説明

MEMS・半導体複合回路の製造方法

【課題】MEMS構造体を形成するための犠牲層及びこれに接するように設けられる構造
層を半導体素子の構成要素の製造プロセスと一体化することにより、性能を犠牲にせずに
、プロセス数の低減により製造コストを削減する。
【解決手段】本発明は、半導体基板10と、半導体基板の表層部に設けられたMEMS構
造体20S及び半導体素子30Sと、を有するMEMS・半導体複合回路の製造方法にお
いて、犠牲層23が形成されると同時に素子絶縁膜31が形成される第1形成工程と、犠
牲層に接するようにMEMS構造層24が形成されると同時に素子電極層32が形成され
る第2形成工程と、第1形成工程及び第2形成工程の後に、犠牲層が除去されることによ
りMEMS構造層が動作可能に構成されるリリース工程と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMEMS・半導体複合回路の製造方法に係り、特に、MEMS素子と半導体回
路とを一体化する場合に好適な製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、基板上にMEMS構造体を形成して種々のMEMS(微小電気機械システム)
を製造する種々の技術が提案されている(例えば、以下の特許文献1参照)。これらのM
EMS構造体を製造する場合には通常の半導体製造技術を用いるが、MEMS構造体は半
導体素子とは異なる構造を有するため、MEMS構造体と半導体素子とを同一の半導体基
板上に形成する場合には、通常の半導体製造プロセスよりもプロセス数が増加し、製造コ
ストの増大を招くという問題点がある。
【0003】
上記のような半導体製造技術を用いたプロセスにおいては、センサ10とMOSトラン
ジスタのそれぞれの領域において素子分離層18,19,21、絶縁膜24とトンネル酸
化膜27、固定電極28とフローティングゲート31をそれぞれ同一工程にて形成する方
法が知られている(例えば、以下の特許文献2参照)。この方法では、特に、センサ10
の一つの層をアニールすることによって半導体素子の特性が変化することがあるので、半
導体素子の特性変化を防止するために、半導体素子のソース・ドレイン注入部と、センサ
10のダイヤフラムを構成するポリシリコン層38の活性化アニールを同時に行うことが
提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−181567号公報
【特許文献2】特表2004−526299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の従来の製造方法(特許文献2)では、半導体素子のソース・ドレ
イン注入部と、ダイヤフラムのアニール処理を同時に行うことでMOSトランジスタの特
性変化を回避しているが、センサ10において最も重要な製造要素である犠牲層36及び
その上に形成されるダイヤフラム38の形成工程がそれぞれ半導体素子の構成要素の製造
プロセスとは別に設けられ、当該製造プロセスの後に行われるので、MOSトランジスタ
の特性への影響を完全に防止することができず、また、プロセス数が十分に低減されず、
製造コストの低減も難しいという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、MEMS構造体を形
成するための犠牲層及びこれに接するように設けられる構造層を半導体素子の構成要素の
製造プロセスと一体化することにより、性能を犠牲にせずに、プロセス数の低減により製
造コストを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる実情に鑑み、本発明のMEMS・半導体複合回路の製造方法は、半導体基板と、
該半導体基板の表層部に設けられたMEMS構造体及び半導体素子と、を有するMEMS
・半導体複合回路の製造方法において、前記MEMS構造体を形成するために用いる犠牲
層が形成されると同時に、前記半導体素子を構成する素子絶縁膜が形成される第1形成工
程と、前記犠牲層に接するように前記MEMS構造体を構成するMEMS構造層が形成さ
れると同時に、前記素子絶縁膜上に前記半導体素子を構成する素子電極層が形成される第
2形成工程と、前記第1形成工程及び前記第2形成工程の後に、前記犠牲層が除去される
ことにより前記MEMS構造層が動作可能に構成されるリリース工程と、を具備すること
を特徴とする。
【0008】
本発明によれば、MEMS構造体を形成するために用いる犠牲層と半導体素子を構成す
る素子絶縁膜とが第1形成工程において同時に形成されるとともに、MEMS構造体を構
成するMEMS構造層と半導体素子を構成する素子電極層とが第2形成工程において同時
に形成されることにより、プロセス数を従来よりもさらに低減することができるため、製
造コストを低減できる。特に、上記犠牲層と、この犠牲層を除去することで動作可能に構
成される上記MEMS構造層とはMEMS構造体を製造する上で最も重要な要素であり、
また、これらと同時に形成される素子絶縁膜と素子電極層は半導体素子の構成要素である
ため、これらを同工程において形成することで、製造プロセスを大幅に簡略化することが
できる。また、半導体素子を構成する素子絶縁膜と素子電極層は高精度に形成されるため
、これらと同時に形成される犠牲層とMEMS構造層も高精度に形成可能であり、その結
果、MEMS構造体を高精度に形成することが可能になるため、MEMS・半導体複合回
路の性能を低下させる虞も少ない。さらに、MEMS構造体を構成するための犠牲層及び
この後のMEMS構造層が半導体素子の素子絶縁膜及び素子電極層と同時に形成されるこ
とで、MEMS構造体の製造プロセスによる半導体素子の特性への影響を従来技術よりも
さらに低減することができる。
【0009】
本発明において、前記第1形成工程の前に、前記犠牲層の下層に前記MEMS構造体を
構成する下部MEMS構造層を形成する下層形成工程をさらに具備し、前記第1形成工程
では、前記下部MEMS構造層の表面が熱酸化されて前記犠牲層が形成されるとともに、
前記半導体基板の表面が熱酸化されて前記素子絶縁膜が形成されることが好ましい。下部
MEMS構造層もまたMEMS構造体の一部を構成する要素であり、この下層MEMS層
の熱酸化によって犠牲層が形成され、これと同時に半導体基板の表面の熱酸化によって素
子絶縁膜が形成されることにより、高品位の素子絶縁膜を形成することができるとともに
犠牲層の厚みを下層MEMS層の構造、組成等により調整することが可能になる。
【0010】
この場合において、前記半導体基板は単結晶半導体よりなり、前記下部MEMS構造層
は、前記半導体基板を構成する半導体素材と同じ基本素材で構成された多結晶半導体より
なることが好ましい。これによれば、半導体基板を構成する単結晶半導体に形成される熱
酸化膜よりも、多結晶半導体に形成される熱酸化膜の方が厚く形成できるため、素子絶縁
膜よりも犠牲層を厚く形成することが可能になる。ここで、同じ基本素材とは、単元素半
導体であればSiやGe等の元素が同じであること、化合物半導体であればGaAsやI
nPなどの基本構成元素の組み合わせが同じ(組成比は問わない。)であることを言う。
【0011】
また、前記下部MEMS構造層は前記半導体基板の前記素子絶縁膜の形成領域と異なる
不純物濃度を有することが好ましい。MEMS構造体に設けられる下部MEMS構造層を
半導体基板の素子絶縁膜の形成領域と異なる不純物濃度とすることにより、熱酸化によっ
て形成される犠牲層の厚みと素子絶縁膜の厚みの関係を調整することが可能になる。特に
、MEMS構造体に設けられる下部MEMS構造層を半導体基板の素子絶縁膜の形成領域
よりも高い不純物濃度とすることにより、下層MEMS構造に良好な導電性を付与するこ
とができるとともに、不純物による熱酸化速度の差異を大きくすることができるため、よ
り広い範囲にて犠牲層と素子絶縁膜の厚み調整を行うことが可能になる。
【0012】
本発明において、前記第1形成工程には二以上の前記素子絶縁膜を形成する段階が設け
られ、前記犠牲層は前記二以上の段階の少なくとも一の前記段階において形成される前記
素子絶縁膜と同時に形成されることが好ましい。半導体素子を複数形成する場合には複数
の半導体素子が異なる厚みや異なる素材よりなる素子絶縁膜を有するときがあり、このよ
うなときには、これらの二以上の素子絶縁膜の形成段階のうちいずれか少なくとも一の素
子絶縁膜と同時に犠牲層を形成することにより、犠牲層の厚みや素材に関する選択肢が増
加する。
【0013】
この場合に、前記犠牲層は前記二以上の段階のうち複数の段階においてそれぞれ形成さ
れる絶縁膜が積層されることにより形成されることが好ましい。これによれば、複数の素
子絶縁膜を形成する段階で形成される絶縁膜が積層されることで犠牲層が形成されること
により、犠牲層を厚く形成することができる。
【0014】
本発明において、前記第2形成工程には、前記MEMS構造層及び前記素子電極層を多
結晶シリコンにより形成する段階と、前記MEMS構造層及び前記素子電極層に金属を拡
散させて金属シリサイド化する段階と、が設けられることが好ましい。これによれば、M
EMS構造層と素子電極層が金属シリサイドとされることにより、半導体素子の高性能化
とともにMEMS構造層の電気抵抗を低減でき電気特性を容易に向上させることができる
。上記金属としては、Ti、W、Co、Mo、Niなどが挙げられる。
【0015】
本発明において、前記第2形成工程の後に、前記半導体素子の不純物領域を形成する工
程をさらに具備することが好ましい。これによれば、第2形成工程の後に半導体素子の不
純物領域を形成することにより、MEMS構造体の形成工程が半導体素子の特性に影響を
与えることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1乃至図8は
本実施形態に係るMEMS・半導体複合回路の製造工程を簡略化して示す概略工程図であ
る。
【0017】
図1に示す半導体基板10は例えば数百μm程度の厚みを有するウエハであり、本実施
形態ではシリコン単結晶等で構成される。ただし、本発明においては半導体基板としてG
aAs等の化合物半導体で構成される基板を用いても構わない。この半導体基板10の表
層部には公知の酸化プロセス(フォトリソグラフィ技術及び熱酸化技術)によりフィール
ド絶縁膜(素子分離膜、酸化シリコン等よりなる。)11が形成され、素子分離構造が形
成される。ここで、トレンチ構造により素子分離構造を形成してもよい。
【0018】
フィールド絶縁膜11は後述するMEMS構造体が形成される領域(以下、単に「ME
MS領域」という。)20全体にわたり形成され、当該MEMS領域20を半導体基板1
0や他の領域に対して絶縁分離し、また、後述する半導体素子が形成される領域(以下、
単に「半導体領域」という。)30を周囲から分離するために設けられる。なお、図示例
では、上記フィールド絶縁膜11が後述するMEMS構造体と半導体基板10との間に全
面的に介在するように構成されているため、MEMS構造体と半導体基板10との間の寄
生容量等を低減できる。
【0019】
次に、MEMS領域20において、CVD法やスパッタリング法等によって下地層21
が窒化シリコン等により形成される。この下地層21は、後述するリリース工程において
エッチングストップ層となるものである。
【0020】
その後、上記の下層MEMS形成工程として、MEMS領域20において上記下地層2
1上に下部MEMS構造層22を形成する。下部MEMS構造層22は例えばCVD法や
スパッタリング法等による成膜処理と、パターニング処理により形成される。下部MEM
S構造層22は例えば多結晶シリコンよりなる。下部MEMS構造層22は例えばMEM
S構造体中の下部電極として機能し、上記多結晶シリコンで構成される場合には、所定の
不純物、例えばn型のP、p型のBなどをドーピングすることによって導電性が付与され
る。ドーピングは例えばPOCl3やBBr3等のガス中でドーパントを堆積させ、熱拡散
させることで行われる。ただし、ドーピングが成膜と同時に行われるようにしてもよい。
この下層MEMS層22の厚みは特に限定されないが、一般的には0.3〜1.5μmの
範囲内であり、特に0.5〜1.2μmの範囲内であることが好ましい。
【0021】
次に、上記の第1形成工程として、800〜1100℃の温度で熱酸化処理を行う。ウ
エット酸化でもドライ酸化でもよいが、ゲート絶縁膜の膜質を高めるにはドライ酸化を選
択し、800〜900℃の低温で酸化することが好ましい。この工程では、図2に示すよ
うに、上記MEMS領域20において下部MEMS構造層22上に犠牲層23が形成され
るとともに、半導体領域30において半導体基板10上に素子絶縁膜であるゲート絶縁膜
31が形成される。犠牲層23の厚みは例えば30〜300nm、ゲート絶縁膜31の厚
みは一般的には10〜100nmの範囲内である。
【0022】
ここで、上記下部MEMS構造層22が多結晶シリコンであり、半導体基板10が単結
晶シリコンである場合には、下部MEMS構造層22の方が半導体基板10に比べて熱酸
化速度が高くなるため、犠牲層23をゲート絶縁膜31よりも厚く形成することができる

【0023】
また、上記下部MEMS構造層22がP等のn型のドーパントを不純物とする場合には
、ドーピング濃度に応じて熱酸化速度が増大するので、ゲート絶縁膜31よりも犠牲層2
3を厚く形成することができる。例えば、Pを1019台以上の濃度で導入した多結晶シリ
コンについては、真性シリコンの2倍以上の厚みになる場合がある。ただし、B等のp型
のドーパントを不純物とする場合には、熱酸化速度の増大はほとんどなく、却って低下す
る場合もある。
【0024】
上記のように、下部MEMS構造層22と半導体基板10の結晶性や不純物濃度の関係
を調整することにより、同工程において形成される犠牲層23とゲート絶縁膜31の厚み
を所望の関係に設定することが可能になる。なお、この第1形成工程では、熱酸化以外の
方法、例えばCVD法、スパッタリング法等で上記犠牲層23及びゲート絶縁膜31を形
成しても構わない。
【0025】
その後、上記の第2形成工程として、図3に示すように、MEMS領域20において上
記犠牲層23上に上部MEMS構造層24を形成するとともに、半導体領域30において
上記ゲート絶縁膜31上に素子電極層であるゲート電極層32を形成する。ここで、上部
MEMS構造層24及びゲート電極層32はCVD法やスパッタリング法により例えば多
結晶シリコンで形成される。この場合、所定の不純物、例えばn型のP、p型のBなどを
ドーピングすることによって導電性が付与される。ドーピングは例えばPOCl3やBB
3等のガス中でドーパントを堆積させ、熱拡散させることで行われる。ただし、ドーピ
ングが成膜と同時に行われるようにしてもよい。この下層MEMS層21の厚みは特に限
定されないが、一般的には0.3〜1.5μmの範囲内であり、特に0.5〜1.2μm
の範囲内であることが好ましい。
【0026】
なお、上部MEMS構造層24は上記のように犠牲層23上に形成されてもよいが、例
えば、犠牲層23の側面に接するように形成されても構わない。すなわち、上部MEMS
構造層24は犠牲層23に接するように形成されればよい。いずれにしても、本実施形態
では、下部MEMS構造層22と上部MEMS構造層24は犠牲層23を挟んで少なくと
も部分的に対向配置された状態とされる。これによってMEMS構造体20Sの基本的構
造は全て完成したことになる。
【0027】
この第2形成工程をシリサイドゲートプロセスで実施することもできる。すなわち、第
1段階として、上部MEMS構造層24及びゲート電極層32を多結晶シリコンで形成し
た後、第2段階として、これらの表面に金属を拡散させて金属シリサイド化する。金属と
しては、Ti、W、Co、Mo、Ni等が挙げられる。第2段階の金属拡散方法は特に限
定されないが、例えば、金属膜を蒸着法やスパッタリング法等により成膜し、熱拡散させ
ることでシリサイド化できる。シリサイド化される部分は一般的には上部MEMS構造層
24及びゲート電極層32の上層部分であるが、ほぼ全体をシリサイド化させることも可
能である。いずれにしても、上記のようにすると上部MEMS構造層24及びゲート電極
層32の低抵抗化を図ることができるため、半導体素子の高性能化はもちろんのこと、M
EMS構造体の電気特性を向上させることができる。
【0028】
なお、図示例の半導体領域30では単一の半導体素子30S(トランジスタ構造)のみ
を示してあるが、複数の半導体素子30Sを有する半導体回路、例えば、CMOS回路等
を構成してもよい。
【0029】
本実施形態においては、半導体素子30Sの特性がMEMS構造体20Sの形成工程に
よる影響を受けて特性が変化しないように、半導体素子30Sの不純物領域であるソース
領域33及びドレイン領域34を上記第2形成工程の後に、すなわちMEMS構造体20
Sの基本構造が形成された後に形成している。これは、例えば、MEMS構造体20Sの
形成プロセスにおいて下部MEMS構造層22や上部MEMS構造層24を形成する際に
ドーピング処理、アニール処理、高温での成膜処理等を要する場合には、このドーピング
処理、アニール処理、成膜処理等による加熱プロセスによって半導体素子30Sの特性が
影響を受ける虞があるからである。
【0030】
その後、図4に示すように、上記MEMS構造体20S及び半導体素子30S上に層間
絶縁膜12を形成する。この層間絶縁膜12はスパッタリング法やCVD法などで形成す
ることができる。ここで、層間絶縁膜12を形成した後に、表面の平坦化処理を実施し、
例えば化学的機械研摩処理により層間絶縁膜12の表面を平坦に加工してもよい。このよ
うにすると、層間絶縁膜12より上層の構造にMEMS構造体20Sによる段差の影響を
与えないようにすることができる。層間絶縁膜12の厚みは、MEMS構造体20Sの基
板表面に対する上方突出分を十分に被覆することができるだけの値に設定される。例えば
、上方突出分が例えば1.0〜2.0μmであれば、層間絶縁膜12の厚みは少なくとも
それらより0.5μm程度厚く、例えば1.5〜2.5μm程度とすることが好ましい。
【0031】
次に、上記層間絶縁膜12に開口部12aを形成した後、アルミニウム等により配線層
13を形成する。この配線層13は、上記開口部12aを介して下層に形成されたMEM
S構造体20Sや半導体素子30Sと導電接続される。なお、図示例ではMEMS構造体
20Sと半導体素子30Sとが導電接続されていないが、配線層13を介して両者が導電
接続されていてもよい。いずれにしても、本発明はこのような接続態様に何ら限定される
ものではない。
【0032】
その後、図5に示すように、配線層13上にさらに層間絶縁膜14を形成し、この層間
絶縁膜14に開口部14aを形成して、その上に配線層15を形成する。この配線層15
は開口部14aを通して下層の配線層13に導電接続されている。なお、上記層間絶縁膜
12、配線層13、層間絶縁膜14、配線層15といった絶縁膜と配線の積層構造は、そ
れぞれ絶縁膜と配線が一層ずつの2層構造であってもよく、また、それぞれ2以上の任意
数の層が交互に積層されていても構わない。
【0033】
次に、図6に示すように、層間絶縁膜14及び配線層15上に表面保護膜16を形成す
る。表面保護膜16は例えば窒化シリコン等で構成される。そして、この表面保護膜16
を部分的に開口して開口部16aを形成し、開口部16aを通して配線層15の一部が露
出することによって接続パッドが形成される。また、表面保護膜16だけでなく、その下
層の層間絶縁膜12,14をも除去することで開口凹部Pを形成する。この開口凹部Pを
形成する工程は、上記MEMS構造体20Sの周囲の絶縁層を除去して動作可能に構成す
るための後述するリリース工程を可能にするために、予め不要な上層構造を除去して開口
させておく開口工程である。
【0034】
その後、リリース工程として、緩衝弗酸(BHF)等よりなるエッチング液を用いて開
口凹部P内をエッチングし、上部MEMS構造層24の周囲の層間絶縁膜12と犠牲層2
3を除去することにより、開口空間Sを形成して、MEMS構造体20S(図示例では上
部MEMS構造層24)を動作(変形)可能に構成するとともに、下部MEMS構造層2
2と上部MEMS構造層24とを空間を隔てて対向させる。このリリース工程では、ME
MS構造体20Sの構造や機能に応じて不要部分が除去されればよいので、図示例の場合
に限定されるものではない。例えば、櫛歯状の一対の電極が基板上において支持ビームに
よって移動可能に支持されている構造であれば、一対の電極間及びこれらの電極と下地面
との間に酸化シリコン等よりなる犠牲層を形成しておき、この犠牲層をリリース工程で除
去すればよい。これによって、MEMS構造体20Sは、半導体基板10の上方に形成さ
れた開口空間S内に配置された状態となる。
【0035】
最後に、必要に応じてMEMS構造体20Sが配置される開口空間Sを図示しない封止
材で閉鎖する。封止材は有機樹脂や無機ガラス材等で構成できる。ここで、開口空間Sが
減圧された後に封止材によって減圧状態(真空状態)で閉鎖されてもよく、常圧状態で閉
鎖されてもよい。
【0036】
以上説明した本実施形態によれば、MEMS構造体20Sを構成する際に用いる犠牲層
23と半導体素子30Sの構成要素であるゲート絶縁膜31とを同時に形成し、MEMS
構造体20Sの構成要素である上部MEMS構造層24と半導体素子20Sの構成要素で
あるゲート電極層32とを同時に形成することにより、プロセス数が大幅に削減され、製
造コストを低減できるとともに、MEMS領域20と半導体領域30との一体化が容易に
なる。さらに、犠牲層23及び上部MEMS構造層24がそれぞれゲート絶縁膜31及び
ゲート電極層32と同時に形成されるので、MEMSプロセスによる半導体素子の特性へ
の影響を従来技術よりも完全に防止できる。
【0037】
次に、上記実施形態の変形例について図7乃至図9を参照して説明する。この例では、
半導体領域30A、30Bにおいて複数の半導体素子が形成され、しかも、複数の半導体
素子のうち少なくとも二つの素子が互いに異なる特性を有する素子として構成されるため
に、素子絶縁膜であるゲート絶縁膜の厚み、膜質、組成等が異なるように形成される。な
お、以下の本例の説明においては、上記実施形態と同様の部分については説明を省略し、
同一部分には同一符号を付すとともに、上記実施形態とは異なる部分、すなわち、上記の
第1形成工程に相当する工程のみについて詳細に述べることとする。
【0038】
本例では、図7に示すように、上記実施形態と同様に、半導体基板10上にフィールド
絶縁膜11が形成され、MEMS領域20では下地層21及び下部MEMS構造層22が
形成されている。そして、これらの上に熱酸化法やCVD法等により第1絶縁膜17が形
成される。なお、図示例では熱酸化法によって形成された例を示す。その後、レジスト等
よりなるマスク17Mが選択的に形成され、エッチング等によって不要部分が除去される
ことで、図8に示すように、MEMS領域20では下部MEMS構造層22上に第1犠牲
層23Aが形成され、半導体領域30Aでは第1素子絶縁膜31Aが形成され、半導体領
域30Bでは第1絶縁膜17が完全に除去されて半導体基板10の表面が露出する(第1
絶縁膜形成段階)。
【0039】
次に、上記の構造上に熱酸化法やCVD法等により第2絶縁膜18が形成される。なお
、図示例ではCVD法やスパッタリング法により形成された例を示す。熱酸化法によって
第2絶縁膜18を形成する場合には、既に形成されている第1犠牲層23Aや第1素子絶
縁膜31Aの上下に第2絶縁膜18が形成されていくことになる。その後、レジスト等よ
りなるマスク18Mが選択的に形成され、エッチング等によって不要部分が除去されるこ
とで、図9に示すように、MEMS領域20では第2犠牲層23Bが第1犠牲層23A上
に積層される。一方、半導体領域30Aにおいては、上記第1素子絶縁膜31A上に第2
素子絶縁膜31Bが積層され、半導体領域30Bでは第2素子絶縁膜31Bのみが形成さ
れる(第2絶縁膜形成段階)。
【0040】
本例においては、MEMS領域20、半導体領域30A、半導体領域30Bの各々にお
いて、上記第1絶縁膜形成段階と第2絶縁膜形成段階のそれぞれにおいて形成される絶縁
膜を設けるか否かをそれぞれ独立して設定することができる。すなわち、図示例では、M
EMS領域20において第1犠牲層23Aと第2犠牲層23Bとが積層して一体の犠牲層
が形成されているが、いずれか一方のみを形成してもよい。また、半導体領域30Aでは
第2素子絶縁膜31Bのみが形成されているが、第1素子絶縁膜31Aのみが形成されて
もよく、或いは、第1素子絶縁膜31Aと第2素子絶縁膜31Bを積層させてもよい。さ
らに、半導体領域30Bでは、第1素子絶縁膜31Aと第2素子絶縁膜31Bを積層して
一体の素子絶縁膜が形成されているが、第1素子絶縁膜31Aのみが形成されてもよく、
第2素子絶縁膜31Bのみが形成されてもよい。
【0041】
ただし、一般に、MEMS領域20において形成される犠牲層の厚みと、半導体領域3
0において形成される素子絶縁膜の厚みとは異なる観点で設定されるので、相互に異なる
構成となるように形成されることが好ましい。通常、半導体素子のゲート絶縁膜の厚みは
10〜100nm程度であるのに対して、MEMS構造体の犠牲層の厚みは30〜300
nm程度であり、犠牲層の厚みが素子絶縁膜の厚みより厚く設定される場合が多いため、
MEMS領域20において複数の絶縁膜形成段階において形成された絶縁層の積層体によ
って犠牲層が形成されることが望ましい。
【0042】
尚、本発明のMEMS・半導体複合回路及びその製造方法は、上述の図示例にのみ限定
されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ること
は勿論である。例えば、上記実施形態では半導体素子としてMOSトランジスタを例示し
たが、本発明の半導体素子はこれに限定されるものではなく、構成要素として素子絶縁膜
と素子電極層とを含むものであれば、MIS(MOS)ダイオード、キャパシタ、発光ト
ランジスタなどの種々の素子を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施形態のMEMS・半導体複合回路の製造工程を示す概略断面図。
【図2】実施形態のMEMS・半導体複合回路の製造工程を示す概略断面図。
【図3】実施形態のMEMS・半導体複合回路の製造工程を示す概略断面図。
【図4】実施形態のMEMS・半導体複合回路の製造工程を示す概略断面図。
【図5】実施形態のMEMS・半導体複合回路の製造工程を示す概略断面図。
【図6】実施形態のMEMS・半導体複合回路の製造工程を示す概略断面図。
【図7】実施形態のMEMS・半導体複合回路の製造工程を示す概略断面図。
【図8】実施形態のMEMS・半導体複合回路の製造工程を示す概略断面図。
【図9】実施形態のMEMS・半導体複合回路の製造工程を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0044】
10…半導体基板、11…フィールド絶縁膜、12,14…層間絶縁膜、13,15…
配線層、16…表面保護膜、20…MEMS領域、20S…MEMS構造体、21…下地
層、22…下部MEMS構造層、23…犠牲層、24…上部MEMS構造層、30…半導
体領域、30S…半導体素子、31…ゲート絶縁膜、32…ゲート電極層、33…ソース
領域、34…ドレイン領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、該半導体基板の表層部に設けられたMEMS構造体及び半導体素子と、
を有するMEMS・半導体複合回路の製造方法において、
前記MEMS構造体を形成するために用いる犠牲層が形成されると同時に、前記半導体
素子を構成する素子絶縁膜が形成される第1形成工程と、
前記犠牲層に接するように前記MEMS構造体を構成するMEMS構造層が形成される
と同時に、前記素子絶縁膜上に前記半導体素子を構成する素子電極層が形成される第2形
成工程と、
前記第1形成工程及び前記第2形成工程の後に、前記犠牲層が除去されることにより前
記MEMS構造層が動作可能に構成されるリリース工程と、
を具備することを特徴とするMEMS・半導体複合回路の製造方法。
【請求項2】
前記第1形成工程の前に、前記犠牲層の下層に前記MEMS構造体を構成する下部ME
MS構造層を形成する下層形成工程をさらに具備し、
前記第1形成工程では、前記下部MEMS構造層の表面が熱酸化されて前記犠牲層が形
成されるとともに、前記半導体基板の表面が熱酸化されて前記素子絶縁膜が形成されるこ
とを特徴とする請求項1に記載のMEMS・半導体複合回路の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板は単結晶半導体よりなり、前記下部MEMS構造層は、前記半導体基板
を構成する半導体素材と同じ基本素材で構成された多結晶半導体よりなることを特徴とす
る請求項2に記載のMEMS・半導体複合回路の製造方法。
【請求項4】
前記下部MEMS構造層は前記半導体基板の前記素子絶縁膜の形成領域と異なる不純物
濃度を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のMEMS・半導体複合回路の製造
方法。
【請求項5】
前記第1形成工程には二以上の前記素子絶縁膜を形成する段階が設けられ、前記犠牲層
は前記二以上の段階の少なくとも一の前記段階において形成される前記素子絶縁膜と同時
に形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のMEMS・半導体
複合回路の製造方法。
【請求項6】
前記犠牲層は前記二以上の段階のうち複数の段階においてそれぞれ形成される絶縁膜が
積層されることにより形成されることを特徴とする請求項5に記載のMEMS・半導体複
合回路の製造方法。
【請求項7】
前記第2形成工程には、前記MEMS構造層及び前記素子電極層を多結晶シリコンによ
り形成する段階と、前記MEMS構造層及び前記素子電極層に金属を拡散させて金属シリ
サイド化する段階と、が設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記
載のMEMS・半導体複合回路の製造方法。
【請求項8】
前記第2形成工程の後に、前記半導体素子の不純物領域を形成する工程をさらに具備す
ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のMEMS・半導体複合回路の
製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−51005(P2009−51005A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253517(P2008−253517)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【分割の表示】特願2006−292189(P2006−292189)の分割
【原出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】