説明

その場重合ナノ複合材料

【課題】高い誘電率及び高い破壊強度、さらには良好な機械的強度及び加工性を有するポリマー複合材料を提供する。
【解決手段】本明細書に開示されているのは、ポリマー材料前駆体とナノ粒子とを混合し、それぞれのナノ粒子が基材及び基材上に配置されるコーティング組成物を含むようにすることと、ポリマー材料前駆体を重合してポリマー材料を形成し、ナノ粒子をポリマー材料内に分散させてポリマー組成物を形成することとを含む、ポリマー組成物を形成する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高誘電率ナノ複合材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高エネルギー密度電力変換システム内で使用される静電キャパシタなどのエネルギー蓄積デバイスは、ハイブリッド車及び発電機器などの新規性のある高温デバイスにかかわる高電圧及び高温状態に耐えることが望ましい。したがって、このような蓄積デバイスは、耐コロナ性を持つことで高い絶縁破壊強度を有し、長期耐用性を備えることが望ましい。さらに、キャパシタを高温高エネルギー密度電子回路に組み込む際の電気、信頼性、及び加工に関する要件を満たす好適な高誘電率材料を有することも望ましい。
【0003】
高度な技術を用いた熱可塑性物質は、キャパシタ用の材料として最良の温度安定性及び破壊強度を示すが、これらの材料の誘電率は低く、ナノ充填剤の組み込みは極端に難しい。キャパシタのエネルギー密度は、誘電体の誘電率と破壊強度の二乗とに関係する。したがって、誘電率を向上させた破壊強度を高めた誘電体を備えることで、キャパシタの保持する電荷量を増やし、その一方で小型化し、軽量化することができる。商用及び軍用アビオニクス、さらには軍用及び商用輸送システム向けの新しい電子システムは、高エネルギーを供給することができ、高温下で動作可能である小型キャパシタを必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7465497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エレクトロニクス産業だけでなく自動車産業においても、高い誘電率及び高い破壊強度、さらには良好な機械的強度及び加工性を有する新しいポリマー複合材料に対するニーズがある。したがって、現存する高誘電率複合材料と比べたときに高い誘電率と加工のしやすさ、さらには改善された機械的特性とを併せ持つ組成物を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、方法は、ポリマー材料前駆体とナノ粒子とを混合し、それぞれのナノ粒子が基材及び基材上に配置されるコーティング組成物を含むようにすることと、ポリマー材料前駆体を重合してポリマー材料を形成し、ナノ粒子をポリマー材料内に分散させてポリマー組成物を形成することとを含む。
【0007】
本明細書で開示されるのは、高い誘電率及び高い破壊強度を有するポリマー複合組成物を形成する方法である。ポリマー組成物は、ナノ粒子をポリマー材料内に分散させたものであり、それぞれのナノ粒子は基材の誘電率と異なる誘電率を有するコーティング組成物を分散させた基材を含む。好ましい一実施形態では、基材は、コーティング組成物の誘電率に比べて大きい非常に高い誘電率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態では、ナノ粒子は、基材上に分散させたコーティング組成物の誘電率に比べて大きい誘電率を有する無機酸化物及び/又はセラミック基材を含む。コーティング組成物は、ナノ粒子とポリマー材料との親和性を促進し、ポリマー材料中のナノ粒子の分散を可能にする。一実施形態では、ポリマー材料は、約100℃以上のガラス転移温度を有するポリマーを含む。
【0009】
ポリマー材料及びナノ粒子を含むポリマー組成物は、ポリマー材料単独の場合と比べて高い誘電率を有するが、約200ボルト/マイクロメートル以上の破壊耐性を維持する。
【0010】
ポリマー組成物中に存在するポリマー材料は、広範囲にわたる熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマーの混合、又は熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーとの混合を含みうる。ポリマー材料は、ホモポリマー、星形ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互ブロック共重合体、又はランダム共重合体などの共重合体、アイオノマー、デンドリマー、又は前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせを含むことができる。ポリマー材料は、ポリマー、共重合体、三元共重合体などの混合、或いは前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせとすることもできる。
【0011】
ポリマー材料において使用されうる熱可塑性ポリマーの例として、ポリアセタール、ポリアクリル酸、ポリカーボネート、ポリアルキド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリアリラート、ポリウレタン、エポキシ、フェノール、シリコーン、ポリアリルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリ四フッ化エチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリットイミド、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキシインドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリアンハイドライド、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリビニルハライド、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホン酸塩、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリ尿素、ポリホスファゼン、ポリシラザン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンなど、或いは前記の熱可塑性ポリマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(polyacetals, polyacrylics, polycarbonates, polyalkyds, polystyrenes, polyolefins, polyesters, polyamides, polyaramides, polyamideimides, polyarylates, polyurethanes, epoxies, phenolics, silicones, polyarylsulfones, polyethersulfones, polyphenylene sulfides, polysulfones, polyimides, polyetherimides, polytetrafluoroethylenes, polyetherketones, polyether etherketones, polyether ketone ketones, polybenzoxazoles, polyoxadiazoles, polybenzothiazinophenothiazines, polybenzothiazoles, polypyrazinoquinoxalines, polypyromellitimides, polyquinoxalines, polybenzimidazoles, polyoxindoles, polyoxoisoindolines, polydioxoisoindolines, polytriazines, polypyridazines, polypiperazines, polypyridines, polypiperidines, polytriazoles, polypyrazoles, polycarboranes, polyoxabicyclononanes, polydibenzofurans, polyphthalides, polyacetals, polyanhydrides, polyvinyl ethers, polyvinyl thioethers, polyvinyl alcohols, polyvinyl ketones, polyvinyl halides, polyvinyl nitriles, polyvinyl esters, polysulfonates, polysulfides, polythioesters, polysulfones, polysulfonamides, polyureas, polyphosphazenes, polysilazanes, polypropylenes, polyethylenes, polyethylene terephthalates, polyvinylidene fluorides, polysiloxanes, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing thermoplastic polymers)が挙げられる。
【0012】
例示的なポリマーとしては、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、又は前記のポリマーのうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(polyetherimides, polyphenylene ethers, polyethylene terephthalates, polyethylenes, polypropylenes, polyimides, polyvinylidene fluorides, or a combination comprising at least one of the foregoing polymers)が挙げられる。例示的なポリマーは、マサチューセッツ州ピッツフィールド所在のSabic Innovative Plastics社から市販されているポリエーテルイミド、ULTEM(商標)である。
【0013】
熱可塑性ポリマーの混合の例として、アクリロニトリルブタジエンスチレン/ナイロン、ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド、ポリカーボネート/ポリエステル、ポリフェニレンエーテル/ポリオレフィンなど、或いは前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(acrylonitrile-butadiene-styrene/nylon, polycarbonate/acrylonitrile-butadiene-styrene, polyphenylene ether/polystyrene, polyphenylene ether/polyamide, polycarbonate/polyester, polyphenylene ether/polyolefin, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)が挙げられる。
【0014】
熱可塑性ポリマー材料と混合できる熱硬化性ポリマーの例としては、エポキシ/アミン、エポキシ/無水物、イソシアナート/アミン、イソシアナート/アルコール、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、不飽和ポリエステルとビニルエステルの混合の樹脂、不飽和ポリエステル/ウレタンハイブリッド樹脂、ポリウレタン尿素、反応性ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、反応性ポリアミドなど、或いは前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(resins of epoxy/amine, epoxy/anhydride, isocyanate/amine, isocyanate/alcohol, unsaturated polyesters, vinyl esters, unsaturated polyester and vinyl ester blends, unsaturated polyester/urethane hybrid resins, polyurethane-ureas, reactive dicyclopentadiene (DCPD) resin, reactive polyamides, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)が挙げられる。
【0015】
一実施形態では、ポリマー組成物は、約100℃以上のガラス転移温度を有する。一実施形態では、ポリマー組成物は、約175℃以上のガラス転移温度を有する。他の実施形態では、ポリマー組成物は、約210℃以上のガラス転移温度を有する。さらに他の実施形態では、ポリマー組成物は、約245℃以上のガラス転移温度を有する。さらに他の実施形態では、ポリマー組成物は、約290℃以上のガラス転移温度を有する。
【0016】
一実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づき約5重量パーセントから約99.999重量パーセントのまでポリマー材料を含む。他の実施形態では、ポリマー材料は、ポリマー組成物の総重量に基づき約10重量パーセントから約99.99重量パーセントまでの量だけ存在する。他の実施形態では、ポリマー材料は、約30重量パーセントから約99.5重量パーセントまでの量だけ存在する。他の実施形態では、ポリマー材料は、ポリマー組成物の総重量に基づき約50重量パーセントから約99.3重量パーセントまでの量だけ存在する。
【0017】
上で指摘されているように、ナノ粒子は、コーティング組成物がその上に配置されている基材を含みうる。基材として使用するのに適している材料の例としては、金属、セラミック、ホウ化物、炭化物、ケイ酸塩、カルコゲニド、水酸化物、金属酸化物、窒化物、ペロブスカイト及びペロブスカイト誘導体、リン化物、硫化物、及びケイ化物、ケイ素、炭化ケイ素などなどの半導体、或いは前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(metals, ceramics, borides, carbides, silicates, chalcogenides, hydroxides, metal oxides, nitrides, perovskites and perovskites derivatives, phosphides, sulfides, and silicides, semiconductors such as silicon, silicon carbide or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)が挙げられる。
【0018】
好適な金属の例として、遷移金属、ランタニド、アクチニド、アルカリ金属、アルカリ土類金属など、又は前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。例示的な金属としては、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、銀、チタンなど、又は前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(transition, lanthanide, actinide, alkali, alkaline earth metals, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing. Exemplary metals include aluminum, copper, iron, nickel, palladium, silver, titanium, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing metals)が挙げられる。
【0019】
例示的なホウ化物としては、ホウ化アルミニウム、ホウ化チタンなど、又は前記のホウ化物うちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。例示的な炭化物としては、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、炭化鉄など、又は前記の炭化物うちの少なくとも1つを含む組み合わせ(silicon carbide, titanium carbide, tungsten carbide, iron carbide, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing carbides)が挙げられる。例示的なカルコゲニドとしては、テルル化ビスマス、セレン化ビスマスなど、又は前記のカルコゲニドうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(bismuth telluride, bismuth selenide, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing chalcogenides)が挙げられる。例示的な窒化物としては、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化モリブデン、窒化バナジウムなど、又は前記の窒化物うちの少なくとも1つを含む組み合わせ(silicon nitride, boron nitride, titanium nitride, aluminum nitride, molybdenum nitride, vanadium nitride, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing nitrides)が挙げられる。
【0020】
基材又はコーティングとして使用できるケイ酸塩としては、金属が周期律表の第2A族、つまり、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、及びラジウム(Ra)に由来するものである金属ケイ酸塩(berrylium (Be), magnesium (Mg), calcium (Ca), strontium (Sr), barium (Ba) and radium (Ra))が挙げられる。好ましい金属ケイ酸塩として、MgSiO、CaSiO、BaSiO、及びSrSiO(Mg2SiO4, CaSiO3, BaSiO3 and SrSiO3)が挙げられる。第2A族金属に加えて、本発明の金属ケイ酸塩は、第1A族、つまり、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、及びフランシウム(Fr)に由来する金属を含みうる。例えば、金属ケイ酸塩として、NaSiO及びNaSiO−5HOなどのケイ酸ナトリウム、LiAlSiO、LiSiO、及びLiSiOなどのケイ酸リチウム(lithium (Li), sodium (Na), potassium (K), rubidium (Rb), cesium (Cs) and francium (Fr). For example, metal silicates may include sodium silicates such as Na2SiO3 and NaSiO3-5H2O, lithium silicates such as LiAlSiO4, Li2SiO3 and Li4SiO4)が挙げられる。追加の金属ケイ酸塩としては、AlSi、ZrSiO、KAlSi、NaAlSi、CaAlSi、CaMgSi、BaTiSi、ZnSiO、又は前記のケイ酸塩のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(Al2Si2O7, ZrSiO4, KAlSi3O8, NaAlSi3O8, CaAl2Si2O8, CaMgSi2O6, BaTiSi3O9, Zn2SiO4 or a combination comprising at least one of the foregoing silicates)が挙げられる。
【0021】
例示的な水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなど、又は前記の水酸化物うちの少なくとも1つを含む組み合わせ(aluminum hydroxide, calcium hydroxide, barium hydroxide, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing hydroxides)が挙げられる。
【0022】
例示的な酸化物としては、ジルコン酸塩、チタン酸塩、アルミン酸塩、スズ酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、及び希土類酸化物(zirconates, titanates, aluminates, stannates, niobates, tantalates and rare earth oxides)が挙げられる。例示的な無機酸化物としては、シリカ、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化銅、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、MgSiO、MgO、CaTiO、MgZrSrTiO、MgTiO、MgAl、WO、SnTiO、ZrTiO、CaSiO、CaSnO、CaWO、CaZrO、MgTa、MgZrO、MnO、PbO、Bi及びLa、CaZrO、BaZrO、SrZrO、BaSnO、CaSnO、MgSnO、Bi/2SnO、Nd、Pr11、Yb、Ho、La、MgNb、SrNb、BaNb、MgTa、BaTa、Taなど、或いは前記の酸化物のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(silica, aluminum oxide, silicon dioxide, calcium oxide, cerium oxide, copper oxide, titanium oxide, zinc oxide, zirconium oxide, tantalum oxide, niobium oxide, yttrium oxide, magnesium oxide, Mg2SiO4, MgO, CaTiO3, MgZrSrTiO6, MgTiO3, MgAl2O4, WO3, SnTiO4, ZrTiO4, CaSiO3, CaSnO3, CaWO4, CaZrO3, MgTa2O6, MgZrO3, MnO2, PbO, Bi2O3 and La2O3, CaZrO3, BaZrO3, SrZrO3, BaSnO3, CaSnO3, MgSnO3, Bi2O3/2SnO2, Nd2O3, Pr7O11, Yb2O3, Ho2O3, La2O3, MgNb2O6, SrNb2O6, BaNb2O6, MgTa2O6, BaTa2O6, Ta2O3, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing oxides)が挙げられる。例示的な金属酸化物としては、MgSiO、MgO、CaTiO、MgZrSrTiO、MgTiO、MgAl、MgTa、MgZrOなど、或いは前記の無機酸化物のうちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
【0023】
例示的なペロブスカイト及びペロブスカイト誘導体としては、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム、ストロンチウムドープマンガン酸ランタン、酸化ランタンアルミニウム(LaAlO)、酸化ランタンストロンチウム銅(LSCO)、酸化イットリウムバリウム銅(YBaCu)、チタン酸鉛ジルコン酸塩、ランタン修飾チタン酸ジルコン酸鉛など、ニオブ酸マグネシウム鉛‐チタン酸鉛の組み合わせ、或いは前記のペロブスカイト及びペロブスカイト誘導体のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(barium titanate (BaTiO3), strontium titanate (SrTiO3) barium strontium titanate, strontium-doped lanthanum manganate, lanthanum aluminum oxides (LaAlO3), lanthanum strontium copper oxides (LSCO), yttrium barium copper oxides (YBa2Cu3O7), lead zirconate titanate, lanthanum-modified lead zirconate titanate, or the like, combinations of lead magnesium niobate-lead titanate, or a combination comprising at least one of the foregoing perovskites and perovskite derivatives)が挙げられる。化学式(I)で表される例えば、カルシウム−銅−チタン−酸化物(CCTO)などの巨大誘電現象を例示するペロブスカイトも含めることができる。
【0024】
ACuTi12 (I)
ただし、Aは、カルシウム(Ca)又はカドミウム(Cd)である。
【0025】
他の実施形態では、化学式(II)で表されるペロブスカイトを含めることができる。
【0026】
A’2/3CuTiFeO12 (II)
ただし、A’は、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)である。
【0027】
さらに他の実施形態では、一般化学式(III)で表されるリチウム及びチタン共ドープ酸化ニッケル(LTNO)と称されるペロブスカイトを含めることができる。
【0028】
LiTiNi1−x−yO (III)
ただし、xは約0.3以下であり、yは約0.1以下である。
【0029】
例示的なリン化物としては、リン化ニッケル、リン化バナジウムなど、又は前記のリン化物うちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。例示的なケイ化物としては、ケイ化モリブデンが挙げられる。例示的な硫化物としては、硫化モリブデン、硫化チタン、硫化タングステンなど、又は前記の硫化物うちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
【0030】
基材は、ナノメートル範囲の少なくとも1つの寸法を有する。一般に、基材は、約500nm以下の平均最大寸法を有することが望ましい。この寸法は、直径、面の縁、長さなどとしてよい。基材は、次元性が整数によって定義される形状をとることができ、例えば、無機酸化物基材は、1、2、又は3次元の形状である。これらは、さらに、次元性が整数によって定義されない形状をとることもできる(例えば、フラクタルの形態で存在しうる)。基材は、球、フレーク、繊維、ひげ様形態など、又は前記形態のうちの少なくとも1つを含む組み合わせの形態で存在しうる。これらの基材は、円形、楕円形、三角形、矩形、多角形、又は前記幾何学的形状のうちの少なくとも1つを含む組み合わせとしてよい幾何学的断面形状を持つことができる。市販されているような、基材は、ポリマー材料に組み込む前に、又はポリマー材料に組み込んだ後であっても、凝集体又は集塊の形態で存在しうる。凝集体は、互いに物理的に接触する複数の基材を含み、集塊は、互いに物理的に接触する複数の凝集体を含む。
【0031】
基材は、ナノ粒子の総重量の約0.05から約50重量パーセントの量だけ加えられる。一実施形態では、基材は、ナノ粒子の総重量の約0.1から約30重量パーセントの量だけ加えられる。他の実施形態では、基材は、ナノ粒子の総重量の約1から約25重量パーセントの量だけ加えられる。さらに他の実施形態では、基材は、ナノ粒子の総重量の約3から約20重量パーセントの量だけ加えられる。
【0032】
ナノサイズの無機酸化物基材の市販されている例は、NANOACTIVE(商標)酸化カルシウム、NANOACTIVE(商標)酸化カルシウムプラス、NANOACTIVE(商標)酸化セリウム、NANOACTIVE(商標)酸化マグネシウム、NANOACTIVE(商標)酸化マグネシウムプラス、NANOACTIVE(商標)酸化チタン、NANOACTIVET(商標)酸化亜鉛、NANOACTIVE(商標)酸化ケイ素、NANOACTIVE(商標)酸化銅、NANOACTIVE(商標)酸化アルミニウム、NANOACTIVE(商標)酸化アルミニウムプラスであり、これらはすべてNanoScale Materials Incorporated社から市販されている。ナノサイズの窒化物の市販されている例は、ESK社(ドイツ、ケンプテン所在)から市販されているBORONID(商標)窒化ホウ素である。
【0033】
コーティング組成物は、単一の層又は複数の層を含むことができる。コーティング組成物が基材上に1つ又は複数の層として配置される場合、少なくとも1つの層は、他の層と異なる誘電率又は基材が非金属である場合には基材と異なる誘電率を有する。一実施形態では、これらの層のうちのいくつかは、他の層の誘電率に類似する誘電率を有しうるが、異なる化学組成を有する。一実施形態では、コーティング組成物層は、最内層がすべての層のうちで最も高い誘電率を有し、最外層が最も低い誘電率を有するように基板上に配列構成される。一実施形態では、コーティング組成物の最内層は最高の誘電率を有するが、それぞれの後続の外側の層は先行する内側の層より低い誘電率を有する。言い換えると、それぞれの層は、ナノ粒子の中心により近い内側の層の誘電率より低い誘電率を有するということである。
【0034】
ナノ粒子の表面は、ポリマー前駆体ポリマーに対するナノ粒子の親和性を高める、官能基、例えば、ヒドロキシル基を備え、これにより、ポリマー材料内のナノ粒子の分散を改善することができる。
【0035】
コーティング組成物は、基材を形成するために使用される上述の材料のうちの一部を含みうる。例えば、ナノ粒子は、酸化アルミニウム層でコーティングされたアルミニウム金属基材を含むことができる。他の実施例では、ナノ粒子は、酸化アルミニウムの内層と二酸化ケイ素の外層とが配置される酸化チタンを基材を含むことができる。さらに他の実施例では、ナノ粒子は、窒化ホウ素層が配置されるストロンチウムドープ酸化チタン基材を含むことができる。誘電率が減少する複数の層を備える好適なナノ粒子の一例は、ランタン修飾PZT(k=1000)−PZT(k=500)−SrTiO(k=250)−TiO(k=104)−Al(k=9.6)−SiO(k=3.9)の層をこの順序で内側から外側へコーティングした誘電率k=3000を有するチタン酸バリウム基材である。
【0036】
一実施形態では、コーティング組成物のそれぞれの層は、約10ナノメートル以下の厚さを有することができる。他の実施形態では、コーティング組成物のそれぞれの層は、約5ナノメートル以下の厚さを有することができる。さらに他の実施形態では、コーティング組成物のそれぞれの層は、約2ナノメートル以下の厚さを有することができる。基材上へのコーティング組成物の蒸着は、コーティング組成物を形成するために使用される成分の溶液中で、又は直接そのような成分が存在する中で実行されうる。溶液中で蒸着が実行される場合、適切な溶媒が使用されうる。基材をコーティングする一方法では、基材を、例えばアイリッヒミキサーなどの混合装置内で適宜好適な温度まで加熱することができ、その後、コーティング組成物又はコーティング組成物に対する反応性前駆体を含む溶液をその混合装置に加える。基材は、基材に対し均一なコーティングを行うのに有効な期間の間に溶液の存在下で混合される。コーティングが促進されるように、混合プロセスの実行中にこの温度を増減するとよい。コーティングの後、ナノ粒子を乾燥させて、未反応の前駆体を除去し、また存在しうる溶媒を取り除く。乾燥粒子を焼結段階に通し、コーティング組成物の反応性前駆体をさらに反応させることができる。
【0037】
一実施形態では、コーティングされた粒子に第2のコーティングプロセスを実行して、第1の層の組成と類似する組成を有する第2の層でナノ粒子をコーティングすることができる。他の実施形態では、コーティングされた粒子に第2のコーティングプロセスを実行して、第1の層の組成と異なる組成を有する第2の層でナノ粒子をコーティングすることができる。
【0038】
ナノ粒子の形成を対象とする、さらに他の実施形態では、金属を含む基材を酸化するか、浸炭するか、又は窒化して基材上にセラミック層を形成する。このプロセスは、ときには金属表面の不動態化と称されることもある。例示的な一実施形態では、アルミニウムを含む基材を酸化して、アルミニウム上に酸化アルミニウムの層を形成する。次いで、アルミニウム基材状に配置される酸化アルミニウムコーティングを含むナノ粒子をポリマー材料中に分散させて組成物を形成する。
【0039】
さらに他の実施形態では、化学気相成長法(CVD)、原子層堆積法(ALD)、膨張性熱プラズマ法(ETP)、イオンプレーティング、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、金属有機化学気相成長法(MOCVD)(有機金属化学気相成長法(OMCVD)ともいう)、有機金属気相エピタキシー法(MOVPE)、スパッタリングなどの物理的気相成長法、反応性電子ビーム(eビーム)蒸着法、及びプラズマスプレーなどのプロセスによってコーティング組成物で基材をコーティングできる。
【0040】
一実施形態では、ナノ粒子は、適宜、ポリマー材料との結合又は接着をしやすくするために表面処理されうる。一実施形態では、表面処理は、シランカップリング剤でナノ粒子をコーティングすることを含む。好適なシランカップリング剤の例としては、テトラメチルクロロシラン、ヘキサジメチレンジシラザン、ガンマ−アミノプロポキシシランなど、又は前記シランカップリング剤のうちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。シランカップリング剤は、一般に、ナノ粒子とポリマー材料との親和性を促進し、ポリマー材料中のナノ粒子の分散を改善する。
【0041】
上で指摘されているように、ナノ粒子は、ナノメートル範囲の少なくとも1つの寸法を有する。一般に、ナノ粒子は、約1,000nm以下の平均最大寸法を有することが望ましい。この寸法は、直径、面の縁、長さ、又は同様のものとしてよい。一実施形態では、ナノ粒子の形状及び幾何学的配置は、基材のものと同じであるものとすることができる。他の実施形態では、ナノ粒子の形状及び幾何学的配置は、基材のものと異なるものとすることができる。
【0042】
ナノ粒子は、次元性が整数によって定義される形状をとることができ、例えば、無機酸化物ナノ粒子は、1、2、又は3次元の形状である。これらは、さらに、次元性が整数によって定義されない形状をとることもできる(例えば、フラクタルの形態で存在しうる)。ナノ粒子は、球、フレーク、繊維、ひげ様形態など、又は前記形態のうちの少なくとも1つを含む組み合わせの形態で存在しうる。これらのナノ粒子は、円形、楕円形、三角形、矩形、多角形、又は前記幾何学的形状のうちの少なくとも1つを含む組み合わせとしてよい幾何学的断面形状を持つことができる。市販されているような、ナノ粒子は、ポリマー材料に組み込む前に、又はポリマー材料に組み込んだ後であっても、凝集体又は集塊の形態で存在しうる。凝集体は、互いに物理的に接触する複数のナノ粒子を含み、集塊は、互いに物理的に接触する複数の凝集体を含む。
【0043】
ナノ粒子の正確なサイズ、形状、及び組成に関係なく、これらは、必要なときにポリマー組成物の総重量の約0.0001から約50重量%の負荷量でポリマー材料中に存在しうる。一実施形態では、ナノ粒子は、ポリマー組成物の総重量に基づき約1重量%以上の量だけ存在する。他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリマー組成物の総重量の約1.5重量%以上の量だけ存在する。他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリマー組成物の総重量の約2重量%以上の量だけ存在する。一実施形態では、ナノ粒子は、組成物の総重量に基づき約40重量%以下の量だけ存在する。他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリマー組成物の総重量に基づき約30重量%以下の量だけ存在する。他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリマー組成物の総重量の約25重量%以下の量だけ存在する。
【0044】
ポリマー組成物は、ナノ粒子とポリマー材料前駆体及び任意選択の充填剤と混合することと、その後の、ポリマー材料前駆体のその場重合により形成される。ナノ粒子は、ポリマー材料前駆体と、限定はしないが、溶融混合、溶液混合など、或いは前記の混合方法のうちの少なくとも2つを含む組み合わせなどのいくつかの異なる方法で混合することができる。重合反応は、(複数の)混合段階の後に、又はその最中に発生しうる。
【0045】
ポリマー材料前駆体を重合するために、限定はしないが、溶液重合、溶融重合、又はこれらの組み合わせを含む、さまざまな技術を使用することができる。溶液重合法を使用し、その後に溶融重合を使用するハイブリッド重合プロセスは、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,053,168号公報及び米国特許第6,790,929号公報において開示されている。溶融重合及び溶融混合は、剪断力、伸長力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、又は前記の力、又はエネルギーの形態のうちの少なくとも1つを含む組み合わせを使用することを伴い、加工装置内で実施され、この加工装置において、前記の力は単一のネジ、複数のネジ、互いに噛み合い、同じ方向に回転するか又は反対回転するネジ、互いに噛み合わない、同じ方向に回転するか又は反対回転するネジ、往復するネジ、ピンを備えたネジ、ピンを備えたバレル、ローラー、ラム、ヘリカルローター、又は前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせによって加えられる。
【0046】
前記の力を伴う溶融重合又は溶融混合は、限定はしないが、単一又は複数のスクリュー押し出し機、バスニーダー、ヘンシェル、ヘリコン、ロス混合機、バンベリー、ロールミル、射出成形機、真空成形機、ブロー成形機など、又は前記機械のうちの少なくとも1つを含む組み合わせなどの成形機などを含む機械で実施されうる。一般に、ポリマー材料前駆体の溶融(若しくは溶液)重合又は混合において、組成物に約0.01から約10キロワット時/キログラム(kwhr/kg)の比エネルギーを与えることが望ましい。この範囲内で、約0.05kwhr/kg以上、好ましくは約0.08kwhr/kg以上、より好ましくは約0.09kwhr/kg以上の比エネルギーが、一般的に望ましい。また、約9kwhr/kg以下、好ましくは約8kwhr/kg以下、より好ましくは約7kwhr/kg以下の比エネルギー量が望ましい。
【0047】
一実施形態では、ポリマー材料前駆体は、押出成形機又はバスニーダーなどの溶融混合/重合デバイス内に送り込まれる前に、必要ならばヘンシェル又はロールミルでナノ粒子及び他の任意選択の充填剤とともに最初に乾燥混合されうる。他の実施形態では、ナノ粒子は、マスターバッチの形で溶融混合/重合デバイス内に導入される。このようなプロセスでは、マスターバッチは、ポリマー材料前駆体の下流の溶融デバイス内に導入されうる。
【0048】
マスターバッチが使用される場合、ナノ粒子は、マスターバッチの総重量の約20から約50重量%の量だけマスターバッチ内に存在しうる。一実施形態では、ナノ粒子は、マスターバッチの総重量の約22.5重量%以上の量だけ使用される。他の実施形態では、ナノ粒子は、マスターバッチの総重量の約25重量%以上の量だけ使用される。他の実施形態では、ナノ粒子は、マスターバッチの総重量の約30重量%以上の量だけ使用される。一実施形態では、ナノ粒子は、マスターバッチの総重量の約45重量%以下の量だけ使用される。他の実施形態では、ナノ粒子は、マスターバッチの総重量の約40重量%以下の量だけ使用される。他の実施形態では、ナノ粒子は、マスターバッチの総重量の約35重量%以下の量だけ使用される。
【0049】
組成物の溶液混合において、溶媒が使用されうる。溶媒は、粘度調整剤として、又はポリマー材料前駆体中のナノ粒子の分散及び/又は懸濁を容易にするために使用されうる。炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ブチロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなど、又は前記溶媒のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(propylene carbonate, ethylene carbonate, butyrolactone, acetonitrile, benzonitrile, nitromethane, nitrobenzene, sulfolane, dimethylformamide, N- methylpyrrolidone, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing solvents)などの液体非プロトン性極性溶媒を使用することができる。水、メタノール、アセトニトリル、ニトロメタン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど、又は前記極性プロトン性溶媒のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(water, methanol, acetonitrile, nitromethane, ethanol, propanol, isopropanol, butanol, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing polar protic solvents)などの極性プロトン性溶媒を使用することができる。必要ならば、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、四塩化炭素、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど、又は前記溶媒のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(benzene, toluene, methylene chloride, carbon tetrachloride, hexane, diethyl ether, tetrahydrofuran, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing solvents)などの他の非極性溶媒も使用することができる。少なくとも1つの非プロトン性極性溶媒及び少なくとも1つの非極性溶媒を含む共溶媒も、使用できる。一実施形態では、溶媒は、キシレン又はN−メチルピロリドンである。
【0050】
溶媒が使用される場合、これは、組成物の総重量の約1から約50重量%の量だけ使用されうる。一実施形態では、溶媒が使用される場合、これは、組成物の総重量の約3から約30重量%の量だけ使用されうる。さらに他の実施形態では、溶媒が使用される場合、これは、組成物の総重量の約5から約20重量%の量だけ使用されうる。一般に、組成物の混合前、混合中、及び/又は混合後に、溶媒を蒸発させることが望ましい。
【0051】
混合は、分散剤、結合剤、重合調整剤、洗剤、及び添加物などのさまざまな二次化学種を使用して補助されうる。二次化学種は、さらに、組成物の特性のうちの1つ乃至複数を高めるためにも添加されうる。
【0052】
溶液混合又は重合では、さらに、剪断、圧縮、超音波振動、又は同様のものなどの追加のエネルギーを使用して、ナノ粒子とポリマー材料との均質化を促進することができる。一実施形態では、溶媒中に懸濁されたポリマー材料前駆体は、ナノ粒子とともに超音波処理装置内に導入されうる。ここの混合物に対し、ポリマー材料前駆体中にナノ粒子を分散させ、前駆体を重合するのに有効な期間の間超音波処理を実行することができる。次いで、ポリマー組成物を、必要ならば乾燥させ、押し出し、成形することができる。一般に、溶媒は超音波処理プロセスにおいてポリマー材料前駆体を膨張させることが望ましい。ポリマー材料前駆体を膨張させると、一般に、溶液混合及び溶液重合プロセスにおいてナノ粒子をポリマー材料前駆体に含浸させる能力が向上し、したがって分散も向上する。
【0053】
一実施形態では、ポリマー材料前駆体、ナノ粒子、及び任意選択の充填剤の溶液混合後に、押出成形機などの連続処理装置を通じてよく混ぜた懸濁液を処理し、その場重合反応を完結し、一定分子量のポリマー材料を形成する。界面脱揮発による重合溶媒の除去により、ナノ複合ポリマー組成物は溶媒を含まなくなる。その代わりに、押出成形機から出てくる溶融ポリマー組成物を単一の工程段階で延伸して薄いフィルムにし、これを後続の段階で金属化し、キャパシタを加工するために使用することができる。
【0054】
ポリマー材料前駆体は、一般に、モノマー、或いはダイマー、トライマー、又は同様のものを含むオリゴマーであり、反応させてポリマー材料にできる。ポリマー材料前駆体中で使用できるモノマーの好適な例は、限定はしないが、アミド酸、ポリアセタール、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリアリルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレーンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリ四フッ化エチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなど、又は前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせ(amic acids, polyacetals, polyacrylics, polycarbonates, polystyrenes, polyesters, polyamides, polyamideimides, polyarylates, polyurethanes, polyarylsulfones, polyethersulfones, polyarylene sulfides, polyvinyl chlorides, polysulfones, polyetherimides, polytetrafluoroethylenes, polyetherketones, polyether etherketones, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)などのポリマーの合成で使用される物質である。例示的な一実施形態では、ポリマー材料前駆体はアミド酸を含む。アミド酸は、カルボン酸官能基を有し、アルミナナノ粒子などのナノ粒子の一部では、この官能基に対する親和性が高い。ポリマー材料前駆体とナノ粒子との間のこのような相互作用は、重合プロセス実行時の分散を維持するための優れた手段となり、その結果として、ポリマー組成物の破壊強度が増大する。一実施形態では、ポリマー材料、ポリマー材料前駆体、流体、及び/又はナノ粒子の混合物は、約1分から約24時間までの時間をかけて超音波処理される。他の実施形態では、この混合物は、約5分以上の時間をかけて超音波処理される。他の実施形態では、この混合物は、約10分以上の時間をかけて超音波処理される。他の実施形態では、この混合物は、約15分以上の時間をかけて超音波処理される。一実施形態では、この混合物は、約15時間以下の時間をかけて超音波処理される。他の実施形態では、この混合物は、約10時間以下の時間をかけて超音波処理される。他の実施形態では、この混合物は、約5時間以下の時間をかけて超音波処理される。
【0055】
ポリマー材料及びナノ粒子を含むポリマー組成物は、所望であれば、複数の形成段階に通されうる。例えば、組成物は、押し出し成形され、ペレット状にされうる。これらのペレットは、成形機に送られ、そこで、他の望ましい形状に形成されうる。それとは別に、単一溶融混合装置から出たポリマー組成物は、シート又は紐状に形成され、アニーリング、一軸又は二軸配向などの押し出し後プロセスに通されうる。
【0056】
ポリマー材料及びナノ粒子を含むポリマー組成物は、ポリマー材料単独又はポリマー材料及び粒子サイズがマイクロメートル範囲内である粒子を含む他の市販の組成物に勝る利点を有する。一実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマー材料単独を含む組成物に比べて少なくとも10%大きな誘電率を有する。他の実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマー材料単独に比べて少なくとも50%大きな誘電率を有する。他の実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマー材料単独に比べて少なくとも100%大きな誘電率を有する。
【0057】
ポリマー組成物は、ポリマー材料単独又はポリマー材料及び粒子サイズがマイクロメートル範囲内である粒子を含む他の市販の組成物より有利に大きな絶縁破壊電圧も有する。一実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも150ボルト/マイクロメートル(V/マイクロメートル)である絶縁破壊電圧を有する。絶縁破壊電圧は、一般に、組成物の厚さに関して決定される。他の実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも300V/マイクロメートルである絶縁破壊電圧を有する。他の実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも400V/マイクロメートルである絶縁破壊電圧を有する。他の実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも500V/マイクロメートルである絶縁破壊電圧を有する。さらに他の実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも600V/マイクロメートルである絶縁破壊電圧を有する。
【0058】
ポリマー組成物は、ポリマー材料単独又はポリマー材料及び粒子サイズがマイクロメートル範囲内である粒子を含む他の市販の組成物より有利に大きな耐コロナ性も有する。一実施形態では、ポリマー組成物は、約200時間から約2000時間かけて印加される約1000ボルトから5000ボルトの電圧に耐える耐コロナ性を有する。他の実施形態では、ポリマー組成物は、約250時間から約1000時間かけて印加される約1000ボルトから5000ボルトの電圧に耐える耐コロナ性を有する。さらに他の実施形態では、ポリマー組成物は、約500時間から約900時間かけて印加される約1000ボルトから5000ボルトの電圧に耐える耐コロナ性を有する。
【0059】
ポリマー組成物は、約0.1から約10ヘルツ(Hz)の周波数で測定されたときに約3以上の誘電率を有する。一実施形態では、組成物は、約0.1から約10ヘルツ(Hz)の周波数で測定されたときに約5以上の誘電率を有する。さらに他の実施形態では、ポリマー組成物は、約0.1から約10Hzの周波数で測定されたときに約10以上の誘電率を有する。さらに他の実施形態では、ポリマー組成物は、約0.1から約10Hzの周波数で測定されたときに約50以上の誘電率を有する。
【0060】
他の実施形態では、ポリマー組成物は、約5キロジュール/平方メートル(kJ/m)以上の衝撃強さも有する。他の実施形態では、ポリマー組成物は、約10kJ/m以上の衝撃強さを有する。他の実施形態では、ポリマー組成物は、約15kJ/m以上の衝撃強さを有する。他の実施形態では、ポリマー組成物は、約20kJ/m以上の衝撃強さを有する。
【0061】
ナノ粒子を含むポリマー組成物は、光学的に透明であるものとしてもよい。一実施形態では、ポリマー組成物は、可視光に対し約70%以上の透過率を有する。他の実施形態では、ポリマー組成物は、可視光に対し約80%以上の透過率を有する。さらに他の実施形態では、ポリマー組成物は、可視光に対し約90%以上の透過率を有する。さらに他の実施形態では、ポリマー組成物は、可視光に対し約95%以上の透過率を有する。
【0062】
ポリマー組成物は、約200マイクロメートル以下の厚さを有する薄膜フィルムを加工するために使用できる。一実施形態では、このフィルムは、約100マイクロメートル以下の厚さを有する。一実施形態では、このフィルムは、約50マイクロメートル以下の厚さを有する。他の実施形態では、このフィルムは、約30マイクロメートル以下の厚さを有する。他の実施形態では、このフィルムは、約10マイクロメートル以下の厚さを有する。他の実施形態では、このフィルムは、約5マイクロメートル以下の厚さを有する。
【0063】
さらに他の実施形態では、組成物は、成形されたときにクラスAの表面仕上げも有する。成形物品は、射出成形、ブロー成形、圧縮成形など、又は前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせにより製造されうる。
【0064】
組成物は、有利には、スパークプラグキャップ、キャパシタ、除細動器、プリント配線板、又は他の物品において使用できる。ポリマー組成物は、動作温度が最大約200℃までである高温キャパシタにおいて特に有用である。他の実施形態では、ポリマー組成物は、動作温度が最大約300℃までであるキャパシタを形成するために使用される。
【0065】
例示的であることを意図されている、以下の実施例は、限定することなく、組成物及び組成物のさまざまな実施形態のうちのいくつかの製造方法並びに本明細書で説明されている製造の方法を例示している。
【実施例1】
【0066】
シリカナノ粒子の表面に付着するヒドロキシル基をアミノ基終端シランと反応させてナノ粒子の表面を不動態化した。官能化ナノ粒子を溶媒中でポリアミド酸と結合させた。溶液を超音波処理して、重合反応前にナノ粒子分散性を増強した。ナノ複合材料の薄膜を鋳造し、ポリマー組成物を硬化させ、脱揮発した。その結果得られたナノ複合材料フィルムの破壊強度は、約500から約600V/マイクロメートルまでの範囲内であった。
【実施例2】
【0067】
アルミナナノ粒子の表面に付着しているヒドロキシル基を溶媒中でポリアミド酸と反応させた。溶液を超音波処理して、重合反応前にナノ粒子分散性を増強した。ナノ複合材料の薄膜を鋳造し、ポリマー組成物を硬化させ、脱揮発した。その結果得られたナノ複合材料フィルムの破壊強度は、約500から約600V/マイクロメートルまでの範囲内であった。
【0068】
本明細書で開示されているすべての範囲は、終点を包含し、またそれらの終点は、互いに組み合わせ可能である。本明細書で使用される「第1」、「第2」などの用語は、順序、数量、又は重要度を表さず、むしろ、要素を互いに区別するために使用されている。数量に関連して使用されている修飾子「約(about)」及び「約(approximately)」は、述べられている値を包含し、文脈で示される意味を有する(例えば、特定の数量の測定に関連する誤差の程度を含む)。本発明を説明する英語原文の文脈において「a」及び「an」及び「the」及び類似の指示対象の用語を使用している場合(特に、添付の請求項の文脈において)、本明細書において特に断りのない限り、又は文脈上明確に矛盾していない限り、単数形と複数形の両方を含むものと解釈されるべきである。
【0069】
本発明は、いくつかの実施形態に関して詳細に説明されているが、本発明は、そのような開示されている実施形態に限定されない。むしろ、本発明は、これまでに説明されていないが、本発明の趣旨と範囲に適合している、多くの変更、改変、置換、又は同等の配列を組み込むように修正することができる。それに加えて、本発明のさまざまな実施形態について説明されているが、本発明の態様は、説明されている実施形態の一部のみを含みうることを理解されたい。したがって、本発明は、前記の説明によって制限されるものと見なされるべきではなく、付属の請求項の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物を形成する方法であって、
ポリマー材料前駆体とナノ粒子とを混合し、それぞれのナノ粒子が基材及び前記基材上に配置されるコーティング組成物を含むようにすることと、
前記ポリマー材料前駆体を重合してポリマー材料を形成し、前記ナノ粒子を前記ポリマー材料内に分散させてポリマー組成物を形成することとを含む方法。
【請求項2】
前記ポリマー材料前駆体及びナノ粒子は、溶液混合、溶融混合、又はこれらの組み合わせによって混合される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー材料前駆体は、モノマー又はオリゴマーを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー材料前駆体は、溶液重合、溶融重合、又はこれらの組み合わせによって重合される請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング組成物は、1つ又は複数の層を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
最内層の誘電率は、最外層の誘電率より高い請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記基材は、金属、セラミック、ホウ化物、炭化物、ケイ酸塩、カルコゲニド、水酸化物、金属、金属酸化物、窒化物、ペロブスカイト、ペロブスカイト誘導体、リン化物、硫化物、ケイ化物、又は前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング組成物は、セラミック、ホウ化物、炭化物、ケイ酸塩、カルコゲニド、水酸化物、金属、金属酸化物、窒化物、ペロブスカイト、ペロブスカイト誘導体、リン化物、硫化物、ケイ化物、又は前記のうちの少なくとも1つを含む組み合わせを含む請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー組成物は、少なくとも150ボルト/マイクロメートルの絶縁破壊電圧を有する請求項1記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載のポリマー組成物を含む物品。

【公開番号】特開2010−215909(P2010−215909A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58596(P2010−58596)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】