説明

ICタグ及びICタグを用いた位置検出システム

【課題】 所定の空間において時間の経過と共に位置が変化する対象物を特定するための情報を非接触方式で発信することができる低コスト且つ小型化されたICタグを提供する。
【解決手段】 少なくとも、所定の情報が格納されているICチップ31と該ICチップ31に電気的に接続される非接触通信用アンテナコイル32とを有し、外部アンテナから発信される電波を介して非接触通信用アンテナコイル32で起電をトリガとして起電した際に、非接触方式で情報を該外部アンテナへ送信するICタグ30において、ICチップ31に電気的に接続されると共に、超音波を発信する超音波圧電素子33を具備し、非接触通信用アンテナコイル32が外部アンテナからの電波を受信して起電した際に、ICチップ31に予め格納された自身を識別するための識別番号を送信すると共に、超音波を発信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部アンテナから発信される電波を介して、該外部アンテナとの間で非接触方式により情報を送受信するICタグ、及びそのICタグを用いた位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物体(例えば、商品、人)などの識別に利用される微小な無線ICタグが、各産業界において採用されている。このようなICタグには、自身を識別するための識別番号などの情報が予め記録されており、電波を介してかかる情報を送受信することで物体を管理するためのシステムとして適用されている。例えば、RFID(Radio Frequency Identification)というICタグを媒体として電波を介する情報発信で物体を正確に認識することができるシステムがある。このRFIDは、例えば、生産・物流・在庫を管理するシステム、商品の盗難を防止するシステム、及び施設への入退室を管理するシステムなど、社会一般の様々な用途として採用されている。
【0003】
上述のような状況において、ICタグは、社会一般におけるIT化及び自動化を推進する上での基盤技術として注目が高まっていると共に、各産業界の要望に応じた様々なタイプのICタグの開発が求められている。
【0004】
しかしながら、上述したICタグは、専ら商品又は人などの物体を識別するために用いられているものが殆どであり、かかるICタグを発展又は応用させて他の技術に展開できるようなものではなかった。
【0005】
一方、上述のようなICタグを位置検出に関連付けた技術が提案されている。例えば、タグ位置検出部が、対象物保持部の規定位置に載置された読取対象物のチップ埋込み領域をサーチし、チップ埋込み領域に埋め込まれているICタグの位置を検出してICタグの識別データを確実に読取ることができるICタグ読取装置が提案されている(特許文献1参照)。また、例えば、撮影装置で撮った映像に基づいて複数のICタグの位置を各設定時間ごとに逐次判別することで、タグの存否に加えて位置も自動検知することができるタグ検知システムが提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、何れの技術も、ICタグとは別の構成によりICタグの位置を検出する技術である。すなわち、ICタグをタグ位置検出部でサーチする又は撮影装置で撮影することで客観的に検出する技術であり、例えば、ICタグからの情報発信によって主体的に検出するものではなかった。このため、ICタグの位置検出を補助する周辺の装置又は機器が必要なためにシステムの規模が大きくなり、コストが高く且つ複雑化し易くなる傾向にあった。
【0007】
【特許文献1】特開2003−132306号公報
【特許文献2】特開2000−227948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、所定の空間において時間の経過と共に位置が変化する対象物を特定するための情報を非接触方式で発信することができる低コスト且つ小型化されたICタグ、及び当該ICタグを活用して所定の空間における対象物の位置情報を時間の経過と共に容易に検出することができる位置検出システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、少なくとも、所定の情報が格納されているICチップと該ICチップに電気的に接続される非接触通信用アンテナコイルとを有し、外部アンテナから発信される電波を介して非接触通信用アンテナコイルで起電をトリガとして起電した際に、非接触方式で情報を該外部アンテナへ送信するICタグにおいて、前記ICチップに電気的に接続されると共に、超音波を発信する超音波圧電素子を具備し、前記非接触通信用アンテナコイルが前記外部アンテナからの電波を受信して起電した際に、前記ICチップに予め格納された自身を識別するための識別番号を送信すると共に、超音波を発信することを特徴とするICタグにある。
【0010】
かかる第1の態様では、ICタグが具備する非接触通信用アンテナコイルが外部アンテナからの電波を受信して起電した際に、ICチップに予め格納された自身を識別するための識別情報が送信されると共に、超音波が発信される。これにより、従来から用いられているICタグを改良して、識別番号と共に超音波を発信させることができるため、所定の空間において時間の経過と共に位置が変化する対象物を特定するための情報を非接触方式で発信することができる低コストなICタグを提供することが可能となる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様におけるICタグは、前記非接触通信用アンテナコイルに対して起電があった際に、前記超音波の発信タイミングを制御するタイマー制御部をさらに具備することを特徴とするICタグにある。
【0012】
かかる第2の態様では、ICタグから発信される超音波の発信タイミングを制御することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記タイマー制御部は、前記非接触通信用アンテナコイルに対して起電があった際に、前記識別番号の送信タイミングをさらに制御することを特徴とするICタグにある。
【0014】
かかる第3の態様では、ICタグから送信される識別番号の送信タイミングを制御することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記ICチップに内蔵された電源又は前記ICチップを介して外部に設けられた電源の何れかを具備することを特徴とするICタグにある。
【0016】
かかる第4の態様では、ICチップに内蔵されている電源又はICチップを介して外部に設けられた電源の何れかを用いることができる。これにより、従来から用いられているICタグを改良して、所定の空間において時間の経過と共に位置が変化する対象物を特定するための情報を非接触方式で発信することができる小型化されたICタグを提供することが可能となる。
【0017】
本発明の第5の態様は、外部アンテナから発信される電波を介して、該外部アンテナとの間で非接触方式により情報を送信するICタグを用いた位置検出システムであって、少なくとも、所定の情報が格納されているICチップ、該ICチップに電気的に接続される非接触通信用アンテナコイル、及び該ICチップに電気的に接続されていると共に前記外部アンテナに対する起電があった際に超音波を発信する超音波圧電素子を有するICタグと、前記ICタグから発信される超音波を受信して当該超音波に関する超音波情報を出力する超音波マイクと、前記外部アンテナ及び前記超音波マイクと接続されており、当該外部アンテナ又は超音波マイクを介して前記ICタグから送信又は発信される情報を受信して前記ICチップが設置されている位置を特定するための位置情報を測定する測定通信機器とを具備し、前記測定通信機器は、前記外部アンテナに対する起電があった際、当該外部アンテナから送信される前記ICタグの識別番号を含む識別情報及び前記超音波マイクから送信される超音波に関する超音波情報を受信した場合に、当該識別情報に含まれる識別番号の受信タイミングと当該超音波情報に含まれる超音波の受信タイミングとの差分に基づいて、前記ICタグと前記超音波マイクとの間の距離を算出して当該ICタグが設置されている対象物の位置情報を検出することを特徴とするICタグを用いた位置検出システムにある。
【0018】
かかる第5の態様では、外部アンテナに対する起電があった際、その外部アンテナから送信される超音波に関する超音波情報を受信した場合に、識別情報に含まれる識別番号の受信タイミングと超音波情報に含まれる超音波の受信タイミングとの差分に基づいて、ICタグと超音波マイクとの間の距離が算出されて、ICタグが設置されている対象物の位置情報が検出される。これにより、従来から用いられているICタグを改良したICタグを用いて、識別番号及び超音波が送信又は発信できるようにすることで、対象物の位置情報を容易に検出することができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記超音波マイクが所定の空間を形成するように鉛直方向に段差を設けて複数箇所に設置されており、当該空間内において検出したい位置となる対象物に前記ICタグを設置した場合に、前記測定通信機器は、当該ICタグに関する識別情報及び複数の前記超音波マイクで構成された空間で発信される超音波に基づいて検出される位置情報から所定時間内における対象物の位置の変化を三次元上で検出することを特徴とするICタグを用いた位置検出システムにある。
【0020】
かかる第6の態様では、ICタグに関する識別情報及び複数の超音波マイクで構成された空間で発信される超音波に基づいて検出される位置情報から所定時間内における対象物の位置の変化が三次元上で検出される。これにより、所定の空間における対象物の位置情報を時間の経過と共に容易に検出することができる。
【0021】
本発明の第7の態様は、第5又は6の態様において、前記ICタグに予め設定されている起動情報に基づいて、前記識別番号の送信タイミング及び前記超音波の発信タイミングが制御されることを特徴とするICタグを用いた位置検出システムにある。
【0022】
かかる第7の態様では、識別番号の送信タイミング及び超音波の発信タイミングが制御される。これにより、例えば、ICタグからの情報発信を制御しながら、容易に位置情報を検出することが可能となる。
【0023】
本発明の第8の態様は、第5〜7の何れかの態様において、前記測定通信機器は、前記外部アンテナに対して通電するタイミング又は通電する間隔を制御することを特徴とするICタグを用いた位置検出システムにある。
【0024】
かかる第8の態様では、外部アンテナに対して通電するタイミング又は通電する間隔が制御される。これにより、例えば、ICタグに対する起電時間を制御しながら、容易に位置情報を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、識別番号を送信するICタグから超音波を発信させるようにすることで、所定の空間において時間の経過と共に位置が変化する対象物を特定するための情報を非接触方式で発信することができる低コスト且つ小型化されたICタグ、及び当該ICタグを活用して所定の空間における対象物の位置情報を時間の経過と共に容易に検出することができる位置検出システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るICタグの回路構成の概略を示すブロック図である。
【0028】
図示するように、ICタグ30は、少なくとも、所定の情報が格納されているICチップ31と該ICチップ31に電気的に接続される非接触通信用アンテナコイル32とを有し、外部アンテナから発信される電波を介して非接触通信用アンテナコイル32で起電をトリガとして起電した際に、非接触方式で情報を該外部アンテナへ送信する。このようなICチップ31としては、例えば、一般的にRFID(Radio Frequency Identification)などで用いられている3〜5mm角のチップマイコンを想定しているため、詳細な説明については省略する。なお、上述した非接触通信用アンテナコイル32とは、例えば、直列に接続された2つのコンデンサCを介して接続されるアンテナ機能を備えた誘電コイルである。
【0029】
本実施形態では、上述のようなICタグ30において、ICチップ31に電気的に接続されると共に、超音波を発信する超音波圧電素子33を具備することで、非接触通信用アンテナコイル32が外部アンテナからの電波を受信して起電した際に、ICチップ31に予め格納された自身を識別するための識別番号が送信されると共に、超音波が発信される。このような超音波圧電素子33としては、例えば、高周波圧電ブザーなどを挙げることができる。
【0030】
また、ICタグ30は、非接触通信用アンテナコイル32に対して起電があった際に、超音波の発信タイミング又は識別番号の送信タイミングを制御するタイマー制御部34をさらに具備している。このような制御は、例えば、ICタグ30が複数箇所に設置されている場合に有効であり、時間差を利用して各ICタグ30から発信される情報を確実に認識させることを可能とする。ここで、超音波の発信タイミングのみを制御する場合には、例えば、そのタイミングの時間差を測定通信機器50で管理しておき、位置情報110を検出する際に、対応する識別番号の送信タイミングに加算して調整するようにすればよい。
【0031】
このようなICタグ30は、例えば、ICチップ31に内蔵された電源35及びICチップ31を介して外部に設けられた電源としての外部電池39を具備している。すなわち、非接触通信用アンテナコイル32が外部アンテナからの電波を受信して起電した際に作動する電源35及びICチップ31を介して外部に設けられた電源としての外部電池39を具備することで動作する。まず、非接触通信用アンテナコイル32に起電があった場合に、電源35が作動して制御部36に対して通電が行われる。そして、直ちに外部電源スイッチ38がオンとなり電源を外部電池39に切り替えることで、制御部36、信号部37、及びタイマー制御部34に対して通電が行われる。また、タイマー制御部34は、信号部37、超音波圧電素子33、及び外部電源スイッチ38と接続されており、それら信号部37、超音波圧電素子33、及び外部電源スイッチ38は、タイマー制御部34を介してそれぞれ制御されることになる。
【0032】
なお、本実施形態では、電源35及び外部電池39の双方を電源として動作させることを例示しているが、勿論、電源35を単独の電源として用いてもよいし、外部電池39を電源35のバックアップ用電源として動作させるようにしてもよい。
【0033】
ここで、タイマー制御部34による具体的な制御の一例について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るICタグの処理例を示すフローチャートである。なお、図2に示す例では、起動時間の設定として、内部タイマー1に情報発信のトリガが設定されており、内部タイマー2に超音波圧電素子33に対する通電時間が設定されていることが前提となっている。
【0034】
まず、非接触通信用アンテナコイル32に起電があると、電源35がオンとなり、タイマー制御部34が通電されることで、内部タイマー1がオンとなる(S1)。
【0035】
そして、内部タイマー1が終了した場合(S2;Yes)、すなわち情報発信を遅らせるための時間が経過した場合には、識別番号が送信されると共に超音波圧電素子33に対する通電が行われて、内部タイマー2がオンとなる(S3)。すなわち、内部タイマー1が終了すると同時に、タイマー制御部34から信号部37に対して信号発信指示が出力され、同時に超音波圧電素子33が通電されて、内部タイマー2が動作する。そして、信号部37は、信号発信指示を受けると予め格納されているICチップ31の識別番号を制御部36から非接触通信用アンテナコイル32を介して外部アンテナに対して送信する。このとき、超音波の発信も開始される。
【0036】
そして、内部タイマー2が終了した場合(S4;Yes)、すなわち超音波圧電素子33に対する通電時間が経過した場合には、超音波圧電素子33に対する通電をオフにすると共に電源35をオフにする(S5)。このとき、超音波の発信も終了して、次の起電があるまで待機状態となる。すなわち、内部タイマー2が終了するまで超音波圧電素子33に対する通電が行われ、内部タイマー2の終了と同時に超音波圧電素子33に対する通電が終了となる。このとき、外部電源スイッチ38がオフとなり、ICチップ31が休止状態となる。
【0037】
上述のような処理により、起電をトリガとして送信される識別番号及び発信される超音波におけるICタグ30からの情報発信を時間で制御することが可能となる。
【0038】
次に、上述したICタグ30を適用した位置検出システムについて説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る位置検出システムのシステム構成を示す図である。
【0039】
図示するように、位置検出システム10は、外部アンテナ20、ICタグ30、超音波マイク40、及び測定通信機器50を具備しており、外部アンテナ20から発信される電波を介して、該外部アンテナ20との間で非接触方式により情報を送信するICタグ30を用いて対象物の位置情報110が検出される。
【0040】
ICタグ30は、上述したように、少なくとも、所定の情報が格納されているICチップ31、該ICチップ31に電気的に接続される非接触通信用アンテナコイル32、及び該ICチップ31に電気的に接続されていると共に外部アンテナ20に対する起電があった際に超音波を発信する超音波圧電素子33を有する。また、ICタグ30には予め外部に対して情報発信するための起動情報が設定されており、その起動情報に基づいて、識別番号の送信タイミング及び超音波の発信タイミングが制御されるようにすればよい。これにより、例えば、ICタグ30が複数箇所に装着される場合に、各ICタグ30の情報発信に対して時間差を設けることができるため、混信を防止することも可能となる。
【0041】
超音波マイク40は、ICタグ30から発信される超音波を受信して、その超音波に関する超音波情報を出力する。この超音波マイク40は、後述する測定通信機器50と所定の回線を介して接続されており、ICタグ30から受信した超音波を超音波情報に変換して所定の回線を介して測定通信機器50に出力する。ここでいう超音波情報とは、少なくとも、超音波を受信したタイミング、すなわち受信時間を含む情報である。
【0042】
測定通信機器50は、外部アンテナ20及び超音波マイク40と接続されており、その外部アンテナ20又は超音波マイク40を介してICタグ30から送信又は発信される情報を受信してICチップ31が設置されている位置を特定するための位置情報110を測定する。具体的には、測定通信機器50は、外部アンテナ20に対する起電があった際に、その外部アンテナ20から送信されるICタグ30の識別番号を含む識別情報及び超音波マイク40から送信される超音波に関する超音波情報を受信した場合に、その識別情報に含まれる識別番号の受信タイミングと超音波情報に含まれる超音波の受信タイミングとの差分に基づいて、ICタグ30と超音波マイク40との間の距離を算出してICタグ30が設置されている対象物の位置情報110を検出する。ここでいう識別情報とは、少なくとも、ICタグ30の識別番号および受信時間を含む情報である。さらに、測定通信機器50は、外部アンテナ20に対して通電するタイミング又は通電する間隔を制御する。このような制御により、例えば、外部アンテナ20が各空間ごとに複数設置されている場合に、各外部アンテナ20に対する通電のタイミングを制御することで、各空間ごとに存在するICタグ30をそれぞれ起電させることができる。また、外部アンテナ20に対して通電する間隔を制御することにより、例えば、ICタグ30を定期的に起電させて時間帯ごとに変化する位置情報110を検出することも可能となる。
【0043】
次に、上述した超音波マイク40を複数用いた場合における位置情報110の検出について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る位置情報の検出方法の一例を説明する平面図であり、図5は、本発明の一実施形態に係る位置情報の検出方法の一例を説明する斜視図である。
【0044】
まず、超音波マイク40は、ICタグ30の位置の変化を三次元座標上で特定するために複数箇所に設置される。図4に示す例では、4つの超音波マイク40a、40b、40c、及び40dが所定の空間100を形成するように設置されている。ここで、所定の空間100は、図5に示すように、鉛直方向に段差を設けて各超音波マイク40a〜40dを設置することで形成される。このような構成により、空間100内において検出したい位置にICタグ30を設置することで、時間の経過と共に変化するICタグ30の位置の変化を位置情報110として検出することができる。図4に示す例では、時間の経過と共に、図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態にICタグ30の位置が変化している。
【0045】
そして、例えば、図5に示すように、ICタグ30を対象物60に設置した場合に、測定通信機器50により、ICタグ30に関する識別情報及び各超音波マイク40a〜40dで構成された空間100内で発信される超音波に基づいて検出される位置情報110から所定時間内における対象物60の位置の変化が三次元上で検出される。すなわち、各超音波マイク40a〜40dにおいてそれぞれ受信された超音波に基づいて、ICタグ30と各超音波マイク40a〜40dとの距離の関係から対象物60の立体的な位置の変化が検出される。三次元による位置の検出には、例えば、距離データに基づき三次元座標位置を演算することが可能な一般的な三次元演算技術を用いればよい。この場合、上述のような演算が可能な三次元演算機能を測定通信機器50に導入すればよい。
【0046】
次に、上述した位置検出システム10の通信手順について説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る位置検出システムの通信シーケンスを示す図である。
【0047】
図示するように、まず、測定通信機器50から外部アンテナ20に対する通電がされると(S11)、外部アンテナ20が起電して(S12)、例えば、ICタグ30を含む所定の空間で電波を発生させる(S13)。
【0048】
外部アンテナ20が発生させる電波を受信したICタグ30は、非接触通信用アンテナコイル32による起電をトリガとして起電する(S14)。そして、ICタグ30に予め格納されている自身の識別番号が非接触通信用アンテナコイル32から電波を介して外部アンテナ20に送信される(S15)。同時に、ICタグ30が具備する超音波圧電素子33から超音波が発信される(S16)。
【0049】
ここで、外部アンテナ20に送信されたICタグ30の識別番号は、識別情報として測定通信機器50に対して送信される(S17)。一方、超音波圧電素子33から発信された超音波は、その超音波が届く範囲に設置されている超音波マイク40で受信されて超音波情報として測定通信機器50に対して出力される(S18)。
【0050】
測定通信機器50は、受信した識別情報に含まれる識別番号の受信タイミングと超音波情報に含まれる超音波の受信タイミングとの差分、すなわち2つの受信タイミングの時間差から、ICタグ30と超音波マイク40との間の距離を算出する(S19)。そして、算出した距離に基づいて対象物60の位置情報110が検出される(S20)。
【0051】
以上説明したように、本実施形態では、ICタグ30から識別番号と共に超音波を発信させることができるようにしたため、所定の空間において時間の経過と共に位置が変化する対象物60を特定するために必要な情報を非接触方式で発信することができる。かかるICタグ30は、従来から用いられているICタグが超音波圧電素子33を具備するように改良することで低コストに提供することができる。
【0052】
さらに、本実施形態のICタグ30を活用することで、例えば、複数の超音波マイク40で構成される所定の空間において、対象物60の位置情報110を時間の経過と共に容易に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係るICタグの回路構成の概略を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るICタグの処理例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る位置検出システムのシステム構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る位置情報の検出方法の一例を説明する平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る位置情報の検出方法の一例を説明する斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る位置検出システムの通信シーケンスを示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 位置検出システム
20 外部アンテナ
30 ICタグ
31 ICチップ
32 非接触通信用アンテナコイル
33 超音波圧電素子
34 タイマー制御部
35 電源
36 制御部
37 信号部
38 外部電源スイッチ
39 外部電池
40、40a、40b、40c、40d 超音波マイク
50 測定通信機器
60 対象物
100 空間
110 位置情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、所定の情報が格納されているICチップと該ICチップに電気的に接続される非接触通信用アンテナコイルとを有し、外部アンテナから発信される電波を介して非接触通信用アンテナコイルで起電をトリガとして起電した際に、非接触方式で情報を該外部アンテナへ送信するICタグにおいて、
前記ICチップに電気的に接続されると共に、超音波を発信する超音波圧電素子を具備し、
前記非接触通信用アンテナコイルが前記外部アンテナからの電波を受信して起電した際に、前記ICチップに予め格納された自身を識別するための識別番号を送信すると共に、超音波を発信することを特徴とするICタグ。
【請求項2】
請求項1におけるICタグは、前記非接触通信用アンテナコイルに対して起電があった際に、前記超音波の発信タイミングを制御するタイマー制御部をさらに具備することを特徴とするICタグ。
【請求項3】
請求項2において、前記タイマー制御部は、前記非接触通信用アンテナコイルに対して起電があった際に、前記識別番号の送信タイミングをさらに制御することを特徴とするICタグ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記ICチップに内蔵された電源又は前記ICチップを介して外部に設けられた電源の何れかを具備することを特徴とするICタグ。
【請求項5】
外部アンテナから発信される電波を介して、該外部アンテナとの間で非接触方式により情報を送信するICタグを用いた位置検出システムであって、
少なくとも、所定の情報が格納されているICチップ、該ICチップに電気的に接続される非接触通信用アンテナコイル、及び該ICチップに電気的に接続されていると共に前記外部アンテナに対する起電があった際に超音波を発信する超音波圧電素子を有するICタグと、
前記ICタグから発信される超音波を受信して当該超音波に関する超音波情報を出力する超音波マイクと、
前記外部アンテナ及び前記超音波マイクと接続されており、当該外部アンテナ又は超音波マイクを介して前記ICタグから送信又は発信される情報を受信して前記ICチップが設置されている位置を特定するための位置情報を測定する測定通信機器とを具備し、
前記測定通信機器は、前記外部アンテナに対する起電があった際、当該外部アンテナから送信される前記ICタグの識別番号を含む識別情報及び前記超音波マイクから送信される超音波に関する超音波情報を受信した場合に、当該識別情報に含まれる識別番号の受信タイミングと当該超音波情報に含まれる超音波の受信タイミングとの差分に基づいて、前記ICタグと前記超音波マイクとの間の距離を算出して当該ICタグが設置されている対象物の位置情報を検出することを特徴とするICタグを用いた位置検出システム。
【請求項6】
請求項5において、前記超音波マイクが所定の空間を形成するように鉛直方向に段差を設けて複数箇所に設置されており、当該空間内において検出したい位置となる対象物に前記ICタグを設置した場合に、前記測定通信機器は、当該ICタグに関する識別情報及び複数の前記超音波マイクで構成された空間で発信される超音波に基づいて検出される位置情報から所定時間内における対象物の位置の変化を三次元上で検出することを特徴とするICタグを用いた位置検出システム。
【請求項7】
請求項5又は6の位置検出システムにおいて、前記ICタグに予め設定されている起動情報に基づいて、前記識別番号の送信タイミング及び前記超音波の発信タイミングが制御されることを特徴とするICタグを用いた位置検出システム。
【請求項8】
請求項5〜7の何れかにおいて、前記測定通信機器は、前記外部アンテナに対して通電するタイミング又は通電する間隔を制御することを特徴とするICタグを用いた位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−329681(P2006−329681A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150130(P2005−150130)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(504246409)株式会社スーパー・フェイズ (6)
【Fターム(参考)】