説明

β‐アミノ酸誘導体

【課題】DPP-IV阻害作用を有する医薬、特に糖尿病治療剤として有用な、新規な化合物の提供。
【解決手段】発明者等は、DPP-IV阻害作用を有する化合物について鋭意検討した結果、置換ジアシルピペラジン誘導体及び種々二環性へテロ環であるジヒドロトリアゾロピラジン誘導体、ジヒドロイミダゾピラジン誘導体、テトラヒドロイミダゾピリジン誘導体などの窒素原子にβ‐アミノ酸が結合する化合物又はその塩がDPP-IV阻害作用を有することを見出し、本発明を完成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、殊に糖尿病治療剤として有用な新規なβ‐アミノ酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
ジペプチジルペプチダーゼ-IV (DPP-IV) は、N末端から2番目にプロリン、ヒドロキシプロリンまたはアラニンを含む配列(H-Xaa-Pro、H-Xaa-Hyp、またはH-Xaa-Ala(Xaaは任意のアミノ酸を示す))を認識し切断するセリンプロテアーゼである。その生理的役割は完全には解明されていないが、様々な生理活性ペプチドを切断することで生体機能の調節に関与していると考えられている (Regulatory Peptide, 85, 9-24 (1999))。
なかでも特に、食事後の血糖上昇抑制に関与するインクレチンと呼ばれるホルモンの活性制御が注目されている。
インクレチンは食事により栄養物が摂取された後、腸管から分泌され、膵β細胞に作用し、糖刺激によるインスリン分泌を増強させることで血糖を調節するホルモンである。2型糖尿病患者ではこのインクレチン作用が減弱していることが知られており (Diabetologia, 29, 46-52 (1986))、この作用減弱が糖尿病の発症要因の一つと考えられている。このことから、インクレチン作用を増強させることで糖尿病患者の食後高血糖を改善し得るのではないかと考えられている。
現在、生体内において最も強力なインクレチン作用を示すホルモンとしてはグルカゴン様ペプチド(以下「GLP-1」)が知られている。このGLP-1は血中に分泌後直ちにDPP-IVにより切断され不活性化することが知られている (Diabetes, 47,159-69 (1998))。
これらのことから、DPP-IV阻害薬はインクレチンの不活性化を防ぐことで、食後のインスリン分泌を増強させ、結果として糖尿病患者などで見られる食後高血糖を是正することができると考えられる。また、インクレチンは生体の糖濃度依存的なインスリン分泌を増強させることから、既存のインスリン分泌薬にみられる低血糖などの副作用がない安全な治療薬となることが期待される (Diabetes Care, 26, 2929-40 (2003))。
【0003】
DPP-IV阻害作用を有するピペラジン誘導体として、下記化合物が報告されている(特許文献1)。
【化4】

(式中、特にXはCH2、O及びNR7からなる群から選択され、R7はH、或いはそれぞれ置換されていてもよいアルキルまたは環基を示す。詳細は当該公報参照。)
当該クレームは広範に及ぶものの、Arとカルボニルの間は炭素鎖3のリンカーに限定されており、また、ヘテロ原子で中断されたリンカーに関する開示も示唆もない。
【特許文献1】国際公開WO2003/000181号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、DPP-IV阻害作用を有する医薬、特に糖尿病治療剤として有用な、新規な化合物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、DPP-IV阻害作用を有する化合物について鋭意検討した結果、β‐アミノ酸構造を有するジアシルピペラジン誘導体若しくは種々の二環性縮合へテロ環化合物がDPP-IV阻害作用を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、一般式(I)で示されるジアシルピペラジン誘導体若しくは種々の二環性ヘテロ環化合物又はその製薬学的に許容される塩に関する。
【化5】

(式中の記号は以下の意味を示す。
R21及びR22:同一又は互いに異なって、-H又は-R0
R31及びR32:同一又は互いに異なって、-H又は-R0
R41及びR42:同一又は互いに異なって、-H又は-R0
X:O、S又は-CH2-、
B:-置換されていてもよいアリール又は-置換されていてもよいヘテロアリール、
【化6】

Y:-C(O)-、-S(O)2-又は単結合、
R1:i) Yが単結合のとき、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-置換されていてもよいアリール、-置換されていてもよいヘテロ環、-置換されていてもよいシクロアルキル、-R00-(置換されていてもよいアリール)、-R00-(置換されていてもよいヘテロ環)、-R00-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-(低級アルケニレン)-(置換されていてもよいアリール)、-(低級アルケニレン)-(置換されていてもよいヘテロ環)、-(低級アルケニレン)-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-OH、-R00-OR0、-R00-CO2H、-R00-CO2R0、-R00-O-(置換されていてもよいアリール)、-R00-O-(置換されていてもよいヘテロ環)、-R00-O-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-N(RA)-(置換されていてもよいアリール)、-R00-N(RA)-(置換されていてもよいヘテロ環)又は-R00-N(RA)-(置換されていてもよいシクロアルキル)、
ii) Yが-C(O)-又は-S(O)2-のとき、-O-R0、-O-(ハロゲノ低級アルキル)、-N(RA)2、-N(RA)-(ハロゲノ低級アルキル)、-O-(置換されていてもよいアリール)、-O-(置換されていてもよいヘテロ環)、-O-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-O-R00-(置換されていてもよいアリール)、-O-R00-(置換されていてもよいヘテロ環)、-O-R00-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-N(RA)-(置換されていてもよいアリール)、-N(RA)-(置換されていてもよいヘテロ環)、-N(RA)-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-N(RA)-R00-(置換されていてもよいアリール)、-N(RA)-R00-(置換されていてもよいヘテロ環)又は-N(RA)-R00-(置換されていてもよいシクロアルキル)、或いは、i)に記載の基、
R0:それぞれ同一又は互いに異なって、-低級アルキル、
R00:それぞれ同一又は互いに異なって、-低級アルキレン、
RA:それぞれ同一又は互いに異なって、-H又は-R0
R51及びR52:同一又は互いに異なって、-H、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-置換されていてもよいフェニル又は-R00-(置換されていてもよいフェニル)、
R53、R54、R55及びR56:同一又は互いに異なって、-H、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH、-R00-O-R0、-CO2H、-CO2R0、-CONH2、-CO-N(RA)-R0、-CO-N(RA)-(置換されていてもよいアリール)、-CO-N(RA)-(置換されていてもよいヘテロ環)、-CO-N(RA)-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいアリール)、-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいヘテロ環)、-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-O-CO-R0、-R00-O-R0、-R00-CO2H、-R00-CO2R0、-R00-CONH2、-R00-CO-N(RA)-R0、-R00-CO-N(RA)-(置換されていてもよいアリール)、-R00-CO-N(RA)-(置換されていてもよいヘテロ環)、-R00-CO-N(RA)-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいアリール)、-R00-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいヘテロ環)、-R00-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-置換されていてもよいフェニル又は-R00-(置換されていてもよいフェニル)、
X1、X2及びX3:C、N、O及びSから選択される環原子を示し、C又はNの場合、当該原子上に水素、低級アルキル基又はハロゲノ低級アルキル基を有していてもよい。
X4及びX5:C及びNから選択される環原子、
但し、X1とX2、X2とX3、X3とX4、X4とX5及びX1とX5の間の結合はそれぞれ単結合若しくは二重結合でもよい。)
【0006】
更に本願は、一般式(I)で示されるβ‐アミノ酸誘導体又はその塩を有効成分とする医薬、殊にDPP-IV阻害剤並びに糖尿病治療剤にも関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明化合物は、DPP-IV阻害作用を有することから、糖尿病、特に2型糖尿病、インスリン抵抗性疾患、及び肥満等の予防及び/又は治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書中、「アルキル」及び「アルキレン」とは、直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖を意味する。「低級アルキル」は、好ましくは炭素数1〜6個(以下、C1-6と略す)のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、tert-ブチル、1-ヘキシル等である。より好ましくはC1-4、より更に好ましくはC1-2アルキルである。
「低級アルキレン」は、上記「低級アルキル」の任意の水素原子1個を除去してなる二価基(C1-6アルキレン)を意味し、好ましくはC1-4アルキレンであり、より好ましくはC1-3アルキレンであり、より更に好ましくはC1-2アルキレンである。
「低級アルケニレン」は、上記「低級アルキレン」にて1箇所以上二重結合を有する二価基の炭化水素鎖(C2-6アルケニレン)を意味し、好ましくはC2-4アルケニレンであり、より好ましくはエテン-1,2-ジイルである。
「ハロゲン」は、F、Cl、Br及びIを示す。「ハロゲノ低級アルキル」とは、好ましくは、1個以上のハロゲンで置換されたC1-6アルキルを意味し、より好ましくはハロゲノC1-3アルキルであり、更に好ましくはフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1,1-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル及びペンタフルオロエチル、より更に好ましくは、トリフルオロメチル、1,1-ジフルオロエチル、ペンタフルオロエチル及び2,2,2-トリフルオロエチルである。
「アリール」とは、C6-14の芳香族炭化水素基であり、好ましくはフェニル、ナフチル及びテトラヒドロナフチルであり、より好ましくはフェニルである。
「シクロアルキル」は、好ましくはC3-10のシクロアルキルであり、架橋されていてもよい。より好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びアダマンチルである。
「へテロ環」とは、i) O、S及びNから選択されるヘテロ原子を1〜4個有していてもよい単環4〜8員、好ましくは5〜7員の、飽和、一部不飽和又は芳香族ヘテロ環、ii) 上記i)に示すヘテロ環が縮環した二環式へテロ環、但し、縮合する環は互いに同一でも異なっていてもよい、及びiii) 上記i)に示すヘテロ環とベンゼン環又は5〜7員シクロアルカンが縮合した二環式へテロ環、から選択される環からなる1価基を意味する。例えば、i) ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、ジアゼパニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピロリル、チエニル、フリル、ジオキサニル、ジオキソラニル、トリアジニル、トリアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、テトラヒドロフラニル、ii) ナフチリジニル、イミダゾピリジニル、ピロロピリミジニル、ナフチリジル、チエノピリジニル、チエノピロリル、iii) ジヒドロベンゾフラニル、キノリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、キノリル、イソキノリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ジヒドロベンゾフラニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル、トリチアニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、インダゾリル、テトラヒドロベンゾイミダゾリル、クロマニルが挙げられる。また、環のS又はNが酸化されて、オキシドやジオキシドを形成していてもよい。
「へテロアリール」とは上記「へテロ環」のうち、O、S及びNから選択されるヘテロ原子を1〜4個有していてもよい単環5又は6員の芳香族ヘテロ環、同一又は異なる2個の芳香族ヘテロ環が縮環した二環式へテロ環、及び芳香族ヘテロ環とベンゼン環又は5〜7員シクロアルカンが縮合した二環式へテロ環、から選択される環からなる1価基を意味する。
【0009】
「置換されていてもよい」とは、「無置換」あるいは「同一又は異なる置換基を1〜5個有していること」を示す。「置換されていてもよいアリール」、「置換されていてもよいヘテロ環」、「置換されていてもよいシクロアルキル」及び「置換されていてもよいフェニル」における「アリール」、「ヘテロ環」、「シクロアルキル」及び「フェニル」の置換基として好ましくは、-R0、-O-R0、-ハロゲン、-ハロゲノ低級アルキル、-O-(ハロゲノ低級アルキル)、-OH、-CN、-NO2、-NH2、-NH-R0、-N(R0)2、-CO2H、-CO2-R0、-CONH2、-SO2-NH2、-SO2-NH-R0、-SO2-N(R0)2、-CO-R6、-NH-CO-R6、-NH-SO2-R6、-SO2-R6、-S-R6、-S(O)-R6、-SO2NHCO-R6、-CONHSO2-R6、1〜3個の-R7で置換された低級アルキル又はオキソである。但し、R6は-R0、-ハロゲノ低級アルキル又は-R0若しくはハロゲンで置換されていてもよいフェニルを、R7は-OH、-O-R0、-CO2H、-CO2-R0又は-CONH2をそれぞれ示す。
【0010】
本発明の好ましい態様を以下に示す。
(1)Bとして好ましくは、1〜3個のハロゲン、-CN又は-CF3で置換されていてもよい、フェニル又は単環ヘテロアリールであり、更に好ましくは1〜3個のハロゲン、-CN又は-CF3で置換されていてもよいフェニル、ピリジル又はチエニルであり、より更に好ましくは1個又は2個のFで置換されていてもよいフェニルであり、特に好ましくは4-フルオロフェニルである。
(2)Xとして好ましくはO又はSであり、更に好ましくはSである。
(3)Aとして好ましくは、
【化7】

であり、更に好ましくは、
【化8】

である。ここで、R2は水素、低級アルキル又はハロゲノ低級アルキルである。
Aとしてより更に好ましくは、
【化9】

であり、
特に好ましくは、
【化10】

である。
(4)R2としてはそれぞれ同一又は互いに異なって、好ましくは、水素、低級アルキル又はハロゲノ低級アルキルであり、更に好ましくは水素又はハロゲノ低級アルキルであり、より更に好ましくは水素、トリフルオロメチル又はペンタフルオロエチルである。
(5)Yとして好ましくは-C(O)-又は-S(O)2-であり、更に好ましくは-C(O)-である。
(6)R1として好ましくは、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-(G群から選択される基で置換されていてもよいアリール)、-(G群から選択される基で置換されていてもよいヘテロ環)、-(G群から選択される基で置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-OH、-R00-OR0、-R00-CO2H、-R00-CO2R0、-R00-O-(G群から選択される基で置換されていてもよいヘテロ環)、又は-R00-O-(G群から選択される基で置換されていてもよいシクロアルキル)であり、更に好ましくは、-R0、-N(RA)-R0、-(G1群から選択される基で置換されていてもよいアリール)、-(G1群から選択される基で置換されていてもよいヘテロ環)、-(G2群から選択される基で置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-(ハロゲノ低級アルキル)、-R00-OH、-R00-OR0、-R00-CO2H又は-R00-CO2R0である。ここに、G群は-R0、-O-R0、-ハロゲン、-ハロゲノ低級アルキル、-O-(ハロゲノ低級アルキル)、-OH、-CN、-NO2、-NH2、-NH-R0、-N(R0)2、-CO2H、-CO2-R0、-CONH2、-SO2-NH2、-SO2-NH-R0、-SO2-N(R0)2、-CO-R0、-NH-CO-R0、-NH-SO2-R0、-SO2-R0、-S-R0、-S(O)-R0、-SO2NHCO-R0及び-CONHSO2-R0であり、G1群は、-R0、-ハロゲン、-ハロゲノ低級アルキル、-OH、-OR0、-CO2H、-CO2R0、-SO2NH2、-SO2R0及び-CNであり、G2群は、-R0、-ハロゲン、-ハロゲノ低級アルキル、-OH及び-OR0である。
(7)R53、R54、R55及びR56として好ましくは、同一又は互いに異なって、-H、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH、-R00-O-R0、-R00-O-CO-R0、-CO2H、-CO2R0、-R00-CO2H、-R00-CO2R0又は-R00-CONH2であり、更に好ましくは、同一又は互いに異なって、-H、-R0、-R00-OH、-R00-O-R0、-R00-O-C(O)-R0又は-R00-O-R0である。
【0011】
別の好ましい態様としては、上記(1)〜(7)に記載の各好ましい基の組合せからなる化合物が好ましく、以下の化合物が好ましい。
(8)Bが1〜3個のハロゲン、-CN又は-CF3で置換されていてもよい、フェニル又は単環ヘテロアリールであり、
Aが、
【化11】

であり、
Yが-C(O)-又は-S(O)2-であり、
R1が-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-(G群から選択される基で置換されていてもよいアリール)、-(G群から選択される基で置換されていてもよいヘテロ環)、-(G群から選択される基で置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-OH、-R00-OR0、-R00-CO2H、-R00-CO2R0、-R00-O-(G群から選択される基で置換されていてもよいヘテロ環)、又は-R00-O-(G群から選択される基で置換されていてもよいシクロアルキル)であり、
R53、R54、R55及びR56が同一又は互いに異なって、-H、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH、-R00-O-R0、-R00-O-CO-R0、-CO2H、-CO2R0、-R00-CO2H、-R00-CO2R0又は-R00-CONH2である。
ここに、G群は-R0、-O-RA、-ハロゲン、-ハロゲノ低級アルキル、-O-(ハロゲノ低級アルキル)、-CN、-NO2、-NH2、-NH-R0、-N(R0)2、-CO2H、-CO2-R0、-CONH2、-SO2-NH2、-SO2-NH-R0、-SO2-N(R0)2、-CO-R0、-NH-CO-R0、-NH-SO2-R0、-SO2-R0、-S-R0、-S(O)-R0、-SO2NHCO-R0及び-CONHSO2-R0である。
(9)Bが1個又は2個のFで置換されていてもよいフェニルであり、XがO又はSであり、
Yが-C(O)-又は-S(O)2-であり、
Aが、
【化12】

であり、R1が-(-CO2Hで置換されていてもよいフェニル)、-(-CO2Hで置換されていてもよいピリジル)又は-(-CO2Hで置換されていてもよいチエニル)であり、R53、R54、R55及びR56が同一又は互いに異なって、-H又は-R0であり、R2がハロゲノ低級アルキルである。
(10)Bが4−フルオロフェニルであり、XがO又はSであり、
Aが、
【化13】

であり、Yが-C(O)-であり、R1が-(-CO2Hで置換されていてもよいフェニル)であり、R53、R54、R55及びR56が同一又は互いに異なって、-H又はC1-2の低級アルキルである。
【0012】
本発明の化合物は、置換基の種類によっては他の互変異性体や幾何異性体が存在する場合もある。本明細書中、それら異性体の一形態のみで記載することがあるが、本発明にはこれらの異性体も包含し、異性体の分離したもの、あるいは混合物も包含する。
また、本発明の化合物(I)は、置換基の種類によっては、不斉炭素原子を有する場合があり、その他の軸不斉を有する場合もある。本発明はこれらの光学異性体の混合物や単離されたものを全て包含する。
更に、本発明には、化合物(I)の薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で本発明のアミノ基、-OH、-CO2H等に変換できる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med., 5, 2157-2161 (1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0013】
更に、本発明化合物は、酸付加塩又は置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もあり、かかる塩が製薬学的に許容され得る塩である限りにおいて本発明に包含される。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、又はグルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。更には、分子内で塩を形成していてもよい。
本発明は、本発明化合物及びその製薬学的に許容され得る塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形を有する物質も包含する。また、本発明は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。
【0014】
(製造法)
本発明化合物及びその製薬学的に許容され得る塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis (第3版、1999年)」に記載の保護基等を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、化合物(I)のプロドラッグは上記保護基と同様、原料乃至中間体の段階で特定の基を導入、あるいは得られた化合物(I)を用い反応を行うことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者により公知の方法を適用することにより行うことができる。
以下、本発明化合物の代表的な製造法を説明する。なお、本発明の製造法は以下に示した例には限定されない。
第1製法
【0015】
【化14】

(式中、P1は保護基又は低級アルキル基を示し、L1は脱離基又はOHを示す。以下同様。)
本製法は、ピペラジン誘導体(II)とカルボニル又はスルホニル化合物(III)とのアミド化反応を行ない本発明化合物(Ia)を得る反応である。また、P1が保護基の場合、次いで脱保護反応を行うことにより、本発明化合物を得ることができる。
Yが -C(O)- の場合、アミド化反応は、カルボン酸化合物(III)又はその反応性誘導体を、それぞれ対応するピペラジン誘導体(II)と反応させることにより行うことができる。当該反応性誘導体としては酸ハロゲン化物(酸クロリド、酸ブロミド等)、酸無水物(クロロギ酸エチル、クロロギ酸ベンジル、クロロギ酸フェニル、p-トルエンスルホン酸、イソ吉草酸等との反応で得られる混合酸無水物、或いは対称酸無水物)、活性エステル(ニトロ基あるいはフッ素原子などの電子吸引基で置換していてもよいフェノール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N-ヒドロキシスクシンイミド(HONSu)等を用いて調製できるエステル)、カルボニルジイミダゾール(CDI)を用いて調整できる反応性誘導体、低級アルキルエステル、酸アジド等が挙げられる。これらの反応性誘導体は常法により製造することができる。
反応はカルボン酸化合物(III)又はその反応性誘導体と、ピペラジン誘導体(II)とを、等モルあるいは一方を過剰量用いて、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジグリム、1,2-ジメトキシエタン、2-メトキシジエチルエーテル等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)、酢酸エチル又はアセトニトリル等の不活性溶媒中、冷却下〜加熱下で行うことができる。反応性誘導体の種類によっては、塩基(好ましくは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン等)の存在下に反応させるのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。ピリジンは溶媒を兼ねることもできる。
遊離カルボン酸を用いる場合には、縮合剤(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド(WSC)、CDI、N,N’-ジスクシンイミジルカルボナート、(1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスファート(Bop試薬)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HBTU)、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)、オキシ塩化リン、三塩化リン、トリフェニルホスフィン/N-ブロモスクシンイミド等)、または縮合剤を担持したポリスチレン樹脂、例えばPS-カルボジイミド(PS-Carbodiimide)(バイオタージ社製)、PL-DCC レジン(PL-DCC Resin)(ポリマー・ラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)、英国)を用いることが好ましい。反応の種類によっては、更に添加剤(例えば、HONSu、HOBt等)を用いるのが反応の促進に有利なことがある。また、場合によっては、更に反応終了後の過剰なアミンを除去する目的でイソシアネートを担持したポリスチレン樹脂、例えばPS-イソシアネート(PS-Isocyanate)(バイオタージ社製)等を用いることが好ましい。また、更に反応終了後の過剰なカルボン酸、前述の添加剤等を除去する目的で4級アンモニウム塩を担持したポリスチレン樹脂、例えばMP-カルボネート(MP-Carbonate)(バイオタージ社製)等を用いることが好ましい場合がある。
Yが -S(O)2- の場合、スルホニル化合物(III)として、酸ハライドや種々の酸無水物を使用するのが好ましく、カルボニル化合物の合成方法とほぼ同様の条件で、反応を行うことができる。
P1が保護基の場合の保護基としては、前記「Protective Groups in Organic Synthesis」に記載の保護基が適宜適用でき、好ましくはtert-ブトキシカルボニル基やベンジルオキシカルボニル基等である。脱保護反応の条件としては、当該文献に記載の条件を適用することができる。
第2製法
【0016】
【化15】

ウレア基を有する本発明化合物(Ib)は、当業者が通常ウレア合成に用いる手法で製造することができ、例えば、ピペラジン誘導体(II)と種々のイソシアナート化合物(IV)の反応より得ることができる。或いは、ピペラジン誘導体(II)と対応するアミンを、トリホスゲンやクロロギ酸エチルと必要に応じて塩基等を加えて製造することもできる。また、P1が保護基の場合、次いで脱保護反応を行うことにより、本発明化合物(I)を得ることができる。
第3製法
【0017】
【化16】

二環性縮合へテロ環を有する本発明化合物(Ic)は、対応する二環性アミン(VI)と別途製造されたカルボン酸(V)のアミド化反応によって製造することができる。アミド化反応は前述の第1製法と同様の方法に従い行なうことができる。また、P1が保護基の場合、次いで脱保護反応を行うことにより、本発明化合物を得ることができる。
原料製法
【0018】
【化17】

(式中、P2はP1とは異なる保護基を示す。以下同様。)
ピペラジン誘導体(II)は、対応するピペラジン化合物(VII)とカルボン酸(V)のアミド化反応によって製造することができる。アミド化反応は前述の第1製法と同様の方法に従い行なうことができる。次いで、P2の脱保護を行なうことにより、ピペラジン誘導体(II)を得ることができる。P2としては、P1がtert-ブトキシカルボニル基の場合にベンジルオキシカルボニル基が好ましい。
【0019】
【化18】

(式中、P3は保護基を示す。以下同様。)
アリールオキシ誘導体(X)は、アルコール(VIII)と対応するヒドロキシアリール誘導体(IX)を、トリフェニルホスフィン及びジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)又は類似の光延試薬を用い、当業者が通常行なう光延反応の条件に付すことにより得ることができる。次いで、P3の脱保護を行なうことにより、前述の第3製法で利用できるカルボン酸(V)へと導くことができる。P3としてはベンジル基が好ましい。
【0020】
【化19】

(式中、L2は脱離基を示す。以下同様。)
スルフィド中間体(XIII)は、塩基存在下、チオアリール誘導体(XII)を化合物(XI)と反応させることより製造することができ、L2としては例えばメタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基又はハロゲンなどの脱離基が挙げられる。或いは化合物(XI)の代わりに対応する末端アジリジンを用いることもできる。次いで、P3を脱保護することにより、前述の第3製法で利用できるカルボン酸へと導くことができる。P3としてはベンジル基が好ましい。
【0021】
【化20】

製造中間体(XV)は、α,β-不飽和エステル(XIV)及び対応するアミンとを、必要に応じて塩基を用いて、マイケル付加反応を行なうことにより得ることができる。得られた中間体(XV)は加水分解により、前述の第3製法で利用できるカルボン酸へと導くことができる。
一方、ピペラジン化合物(VII)は、多くの公知化合物や市販化合物が使用できるが、以下の方法によっても製造できる。
【0022】
【化21】

【0023】
ピペラジン化合物(VIIa)は、種々のアミノ酸誘導体を適宜、脱保護やベンジル化反応に付すことにより製造できる。ベンジル化は、例えばハロゲン化ベンジルによるアルキル化反応又はベンズアルデヒドを用いた還元的アミノ化反応(日本化学会編「実験化学講座(第4版)」20巻(1992年)(丸善)等に記載の方法)等が適用できる。
環化反応は不活性溶媒中、無機又は有機酸触媒存在下又は非存在下、過熱還流することにより行なうことができる。あるいは、アミド化反応を適用することもできる。
還元反応は、例えば日本化学会編「実験化学講座(第4版)」20巻(1992年)(丸善)、p.282等に記載の方法等の、通常当業者が用いる還元反応が適用できる。
【0024】
本発明化合物は、遊離化合物、その製薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、あるいは結晶多形の物質として単離され、精製される。本発明化合物(I)の製薬学的に許容される塩は、常法の造塩反応に付すことにより製造することもできる。
単離、精製は、抽出、分別結晶化、各種分画クロマトグラフィー等通常の化学操作を適用して行われる。
各種の異性体は、適当な原料化合物を選択することにより、あるいは異性体間の物理化学的性質の差を利用して分離することができる。例えば、光学異性体は一般的な光学分割法(例えば、光学活性な塩基又は酸とのジアステレオマー塩に導く分別結晶化やキラルカラム等を用いたクロマトグラフィー等)により、立体化学的に純粋な異性体に導くことができる。また、適当な光学活性な原料化合物より製造することもできる。
【0025】
本発明化合物の薬理活性は以下の試験により確認した。
試験例1
DPP-IV阻害作用測定試験
血漿中DPP-IV活性測定の手順は、以下の通りである。なお、反応は96ウェルブラックプレートを用いて行った。ヒト血漿 20μlに、20μlの被験化合物溶液(最終濃度の4倍濃度となるように、25 mM HEPES、140 mM 塩化ナトリウム、1%ウシ血清アルブミン及び0.1%ジメチルスルホキシド(DMSO) からなる水溶液に溶解)を加え、さらに、25 mM HEPES、140 mM 塩化ナトリウム、80 mM 塩化マグネシウム及び1%ウシ血清アルブミンからなる水溶液(20 μl/ウェル)を加えて室温で30分間インキュベーションしたのち、25 mM HEPES、140 mM 塩化ナトリウム及び1%ウシ血清アルブミンからなる水溶液に溶解した0.2 mM Gly-Pro-AMC (BACHEM)溶液(20 μl/ウェル)を添加してさらに室温遮光下で20分間インキュベートし、遊離AMCの蛍光強度(Excitation 380 nm/ Emission 460 nm)をプレートリーダー(SPECTRA Max、Molecular Devices)で測定した。既知濃度のAMCを用いて作成した標準直線より遊離AMC濃度を求め、血漿1 mlによって1分間に遊離したAMC量をDPP-IV活性(nmol/min/ml)として算出した。
溶媒添加群のDPP-IV活性を100%として、各濃度におけるDPP-IV活性の残存率を算出し、溶媒添加群との差を阻害率とした。測定結果は、同一条件である2ウェルの値を平均して算出し、ロジスティック解析により50%阻害濃度(IC50値)を求めた。
本発明の代表的化合物のIC50値を表1に示す。Ex は後記の実施例番号を示す。
【0026】
【表1】

【0027】
試験例2
ラットにおけるDPP-IV阻害作用持続評価試験
各群3例の雄性 Sprague Dawley (SD) 系ラット(日本チャールス・リバー)に対し、精製水に溶解または0.5%メチルセルロース溶液に懸濁した被験化合物を1若しくは3 mg/kgの用量で経口投与した。被験化合物投与前及び投与後 1, 4, 8 時間に尾静脈より採血した。採取した血液は直ちに遠心分離を行って血漿を分取し、血漿中DPP-IV活性を測定した。
血漿中DPP-IV活性測定の手順は、以下の通りである。なお、反応は96ウェルブラックプレートを用いて行った。採取した血漿30μlに25 mM HEPES、140 mM 塩化ナトリウム、40 mM 塩化マグネシウム、1% ウシ血清アルブミン及び0.1 mM Gly-Pro-AMC (BACHEM)からなる水溶液(30 μl/ウェル)を加えて室温遮光下で10分間インキュベーションし、遊離AMCの蛍光強度(Exitation 380 nm/ Emission 460 nm)をプレートリーダー(SPECTRA Max、Molecular Devices)で測定した。既知濃度のAMCを用いて作成した標準直線より遊離AMC濃度を求め、血漿1 mlによって1分間に遊離したAMC量をDPP-IV活性(nmol/min/ml)として算出した。
被験化合物投与前の血漿のDPP-IV活性を100%として、投与後の各時点における血漿中のDPP-IV活性の残存率を算出し、投与前値との差を被験化合物の阻害率とした。
【0028】
上記の各試験の結果、本発明化合物はDPP-IV阻害作用を有することが確認され、このことから、糖尿病、特に2型糖尿病等の疾患の治療剤として有用であることは明らかである。
【0029】
本発明化合物(I)又はその塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する製剤は、当分野において通常用いられている薬剤用担体、賦形剤等を用いて通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等のような崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0030】
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水溶性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はオリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、又はポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体又は半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば公知の賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づき本発明化合物(I)の製法を更に詳細に説明する。本発明化合物は下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。
【0032】
参考例1 (製法A1)
(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]ブタン酸 (83 mg) をDMF (0.5 ml) に溶解し、3-(トリフルオロメチル)-5,6,7,8-テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン 塩酸塩 (48 mg) 、HOBt1水和物 (42 mg)、WSC塩酸塩 (72 mg) 及びジイソプロピルエチルアミン (88 μl) を順次加え、室温で12時間攪拌した。反応液に水を加え酢酸エチルで抽出したのち、有機層を1M塩酸、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール = 100:0〜95:1)で精製し、tert-ブチル [(1S)-1-{[(4-フルオロフェニル)スルファニル]メチル}-3-オキソ-3-[3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル]プロピル]カルバメート (115 mg) を無色油状物として得た。

参考例2 (製法B)
4-[(4-{(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]ブタノイル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]安息香酸 メチルエステル (167 mg) を50%メタノール水溶液 (6 ml) に溶解し、水酸化リチウム1水和物 (25 mg) を加え、室温で2時間攪拌した。反応液を1M塩酸で中和したのち、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、減圧下濃縮し、4-[(4-{(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]ブタノイル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]安息香酸 (149 mg) を無色油状物として得た。

参考例3 (製法A2)
tert-ブチル {(1S)-1-[(4-フルオロフェノキシ)メチル]-3-オキソ-3-ピペラジン-1-イルプロピル}カルバメート (135 mg) の塩化メチレン (5 ml) 溶液に、トリエチルアミン (74 μl)、塩化ベンゾイル (54 μl) を加え、室温で2時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を1M塩酸、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 1:1〜1:4)で精製し、tert-ブチル {(1S)-3-(4-ベンゾイルピペラジン-1-イル)-1-[(4-フルオロフェノキシ)メチル]-3-オキソプロピル}カルバメート (130 mg) を無色油状物として得た。
【0033】
参考例4 (製法C)
tert-ブチル [(1S)-3-[(2R,5S)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-1-{[(4-フルオロフェニル)スルファニル]メチル}-3-オキソプロピル]カルバメート (300 mg) の塩化メチレン溶液 (10 ml) に、氷冷下、イソシアン酸エチル (0.07 ml) を加え、室温にて2時間攪拌した。氷冷下、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を1M塩酸、飽和重曹水及び飽和食塩水で順次洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去して、tert-ブチル [(1S)-3-[(2R,5S)-4-(エチルカルバモイル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル]-1-{[(4-フルオロフェニル)スルファニル]メチル}-3-オキソプロピル]カルバメート (342 mg) を無色非晶性固体として得た。

参考例5 (製法D)
(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-[(メチルスルホニル)オキシ]ブタン酸 ベンジルエステル (413 mg) のDMF (5 ml) 溶液に、4-フルオロベンゼンチオール (0.23 ml) 及び炭酸カリウム (294 mg) を加え、室温で12時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 97:3〜70:30)で精製し、(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]ブタン酸 ベンジルエステル (303 mg) を無色油状物として得た。

参考例6 (製法E)
(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]ブタン酸 ベンジルエステル (1.65 g) を50%メタノール水溶液 (30 ml) に溶解し、水酸化リチウム1水和物 (330 mg) を加え、50℃で2時間攪拌を行った。反応液に1M塩酸を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール = 100:0〜91:9)で精製し、(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]ブタン酸 (1.2 g) を無色油状物として得た。
【0034】
参考例7 (製法F)
(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-ヒドロキシブタン酸 ベンジルエステル (500 mg)、4-フルオロフェノール (544 mg) 及びトリフェニルホスフィン (848 mg) をTHF (10 ml) に溶解し、氷冷下、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート (0.55 ml) を滴下し、室温で12時間攪拌を行った。反応液を減圧下濃縮し、残渣に酢酸エチル加え、水及び飽和食塩水にて順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 4:1)で精製し、(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-(4-フルオロフェノキシ)ブタン酸 ベンジルエステル (615 mg) を黄色油状物として得た。

参考例8 (製法G)
4-{(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-(4-フルオロフェノキシ)ブタノイル}ピペラジン-1-カルボン酸 ベンジルエステル (2.6 g) をメタノール (30 ml) に溶解し、10%パラジウム-炭素 (426 mg) を加え、水素雰囲気下2気圧、室温にて2時間攪拌を行った。触媒をろ別し、ろ液を減圧下留去し、tert-ブチル (1S)-{1-[(4-フルオロフェノキシ)メチル]-3-オキソ-3-ピペラジン-1-イルプロピル}カルバメート (1.9 g) を無色油状物として得た。

参考例9 (製法H)
(1R)-N-ベンジル-1-フェニルエタンアミン (10 ml) のTHF (200 ml) 溶液に、氷冷下n-ブチルリチウム1.6Mヘキサン溶液 (31 ml) を20分間かけて滴下し、同温で20分間攪拌した。更に-73℃にて30分間攪拌したのち、(2E)-5-(4-フルオロフェニル)ペンタ-2-エン酸エチル (8.9 g) のTHF (50 ml) 溶液を20分間かけて滴下し、同温で20分間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液 (50 ml) を加え室温まで昇温し、飽和食塩水 (100 ml) を加え酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧下濃縮したのち、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)で精製し、黄色油状物 (12.09 g) を得た。得られた油状物のメタノール (240 ml) 溶液に10%パラジウム-炭素 (1.5 g) 及び酢酸 (8 ml) を加え、水素雰囲気下3.6気圧、室温にて11時間攪拌した。反応液をセライトろ過後、ろ液を減圧下濃縮し、黄色油状物を得た。得られた油状物のTHF (200 ml) 溶液に、氷冷下でトリエチルアミン (17 ml) 及び二炭酸ジ-tert-ブチル (7.2 g) を順次加え徐々に室温へと昇温しながら40分間攪拌した。反応液に水 (200 ml) を加えジエチルエーテルで抽出したのち、有機層を飽和重曹水及び飽和食塩水で順次洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル)で精製して、無色油状物 (2.08 g) を得た。得られた油状物をエタノール (20 ml) 及びTHF (20 ml) に溶解し、水酸化リチウム水和物 (750 mg) を加え、50℃で4時間攪拌した。次いで5M水酸化ナトリウム水溶液 (1 ml) を加え、更に5時間攪拌した。反応液を放冷後1M塩酸 (25 ml) を加え酢酸エチルで抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧下留去し、(3R)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-(4-フルオロフェニル)ペンタン酸 (1.89 g) を無色固体として得た。
【0035】
参考例10 (製法I)
tert-ブトキシカルボニルピペラジン (300 mg) のDMF (1.8 ml) 溶液に、4-(メトキシカルボニル)安息香酸 (290 mg)、HOBt1水和物 (271 mg)、WSC塩酸塩 (463 mg) 及びジイソプロピルエチルアミン (0.41 ml) を順次加え、室温で2時間攪拌した。反応液に水を加え酢酸エチルで抽出後、有機層を1M塩酸及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた白色固体 (500 mg) をジオキサン (1 ml) に溶解し、4M 塩化水素-ジオキサン溶液 (5 ml) を加え、室温で10分間攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣を酢酸エチル中で洗浄、ろ取することにより、4-(ピペラジン-1-イルカルボニル)安息香酸 メチルエステル 塩酸塩 (362 mg) を白色固体として得た。

参考例11 (製法J)
(2S,5R)-1-ベンジル-2,5-ジメチルピペラジン (600 mg) の塩化メチレン (10 ml) 溶液に、トリエチルアミン (0.61 ml) 及び二炭酸ジ-tert-ブチル (961 mg) を加えて、室温で12時間攪拌を行った。反応液を減圧下濃縮し、酢酸エチルを加えたのち、飽和重曹水及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 90:10〜67:33)で精製し、無色油状物 (834 mg) を得た。得られた油状物をエタノール (15 ml) に溶解し、10%パラジウム-炭素 (437 mg) と酢酸 (0.16 ml) を加え、水素雰囲気下4気圧、室温にて4時間攪拌した。触媒をろ別し、得られたろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣に飽和重曹水を加えクロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去し (2R,5S)-2,5-ジメチルピペラジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル (614 mg) を無色油状物として得た。

参考例12 (製法K)
5-{[(2S,5R)-4-(tert-ブトキシカルボニル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル]カルボニル}イソフタル酸 ジエチルエステル (968 mg) のジオキサン (4.6 ml) 溶液に、4M塩化水素-ジオキサン溶液 (18 ml) を加え、室温で10分間攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、得られた固体を酢酸エチルで洗浄及びろ取をすることより、5-{[(2S,5R)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル]カルボニル}イソフタル酸 ジエチルエステル 塩酸塩 (954 mg) を白色固体として得た。
【0036】
参考例13 (製法L)
(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-オキソ-4-[3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル]ブタン酸 (5.7 g) のTHF (86 ml) 溶液に、-30℃冷却下、N-メチルモルホリン (3.1 ml) 及びクロロギ酸イソブチル (1.91 ml) を順次滴下し15分間攪拌した。更に、-60℃冷却下、水素化ホウ素ナトリウム (905 mg) を加え、メタノール (17 ml) を滴下し1時間攪拌した。次いで1M塩酸を加え15分間攪拌した。反応混合物に1M水酸化ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和重曹水、1M塩酸、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール = 10:1)で精製し、tert-ブチル {(1S)-1-(ヒドロキシメチル)-3-オキソ-3-[3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル]プロピル}カルバメート (5.5 g) を無色油状物として得た。

参考例14 (製法M)
tert-ブチル {(1S)-1-(ヒドロキシメチル)-3-オキソ-3-[3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル]プロピル}カルバメート (4.1 g) の塩化メチレン (15 ml) 溶液に、窒素雰囲気下、トリエチルアミン (2.91 ml) を加えた。次いで、氷冷下、メタンスルホニルクロリド (1.05 ml) を滴下し室温まで昇温後4時間攪拌した。反応液に水を加えクロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール = 10:1)で精製し、メタンスルホニル (2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-オキソ-4-[3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル]ブチルエステル (4.1 g) を無色固体として得た。

参考例15 (製法N)
N-{(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノイル}グリシン メチルエステル (16.2 g) に4M塩化水素-ジオキサン溶液 (100 ml) を加え、室温で30分攪拌した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣のジクロロメタン (105 ml) 及びDMF (11 ml) の懸濁液に、ベンズアルデヒド (6 ml)、酢酸 (3.9 ml) 及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム (23.2 g) を加え、室温で20時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えクロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去することにより、N-[(2S)-2-(ベンジルアミノ)ブタノイル]グリシン メチルエステル (24.1 g) を得た。

参考例16 (製法P)
N-[(2S)-2-(ベンジルアミノ)ブタノイル]グリシン メチルエステル (24.1 g) のトルエン (192 ml) 溶液に酢酸 (4.2 ml) を加え、110℃で4時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、(6S)-1-ベンジル-6-エチルピペラジン-2,5-ジオン (6.24 g) を得た。

参考例17 (製法Q)
水素化リチウムアルミニウム (163 mg) のTHF (10 ml) 懸濁液に氷冷下、(6S)-1-ベンジル-6-エチルピペラジン-2,5-ジオン (500 mg) を加えた。反応混合物を75℃まで昇温し、3時間攪拌した。水 (0.57 ml) 及び15%水酸化ナトリウム水溶液 (0.17 ml) を加え、室温で30分間攪拌した。不純物を濾別し、溶媒を減圧下留去することにより(2S)-1-ベンジル-2-エチルピペラジン (394 mg) を得た。
上記参考例と同様にして、後記表に示す各参考例化合物を、それぞれ対応する原料を使用して製造した。各参考例化合物の構造及び物理化学的データを後記表2〜26に示す。
【0037】
実施例1 (製法R)
tert-ブチル [(1S)-1-{[(4-フルオロフェニル)スルファニル]メチル}-3-オキソ-3-[3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル]プロピル]カルバメート (115 mg) のジオキサン (1 ml) 溶液に、4M塩化水素-ジオキサン溶液 (4 ml) を加え、室温で10分間攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣に飽和炭酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧下濃縮し、無色の油状物 (70 mg) を得た。得られた油状物のメタノール溶液に、p-トルエンスルホン酸 (33 mg) を加え混合溶液を減圧下濃縮した。得られた固体を酢酸エチルで洗浄、ろ取し、(2S)-1-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]-4-オキソ-4-[3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル]ブタン-2-アミン p-トルエンスルホン酸塩 (53 mg) を白色固体として得た。

実施例2 (製法S)
5-[(4-{(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]ブタノイル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]チオフェン-2-カルボン酸 エチルエステル (150 mg) を50%メタノール水溶液 (6 ml) に溶解し、水酸化リチウム1水和物 (25 mg) を加え、50℃で1時間攪拌した。反応液を1M塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下濃縮した。得られた無色の油状物質 (133 mg) のジオキサン溶液 (1 ml) に、4M塩化水素-ジオキサン溶液 (5 ml) を加え、室温で10分間攪拌した。反応液を減圧下留去し、得られた残渣を酢酸エチルで洗浄、濾取することにより、5-[(4-{(3S)-3-アミノ-4-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]ブタノイル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]チオフェン-2-カルボン酸 塩酸塩 (20 mg) を白色固体として得た。

実施例3 (製法T)
2-(トリフルオロメチル)-5,6,7,8-テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピラジン塩酸塩 (240 mg)、(3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-4-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]ブタン酸 (300 mg)、WSC塩酸塩 (250 mg)、HOBt (180 mg)、トリエチルアミン (0.18 ml) 及びDMF (5 ml) の混合物を、室温で7時間攪拌した。反応液に水を加え酢酸エチルで抽出し有機層を1M塩酸、水、飽和重曹水及び飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去し微黄色油状物 (467 mg) を得た。4M塩化水素-ジオキサン溶液 (5 ml) を加え室温で一終夜攪拌後、反応液を減圧下濃縮した。残渣にエタノール及びジエチルエーテルを加え固体をろ取し、(2S)-1-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]-4-オキソ-4-[2-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピラジン-7(8H)-イル]ブタン-2-アミン塩酸塩 (209 mg) を白色固体として得た。

実施例4 (製法U)
tert-ブチル {(1S)-1-{[(4-フルオロフェニル)スルファニル]メチル}-3-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]-3-オキソプロピル}カルバメート (100 mg)、THF (2 ml) 及び飽和重曹水 (2 ml) の混合物に、2-フルオロベンゾイルクロリド (0.035 ml) を加え室温で5時間攪拌した。反応液に水 (3 ml) を加え酢酸エチルで抽出し、水及び飽和重曹水で洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を減圧留去した。得られた残渣 (122 mg) に4M塩化水素-ジオキサン溶液 (2 ml) を加え室温で30分間攪拌した。溶媒を減圧下留去して、(2S)-4-[(3S)-4-(2-フルオロベンゾイル)-3-メチルピペラジン-1-イル]-1-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]-4-オキソブタン-2-アミン塩酸塩 (110 mg) を無色非晶性固体として得た。

実施例5 (製法V)
2-メトキシ安息香酸 (4 mg) のDMF (0.5 ml) 溶液に、tert-ブチル [(1S)-3-[(3S)-3-メチルピペラジン-1-イル]-1-[[(4-フルオロフェニル)スルファニル]メチル]-3-オキソプロピル]カルバメート (7.8 mg)、HOBt (2.7 mg)及びPS-Carbodiimide (バイオタージ社製) (100 mg) を加え一晩振とうした。その後、PS-Isocyanate(バイオタージ社製) (50 mg)、MP-Carbonate(バイオタージ社製) (50 mg) 及びDMF (0.5 ml) を加え2時間振とうした。反応溶液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮後、得られた残渣を4M塩化水素-酢酸エチル溶液 (0.5 ml) 及びメタノール (0.5 ml) に溶解し30分間室温にて攪拌後、反応液を減圧下濃縮した。得られた残渣をメタノール (1 ml) に溶解しMP-Carbonate(バイオタージ社製) (50 mg) を加え、2時間振とうした。反応液をろ過し、ろ液を減圧下濃縮し、(2S)-1-[(4-フルオロフェニル)スルファニル]-4-[(3S)-4-(2-メトキシベンゾイル)-3-メチルピペラジン-1-イル]-4-オキソブタン-2-アミン (7.4 mg) を得た。
上記実施例と同様にして、後記表に示す各実施例化合物を、それぞれ対応する原料を使用して製造した。各実施例化合物の構造及び物理化学的データを後記表27〜44に示す。
【0038】
後記表中、以下の略号を用いる。REx:参考例番号、Ex:実施例番号、Str:構造式、Syn:製造法(上記参考例1〜17及び実施例1〜5の製法を同様に行なったことを、それぞれ順にA1、B、A2、C、D〜N、P〜Vで示す。)、Sal:塩(Frm:ギ酸塩、TsOH:p-トルエンスルホン酸塩、Oxa:シュウ酸塩、D-Tar:D-酒石酸塩、L-Tar:L-酒石酸塩、L-Mal:L-リンゴ酸;酸成分の数字は組成比を表し、例えば2HClは2塩酸塩を示す。無記載はフリー体を示す。)、Dat:物理化学的データ(NMR1:DMSO-d6中の1H NMRにおけるδ(ppm)、NMR2:CDCl3中の1H NMRにおけるδ(ppm)、FAB:FAB-MS (陽イオン)、FAB-N:FAB-MS (陰イオン)、ESI:ESI-MS (陽イオン)、ESI-N:ESI-MS (陰イオン)、EI:EI-MS (陽イオン))、Me:メチル、Et:エチル、tBu:tert-ブチル、Bn:ベンジル、Ms:メタンスルホニル、Boc:tert-ブトキシカルボニル、Z:ベンジルオキシカルボニル。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
【表6】

【0044】
【表7】

【0045】
【表8】

【0046】
【表9】

【0047】
【表10】

【0048】
【表11】

【0049】
【表12】

【0050】
【表13】

【0051】
【表14】

【0052】
【表15】

【0053】
【表16】

【0054】
【表17】

【0055】
【表18】

【0056】
【表19】

【0057】
【表20】

【0058】
【表21】

【0059】
【表22】

【0060】
【表23】

【0061】
【表24】

【0062】
【表25】

【0063】
【表26】

【0064】
【表27】

【0065】
【表28】

【0066】
【表29】

【0067】
【表30】

【0068】
【表31】

【0069】
【表32】

【0070】
【表33】

【0071】
【表34】

【0072】
【表35】

【0073】
【表36】

【0074】
【表37】

【0075】
【表38】

【0076】
【表39】

【0077】
【表40】

【0078】
【表41】

【0079】
【表42】

【0080】
【表43】

【0081】
【表44】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示されるβ‐アミノ酸誘導体又はその製薬学的に許容される塩。
【化1】

(式中の記号は以下の意味を示す。
R21及びR22:同一又は互いに異なって、-H又は-R0
R31及びR32:同一又は互いに異なって、-H又は-R0
R41及びR42:同一又は互いに異なって、-H又は-R0
X:O、S又は-CH2-、
B:-置換されていてもよいアリール又は-置換されていてもよいヘテロアリール、
【化2】

Y:-C(O)-、-S(O)2-又は単結合、
R1:i) Yが単結合のとき、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-置換されていてもよいアリール、-置換されていてもよいヘテロ環、-置換されていてもよいシクロアルキル、-R00-(置換されていてもよいアリール)、-R00-(置換されていてもよいヘテロ環)、-R00-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-(低級アルケニレン)-(置換されていてもよいアリール)、-(低級アルケニレン)-(置換されていてもよいヘテロ環)、-(低級アルケニレン)-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-OH、-R00-OR0、-R00-CO2H、-R00-CO2R0、-R00-O-(置換されていてもよいアリール)、-R00-O-(置換されていてもよいヘテロ環)、-R00-O-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-N(RA)-(置換されていてもよいアリール)、-R00-N(RA)-(置換されていてもよいヘテロ環)又は-R00-N(RA)-(置換されていてもよいシクロアルキル)、
ii) Yが-C(O)-又は-S(O)2-のとき、-O-R0、-O-(ハロゲノ低級アルキル)、-N(RA)2、-N(RA)-(ハロゲノ低級アルキル)、-O-(置換されていてもよいアリール)、-O-(置換されていてもよいヘテロ環)、-O-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-O-R00-(置換されていてもよいアリール)、-O-R00-(置換されていてもよいヘテロ環)、-O-R00-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-N(RA)-(置換されていてもよいアリール)、-N(RA)-(置換されていてもよいヘテロ環)、-N(RA)-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-N(RA)-R00-(置換されていてもよいアリール)、-N(RA)-R00-(置換されていてもよいヘテロ環)又は-N(RA)-R00-(置換されていてもよいシクロアルキル)、或いは、i)に記載の基、
R0:それぞれ同一又は互いに異なって、-低級アルキル、
R00:それぞれ同一又は互いに異なって、-低級アルキレン、
RA:それぞれ同一又は互いに異なって、-H又は-R0
R51及びR52:同一又は互いに異なって、-H、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-置換されていてもよいフェニル又は-R00-(置換されていてもよいフェニル)、
R53、R54、R55及びR56:同一又は互いに異なって、-H、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH、-R00-O-R0、-CO2H、-CO2R0、-CONH2、-CO-N(RA)-R0、-CO-N(RA)-(置換されていてもよいアリール)、-CO-N(RA)-(置換されていてもよいヘテロ環)、-CO-N(RA)-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいアリール)、-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいヘテロ環)、-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-O-CO-R0、-R00-O-R0、-R00-CO2H、-R00-CO2R0、-R00-CONH2、-R00-CO-N(RA)-R0、-R00-CO-N(RA)-(置換されていてもよいアリール)、-R00-CO-N(RA)-(置換されていてもよいヘテロ環)、-R00-CO-N(RA)-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいアリール)、-R00-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいヘテロ環)、-R00-CO-N(RA)-R00-(置換されていてもよいシクロアルキル)、-置換されていてもよいフェニル又は-R00-(置換されていてもよいフェニル)、
X1、X2及びX3:C、N、O及びSから選択される環原子を示し、C又はNの場合、当該原子上に水素、低級アルキル基又はハロゲノ低級アルキル基を有していてもよい。
X4及びX5:C及びNから選択される環原子、
但し、X1とX2、X2とX3、X3とX4、X4とX5及びX1とX5の間の結合はそれぞれ単結合若しくは二重結合でもよい。)
【請求項2】
Bが1〜3個のハロゲン、-CN又は-CF3で置換されていてもよい、フェニル又は単環ヘテロアリールであり、
Aが、
【化3】

であり、
Yが-C(O)-又は-S(O)2-であり、
R1が-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-(G群から選択される基で置換されていてもよいアリール)、-(G群から選択される基で置換されていてもよいヘテロ環)、-(G群から選択される基で置換されていてもよいシクロアルキル)、-R00-OH、-R00-OR0、-R00-CO2H、-R00-CO2R0、-R00-O-(G群から選択される基で置換されていてもよいヘテロ環)、又は-R00-O-(G群から選択される基で置換されていてもよいシクロアルキル)であり、
R53、R54、R55及びR56が同一又は互いに異なって、-H、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH、-R00-O-R0、-R00-O-CO-R0、-CO2H、-CO2R0、-R00-CO2H、-R00-CO2R0又は-R00-CONH2である、請求項1記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
ここに、G群は-R0、-O-RA、-ハロゲン、-ハロゲノ低級アルキル、-O-(ハロゲノ低級アルキル)、-CN、-NO2、-NH2、-NH-R0、-N(R0)2、-CO2H、-CO2-R0、-CONH2、-SO2-NH2、-SO2-NH-R0、-SO2-N(R0)2、-CO-R0、-NH-CO-R0、-NH-SO2-R0、-SO2-R0、-S-R0、-S(O)-R0、-SO2NHCO-R0及び-CONHSO2-R0である。

【公開番号】特開2008−63256(P2008−63256A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240930(P2006−240930)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】