説明

HIV感染の予防のためのピリミジン誘導体

【化1】


本発明は、化合物が式(I)[式中、−a=a−a=a−および−b=b−b=b−を含有する環は、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニルを表す]の化合物、そのN−オキシド、製薬学的に許容しうる付加塩、第四級アミンおよび立体化学的異性体である、パートナー間の性交および関連する親密な接触によるHIV感染の予防用の薬剤の製造のための化合物の使用;およびそれらを含んでなる製薬学的組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIV感染の予防のためのピリミジン誘導体に関する。特に、本発明は、パートナー間の性交および関連する親密な接触によるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染の予防、さらに特に膣性交によるHIV感染の予防用の薬剤の製造のためのピリミジン誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エイズ(後天性免疫不全症候群)は、世界中で第四の主要な死因であり、そしてアフリカでは第一の死因である。エイズに対する有効な処置もしくはワクチンは依然としてない。
【0003】
従って、エイズ/HIV流行を制御することができるためには、HIVウイルスの伝染を防ぐことが極めて重要である。
【0004】
性感染は、HIVの伝染の一般的な形態である。該性的HIV感染は、一貫したそして正しいコンドーム使用により完全に防ぐことができる。しかしながら、コンドーム使用を増大するための徹底的な予防プログラムにもかかわらず、コンドームは、特に第三世界文化において、依然として体系的に使用されず、そしてこれらの文化はエイズ/HIV流行により大きく影響を受ける。特に発展途上国において、男性はコンドームを受け入れず、それらを使用することを好まず、そして女性は、いつ、どこでそしてどのようにして性交が行われるかを決定する力を欠くことが多く、そしてそれ故にコンドームの使用を課す立場にないことが多い。
【0005】
従って、性感染症、特にHIVに対する防御のためのコンドーム使用の代替物は、極めて重要である。
【0006】
コンドームの有効な代替物は、局所使用のための殺菌薬である。殺菌薬は、伝染が起こる部位に適用した場合に性感染症の伝染を防ぐかもしくは減少することができる化学物質である。
【0007】
殺菌薬のいくつかの種類は、HIV伝染を予防することにおけるそれらの使用に関してすでに評価されている:洗剤−界面活性剤様作用形態を有する製品(例えば、ノノキシノール−9)、しかし、該製品は膣上皮に損傷を与え得る;酸性バッファー;ラクトバシラス;標的細胞へのHIV結合を妨げる負に荷電した天然物もしくは合成製品(例えば、硫酸化多糖);HIV増殖阻害剤。
【0008】
本発明は、HIV感染を防ぐための、パートナー間の性交および関連する親密な接触によるHIV感染の伝染を防ぐためのピリミジン誘導体の使用に関する。
【0009】
該ピリミジン化合物は、HIVに感染した温血動物においてHIV複製阻害活性を示す。それらは、特に、突然変異体株、すなわち、当該技術分野で既知である薬剤(1つもしくは複数)に耐性になっている株(薬剤もしくは多剤耐性HIV株)の複製を阻害する向上した能力を特徴とする。
【0010】
HIVに感染した温血動物におけるそれらのHIV複製阻害活性に加えて、該化合物はまた、パートナー間の性交および関連する親密な接触による温血動物における、特にヒトにおけるHIV感染の伝染を防ぐこともできる。該化合物は、予防的に働く能力を有し、
従って、温血動物が感染することを防ぎ;それらはまた暴露後予防を与えることもでき、パートナー間の性交および関連する親密な接触が行われた後に本発明の化合物を適用する場合に、それらがHIV感染を依然として防ぐことができることを意味する。さらに、該化合物は、治療的に有効な用量で免疫抑制活性がほとんどもしくは全くない。
【0011】
本発明の化合物に構造的に関連する化合物は、先行技術において開示されている。
【0012】
特許文献1および特許文献2は、HIV複製阻害特性を有する置換されたアミノピリミジンを開示する。
【0013】
特許文献3は、プロテインキナーゼインヒビターとして有用な置換された2−アニリノピリミジンを開示する。
【0014】
特許文献4は、環状プロテインチロシンキナーゼインヒビターに関する。
【0015】
特許文献5は、プロテインキナーゼインヒビターとして有用な置換された2−アニリノピリミジンを記述する。
【0016】
特許文献6は、ベンズアミジン誘導体および抗凝血剤としてのそれらの使用を記述する。
【0017】
特許文献7は、血管新生と関連する疾患の予防および処置において有用なKDRキナーゼもしくはFGFrキナーゼインヒビターとして5−シアノ−2−アミノピリミジン誘導体を記述する。
【特許文献1】国際公開第 99/50250号パンフレット
【特許文献2】国際公開第 00/27825号パンフレット
【特許文献3】国際公開第 97/19065号パンフレット
【特許文献4】国際公開第 00/62778号パンフレット
【特許文献5】国際公開第 98/41512号パンフレット
【特許文献6】米国特許第 5,691,364号明細書
【特許文献7】国際公開第 00/78731号パンフレット
【本発明の開示】
【0018】
従って、本発明の一つの態様は、パートナー間の性交もしくは関連する親密な接触によるHIV感染の予防用の薬剤の製造のための化合物の使用に関し、ここで、該化合物は式
【0019】
【化1】

【0020】
[式中、
−a=a−a=a−は式
−CH=CH−CH=CH− (a−1);
−N=CH−CH=CH− (a−2);
−N=CH−N=CH− (a−3);
−N=CH−CH=N− (a−4);
−N=N−CH=CH− (a−5)
の2価の基を表し;
−b=b−b=b−は式
−CH=CH−CH=CH− (b−1);
−N=CH−CH=CH− (b−2);
−N=CH−N=CH− (b−3);
−N=CH−CH=N− (b−4);
−N=N−CH=CH− (b−5)
の2価の基を表し;
nは0、1、2、3もしくは4であり;そして−a=a−a=a−が(a−1)である場合には、nはまた5であることもでき;
mは1、2、3であり、そして−b=b−b=b−が(b−1)である場合には、mはまた4であることもでき;
は水素;アリール;ホルミル;C1〜6アルキルカルボニル;C1〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシカルボニル;ホルミル、C1〜6アルキルカルボニル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキルカルボニルオキシで置換されたC1〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシカルボニルで置換されたC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキルカルボニルであり;
各Rは独立してヒドロキシ、ハロ、場合によりシアノもしくは−C(=O)Rで置換されていてもよいC1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、場合により1個もしくはそれ以上のハロゲン原子もしくはシアノで置換されていてもよいC2〜6アルケニル、場合により1個もしくはそれ以上のハロゲン原子もしくはシアノで置換されていてもよいC2〜6アルキニル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、ポリハロメチル、ポリハロメチルチオ、−S(=O)、−NH−S(=O)、−C(=O)R、−NHC(=O)H、−C(=O)NHNH、−NHC(=O)R、−C(=NH)Rまたは式
【0021】
【化2】

【0022】
の基であり、
ここで、各Aは独立してN、CHもしくはCRであり;そして
はNH、O、SもしくはNRであり;
は−NR−、−NH−NH−、−N=N−、−O−、−C(=O)−、C1〜4アルカンジイル、−CHOH−、−S−、−S(=O)−、−X−C1〜4アルカンジイル−もしくは−C1〜4アルカンジイル−X−であり;
は−NR−、−NH−NH−、−N=N−、−O−、−C(=O)−、−CHOH−、−S−、−S(=O)−であり;
はNHR13;NR1314;−C(=O)−NHR13;−C(=O)−NR1314;−C(=O)−R15;−CH=N−NH−C(=O)−R16;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択されそしてここで同じ炭素原子で結合してい
る2個の水素原子はC1〜4アルカンジイルで置換される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル;ヒドロキシおよびシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから選択される第二の置換基で置換されたC1〜6アルキル;場合によりシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよいC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルケニル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルキニル;−C(=N−O−R)−C1〜4アルキル;Rもしくは−X−Rであり;
は−NR−、−NH−NH−、−N=N−、−O−、−C(=O)−、−S−、−S(=O)−、−X−C1〜4アルカンジイル−、−C1〜4アルカンジイル−X2a−、−C1〜4アルカンジイル−X2b−C1〜4アルカンジイル、−C(=N−OR)−C1〜4アルカンジイル−であり;
2aは−NH−NH−、−N=N−、−O−、−C(=O)−、−S−、−S(=O)−であり;そして
2bは−NH−NH−、−N=N−、−C(=O)−、−S−、−S(=O)−であり;
はハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C1〜6アルキルオキシ、シアノ、ニトロ、ポリハロC1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、アミノカルボニル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキルカルボニル、ホルミル、アミノ、モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノまたはRであり;
は水素;アリール;ホルミル;C1〜6アルキルカルボニル;C1〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシカルボニル:ホルミル、C1〜6アルキルカルボニル、C1〜6アルキルオキシカルボニルもしくはC1〜6アルキルカルボニルオキシで置換されたC1〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシカルボニルで置換されたC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキルカルボニルであり;
はC1〜4アルキル、アミノ、モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノまたはポリハロC1〜4アルキルであり;
は単環式、二環式もしくは三環式の飽和した、部分的に飽和したもしくは芳香族の炭素環または単環式、二環式もしくは三環式の飽和した、部分的に飽和したもしくは芳香族の複素環であり、ここで、該炭素環式もしくは複素環式環系の各々は場合によりハロ、ヒドロキシ、メルカプト、C1〜6アルキル、ヒドロキシC1〜6アルキル、アミノC1〜6アルキル、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノC1〜6アルキル、ホルミル、C1〜6アルキルカルボニル、C3〜7シクロアルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキルチオ、シアノ、ニトロ、ポリハロC1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、アミノカルボニル、−CH(=N−O−R)、R7a、−X−R7aまたはR7a−C1〜4アルキルから各々独立して選択される1、2、3、4もしくは5個の置換基で置換されていてもよく;
7aは単環式、二環式もしくは三環式の飽和した、部分的に飽和したもしくは芳香族の炭素環または単環式、二環式もしくは三環式の飽和した、部分的に飽和したもしくは芳香族の複素環であり、ここで、該炭素環式もしくは複素環式環系の各々は場合によりハロ、ヒドロキシ、メルカプト、C1〜6アルキル、ヒドロキシC1〜6アルキル、アミノC1〜6アルキル、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノC1〜6アルキル、ホルミル、C1〜6アルキルカルボニル、C3〜7シクロアルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキルチオ、シアノ、ニトロ、ポリハロC1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、アミノカルボニル、−CH(=N
−O−R)から各々独立して選択される1、2、3、4もしくは5個の置換基で置換されていてもよく;
は水素、C1〜4アルキル、アリールもしくはアリールC1〜4アルキルであり;
およびR10は各々独立して水素;ヒドロキシ;C1〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシ;C1〜6アルキルカルボニル;C1〜6アルキルオキシカルボニル;アミノ;モノ−もしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ;モノ−もしくはジ(C1〜6アルキル)アミノカルボニル;−CH(=NR11)またはRであり、ここで、上記のC1〜6アルキル基の各々は場合によりそして各々個々にヒドロキシ、C1〜6アルキルオキシ、ヒドロキシC1〜6アルキルオキシ、カルボキシル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、シアノ、アミノ、イミノ、モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノ、ポリハロメチル、ポリハロメチルオキシ、ポリハロメチルチオ、−S(=O)、−NH−S(=O)、−C(=O)R、−NHC(=O)H、−C(=O)NHNH、−NHC(=O)R、−C(=NH)R、Rから各々独立して選択される1もしくは2個の置換基で置換されていてもよく;あるいは
およびR10は一緒になって式
−CH−CH−CH−CH− (d−1)
−CH−CH−CH−CH−CH− (d−2)
−CH−CH−O−CH−CH− (d−3)
−CH−CH−S−CH−CH− (d−4)
−CH−CH−NR12−CH−CH−(d−5)
−CH−CH=CH−CH− (d−6)
=CH−CH=CH−CH=CH− (d−7)
の2価もしくは3価の基を形成することができ;
11はシアノ;場合によりC1〜4アルキルオキシ、シアノ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノまたはアミノカルボニルで置換されていてもよいC1〜4アルキル;C1〜4アルキルカルボニル;C1〜4アルキルオキシカルボニル;アミノカルボニル;モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノカルボニルであり;
12は水素もしくはC1〜4アルキルであり;
13およびR14は各々独立して場合によりシアノもしくはアミノカルボニルで置換されていてもよいC1〜6アルキル、場合によりシアノもしくはアミノカルボニルで置換されていてもよいC2〜6アルケニル、場合によりシアノもしくはアミノカルボニルで置換されていてもよいC2〜6アルキニルであり;
15はシアノもしくはアミノカルボニルで置換されたC1〜6アルキルであり;
16は場合によりシアノもしくはアミノカルボニルで置換されていてもよいC1〜6アルキル、またはRであり;
pは1もしくは2であり;
アリールはフェニルあるいはハロ、ヒドロキシ、メルカプト、C1〜6アルキル、ヒドロキシC1〜6アルキル、アミノC1〜6アルキル、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノC1〜6アルキル、C1〜6アルキルカルボニル、C3〜7シクロアルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキルチオ、シアノ、ニトロ、ポリハロC1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、アミノカルボニル、Rまたは−X−Rから各々独立して選択される1、2、3、4もしくは5個の置換基で置換されたフェニルである]
そのN−オキシド、製薬学的に許容しうる付加塩、第四級アミンもしくは立体化学的異性体を有する。
【0023】
上記もしくは下記に用いる場合、基もしくは基の一部としてのC1〜4アルキルは、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチルのような1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の飽和炭化水素基を定義し;基もしくは基の一部としてのC1〜6アルキルは、C1〜4アルキルについて定義する基およびペンチル、ヘキシル、2−
メチルブチルなどのような1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の飽和炭化水素基を定義し;基もしくは基の一部としてのC2〜6アルキルは、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルブチルなどのような2〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の飽和炭化水素基を定義し;C1〜4アルカンジイルは、メチレン、1,2−エタンジイルもしくは1,2−エチリデン、1,3−プロパンジイルもしくは1,3−プロピリデン、1,4−ブタンジイルもしくは1,4−ブチリデンなどのような1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の飽和した2価の炭化水素基を定義し;C3〜7シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルの総称であり;C2〜6アルケニルは、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどのような二重結合を含有する2〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の炭化水素基を定義し;C2〜6アルキニルは、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどのような三重結合を含有する2〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の炭化水素基を定義し;単環式、二環式もしくは三環式の飽和炭素環は、1、2もしくは3個の環からなる環系を表し、該環系は炭素原子のみからなり、そして該環系は単結合のみを含有し;単環式、二環式もしくは三環式の部分的に飽和した炭素環は、1、2もしくは3個の環からなる環系を表し、該環系は炭素原子のみからなり、そして少なくとも1個の二重結合を含んでなり、ただし、該環系は芳香族環系ではなく;単環式、二環式もしくは三環式の芳香族炭素環は、1、2もしくは3個の環からなる芳香族環系を表し、該環系は炭素原子のみからなり;芳香族という用語は当業者に周知であり、そして4n+2個の電子、すなわち、6、10、14個などのπ電子を有する(ヒュッケル則)環状共役系を表し;単環式、二環式もしくは三環式の飽和複素環は、1、2もしくは3個の環からなりそしてO、NもしくはSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含んでなる環系を表し、該環系は単結合のみを含有し;単環式、二環式もしくは三環式の部分的に飽和した複素環は、1、2もしくは3個の環からなりそしてO、NもしくはSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子および少なくとも1個の二重結合を含んでなる環系を表し、ただし、該環系は芳香族環系ではなく;単環式、二環式もしくは三環式の芳香族複素環は、1、2もしくは3個の環からなりそしてO、NもしくはSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含んでなる芳香族環系を表す。
【0024】
単環式、二環式もしくは三環式の飽和炭素環の特定の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[4,2,0]オクタニル、シクロノナニル、シクロデカニル、デカヒドロナフタレニル、テトラデカヒドロアントラセニルなどである。
【0025】
単環式、二環式もしくは三環式の部分的に飽和した炭素環の特定の例は、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、ビシクロ[4,2,0]オクテニル、シクロノネニル、シクロデセニル、オクタヒドロナフタレニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレニル、1,2,3,4,4a,9,9a,10−オクタヒドロ−アントラセニルなどである。
【0026】
単環式、二環式もしくは三環式の芳香族炭素環の特定の例は、フェニル、ナフタレニル、アントラセニルである。
【0027】
単環式、二環式もしくは三環式の飽和複素環の特定の例は、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ジオキソラニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロチエニル、ジヒドロオキサゾリル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、オキサジアゾリジニル、トリアゾリジニル、チアジアゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ヘキサヒドロピリミジニル、ヘキサヒドロピラジニル、ジオキサニル、モルホリニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、トリチアニル、デカヒドロキノリニル、オク
タヒドロインドリルなどである。
【0028】
単環式、二環式もしくは三環式の部分的に飽和した複素環の特定の例は、ピロリニル、イミダゾリニル、ピラゾリニル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、1,3−ベンゾジオキソリル、2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシニル、インドリニルなどである。
【0029】
単環式、二環式もしくは三環式の芳香族複素環の特定の例は、アゼチル、オキセチリデニル、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、ピラニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キノリジニル、フタラジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、プテリジニル、ベンゾピラニル、ピロロピリジル、チエノピリジル、フロピリジル、イソチアゾロピリジル、チアゾロピリジル、イソオキサゾロピリジル、オキサゾロピリジル、ピラゾロピリジル、イミダゾピリジル、ピロロピラジニル、チエノピラジニル、フロピラジニル、イソチアゾロピラジニル、チアゾロピラジニル、イソオキサゾロピラジニル、オキサゾロピラジニル、ピラゾロピラジニル、イミダゾピラジニル、ピロロピリミジニル、チエノピリミジニル、フロピリミジニル、イソチアゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、イソオキサゾロピリミジニル、オキサゾロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリミジニル、ピロロピリダジニル、チエノピリダジニル、フロピリダジニル、イソチアゾロピリダジニル、チアゾロピリダジニル、イソオキサゾロピリダジニル、オキサゾロピリダジニル、ピラゾロピリダジニル、イミダゾピリダジニル、オキサジアゾロピリジル、チアジアゾロピリジル、トリアゾロピリジル、オキサジアゾロピラジニル、チアジアゾロピラジニル、トリアゾロピラジニル、オキサジアゾロピリミジニル、チアジアゾロピリミジニル、トリアゾロピリミジニル、オキサジアゾロピリダジニル、チアジアゾロピリダジニル、トリアゾロピリダジニル、イミダゾオキサゾリル、イミダゾチアゾリル、イミダゾイミダゾリル、イソオキサゾロトリアジニル、イソチアゾロトリアジニル、ピラゾロトリアジニル、オキサゾロトリアジニル、チアゾロトリアジニル、イミダゾトリアジニル、オキサジアゾロトリアジニル、チアジアゾロトリアジニル、トリアゾロトリアジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニルなどである。
【0030】
上記に用いる場合、(=O)という用語は、炭素原子に結合している場合にはカルボニル部分、硫黄原子に結合している場合にはスルホキシド部分、そして該用語の2つが硫黄原子に結合している場合にはスルホニル部分を形成する。
【0031】
例えばRおよびR10についてのように、置換基が多数の定義のリストから各々独立して選択されることができることを上記もしくは下記に用いる場合はいつでも、化学的に可能でありそして化学的に安定な分子をもたらす全ての可能な組み合わせが意図される。
【0032】
ハロという用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードの総称である。上記もしくは下記に用いる場合、基もしくは基の一部としてのポリハロメチルは、モノ−もしくはポリハロ置換されたメチル、特に1個もしくはそれ以上のフルオロ原子を有するメチル、例えば、ジフルオロメチルもしくはトリフルオロメチルと定義され;基もしくは基の一部としてのポリハロC1〜4アルキルもしくはポリハロC1〜6アルキルは、モノ−もしくはポリハロ置換されたC1〜4アルキルもしくはC1〜6アルキル、例えば、ハロメチルにおいて定義する基、1,1−ジフルオロ−エチルなどと定義される。ポリハロメチル、ポ
リハロC1〜4アルキルもしくはポリハロC1〜6アルキルの定義内で1個より多くのハロゲン原子がアルキル基に結合している場合、それらは同じもしくは異なることができる。
【0033】
もしくはR7aの定義における複素環という用語には、該複素環の可能な異性体の全てが包含されるものとし、例えば、ピロリルは1H−ピロリルおよび2H−ピロリルを含んでなる。
【0034】
もしくはR7aの定義における炭素環もしくは複素環は、他に特定されない場合、必要に応じて任意の環炭素もしくはヘテロ原子を介して式(I)の分子の残りに結合していることができる。従って、例えば、複素環がイミダゾリルである場合、それは1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリルなどであることができ、もしくは炭素環がナフタレニルである場合、それは1−ナフタレニル、2−ナフタレニルなどであることができる。
【0035】
任意の変記号(例えば、R、X)が任意の成分において1回より多く存在する場合、各定義は独立している。
【0036】
置換基から環系に引いた線は、該結合が適当な環原子のいずれかに結合し得ることを表す。
【0037】
治療用途には、式(I)の化合物の塩は、対イオンが製薬学的に許容しうるものである。しかしながら、製薬学的に許容しうるものではない酸および塩基の塩もまた、例えば、製薬学的に許容しうる化合物の製造もしくは精製において、用途を見出すことができる。全ての塩は、製薬学的に許容しうるかもしくはそうでないにしても、本発明の範囲内に包含される。
【0038】
上記のような製薬学的に許容しうる付加塩は、式(I)の化合物が形成することのできる治療的に有効な無毒の酸付加塩形態を含んでなるものとする。後者は、無機酸、例えば、ハロゲン化水素酸、例えば塩酸、臭化水素酸など;硫酸;硝酸;リン酸など;もしくは有機酸、例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−オキソプロパン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、2−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸などのような適切な酸で塩基形態を処理することにより都合よく得ることができる。逆に、該塩形態をアルカリでの処理により遊離塩基形態に転化することができる。
【0039】
酸性プロトンを含有する式(I)の化合物は、適切な有機および無機塩基での処理によりそれらの治療的に有効な無毒の金属もしくはアミン付加塩形態に転化することができる。適切な塩基塩形態は、例えば、アンモニウム塩、アルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、4つのブチルアミン異性体、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、キヌクリジン、ピリジン、キノリンおよびイソキノリンのような第一級、第二級および第三級脂肪族および芳香族アミンとの塩、ベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ヒドラバミン(hydrabamine)塩、ならびに例えば、アルギニン、リシンなどのようなアミノ酸との塩を含んでなる
。逆に、該塩形態を酸での処理により遊離酸形態に転化することができる。
【0040】
付加塩という用語はまた、式(I)の化合物が形成することのできる水和物および溶媒付加形態も含んでなる。そのような形態の例は、例えば、水和物、アルコラートなどである。
【0041】
「第四級アミン」という用語は、上記に用いる場合、式(I)の化合物の塩基性窒素と例えば場合により置換されていてもよいハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリールもしくはハロゲン化アリールアルキル、例えば、ヨウ化メチルもしくはヨウ化ベンジルのような適切な四級化剤との間の反応により式(I)の化合物が形成することのできる第四級アンモニウム塩を定義する。トリフルオロメタンスルホン酸アルキル、メタンスルホン酸アルキルおよびp−トルエンスルホン酸アルキルのような、優れた脱離基を有する他の反応物質もまた用いることができる。第四級アミンは、正に荷電した窒素を有する。製薬学的に許容しうる対イオンには、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロアセテートおよびアセテートが包含される。選択の対イオンは、イオン交換樹脂を用いて導入することができる。
【0042】
本発明の化合物のN−オキシド形態は、1個もしくは数個の第三級窒素原子がいわゆるN−オキシドに酸化される式(I)の化合物を含んでなるものとする。
【0043】
式(I)の化合物は、3価の窒素をそのN−オキシド形態に転化するための当該技術分野で既知の方法に従って対応するN−オキシド形態に転化することができる。該N−酸化反応は、一般に、式(I)の出発物質を適切な有機もしくは無機過酸化物と反応させることにより実施することができる。適切な無機過酸化物は、例えば、過酸化水素、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属過酸化物、例えば、過酸化ナトリウム、過酸化カリウムを含んでなり;適切な有機過酸化物は、例えば、ベンゼンカルボペルオキソ酸(benzenecarboperoxoic aicd)もしくはハロ置換されたベンゼンカルボペルオキソ酸、例えば3−クロロベンゼンカルボペルオキソ酸のようなペルオキシ酸、ペルオキソアルカン酸、例えばペルオキソ酢酸、アルキルヒドロペルオキシド、例えばtertブチルヒドロ−ペルオキシドを含んでなることができる。適当な溶媒は、例えば、水、低級アルコール、例えばエタノールなど、炭化水素、例えばトルエン、ケトン、例えば2−ブタノン、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、およびそのような溶媒の混合物である。
【0044】
式(I)の化合物ならびにそれらのN−オキシド、付加塩、第四級アミンおよび立体化学的異性体のいくつかは、1個もしくはそれ以上のキラリティー中心を含有しそして立体化学的異性体として存在し得ることが理解される。
【0045】
「立体化学的異性体」という用語は、上記に用いる場合、式(I)の化合物ならびにそれらのN−オキシド、付加塩、第四級アミンもしくは生理学的に機能性の誘導体が有することのできる可能な立体異性体の全てを定義する。他に記載されないかもしくは示されない限り、化合物の化学表示は全ての可能な立体化学的異性体の混合物を意味し、該混合物は、基本分子構造の全てのジアステレオマーおよび鏡像異性体、ならびに他の異性体を実質的に含まない、すなわち、10%未満、好ましくは5%未満、特に2%未満そして最も好ましくは1%未満を伴う式(I)の個々の異性体およびそれらのN−オキシド、塩、溶媒和物もしくは第四級アミンの各々を含有する。従って、式(I)の化合物が例えば(E)と特定される場合、これは該化合物が(Z)異性体を実質的に含まないことを意味する。
【0046】
特に、ステレオジェン中心は、R−もしくはS−立体配置を有することができ;2価の
環式の(部分的に)飽和した基上の置換基は、シス−もしくはトランス−立体配置のいずれかを有することができる。二重結合を含む化合物は、該二重結合でE(反対側(entgegen))もしくはZ(同じ側(zusammen))−立体化学を有することができる。シス、トランス、R、S、EおよびZという用語は、当業者に周知である。
【0047】
式(I)の化合物の立体化学的異性体は、明らかに本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0048】
式(I)の化合物、それらのN−オキシド、塩、溶媒和物もしくは第四級アミンおよびその製造に使用する中間体のいくつかでは、絶対立体化学配置を実験的に決定しなかった。これらの場合、実際の立体化学配置をさらに言及せずに、第一に単離された立体異性体を「A」と、そして第二のものを「B」と表す。しかしながら、該「A」および「B」立体異性体は、「A」および「B」が鏡像異性の関係を有する場合には例えばそれらの旋光性により明らかに特性化することができる。当業者は、例えば、X線回折のような当該技術分野で既知の方法を用いてそのような化合物の絶対立体配置を決定することができる。「A」および「B」が立体異性体混合物である場合には、それらをさらに分離することができ、それにより、実際の立体化学配置をさらに言及せずに、単離されるそれぞれの第一の画分を「A1」および「B1」、そして第二のものを「A2」および「B2」と表す。本発明の化合物およびその化学合成において介在する中間体の純粋な立体化学的異性体は、当該技術分野で既知の方法の適用により得ることができる。例えば、ジアステレオ異性体は、選択的結晶化もしくはクロマトグラフィー技術、例えば、向流分配、液体クロマトグラフィーおよび同様の方法のような物理的方法により分離することができる。鏡像異性体は、ラセミ混合物から、最初に例えばキラル酸のような適当な分割剤で該ラセミ混合物をジアステレオマー塩もしくは化合物の混合物に転化し;次にジアステレオマー塩もしくは化合物の該混合物を例えば選択的もしくは分別結晶化またはクロマトグラフィー技術、例えば液体クロマトグラフィーおよび同様の方法により物理的に分離し;そして最後に該分離したジアステレオマー塩もしくは化合物を例えばアルカリでの処理により対応する鏡像異性体に転化することにより得ることができる。純粋な立体化学的異性体はまた、適切な中間体および出発物質の純粋な立体化学的異性体から得ることもでき、ただし、介在する反応は立体特異的に起こる。好ましくは、特定の立体異性体が所望される場合、該化合物は、立体特異的な製造方法により合成される。これらの方法は、鏡像異性的に純粋な出発物質を都合よく用いる。
【0049】
式(I)の化合物および中間体の鏡像異性体を分離する代わりの方法は、液体クロマトグラフィー、特にキラル固定相を用いる液体クロマトグラフィーを含む。
【0050】
式(I)の化合物のいくつかはまた、それらの互変異性形態で存在することもできる。そのような形態は、上記の式において明白に示されないが本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0051】
下記に用いる場合はいつでも、「式(I)の化合物」という用語には、それらのN−オキシド形態、それらの塩、それらの第四級アミンおよびそれらの立体化学的異性体もまた包含されるものとする。特に興味深いのは、立体化学的に純粋な式(I)の化合物である。
【0052】
化合物の興味深い群は、−a=a−a=a−が式−CH=CH−CH=CH−(a−1)の2価の基を表す式(I)の化合物である。
【0053】
また、化合物の興味深い群は、式
【0054】
【化3】

【0055】
[式中、
−a=a−a=a−、−b=b−b=b−、R、R、R、R、mおよびXは上記に定義するとおりであり;
n’は0、1、2もしくは3であり、そして−a=a−a=a−が(a−1)である場合には、n’はまた4であることもでき;
2’はハロ、C1〜6アルキル、トリハロメチル、シアノ、アミノカルボニル、シアノもしくはアミノカルボニルで置換されたC1〜6アルキルであり;
ただし、R2’はNR部分に関してパラ位に位置する]
を有する式(I)の化合物、そのN−オキシド、製薬学的に許容しうる付加塩、第四級アミンもしくは立体化学的異性体である。
【0056】
化合物の別の興味深い群は、式
【0057】
【化4】

【0058】
[式中、
−b=b−b=b−、R、R、R、R、mおよびXは上記に定義するとおりであり;
n’は0、1、2、3もしくは4であり;
2’はハロ、C1〜6アルキル、トリハロメチル、シアノ、アミノカルボニル、シアノもしくはアミノカルボニルで置換されたC1〜6アルキルである]
を有する式(I)の化合物、そのN−オキシド、製薬学的に許容しうる付加塩、第四級アミンもしくは立体化学的異性体である。
【0059】
さらに、化合物のさらなる興味深い群は、式
【0060】
【化5】

【0061】
[式中、
、R、R、RおよびXは上記に定義するとおりであり;
n’は0、1、2、3もしくは4であり;
2’はハロ、C1〜6アルキル、トリハロメチル、シアノ、アミノカルボニル、シアノもしくはアミノカルボニルで置換されたC1〜6アルキルである]
を有する式(I)の化合物、そのN−オキシド、製薬学的に許容しうる付加塩、第四級アミンもしくは立体化学的異性体である。
【0062】
また、特定の化合物は、下記の条件の1つもしくは可能な限りそれ以上が当てはまる式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である:
a)mが1、2もしくは3、特に2もしくは3、さらに特に2であり、なおさらに特にmが2であり、そして該2個のR置換基がX部分に関して2および6位(オルト位)に位置する;
b)mが1、2もしくは3であり、そしてRがX部分に関して4位(パラ位)に位置する;
c)Xが−NR−、−NH−NH−、−N=N−、−O−、−C(=O)−、C1〜4アルカンジイル、−CHOH−、−S(=O)−、−X−C1〜4アルカンジイル−もしくは−C1〜4アルカンジイル−X−である;
d)適用できる場合、n’が0である;
e)適用できる場合、nが1であり、そして該R置換基がNR−リンカーに関して4位(パラ位)に位置する;
f)Rがヒドロキシ、ハロ、場合によりシアノもしくは−C(=O)Rで置換されていてもよいC1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、場合により1個もしくはそれ以上のハロゲン原子もしくはシアノで置換されていてもよいC2〜6アルケニル、場合により1個もしくはそれ以上のハロゲン原子もしくはシアノで置換されていてもよいC2〜6アルキニル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、ポリハロメチル、ポリハロメチルチオ、−S(=O)、−NH−S(=O)、−NHC(=O)H、−C(=O)NHNH、−NHC(=O)R、−C(=NH)Rまたは式
【0063】
【化6】

【0064】
の基であり、
ここで、各Aは独立してN、CHもしくはCRであり;そして
はNH、O、SもしくはNRである
g)R2’がハロ、C1〜6アルキル、トリハロメチル、シアノ、シアノもしくはアミノカルボニルで置換されたC1〜6アルキルである;
h)Rがシアノ、アミノカルボニルまたはシアノもしくはアミノカルボニルで置換されたC1〜6アルキル、特にシアノである;
i)R2’がシアノ、アミノカルボニルまたはシアノもしくはアミノカルボニルで置換されたC1〜6アルキル、特にシアノである。
【0065】
本発明の化合物の好ましい態様には、RがNHR13;NR1314;−C(=O)−NHR13;−C(=O)−NR1314;−C(=O)−R15;−CH=N−NH−C(=O)−R16;シアノもしくはアミノカルボニルで置換されたC2〜6アルキル;NR10、−C(=O)−NR9a10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRで置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される2個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル、そしてここで、同じ炭素原子で結合している2個の水素原子は、C1〜4アルカンジイルで置換される;ヒドロキシおよびシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから選択される第二の置換基で置換されたC1〜6アルキル;場合によりシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよいC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルケニル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルキニル;−C(=N−O−R)−C1〜4アルキル;Rもしくは−X−Rであり;R9aがヒドロキシ;C1〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシ;C1〜6アルキルカルボニル;C1〜6アルキルオキシカルボニル;アミノ;モノ−もしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ;モノ−もしくはジ(C1〜6アルキル)アミノカルボニル、−CH(=NR11)もしくはRを表し、ここで、R9aの定義における上記のC1〜6アルキル基の各々が、場合によりそして各々個々に、ヒドロキシ、C1〜6アルキルオキシ、ヒドロキシC1〜6アルキルオキシ、カルボキシル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、シアノ、アミノ、イミノ、モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノ、ポリハロメチル、ポリハロメチルオキシ、ポリハロメチルチオ、−S(=O)、−NH−S(=O)、−C(=O)R、−NHC(=O)H、−C(=O)NHNH、−NHC(=O)R、−C(=NH)R、Rから各々独立して選択される1もしくは2個の置換基で置換されていてもよく;R9aがまた、R10と一緒になって上記に定義するとおりの式(d−1)、(d−2)、(d−3)、(d−4)、(d−5)、(d−6)もしくは(d−7)の2価もしくは3価の基を形成することもできる式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物が包含される。
【0066】
化合物のさらなる興味深い群は、RがNHR13;NR1314;−C(=O)−NHR13;−C(=O)−NR1314;−C(=O)−R15;−CH=N−NH−C(=O)−R16;NR10、−C(=O)−NR9a10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRで置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される2個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしく
はRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル、そしてここで、同じ炭素原子で結合している2個の水素原子は、C1〜4アルカンジイルで置換される;ヒドロキシおよびシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから選択される第二の置換基で置換されたC1〜6アルキル;場合によりシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよいC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルケニル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルキニル;−C(=N−O−R)−C1〜4アルキル;Rもしくは−X−Rであり;R9aがヒドロキシ;C1〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシ;C1〜6アルキルカルボニル;C1〜6アルキルオキシカルボニル;アミノ;モノ−もしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ;モノ−もしくはジ(C1〜6アルキル)アミノカルボニル、−CH(=NR11)もしくはRを表し、ここで、R9aの定義における上記のC1〜6アルキル基の各々が、場合によりそして各々個々に、ヒドロキシ、C1〜6アルキルオキシ、ヒドロキシC1〜6アルキルオキシ、カルボキシル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、シアノ、アミノ、イミノ、モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノ、ポリハロメチル、ポリハロメチルオキシ、ポリハロメチルチオ、−S(=O)、−NH−S(=O)、−C(=O)R、−NHC(=O)H、−C(=O)NHNH、−NHC(=O)R、−C(=NH)R、Rから各々独立して選択される1もしくは2個の置換基で置換されていてもよく;R9aがまた、R10と一緒になって上記に定義するとおりの式(d−1)、(d−2)、(d−3)、(d−4)、(d−5)、(d−6)もしくは(d−7)の2価もしくは3価の基を形成することもできる式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0067】
また、化合物の興味深い群は、Rが−CH=N−NH−C(=O)−R16;NR10、−C(=O)−NR9a10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRで置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される2個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル、そしてここで、同じ炭素原子で結合している2個の水素原子は、C1〜4アルカンジイルで置換される;ヒドロキシおよびシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから選択される第二の置換基で置換されたC1〜6アルキル;場合によりシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよいC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルケニル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルキニル;−C(=N−O−R)−C1〜4アルキル;Rもしくは−X−Rであり;R9aが上記に定義するとおりである式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0068】
化合物の別の興味深い群は、RがNHR13;NR1314;−C(=O)−R
;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル、そしてここで、同じ炭素原子で結合している2個の水素原子は、C1〜4アルカンジイルで置換される;ヒドロキシおよびシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから選択される第二の置換基で置換されたC1〜6アルキル;場合によりシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよいC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルケニル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルキニル;−C(=N−O−R)−C1〜4アルキル;Rもしくは−X−Rである式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0069】
また、興味深いのは、RがNR10、−C(=O)−NR9a10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRで置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される2個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル、そしてここで、同じ炭素原子で結合している2個の水素原子は、C1〜4アルカンジイルで置換される;ヒドロキシおよびシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから選択される第二の置換基で置換されたC1〜6アルキル;場合によりシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよいC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルケニル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルキニル;−C(=N−O−R)−C1〜4アルキル;Rもしくは−X−Rであり;R9aが上記に定義するとおりである式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0070】
また、興味深いのは、Rがシアノ、NR10もしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10もしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルケニル;シアノで置換されたC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル;ヒドロキシおよびシアノもしくはRから選択される第二の置換基で置換されたC1〜6アルキル;−C(=N−O−R)−C1〜4アルキル;Rもしくは−X−Rである式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0071】
化合物の別の興味深い群は、RがRである式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0072】
化合物のさらに別の興味深い群は、Rがシアノで置換されたC1〜6アルキル、特に
シアノで置換されたC2〜6アルキル、さらに特にシアノで置換されたエチルもしくはプロピル;またはシアノで置換されたC2〜6アルケニルである式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。好ましいのは、シアノで置換されたC2〜6アルケニルである。
【0073】
また、化合物の興味深い群は、RがシアノおよびRで置換されたC1〜6アルキル、もしくはシアノおよびRで置換されたC2〜6アルケニルである式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0074】
化合物のさらなる興味深い群は、RがRで置換されたC1〜6アルキルである式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0075】
さらに、化合物のさらなる興味深い群は、Rが−C(=N−O−R)−C1〜4アルキルである式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0076】
また、化合物の興味深い群は、RがヒドロキシおよびシアノもしくはRから選択される第二の置換基で置換されたC1〜6アルキルである式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0077】
また、化合物の興味深い群は、RもしくはR2’がシアノもしくはアミノカルボニルであり、そしてRが水素である式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0078】
化合物の別の興味深い群は、mが2もしくは3であり、そしてXが−NR−、−O−、−C(=O)−、CH−、−CHOH−、−S−、−S(=O)−であり、特に、Xが−NR−もしくは−O−である式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である。
【0079】
また、化合物の興味深い群は、以下の制約の1つもしくはそれ以上、好ましくは全てが当てはまる式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の化合物である:
a)nが少なくとも1、特に1であるか;もしくはn’が0である;
b)RもしくはR2’がシアノである;
c)mが1、2もしくは3である;
d)RがC1〜6アルキル、特にメチル;ニトロ;アミノ;ハロ;C1〜6アルキルオキシもしくはRである;
e)RがR、NR1314、−C(=O)R15、−CH=N−NH−C(=O)R16、−C(=O)NHR13、−C(=O)NR1314、−C(=N−OR)−C1〜4アルキル、シアノで置換されたC1〜6アルキル、シアノで2回置換されたC1〜6アルキル、NR10で置換されたC1〜6アルキル、ヒドロキシおよびシアノで置換されたC1〜6アルキル、ヒドロキシおよびRで置換されたC1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル、シアノで置換されたC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル、Rで置換されたC2〜6アルケニル、シアノで置換されたC2〜6アルケニル、シアノで2回置換されたC2〜6アルケニル、シアノおよびRで置換されたC2〜6アルケニル、シアノおよび−C(=O)−C1〜6アルキルで置換されたC2〜6アルケニル、シアノおよびハロで置換されたC2〜6アルケニル、−C(=O)−NR10で置換されたC2〜6アルケニル、ハロで置換されたC2〜6アルケニル、ハロで2回置換されたC2〜6アルケニルもしくはNR10で置換されたC2〜6アルケニルである;
f)Xが−C(=O)−、−CH−C(=O)−もしくは−C(=N−OR)−C1〜4アルカンジイル−である;
g)XがNHもしくはOである;
h)Rが水素もしくはC1〜4アルキルである。
【0080】
式(I)、(I’)、(I”)もしくは(I’”)の好ましい化合物は、化合物1、25、84、133、152、179、233、239、247、248、255(表1、2および3を参照)、それらのN−オキシド、その製薬学的に許容しうる付加塩、第四級アミンおよび立体化学的異性体である。
【0081】
式(I)の化合物は、WO 2003/016306に開示されている。それらの製造もまた、そこに記述されている。中間体および出発物質のいくつかは既知の化合物であり、そして市販されている可能性があるか、もしくは当該技術分野で既知の方法に従って製造することができ、または式(I)の化合物もしくは記述される中間体のいくつかは、WO 99/50250およびWO 00/27825に記述されている方法に従って製造することができる。
【0082】
本発明はまた、新規な化合物、すなわち、4−[[4−[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェノキシ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリル(E)(化合物255);そのN−オキシド、製薬学的に許容しうる付加塩、第四級アミンもしくは立体化学的異性体にも関する。
【0083】
該新規な化合物は、下記のように製造することができる:
a)Nフロー下でジオキサン(35ml)中の4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンズアルデヒド(0.0233mol)の混合物にNaH(60%)(0.0233mol)を加えた。混合物を5分間攪拌した。1−メチル−2−ピロリジノン(35ml)を加えた。混合物を10分間攪拌した。4−[(4−クロロ−2−ピリミジニル)アミノ]ベンゾニトリル(0.0212mol)を加えた。混合物を155℃で12時間攪拌し、HO中に注ぎ出し、そしてCHClで抽出した。有機層を分離し、HOで数回洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、そして溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離剤:CHCl 100;35〜70μm)。純粋な画分を集め、そして溶媒を蒸発させた。得られる画分をCHCN/ジイソプロピルエーテルから結晶化させた。沈殿物を濾過して分離し、そして乾燥させ、2.2gの中間体1を生成せしめた。
b)Nフロー下でテトラヒドロフラン(20ml)中のシアノメチルホスホン酸ジエチルエステル(0.0065mol)の混合物に5℃でカリウムtert−ブトキシド(0.0065mol)を少しずつ加えた。混合物を室温で1時間攪拌した。テトラヒドロフラン(20ml)中の中間体1(0.0044mol)の溶液を加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。混合物をCHClで抽出した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、そして溶媒を蒸発させた。残留物(1.8g)をジエチルエーテルから結晶化させた。沈殿物を濾過して分離し、そして乾燥させた。残留物(1.5g)をクロマシル上でカラムクロマトグラフィーにより精製した(溶離剤:CHCN/AcNH
50/50;10μm)。2つの画分(F1、F2)を集め、そして溶媒を蒸発させた。収量:0.47gのF1および0.44gのF2。F1をジイソプロピルエーテルから結晶化させた。沈殿物を濾過して分離し、そして乾燥させ、0.4gの4−[[4−[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェノキシ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリル(E)(化合物255)を生成せしめた。
【0084】
すでに上記に示すように、式(I)、(I’)、(I”)、(I’”)の化合物は、特に、ヒトにおける後天性免疫不全症候群(エイズ)の病因因子であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して、HIVに感染した温血動物において抗レトロウイルス特性(逆転写酵素阻害特性)を示す。HIVウイルスは、ヒトT−4細胞に優先的に感染し、そして
それらを破壊するかもしくはそれらの正常な機能、特に免疫系の調整を改変する。結果として、感染患者は常に減少する数のT−4細胞を有し、それらはさらに異常にふるまう。従って、免疫防御系は感染および新生物と闘うことができず、そしてHIVに感染した被験体は、通常、肺炎のような日和見感染症により、もしくは癌により死亡する。HIV感染と関連する他の症状には、血小板減少症、カポジ肉腫および進行性脱髄を特徴とする中枢神経系の感染が包含され、痴呆症ならびに進行性構音障害、運動失調および失見当識のような症状をもたらす。HIV感染はさらにまた、末梢神経障害、進行性全身性リンパ節腫(PGL)およびエイズ関連複合体(ARC)とも関連している。
【0085】
式(I)の化合物、それらのN−オキシド、その製薬学的に許容しうる付加塩、第四級アミンおよび立体化学的異性体は、それらの抗レトロウイルス特性、特にそれらの抗HIV特性、特にそれらの抗HIV−1活性のために、HIVに感染した個体の処置において有用である。式(I)の化合物のHIV複製阻害効果は、WO 2003/016306に記述されている。化合物255は、WO 2003/016306の項目「C.薬理学的実施例」下に記述されている試験において試験した場合に9.00のpIC50値を有する。
【0086】
今回、式(I)の化合物は、HIVに感染した温血動物を処置するために用いることができるだけでなく、それらはまたヒトを包含する温血動物がパートナー間の性交もしくは関連する親密な接触によってHIVに感染することを防ぐために用いることもできることが見出された。従って、すでに上記に示すように、本発明は、パートナー間の性交もしくは関連する親密な接触によるHIV感染の予防用の薬剤の製造のための式(I)の化合物の使用に、特にHIV−1感染を防ぐことに、そしてさらに特に(多)薬剤耐性HIV株、すなわち、1つもしくはそれ以上の当該技術分野で既知の非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターへの耐性を獲得しているHIV株、特にHIV−1株でのHIVもしくはHIV−1感染を防ぐことに関する。当該技術分野で既知の非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターは、本発明の化合物以外の非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、そして特に市販用の非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターである。
【0087】
本発明はまた、式(I)の化合物の有効量を処置を必要とする被験体に投与することを含んでなるパートナー間の性交もしくは関連する親密な接触によるHIV感染を予防する方法にも関する。
【0088】
パートナー間の性交もしくは関連する親密な接触という用語は、膣性交、肛門性交、口腔性交および性交渉の相手のHIV感染流体、特に精液と身体部位との接触を含んでなる。特に、パートナー間の性交もしくは関連する親密な接触という用語は、膣、肛門もしくは口腔性交、さらに特に膣性交に相当する。
【0089】
パートナー間の性交もしくは関連する親密な接触によるHIVの伝染の最も原因となると考えられる接触部位は、生殖器、直腸、口、手、下腹部、大腿上部である。
【0090】
「パートナー」という用語は、上記もしくは下記に記載する場合、相互に性的に活発である、すなわち、相互に性交するかもしくは性行為に関連する相互に親密な接触がある2体もしくはそれ以上の温血動物、特にヒトを定義する。
【0091】
本発明はまた、組成物が、生殖器、直腸、口、手、下腹部、大腿上部、特に膣および口のような、性交もしくは関連する親密な接触が行われる部位に適用するのに適合した形態であることを特徴とする、製薬学的に許容しうる担体および有効成分として式(I)の化合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物にも関する。
【0092】
適切な組成物として、例えば、ゲル、ゼリー、クリーム、軟膏、フィルム、スポンジ、泡状物質(foam)、膣内用リング、子宮頸部キャップ、直腸もしくは膣使用のための座薬、膣もしくは直腸もしくは口腔錠、うがい薬のような膣、直腸、口および皮膚に使用するために通常用いられる全ての組成物を挙げることができる。
【0093】
本発明の製薬学的組成物を製造するために、有効成分として、場合により付加塩形態の、特定の化合物の有効量を製薬学的に許容しうる担体とよく混合して合わせ、この担体は、投与の形態により多種多様な形態をとることができる。例えば、局所経口投与用の組成物を製造することにおいて、懸濁液、エマルジョンおよび溶液の形態のうがい薬のような経口用液状製剤の場合には、例えば、水、グリコール、油、アルコールなどのような通常の製薬学的媒質のいずれかを;または錠剤の場合には、澱粉、糖、カオリン、希釈剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などのような固形担体を用いることができる。また、包含されるのは、使用直前に液状製剤に転化されることが意図される固形製剤である。皮膚投与に適当な組成物において、担体は、場合によりわずかな割合の任意の性質の適当な添加剤と組み合わせて、場合により適当な湿潤剤を含んでなり、これらの添加剤は、皮膚に重大な悪影響をもたらさない。該添加剤は、皮膚への投与を容易にすることができ、そして/もしくは所望の組成物を製造するのに役立つことができる。これらの組成物は、様々な方法で、例えばクリームもしくはゲルとして投与することができる。
【0094】
投与の部位での製薬学的組成物の滞留時間を増やすために、本発明の組成物に生体接着剤(bioadhesive)、特に生体接着性ポリマーを含むことは好都合であり得る。生体接着剤は、例えば粘膜もしくは皮膚組織のような生きている生物表面に接着する物質と定義することができる。生体接着剤という用語は、当業者に周知である。従って、本発明はまた、製薬学的組成物が使用の部位に生体接着性であることを特徴とする、製薬学的に許容しうる担体および有効成分として式(I)の化合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物にも関する。好ましくは、使用の部位は膣、直腸、口もしくは皮膚であり、最も好ましいのは膣である。
【0095】
本発明の製薬学的組成物において用いることができる生体接着剤の例は、例えば、カーボポール(carbopol)もしくはポリカーボフィル(例えば、カーボポール934P、カーボポール940、ポリカーボフィルAA1)のようなポリアクリル酸誘導体;例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、キトサンのようなセルロースエーテル誘導体;例えば、アルギネート、トラガカント、イヌリンのような天然ポリマー;プレゼラチン化(pregelatinized)澱粉を含んでなる。
【0096】
本発明の態様は、カーボポール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースもしくはアルファ化澱粉を含有するゲルに関する。
【0097】
式(I)の化合物の溶解性を促進するために、適当な成分、例えばシクロデキストリンを組成物に含むことができる。適切なシクロデキストリンは、α−、β−、γ−シクロデキストリンもしくはそのエーテルおよび混合エーテル(ここで、シクロデキストリンのアンヒドログルコース単位のヒドロキシ基の1つもしくはそれ以上は、C1〜6アルキル、特にメチル、エチルもしくはイソプロピル(例えばランダムにメチル化されたβ−CD);ヒドロキシC1〜6アルキル、特にヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルもしくはヒドロキシブチル;カルボキシC1〜6アルキル、特にカルボキシメチルもしくはカルボキシエチル;C1〜6アルキルカルボニル、特にアセチルで置換される)である。錯化剤(complexants)および/もしくは可溶化剤として特に特筆すべきは、β−CD、ランダムにメチル化されたβ−CD、2,6−ジメチル−β−CD、2−ヒドロキシエチル−β−CD、2−ヒドロキシエチル−β−CD、2−ヒドロキシプロピル−β−CD
および(2−カルボキシメトキシ)プロピル−β−CD、そして特に2−ヒドロキシプロピル−β−CD(2−HP−β−CD)である。
【0098】
混合エーテルという用語は、少なくとも2個のシクロデキストリンヒドロキシ基が例えばヒドロキシプロピルおよびヒドロキシエチルのような異なる基でエーテル化されるシクロデキストリン誘導体を意味する。
【0099】
平均モル置換(M.S.)は、アンヒドログルコースのモル当たりのアルコキシ単位の平均モル数の尺度として用いる。平均置換度(D.S.)は、アンヒドログルコール単位当たりの置換されたヒドロキシルの平均数をさす。M.S.およびD.S.値は、核磁気共鳴(NMR)、質量分析法(MS)および赤外分光法(IR)のような様々な分析技術により決定することができる。使用する技術により、わずかに異なる値が1つの既定のシクロデキストリン誘導体に対して得られ得る。好ましくは、質量分析法により測定した場合に、M.S.は0.125〜10の間であり、そしてD.S.は0.125〜3の間である。
【0100】
式(I)の化合物は、式(I)の化合物および1つもしくはそれ以上の適切な製薬学的に許容しうる水溶性ポリマーを含んでなる固体分散体からなる粒子の形態の本発明の製薬学的組成物に調合することができる。
【0101】
下記に使用する「固体分散体」という用語は、式(I)の化合物および水溶性ポリマーの場合、一方の成分がもう一方の成分もしくは複数の成分(可塑剤、防腐剤などのような、当該技術分野において一般に既知である追加の製薬学的に許容しうる調合剤が含まれる場合)の全体にわたって大体均一に分散している、少なくとも2つの成分を含んでなる固体状態(液体もしくは気体状態とは対照的に)の系を定義する。該系が全体にわたって化学的にそして物理的に均一もしくは均質であるかまたは熱力学において定義されるような1相からなるように成分の該分散体が存在する場合、そのような固体分散体は「固溶体」と呼ばれる。固溶体は、その中の成分が、それらを投与する生物体に通常は容易に生体利用可能であるので、好ましい物理系である。この利点は、おそらく、該固溶体が胃腸液のような液状媒質と接触した場合に液状溶液を形成することができる容易さにより説明することができる。溶解の容易さは、固溶体からの成分の溶解に必要とされるエネルギーが、結晶質もしくは微晶質固相からの成分の溶解に必要とされるものより少ないことに少なくとも部分的に起因し得る。
【0102】
「固体分散体」という用語はまた、固溶体より全体にわたって均質さが低い分散体も含んでなる。そのような分散体は、全体にわたって化学的にそして物理的に均一ではないかもしくは1つより多くの相を含んでなる。例えば、「固体分散体」という用語はまた、式(I)の非結晶質、微晶質もしくは結晶質化合物、または非結晶質、微晶質もしくは結晶質水溶性ポリマー、または両方が、水溶性ポリマー、もしくは式(I)の化合物を含んでなる別の相、または式(I)の化合物および水溶性ポリマーを含んでなる固溶体に大体均一に分散しているドメインもしくは小さな領域を有する系にも関する。該ドメインは、ある物理的特徴を顕著に特徴とする、サイズが小さい、そして固体分散体の全体にわたって均一に且つランダムに分散している固体分散体内の領域である。
【0103】
溶融押し出し、噴霧乾燥および溶液蒸発を包含する固体分散体を製造するための様々な技術が存在する。
【0104】
溶液蒸発方法は、下記の段階を含んでなる:
a)式(I)の化合物および水溶性ポリマーを、場合により高温で、適切な溶媒に溶解する;
b)溶媒が蒸発されるまで、場合により真空下で、a)時点下で得られる溶液を加熱する。該溶液はまた、薄膜を形成するように大きな表面上に注ぐこともでき、そしてそれから溶媒を蒸発させる。
【0105】
噴霧乾燥技術では、2つの成分を同様に適切な溶媒に溶解し、そして得られる溶液を次に噴霧乾燥機のノズルを通して噴霧し、続いて得られる液滴から溶媒を高温で蒸発させる。
【0106】
固体分散体を製造するための好ましい技術は、下記の段階を含んでなる溶融押し出し方法である:
a)式(I)の化合物および適切な水溶性ポリマーを混合する、
b)場合によりこのようにして得られる混合物と添加剤を混ぜ合わせる、
c)均質な融解物が得られるまでこのようにして得られるブレンドを加熱しそして混合する、
d)このようにして得られる融解物を1つもしくはそれ以上のノズルを通して押し進める;そして
e)融解物が凝固するまでそれを冷却する。
【0107】
「融解物」および「融解すること」という用語は、広範に解釈されるべきである。これらの用語は、固体状態から液体状態への改変を意味するだけでなく、ガラス状態もしくはゴム状態への変化もさすことができ、そしてここで、混合物の一方の成分がもう一方に大体均質に包埋されるようになることが可能である。特定の場合、一方の成分は融解し、そしてもう一方の成分(1つもしくは複数)は該融解物に溶解し、このようにして溶液を生成せしめ、それは冷却すると都合のよい溶解特性を有する固溶体を生成せしめることができる。
【0108】
上記のように固体分散体を製造した後に、得られる生成物を場合により粉砕しそしてふるいにかけてもよい。
【0109】
固体分散体生成物は、600μm未満、好ましくは400μm未満、そして最も好ましくは125μm未満の粒子サイズを有する粒子に粉砕するかもしくは砕くことができる。
【0110】
次に、上記のように製造した粒子を本発明の製薬学的投与形態物に通常の技術により調合することができる。
【0111】
当業者は、最も適切な溶媒、作業温度、使用する装置の種類、噴霧乾燥の速度、溶融押し出し機における押し出し速度のような、上記の固体分散体製造技術のパラメーターを最適化することができると理解される。
【0112】
粒子における水溶性ポリマーは、2%(w/v)で水溶液に20℃で溶解した場合に、1〜5000mPa.sの、より好ましくは1〜700mPa.sの、そして最も好ましくは1〜100mPa.sの見掛け粘度を有するポリマーである。例えば、適当な水溶性ポリマーには、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩、カルボキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースエステル、澱粉、ペクチン、キチン誘導体、トレハロースのような二糖、オリゴ糖および多糖、そのアルギン酸もしくはアルカリ金属およびアンモニウム塩、カラギーナン、ガラクトマンナン、トラガカント、寒天−寒天、ゴムアラビカム、グアルゴムおよびキサンタンゴム、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、メタクリレートコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニルとポリビニ
ルピロリドンとのコポリマー、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせ、ポリアルキレンオキシドならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマーが包含される。好ましい水溶性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0113】
また、1つもしくはそれ以上のシクロデキストリンをWO 97/18839に開示されているように上記の粒子の製造において水溶性ポリマーとして用いることもできる。該シクロデキストリンには、当該技術分野において既知である製薬学的に許容しうる非置換のおよび置換されたシクロデキストリン、さらに特にα、βもしくはγシクロデキストリンまたはその製薬学的に許容しうる誘導体が包含される。
【0114】
上記の粒子を製造するために用いることができる置換されたシクロデキストリンには、米国特許3,459,731に記述されているポリエーテルが包含される。さらなる置換されたシクロデキストリンは、1つもしくはそれ以上のシクロデキストリンヒドロキシ基の水素がC1〜6アルキル、ヒドロキシC1〜6アルキル、カルボキシ−C1〜6アルキルもしくはC1〜6アルキルオキシカルボニルC1〜6アルキルで置換されるエーテルまたはその混合エーテルである。特にそのような置換されたシクロデキストリンは、1つもしくはそれ以上のシクロデキストリンヒドロキシ基の水素がC1〜3アルキル、ヒドロキシC2〜4アルキルもしくはカルボキシC1〜2アルキルでまたはさらに特にメチル、エチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、カルボキシメチルもしくはカルボキシエチルで置換されるエーテルである。
【0115】
特に有用であるのは、β−シクロデキストリンエーテル、例えば、M.Nogradi(1984)によりDrugs of the Future、Vol.9、No.8、p.577−578に記述されているようなジメチル−β−シクロデキストリンおよびポリエーテル、例えば、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンおよびヒドロキシエチルβ−シクロデキストリンが例示される。そのようなアルキルエーテルは、約0.125〜3、例えば約0.3〜2の置換度を有するメチルエーテルであることができる。そのようなヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、例えば、β−シクロデキストリンとプロピレンオキシドとの間の反応から生成せしめることができ、そして約0.125〜10、例えば約0.3〜3のMS値を有することができる。
【0116】
置換されたシクロデキストリンの別のタイプは、スルホブチルシクロデキストリンである。
【0117】
水溶性ポリマーに対する式(I)の化合物の比率は、広く異なり得る。例えば、1/100〜100/1の比率を適用することができる。シクロデキストリンに対する式(I)の化合物の興味深い比率は、約1/10〜10/1の間である。さらに興味深い比率は、約1/5〜5/1の間である。
【0118】
HIV感染の予防における当業者は、本明細書に提示する試験結果から有効な毎日量を決定することができる。正確な投薬量は、使用する式(I)の特定の化合物により決まる。
【0119】
HIV感染に対する増大した防御を提供するために、式(I)の化合物はまた、別のもしくは他の抗レトロウイルス薬と組み合わせることもできる。従って、本発明はまた、式(I)の化合物を含んでなりそして1つもしくはそれ以上の追加の抗レトロウイルス化合物をさらに含んでなる本発明の製薬学的組成物も提供する。本発明はまた、HIV感染予防における同時の、別個のもしくは順次の使用のための組み合わせた製剤として、(a)式(I)の化合物および(b)1つもしくはそれ以上の追加の抗レトロウイルス化合物を
含有する製品にも関する。異なる薬剤は、製薬学的に許容しうる担体と一緒に単一の製剤において合わせることができる。該他の抗レトロウイルス化合物は、スラミン、ペンタミジン、チモペンチン、カスタノスペルミン、デキストラン(デキストラン硫酸)、フォスカルネット−ナトリウム(ホスホノギ酸三ナトリウム)のような既知の抗レトロウイルス化合物;ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、例えば、ジドブジン(3’−アジド−3’−デオキシチミジン、AZT)、ジダノシン(2’,3’−ジデオキシイノシン;ddI)、ザルシタビン(ジデオキシシチジン、ddC)もしくはラミブジン(2’−3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン、3TC)、スタブジン(2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン、d4T)、アバカビルなど;ネビラピン(11−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−4−メチル−6H−ジピリド−[3,2−b:2’,3’−e][1,4]ジアゼピン−6−オン)、エファビレンズ、デラビルジン、TMC−120、TMC−125などのような非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター;ホスホネート逆転写酵素インヒビター、例えばテノフォビルなど;TIBO(テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1,4]−ベンゾジアゼピン−2(1H)−オンおよびチオン)タイプの化合物、例えば、(S)−8−クロロ−4,5,6,7,−テトラヒドロ−5−メチル−6−(3−メチル−2−ブテニル)イミダゾ−[4,5,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン−2(1H)−チオン;α−APA(α−アニリノフェニルアセトアミド)タイプの化合物、例えば、α−[(2−ニトロフェニル)アミノ]−2,6−ジクロロベンゼン−アセトアミドなど;TAT−インヒビター(例えばRO−5−3335)もしくはREVインヒビターなどのような、トランス活性化タンパク質のインヒビター;プロテアーゼインヒビター、例えば、インジナビル、リトナビル、サキナビル、ロピナビル(ABT−378)、ネルフィナビル、アンプレナビル、TMC−126、BMS−232632、VX−175など;融合インヒビター、例えば、T−20、T−1249など;CXCR4受容体アンタゴニスト、例えばAMD−3100など;ウイルスインテグラーゼのインヒビター;ヌクレオチド様逆転写酵素インヒビター、例えばテノフォビルなど;リボヌクレオチドレダクターゼインヒビター、例えばヒドロキシウレアなどであることができる。
【0120】
ウイルス生活環における異なる事象を標的とする他の抗ウイルス薬と本発明の化合物を投与することにより、これらの化合物の予防効果を増強することができる。上記のような組み合わせ治療は、該組み合わせの各成分がHIV複製の異なる部位に作用するのでHIV複製を阻害することにおいて相乗効果を及ぼすことができる。そのような組み合わせの使用は、所望の予防効果に必要とされる既定の従来の抗レトロウイルス薬の投薬量を、該薬剤を単剤療法として投与する場合と比較して減らすことができる。これらの組み合わせは、任意の関連する毒性を最小限に抑えながら、単剤療法への耐性の可能性を減らす。これらの組み合わせはまた、関連する毒性を増加することなしに従来の薬剤の効能を増加することもできる。
【0121】
別のもしくは他の抗ウイルス薬と本発明の化合物との上記の組み合わせに加えて、本発明の化合物はまた、当該技術分野で既知の殺菌薬と組み合わせ投与することもできる。それらは、病原体(この場合はヒト免疫不全ウイルス)と伝染が起こる部位(例えば膣)との間に防壁を構築することにより感染を阻止することができ;それらは病原体を殺すかもしくは固定することができ;それらは、伝染の部位の内側を覆う細胞(例えば、膣壁の内側を覆う細胞)にウイルスがいったん感染するとそれが複製するのを防ぐことができる。殺菌薬の例は、下記のものである:
a)抗体。科学者は、HIVを中和する抗体を単離しそしてそれらを大量生産する方法を見出している。従って、HIV感染を防ぐためにこれらのHIV抗体を式(I)の本発明の化合物と組み合わせることができる。
b)洗剤および界面活性剤。これらの化合物は、ウイルスの外殻を破壊することができ、そしてそれ故に殺菌薬として有用であり、そしてHIV感染を防ぐためにそれらを式(I
)の本発明の化合物と組み合わせることができる。そのような洗剤および界面活性剤の例は、ノノキシノール−9およびオクトキシノール−9であるが、シャンプー、歯磨き粉および洗浄液において一般に用いられる全ての洗剤および界面活性剤は、同等に適当である。
c)伝染の部位用のコーティング、すなわち、例えばゲルのような、製薬学的組成物の投与の部位用のコーティング。これらの製品は、伝染の部位の内側を覆う細胞(例えば膣の内層)にHIVが入るのを防ぐことができる。例は、PC−515(カラギーナン)、Pro−2000、デキストリン2硫酸のような硫酸化およびスルホン化ポリマーである。d)ペプチド。ペプチドは、体(例えば、皮膚、舌、腸管)のあらゆる表面の内側を覆う小さなタンパク質分子であり、そしてそれらは接触の数分以内に病原体を殺すことができる。従って、HIVの潜在的感染部位で使用する場合、ペプチドは病原体が感染を引き起こす前にそれらを絶滅させることができる。
e)特に膣用の、pH調節剤。これらの化合物は、膣の自然の酸性度を調節し、それをHIVが住み難くする。自然の膣環境は、HIVが生存するには酸性すぎるが、精液はアルカリ性であり、そして性交中に膣はよりアルカリ性になり、HIVが生存するのを可能にする。pH調節化合物を投与することにより、精液により生み出されるアルカリ性環境を相殺することができる。pH調節剤には、過酸化水素を生成しそしてそれにより膣環境を健全に且つ酸性に保つのに役立つラクトバシラス細菌の使用が包含される。
【0122】
本発明の組成物において、殺菌薬の上記のカテゴリーの1つもしくはそれ以上もしくは全てを式(I)の化合物と組み合わせることができる。従って、本発明はまた、式(I)の化合物を含んでなりそして1つもしくはそれ以上の成分(ここで、該成分は、抗体、洗剤もしくは界面活性剤、製薬学的組成物の投与の部位用のコーティング、ペプチド、pH調節剤から選択される)をさらに含んでなる本発明の製薬学的組成物にも関する。本発明はまた、HIV感染予防における同時の、別個のもしくは順次の使用のための組み合わせた製剤として、(a)式(I)の化合物および(b)抗体、洗剤もしくは界面活性剤、製薬学的組成物の投与の部位用のコーティング、ペプチド、pH調節剤から選択される1つもしくはそれ以上の成分を含有する製品にも関する。異なる薬剤は、製薬学的に許容しうる担体と一緒に単一の製剤において組み合わせることができる。
【0123】
本発明はまた、殺精子化合物をさらに含んでなる上記に概説するような製薬学的組成物にも関する。該組成物は、妊娠およびHIV感染を同時に防ぐことができる。適当な殺精子剤は、例えば、ノノキシノール−9、オクトキシノール−9、メンフェゴール、塩化ベンザルコニウム、N−ドカサノールである。
【0124】
本発明は、パートナー間の性交もしくは関連する親密な接触によるHIV感染を防ぐための本発明の化合物の使用に焦点を当てるが、本発明の化合物はまた、生活環における必須事象のために同様の逆転写酵素に依存する他のウイルスによって引き起こされる感染の予防のための阻害剤として用いることもできる。
【0125】
以下の表1、2および3は、式(I)の化合物を記載する。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
【表7】

【0133】
【表8】

【0134】
【表9】

【0135】
【表10】

【0136】
【表11】

【0137】
【表12】

【0138】
薬理学的実施例
A)パートナー間の性交もしくは関連する親密な接触によるHIV感染を防ぐ化合物の能
力を試験するためのインビトロモデル
パートナー間の性交もしくは関連する親密な接触によるHIV感染を防ぐ本発明の化合物の能力を示すために、式(I)の化合物を下記の試験において試験する。未熟単球由来の樹状細胞(immMO−DC)は、性的HIV感染中の初期の標的および免疫応答の重要なイニシエーターである、間質樹状細胞の優れたモデルである。これらのimmMO−DCを、パートナー間の性交もしくは関連する親密な接触によるHIV感染の予防を試験するために「インビトロ」モデルにおいて使用した。
インビトロモデルa)
モノトロピック(monotropic)HIV株Ba−Lを式(I)の化合物(試験化合物)とプレインキュベーションする。ウイルスおよび試験化合物の混合物に、immMO−DCを加え、そして37℃で2時間インキュベーションする。感染後に、細胞を6回洗浄し、そして自系CD4(+)T細胞と培養する(比率 immMO−DC/CD4(+)T:1/10)。試験化合物を再び加え、そして14日の初代培養中は存在したままであり、その後に細胞を十分に洗浄し、そしてPHA/IL−2で刺激した芽細胞を加える(二次培養、試験化合物は存在しない)。上清を初代および二次培養中にELISAにおいて分析する。抗ウイルス活性を決定するために、初代培養の終わりにウイルス複製の50%を抑制することができる試験化合物濃度(EC50)を測定する。さらに、細胞を3週の二次培養後に採取し、そしてHIVプロウイルスDNAの存在について分析して(PCR)、殺菌に関して調べ、そしてウイルスレスキューを除く。
インビトロモデルb)(24時間感染実験)
単球由来の樹状細胞(MO−DC)を自系T4細胞と共培養し、そしてHIV株Ba−Lを10−3の感染多重度(MOI)で感染させた。試験化合物の連続希釈を感染時に加えた。24時間後に、96ウェルプレートを3回洗浄し(試験化合物および遊離のウイルスは、洗い流される)、そして培地(試験化合物なしの)を加えた。培地の半分を週に2回新たにした。培養上清を7および14日の培養後に採取した。14日後に、培養物を3回洗浄し、そしてPHA/IL−2で刺激したPBMCを二次培養用に加えてウイルスレスキューに関して調べた。二次培養中に、培地の半分を週に2回新たにした(IL−2培地、試験化合物なしの)。上清を1および2週の二次培養後に採取した。2週の二次培養後に、細胞をまたPCR分析用にも採取した。
【0139】
上清を初代および二次培養中にHIVプロウイルスDNAの存在に関してELISAにおいて分析した。
【0140】
7日の初代培養後に、10,000〜100nMの間の濃度で化合物230ではELISAにおいて6カップのうちいずれも陽性反応を示さなかった。7日の初代培養後に、10,000〜10nMの間の濃度で化合物255ではELISAにおいて6カップのうちいずれも陽性反応を示さなかった。
インビトロモデルc)(標準感染実験)
単球由来の樹状細胞(MO−DC)にモノトロピックHIV株Ba−Lを10−3の感染多重度(MOI)で2時間感染させた。感染後に、細胞を6回洗浄し、そして400.000細胞/mlで10% BCSに再懸濁した。自系CD4(+)T細胞をMO−DCと同じエラトリエーション(elutration)のリンパ球画分から精製し、そして2X10細胞/mlの濃度で使用した(比率 MO−DC/CD4(+)T:1/5)。
【0141】
式(I)の化合物(試験化合物)の連続希釈をMO−DC/CD4(+)T細胞共培養物に加えた。各実験を96ウェルプレートにおいて行い、ここで、各カップは、50μlのMO−DC、50μlのCD4(+)T細胞および100μlの試験化合物を含有した。14日の間、培養培地の半分を試験化合物と共に、週に2回新たにした。HIV抗原の存在に関して14日の培養後に上清をELISAにより分析した。抗ウイルス活性を決定
するために、初代培養の終わりにウイルス複製の50%を抑制することができる試験化合物濃度(EC50)を測定した。
B)混合白血球培養(MLC)において試験する本発明の化合物の免疫抑制活性
式(I)の化合物を古典的なMLCにおいてそれらの免疫抑制活性(ISC50値と定義する)について試験し、ここで、単球由来の樹状細胞(MO−DC)を刺激因子としてそして自系CD4(+)T細胞を応答因子として用いた。
【0142】
試験化合物の希釈シリーズをMO−DC/CD4(+)T細胞共培養物に加えた。5日の培養後に、20μlの[メチル−H]−チミジンを各ウェルに加え、そして7時間後に培養物を採取した。分析をTopcountシンチレーションカウンター上で行った。免疫抑制濃度(ISC50)は、通常の免疫増殖の50%を抑制する試験化合物濃度([メチル−H]−チミジン取り込みの50%を抑制する試験化合物濃度)と定義する。(標準MLCアッセイ)
24時間アッセイでは、試験化合物は、5日の培養期間の最初の24時間中のみ存在した。24時間後に、培養物を洗浄し(3回)、そして試験化合物なしの培養培地を加えた。実験設定は、それ以降、上記の標準MLCアッセイと同様であった。
【0143】
表4および5は、上記の試験において得られる結果を記載する。これらの結果から、試験した化合物は、MO−DC/CD4(+)T細胞共培養物においてHIV感染を効果的に阻止すると結論付けることができる。免疫抑制は、かなり高い濃度でのみ見られた。従って、本発明の化合物は、新規な殺菌薬とみなされることができる。
【0144】
【表13】

【0145】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パートナー間の性交もしくは関連する親密な接触によるHIV感染の予防用の薬剤の製造のための化合物の使用であって、
化合物が式
【化1】

[式中、
−a=a−a=a−は式
−CH=CH−CH=CH− (a−1);
−N=CH−CH=CH− (a−2);
−N=CH−N=CH− (a−3);
−N=CH−CH=N− (a−4);
−N=N−CH=CH− (a−5)
の2価の基を表し;
−b=b−b=b−は式
−CH=CH−CH=CH− (b−1);
−N=CH−CH=CH− (b−2);
−N=CH−N=CH− (b−3);
−N=CH−CH=N− (b−4);
−N=N−CH=CH− (b−5)
の2価の基を表し;
nは0、1、2、3もしくは4であり;そして−a=a−a=a−が(a−1)である場合には、nはまた5であることもでき;
mは1、2、3であり、そして−b=b−b=b−が(b−1)である場合には、mはまた4であることもでき;
は水素;アリール;ホルミル;C1〜6アルキルカルボニル;C1〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシカルボニル;ホルミル、C1〜6アルキルカルボニル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキルカルボニルオキシで置換されたC1〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシカルボニルで置換されたC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキルカルボニルであり;
各Rは独立してヒドロキシ、ハロ、場合によりシアノもしくは−C(=O)Rで置換されていてもよいC1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、場合により1個もしくはそれ以上のハロゲン原子もしくはシアノで置換されていてもよいC2〜6アルケニル、場合により1個もしくはそれ以上のハロゲン原子もしくはシアノで置換されていてもよいC2〜6アルキニル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ、ポリハロメチル、ポリハロメチルチオ、−S(=O)、−NH−S(=O)、−C(=O)R、−NHC(=O)H、−C(=O)NHNH、−NHC(=O)R、−C(=NH)Rまたは式
【化2】

の基であり、
[ここで、各Aは独立してN、CHもしくはCRであり;そして
はNH、O、SもしくはNRであり;]
は−NR−、−NH−NH−、−N=N−、−O−、−C(=O)−、C1〜4アルカンジイル、−CHOH−、−S−、−S(=O)−、−X−C1〜4アルカンジイル−もしくは−C1〜4アルカンジイル−X−であり;
は−NR−、−NH−NH−、−N=N−、−O−、−C(=O)−、−CHOH−、−S−、−S(=O)−であり;
はNHR13;NR1314;−C(=O)−NHR13;−C(=O)−NR1314;−C(=O)−R15;−CH=N−NH−C(=O)−R16;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル;シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択されそしてここで同じ炭素原子で結合している2個の水素原子はC1〜4アルカンジイルで置換される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC1〜6アルキル;ヒドロキシおよびシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから選択される第二の置換基で置換されたC1〜6アルキル;場合によりシアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されていてもよいC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルケニル;ハロ、シアノ、NR10、−C(=O)−NR10、−C(=O)−C1〜6アルキルもしくはRから各々独立して選択される1個もしくはそれ以上の置換基で置換されたC2〜6アルキニル;−C(=N−O−R)−C1〜4アルキル;Rもしくは−X−Rであり;
は−NR−、−NH−NH−、−N=N−、−O−、−C(=O)−、−S−、−S(=O)−、−X−C1〜4アルカンジイル−、−C1〜4アルカンジイル−X2a−、−C1〜4アルカンジイル−X2b−C1〜4アルカンジイル、−C(=N−OR)−C1〜4アルカンジイル−であり;
2aは−NH−NH−、−N=N−、−O−、−C(=O)−、−S−、−S(=O)−であり;そして
2bは−NH−NH−、−N=N−、−C(=O)−、−S−、−S(=O)−であり;
はハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C1〜6アルキルオキシ、シアノ、ニトロ、ポリハロC1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、アミノカルボニル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキルカルボニル、ホルミル、アミノ、モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノまたはRであり;
は水素;アリール;ホルミル;C1〜6アルキルカルボニル;C1〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシカルボニル:ホルミル、C1〜6アルキルカルボニル、C1〜6アルキルオキシカルボニルもしくはC1〜6アルキルカルボニルオキシで置換されたC
〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシカルボニルで置換されたC1〜6アルキルオキシC1〜6アルキルカルボニルであり;
はC1〜4アルキル、アミノ、モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノまたはポリハロC1〜4アルキルであり;
は単環式、二環式もしくは三環式の飽和した、部分的に飽和したもしくは芳香族の炭素環または単環式、二環式もしくは三環式の飽和した、部分的に飽和したもしくは芳香族の複素環であり、ここで、該炭素環式もしくは複素環式環系の各々は場合によりハロ、ヒドロキシ、メルカプト、C1〜6アルキル、ヒドロキシC1〜6アルキル、アミノC1〜6アルキル、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノC1〜6アルキル、ホルミル、C1〜6アルキルカルボニル、C3〜7シクロアルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキルチオ、シアノ、ニトロ、ポリハロC1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、アミノカルボニル、−CH(=N−O−R)、R7a、−X−R7aまたはR7a−C1〜4アルキルから各々独立して選択される1、2、3、4もしくは5個の置換基で置換されていてもよく;
7aは単環式、二環式もしくは三環式の飽和した、部分的に飽和したもしくは芳香族の炭素環または単環式、二環式もしくは三環式の飽和した、部分的に飽和したもしくは芳香族の複素環であり、ここで、該炭素環式もしくは複素環式環系の各々は場合によりハロ、ヒドロキシ、メルカプト、C1〜6アルキル、ヒドロキシC1〜6アルキル、アミノC1〜6アルキル、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノC1〜6アルキル、ホルミル、C1〜6アルキルカルボニル、C3〜7シクロアルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキルチオ、シアノ、ニトロ、ポリハロC1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、アミノカルボニル、−CH(=N−O−R)から各々独立して選択される1、2、3、4もしくは5個の置換基で置換されていてもよく;
は水素、C1〜4アルキル、アリールもしくはアリールC1〜4アルキルであり;
およびR10は各々独立して水素;ヒドロキシ;C1〜6アルキル;C1〜6アルキルオキシ;C1〜6アルキルカルボニル;C1〜6アルキルオキシカルボニル;アミノ;モノ−もしくはジ(C1〜6アルキル)アミノ;モノ−もしくはジ(C1〜6アルキル)アミノカルボニル;−CH(=NR11)またはRであり、ここで、上記のC1〜6アルキル基の各々は場合によりそして各々個々にヒドロキシ、C1〜6アルキルオキシ、ヒドロキシC1〜6アルキルオキシ、カルボキシル、C1〜6アルキルオキシカルボニル、シアノ、アミノ、イミノ、モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノ、ポリハロメチル、ポリハロメチルオキシ、ポリハロメチルチオ、−S(=O)、−NH−S(=O)、−C(=O)R、−NHC(=O)H、−C(=O)NHNH、−NHC(=O)R、−C(=NH)R、Rから各々独立して選択される1もしくは2個の置換基で置換されていてもよく;あるいは
およびR10は一緒になって式
−CH−CH−CH−CH− (d−1)
−CH−CH−CH−CH−CH− (d−2)
−CH−CH−O−CH−CH− (d−3)
−CH−CH−S−CH−CH− (d−4)
−CH−CH−NR12−CH−CH−(d−5)
−CH−CH=CH−CH− (d−6)
=CH−CH=CH−CH=CH− (d−7)
の2価もしくは3価の基を形成することができ;
11はシアノ;場合によりC1〜4アルキルオキシ、シアノ、アミノ、モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノまたはアミノカルボニルで置換されていてもよいC1〜4アルキル;C1〜4アルキルカルボニル;C1〜4アルキルオキシカルボニル;アミノカルボニル;モノ−もしくはジ(C1〜4アルキル)アミノカルボニルであり;
12は水素もしくはC1〜4アルキルであり;
13およびR14は各々独立して場合によりシアノもしくはアミノカルボニルで置換されていてもよいC1〜6アルキル、場合によりシアノもしくはアミノカルボニルで置換されていてもよいC2〜6アルケニル、場合によりシアノもしくはアミノカルボニルで置換されていてもよいC2〜6アルキニルであり;
15はシアノもしくはアミノカルボニルで置換されたC1〜6アルキルであり;
16は場合によりシアノもしくはアミノカルボニルで置換されていてもよいC1〜6アルキル、またはRであり;
pは1もしくは2であり;
アリールはフェニルあるいはハロ、ヒドロキシ、メルカプト、C1〜6アルキル、ヒドロキシC1〜6アルキル、アミノC1〜6アルキル、モノもしくはジ(C1〜6アルキル)アミノC1〜6アルキル、C1〜6アルキルカルボニル、C3〜7シクロアルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルオキシカルボニル、C1〜6アルキルチオ、シアノ、ニトロ、ポリハロC1〜6アルキル、ポリハロC1〜6アルキルオキシ、アミノカルボニル、Rまたは−X−Rから各々独立して選択される1、2、3、4もしくは5個の置換基で置換されたフェニルである]
そのN−オキシド、製薬学的に許容しうる付加塩、第四級アミンもしくは立体化学的異性体を有する使用。
【請求項2】
化合物が式
【化3】

[式中、
−a=a−a=a−、−b=b−b=b−、R、R、R、R、mおよびXは請求項1に定義するとおりであり;
n’は0、1、2もしくは3であり、そして−a=a−a=a−が(a−1)である場合には、n’はまた4であることもでき;
2’はハロ、C1〜6アルキル、トリハロメチル、トリハロメチルオキシ、シアノ、アミノカルボニル、シアノもしくはアミノカルボニルで置換されたC1〜6アルキルであり;
ただし、R2’はNR部分に関してパラ位に位置する]
を有する請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項3】
化合物が式
【化4】

[式中、
−b=b−b=b−、R、R、R、R、mおよびXは請求項1に定義するとおりであり;
n’およびR2’は請求項3に定義するとおりである]
を有する請求項1もしくは2に記載の化合物の使用。
【請求項4】
化合物が式
【化5】

[式中、
、R、R、RおよびXは請求項1に定義するとおりであり;
n’およびR2’は請求項3に定義するとおりである]
を有する請求項1〜3のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【請求項5】
2’がシアノ、アミノカルボニルまたはシアノもしくはアミノカルボニルで置換されたC1〜6アルキルである請求項2〜4のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【請求項6】
化合物が
4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリル;
4−[[4−[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェノキシ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリル;
4−[[4−[4−[2−シアノエテニル]−2−メチルフェノキシ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリル;
そのN−オキシド、製薬学的に許容しうる付加塩、第四級アミンもしくは立体化学的異性体から選択される請求項1〜5のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【請求項7】
化合物が
4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリル(E);
4−[[4−[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェノキシ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリル(E);
4−[[4−[4−[2−シアノエテニル]−2−メチルフェノキシ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリル(E)
から選択される請求項6に記載の使用。
【請求項8】
性交が膣、肛門もしくは口腔性交である請求項1〜7のいずれか一つに記載の使用。
【請求項9】
性交が膣性交である請求項8に記載の使用。
【請求項10】
薬剤がパートナー間の性交もしくは関連する親密な接触が行われる部位に適用するのに適合した形態である請求項1〜9のいずれか一つに記載の使用。
【請求項11】
薬剤が膣、直腸、口もしくは皮膚に適用するのに適合した形態である請求項10に記載の使用。
【請求項12】
薬剤がゲル、ゼリー、クリーム、軟膏、フィルム、スポンジ、泡状物質(foam)、
膣内用リング、子宮頸部キャップ、直腸もしくは膣適用のための座薬、膣もしくは直腸もしくは口腔錠、うがい薬の形態である請求項11に記載の使用。
【請求項13】
HIV感染が多剤耐性HIV感染である請求項1〜12のいずれか一つに記載の使用。
【請求項14】
製薬学的組成物が適用の部位に生体接着性(bioadhesive)であることを特徴とする、製薬学的に許容しうる担体および有効成分として請求項1〜7のいずれか一つに定義するとおりの化合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項15】
適用の部位が膣、直腸、口もしくは皮膚である請求項14に記載の製薬学的組成物。
【請求項16】
製薬学的組成物が膣もしくは口に適用するのに適合した形態であることを特徴とする、製薬学的に許容しうる担体および有効成分として請求項1〜7のいずれか一つに定義するとおりの化合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項17】
製薬学的組成物がゲル、ゼリー、クリーム、フィルム、スポンジ、泡状物質、膣内用リング、子宮頸部キャップ、直腸もしくは膣使用のための座薬、膣もしくは直腸もしくは口腔錠、うがい薬であることを特徴とする、製薬学的に許容しうる担体および有効成分として請求項1〜7のいずれか一つに定義するとおりの化合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項18】
製薬学的組成物がカーボポール(carbopol)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースもしくはプレゼラチン化(pregelatinized)澱粉を含有するゲルの形態であることを特徴とする、製薬学的に許容しうる担体および有効成分として請求項1〜7のいずれか一つに定義するとおりの化合物の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項19】
1つもしくはそれ以上の追加の抗レトロウイルス化合物をさらに含んでなる請求項14〜18のいずれか一つに記載の製薬学的組成物。
【請求項20】
抗体、洗剤もしくは界面活性剤、製薬学的組成物の投与の部位用のコーティング、ペプチドまたはpH調節剤から選択される1つもしくはそれ以上の成分をさらに含んでなる請求項14〜19のいずれか一つに記載の製薬学的組成物。
【請求項21】
殺精子化合物をさらに含んでなる請求項14〜20のいずれか一つに記載の製薬学的組成物。
【請求項22】
化合物が
【化6】

そのN−オキシド、製薬学的に許容しうる付加塩、第四級アミンもしくは立体化学的異性体である請求項1に定義するとおりの式(I)の化合物。

【公表番号】特表2006−516591(P2006−516591A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501729(P2006−501729)
【出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001011
【国際公開番号】WO2004/069812
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】