン懸濁液(組換えDNA由来)製品であって、Novo Nordisk Pharmaceuticals,Inc,Princeton New Jerseyから入手可能なものが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0100】
同様に本発明の方法および処方で有用なものは、HUMALOG(登録商標)Mix 75/25(商標)(インスリンリスプロプロタミン懸濁液75%およびインスリンリスプロ注射液25%)やHUMULIN(登録商標)50/50(登録商標)(ヒトインスリンイソファン懸濁液50%およびヒトインスリン注射液50%)、およびHUMULIN(登録商標)70/30(登録商標)(ヒトインスリンイソファン懸濁液70%およびヒトインスリン注射液30%)などであって、それぞれがEli Lily and Companyから入手可能である、中時間作用型と即時作用型インスリンの組合せである。また、NOVALIN(登録商標)70/30(70%NPH、ヒトインスリンイソファン懸濁液と、30%Regular、ヒトインスリン注射液)系の組合せ製品であって、Novo Nordisk Pharmaceuticalsから入手可能な中時間作用型および即時作用型のインスリンも有用である。
【0101】
本発明で使用される、例示的な市販の長時間作用型インスリンは、Eli Lilly and Companyから入手可能なHUMULIN(登録商標)U Ultralente(登録商標)ヒトインスリン(組換えDNA由来)持続型亜鉛懸濁液である。
【0102】
本発明の方法では、Pfizer Inc.およびAventis SAによって開発された、EXUBERA(登録商標)吸入型インスリン製品などの吸入型インスリン製品も有用である。
【0103】
これらのインスリン製品のそれぞれは、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれるMedical Economic Company,Inc.(Montvale,New Jersey)から出版されている医師用処方薬参考書、第55版、2001に、各製品ごとに公表されているような、当技術分野で知られている投与、投薬、および治療計画を使用して医療の専門家が指示するように投与することができる。
【0104】
B.スルホニル尿素剤
スルホニル尿素剤は、膵臓により生成されたインスリンの量を増やす。このスルホニル尿素剤は、インスリン受容体の機能性を増大させ、より多くのインスリン受容体の生成を刺激することによって、全身のインスリン有効性も増大させる。これらの薬剤は、インスリン抵抗性も低下させ、肝臓により作製される糖の量を減少させることができる。
【0105】
本発明の方法および組成物で有用なスルホニル尿素剤には、グリピジド、グリブリド(グリベンクラミド)、クロルプロパミド、トルブタミド、トラザミド、およびグリメプリリド、またはその医薬上許容される塩の形が含まれる。これらの薬剤の使用は、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2003/008869−A1号(出願第10/163783号)に、さらに詳述されている。
【0106】
本発明のスルホニル尿素剤は、Medical Economic Company,Inc.(Montvale,NewJersey)から出版されている医師用処方薬参考書、第55版、2001の関連化合物に列挙されるような、当技術分野で知られている用量および治療計画で投与することができる。例えば、Aventis PharmaceuticalsからAMARYL(登録商標)錠剤として入手可能なグリメピリドは、成人において、1日当たり約1から約2mgの初期日用量で与えることができる。この投薬量は、1日当たり約8mgまで徐々に増やすことができるが、通常の維持用量は、1日当たり約2から4mgの間である。グリブリドは、Aventis PharmaceuticalsからDIAβETA(登録商標)錠剤として入手可能であり、1日当たり約2.5から約5mgに及ぶ初期用量を有し、通常の維持用量は、1日当たり約1.25から約20mgである。クロルプロパミドは、Pfizer Inc.からDIABINESE(登録商標)錠剤として入手可能であり、ヒトにおいては、レシピエントの個々の特徴に応じて約100から約500mgの日用量を有することができる。グリピジドは、Pfizer Inc.からGLUCOTROL(登録商標)錠剤およびGLUCOTROL XL(登録商標)持続放出錠剤として市販されている。約2.5から約5mgの初期日用量で投与することができ、1日当たり約15から40mgの間の維持用量になるまで2.5から5mgずつ増やすことができる。トラザミンは、一般に、1日当たり約100mgから500mgの間の日用量で投与され、平均維持用量は、1日当たり約250mgから500mgの間であり、これを毎日1回、または1日のうちに複数回に分けて摂取する。250mgから500mgのトラザミド錠剤と、500mgのトルブタミド錠剤は、Mylan Pharmaceuticals Inc.,Morgantown,WV,米国から入手可能である。
【0107】
C.ビグアニド剤
ビグアニド剤は、糖新生の際に肝臓から生成される糖の量を減少させることによって、血糖を低下させる。ビグアニド剤は、筋肉細胞により吸収される糖の量も増やし、インスリン抵抗性を低下させる。これらの薬剤は、血液中のトリグリセリドレベルを低下させ、ある異常な凝固因子、およびアテローム性動脈硬化症をもたらす可能性のある炎症のマーカーを低下させることができる。
【0108】
本発明の方法および組成物に有用なビグアニド剤は、メトホルミンおよびその医薬上許容される塩の形を含む。これらの薬剤の使用は、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2003/0018028−A1号(出願第10/163707号)に、さらに詳述されている。
【0109】
方法および組合せで有用な塩酸メトホルミンは、Bristol MyersSquibbからmGLUCOPHAGE(登録商標)という商標名で、500mg、850mg、および1000mgの錠剤として市販されている。塩酸メトホルミンは、500mgから約800mgの初期日用量でヒトに投与することができ、必要に応じて、2550mgという最大日用量まで増やすことができる。
【0110】
D.チアゾリジンジオン剤
チアゾリジンジオン剤は、インスリン抵抗性を低下させることによって、体内の細胞がインスリンに応答する方法を改善する。チアゾリジンジオン剤は、悦液中のトリグリセリドを減少させ高密度リポタンパク質(HDL)を増やすことによって、高コレステロールの治療を助けることもできる。
【0111】
本発明の方法および組成物に有用なチアゾリジンジオン剤は、ピオグリタゾンまたはロシグリタゾンの限定されない群、あるいはこれら薬剤の医薬上許容される塩の形である。これら薬剤の使用は、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2002/0198203−A1号(出願第10/164233号)に、さらに詳述されている。これらの薬剤のそれぞれは、当技術分野で知られている方法により生成することができる。これらの薬剤は、これら生成物のそれぞれについて記述する関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Medical Economic Company,Inc.から出版された医師用処方薬参考書、2001、第55版、著作権2001に記述されるような化合物に関して、当技術分野で知られている医薬品としてまたは治療上有効な投薬または量で投与することもできる。
【0112】
ピオグリタゾンは、Swiss Bioceutical International,Ltd.から、15mg、30mg、および45mgのACTOS(登録商標)ブランドの塩酸ピオグリタゾン錠剤の形で入手可能である。ピオグリタゾンおよびその医薬上許容される塩の形は、約15mgまたは30mgの初期日用量でヒトに投与することができ、必要に応じて約45mgという最大日用量まで増やすことができる。
【0113】
ロシグリタゾンは、GlaxoSmithKlineから、2mg、4mg、および8mgのAVANDIA(登録商標)マレイン酸ロシグリタゾン錠剤の形で入手可能である。ロシグリタゾンは、約4mgの初期日用量を単回投与または分割投与によってヒトに投与することができ、必要に応じて、8mgという最大日用量まで増やすことができる。
【0114】
E.α−グルコシダーゼ阻害剤
α−グルコシダーゼ阻害剤は、体内での炭水化物の消化を遅延させ、腸が食物からグルコースを吸収する速度を遅くする。これは、食事の後に血液を通過する糖の量を減少させ、高血糖の期間を妨げる。
【0115】
本明細書に記述される本発明の方法および組成物と共に使用することができるα−グルコシダーゼ阻害剤は、ミグリトールまたはアカルボースであり、あるいは、これら化合物の1種または複数の、医薬上許容される塩の形である。これら薬剤の使用は、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2003/0013709−A1号(出願第10/164232号)に、さらに詳述されている。
【0116】
アカルボース錠剤は、PRECOSE(登録商標)という商標名でBayer Corporationから入手可能であり、これは、毎日1回から3回に分けて投与される約25mgの初期用量でヒトに投与することができ、時間と共に、1日当たり3回に分けて投与される約50から100mgの範囲まで、増やすことができる。
【0117】
25mg、50mg、および100mg用量のミグリトール錠剤は、Pharmacia & UpjohnからGLYSET(商標)という商標名で入手可能であり、1日当たり約25mgの初期用量で投与することができ、必要に応じて、毎日3回に分けて投与される最大用量100mgまで増やすことができる。
【0118】
F.PTPase阻害剤
タンパク質チロシンホスファターゼ(PTPase)は、広く様々な細胞応答を調節する際に、重要な役割を演ずる多様な分子の大きいファミリーである。PTPaseファミリーは、3つの主なサブクラス、即ち古典的なPTPase、低分子量PTPase、および2重特異性PTPaseに分割される。古典的なPTPaseは、さらに2つのクラスに分類することができ、即ち細胞内PTPase(例えばPTP1B、TC−PTP、ラット脳PTPase、STEP、PTPMEG1、PTPH1、PTPD1、PTPD2、FAP−1/BAS、PTP1C/SH−PTP1/SHP−1、およびPTP1D/Syp/SH−PTP2/SHP2)と、受容体型PTPase(例えばCD45、LAR、PTPI、PTPε、PTPΛ、PTPM、PTPΚ、SAP−1、およびDRP−1)に分類することができる。2重特異性ホスファターゼは、セリン/トレオニンおよびチロシン残基の両方からリン酸基を除去する能力を有する。PTPファミリーのPTPaseの構成要素は、インスリンシグナル伝達、レプチンシグナル伝達、T細胞活性化およびT細胞媒介性シグナル伝達カスケード、線維芽細胞の増殖、血小板凝集、および骨芽細胞増殖の調節を含めた広く様々な細胞プロセスの、重要なモジュレーターまたはレギュレーターであると意味付けられる。
【0119】
あるPTPase阻害剤は、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第60/547071号および第60/547049号に詳述されている。その他のPTPase阻害剤も同様に、本発明で使用することができる。
【0120】
一態様では、PTPase阻害剤は、式(I)を有する
【0121】
【化1】

(式中、Rは、C(O)OR、5から6員複素環、H、ハロゲン、CN、またはC(O)NRであり、
は、C(O)ZRまたはCNであり、
Zは、−O−または−NR−であり、
Xは、−O−C1〜3アルキレン−、−NR−C1〜3アルキレン−、−S−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−C1〜4アルキレン−、−C2〜4アルケニレン−、または−C2〜4アルキニレン−であり、アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基のいずれかは、所望により1つまたは複数のハロゲン、オキソ、HN=、CN、OCF、OH、NH、NO、R、またはQで置換することができるものであり、
各Y、Y、Y、Y、およびYは、独立に、CR、N、S、またはOであり、Y、Y、Y、Y、およびYの1つまたは2つは無くすことができるものであり、
各Rは、独立に、H、アリール、5から8員ヘテロシクリル、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ハロゲン、CN、OCF、OH、NH、NO、またはQであり、アリール、複素環、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基のいずれかは、所望により1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、NO、N、R、またはQで置換されるものであり、
各Qは、独立に、−OC(O)NR、−OR、−OC(O)R、−COOR、−C(O)NR、−C(O)R、−C(=N−OH)R、−NR、−N、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−NRC(O)OR、−NRS(O)、−SR、−S(O)R、−S(O)、または−S(O)NRであり、
各R、R、およびRは、独立に、H、C1〜16アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜8シクロアルキル、シクロアルキルC1〜6アルキル、5から8員複素環、複素環式C1〜6アルキル、アリール、アリールC1〜6アルキル、アリールC2〜6アルケニル、またはアリールC2〜6アルキニルであり、各R、R、およびRは、所望により1つまたは複数のC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、NO、N、−OC(O)NR、−OR、−OC(O)R、−COOR、−C(O)NR、−C(O)R、−NR、−N、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−NRC(O)OR、−NRS(O)、−SR、−S(O)R、−S(O)、または−S(O)NRで置換することができるものであり、
各R、R、およびRは、独立に、H、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜12シクロアルキル、アリール、またはアリールC1〜12アルキルであり、各R、R、およびRは、所望により1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、またはNOで置換できるものであり、
環系が1−ベンゾチオフェンであり、RがC(O)OCHであり、Xが−OCH−である場合、RはC(O)OCHではなく、
環系が1−ベンゾチオフェンであり、RがC(O)OHであり、Xが−OCH−である場合、RはC(O)OHではなく、
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、Rがイソプロピルエステルであり、Xが−OCH−である場合、RはC1〜3アルキルエステルではなく、
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、RがC(O)OC1〜4アルキルであり、Xが−OCH−または−OCH(CH)−である場合、RはCNではなく、
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、Rがイソプロピルエステルであり、Xが−SCHCH−である場合、RはCNではなく、
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、Rがイソプロピルエステルであり、Xが−SCH−である場合、Rはイソプロピルエステルではない)。
【0122】
ある実施形態では、Rが5または6員複素環である。好ましい5員複素環は、下記の基を含むことができる。
【0123】
【化2】

【0124】
ある実施形態では、RおよびRが、−C(O)OHまたは−C(O)OC1〜4アルキルである。別の態様では、Xは、−O−C1〜3アルキレン−、−NR−C1〜3アルキレン−、−S−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、または−SO−C1〜3アルキレン−であり、任意のアルキレン基は、所望により1つまたは複数のF、Cl、CN、OCF、OH、NH、NO、CHO、またはQで置換される。ある実施形態では、Xは−O−CH−である。別の態様では、縮合複素環がベンゾチオフェンまたはチエノピリジンである。
【0125】
式(I)の化合物は、塩にすることができる。この化合物は、医薬上許容される塩またはそのプロドラッグとして、医薬上許容される賦形剤または担体と併せて医薬組成物に含めてもよい。この化合物は、PTP1BなどのPTPaseを阻害することができる。
【0126】
本発明の別の実施形態では、PTPase阻害剤は、式(II)を有する化合物でもよい
【0127】
【化3】

(式中、Rは、R、OR、C(O)OR、C(O)RまたはC(O)NRであり、
は、Rであり、
Xは、−O−C1〜3アルキレン、−NR−C1〜3アルキレン−、−S−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−C1〜4アルキレン、−C2〜4アルケニレン−、またはC2〜4アルキニレン−であり、アルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン基のいずれかは、所望により1つまたは複数のハロゲン、オキソ、イミド、CN、OCF、OH、NH、NO、またはQで置換することができ、
Yは、存在しないか、−O−または−NR−であり、
は、H、ハロゲン、CN、CF、OCF、C1〜3アルキル、C3〜4シクロアルキル、C1〜3アルコキシ、またはアリールであり、
は、A−B−E−Dであり、但しAは、存在しないか、アリーレン、ヘテロアリーレン、C1〜6アルキレン、C2〜6アルケニルジイル、またはC2〜6アルキニルであり、各Aは、所望によりC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ハロゲン、CN、OCF、OH、NH、CHO、NO、またはQの1つまたは複数で置換することができ、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基のいずれかは、所望により1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、NO、N、またはQで置換され、各Aは、所望により1つまたは複数のアリーレン、アルキレン、またはアルケニレンで終結することができ、
Bは、存在せず、あるいは−NR−、−NR−、−N(R)CH−、−N(R)CH−、−N(R)−、−N(R)C(O)−、−N(R)C(O)C(R11)(R12)−、−N(R)C(O)C(O)−、−N(R)C(O)N(R10)−、−N(R)SO−、−N(R)SOC(R10)(R11)−、−N(R)(R10)C(R11)(R12)−、−N(R)C(R11)(R12)C(R13)(R14)−、−O−、−O−C(R11)(R12)−、−O−C(R11)(R12)C(R13)(R14)−、−C(R11)(R12)−O−、−C(R11)(R12)−O−C(R13)(R14)−、−C(R11)(R12)N(R)−、−C(R11)(R12)N(R)C(R13)(R14)−、−C(R11)(R12)S−、−C(R11)(R12)SC(R13)(R14)−、または−C(R11)(R12)SOC(R13)(R14)−であり、
Eは、存在せず、あるいはC3〜12シクロアルキレン、3から12員ヘテロシクジイル、アリーレン、C1〜12アルキレン、C2〜12アルケニレン、またはC2〜12アルキニレンであり、但し各Eは、所望により1つまたは複数のC1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、ハロゲン、CN、OH、NH、またはNOで置換されるものであり、
Dは、1つまたは複数のH、ハロゲン、OH、NH、CHO、CN、NO、CF、またはQであり、
A、B、およびEが存在せず、RがC(O)OHまたはC(O)OCHであり、RがHであり、RがHまたは塩素である場合、DはHまたは塩素ではなく;A、B、およびEが存在せず、RがC(O)OHまたはC(O)OCHであり、RがHであり、RがHまたは臭素である場合、DはHまたは臭素ではなく、
各Qは、独立に、−R、−R、−OR、−OR、−NR、−NR、−N、S(O)、または−S(O)であり、nは0、1、または2であり、
各R、R、およびRは、独立に、H、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜12シクロアルキル、C1〜12アルコキシC1〜12アルキル、シクロアルキルC1〜6アルキル、3から8員ヘテロシクイル、ヘテロシクイルC1〜6アルキル、アリール、アリールC1〜6アルキル、アリールC2〜6アルケニル、またはアリールC2〜6アルキニルであり、各R、R、およびRは、所望により1つまたは複数のR、−OR−、−OC(O)OR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR10、−SR、−S(O)R、−S(O)、−NR10、−N1011、−NRC(O)R10、−NC(O)NR10、−NRS(O)10、オキソ、ハロゲン、CN、OCF、CF、OH、またはNOで置換することができ、
は、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−S(O)、−S(O)R、または−S(O)NRであり、
各R、R10、R11、R12、R13、およびR14は、独立に、H、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜12シクロアルキル、アリール、またはアリールC1〜12アルキルであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基のいずれかは、所望により1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、またはNOで置換されるものである)。
【0128】
ある実施形態では、Rは、C(O)OH、C(O)OCH、C(O)OCHCH、またはC(O)NHである。その他の実施形態では、Rは、H、CH、CHCH、またはt−ブチルである。ある実施形態では、Xは、−O−C1〜3アルキル−、−N−C1〜3アルキル−、−S−C1〜3アルキル−、−SO−C1〜3アルキル−、または−SO−C1〜3アルキル−である。その他の実施形態では、Rは、H、F、Cl、Br、メチル、またはCFである。
【0129】
一実施形態では、Aは、Bで置換されたアリール基であり、さらに所望により、OH、NH、CHO、CN、NO、ハロゲン、C〜Cアルキル、またはQの1つまたは複数で置換することができ、Bは、無くすことができ、あるいは、C〜Cアルキルや、C〜Cアルケニル、NH、NHCO、NHCONH、NHSO、NHSOCH、NHCH、NHCHCH、O、OCH、OCHCH、CHO、CHOCH、CHNH、CHNHCH、CHS、CHSCH、またはCHSOCHなどの1〜3原子リンカーにすることができる。
【0130】
下記の実施例において、B−E−DとAとの接続については、Aが6員アリール基である場合、Aとチオフェン環との間の接続に対するメタ位(C−3またはC−5)が好ましいことが示されている。Aが5員アリール基である場合、Aとチオフェン環との間に対してC−3またはC−4位が好ましい。
【0131】
【化4】

【0132】
別の実施形態では、Eは、存在せず、あるいはC3〜8シクロアルキレン、C3〜8ヘテロシクジイル、アリーレン、C1〜6アルキレン、C2〜6アルケニレン、またはC2〜6アルキニレンであり、所望により1つまたは複数のC1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、ハロゲン、CN、OH、NH、またはNOで置換される。ある実施形態では、Eは、シクロペントジイル、シクロヘキスジイル、シクロヘプトジイル、ピペリジンジイル、ピペラジンジイル、ピロリジンジイル、テトラヒドロフランジイル、モルホリンジイル、フェニレン、ピリジンジイル、ピリミジンジイル、チオフェンジイル、フランジイル、イミダゾルジイル、ピロルジイル、ベンズイミダゾルジイル、テトラヒドロチオピランジイル、またはテトラヒドロピランジイルにすることができる。
【0133】
一実施形態では、Dは、1つまたは複数のH、ハロゲン、OH、NH、CHO、CN、NO、CF、アリール、またはQである。ある実施形態では、Dは、SO、−C(O)R、−OC(O)NR、−OR、−COOR、−C(O)NR、−C(O)R、ピリミジニル、またはピリジニルである。
【0134】
式(II)の化合物は、塩にすることができる。この化合物は、医薬上許容される塩またはそのプロドラッグとして、医薬上許容される賦形剤または担体と併せて医薬組成物中に含めてもよい。この化合物は、PTP1BなどのPTPaseを阻害することができる。
【0135】
これら化合物の有効な投与は、例えば、約1mg/kgから約250mg/kgの日用量で与えることができ、例えば、単回投与、または2回以上に分割した用量で与えることができる。そのような用量は、経口、移植、非経口(静脈内、腹膜内、および皮下注射を含む)、経直腸、経膣、および経皮を含めた、本明細書の活性化合物をレシピエントの血流に向けるのに有用な任意の手法で投与することができる。この開示において、経皮投与は、身体の表面と、上皮および粘膜組織を含んだ身体経路の内層との全体を通した全ての投与を含むと理解される。そのような投与は、本発明の化合物、またはその医薬上許容される塩を、ローション、クリーム、フォーム、パッチ、懸濁液、溶液、および坐薬(経直腸、経膣)にしたものを使用して実施することができる。
【0136】
G.抗脂血剤
本明細書に記述される本発明の方法および組成物で利用することができる、抗高脂血剤としても知られる抗脂血剤は、胆汁酸金属イオン封鎖剤、フィブリック酸誘導体、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、およびニコチン酸化合物である。抗脂血剤は、いくつかのメカニズムを通して、血液中のコレステロールおよび脂肪の量を低下させる。例えば胆汁酸金属イオン封鎖剤は、腸内で胆汁酸と結合し、血液中に再吸収されるのを防止する。次いで肝臓が、より多くの胆汁を生成して、失われた胆汁に取って代わる。身体は、胆汁を形成するのにコレステロールを必要とするので、肝臓は血液中のコレステロールを使い果たし、血液中を循環するLDLコレステロールの量が低下する。
【0137】
本発明で有用な胆汁酸金属イオン封鎖剤は、コレスチポールおよびコレセベラムと、その医薬上許容される塩の形を含む。本発明と共に使用することができるフィブリック酸誘導体には、クリフォフィブレート、ゲムフィブロジル、およびフェノフィブレートが含まれる。本発明で有用な、スタチンとしても知られるHMG−CoAレダクターゼ阻害剤には、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、およびシムバスタチン、またはその医薬上許容される塩の形が含まれる。ナイアシンは、本発明の方法と共に使用することができるニコチン酸化合物の例である。オルリスタットなどのリパーゼ阻害剤も有用である。これらの薬剤の使用は、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2002/0198202−A1号(出願第10/164231号)に、さらに詳述されている。
【0138】
本発明で有用な胆汁酸金属イオン封鎖剤には、コレスチポールおよびコレセベラムと、その医薬上許容される塩の形が含まれる。コレスチポールは、1mg COLESTID(登録商標)微粉化塩酸コレスチポール錠剤として、Pharmacia&Upjohnから入手可能であり、その推奨される初期用量は1日当たり約2gであるが、必要に応じて1日当たり2から16gまで増やし、これを分割した用量で摂取することができる。塩酸コレセバラムは、625mg WELCHOL(登録商標)錠剤として、Sankyo Pharma,Inc.から入手可能であり、その推奨される開始用量は、食事と共に1日2回3錠であり、または食事と共に1日1回6錠を摂取する。必要に応じて、この投与を1日7錠に増加することができる。錠剤は、液体と共に投与することが推奨される。
【0139】
本発明と共に使用することができるフィブリック酸誘導体には、クリフォフィブレート、ゲムフィブロジル、およびフェノフィブレートが含まれる。クリフォフィブレートは、500mgのATROMID−S(登録商標)カプセルの形でWyeth−Ayerst Pharmaceuticalsから市販されており、その推奨される日用量は、分割用量で投与される約2gである。ゲムフィブロゾイルは、600mgのLOPID(登録商標)錠剤としてParke−Davisから入手可能であり、成人に推奨されるその用量は、1日当たり約1200mgを2回に分けて、朝食前および夕食前の30分に投与する。フェノフィブレートは、67mg、134mg、および200mgのTRICOR(登録商標)錠剤としてAbbot Laboratories Inc.から入手可能であり、その推奨される初期用量は、1日当たり67mgから200mgであり、最大の日用量は、1日当たり200mgまでである。
【0140】
本発明で有用なHMG−CoAレダクターゼ阻害剤には、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、およびシムバスタチン、または医薬上許容されるこれらの塩の形が含まれる。BAYCOL(登録商標)セリバスタチンナトリウム錠剤は、0.2mg、0.3mg、0.4mg、および0.8mgの錠剤用量でBayer Corporationから入手可能であり、その推奨される開始用量は、1日1回、晩に摂取される4mgであり、維持用量の範囲は、1日当たり0.2mgから0.8mgである。20mgまたは40mgのフルバスタチンに相当するフルバスタチンナトリウムを含有するLESCOL(登録商標)フルバスタチンナトリウムカプセルは、Novartis Pharmaceuticals Corporationから入手可能であり、その推奨される開始用量は、1日1回就寝時に摂取される20mgから40mgであり、推奨される毎日の維持用量は、20mgから80mgであり、日用量80mgは分割した用量で摂取される。LIPTOR(登録商標)アトルバスタチンカルシウム錠剤は、10mg、20mg、40mg、または80mgの用量でParke DavisまたはPfizer Inc.から入手可能であり、その推奨される開始用量は、1日1回摂取される10mgであり、最終的な用量範囲は、1日1回、10mgから80mgである。MEVACOR(登録商標)ロバスタチン錠剤は、10mg、20mg、および40mg錠剤としてMerck&Co.,Inc.から入手可能であり、その推奨される開始用量は、1日1回夕食と共に摂取される20mgであり、推奨される用量範囲は、単回でまたは2回に分けて投与される1日当たり10mgから80mgである。PRAVACHOL(登録商標)プラバスタチンナトリウム状態は、Bristol−Myers Squibb Companyから10mg、20mg、または40mgの錠剤として入手可能であり、その推奨される開始用量は、1日1回摂取される10mg、20mg、または40mgである。ZOCOR(登録商標)シムバスタチン錠剤は、5mg、10mg、20mg、40mg、または80mgの用量としてMerck&Co.から入手可能であり、その推奨される開始用量は1日当たり20mgであり、維持用量範囲は1日当たり5mgから80mgである。
【0141】
ナイアシンは、本発明の方法および組成物と共に使用することができるニコチン酸物質の例である。これは、500mg、750mg、および1000mgの持続放出錠剤として、NIASPAN(登録商標)という商標名でKos Pharmaceuticals,Inc.(1001 Brickell Bay Drive,25th Floor,Miami,Florida 33131)から市販されている。
【0142】
オルリスタットは、120mgカプセルとして、XENICAL(登録商標)という商標名でRoche Pharmaceuticalsから入手可能なリパーゼ阻害剤である。推奨される用量は、脂肪を含有する主要な食事それぞれの後に、1日3回、120mgの錠剤が1錠である。
【0143】
H.アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤
ACE阻害剤は、心臓がポンプ送出する血液の量を改善し、血圧を低下させるために、血管を拡張する。ACE阻害剤は血流も増大させ、それによって、心臓が行わなければならない動作量を減少させる助けをする。
【0144】
本明細書に開示される方法および組成物に有用なACE阻害剤には、キナプリル、ラミプリル、ベラパミル、カプトプリル、ジルチアゼム、クロニジン、ヒドロクロルチアジド、ベナゼプリル、プラゾシン、フォシノプリル、リシノプリル、アテノロール、エナラプリル、ペリンドロプリル、ペリンドロプリルt−プチルアミン、トランドラプリル、およびモエキシプリル、あるいは、医薬上許容されるこれら化合物の1つまたは複数の塩の形が含まれる。これら薬剤の使用は、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2003/0055058−A1号(出願第10/163704号)に、さらに詳述されている。
【0145】
その例には、ACCUPRIL(登録商標)という商標名でParke−Davisから販売されている塩酸キナプリルが含まれ、これは、1日当たり約10から約20mgの初期用量でヒトに投与することができ、時間と共に、1日当たり約20から80mgの範囲まで増やすことができる。活性成分として1−[(2S)−3−メルカプト−2−メチルプロピオニル]−L−プロリンを含有するカプトプリル錠剤は、25から50mgの用量を1日2回または3回投与することができる。AstraZeneca Pharmaceuticals LPからZESTRIL(登録商標)錠剤として入手可能なリシノプリルは、1日当たり約10mgの用量から開始し、その日用量を約20から40mgにまで増やすことができる。ラミプリルは、ALTACE(登録商標)カプセルとして入手可能であり、1日当たり約2.5から約20mgの通常の維持用量を、単回または分割用量で投与することができる。ベラパミルHCl錠剤は、G.D.Searle&Co.からCALAN(登録商標)という商標名で、40mg、80mg、および120mgの強度で入手可能であり、約40mgの用量を1日3回投与することから始まり、合計の1日の投与は約480mgまで増やすことができる。ジリタゼムHClカプセルは、CARDIZEM(登録商標)という商標名でAventis Pharmaceuticalsから入手可能である。
【0146】
I.アルドースレダクターゼ阻害剤
アルドースレダクターゼ阻害剤は、糖尿病に罹っている人間の眼および神経の損傷を予防する。アルドースレダクターゼは、眼に通常存在する酵素であり、グルコースからソルビトールへの代謝を引き起こし、それが眼に損傷を与える可能性がある。アルドースレダクターゼ阻害剤は、このプロセスを遅くする。
【0147】
本発明の方法および組成物に有用なアルドースレダクターゼ阻害剤は、当技術分野で知られているものを含む。これらには、
a)その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4927831号(Malamas)に開示された、スピロ−イソキノリン−ピロリジンテトロン化合物であって、ARI−509が含まれかつミナルレスタットまたはスピロ[イソキノリン−4(1H),3’−ピロリジン]−1,2’,3,5’(2H)−テトロン,2−[(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)メチル]−6−フルオロ−(9Cl)としても知られるもの;
b)その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4459617号の化合物であって、トルレスタットが含まれかつグリシン、N−[[6−メトキシ−5−(トリフルオロメチル)−1−ナフタレニル]チオキソメチル]−N−メチル−(9Cl)、またはAY−27773としても知られるもの;
c)スピロ[4H−1−ベンゾピラン−4,4’−イミダゾリジン]−2’,5’−ジオン、6−フルオロ−2,3−ジヒドロ、(4S)−(9Cl)、またはCP45634としても知られるソルビニル(登録番号68367−52−2);
d)メトソルビニル;
e)1−フタラジン酢酸,3,4−ジヒドロ−4−オキソ−3−[[5−(トリフルオロメチル)−2−ベンゾチアゾリル]メチル]−(9Cl)(登録番号110703−94−1)であるゾポルレスタット;
f)3−チアゾリジン酢酸,5−[(2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−,(5Z)−(9Cl)(登録番号82159−09−9)であるエパルレスタット;
g)ゼナレスタット(登録番号112733−40−6)、または3−[(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)メチル]−7−クロロ−3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−1(2H)−キナゾリン酢酸;
h)2,7−ジフルオロスピロ(9H−フルオレン−9,4’−イミダゾリジン)−2’,5’−ジオンとしても知られるイミレスタット;
i)1−フタラジン酢酸,3−[(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)メチル]−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−(9Cl)であり、スタチル(StatilまたはStatyl)としても知られるポナルレスタット(登録番号72702−95−5);
j)3−チアゾリジン酢酸,5−[(2E)−2−メチル−3−フェニル−2−プロペニリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−,(5Z)−(9Cl)であるONO−2235;
k){3−[(4,5,7−トリフルオロベンゾチアゾール−2−イル)メチル]−5−メチルフェニル酢酸であるGP−1447;
l)5−(3−エトキシ−4−ペンチルオキシフェニル)−2,4−チアゾリジンジオンであるCT−112;
m)グリシン,N−[(7−フルオロ−9−オキソ−9H−キサンテン−2−イル)スルホニル]−N−メチル−(9Cl)であるBAL−ARI 8(登録番号124066−4−6);
n)2,3−ジヒドロ−2,8−ビス(1−メチルエチル)−3−チオキソ−4H−1,4−ベンゾキサジン−4−酢酸、または塩化物の塩の形(4H−1,4−ベンゾキサジン−4−酢酸,2,3−ジヒドロ−2,8−ビス(1−メチルエチル)−3−チオキソ−(9Cl)であるAD−5467;
o)(3’,5’−ジメチル−4’−ニトロメチルスルホニル−2−(2−トルイル)アセトアニリド)であるZD5522;
p)3,4−ジヒドロ−2,8−ジイソプロピル−3−チオキソ−2H−1,4−ベンゾキサジン−4−酢酸;
q)1−[(3−ブロモ−2−ベンゾフラニル)スルホニル]−2,4−イミダゾリジンジオン(M−16209):NZ−314であって、1−イミダゾリジン酢酸,3−[(3−ニトロフェニル)メチル]−2,4,5−トリオキソ−(9Cl)であるもの(登録番号128043−99−2);
r)1−フタラジン酢酸,3,4−ジヒドロ−4−オキソ−3−[[5−トリフルオロメチル]−2−ベンゾチアゾリル]メチル]−;
s)スピロ[4H−1−ベンゾピラン−4,4’−イミダゾリジン]−2’,5’−ジオン,6−フルオロ−2,3−ジヒドロ−2−メチル−,(2R,4S)−(9Cl)であるM−79175(登録番号102916−95−0);
t)2H−1,4−ベンゾチアジン−2−酢酸,3,4−ジヒドロ−3−オキソ−4−[(4,5,7−トリフルオロ−2−ベンゾチアゾリル)メチル]−(9Cl)であるSPR−210;
u)スピロ[ピロリジン−3,6’(5’H)−ピロロ[1,2,3−de][1,4]ベンゾキサジン]−2,5,5’−トリオン,8’−クロロ−2’,3’−ジヒドロ−(9Cl)(ADN138または8−クロロ−2’,3’−ジヒドロスピロ[ピロリジン−3,6’(5,H)−ピロロ[1,2,3−de]−[1,4]ベンゾキサジン]2,5,5’−トリオンとしても知られる);
v)6−フルオロ−2,3−ジヒドロ−2’,5’−ジオキソ−(2S−cis)−スピロ[4H−I−ベンゾピラン−4,4’−イミダゾリジン]−2−カルボキシアミド(SNK−860としても知られる
という非限定的なリスト、
これらの類似体、および医薬上許容されるこれら化合物の1つまたは複数の塩の形が含まれる。これら薬剤の使用は、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2002/0198201−A1号(出願第10/164214号)に、さらに詳述されている。
【0148】
本発明のアルドースレダクターゼ阻害剤の中には、ミナルレスタット、トルレスタット、ソルビニル、メトソルビニル、ゾポルレスタット、エパルレスタット、ゼナレスタット、イミレスタット、およびポナルレスタット、またはその医薬上許容される塩の形がある。
【0149】
本発明で有用なアルドースレダクターゼ阻害剤は、当技術分野で知られている投薬量および治療計画で投与することができる。例えば、ミナルレスタット(ARI−509)は、1日当たり約0.1mg/kg体重から約1.0mg/kg体重という経口投薬量で投与することができる。トルレスタットは、1日1回の経口用量200mg(Troy他,Clin.Pharmacol.Ther.51:271〜277(192))、または1日2回で200mg(van Griensven他,Clin.Pharmacol.Ther.58:631〜640(1995))を、ヒト患者に投与している。ソルビニルは、日用量50mgおよび200mg(Christensen他,Acta Neurologica Scandinavica 71:164〜167(1985))でヒトに投与している。ゾポルレスタットは、1日当たり50mgから1200mgに及ぶ用量でヒトに投与している(Inskeep他,J.Clin.Pharmacol.34:760〜766(1994))。ゼナルレスタットは、150mg、300mg、および600mgの用量をヒト患者に投与しており、それぞれ1日2回与えられる(Greene他,Neurology 53:580〜591(1999))。イミレスタットは、1日当たり2mgから50mgの用量でヒトに投与している(Brazzell他,Pharm.Res.8:112〜118(1991))。ポナルレスタットは、600mgの日用量でヒトに投与している(Airey他,Diabetic Medicine 6:804〜808(1989))。
【0150】
IV.併用療法
A.肥満、心臓血管疾患、またはインスリン代謝障害の治療
本明細書で述べる併用療法では、少なくとも1種のGDF−8阻害剤を、上述の少なくとも1種のその他の治療薬と共に投与する。併用療法は、複数のGDF−8阻害剤および/または複数の治療薬の組合せを含んでもよい。
【0151】
併用療法は、同時にまたは逐次投与することができる。同時投与では、GDF−8阻害剤および少なくとも1種の治療薬のそれぞれの、少なくとも1回の用量を、1回または複数回同時に投与することを必要とする。逐次投与は、GDF−8阻害剤の大量瞬時投与の後、経時的に少なくとも1種の治療薬の複数回投与を含むことができ、この逐次投与は、両方の化合物の複数回投与を含んでもよい。投薬パターンを変えることによって、所望の治療目的を達成する際の結果を変えることができる。
【0152】
B.併用療法の評価
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトに使用される投薬量の範囲を製剤するのに使用することができる。そのような化合物の投薬量は、毒性が少ししか無いかまたは全く無い、ED50を含む循環濃度の範囲内に有る。投薬量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変えることができる。本発明で使用される任意の化合物では、治療上有効な用量を、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。用量は、細胞培養で決定されるように、IC50(即ち、症状の最大半量阻害が実現される、1種または複数の試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を実現するために、動物モデルで製剤することができる。血漿中のレベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィによって測定することができる。任意の特定の投薬量の作用を、適切なバイオアッセイによってモニタすることができる。適切なバイオアッセイの例には、DNA複製アッセイ、転写ベースのアッセイ、GDF−8タンパク質/受容体結合アッセイ、クレアチンキナーゼアッセイ、前脂肪細胞の分化に基づいたアッセイ、前脂肪細胞に取り込まれるグルコースに基づいたアッセイ、および免疫学的アッセイが含まれる。
【0153】
患者への投与の前に、所与の併用療法を、Park,Circulation 104:815〜819(2001)に記載されている肥満Zucker糖尿病ラットなどの治療動物モデルで評価することができる。肥満Zuckerラットは、過体重、インスリン抵抗性、高インスリン血症、および軽度高血糖症によって特徴付けられ、十分に確立された2型糖尿病モデルである。8から9週齢の肥満Zuckerラットを糖尿病モデルとして使用し、11から14週齢の痩せたZuckerラットを対照として使用する。併用療法は、評価されることが求められる治療計画の後に、ラットに施すことができる。次いで調査員は、血液の化学作用および形態変化を経時的に追跡して、有効性を評価することができる(Park,818)。
【0154】
任意の所与の患者ではまたは臨床研究の一部として、併用療法の有効性を、血漿LDLコレステロール濃度、全コレステロール濃度、トリグリセリド濃度、インスリン摂取、血圧、および血糖値を含めたパラメータを使用して測定することができる。そのような試験は、任意の感謝を評価し追跡調査する臨床治療計画の一部として、容易に着手される。併用療法での各治療投薬量は、評価を踏まえて調節することができる。
【実施例】
【0155】
(実施例1)
糖尿病を治療するための併用療法
糖尿病の患者を、4週間にわたり毎週1mg/kgボーラスで投与されるMyo−29などのGDF−8に対する抗体と、1日2回投与される500mgのメトホルミンとの組合せで治療する。
【0156】
(実施例2)
肥満を治療するための併用療法
肥満の患者を、4週間にわたり毎週1mg/kgボーラスで投与されるJA−16などのGDF−8に対する抗体と、1日当たり10mg投与されるリピトールとの組合せで治療する。
【0157】
(実施例3)
糖尿病を治療するための併用療法
糖尿病の患者を、4週間にわたり毎週100μg/kgで投与されるActRIIB−Fc融合などの修飾可溶性受容体融合と、1日2回、50mgが投与されるピオグリタゾンとで治療する。
【0158】
(実施例4)
心臓血管疾患を治療するための併用療法
2型糖尿病に2次的なものである心臓血管疾患の患者を、1日2回、600mgのLOPIDと、4週間にわたって毎週5mg/kgボーラスで投与されるGDF−8プロペプチドFc融合阻害剤との組合せで治療する。
【0159】
(実施例5)
2型糖尿病を治療するための併用療法
4週間にわたって毎週10mg/kgボーラスで投与される変異GDF−8プロペプチドであって、例えば少なくとも1つのアミノ酸に変異を有し、それによって配列番号65のAsp−19に対応するアスパラギン酸残基でのプロペプチドのタンパク質分解切断が未修飾GDF−8プロペプチドに対応する場合に比べて減少しているプロペプチドなどの変異GDF−8プロペプチドと、1日当たり1mgのAMARYLと、必要に応じて摂取されるインスリンとの組合せで、2型糖尿病の患者を治療する。
【0160】
本明細書は、本明細書内で引用される参考文献の教示に照らして最も完全に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態の例示を提供し、本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。当業者なら、多くのその他の実施形態が本発明に包含されることが、容易に理解される。この開示で引用された全ての文献および特許は、その全体を参照により組み込む。参照により組み込まれた資料が本明細書と矛盾しまたは一致していない範囲では、本明細書がそのような全ての資料に取って代わることになる。本明細書のどの参考文献の引用も、そのような参考文献が本発明の従来技術であると認めるものではない。
【0161】
他に特に示さない限り、特許請求の範囲を含めた本明細書で使用される、成分の量および反応状態などを表す全ての数は、「約」という用語によって、全ての場合に変更が加えられたと理解すべきである。したがって、反対のことを他に特に示さない限り、数値パラメータは近似であり、本発明によって得られることが求められる所望の性質に応じて変えることができる。最低限でも、また特許請求の範囲に対する均等物の原理の適用を限定しようとするものではないが、各数値パラメータは、有効桁数および丸めの手法に照らして解釈すべきである。
【0162】
他に特に示さない限り、一連の要素の前に付く「少なくとも」という用語は、一連の各要素を指すと理解すべきである。当業者なら、本明細書に記載された発明の特定の実施形態の多くの均等物を理解し、または通常の実験しか使用せずに確かめることができよう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効な量の少なくとも1種のGDF−8阻害剤と、治療上有効な量の標的症候群を治療する少なくとも1種の他の治療薬とを投与することを含む、対象における標的症候群の治療方法。
【請求項2】
標的症候群が肥満、心臓血管疾患およびインスリン代謝の障害の少なくとも一つから選択される、ところの請求項1記載の方法。
【請求項3】
GDF−8阻害剤が、GDF−8に対する抗体、GDF−8受容体に対する抗体、修飾された可溶性受容体、GDF−8に結合するタンパク質、GDF−8受容体に結合するタンパク質、GDF−8小潜在複合体のプロテアーゼ活性化の阻害剤、およびそのGDF−8阻害模倣体の少なくとも一つより選択される、ところの請求項1記載の方法。
【請求項4】
GDF−8阻害剤が成熟GDF−8タンパク質に特異的に結合する、ところの請求項3記載の方法。
【請求項5】
治療薬が、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、スルホニル尿素剤、抗脂血症剤、ビグアニド剤、チアゾリジンジオン剤、インスリン、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、アルドースレダクターゼ阻害剤またはPTPase阻害剤の少なくとも一つより選択される、ところの請求項1記載の方法。
【請求項6】
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤が、キナプリル、ラミプリル、ベラパミル、カプトプリル、ジルチアゼム、クロニジン、ヒドロクロルチアジド、ベナゼプリル、プラゾシン、フォシノプリル、リシノプリル、アテノロール、エナラプリル、ペリンドロプリル、ペリンドロプリルt−プチルアミン、トランドラプリル、およびモエキシプリル、およびその適当な医薬上許容される塩の形態の少なくとも一つより選択される、ところの請求項5記載の方法。
【請求項7】
スルホニル尿素剤が、グリピジド、グリブリド(グリベンクラミド)、クロルプロパミド、トルブタミド、トラザミド、およびグリメプリリド、またはその医薬上許容される塩の形態の少なくとも一つより選択される、ところの請求項5記載の方法。
【請求項8】
抗脂血症剤が、胆汁酸金属イオン封鎖剤、フィブリック酸誘導体、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、およびニコチン酸化合物、およびその医薬上許容される塩の少なくとも一つより選択される、ところの請求項5記載の方法。
【請求項9】
ビグアニド剤がメトホルミンおよびその医薬上許容される塩の形態の少なくとも一つより選択される、ところの請求項5記載の方法。
【請求項10】
チアゾリジンジオン剤がピオグリタゾンまたはロシグリタゾン、ならびにその医薬上許容される塩の形態の少なくとも一つより選択される、ところの請求項5記載の方法。
【請求項11】
インスリンが、即時作用型インスリン、中時間作用型インスリン、長時間作用型インスリン、中時間および即時作用型インスリンの組合せの少なくとも一つより選択される、ところの請求項5記載の方法。
【請求項12】
アルファ−グルコシダーゼ阻害剤が、ミグリトールおよびアカルボース、ならびにその医薬上許容される塩の形態の少なくとも一つより選択される、ところの請求項5記載の方法。
【請求項13】
アルドースレダクターゼ阻害剤が、
a)スピロ−イソキノリン−ピロリジンテトロン化合物;
b)2−[(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)メチル]−6−フルオロ−(9Cl);
c)トルレスタット;
d)ソルビニル;
e)メトソルビニル;
f)ゾポルレスタット;
g)エパルレスタット;
h)ゼナレスタット;
i)イミレスタット;
j)ポナルレスタット;
k)ONO−2235;
l)GP−1447;
m)CT−112;
n)BAL−ARI8;
o)AD−5467;
p)ZD5522;
q)3,4−ジヒドロ−2,8−ジイソプロピル−3−チオキソ−2H−1,4−ベンゾキサジン−4−酢酸;
r)1−[(3−ブロモ−2−ベンゾフラニル)スルホニル]−2,4−イミダゾリジンジオン(M−16209):NZ−314であって、1−イミダゾリジン酢酸,3−[(3−ニトロフェニル)メチル]−2,4,5−トリオキソ−(9Cl)であるもの;
s)1−フタラジン酢酸,3,4−ジヒドロ−4−オキソ−3−[[5−トリフルオロメチル]−2−ベンゾチアゾリル]メチル]−;
t)M−79175;
u)SPR−210;
v)スピロ[ピロリジン−3,6’(5’H)−ピロロ[1,2,3−de][1,4]ベンゾキサジン]−2,5,5’−トリオン,8’−クロロ−2’,3’−ジヒドロ−(9Cl);
w)6−フルオロ−2,3−ジヒドロ−2’,5’−ジオキソ−(2S−cis)−スピロ[4H−I−ベンゾピラン−4,4’−イミダゾリジン]−2−カルボキシアミド;および
x)そのアナログまたは医薬上許容される塩
の少なくとも一つより選択される、ところの請求項5記載の方法。
【請求項14】
PTPase阻害剤が、式(I):
【化1】

[式中:
はC(O)OR、5−ないし6−員の複素環、H、ハロゲン、CN、またはC(O)NRであり;
はC(O)ZRまたはCNであり;
Zは−O−または−NR−であり;
Xは−O−C1〜3アルキレン−、−NR−C1〜3アルキレン−、−S−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−C1〜4アルキレン−、−C2〜4アルケニレン−、または−C2〜4アルキニレン−であり、そのアルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基のいずれも、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、HN=、CN、OCF、OH、NH、NO、R、またはQで置換されていてもよく;
各Y、Y、Y、Y、およびYは、独立して、CR、N、S、またはOであり、Y、Y、Y、Y、およびYの1つまたは2つは不存在とすることができ;
各Rは、独立して、H、アリール、5−ないし8−員のヘテロシクリル、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ハロゲン、CN、OCF、OH、NH、NO、またはQであり、そのアリール、複素環、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基のいずれも、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、NO、N、R、またはQで置換されていてもよく;
各Qは、独立して、−OC(O)NR、−OR、−OC(O)R、−COOR、−C(O)NR、−C(O)R、−C(=N−OH)R、−NR、−N、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−NRC(O)OR、−NRS(O)、−SR、−S(O)R、−S(O)、または−S(O)NRであり;
各R、R、およびRは、独立して、H、C1〜16アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜8シクロアルキル、シクロアルキルC1〜6アルキル、5−ないし8−員の複素環、複素環式C1〜6アルキル、アリール、アリールC1〜6アルキル、アリールC2〜6アルケニル、またはアリールC2〜6アルキニルであり、各R、R、およびRは、1つまたは複数のC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、NO、N、−OC(O)NR、−OR、−OC(O)R、−COOR、−C(O)NR、−C(O)R、−NR、−N、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−NRC(O)OR、−NRS(O)、−SR、−S(O)R、−S(O)、または−S(O)NRで置換されていてもよく;
各R、R、およびRは、独立して、H、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜12シクロアルキル、アリール、またはアリールC1〜12アルキルであり、各R、R、およびRは、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、またはNOで置換されていてもよく;
環系が1−ベンゾチオフェンであり、RがC(O)OCHであり、Xが−OCH−である場合、RはC(O)OCH以外の基であり;
環系が1−ベンゾチオフェンであり、RがC(O)OHであり、Xが−OCH−である場合、RはC(O)OH以外の基であり;
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、Rがイソプロピルエステルであり、Xが−OCH−である場合、RはC1〜3アルキルエステル以外の基であり;
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、RがC(O)OC1〜4アルキルであり、Xが−OCH−または−OCH(CH)−である場合、RはCN以外の基であり;
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、Rがイソプロピルエステルであり、Xが−SCHCH−である場合、RはCN以外の基であり;
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、Rがイソプロピルエステルであり、Xが−SCH−である場合、Rはイソプロピルエステル以外の基である]
で示される少なくとも1種の化合物から選択される、ところの請求項5記載の方法。
【請求項15】
PTPase阻害剤が、式(II)
【化2】

[式中:
はR、OR、C(O)OR、C(O)RまたはC(O)NRであり;
はRであり;
Xは−O−C1〜3アルキレン、−NR−C1〜3アルキレン−、−S−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−C1〜4アルキレン、−C2〜4アルケニレン−、またはC2〜4アルキニレン−であり、そのアルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン基のいずれも、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、イミド、CN、OCF、OH、NH、NO、またはQで置換されていてもよく;
Yは存在しないか、−O−または−NR−であり;
は、H、ハロゲン、CN、CF、OCF、C1〜3アルキル、C3〜4シクロアルキル、C1〜3アルコキシ、またはアリールであり;
は、A−B−E−Dであり、ここでAは存在しないか、アリーレン、ヘテロアリーレン、C1〜6アルキレン、C2〜6アルケニルジイル、またはC2〜6アルキニルであり、各AはC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ハロゲン、CN、OCF、OH、NH、CHO、NO、またはQの1つまたは複数で置換されていてもよく、そのアルキル、アルケニル、またはアルキニル基のいずれも、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、NO、N、またはQで置換されていてもよく;
各Aは1つまたは複数のアリーレン、アルキレン、またはアルケニレンで終結されていてもよく;
Bは存在しないか、あるいは−NR−、−NR−、−N(R)CH−、−N(R)CH−、−N(R)−、−N(R)C(O)−、−N(R)C(O)C(R11)(R12)−、−N(R)C(O)C(O)−、−N(R)C(O)N(R10)−、−N(R)SO−、−N(R)SOC(R10)(R11)−、−N(R)(R10)C(R11)(R12)−、−N(R)C(R11)(R12)C(R13)(R14)−、−O−、−O−C(R11)(R12)−、−O−C(R11)(R12)C(R13)(R14)−、−C(R11)(R12)−O−、−C(R11)(R12)−O−C(R13)(R14)−、−C(R11)(R12)N(R)−、−C(R11)(R12)N(R)C(R13)(R14)−、−C(R11)(R12)S−、−C(R11)(R12)SC(R13)(R14)−、または−C(R11)(R12)SOC(R13)(R14)−であり;
Eは存在しないか、あるいはC3〜12シクロアルキレン、3−ないし12−員のヘテロシクジイル、アリーレン、C1〜12アルキレン、C2〜12アルケニレン、またはC2〜12アルキニレンであり、ここで各Eは1つまたは複数のC1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、ハロゲン、CN、OH、NH、またはNOで置換されていてもよく;
Dは1つまたは複数のH、ハロゲン、OH、NH、CHO、CN、NO、CF、またはQであり;
A、B、およびEが存在せず、RがC(O)OHまたはC(O)OCHであり、RがHであり、RがHまたは塩素である場合、DはHまたは塩素以外の基であり;A、B、およびEが存在せず、RがC(O)OHまたはC(O)OCHであり、RがHであり、RがHまたは臭素である場合、DはHまたは臭素以外の基であり;
各Qは、独立して、−R、−R、−OR、−OR、−NR、−NR、−N、S(O)、または−S(O)であり、nは0、1、または2であり;
各R、R、およびRは、独立して、H、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜12シクロアルキル、C1〜12アルコキシC1〜12アルキル、シクロアルキルC1〜6アルキル、3−ないし8−員のヘテロシクイル、ヘテロシクイルC1〜6アルキル、アリール、アリールC1〜6アルキル、アリールC2〜6アルケニル、またはアリールC2〜6アルキニルであり、各R、R、およびRは1つまたは複数のR、−OR−、−OC(O)OR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR10、−SR、−S(O)R、−S(O)、−NR10、−N1011、−NRC(O)R10、−NC(O)NR10、−NRS(O)10、オキソ、ハロゲン、CN、OCF、CF、OH、またはNOで置換されていてもよく;
は−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−S(O)、−S(O)R、または−S(O)NRであり;
各R、R10、R11、R12、R13、およびR14は、独立して、H、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜12シクロアルキル、アリール、またはアリールC1〜12アルキルであり、そのアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基のいずれも、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、またはNOで置換されていてもよい]
で示される少なくとも一種の化合物より選択される、ところの請求項5記載の方法。
【請求項16】
連続的に投与される、ところの請求項1記載の方法。
【請求項17】
同時に投与される、ところの請求項1記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一つの治療薬が経口的に投与される、ところの請求項1記載の方法。
【請求項19】
非経口的に投与される、ところの請求項1記載の方法。
【請求項20】
非経口投与が静脈内投与である、ところの請求項19記載の方法。
【請求項21】
治療上有効な量のGDF−8阻害剤と、治療上有効な量の標的症候群を治療する少なくとも1種の他の治療薬とを組み合わせて含む、標的症候群を治療するのに有用な医薬組成物。
【請求項22】
GDF−8阻害剤がGDF−8に対する抗体、GDF−8受容体に対する抗体、修飾された可溶性受容体、GDF−8に結合するタンパク質、GDF−8受容体に結合するタンパク質、GDF−8小潜在複合体のプロテアーゼ活性化の阻害剤、およびそのGDF−8阻害模倣体の少なくとも一つより選択される、ところの請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
GDF−8に結合するタンパク質が配列番号65のGDF−8プロペプチド、変異したGDF−8プロペプチド、フォリスタチン、フォリスタチン−ドメイン含有タンパク質、およびそのFc融合体の少なくとも一つより選択される、ところの請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
GDF−8阻害剤が成熟GDF−8タンパク質に特異的に結合する、ところの請求項22記載の医薬組成物。
【請求項25】
治療薬が、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、スルホニル尿素剤、抗脂血症剤、ビグアニド剤、チアゾリジンジオン剤、インスリン、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、アルドースレダクターゼ阻害剤またはPTPase阻害剤の少なくとも一つより選択される、ところの請求項21記載の医薬組成物。
【請求項26】
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤が、キナプリル、ラミプリル、ベラパミル、カプトプリル、ジルチアゼム、クロニジン、ヒドロクロルチアジド、ベナゼプリル、プラゾシン、フォシノプリル、リシノプリル、アテノロール、エナラプリル、ペリンドロプリル、ペリンドロプリルt−プチルアミン、トランドラプリル、およびモエキシプリル、またはこれら化合物の1つまたは複数の医薬上許容される塩の形態の少なくとも一つより選択される、ところの請求項25記載の医薬組成物。
【請求項27】
スルホニル尿素剤が、グリピジド、グリブリド(グリベンクラミド)、クロルプロパミド、トルブタミド、トラザミド、およびグリメプリリド、またはその医薬上許容される塩の形態の少なくとも一つより選択される、ところの請求項25記載の医薬組成物。
【請求項28】
抗脂血症剤が、胆汁酸金属イオン封鎖剤、フィブリック酸誘導体、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、およびニコチン酸化合物、およびその医薬上許容される塩の少なくとも一つより選択される、ところの請求項25記載の医薬組成物。
【請求項29】
ビグアニド剤がメトホルミンおよびその医薬上許容される塩の形態の少なくとも一つより選択される、ところの請求項25記載の医薬組成物。
【請求項30】
チアゾリジンジオン剤がピオグリタゾンまたはロシグリタゾン、ならびにその医薬上許容される塩の形態の少なくとも一つより選択される、ところの請求項25記載の医薬組成物。
【請求項31】
インスリンが、即時作用型インスリン、中時間作用型インスリン、長時間作用型インスリン、中時間および即時作用型インスリンの組合せの少なくとも一つより選択される、ところの請求項25記載の医薬組成物。
【請求項32】
アルファ−グルコシダーゼ阻害剤が、ミグリトールおよびアカルボース、ならびにこれらの化合物の1つまたは複数の医薬上許容される塩の形態の少なくとも一つより選択される、ところの請求項25記載の医薬組成物。
【請求項33】
アルドースレダクターゼ阻害剤が、
a)スピロ−イソキノリン−ピロリジンテトロン化合物;
b)2−[(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)メチル]−6−フルオロ−(9Cl);
c)トルレスタット;
d)ソルビニル;
e)メトソルビニル;
f)ゾポルレスタット;
g)エパルレスタット;
h)ゼナレスタット;
i)イミレスタット;
j)ポナルレスタット;
k)ONO−2235;
l)GP−1447;
m)CT−112;
n)BAL−ARI8;
o)AD−5467;
p)ZD5522;
q)3,4−ジヒドロ−2,8−ジイソプロピル−3−チオキソ−2H−1,4−ベンゾキサジン−4−酢酸;
r)1−[(3−ブロモ−2−ベンゾフラニル)スルホニル]−2,4−イミダゾリジンジオン(M−16209):NZ−314であって、1−イミダゾリジン酢酸,3−[(3−ニトロフェニル)メチル]−2,4,5−トリオキソ−(9Cl)であるもの;
s)1−フタラジン酢酸,3,4−ジヒドロ−4−オキソ−3−[[5−トリフルオロメチル]−2−ベンゾチアゾリル]メチル]−;
t)M−79175;
u)SPR−210;
v)スピロ[ピロリジン−3,6’(5’H)−ピロロ[1,2,3−de][1,4]ベンゾキサジン]−2,5,5’−トリオン,8’−クロロ−2’,3’−ジヒドロ−(9Cl);
w)6−フルオロ−2,3−ジヒドロ−2’,5’−ジオキソ−(2S−cis)−スピロ[4H−I−ベンゾピラン−4,4’−イミダゾリジン]−2−カルボキシアミド;
および
そのアナログおよび医薬上許容される塩
の少なくとも一つより選択される、ところの請求項25記載の医薬組成物。
【請求項34】
PTPase阻害剤が、式(I):
【化3】

[式中:
はC(O)OR、5−ないし6−員の複素環、H、ハロゲン、CN、またはC(O)NRであり;
はC(O)ZRまたはCNであり;
Zは−O−または−NR−であり;
Xは−O−C1〜3アルキレン−、−NR−C1〜3アルキレン−、−S−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−C1〜4アルキレン−、−C2〜4アルケニレン−、または−C2〜4アルキニレン−であり、そのアルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基のいずれも、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、HN=、CN、OCF、OH、NH、NO、R、またはQで置換されていてもよく;
各Y、Y、Y、Y、およびYは、独立して、CR、N、S、またはOであり、Y、Y、Y、Y、およびYの1つまたは2つは不存在とすることができ;
各Rは、独立して、H、アリール、5−ないし8−員のヘテロシクリル、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ハロゲン、CN、OCF、OH、NH、NO、またはQであり、そのアリール、複素環、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基のいずれも、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、NO、N、R、またはQで置換されていてもよく;
各Qは、独立して、−OC(O)NR、−OR、−OC(O)R、−COOR、−C(O)NR、−C(O)R、−C(=N−OH)R、−NR、−N、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−NRC(O)OR、−NRS(O)、−SR、−S(O)R、−S(O)、または−S(O)NRであり;
各R、R、およびRは、独立して、H、C1〜16アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜8シクロアルキル、シクロアルキルC1〜6アルキル、5−ないし8−員の複素環、複素環式C1〜6アルキル、アリール、アリールC1〜6アルキル、アリールC2〜6アルケニル、またはアリールC2〜6アルキニルであり、各R、R、およびRは、1つまたは複数のC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、NO、N、−OC(O)NR、−OR、−OC(O)R、−COOR、−C(O)NR、−C(O)R、−NR、−N、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−NRC(O)OR、−NRS(O)、−SR、−S(O)R、−S(O)、または−S(O)NRで置換されていてもよく;
各R、R、およびRは、独立して、H、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜12シクロアルキル、アリール、またはアリールC1〜12アルキルであり、各R、R、およびRは、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、またはNOで置換されていてもよく;
環系が1−ベンゾチオフェンであり、RがC(O)OCHであり、Xが−OCH−である場合、RはC(O)OCH以外の基であり;
環系が1−ベンゾチオフェンであり、RがC(O)OHであり、Xが−OCH−である場合、RはC(O)OH以外の基であり;
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、Rがイソプロピルエステルであり、Xが−OCH−である場合、RはC1〜3アルキルエステル以外の基であり;
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、RがC(O)OC1〜4アルキルであり、Xが−OCH−または−OCH(CH)−である場合、RはCN以外の基であり;
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、Rがイソプロピルエステルであり、Xが−SCHCH−である場合、RはCN以外の基であり;
環系がチエノ[2,3−b]ピリジンであり、Rがイソプロピルエステルであり、Xが−SCH−である場合、Rはイソプロピルエステル以外の基である]
で示される少なくとも1種の化合物から選択される、ところの請求項25記載の医薬組成物。
【請求項35】
PTPase阻害剤が、式(II)
【化4】

[式中:
はR、OR、C(O)OR、C(O)RまたはC(O)NRであり;
はRであり;
Xは−O−C1〜3アルキレン、−NR−C1〜3アルキレン−、−S−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−SO−C1〜3アルキレン−、−C1〜4アルキレン、−C2〜4アルケニレン−、またはC2〜4アルキニレン−であり、そのアルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン基のいずれも、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、イミド、CN、OCF、OH、NH、NO、またはQで置換されていてもよく;
Yは存在しないか、−O−または−NR−であり;
は、H、ハロゲン、CN、CF、OCF、C1〜3アルキル、C3〜4シクロアルキル、C1〜3アルコキシ、またはアリールであり;
は、A−B−E−Dであり、ここでAは存在しないか、アリーレン、ヘテロアリーレン、C1〜6アルキレン、C2〜6アルケニルジイル、またはC2〜6アルキニルであり、各AはC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、ハロゲン、CN、OCF、OH、NH、CHO、NO、またはQの1つまたは複数で置換されていてもよく、そのアルキル、アルケニル、またはアルキニル基のいずれも、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、NO、N、またはQで置換されていてもよく;
各Aは1つまたは複数のアリーレン、アルキレン、またはアルケニレンで終結されていてもよく;
Bは存在しないか、あるいは−NR−、−NR−、−N(R)CH−、−N(R)CH−、−N(R)−、−N(R)C(O)−、−N(R)C(O)C(R11)(R12)−、−N(R)C(O)C(O)−、−N(R)C(O)N(R10)−、−N(R)SO−、−N(R)SOC(R10)(R11)−、−N(R)(R10)C(R11)(R12)−、−N(R)C(R11)(R12)C(R13)(R14)−、−O−、−O−C(R11)(R12)−、−O−C(R11)(R12)C(R13)(R14)−、−C(R11)(R12)−O−、−C(R11)(R12)−O−C(R13)(R14)−、−C(R11)(R12)N(R)−、−C(R11)(R12)N(R)C(R13)(R14)−、−C(R11)(R12)S−、−C(R11)(R12)SC(R13)(R14)−、または−C(R11)(R12)SOC(R13)(R14)−であり;
Eは存在しないか、あるいはC3〜12シクロアルキレン、3−ないし12−員のヘテロシクジイル、アリーレン、C1〜12アルキレン、C2〜12アルケニレン、またはC2〜12アルキニレンであり、ここで各Eは1つまたは複数のC1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、ハロゲン、CN、OH、NH、またはNOで置換されていてもよく;
Dは1つまたは複数のH、ハロゲン、OH、NH、CHO、CN、NO、CF、またはQであり;
A、B、およびEが存在せず、RがC(O)OHまたはC(O)OCHであり、RがHであり、RがHまたは塩素である場合、DはHまたは塩素以外の基であり;A、B、およびEが存在せず、RがC(O)OHまたはC(O)OCHであり、RがHであり、RがHまたは臭素である場合、DはHまたは臭素以外の基であり;
各Qは、独立して、−R、−R、−OR、−OR、−NR、−NR、−N、S(O)、または−S(O)であり、nは0、1、または2であり;
各R、R、およびRは、独立して、H、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜12シクロアルキル、C1〜12アルコキシC1〜12アルキル、シクロアルキルC1〜6アルキル、3−ないし8−員のヘテロシクイル、ヘテロシクイルC1〜6アルキル、アリール、アリールC1〜6アルキル、アリールC2〜6アルケニル、またはアリールC2〜6アルキニルであり、各R、R、およびRは1つまたは複数のR、−OR−、−OC(O)OR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR10、−SR、−S(O)R、−S(O)、−NR10、−N1011、−NRC(O)R10、−NC(O)NR10、−NRS(O)10、オキソ、ハロゲン、CN、OCF、CF、OH、またはNOで置換されていてもよく;
は−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−S(O)、−S(O)R、または−S(O)NRであり;
各R、R10、R11、R12、R13、およびR14は、独立して、H、C1〜12アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C3〜12シクロアルキル、アリール、またはアリールC1〜12アルキルであり、そのアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキル基のいずれも、1つまたは複数のハロゲン、オキソ、CN、OCF、OH、NH、またはNOで置換されていてもよい]
で示される少なくとも一つの化合物より選択される、ところの請求項25記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2008−509927(P2008−509927A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525834(P2007−525834)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/028766
【国際公開番号】WO2006/020884
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】