説明

X線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラム

【課題】自動的に対象物の検査に適した面を抽出できるX線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラムを提供する。
【解決手段】X線検査装置100は、検査対象1にX線を照射するX線源10と、検査対象1を透過したX線を検出するX線検出器23と、X線検出器23を移動するX線検出器駆動部22と、検査対象1を移動する検査対象駆動機構110と、演算部70とを備える。演算部70は、X線源10、X線検出器23などを制御し、検査対象1を複数の方向から撮像し、撮像結果に基づいて、検査対象1の複数の断層画像を生成する。演算部70は、断層画像のうち、高輝度領域の割合が高い断層画像を特定し、特定された断層画像から、検査対象1の形状特性に応じた所定の距離だけ離れた断層画像を用いて、検査対象1を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を用いて検査対象を検査するX線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラムに関する。特に、本発明は、プリント基板と回路部品との間の接合の良否等を検査するのに用いられるX線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実装部品がはんだ付けされるプリント基板(以下、単に「基板」ともいう)における、はんだ付け状態の良否等を検査するのに、X線CT(Computed Tomography)がしばしば用いられている。X線CTでは、対象物を複数の方向からX線により撮像し、X線が吸収された度合い(減衰量)の分布を示す複数枚の透視画像を取得する。さらに、複数枚の透視画像に基づく再構成処理を行ない、検査対象のX線吸収係数の分布の2次元データもしくは3次元データを得る。2次元空間の吸収係数分布を求めた画像は、特に断層画像と呼ばれる。
【0003】
断層画像を用いたはんだ付け状態の検査にあたっては、検査する高さ(検査高さ)を決定することが必要である。ここで、「高さ」とは、断層画像の法線方向(以下、高さ方向)の座標のことを指す。
【0004】
検査高さを決定する従来の方法の1つに、基板上の配線パターンに着目するものがある。例えば、特許文献1(特開2006−292465号公報)に記載の従来技術では、配線パターンのエッジ情報を特徴量として、特徴量が最も大きくなる高さを検査高さとして決定している。
【0005】
図17および図18を参照して、特許文献1に記載のX線検査装置について、より詳しく説明する。図17は、特許文献1に記載のX線検査装置の構成を示す図である。このX線検査装置は、X線検出器13aにより、基板12の複数の透視画像を撮像し、複数の高さについて、基板12の断層画像を再構成する。X線検査装置は、断層画像のうちエッジ強度が最大の値となっている断層画像の座標を検査位置とする。図18に、特許文献1に示されている検査位置の断層画像を示す。図18を参照して、この断層画像には、配線パターンが観察される。なお、図17およびその説明、ならびに図18中の符号は、特許文献1に即したものであり、他の部分の符号とは無関係である。
【0006】
また、特許文献2(特許第3665294号公報)には、対象物の複数の水平スライス画像を取得し、取得した水平スライス画像に基づいて、水平スライス画像に垂直な対象領域を決定し、対象領域の垂直スライス画像を使用して不良を検出する方法が開示されている。特許文献2に記載の方法では、各水平スライス画像における画素値の合計値を基に、垂直スライス画像を合成するために最良の水平スライス画像を特定する。さらに、特許文献2には、合計値を基に、不良を解析するために最良の水平スライス画像を特定することも開示されている。
【特許文献1】特開2006−292465号公報
【特許文献2】特許第3665294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、以下のような問題がある。
(1)この方法では、検査位置の断層画像における配線パターンの位置を使用者が手動で設定する必要がある。この設定時間のために、この方法では、検査時間が長くなってしまう。
【0008】
(2)この方法では、ヒューマンエラーが生じうる。例えば、この方法では、設定者による検査位置のばらつきや、設定者が配線パターンではない位置を設定する誤設定が生じることがある。
【0009】
(3)この方法では、断層面に配線パターンが存在しない基板に対して、検査高さを求めることができない。例えば、この方法を用いて、スルーホールなどの立体配線により配線が実現されている基板を検査することはできない。
【0010】
(4)この方法では、再構成データにおいて配線パターンの輝度(あるいはSN比)が小さい場合、検査高さを求めることができない。したがって、配線が、薄いあるいは細い、もしくは吸収係数の小さな金属で形成されている等の場合には、この方法による検査が行なえないことがある。
【0011】
(5)この方法では、多層基板の検査の際にエラーを生じるおそれがある。基板の複数の層に配線パターンがある場合、どの配線パターンを目印にして検査高さを決定すべきか判断できないためである。
【0012】
(6)この方法では、基板と部品との接合箇所が、配線パターンから離れている場合、正しく検査が行なえないことがある。検査される基板には、熱変性などによる反りが生じ、接合箇所の高さが、断面内の位置によって変化することがあるためである。接合箇所が配線パターンから離れていると、実際に検査したい接合箇所が、求めた検査高さの断層画像に現れないことがある。
【0013】
特許文献2に記載の方法は、検査に用いる水平スライス画像を特定するために、複数の水平スライス画像の各々における画素値の合計値を用いている。しかしながら、この方法は、水平スライス画像に生じるノイズの影響を受けやすい。この方法では、ノイズによって1つまたは複数の水平スライス画像の画素値が正しい値から変化した場合、適切な水平スライス画像を特定できないことがある。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、自動的に検査に適した面を抽出できるX線検査装置、X線検査方法およびX線検査プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの局面に従うと、X線を用いて対象物を検査するX線検査装置であって、対象物は、基板と、基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、部品は、基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を部品内の所定の位置に有し、対象物に向けてX線を出力するX線出力手段と、対象物に複数の方向から入射し、対象物を透過したX線の強度分布を表わす透視画像を撮像するX線検出手段と、複数の方向からのX線の透視画像に基づいて、基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成する再構成手段と、複数の断層画像のうち、高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定する特定手段と、第1の断層画像の位置および部品の形状情報に基づいて第1の断層画像から所定の距離だけ離れた位置を対象物の検査位置とする検査位置決定手段とを備える。
【0016】
本発明の他の局面に従うと、X線を用いて対象物を検査するX線検査装置であって、対象物は、基板と、基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、部品は、基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を部品内の所定の位置に有し、対象物に向けてX線を出力するX線出力手段と、対象物に複数の方向から入射し、対象物を透過したX線の強度分布を表わす透視画像を撮像するX線検出手段と、複数の方向からのX線の透視画像に基づいて、基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成する再構成手段と、複数の断層画像のうち、高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定する特定手段と、第1の断層画像の位置および部品の形状情報に基づいて第1の断層画像から所定の距離だけ離れた第2の断層画像を取得し、第2の断層画像を用いて対象物の良否を判定する検査手段とを備える。
【0017】
好ましくは、高吸収部材は、部品と基板とを接続する部材であり、第2の断層画像は、部品と基板との接続部に相当する。
【0018】
さらに好ましくは、高吸収部材は、はんだである。
さらに好ましくは、部品は、ボールグリッドアレイである。
【0019】
好ましくは、特定手段は、各断層画像の輝度値の分散を求め、最も大きな分散を有する断層画像の位置を特定する。
【0020】
好ましくは、各断層画像から、複数の部分領域のそれぞれに含まれる複数の部分画像を取得する分割手段をさらに備え、特定手段は、各部分領域について、各断層画像の部分画像のうち、割合が高い第1の部分画像の位置を抽出し、検査位置決定手段は、各部分領域について、第1の部分画像の位置および形状情報に基づいて、第1の部分画像から所定の距離だけ離れた位置を対象物の検査位置とする。
【0021】
好ましくは、各断層画像から、複数の部分領域のそれぞれに含まれる複数の部分画像を取得する分割手段をさらに備え、特定手段は、各部分領域について、各断層画像の部分画像のうち、割合が高い第1の部分画像の位置を抽出し、検査手段は、各部分領域について、第1の部分画像の位置および形状情報に基づいて、第1の部分画像から所定の距離だけ離れた第2の部分画像を取得し、第2の部分画像を用いて対象物の良否を判定する。
【0022】
さらに好ましくは、分割手段は、抽出された断層画像の中から所定の閾値を超える輝度を有する明画素が連続する明領域を抽出し、明領域を所定の個数含む領域を部分領域に設定する。
【0023】
好ましくは、対象物を基準面に沿って移動する移動機構をさらに備える。
さらに好ましくは、移動機構は、基板を挟むレールを含む。
【0024】
本発明のさらに他の局面に従うと、X線を用いて対象物を検査するX線検査方法であって、対象物は、基板と、基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、部品は、基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を部品内の所定の位置に有し、対象物に向けてX線を出力するステップと、対象物に複数の方向から入射し、対象物を透過したX線の強度分布を表わす透視画像を撮像するステップと、複数の方向からのX線の透視画像に基づいて、基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成するステップと、複数の断層画像のうち、高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定するステップと、第1の断層画像の位置および部品の形状情報に基づいて第1の断層画像から所定の距離だけ離れた位置を対象物の検査位置として決定するステップとを備える。
【0025】
本発明のさらに他の局面に従うと、X線を用いて対象物を検査するX線検査方法であって、対象物は、基板と、基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、部品は、基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を部品内の所定の位置に有し、対象物に向けてX線を出力するステップと、対象物に複数の方向から入射し、対象物を透過したX線の強度分布を表わす透視画像を撮像するステップと、複数の方向からのX線の透視画像に基づいて、基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成するステップと、複数の断層画像のうち、高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定するステップと、第1の断層画像の位置および部品の形状情報に基づいて第1の断層画像から所定の距離だけ離れた第2の断層画像を取得するステップと、第2の断層画像を用いて対象物の良否を判定するステップとを備える。
【0026】
本発明のさらに他の局面に従うと、X線源とX線検出器と演算部とを有するX線検査装置に、X線を用いた対象物の検査を実行させるX線検査プログラムであって、対象物は、基板と、基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、部品は、基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を部品内の所定の位置に有し、演算部が、X線源が対象物に向けてX線を出力するように、X線源を制御するステップと、演算部が、X線検出器が、対象物に複数の方向から入射し、対象物を透過したX線の強度分布を表わす透視画像を撮像するように、X線検出器を制御するステップと、演算部が、複数の方向からのX線の透視画像に基づいて、基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成するステップと、演算部が、複数の断層画像のうち、高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定するステップと、演算部が、第1の断層画像の位置および部品の形状情報に基づいて第1の断層画像から所定の距離だけ離れた位置を対象物の検査位置として決定するステップとを備える。
【0027】
本発明のさらに他の局面に従うと、X線源とX線検出器と演算部とを有するX線検査装置に、X線を用いた対象物の検査を実行させるX線検査プログラムであって、対象物は、基板と、基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、部品は、基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を部品内の所定の位置に有し、演算部が、X線源が対象物に向けてX線を出力するように、X線源を制御するステップと、演算部が、X線検出器が、対象物に複数の方向から入射し、対象物を透過したX線の強度分布を表わす透視画像を撮像するように、X線検出器を制御するステップと、演算部が、複数の方向からのX線の透視画像に基づいて、基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成するステップと、演算部が、複数の断層画像のうち、高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定するステップと、演算部が、第1の断層画像の位置および部品の形状情報に基づいて第1の断層画像から所定の距離だけ離れた第2の断層画像を取得するステップと、演算部が、第2の断層画像を用いて対象物の良否を判定するステップとを備える。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、検査対象に含まれる基板の配置面に平行な複数の断層画像のうち、X線が多く吸収された部分の割合が高い断層画像の位置を抽出する。そして、抽出した断層画像の位置および基板上に配置される部品の形状特性に基づいて、抽出した断層画像から所定の距離だけ離れた断層画像を用いて基板を検査する。その結果、本発明によれば、自動的に検査に適した面を用いて基板を検査できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部分には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0030】
[第1の実施の形態]
(構成の概略)
図1を参照して、第1の実施の形態に係るX線検査装置100の構成について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るX線検査装置100の概略ブロック図である。
【0031】
X線検査装置100は、X線18を出力するX線源10と、X線検出器23と、画像取得制御機構30と、検査対象1の位置を移動する検査対象駆動機構110とを備える。さらに、X線検査装置100は、入力部40と、出力部50と、X線源制御機構60と、検査対象位置制御機構120と、演算部70と、記憶部90とを備える。
【0032】
検査対象1は、X線源10とX線検出器23との間に配置される。本実施においては、検査対象1は、部品が実装された回路基板であるとする。なお、図1では、下から順にX線源10、検査対象1、X線検出器23が設置されているが、X線源の保守性の観点より、下から順に、X線検出器23、検査対象1、X線源10との並びでこれらを配置してもよい。
【0033】
X線源10は、X線源制御機構60によって制御され、検査対象1に対して、X線18を照射する。本実施の形態では、検査対象1は、回路部品を実装した基板であるものとする。
【0034】
検査対象1は、検査対象駆動機構110により移動される。検査対象駆動機構110の具体的な構成については、後述する。検査対象位置制御機構120は、演算部70からの指示に基づいて、検査対象駆動機構110の動作を制御する。
【0035】
X線検出器23は、X線源10から出力され、検査対象1を透過したX線を検出して画像化する2次元X線検出器である。X線検出器23としては、I.I.(Image Intensifier)管や、FPD(フラットパネルディテクタ)を用いることができる。設置スペースの観点からは、X線検出器23には、FPDを用いることが望ましい。また、インライン検査で使うことができるようにX線検出器23は、高感度であることが望ましく、CdTeを使った直接変換方式のFPDであることが特に望ましい。
【0036】
画像取得制御機構30は、検出器駆動制御機構32と、画像データ取得部34を含む。検出器駆動制御機構32は、演算部70からの指示に基づき、X線検出器駆動部22の動作を制御し、X線検出器23を移動する。画像データ取得部34は、演算部70から指定されたX線検出器23の画像データを取得する。
【0037】
入力部40は、ユーザからの指示入力等を受け付けるための操作入力機器である。出力部50は、測定結果等を外部に出力する装置である。本実施の形態では、出力部50は、演算部70で構成されたX線画像等を表示するためのディスプレイである。
【0038】
すなわち、ユーザは、入力部40を介して様々な入力を実行することができ、演算部70の処理によって得られる種々の演算結果が出力部50に表示される。出力部50に表示される画像は、ユーザによる目視の良否判定のために出力されてもよいし、あるいは、後で説明する良否判定部78の良否判定結果として出力されてもよい。
【0039】
X線源制御機構60は、電子ビームの出力を制御する電子ビーム制御部62を含む。電子ビーム制御部62は、演算部70から、X線焦点位置、X線エネルギー(管電圧、管電流)の指定をうける。指定されるX線エネルギーは、検査対象の構成によって異なる。
【0040】
演算部70は、記憶部90に格納されたプログラム96を実行して各部を制御し、また、所定の演算処理を実施する。演算部70は、X線源制御部72と、画像取得制御部74と、再構成部76と、良否判定部78と、検査対象位置制御部80と、X線焦点位置計算部82と、撮像条件設定部84とを含む。
【0041】
X線源制御部72は、X線焦点位置、X線エネルギーを決定し、X線源制御機構60に指令を送る。
【0042】
画像取得制御部74は、X線検出器23が画像を取得するように、画像取得制御機構30に指令を送る。また、画像取得制御部74は、画像取得制御機構30から、画像データを取得する。
【0043】
再構成部76は、画像取得制御部74により取得された複数の画像データから3次元データを再構成する。
【0044】
良否判定部78は、部品が実装される基板表面の高さ(基板高さ)を求め、基板高さの断層画像をもとに検査対象の良否を判定する。なお、良否判定を行なうアルゴリズム、あるいは、アルゴリズムへの入力情報は、検査対象によって異なるため、良否判定部78は、これらを撮像条件情報94から入手する。
【0045】
検査対象位置制御部80は、検査対象位置制御機構120を介し、検査対象駆動機構110を制御する。
【0046】
X線焦点位置計算部82は、検査対象1のある検査エリアを検査する際に、その検査エリアに対するX線焦点位置や照射角などを計算する。
【0047】
撮像条件設定部84は、検査対象1に応じて、X線源10からX線を出力する際の条件(たとえば、X線源に対する印加電圧、撮像時間等)を設定する。
【0048】
記憶部90は、X線焦点位置情報92と、撮像条件情報94と、上述した演算部70が実行する各機能を実現するためのプログラム96と、X線検出器23が撮像した画像データ98とを含む。X線焦点位置情報92には、X線焦点位置計算部82によって計算されたX線焦点位置が含まれる。撮像条件情報94は、撮像条件設定部84によって設定された撮像条件や、良否判定を行なうアルゴリズムに関する情報を含む。
【0049】
なお、記憶部90は、データを蓄積することができるものであればよい。記憶部90は、例えば、RAM(Random Access Memory)やEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read−Only Memory)やHDD(Hard Disc Drive)等の記憶装置により構成される。
【0050】
(具体的構成)
第1の実施の形態に係るX線検査装置100の具体的構成について、図2を参照して説明する。図2は、第1の実施の形態に係るX線検査装置100の構成を説明するための図である。なお、図2において、図1と同一部分には、同一符号を付している。また、図2では、図1に示した部分のうち、X線焦点位置の制御、X線検出器位置の制御、検査対象位置の制御等に直接関係し、説明に必要な部分を抜き出して記載している。
【0051】
X線源10は、本実施の形態では、X線を発生する位置(X線焦点位置)を一方向に沿う可能な、走査型X線源である。X線源10は、X線源制御機構60を通した演算部70からの命令に従って、X線を発生させる。
【0052】
なお、図2において、図1と同一部分には、同一符号を付している。また、図2では、図1に示した部分のうち、X線焦点位置の制御、X線検出器位置の制御、検査対象位置の制御等に直接関係し、説明に必要な部分を抜き出して記載している。
【0053】
X線源10は、密閉型のX線源であり、X線検査装置100の上部もしくは下部に据え付けられている。なお、X線源10のターゲットは透過型であってもよいし、反射型であってもよい。X線源10は、稼動部(図示しない)に取り付けられており、垂直方向に移動可能であるものとする。
【0054】
X線検出器23は、検査対象1(基板)を挟むようにX線源10と対向した位置に配置される。X線検出器23は、X線源10から照射されたX線を画像化する。また、X線検出器23はX線検出器駆動部22に取り付けられている。X線検出器駆動部22は、3次元ステージであって、X線検出器23を、水平方向および垂直方向に移動可能である。
【0055】
検査対象駆動機構110は、X線源10とX線検出器23との間に設置される。検査対象駆動機構110は、ステージ111a,111b、および、ステージ111a,111bに付属されている基板レール112a,112bを含む。ステージ111a,111bは、検査対象1を水平方向に平行移動可能である。基板レール112a,112bは、各々、検査対象1を上下からはさみこむことで基板を固定している。
【0056】
図2を参照して、X線検査装置100は、変位計114および光学カメラ116(これらは、図1では示していなかった)を備える。変位計114は、基板までの距離を測定する。したがって、変位計114は、後で詳述する基板の反りを計測することが可能である。光学カメラ116は可視光により基板を撮影する。光学カメラ116は、検査する位置の設定のためのフィデューシャルマークの撮影に用いられる。変位計114および光学カメラ116は、X線による撮像時にX線に被爆しないように退避機構(図示していない)により、X線が照射されない領域に退避される。
【0057】
以上の構成により、X線検査装置100は、線源−基板間距離と線源−ディテクタ間の距離の比(拡大率)を変更することができる。その結果、X線検査装置100は、X線検出器23で撮像される検査対象1の大きさ(したがって、分解能)を変更できる。
【0058】
また、X線検査装置100は、様々な方向から基板を撮像できるように、基板とX線検出器23とを稼動できる。本実施の形態では、この様々な方向からの撮像結果を基に、CT(Computed Tomography)と呼ばれる3次元データ生成手法を用いて、対象物1の3次元データを生成する。
【0059】
また、本実施の形態では、X線検査装置100は、インライン検査に用いられる。インライン検査のために、検査対象駆動機構110は、基板を搬入出する機構をさらに含む。ただし、このような基板の搬入出機構は、図2には示していない。基板の搬入出機構としては、基板レール上に配置したベルトコンベアが用いられるのが一般的である。あるいは搬入出機構としてプッシャと呼ばれる棒を用いてもよい。プッシャにより基板をレール上で滑らせることにより、基板を移動させることができる。
【0060】
ここで、図3を参照して、検査対象1の配置について詳しく説明する。図3は、検査対象1およびその周辺の側面図である。図3を参照して、検査対象1に含まれるプリント基板は、一対のレール112により固定されている。各レール112は、検査対象1の左端または右端を上下から挟み、プリント基板を固定する。
【0061】
レール112は、検査対象位置制御部80からの命令によって検査対象を水平(X−Y)および垂直(Z)方向に移動可能である。本実施の形態では、検査対象駆動機構110は、検査対象1を、ほぼ水平面に平行な、つまり、法線方向が実質的にZ方向である搬送面に沿って搬送するものとする。ここで、「法線方向が実質的にZ方向である」とは、搬送面が検査に支障のない範囲で(例えば、0〜5度)水平面から傾いていてもよいことを意味する。
【0062】
図3に示すようにプリント基板は、反っている。プリント基板への部品の実装には、リフローといったような加熱処理工程が含まれるため、一般に、熱によりプリント基板が変形し、反りが生じる。通常の外観検査であれば、バックアップピンと呼ばれる支持棒により基板の反りを軽減できる。しかしながら、X線検査では、バックアップピンが画像に写りこんでしまうため、バックアップピンを使用できない。図に示した検査対象駆動機構110は、検査対象1の上下面を覆わない。そのため、X線は、検査対象1を透過することができる。ただし、検査対象駆動機構110の構成は、上述のものに限られない。例えば、X線を透過するX−Yステージを検査対象駆動機構110として用いてもよい。しかしながら、多くの検査対象1を検査するためには、図示した検査対象駆動機構110が好適である。
【0063】
演算部70としては、一般的な中央演算装置(CPU)を用いることができる。記憶部90は、主記憶部90aと補助記憶部90bとを含む。主記憶部90aとしてはメモリを、補助記憶部90bとしてはHDD(ハードディスクドライブ)を、例えば用いることができる。つまり、演算部70および記憶部90としては、一般的な計算機を使用可能である。
【0064】
(処理の流れ)
図4は、第1の実施の形態に係るX線検査の流れをフローチャート形式で示す図である。図4を参照して、第1の実施の形態に係るX線検査全体の流れについて説明する。
【0065】
図4を参照して、まず、処理が開始されると(ステップS401)、X線検査装置100は、検査対象駆動機構110により、基板をX線検査装置100内部の規定位置に搬入する(ステップS403)。規定位置は、通常、X線検査装置100の中央、すなわち、X線照射範囲の中央に設定されていることが好ましい。ただし、規定位置は、X線検出器23が基板のX線透視画像を撮像可能な位置であれば構わない。
【0066】
ステップS405において、X線検査装置100は、光学カメラ116により、フィデューシャルマークを撮影する。また、X線検査装置100は、フィデューシャルマークの位置に基づいて、必要があれば、基板位置を補正する。具体的には、X線検査装置100は、搬入時と同様に基板位置を移動させる。これらの処理により、X線検査装置100は、基板搬入時に生じた基板位置のずれや基板の傾きを認識し、ずれおよび傾きを補正することが可能である。
【0067】
ステップS407において、X線検査装置100は、変位計114を用いて、再構成領域(以下、視野ともいう)中の基板の高さを測定する。X線検査装置100は、計測された基板の高さを、主記憶部90aに保存しておく。保存された基板の高さは、後述するCT撮像時に使用される。
【0068】
一度の撮像では検査対象1全体を撮像できないなど、検査対象1が複数の視野を含む場合は、X線検査装置100は、CT撮像を行なう前に、全ての視野について、基板高さを計測しておく。これは、CT撮像時に変位計が被爆しないように退避させる必要があることによる。このように基板高さを予め全て計測する方が、各視野のCT撮像の都度、基板高さを計測するのに比べて、全体の検査時間を短縮できる。
【0069】
ステップS409において、X線検査装置100は、検査対象1内で、1つの視野を複数の方向から撮像する。本実施の形態では、X線検査装置100は、基板とX線検出器23とを水平方向に円軌道を描くように移動させて、視野を複数の方向から撮像する。撮像時の基板およびX線検出器23の位置は、照射角度θR、線源−基板間距離(FOD)、線源−検出器間距離(FID)により決定される。基板およびX線検出器23は、X線検出器23の中心に視野の中心が撮像されるように配置される。なお、基板およびX線検出器23の軌道は円でなくてもよく、矩形や直線等であってもよい。
【0070】
撮像枚数は、使用者により設定可能であるものとする。使用者は、求められる再構成データの精度に基づいて撮像枚数を決定することが好ましい。撮像枚数は、通常は、4〜256枚程度である。しかしながら、撮像枚数はこれに限られるものではない。例えば、X線検査装置100は、256枚を超える枚数の画像を撮像してももちろん構わない。
【0071】
ステップS411において、X線検査装置100は、複数方向の撮像画像から再構成データを生成する。再構成処理は、様々な方法が提案されており、たとえば、Feldkamp法を用いることができる。
【0072】
ステップS413において、X線検査装置100は、基板高さ、すなわち、部品が配置されている基板表面の高さを抽出する。ステップS413で行なわれる処理の詳細については、後述する。
【0073】
ステップS415において、X線検査装置100は、基板高さから高さ方向に所定の距離だけ離れた高さの断層画像を、検査に用いる検査画像として取得する。ここで、検査画像の高さと基板高さとの間の距離は、使用者により設定されるものとする。なお、この距離は、検査対象1の設計データおよび検査方法に応じて設定されることが好ましい。本実施の形態では、部品が配置されている基板の表面から、部品が配置されている側に少し離れた高さの断層画像が検査画像に設定される。
【0074】
ステップS417において、X線検査装置100は、検査画像を用いて、視野の良否判定を行なう。すなわち、X線検査装置100は、加熱後のはんだのぬれ性、はんだのボイドおよびブリッジの有無、異物の有無などを検査する。様々な良否判定手法が周知であり、X線検査装置100は、検査項目に適した良否判定手法を用いればよい。
【0075】
本実施の形態では、良否判定部78は、2値化画像内のはんだ面積に基づいて、実装基板の良否を判定する。以下、図5を参照して、本実施の形態における基板の良否判定について説明する。図5は、2値化画像内のはんだ面積に基づく良否判定について説明するための図である。
【0076】
図5Aは、電子部品が実装された基板の斜視図である。基板501上に、第1の部品502と、第2の部品503とが実装されている。第2の部品503は、BGA(Ball Grid Array)504等により、基板501に物理的および電気的に接続されている。
【0077】
図5Bは、基板501と第2の部品503との接続箇所を基板501の面に垂直な断面で切った断面図である。BGA504は、第2の部品503と基板501の表面層505とを接続する。BGA504は、加熱され、加熱後の状態506に変形する。ただし、加熱後の状態506にボイド507が生じる場合がある。また、複数のはんだボールが結合しブリッジ508を形成する場合もある。
【0078】
X線検査装置100は、はんだボールを含むと期待される領域の3次元データを生成し、3次元データを切り出して断層画像を作成する。X線検査装置100は、作成した断層画像を2値化し、画像をはんだとそれ以外に分離した2値化画像を取得する。この2値化処理には、判別分析法等の一般的な2値化処理を用いることが可能である。検査装置は、2値化画像から白(もしくは1)の部分のラベリングを行ない、はんだを区別したラベリング画像を取得する。このラベリング処理には、ラスタスキャンによって連結の有無を判定するような一般的なラベリング処理を用いることが可能である。
【0079】
基板501の面に平行な断面の一例を、図5Cに示す。図5Cは、図5Bにおいて破線で示した断面で切った接続箇所の断面図である。図5Cでは、はんだを白、はんだ以外を斜線で示している。ここでは、正常、ボイド、ブリッジの3種類の状態を示した。図5Cを参照して、ボイド507がある場合、はんだ内にはんだがない部分が生じる。ブリッジ508がある場合、正常時に比べ広範な領域にはんだが観察される。
【0080】
検査装置は、ラベリング画像からそれぞれのはんだの面積(白もしくは1の画素の個数)を計数し、はんだの面積を求める。検査装置は、面積が一定の範囲内であれば良品、それ以外であれば不良とすることで、はんだ接合面の良否を判定する。この一定の範囲の閾値は、予めユーザにより設定されることが一般的である。
【0081】
図4に戻って、ステップS418において、X線検査装置100は、すべての視野に対して良否判定を行なったかどうか判断する。良否判定を行なっていない視野がある場合(ステップS418においてNO)、X線検査装置100は、CT撮像(ステップS409)からの処理を繰り返す。一方、すべての視野に対して良否判定が行なわれた場合(ステップS418においてYES)、処理をステップS419に進める。
【0082】
ステップS419において、X線検査装置100は、基板をX線検査装置100から搬出する。具体的には、X線検査装置100は、検査対象駆動機構110により、基板をX線検査装置100の外に移動する。
【0083】
以上で、X線検査装置100は、1つの検査対象1についての検査を終了する(ステップS421)。X線検査装置100は、複数の検査対象1についてのインライン検査を実行する場合には、ここまで説明したステップS401からステップS421までの一連の処理を繰り返す。
【0084】
(基板高さ抽出)
ここからは、図4で触れた基板高さ抽出について説明する。X線検査装置100は、まず、基板上に実装される部品の「高さ方向」の座標を求め、部品からの相対的な位置により基板の高さ方向の位置を求める。ここで、「高さ方向」は、基板が搬送および配置される面(基準面)の法線方向として定義される。本実施の形態では、基板は、水平面に沿って搬送および配置されるので、基準面は水平面であり、高さ方向は、鉛直方向である。
【0085】
本実施の形態では、X線検査装置100は、部品の高さを、高さの異なる複数の断層画像について、輝度値の分散を計算し、求めた分散を高さごとに比較することで求めることができる。これは、次のような理由による。
【0086】
輝度値は、撮像された物体がX線を吸収する度合い(吸収係数)により変化する。ところで、基板表面に実装される部品は、部品以外の物体(基板や空気)に比べて、吸収係数が高い部材(BGAの場合、はんだ)を含む。そのため、部品が存在する領域の輝度値は、部品以外の物体が存在する輝度値に比べて、高くなる。したがって、部品の存在する高さの断層画像では輝度値のコントラストが大きくなり、輝度値の分散が大きくなる。
【0087】
さらに、いずれの検査対象についても、部品は基板に対してほぼ一定の高さに実装されている。したがって、基板表面からある高さだけ離れた断面の断層画像では、輝度値(画素値)のコントラストが大きく、輝度値の分散は大きくなると考えられる。したがって、輝度値の分散が大きな断面から基板の高さを求めることができる。
【0088】
本実施の形態では、検査対象1は、基板と、基板に実装されるBGA(Ball Grid Array)であるとする。BGAは、回路部品と、回路部品を基板に接合する複数のはんだボールを含む。X線検査装置100は、分散が最大となる高さと、BGAのはんだボールの高さとから基板高さを求める。ここで、はんだボールの高さとは、基板表面からはんだボールが水平方向に最も膨らむ位置までの距離、すなわち、はんだボールの半径である。
【0089】
はんだボールと基板との相対的な高さ方向の距離は、同一の検査対象1の同一領域については一定である。そのため、はんだボールと基板との間の距離Hは、例えば、ユーザがティーチングモード時に一度設定すればよい。検査モード時に距離Hを再設定する必要はない。なお、X線検査装置100が、検査対象1の設計値に基づいて、距離Hを設定してもよい。
【0090】
ところが、検査時に基板およびはんだボールが位置する高さ方向についての座標は、検査のたびに異なる。すでに説明したように、基板には反りがある。基板の反り量は、基板を固定するレールの固定位置、基板の熱変形の度合い等の要素により検査対象となる基板ごとにばらつきが生じる。そのため、インライン検査前のティーチングモードにあたって変位計114により予め基板の反り量を測っていたとしても、測定された反り量は、その後で検査される基板の反り量とは異なる。よって、検査前に予め計測した基板の反り量を、検査モードにて使用することはできない。そこで、X線検査装置100は、絶対的な基板高さを求めるにあたり、検査のたびに再構成データからはんだボールの高さを求めて、絶対的な基板高さを算出する。
【0091】
以下、図6を参照して、基板高さ位置取得処理について説明する。図6は、基板高さ位置取得にあたり、X線検査装置100が行なう処理の流れをフローチャート形式で示す図である。
【0092】
X線検査装置100は、基板高さ位置取得処理を開始すると(ステップS601)、まず、対象物の水平断面の高さを指定するパラメータZに0を代入する(ステップS603)。再構成処理により生成される3次元の再構成データはボクセルと呼ばれる立方体が複数並ぶデータ構造を有しており、再構成データの最も上(鉛直上)の層の高さが、Z=0の断面である。再構成データ中のZ番目の層が、Z=Zの断層画像に対応する。なお、パラメータZは、実際の高さを表しているわけではないが、以下では、簡単のため、パラメータZで指定される実際の高さを、高さZと呼ぶ。
【0093】
ステップS605において、X線検査装置100は、再構成データ内から、高さZの2次元データ(断層画像)を取得する。
【0094】
ステップS607において、X線検査装置100は、ステップS603で取得された高さZの断層画像の分散V(Z)を算出する。ここで、断層画像の分散は下記の式(*)で計算される。
【0095】
V(Z)=ΣΣ(Ixy−Iavg) …(*)
ただし、Ixyは、断層画像内の画素p(x,y)の輝度値、Iavgは断層画像内の全画素の平均値を表す。
【0096】
さらに、ステップS607において、X線検査装置100は、計算した分散V(Z)を主記憶部90aに保存しておく。保存された分散V(Z)は、各断層画像の分散を比較する際に用いられる。
【0097】
ステップS609において、X線検査装置100は、全ての高さの断層画像について、分散を求めたかどうか判断する。具体的には、X線検査装置100は、Zが、再構成データ内の断層数未満かどうかを判断する。Zが断層数未満であるとき(ステップS609においてYES)、X線検査装置100は、ステップS611においてZをインクリメントしたあと、ステップS605からの処理を繰り返す。一方、Zが断層数に達しているとき(ステップS609においてNO)、X線検査装置100は、ステップS613の処理に進む。
【0098】
ステップS613において、X線検査装置100は、各断層画像の分散V(Z)を比較し、分散V(Z)が最大となるZを求める。
【0099】
ステップS615において、X線検査装置100は、はんだボール高さHを取得する。ここで、はんだボール高さHは、すでに説明したように、予め設定されている。高さHの値は、はんだ高さの設計値よりX線検査装置100により自動的に設定されてもよい。また、ティーチングモード時にユーザが高さHの値を設定してもよい。
【0100】
ステップS617において、X線検査装置100は、ステップS613で求めたZおよびステップS615で取得したHに基づいて、基板高さを求める。基板の上側に部品が実装されている場合は、はんだボールよりも下側に基板があるため、X線検査装置100は、Z−Hを基板高さとして求める。一方、基板の下側に部品が実装されている場合は、X線検査装置100は、Z+Hを基板高さとして求める。なお、部品が基板の上側および下側のいずれに実装されているかについての情報は、例えば、ティーチングモード時にユーザが設定しておくものとする。
【0101】
なお、図6では、X線検査装置100が、鉛直上の断層データから鉛直下の断層データに向けて順に、各断層データでの分散を求める例を示しているが、分散を求める手順はこれに限られるわけではない。例えば、X線検査装置100は、鉛直下の断層データから鉛直上の断層データに向けて順に分散を求めてもよい。
【0102】
また、上の説明では、X線検査装置100は、再構成した3次元データから複数の断層データを生成しているものの、X線検査装置100は、ボール高さを必要な精度で決定できる間隔で、複数の断層データを生成することができればよい。X線検査装置100は、視野内の全てのボクセルのデータを再構成しなくてもよい。
【0103】
(実験結果)
出願人は、BGAが実装されたプリント基板について、上記のX線検査方法により基板高さを求める実験を行なった。その実験結果を図7から図9に記す。図7は、各断層高さにおける分散V(Z)の値を示す図である。図8は、分散が最も大きくなる断層高さ(図7における断層高さ(A))での断層画像を示す図である。図9は、分散が最も大きくなる断層高さから20層下側の(図8における断層高さ(B)での)断層画像を示す図である。
【0104】
図8を図9と比較して参照すると、分散が最も大きくなる断層画像では、はんだボールに対応する領域(輝度値が高い領域)が大きい。また、図9を参照すると、高さ(B)の断層画像では、プリント基板の配線が観察されることが分かる。すなわち、この断層画像は、基板高さの断層画像であることが分かる。
【0105】
また、図7を参照して、分散は、断層高さがボールの中心に近づくにしたがって徐々に大きくなる傾向を示している。これは、分散が、ノイズに対する耐性が強いことを意味する。例えば、ある高さの断層画像でノイズが大きく分散が極端に大きくなるような場合でも、X線検査装置100は、複数の高さでの分散の平均をとることで、ボール高さを精度よく検出できる。このように、X線検査装置100は、安定的に、ボールの中心を求めることができるため、安定して基板高さを求めることができる。
【0106】
(変形例)
以上の説明では、ボール高さを求めるために、断層画像内の分散を利用したが、X線検査装置100は、高輝度領域の割合が高い断層を特定できればよい。この特定は、他の方法で実現されてもよい。
【0107】
(1) はんだボールの直径
良否判定部78は、断層画像において、はんだボールに対応するはんだ領域(2値化したときの、白または値が1の領域)の直径が最大となる高さを、ボール高さとしてもよい。これは、はんだボールが球形をしており、中心付近の直径が最大となる性質を利用したものである。
【0108】
(2) はんだボールの面積
良否判定部78は、はんだ領域の面積が最大となる高さを、ボール高さとしてもよい。この設定方法は、はんだボールの直径をボール高さとみなす方法と同様の考え方に基づいている。しかしながら、この方法では、はんだボールの断層が正円でないことによる誤認識を回避することができる。また、この方法には、面積は長さの2乗になるため、長さで比較するよりもノイズの影響を受けにくいという利点がある。
【0109】
以上のように、本実施の形態に係るX線検査装置100によれば、ティーチングあるいは検査時に自動的に基板高さを抽出することができる。そのため、X線検査装置100は、配線パターンを用いて基板高さを求める従来の技術に比べて、次のような有利な効果を奏する。
(1)使用者の負担軽減。
(2)ヒューマンエラーの防止。
(3)平面上に配線パターンがない基板の基板高さを抽出できる。
(4)配線パターンのSN比が小さい基板の基板高さを正確に抽出できる。
(5)多層基板の基板高さを高精度に抽出できる。
【0110】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係るX線検査装置100は、再構成領域(視野)を水平方向について複数の部分領域に分割し、各部分領域について基板高さの算出および良否判定を行なう。再構成領域を分割する理由は、2つあり、基板反りへの対応と、良否判定の高速化である。
【0111】
基板反りへの対応について説明する。すでに説明したように、プリント基板のX線検査では基板に反りが発生する。基板の反りがある場合、基板全体の高さが変化するとともに、基板面内の場所によって基板高さに差が生じる。したがって、部品(実装パッケージ)の全域にわたって、基板の表面から一定の距離だけ離れた接合面を用いて検査したい場合には、検査領域の水平座標によって検査する高さを変更する必要がある。
【0112】
図10および図11を参照して、このことについてより詳しく説明する。図10は、反りによって断層面に対して傾いたプリント基板およびBGAを模式的に示した図である。図11は、図10に示した断層面での断層画像の輝度分布を模式的に示した図である。図11では、輝度が所定の閾値より高く、はんだに対応すると判断される画素領域(明領域)を斜線で示している。
【0113】
図10に示すように基板が反っている場合、一つの断層画像を用いて、接合を正しく検査することができない。断層画像内の各位置での明領域は、基板表面からの高さが異なる面でスライスされたはんだに対応するためである。例えば、図11の左上の明領域は、基板高さ付近の高さでのボールの断面に対応する。一方、右上の明領域、ボール中心高さでのボールの断面に対応する。よって、再構成データ全体にわたり、同一の高さの断面を用いて検査しようとすると、各接合部に対し適切な高さで検査を行なうことが困難である。
【0114】
そこで、本実施の形態に係るX線検査装置100は、再構成データを水平方向について複数の検査領域に分割し、検査領域ごとに基板高さおよび検査高さを求めて、検査する。したがって、本実施の形態に係るX線検査装置100は、基板と部品との接合箇所全てにわたり、適切な検査を行なうことができる。
【0115】
続いて、良否判定の高速化について説明する。視野を分割しない場合、X線検査装置は、再構成データの断層画像全体について、良否判定に関わる処理(基板高さ抽出、良否判定等)を行なう必要がある。しかし、断層画像内には、BGAのはんだボールの配列によっては、良否判定をする必要のない領域の画像まで含まれることがある。視野を分割しない場合、X線検査装置は、このような領域に対する不必要な判定を行っているため、判定時間が長くなる。
【0116】
したがって、視野の分割により検査時間を短縮できる。例えば、断層画像全体の面積に対し、はんだボールの占める面積(厳密には、はんだボールを含むように設定されるこの場合は、矩形の視野を想定)の割合が50%の場合、視野を分割した場合の良否判定時間は、断層画像全体を検査する場合に比べ、およそ2分の1になる。検査時間をできるだけ短くしたいインライン検査において、良否判定時間が2分の1になることは大変有益である。
【0117】
本実施の形態に係るX線検査装置100は、断面画像を、各々がはんだボールに対応する領域を少なくとも1つ含む領域に分割し、分割後の領域ごとに基板高さを求め、求めた各検査高さに基づいて良否判定を行なう。したがって、X線検査装置100は、検査時間を短縮することができる。
【0118】
以下、本実施の形態に係るX線検査装置100について詳しく説明する。X線検査装置100の構成は、概ね第1の実施の形態のものであるため、その説明は繰り返さない。ただし、X線検査の際に行なう処理が、第1の実施の形態での処理と異なる。以下、第2の実施の形態に係るX線検査装置100が行なう処理について説明する。
【0119】
(処理の流れ)
図12を参照して、第2の実施の形態に係るX線検査全体の流れについて説明する。図12は、第2の実施の形態に係るX線検査の流れをフローチャート形式で示す図である。
【0120】
検査の開始(ステップS1201)からデータ再構成(ステップS1211)までの処理は、それぞれ、図4のステップS401からステップS411までの処理と同様であるため、これらの説明は繰り返さない。
【0121】
ステップS1213において、X線検査装置100は、視野を分割する。すなわち、X線検査装置100は、断層画像内に複数の部分領域を設定する。ステップS1213の詳細については、後述する。
【0122】
ステップS1215において、X線検査装置100は、各部分領域について、基板高さ、すなわち、部品が配置されている基板表面の高さを抽出する。X線検査装置100は、各部分領域について、各断面の部分領域内の断面画像(部分画像とよぶ)での輝度値の分散を求め、分散の最も高い部分画像の高さから所定の距離離れた高さを、部分領域での基板表面の高さとして求める。各部分領域に対してX線検査装置100が行なう処理の詳細は、図6を参照して説明したものと同様の処理であり、その説明は繰り返さない。
【0123】
ステップS1217において、X線検査装置100は、各部分領域について、基板高さから高さ方向に所定の距離だけ離れた高さの断層画像を、検査画像として取得する。
【0124】
ステップS1219において、X線検査装置100は、検査画像を用いて、ステップS417と同様の視野の良否判定を行なう。
【0125】
ステップS1220において、X線検査装置100は、すべての視野に対して良否判定を行なったかどうか判断する。良否判定を行なっていない視野がある場合(ステップS1220においてNO)、X線検査装置100は、CT撮像(ステップS1209)からの処理を繰り返す。一方、すべての視野に対して良否判定が行なわれた場合(ステップS1220においてYES)、処理をステップS1221に進める。
【0126】
ステップS1221において、X線検査装置100は、基板をX線検査装置100から搬出する。具体的には、X線検査装置100は、第1の実施の形態と同様、検査対象駆動機構110により、基板をX線検査装置100の外に移動する。
【0127】
以上で、X線検査装置100は、1つの検査対象1についての検査を終了する(ステップS1223)。X線検査装置100は、複数の検査対象1についてのインライン検査を実行する場合には、ここまで説明したステップS1201からステップS1223までの一連の処理を繰り返す。
【0128】
(視野分割)
図13を参照して、図12のステップS1213における視野分割処理について説明する。図13は、視野分割にあたり、X線検査装置100が行なう処理の流れをフローチャート形式で示す図である。
【0129】
X線検査装置100の良否判定部78は、視野分割を開始すると(ステップS1301)、ステップS1303からステップS1315の処理を行ない、分散V(Z)が最大となる高さZの断層画像を取得する。ステップS1303からステップS1315での処理は、それぞれ、図6のステップS603からステップS605での処理と同様であり、これらの説明は繰り返さない。
【0130】
ステップS1317において、良否判定部78は、分散が最大となる断層画像を、はんだに対応する部分(はんだ部)と、それ以外の部分とに分割するために、断層画像を2値化する。2値化の閾値は予め設定してもよい。また、はんだとそれ以外の部分(空気や基板)の輝度差は十分に大きいため、良否判定部78は、判別分析法等の公知の閾値設定手法を用いて、2値化を行なうこともできる。これ以降の説明では、2値化画像において、良否判定部78は、2値化処理により、閾値以上の輝度値を1、閾値未満の輝度値を0に変更したものとする。
【0131】
ステップS1319において、良否判定部78は、連続する輝度値が1の部分からなる領域(明領域とよぶ)を、明領域が個々のはんだに対応付けて認識されるように、ラベリングする。ラベリングには、公知の手法を用いることが可能である。例えば、良否判定部78は、ラスタスキャンおよびルックアップテーブルを用いた手法や輪郭追跡法等を用いればよい。また、ラベリングにおける近傍の画素は、使用者により設定できるものとする。使用者は、精度や速度の観点から4近傍や8近傍といった設定をすればよい。
【0132】
ステップS1321において、良否判定部78は、はんだ部がラベリングされた画像に基づいて、互いに近傍に位置する所定の個数のはんだ部に対し、部分領域についてのラベルを与える。つまり、1つのはんだ部は、はんだ部のラベルと部分領域のラベルとの2つのラベルを持つことになる。なお、以下では、部分領域を、「分割後の視野」、あるいは、分割前の視野との誤解を招かないと考えられる場合には、単に「視野」ともよぶ。
【0133】
良否判定部78は、同一の視野に含めるはんだ部の個数を、予め設定しておいた設定値に基づいて決定する。例えば、設定値を1にした場合、はんだ部一つ一つに基板高さを求め検査を行なうこととなる。同一の視野に含めるはんだ部の個数は、通常、基板の設計仕様で決定されるため、予め使用者が設定してもよい。また、良否判定部78は、断層画像中のはんだ部の分布に基づいて、同一視野のはんだ部の個数を自動的に設定してもよい。
【0134】
縦および横方向にはんだが等間隔に配置されている基板では、縦方向と横方向にそれぞれ設定値を決めてもよい。この場合、良否判定部78は、断層画像内の1つのはんだ部を基準として、設定された個数のはんだ部に視野についてのラベリングを与える。基準とするはんだ部は、対象物の設計情報(例えば、部品が実装される基板内の位置についての情報)に基づいて、X線検査装置100あるいは使用者が設定できてもよい。なお、良否判定部78は、視野のラベリングを、基準のはんだ部から、所定の距離内のはんだ部についてのみ行なってもよい。これにより、検査時間を短縮できる。視野のラベルを与える領域、すなわち、検査を実施する範囲は、設計情報からX線検査装置100あるいは使用者が設定できる。
【0135】
図14に、分割後の一視野中のはんだ部の個数を、横方向に4個、縦方向に4個と設定して、視野を分割した例を示す。図14中斜線で示した部分がはんだ部である。図14では、左下のはんだ部を起点として、視野が設定されている。なお、ラベリング範囲の制限により、横4×縦2のはんだ部を含む領域が視野3として設定されている。
【0136】
はんだが等間隔に配置されていない場合には、良否判定部78は、ラベリングされた順番を用いて、視野のラベリングを行なってもよい。あるいは、良否判定部78は、基準となるはんだ部からの距離により、視野のラベリングを行なってもよい。
【0137】
図13に戻って、視野のラベリング後、良否判定部78は、視野分割処理を終了する(ステップS1323)。
【0138】
[その他の実施の形態]
上記説明は、BGAが実装された基板の検査について行なったが、第1の実施の形態あるいは第2の実施の形態に係るX線検査装置100が検査できる対象物は、これに限定されるものではない。例えば、X線検査装置100は、はんだボールを用いた他の部品、例えば、CSP(Chip Size Package)が実装される基板の検査を行なうこともできる。また、X線検査装置100を、QFP(Quad Flat Package)等のその他の表面実装基板や、ピン挿入型の実装基板の検査に適用することもできる。いずれの場合でも、X線検査装置100は、部品のうちX線の吸収係数の高い部分(高吸収部分)に対応する領域の割合が高い断面を見つけ、その断面から、部品の形状特性に基づく距離だけ離れた断面を検査面に設定すればよい。
【0139】
他の対象物への適用の一例として、X線検査装置100を用いて、QFPのバックフィレット検査が行なえることを以下に示す。
【0140】
図15は、QFPが実装される基板の側面図である。図15を参照して、基板1501の表面上にQFP1502が実装されている。QFP1502から引き出されたリード1503と基板1501とが、はんだ1504により接合されている。
【0141】
このようにQFP1502が実装された基板1501を検査対象とする場合においても、分散が最大となる高さは、はんだが最も大きな面積を占める断層(ほぼ基板1501の部品実装面に一致)の高さである。BGAの検査の場合と同様に、分散の結果をもとに検査する高さを決定することができる。検査すべき断層面、すなわち、リード1503とはんだ1504との接合面を、図15中に点線で示す。図15から分かるように、分散が最大となる高さより上方向に検査高さがある。したがって、使用者は、分散が最大となる高さから上方向に検査高さを設定すればよい。
【0142】
図16は、図15に示す断層面での断面を模式的に示した図である。図16を参照して、X線検査装置100は、リード1503を囲むはんだ1504の形状に基づいて、接合の良否を判定できる。
【0143】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】第1の実施の形態に係るX線検査装置100の概略ブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係るX線検査装置100の構成を説明するための図である。
【図3】検査対象1およびその周辺の側面図である。
【図4】第1の実施の形態に係るX線検査の流れをフローチャート形式で示す図である。
【図5】2値化画像内のはんだ面積に基づく良否判定について説明するための図である。
【図6】基板高さ位置取得にあたり、X線検査装置100が行なう処理の流れをフローチャート形式で示す図である。
【図7】各断層高さにおける分散V(Z)の値を示す図である。
【図8】分散が最も大きくなる断層高さ(図7における断層高さ(A))での断層画像を示す図である。
【図9】分散が最も大きくなる断層高さから20層下側の(図8における断層高さ(B)での)断層画像を示す図である。
【図10】反りによって断層面に対して傾いたプリント基板およびBGAを模式的に示した図である。
【図11】図10に示した断層面での断層画像の輝度分布を模式的に示した図である。
【図12】第2の実施の形態に係るX線検査の流れをフローチャート形式で示す図である。
【図13】視野分割にあたり、X線検査装置100が行なう処理の流れをフローチャート形式で示す図である。
【図14】分割後の一視野中のはんだ部の個数を、横方向に4個、縦方向に4個と設定して、視野を分割した例を示す図である。
【図15】QFPが実装される基板の側面図である。
【図16】図15に示す断層面での断面を模式的に示した図である。
【図17】特許文献1に記載のX線検査装置の構成を示す図である。
【図18】特許文献1に示されている検査位置の断層画像を示す図である。
【符号の説明】
【0145】
1 検査対象、10 X線源、12 基板、18 X線、22 X線検出器駆動部、23 X線検出器、30 画像取得制御機構、32 検出器駆動制御機構、34 画像データ取得部、40 入力部、50 出力部、60 X線源制御機構、62 電子ビーム制御部、70 演算部、72 X線源制御部、74 画像取得制御部、76 再構成部、78 良否判定部、80 検査対象位置制御部、82 X線焦点位置計算部、84 撮像条件設定部、90 記憶部、92 X線焦点位置情報、94 撮像条件情報、96 プログラム、98 画像データ、100 X線検査装置、110 検査対象駆動機構、111a,111b ステージ、112a,112b 基板レール、114 変位計、116 光学カメラ、120 検査対象位置制御機構、501 基板、502 第1の部品、503 第2の部品、505 表面層、506 加熱後の状態、507 ボイド、508 ブリッジ、1501 基板、1503 リード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を用いて対象物を検査するX線検査装置であって、
前記対象物は、基板と、前記基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、前記部品は、前記基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を前記部品内の所定の位置に有し、
前記対象物に向けて前記X線を出力するX線出力手段と、
前記対象物に複数の方向から入射し、前記対象物を透過した前記X線の強度分布を表わす透視画像を撮像するX線検出手段と、
前記複数の方向からの前記X線の前記透視画像に基づいて、前記基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成する再構成手段と、
前記複数の断層画像のうち、前記高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定する特定手段と、
前記第1の断層画像の位置および前記部品の形状情報に基づいて前記第1の断層画像から所定の距離だけ離れた位置を前記対象物の検査位置とする検査位置決定手段とを備える、X線検査装置。
【請求項2】
X線を用いて対象物を検査するX線検査装置であって、
前記対象物は、基板と、前記基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、前記部品は、前記基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を前記部品内の所定の位置に有し、
前記対象物に向けて前記X線を出力するX線出力手段と、
前記対象物に複数の方向から入射し、前記対象物を透過した前記X線の強度分布を表わす透視画像を撮像するX線検出手段と、
前記複数の方向からの前記X線の前記透視画像に基づいて、前記基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成する再構成手段と、
前記複数の断層画像のうち、前記高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定する特定手段と、
前記第1の断層画像の位置および前記部品の形状情報に基づいて前記第1の断層画像から所定の距離だけ離れた第2の断層画像を取得し、前記第2の断層画像を用いて前記対象物の良否を判定する検査手段とを備える、X線検査装置。
【請求項3】
前記高吸収部材は、前記部品と前記基板とを接続する部材であり、
前記第2の断層画像は、前記部品と前記基板との接続部に相当する、請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記高吸収部材は、はんだである、請求項3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記部品は、ボールグリッドアレイである、請求項4に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記特定手段は、各前記断層画像の輝度値の分散を求め、最も大きな前記分散を有する前記断層画像の位置を特定する、請求項1から5のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項7】
各前記断層画像から、複数の部分領域のそれぞれに含まれる複数の部分画像を取得する分割手段をさらに備え、
前記特定手段は、各前記部分領域について、各前記断層画像の前記部分画像のうち、前記割合が高い第1の部分画像の位置を抽出し、
前記検査位置決定手段は、各前記部分領域について、前記第1の部分画像の位置および前記形状情報に基づいて、前記第1の部分画像から前記所定の距離だけ離れた位置を前記対象物の検査位置とする、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項8】
各前記断層画像から、複数の部分領域のそれぞれに含まれる複数の部分画像を取得する分割手段をさらに備え、
前記特定手段は、各前記部分領域について、各前記断層画像の前記部分画像のうち、前記割合が高い第1の部分画像の位置を抽出し、
前記検査手段は、各前記部分領域について、前記第1の部分画像の位置および前記形状情報に基づいて、前記第1の部分画像から前記所定の距離だけ離れた第2の部分画像を取得し、前記第2の部分画像を用いて前記対象物の良否を判定する、請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記分割手段は、抽出された前記断層画像の中から所定の閾値を超える輝度を有する明画素が連続する明領域を抽出し、前記明領域を所定の個数含む領域を前記部分領域に設定する、請求項7または8に記載のX線検査装置。
【請求項10】
前記対象物を前記基準面に沿って移動する移動機構をさらに備える、請求項1から9のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項11】
前記移動機構は、前記基板を挟むレールを含む、請求項10に記載のX線検査装置。
【請求項12】
X線を用いて対象物を検査するX線検査方法であって、
前記対象物は、基板と、前記基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、前記部品は、前記基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を前記部品内の所定の位置に有し、
前記対象物に向けて前記X線を出力するステップと、
前記対象物に複数の方向から入射し、前記対象物を透過した前記X線の強度分布を表わす透視画像を撮像するステップと、
前記複数の方向からの前記X線の前記透視画像に基づいて、前記基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成するステップと、
前記複数の断層画像のうち、前記高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定するステップと、
前記第1の断層画像の位置および前記部品の形状情報に基づいて前記第1の断層画像から所定の距離だけ離れた位置を前記対象物の検査位置として決定するステップとを備える、X線検査方法。
【請求項13】
X線を用いて対象物を検査するX線検査方法であって、
前記対象物は、基板と、前記基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、前記部品は、前記基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を前記部品内の所定の位置に有し、
前記対象物に向けて前記X線を出力するステップと、
前記対象物に複数の方向から入射し、前記対象物を透過した前記X線の強度分布を表わす透視画像を撮像するステップと、
前記複数の方向からの前記X線の前記透視画像に基づいて、前記基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成するステップと、
前記複数の断層画像のうち、前記高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定するステップと、
前記第1の断層画像の位置および前記部品の形状情報に基づいて前記第1の断層画像から所定の距離だけ離れた第2の断層画像を取得するステップと、
前記第2の断層画像を用いて前記対象物の良否を判定するステップとを備える、X線検査方法。
【請求項14】
X線源とX線検出器と演算部とを有するX線検査装置に、X線を用いた対象物の検査を実行させるX線検査プログラムであって、
前記対象物は、基板と、前記基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、前記部品は、前記基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を前記部品内の所定の位置に有し、
前記演算部が、前記X線源が前記対象物に向けて前記X線を出力するように、前記X線源を制御するステップと、
前記演算部が、前記X線検出器が、前記対象物に複数の方向から入射し、前記対象物を透過した前記X線の強度分布を表わす透視画像を撮像するように、前記X線検出器を制御するステップと、
前記演算部が、前記複数の方向からの前記X線の前記透視画像に基づいて、前記基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成するステップと、
前記演算部が、前記複数の断層画像のうち、前記高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定するステップと、
前記演算部が、前記第1の断層画像の位置および前記部品の形状情報に基づいて前記第1の断層画像から所定の距離だけ離れた位置を前記対象物の検査位置として決定するステップとを備える、X線検査プログラム。
【請求項15】
X線源とX線検出器と演算部とを有するX線検査装置に、X線を用いた対象物の検査を実行させるX線検査プログラムであって、
前記対象物は、基板と、前記基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、前記部品は、前記基板に比べて高いX線吸収係数を持つ高吸収部材を前記部品内の所定の位置に有し、
前記演算部が、前記X線源が前記対象物に向けて前記X線を出力するように、前記X線源を制御するステップと、
前記演算部が、前記X線検出器が、前記対象物に複数の方向から入射し、前記対象物を透過した前記X線の強度分布を表わす透視画像を撮像するように、前記X線検出器を制御するステップと、
前記演算部が、前記複数の方向からの前記X線の前記透視画像に基づいて、前記基板が配置される基準面に各々平行する複数の断層画像を再構成するステップと、
前記演算部が、前記複数の断層画像のうち、前記高吸収部材の割合が高い第1の断層画像の位置を特定するステップと、
前記演算部が、前記第1の断層画像の位置および前記部品の形状情報に基づいて前記第1の断層画像から所定の距離だけ離れた第2の断層画像を取得するステップと、
前記演算部が、前記第2の断層画像を用いて前記対象物の良否を判定するステップとを備える、X線検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図8】
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【図9】
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【図14】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−145359(P2010−145359A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325904(P2008−325904)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】