アクチュエータ
【課題】支持ロッドの作動後の後退移動を防止可能なロック機構を備えていても、コンパクトに製造することが可能なアクチュエータを提供すること。
【解決手段】本発明のアクチュエータAは、シリンダ21内に配置されたピストン38を、シリンダ21内に作動用流体Gを流入させることにより、ピストン38に連結された支持ロッド45とともに移動させる構成とされ、前進移動した支持ロッド45の後退移動を規制するロック機構Rを備えている。ロック機構Rが、ピストン38の軸回り方向に沿った外周面から突出可能なロックピン43と、シリンダ38内に流入する作動用流体Gを流入させる流入路部40と、ロックピン43を係止する係止面25と、を備えて、流入路部40を経てロックピン43の収納部位39内に流入させた作動用流体Gの圧力を利用して、ロックピン43をピストン38の外周面から突出させる構成である。
【解決手段】本発明のアクチュエータAは、シリンダ21内に配置されたピストン38を、シリンダ21内に作動用流体Gを流入させることにより、ピストン38に連結された支持ロッド45とともに移動させる構成とされ、前進移動した支持ロッド45の後退移動を規制するロック機構Rを備えている。ロック機構Rが、ピストン38の軸回り方向に沿った外周面から突出可能なロックピン43と、シリンダ38内に流入する作動用流体Gを流入させる流入路部40と、ロックピン43を係止する係止面25と、を備えて、流入路部40を経てロックピン43の収納部位39内に流入させた作動用流体Gの圧力を利用して、ロックピン43をピストン38の外周面から突出させる構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用安全装置に使用されるアクチュエータに関し、例えば、保護対象物としての歩行者を受け止める際のフードパネルを持ち上げる等の作動に使用されるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される自動車用安全装置のアクチュエータとしては、フードパネルの塑性変形時のエネルギー吸収を利用して、フードパネル自体で歩行者を受け止めることができるように、フードパネルの後端側を上昇させるものがあった。具体的には、従来、アクチュエータとして、筒状のシリンダ内に配置されたピストンを、シリンダ内に作動用流体を流入させることにより、ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプとして、構成されて、前進移動した支持ロッドの後退移動を規制するロック機構を備える構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。この従来のアクチュエータでは、ロック機構として、シリンダから軸直交方向に沿って突出するように配設されるホルダと、ホルダに付勢手段を介して保持される係止片と、を、から構成されるものを使用していた。このロック機構では、作動時に、係止片を、付勢手段の付勢力によりシリンダ内に突出させるように移動させて、この係止片により、支持ロッドの後退移動を規制していた。
【特許文献1】特開2002−29367公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のアクチュエータでは、ロック機構が、係止片自体と付勢手段の分、シリンダから軸直交方向に沿って大きく突出するように配設されていることから、シリンダの軸直交方向側に大きく嵩張ることとなり、アクチュエータ自体をコンパクトにする点に改善の余地があった。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、支持ロッドの作動後の後退移動を防止可能なロック機構を備えていても、コンパクトに製造することが可能なアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るアクチュエータは、自動車安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に配置されたピストンを、シリンダ内に作動用流体を流入させることにより、ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプとして、構成されるとともに、
前進移動した支持ロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
シリンダの先端壁部から突出した支持ロッドが、保護対象物を受け止める受止材に連結される構成のアクチュエータであって、
支持ロッドが、前進移動後における受止材の保護対象物の受け止め時、保護対象物の運動エネルギーを吸収可能に、塑性変形可能に配設され、
ロック機構が、
前進移動時に、元部側をピストン内に収納させた状態で、ピストンの軸回り方向に沿った外周面から、先端部側をピストンの軸直交方向に沿って突出可能として、ピストンの軸方向に沿った移動を規制されて、ピストン内に収納保持されるロックピンと、
シリンダ内に流入する作動用流体を、ロックピンの元部側の収納部位まで流入可能に、ピストンに形成される流入路部と、
シリンダの内周面におけるピストンの前進移動後の配置位置に配設されて、支持ロッドの後退移動を規制可能に、先端部側をピストンから突出させたロックピンを係止する係止面と、
を備える構成とされて、
作動時に、流入路部を経てロックピンの収納部位内に流入させた作動用流体の圧力を利用して、ロックピンの先端部側をピストンの外周面から突出させるように移動させる構成とされていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係るアクチュエータでは、作動時、シリンダ内に作動用流体が流入されて充満されると、シリンダ内に収納されたピストンが、作動用流体に押されて、支持ロッドとともに、前進移動することとなる。このとき、本発明のアクチュエータでは、ピストンが作動用流体に押されると同時に、ピストンに設けられた流入路部を経てロックピンが収納される収納部位内に、作動用流体が流入することとなり、ロックピンは、作動用流体の押圧力を受けて、先端面を、常時、シリンダの内周面に摺接された状態で、ピストンが支持ロッドとともに前進移動する。その後、ピストンに収納されたロックピンがシリンダの内周面に設けられた係止面に対応する位置に配置されるまで、ピストンが前進移動すれば、ロックピンが、流入路部を経てロックピンの収納部位内に流入された作動用流体の圧力を受けて、瞬時に、収納部位から突出されて、先端部側を、係止面に係止されることとなる。そして、ロックピンは、元部側を収納部位内に収納されて、ピストンの軸方向に沿った移動を規制された状態で、収納部位と係止面との間にまたがるように配置されることから、このロックピンにより、前進移動した支持ロッドの後退移動を規制することができ、前進移動後における受止材の保護対象物の受け止め時に、支持ロッドを塑性変形させて、保護対象物の運動エネルギーを吸収させることができる。さらに、本発明のアクチュエータでは、前進移動した支持ロッドの後退移動を規制するロック機構は、ピストン内に収納されるロックピンと、シリンダの内周面側に形成される係止面と、から、構成されていることから、ロック機構がシリンダから外側に突出するように配設されず、アクチュエータの外形形状を略円柱状とできて、極力コンパクトにすることができる。
【0007】
したがって、本発明のアクチュエータでは、支持ロッドの作動後の後退移動を防止可能なロック機構を備えていても、コンパクトに製造することができる。
【0008】
また、本発明のアクチュエータでは、ピストンを移動させる作動用流体を利用して、ロックピンを押出移動させる構成であることから、ロック機構を作動させるための駆動源を別途配設させる必要もなく、構成が複雑化することを抑えて、部品点数の増加も防止することができる。
【0009】
さらに、本発明のアクチュエータにおいて、シリンダに、ピストンの前進移動後におけるロックピンの突出位置に前進移動時のピストンを摺動させる摺動部より大径とした大径部を、配設させ、
大径部における摺動部からの段差面を、係止面として、構成することが好ましい。
【0010】
アクチュエータを上記構成とすれば、シリンダの内周面にロックピンを挿通可能な凹部等を設けて係止面とする場合と比較して、係止面の製造が容易となって好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成のアクチュエータにおいて、ロックピンを、ピストンの外周面側に、軸回り方向に沿って略等間隔となる複数箇所に配設させる構成とすれば、シリンダの軸回り方向に沿った全域にわたって、ロックピンが係止面に対して係止されることから、支持ロッドの突出状態を安定させることができて、好ましい。
【0012】
さらにまた、上記構成のアクチュエータにおいて、収納部位に、ロックピンのピストン中心側への移動を防止する移動防止壁部を設ける構成とすれば、ロックピンが必要以上にピストンの中心側へ移動することを防止できて、好ましい。
【0013】
さらにまた、上記構成のアクチュエータにおいて、収納部位におけるロックピンの周囲に、突出したロックピンの戻りを防止する戻り防止手段を、配設させる構成とすれば、収納部位から突出したロックピンが、シリンダの内周面に当たって収納部位側へ戻ることを防止でき、ロックピンの突出状態を安定して維持させることができて、好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のアクチュエータAは、図1〜3に示すように、車両Vに搭載される自動車安全装置としての歩行者保護装置Mにおける上昇装置Uに使用されるものであり、この上昇装置Uは、アクチュエータAの作動時に、フードパネル15の後端15cを上昇させる構成である。そして、実施形態のアクチュエータAは、車両Vのフードパネル15の後端15c付近の下方に配設されている。なお、歩行者保護装置Mは、歩行者を受け止めることとなる受止材としてのフードパネル15の後端15cを上昇させる上昇装置Uと、フロントピラー4から歩行者を保護するエアバッグ10を有したエアバッグ装置9と、を備えて構成されている。
【0015】
なお、車両Vのフロントバンパ5には、図1に示すように、保護対象物としての歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されている。そして、センサ6からの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ6からの信号に基づいて車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際、エアバッグ装置9のインフレーター11(図3参照)と、上昇装置UのアクチュエータAにおける駆動源としてのガス発生器35(図7参照)と、を作動させるように構成されている。
【0016】
フードパネル15は、図1〜3に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁側における後端15c近傍に配置されるヒンジ部16により、車両Vのボディ1に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル15は、アルミニウム(アルミニウム合金)等からなる板金製として、上面側のアウタパネル15aと、下面側に位置してアウタパネル15aより強度を向上させたインナパネル15bと、から構成されている。フードパネル15は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形するものである。そして、実施形態では、この塑性変形時の変形量を増大させるように、エンジンルームERの上方に大きな空間を設けることを目的として、車両Vの歩行者との衝突時、上昇装置UのアクチュエータAを作動させて、後端15cを上昇させることとなる。また、実施形態の上昇装置Uは、フードパネル15の後端15cを持ち上げて、カウル7とフードパネル15の後端15cとの間に、エアバッグ10を突出させる大きな隙間Sを設ける役目も果たしている。
【0017】
ヒンジ部16は、フードパネル15の後端15c側における左縁15dと右縁15eとに配設され(図1参照)、それぞれ、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結される取付フランジ2aに固定されるヒンジベース17、フードパネル15側に固定されるヒンジアーム19、を備えて構成されている(図3参照)。各ヒンジアーム19は、図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース17側の元部端19aが、支持軸18を利用してヒンジベース17に対して回動可能に連結され、元部端19aから離れる先端19bが、取付ブラケット20に溶接等を利用して結合されている。各支持軸18は、それらの軸方向を、車両Vの左右方向に沿って配設させている。そのため、フードパネル15を開く際には、図3の実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸18を回転中心として、各ヒンジアーム19の先端19b側とともに、フードパネル15の前端15f側(図1参照)を前開きで上昇させることとなる。
【0018】
なお、ヒンジアーム19の先端19b付近は、アクチュエータAの作動時における支持ロッド45のフードパネル15の後端15cの押し上げ時、塑性変形する塑性変形部19cとしている(図4参照)。ちなみに、フードパネル15の後端15cの上昇時には、前開きで開閉させるフードパネル15の前端15f側に配置されて、通常閉塞時に前端15fに配置されている図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、前端15f側は、ボディ1側から外れることはない。
【0019】
エアバッグ装置9は、図2,3に示すように、エアバッグ10、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するインフレーター11、エアバッグ10とインフレーター11とを収納するケース12、及び、エアバッグ10とインフレーター11とを収納したケース12を開き可能に覆うエアバッグカバー13、を備えて構成され、フードパネル15の後端15cにおける左縁15dと右縁15eとの下方付近のカウル7の部位に搭載されている。エアバッグ装置9は、上昇装置Uが作動してフードパネル15の後端15cを上昇させた際、その後端15cとカウル7との間の隙間Sから、エアバッグ10を突出させるようにインフレーター11が作動して、折り畳まれたエアバッグ10に膨張用ガスが供給される(図4参照)。そして、エアバッグ10は、膨張用ガスを流入させると、ケース12の後部側の開口12aを覆っていたエアバッグカバー13の扉部13aを押し開いて展開膨張し、左右のフロントピラー4,4の前面側を覆うこととなる(図1参照)。
【0020】
なお、カウル7は、図3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方のカウルルーバ7bと、を備えて構成されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3a側に連ならせるように配設されている。また、フロントウィンドシールド3の左右には、図1,2に示すように、フロントピラー4,4が配設されている。
【0021】
上昇装置Uは、図3〜6に示すように、アクチュエータAと、フードパネル15側に配設される受け座47と、を備えて構成されている。アクチュエータAは、図1に示すように、フードパネル15の左右のヒンジ部16の二箇所に対応して、フードパネル15の後端15cにおける左右両縁の下方に配設されている。各アクチュエータAは、それぞれ、図7に示すように、ガス発生器35の作動時に発生するガスGを駆動源とするピストンシリンダタイプとされるもので、円筒状のシリンダ21内に、ピストン38が収納されて構成されている。受け座47は、フードパネル15の後端15cの下面に配設された取付ブラケット20の部位に取り付けられて、下面47aにより、アクチュエータAの上昇移動する支持ロッド45の先端の頭部45aを受け止め可能に、構成されている。
【0022】
実施形態のアクチュエータAは、図2〜5に示すように、フードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2bに対してボルト49止めされる断面U字形状の取付ブラケット48により保持されて、フードパネル15の後端15cにおける左右両縁の下方に配設されている。そして、各アクチュエータAは、図7〜9に示すように、シリンダ21と、シリンダ21内に摺動可能に収納したピストン38と、ピストン38に連結された支持ロッド45と、前進移動(実施形態の場合には、上昇移動)した支持ロッド45の後退移動(実施形態の場合には、下降移動)を規制するロック機構Rと、を備えて構成されている。
【0023】
シリンダ21は、図7に示すように、円筒状の本体22と、本体22の上下端にそれぞれ固定されるキャップ26,31と、を備えて構成されている。本体22は、前進移動時(上昇移動時)にピストン38を摺動させる摺動部23を備えるとともに、摺動部23の上方となる本体22における上端側内周面に、周方向の全周にわたって凹む凹部22cを、備える構成とされている。この凹部22cは、ピストン38の前進移動後(上昇移動後)におけるロック機構Rの後述するロックピン43の突出位置に、形成されるもので、実施形態の場合、この凹部22cの部位は、摺動部23の上方に配置されて、内径寸法D1を、摺動部23の内径寸法D2より大径とした大径部24から、構成されることとなる(図8のB参照)。さらに具体的には、実施形態の場合、大径部24は摺動部23を構成する部材よりも内径寸法を大径とした別体の部材から、構成されており、溶接等により摺動部23を構成する部材と一体化されている。そして、この大径部24における摺動部23からの段差面24a(さらに具体的には、摺動部23の上端面であって、前進移動方向側の面)が、突出したロックピン43における先端部43bの下部側(後退移動方向側)を係止して、ピストン38(支持ロッド45)の下降移動を規制する係止面25を構成することとなる。
【0024】
本体22の上端側に配置されるキャップ26は、シリンダ21の先端壁部を構成するもので、略円柱状とされて、中央に、支持ロッド45の軸部45bを挿通させる挿通孔26aを備えるとともに、下端側における外周面に、シリンダ21の本体22における上端内周側(大径部24の内周側)に設けられた雌ねじ22aを螺合させる雄ねじ26bを備えている。キャップ26は、挿通孔26aに支持ロッド45の軸部45bを挿通させた状態で、雄ねじ26bを雌ねじ22aに螺合させて、本体22に取り付けられている。実施形態の場合、挿通孔26aは、ピストン38の上昇移動時においてロックピン43が係止面25に係止されるまでに、ピストン38に形成された収納凹部39から大径部24やキャップ26までの間の空間K(図8のB,図9のB参照)に溜まるガスGを、外部に放出可能なように、軸部45bの外径寸法D4に対して僅かに大径の内径寸法D3として、軸部45bとの間に隙間を設けて構成されている(図8のB参照)。本体22の下端側に配置されるキャップ31は、本体22の下端を塞ぐように配設される元部端壁部32と、元部端壁部32の外周縁から上方に延びる略円筒状の周壁部33と、を備えて構成されている。元部端壁部32には、ガス発生器35を挿通可能な挿通孔32aが、形成され、この挿通孔32aの周縁と、周壁部33における下部側の部位と、を利用して、ガス発生器35が元部端壁部32に取り付けられている。周壁部33は、上端側内周面に、シリンダ21の本体22における下端外周側に設けられた雄ねじ22bに螺合する雌ねじ33aを備え、キャップ31は、元部端壁部32にガス発生器35を取り付けた状態で、雌ねじ33aを雄ねじ22bに螺合させて、本体22に取り付けられている。
【0025】
ガス発生器35としては、マイクロガスジェネレータが使用されており、ガス発生器35の下端面には、図示しない制御回路からの電気信号を入力させるリード線36が結線されている(図7参照)。ガス発生器35は、図示しない制御回路からの電気信号を入力させると、内蔵されている火薬を燃焼させて燃焼ガスを発生させ、そのガス(燃焼ガス)Gを作動用流体として、シリンダ21内のピストン38の下面側へ供給することとなる。
【0026】
ピストン38は、シリンダ21の摺動部23に対して摺動可能な外径寸法を有した略円柱状とされるもので、ロック機構Rを構成するロックピン43を収納可能な収納凹部39(収納部位)と、ロック機構Rを構成するとともにシリンダ21内に流入するガスGをロックピン43の収納される収納凹部39まで流入させる流入路部40と、を備えている。
【0027】
収納凹部39は、ガスGの流入時にロックピン43をピストン38の軸直交方向に沿って突出可能に、ロックピン43を収納するもので、実施形態の場合、具体的には、図8,9に示すように、ピストン38の上下方向の略中央となる位置において、軸回り方向に沿った外周面から、ロックピン43を収納可能に、ピストン38の軸直交方向に沿って略円柱状に凹ませて形成されている。実施形態の場合、収納凹部39は、後述するごとく複数個配設されるロックピン43に対応して軸回り方向に沿った略等間隔となる複数箇所に、配設されており、さらに具体的には、ピストン38の中心軸Cを中心として放射状となる4箇所に、配設されている(図9参照)。
【0028】
流入路部40は、実施形態の場合、ピストン38の下面38aにおける中央からピストン38の中心軸Cに沿って上方に延びるように構成される縦流路40aと、各収納凹部39の中心側端部39aからピストン38の中心側に向かって延びて縦流路40aと連通される横流路40bと、から、構成されている。すなわち、実施形態の流入路部40は、下端側を開口させるとともにピストン38の中心軸Cに沿って形成される1つの縦流路40aと、縦流路40aと直交しつつ縦流路40aの上端から四方に延びて収納凹部39とそれぞれ連通される4つの横流路40bと、から構成されている。また、実施形態の場合、横流路40bは、内径寸法D6を、縦流路40aの内径寸法D5より小さく設定され、さらに、収納凹部39の内径寸法D7よりも小さく設定されている(図8,9参照)。具体的には、横流路40bは、収納凹部39の中心側端部39aに対して、軸回り方向に沿った全域に段差39bを設けるようにして、内径寸法を狭められた構成とされている。そして、実施形態の場合、この段差39bが、収納凹部(収納部位)39に収納されたロックピン43のピストン38中心側への移動を防止する移動防止壁部を構成することとなる。
【0029】
また、ピストン38における収納凹部39より下方となる下端近傍部位の外周面には、摺動部23の内周面23aに圧接されて、摺動部23とピストン38との間からのガス漏れを防止するOリング41が、配設されている。
【0030】
ロックピン43は、シリンダ21の段差面24a(係止面25)及びピストン38の流入路部40とともに、前進移動(実施形態では、上昇移動)した支持ロッド45の後退移動(実施形態では、下降移動)を規制するロック機構Rを構成するものである。実施形態の場合、ロックピン43は、ピストン38の軸方向に沿った移動を規制されてピストン38内に収納保持されるもので、具体的には、ピストン38の軸直交方向に沿うようにして、収納凹部39内に収納されている。また、ロックピン43は、ピストン38の軸回り方向に沿って略等間隔となるように、ピストン38の中心軸Cを中心として放射状となる4箇所に、配設されている。各ロックピン43は、収納凹部39の内周面に対して摺動可能な外径寸法を有した略円柱状とされるとともに、長さ寸法L1(図9のA参照)を、ピストン38の半径D8よりも小さくして、かつ、ピストン38の上昇移動後において先端面43cを大径部24の内周面24bに当接された際に、元部43a側を収納凹部39内に収納させた状態を維持可能な寸法に、設定されている。このロックピン43は、ピストン38の上昇移動後において大径部24の部位に配置された際、流入路部40を経て収納凹部39内に流入したガスGの圧力を受けて、瞬時に、収納凹部39から、ピストン38の軸直交方向に沿って突出することとなる(図8のB,図9のB参照)。そして、収納凹部39から突出したロックピン43は、元部43a側を収納凹部39内に収納された状態で、先端面43cを大径部24の内周面24bに当接させることとなる。すなわち、収納凹部39から突出したロックピン43は、係止面25と収納凹部39との間にまたがるように配置されて、先端部43bの下面側(下降移動方向側)を係止面25に係止させて、ピストン38の下降移動を規制することとなる。
【0031】
支持ロッド45は、軸部45bの上端に、上昇移動時にフードパネル15の後端15cの取付ブラケット20に設けられた受け座47に当接して、フードパネル15の後端15cを押し上げる円柱状の頭部45aを備えている。支持ロッド45は、塑性変形可能な鋼等の金属材からなるもので、実施形態の場合、ピストン38と一体的に構成されている。
【0032】
実施形態の歩行者保護装置Mでは、センサ6からの信号により、図示しない作動回路が、車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、各上昇装置UのアクチュエータAにおけるガス発生器35を作動させるとともに、エアバッグ装置9のインフレーター11を作動させる。
【0033】
そして、アクチュエータAのガス発生器35が作動されれば、図7のBに示すように、発生したガスGがシリンダ21の本体22内のピストン38を押し上げ、支持ロッド45の上端の頭部45aを受け座47に当接させて、フードパネル15の後端15cを上昇させ、後端15c側に、フードパネル15とカウル7との間に隙間Sを形成する。また、エアバッグ装置9のインフレーター11が作動すれば、図1,2の二点鎖線や図4に示すように、折り畳まれて収納されていたエアバッグ10は、インフレーター11からのガスを流入させて、エアバッグカバー13の扉部13aを押し開いてケース12から突出し、さらに、隙間Sを経て、フロントウィンドシールド3の上方側に突出するように膨張する。膨張を完了させたエアバッグ10は、フロントピラー4の前方側を覆うこととなる。その後、受止材としてのフードパネル15が歩行者を受け止めれば、支持ロッド45は、下降移動を抑えられた状態で、歩行者の運動エネルギーを吸収するように、塑性変形することとなる(図5,6参照)。
【0034】
そして、実施形態のアクチュエータAでは、作動時、ガス発生器35からガスGが発生すれば、このガスG(作動用流体)がシリンダ21内に流入されて充満されることとなり、シリンダ21内に収納されたピストン38が、下面38a側をガスGに押されて、支持ロッド45とともに、上昇移動することとなる。このとき、実施形態のアクチュエータAでは、ピストン38がガスGに押されると同時に、ピストン38に設けられた流入路部40を経てロックピン43が収納される収納凹部39(収納部位)内に、ガスGが流入することとなり、ロックピン43は、ガスGの押圧力を受けて、先端面43cを、常時、シリンダ21の内周面(摺動部23の内周面23a)に摺接させるように、摺動部23の内周面23a側に圧接された状態で、ピストン38が支持ロッド45とともに上昇移動する。その後、ピストン38に収納されたロックピン43がシリンダ21の内周面に設けられた係止面25に対応する位置に配置されるまで、すなわち、ロックピン43がシリンダ21の本体22における大径部24の部位に配置されるまで、ピストン38が上昇移動すると、ロックピン43が、流入路部40を経てロックピン43の収納凹部39内に流入されたガスGの圧力を受けて、瞬時に、収納凹部39から突出されて、先端面43cを大径部24の内周面24bに当接させるようにして、先端部43bの下面側を係止面25に係止されることとなる。そして、このロックピン43は、元部43a側を収納凹部39内に収納されて、ピストン38の軸方向に沿った移動を規制された状態で、収納凹部39と係止面25との間にまたがるように配置されることから、このロックピン43により、上昇移動(前進移動)した支持ロッド45の下降移動(後退移動)を規制することができる。そのため、上昇移動後に、受止材としてのフードパネル15が、保護対象物としての歩行者を受け止める際に、支持ロッド45を塑性変形させて、歩行者の運動エネルギーを吸収させることができる。さらに、実施形態のアクチュエータAでは、上昇移動した支持ロッド45の下降移動を規制するロック機構Rは、ピストン38内に収納されるロックピン43と、シリンダ21の内周面側に形成される係止面25と、から、構成されていることから、ロック機構Rがシリンダ21から外側に突出するように配設されず、アクチュエータAの外形形状を略円柱状とできて、極力コンパクトにすることができる。
【0035】
したがって、実施形態のアクチュエータAでは、支持ロッド45の作動後の後退移動(下降移動)を防止可能なロック機構Rを備えていても、コンパクトに製造することができる。
【0036】
また、実施形態のアクチュエータAでは、ピストン38を移動させるガスGを利用して、ロックピン43を押出移動させる構成であることから、ロック機構Rを作動させるための駆動源を別途配設させる必要もなく、構成が複雑化することを抑えて、部品点数の増加も防止することができる。
【0037】
さらに、実施形態のアクチュエータAでは、シリンダ21に、摺動部23より大径とした大径部24を、配設させ、大径部24における摺動部23からの段差面24aを、係止面25として、構成している。そのため、シリンダの内周面にロックピンを挿通可能な凹部等を設けて係止面とする場合と比較して、係止面25の製造が容易となって好ましい。
【0038】
さらにまた、実施形態のアクチュエータAでは、ロックピン43を、ピストン38の外周面側において、軸回り方向に沿って略等間隔となるように、ピストン38の中心軸を中心として放射状となる4箇所に、配設させていることから、
シリンダ21の軸回り方向に沿った全域にわたって、ロックピン43が係止面25に対して係止されることとなり、支持ロッド45の突出状態を安定させることができて、好ましい。勿論、このような点を考慮しなければ、ロックピンを1個だけ配設させる構成としてもよい。また、ロックピンの数は、複数であれば特に4個に限られるものではないが、支持ロッド45の突出状態の安定性や製造コストを考慮すれば、3個乃至4個配設させることが望ましい。
【0039】
さらにまた、実施形態のアクチュエータAでは、収納凹部39が、ロックピン43のピストン38中心側への移動を防止する移動防止壁部としての段差39bを備えていることから、ロックピン43が必要以上にピストン38の中心側へ移動することを防止できて、好ましい。勿論、このような点を考慮しなければ、収納凹部と、流入路部における横流路と、を、略同一の内径寸法として、収納凹部に段差を設けない構成としてもよい。
【0040】
また、実施形態のアクチュエータAには配設されていないが、図10に示すごとく、収納部位におけるロックピンの周囲に、突出したロックピンの戻りを防止する戻り防止手段、具体的には、ロックピン43と収納凹部39における段差39bとの間に、戻り防止手段として、ロックピン43を突出方向側へ付勢するコイルばね(付勢手段)51を配設させる構成としてもよい。このような構成とすれば、収納凹部39から突出したロックピン43が、シリンダ21の内周面に当たって収納凹部39側へ戻るような反力を受けても、ロックピン43が収納凹部39内へ戻ることを防止でき、ロックピン43の突出状態を安定して維持させることができて、好ましい。勿論このような点を考慮しなければ、実施形態のごとく、戻り防止手段を設けない構成としてもよい。また、戻り防止手段は、復元可能なコイルばね等の付勢手段に限られるものではなく、例えば、ロックピンを突出させるガスの圧力を受けて、ロックピンの突出状態を支持可能に、変形後の形状を維持するように塑性変形する線状材等から、戻り防止手段を構成してもよい。
【0041】
なお、実施形態のアクチュエータAでは、前進移動を上昇させる移動とし、後退移動を下降させる移動とした場合を示したが、作動方向は、これに限定されず、例えば、水平方向の作動方向に本発明のアクチュエータを使用してもよく、また、本発明のアクチュエータは、歩行者保護装置M1以外の自動車用安全装置に使用してもよい。たとえば、図11に示す自動車用安全装置としての膝保護装置M2に、アクチュエータAを使用してもよい。
【0042】
この膝保護装置M2は、保護対象物としての運転者DRの膝Kを受け止めて、運転者DRの膝Kを保護するものであり、車両の前面衝突時、アクチュエータAが作動し、インストルメントパネル54に配設された膝受止材55を後方側に押出、膝Kが前進して膝受止材55と衝突した際、支持ロッド45の軸部45bを曲げ塑性変形させて、運転者DRの運動エネルギーを、膝Kを受け止めつつ吸収することとなる。なお、膝受止材55は、下端55b側を、インストルメントパネル54に取り付けられたヒンジ部56に軸支されて、アクチュエータAの作動時、上端55aがヒンジ部56を回転中心として後方側に押し出されることとなる。
【0043】
また、実施形態のアクチュエータAでは、シリンダ21内に流入させる作動用流体として、ガス発生器35から発生されるガスGを使用して、ピストン38を前進移動させている。すなわち、実施形態のアクチュエータAでは、ガス発生器35として、着火時に爆発的に急激にガスを発生可能なマイクロガスジェネレータを使用できることから、迅速に、ピストン38を移動させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、シリンダ内に流入させる作動用流体として、水、油、空気等を利用することができ、それらの水圧、油圧、エア圧等を利用してピストンを移動させる構成としてもよい。
【0044】
さらに、実施形態のアクチュエータAでは、ピストン38と支持ロッド45が一体とされているが、勿論支持ロッド45とピストン38とを別体としてもよい。支持ロッドをピストンと別体とする場合、支持ロッドの軸部の外径寸法を変更することにより、保護対象物の運動エネルギーを吸収する吸収量を、容易に変更することができ、設計変更が容易となって好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態であるアクチュエータを使用した歩行者保護装置を搭載させた車両の斜視図である。
【図2】実施形態のアクチュエータを使用した歩行者保護装置を搭載させた車両の部分拡大平面図である
【図3】実施形態の歩行者保護装置における車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態の歩行者保護装置の作動時を示す概略縦断面図である。
【図5】実施形態のアクチュエータの支持ロッドの塑性変形状態を示す概略図である。
【図6】実施形態のアクチュエータの支持ロッドの塑性変形状態を示す概略図であり、図5よりさらに変形した状態を示す図である。
【図7】実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図8】実施形態のアクチュエータにおけるロック機構の部位を示す概略拡大縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図9】実施形態のアクチュエータにおけるロック機構の部位を示す概略拡大横断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図10】実施形態のアクチュエータにおいて、ロック機構の変形例を示す概略拡大縦断面図である。
【図11】実施形態のアクチュエーターを膝保護装置に適用した変形例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0046】
9…エアバッグ装置、
15…フードパネル(受止材)、
16…ヒンジ部、
21…シリンダ、
22…本体、
23…摺動部、
24…大径部、
25…係止面、
35…ガス発生器、
38…ピストン、
39…収納凹部(収納部位)、
39b…段差(移動防止壁部)、
40…流入路部、
43…ロックピン、
43a…元部、
43b…先端部、
45…支持ロッド、
51…コイルばね(戻り防止手段)、
54…インストルメントパネル、
55…膝受止材(受止材)、
G…ガス(作動用流体)、
R…ロック機構、
U…上昇装置、
M1…歩行者保護装置、
M2…膝保護装置、
A…アクチュエータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用安全装置に使用されるアクチュエータに関し、例えば、保護対象物としての歩行者を受け止める際のフードパネルを持ち上げる等の作動に使用されるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される自動車用安全装置のアクチュエータとしては、フードパネルの塑性変形時のエネルギー吸収を利用して、フードパネル自体で歩行者を受け止めることができるように、フードパネルの後端側を上昇させるものがあった。具体的には、従来、アクチュエータとして、筒状のシリンダ内に配置されたピストンを、シリンダ内に作動用流体を流入させることにより、ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプとして、構成されて、前進移動した支持ロッドの後退移動を規制するロック機構を備える構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。この従来のアクチュエータでは、ロック機構として、シリンダから軸直交方向に沿って突出するように配設されるホルダと、ホルダに付勢手段を介して保持される係止片と、を、から構成されるものを使用していた。このロック機構では、作動時に、係止片を、付勢手段の付勢力によりシリンダ内に突出させるように移動させて、この係止片により、支持ロッドの後退移動を規制していた。
【特許文献1】特開2002−29367公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のアクチュエータでは、ロック機構が、係止片自体と付勢手段の分、シリンダから軸直交方向に沿って大きく突出するように配設されていることから、シリンダの軸直交方向側に大きく嵩張ることとなり、アクチュエータ自体をコンパクトにする点に改善の余地があった。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、支持ロッドの作動後の後退移動を防止可能なロック機構を備えていても、コンパクトに製造することが可能なアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るアクチュエータは、自動車安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に配置されたピストンを、シリンダ内に作動用流体を流入させることにより、ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプとして、構成されるとともに、
前進移動した支持ロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
シリンダの先端壁部から突出した支持ロッドが、保護対象物を受け止める受止材に連結される構成のアクチュエータであって、
支持ロッドが、前進移動後における受止材の保護対象物の受け止め時、保護対象物の運動エネルギーを吸収可能に、塑性変形可能に配設され、
ロック機構が、
前進移動時に、元部側をピストン内に収納させた状態で、ピストンの軸回り方向に沿った外周面から、先端部側をピストンの軸直交方向に沿って突出可能として、ピストンの軸方向に沿った移動を規制されて、ピストン内に収納保持されるロックピンと、
シリンダ内に流入する作動用流体を、ロックピンの元部側の収納部位まで流入可能に、ピストンに形成される流入路部と、
シリンダの内周面におけるピストンの前進移動後の配置位置に配設されて、支持ロッドの後退移動を規制可能に、先端部側をピストンから突出させたロックピンを係止する係止面と、
を備える構成とされて、
作動時に、流入路部を経てロックピンの収納部位内に流入させた作動用流体の圧力を利用して、ロックピンの先端部側をピストンの外周面から突出させるように移動させる構成とされていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係るアクチュエータでは、作動時、シリンダ内に作動用流体が流入されて充満されると、シリンダ内に収納されたピストンが、作動用流体に押されて、支持ロッドとともに、前進移動することとなる。このとき、本発明のアクチュエータでは、ピストンが作動用流体に押されると同時に、ピストンに設けられた流入路部を経てロックピンが収納される収納部位内に、作動用流体が流入することとなり、ロックピンは、作動用流体の押圧力を受けて、先端面を、常時、シリンダの内周面に摺接された状態で、ピストンが支持ロッドとともに前進移動する。その後、ピストンに収納されたロックピンがシリンダの内周面に設けられた係止面に対応する位置に配置されるまで、ピストンが前進移動すれば、ロックピンが、流入路部を経てロックピンの収納部位内に流入された作動用流体の圧力を受けて、瞬時に、収納部位から突出されて、先端部側を、係止面に係止されることとなる。そして、ロックピンは、元部側を収納部位内に収納されて、ピストンの軸方向に沿った移動を規制された状態で、収納部位と係止面との間にまたがるように配置されることから、このロックピンにより、前進移動した支持ロッドの後退移動を規制することができ、前進移動後における受止材の保護対象物の受け止め時に、支持ロッドを塑性変形させて、保護対象物の運動エネルギーを吸収させることができる。さらに、本発明のアクチュエータでは、前進移動した支持ロッドの後退移動を規制するロック機構は、ピストン内に収納されるロックピンと、シリンダの内周面側に形成される係止面と、から、構成されていることから、ロック機構がシリンダから外側に突出するように配設されず、アクチュエータの外形形状を略円柱状とできて、極力コンパクトにすることができる。
【0007】
したがって、本発明のアクチュエータでは、支持ロッドの作動後の後退移動を防止可能なロック機構を備えていても、コンパクトに製造することができる。
【0008】
また、本発明のアクチュエータでは、ピストンを移動させる作動用流体を利用して、ロックピンを押出移動させる構成であることから、ロック機構を作動させるための駆動源を別途配設させる必要もなく、構成が複雑化することを抑えて、部品点数の増加も防止することができる。
【0009】
さらに、本発明のアクチュエータにおいて、シリンダに、ピストンの前進移動後におけるロックピンの突出位置に前進移動時のピストンを摺動させる摺動部より大径とした大径部を、配設させ、
大径部における摺動部からの段差面を、係止面として、構成することが好ましい。
【0010】
アクチュエータを上記構成とすれば、シリンダの内周面にロックピンを挿通可能な凹部等を設けて係止面とする場合と比較して、係止面の製造が容易となって好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成のアクチュエータにおいて、ロックピンを、ピストンの外周面側に、軸回り方向に沿って略等間隔となる複数箇所に配設させる構成とすれば、シリンダの軸回り方向に沿った全域にわたって、ロックピンが係止面に対して係止されることから、支持ロッドの突出状態を安定させることができて、好ましい。
【0012】
さらにまた、上記構成のアクチュエータにおいて、収納部位に、ロックピンのピストン中心側への移動を防止する移動防止壁部を設ける構成とすれば、ロックピンが必要以上にピストンの中心側へ移動することを防止できて、好ましい。
【0013】
さらにまた、上記構成のアクチュエータにおいて、収納部位におけるロックピンの周囲に、突出したロックピンの戻りを防止する戻り防止手段を、配設させる構成とすれば、収納部位から突出したロックピンが、シリンダの内周面に当たって収納部位側へ戻ることを防止でき、ロックピンの突出状態を安定して維持させることができて、好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のアクチュエータAは、図1〜3に示すように、車両Vに搭載される自動車安全装置としての歩行者保護装置Mにおける上昇装置Uに使用されるものであり、この上昇装置Uは、アクチュエータAの作動時に、フードパネル15の後端15cを上昇させる構成である。そして、実施形態のアクチュエータAは、車両Vのフードパネル15の後端15c付近の下方に配設されている。なお、歩行者保護装置Mは、歩行者を受け止めることとなる受止材としてのフードパネル15の後端15cを上昇させる上昇装置Uと、フロントピラー4から歩行者を保護するエアバッグ10を有したエアバッグ装置9と、を備えて構成されている。
【0015】
なお、車両Vのフロントバンパ5には、図1に示すように、保護対象物としての歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されている。そして、センサ6からの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ6からの信号に基づいて車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際、エアバッグ装置9のインフレーター11(図3参照)と、上昇装置UのアクチュエータAにおける駆動源としてのガス発生器35(図7参照)と、を作動させるように構成されている。
【0016】
フードパネル15は、図1〜3に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁側における後端15c近傍に配置されるヒンジ部16により、車両Vのボディ1に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル15は、アルミニウム(アルミニウム合金)等からなる板金製として、上面側のアウタパネル15aと、下面側に位置してアウタパネル15aより強度を向上させたインナパネル15bと、から構成されている。フードパネル15は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形するものである。そして、実施形態では、この塑性変形時の変形量を増大させるように、エンジンルームERの上方に大きな空間を設けることを目的として、車両Vの歩行者との衝突時、上昇装置UのアクチュエータAを作動させて、後端15cを上昇させることとなる。また、実施形態の上昇装置Uは、フードパネル15の後端15cを持ち上げて、カウル7とフードパネル15の後端15cとの間に、エアバッグ10を突出させる大きな隙間Sを設ける役目も果たしている。
【0017】
ヒンジ部16は、フードパネル15の後端15c側における左縁15dと右縁15eとに配設され(図1参照)、それぞれ、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結される取付フランジ2aに固定されるヒンジベース17、フードパネル15側に固定されるヒンジアーム19、を備えて構成されている(図3参照)。各ヒンジアーム19は、図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース17側の元部端19aが、支持軸18を利用してヒンジベース17に対して回動可能に連結され、元部端19aから離れる先端19bが、取付ブラケット20に溶接等を利用して結合されている。各支持軸18は、それらの軸方向を、車両Vの左右方向に沿って配設させている。そのため、フードパネル15を開く際には、図3の実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸18を回転中心として、各ヒンジアーム19の先端19b側とともに、フードパネル15の前端15f側(図1参照)を前開きで上昇させることとなる。
【0018】
なお、ヒンジアーム19の先端19b付近は、アクチュエータAの作動時における支持ロッド45のフードパネル15の後端15cの押し上げ時、塑性変形する塑性変形部19cとしている(図4参照)。ちなみに、フードパネル15の後端15cの上昇時には、前開きで開閉させるフードパネル15の前端15f側に配置されて、通常閉塞時に前端15fに配置されている図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、前端15f側は、ボディ1側から外れることはない。
【0019】
エアバッグ装置9は、図2,3に示すように、エアバッグ10、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するインフレーター11、エアバッグ10とインフレーター11とを収納するケース12、及び、エアバッグ10とインフレーター11とを収納したケース12を開き可能に覆うエアバッグカバー13、を備えて構成され、フードパネル15の後端15cにおける左縁15dと右縁15eとの下方付近のカウル7の部位に搭載されている。エアバッグ装置9は、上昇装置Uが作動してフードパネル15の後端15cを上昇させた際、その後端15cとカウル7との間の隙間Sから、エアバッグ10を突出させるようにインフレーター11が作動して、折り畳まれたエアバッグ10に膨張用ガスが供給される(図4参照)。そして、エアバッグ10は、膨張用ガスを流入させると、ケース12の後部側の開口12aを覆っていたエアバッグカバー13の扉部13aを押し開いて展開膨張し、左右のフロントピラー4,4の前面側を覆うこととなる(図1参照)。
【0020】
なお、カウル7は、図3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方のカウルルーバ7bと、を備えて構成されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3a側に連ならせるように配設されている。また、フロントウィンドシールド3の左右には、図1,2に示すように、フロントピラー4,4が配設されている。
【0021】
上昇装置Uは、図3〜6に示すように、アクチュエータAと、フードパネル15側に配設される受け座47と、を備えて構成されている。アクチュエータAは、図1に示すように、フードパネル15の左右のヒンジ部16の二箇所に対応して、フードパネル15の後端15cにおける左右両縁の下方に配設されている。各アクチュエータAは、それぞれ、図7に示すように、ガス発生器35の作動時に発生するガスGを駆動源とするピストンシリンダタイプとされるもので、円筒状のシリンダ21内に、ピストン38が収納されて構成されている。受け座47は、フードパネル15の後端15cの下面に配設された取付ブラケット20の部位に取り付けられて、下面47aにより、アクチュエータAの上昇移動する支持ロッド45の先端の頭部45aを受け止め可能に、構成されている。
【0022】
実施形態のアクチュエータAは、図2〜5に示すように、フードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2bに対してボルト49止めされる断面U字形状の取付ブラケット48により保持されて、フードパネル15の後端15cにおける左右両縁の下方に配設されている。そして、各アクチュエータAは、図7〜9に示すように、シリンダ21と、シリンダ21内に摺動可能に収納したピストン38と、ピストン38に連結された支持ロッド45と、前進移動(実施形態の場合には、上昇移動)した支持ロッド45の後退移動(実施形態の場合には、下降移動)を規制するロック機構Rと、を備えて構成されている。
【0023】
シリンダ21は、図7に示すように、円筒状の本体22と、本体22の上下端にそれぞれ固定されるキャップ26,31と、を備えて構成されている。本体22は、前進移動時(上昇移動時)にピストン38を摺動させる摺動部23を備えるとともに、摺動部23の上方となる本体22における上端側内周面に、周方向の全周にわたって凹む凹部22cを、備える構成とされている。この凹部22cは、ピストン38の前進移動後(上昇移動後)におけるロック機構Rの後述するロックピン43の突出位置に、形成されるもので、実施形態の場合、この凹部22cの部位は、摺動部23の上方に配置されて、内径寸法D1を、摺動部23の内径寸法D2より大径とした大径部24から、構成されることとなる(図8のB参照)。さらに具体的には、実施形態の場合、大径部24は摺動部23を構成する部材よりも内径寸法を大径とした別体の部材から、構成されており、溶接等により摺動部23を構成する部材と一体化されている。そして、この大径部24における摺動部23からの段差面24a(さらに具体的には、摺動部23の上端面であって、前進移動方向側の面)が、突出したロックピン43における先端部43bの下部側(後退移動方向側)を係止して、ピストン38(支持ロッド45)の下降移動を規制する係止面25を構成することとなる。
【0024】
本体22の上端側に配置されるキャップ26は、シリンダ21の先端壁部を構成するもので、略円柱状とされて、中央に、支持ロッド45の軸部45bを挿通させる挿通孔26aを備えるとともに、下端側における外周面に、シリンダ21の本体22における上端内周側(大径部24の内周側)に設けられた雌ねじ22aを螺合させる雄ねじ26bを備えている。キャップ26は、挿通孔26aに支持ロッド45の軸部45bを挿通させた状態で、雄ねじ26bを雌ねじ22aに螺合させて、本体22に取り付けられている。実施形態の場合、挿通孔26aは、ピストン38の上昇移動時においてロックピン43が係止面25に係止されるまでに、ピストン38に形成された収納凹部39から大径部24やキャップ26までの間の空間K(図8のB,図9のB参照)に溜まるガスGを、外部に放出可能なように、軸部45bの外径寸法D4に対して僅かに大径の内径寸法D3として、軸部45bとの間に隙間を設けて構成されている(図8のB参照)。本体22の下端側に配置されるキャップ31は、本体22の下端を塞ぐように配設される元部端壁部32と、元部端壁部32の外周縁から上方に延びる略円筒状の周壁部33と、を備えて構成されている。元部端壁部32には、ガス発生器35を挿通可能な挿通孔32aが、形成され、この挿通孔32aの周縁と、周壁部33における下部側の部位と、を利用して、ガス発生器35が元部端壁部32に取り付けられている。周壁部33は、上端側内周面に、シリンダ21の本体22における下端外周側に設けられた雄ねじ22bに螺合する雌ねじ33aを備え、キャップ31は、元部端壁部32にガス発生器35を取り付けた状態で、雌ねじ33aを雄ねじ22bに螺合させて、本体22に取り付けられている。
【0025】
ガス発生器35としては、マイクロガスジェネレータが使用されており、ガス発生器35の下端面には、図示しない制御回路からの電気信号を入力させるリード線36が結線されている(図7参照)。ガス発生器35は、図示しない制御回路からの電気信号を入力させると、内蔵されている火薬を燃焼させて燃焼ガスを発生させ、そのガス(燃焼ガス)Gを作動用流体として、シリンダ21内のピストン38の下面側へ供給することとなる。
【0026】
ピストン38は、シリンダ21の摺動部23に対して摺動可能な外径寸法を有した略円柱状とされるもので、ロック機構Rを構成するロックピン43を収納可能な収納凹部39(収納部位)と、ロック機構Rを構成するとともにシリンダ21内に流入するガスGをロックピン43の収納される収納凹部39まで流入させる流入路部40と、を備えている。
【0027】
収納凹部39は、ガスGの流入時にロックピン43をピストン38の軸直交方向に沿って突出可能に、ロックピン43を収納するもので、実施形態の場合、具体的には、図8,9に示すように、ピストン38の上下方向の略中央となる位置において、軸回り方向に沿った外周面から、ロックピン43を収納可能に、ピストン38の軸直交方向に沿って略円柱状に凹ませて形成されている。実施形態の場合、収納凹部39は、後述するごとく複数個配設されるロックピン43に対応して軸回り方向に沿った略等間隔となる複数箇所に、配設されており、さらに具体的には、ピストン38の中心軸Cを中心として放射状となる4箇所に、配設されている(図9参照)。
【0028】
流入路部40は、実施形態の場合、ピストン38の下面38aにおける中央からピストン38の中心軸Cに沿って上方に延びるように構成される縦流路40aと、各収納凹部39の中心側端部39aからピストン38の中心側に向かって延びて縦流路40aと連通される横流路40bと、から、構成されている。すなわち、実施形態の流入路部40は、下端側を開口させるとともにピストン38の中心軸Cに沿って形成される1つの縦流路40aと、縦流路40aと直交しつつ縦流路40aの上端から四方に延びて収納凹部39とそれぞれ連通される4つの横流路40bと、から構成されている。また、実施形態の場合、横流路40bは、内径寸法D6を、縦流路40aの内径寸法D5より小さく設定され、さらに、収納凹部39の内径寸法D7よりも小さく設定されている(図8,9参照)。具体的には、横流路40bは、収納凹部39の中心側端部39aに対して、軸回り方向に沿った全域に段差39bを設けるようにして、内径寸法を狭められた構成とされている。そして、実施形態の場合、この段差39bが、収納凹部(収納部位)39に収納されたロックピン43のピストン38中心側への移動を防止する移動防止壁部を構成することとなる。
【0029】
また、ピストン38における収納凹部39より下方となる下端近傍部位の外周面には、摺動部23の内周面23aに圧接されて、摺動部23とピストン38との間からのガス漏れを防止するOリング41が、配設されている。
【0030】
ロックピン43は、シリンダ21の段差面24a(係止面25)及びピストン38の流入路部40とともに、前進移動(実施形態では、上昇移動)した支持ロッド45の後退移動(実施形態では、下降移動)を規制するロック機構Rを構成するものである。実施形態の場合、ロックピン43は、ピストン38の軸方向に沿った移動を規制されてピストン38内に収納保持されるもので、具体的には、ピストン38の軸直交方向に沿うようにして、収納凹部39内に収納されている。また、ロックピン43は、ピストン38の軸回り方向に沿って略等間隔となるように、ピストン38の中心軸Cを中心として放射状となる4箇所に、配設されている。各ロックピン43は、収納凹部39の内周面に対して摺動可能な外径寸法を有した略円柱状とされるとともに、長さ寸法L1(図9のA参照)を、ピストン38の半径D8よりも小さくして、かつ、ピストン38の上昇移動後において先端面43cを大径部24の内周面24bに当接された際に、元部43a側を収納凹部39内に収納させた状態を維持可能な寸法に、設定されている。このロックピン43は、ピストン38の上昇移動後において大径部24の部位に配置された際、流入路部40を経て収納凹部39内に流入したガスGの圧力を受けて、瞬時に、収納凹部39から、ピストン38の軸直交方向に沿って突出することとなる(図8のB,図9のB参照)。そして、収納凹部39から突出したロックピン43は、元部43a側を収納凹部39内に収納された状態で、先端面43cを大径部24の内周面24bに当接させることとなる。すなわち、収納凹部39から突出したロックピン43は、係止面25と収納凹部39との間にまたがるように配置されて、先端部43bの下面側(下降移動方向側)を係止面25に係止させて、ピストン38の下降移動を規制することとなる。
【0031】
支持ロッド45は、軸部45bの上端に、上昇移動時にフードパネル15の後端15cの取付ブラケット20に設けられた受け座47に当接して、フードパネル15の後端15cを押し上げる円柱状の頭部45aを備えている。支持ロッド45は、塑性変形可能な鋼等の金属材からなるもので、実施形態の場合、ピストン38と一体的に構成されている。
【0032】
実施形態の歩行者保護装置Mでは、センサ6からの信号により、図示しない作動回路が、車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、各上昇装置UのアクチュエータAにおけるガス発生器35を作動させるとともに、エアバッグ装置9のインフレーター11を作動させる。
【0033】
そして、アクチュエータAのガス発生器35が作動されれば、図7のBに示すように、発生したガスGがシリンダ21の本体22内のピストン38を押し上げ、支持ロッド45の上端の頭部45aを受け座47に当接させて、フードパネル15の後端15cを上昇させ、後端15c側に、フードパネル15とカウル7との間に隙間Sを形成する。また、エアバッグ装置9のインフレーター11が作動すれば、図1,2の二点鎖線や図4に示すように、折り畳まれて収納されていたエアバッグ10は、インフレーター11からのガスを流入させて、エアバッグカバー13の扉部13aを押し開いてケース12から突出し、さらに、隙間Sを経て、フロントウィンドシールド3の上方側に突出するように膨張する。膨張を完了させたエアバッグ10は、フロントピラー4の前方側を覆うこととなる。その後、受止材としてのフードパネル15が歩行者を受け止めれば、支持ロッド45は、下降移動を抑えられた状態で、歩行者の運動エネルギーを吸収するように、塑性変形することとなる(図5,6参照)。
【0034】
そして、実施形態のアクチュエータAでは、作動時、ガス発生器35からガスGが発生すれば、このガスG(作動用流体)がシリンダ21内に流入されて充満されることとなり、シリンダ21内に収納されたピストン38が、下面38a側をガスGに押されて、支持ロッド45とともに、上昇移動することとなる。このとき、実施形態のアクチュエータAでは、ピストン38がガスGに押されると同時に、ピストン38に設けられた流入路部40を経てロックピン43が収納される収納凹部39(収納部位)内に、ガスGが流入することとなり、ロックピン43は、ガスGの押圧力を受けて、先端面43cを、常時、シリンダ21の内周面(摺動部23の内周面23a)に摺接させるように、摺動部23の内周面23a側に圧接された状態で、ピストン38が支持ロッド45とともに上昇移動する。その後、ピストン38に収納されたロックピン43がシリンダ21の内周面に設けられた係止面25に対応する位置に配置されるまで、すなわち、ロックピン43がシリンダ21の本体22における大径部24の部位に配置されるまで、ピストン38が上昇移動すると、ロックピン43が、流入路部40を経てロックピン43の収納凹部39内に流入されたガスGの圧力を受けて、瞬時に、収納凹部39から突出されて、先端面43cを大径部24の内周面24bに当接させるようにして、先端部43bの下面側を係止面25に係止されることとなる。そして、このロックピン43は、元部43a側を収納凹部39内に収納されて、ピストン38の軸方向に沿った移動を規制された状態で、収納凹部39と係止面25との間にまたがるように配置されることから、このロックピン43により、上昇移動(前進移動)した支持ロッド45の下降移動(後退移動)を規制することができる。そのため、上昇移動後に、受止材としてのフードパネル15が、保護対象物としての歩行者を受け止める際に、支持ロッド45を塑性変形させて、歩行者の運動エネルギーを吸収させることができる。さらに、実施形態のアクチュエータAでは、上昇移動した支持ロッド45の下降移動を規制するロック機構Rは、ピストン38内に収納されるロックピン43と、シリンダ21の内周面側に形成される係止面25と、から、構成されていることから、ロック機構Rがシリンダ21から外側に突出するように配設されず、アクチュエータAの外形形状を略円柱状とできて、極力コンパクトにすることができる。
【0035】
したがって、実施形態のアクチュエータAでは、支持ロッド45の作動後の後退移動(下降移動)を防止可能なロック機構Rを備えていても、コンパクトに製造することができる。
【0036】
また、実施形態のアクチュエータAでは、ピストン38を移動させるガスGを利用して、ロックピン43を押出移動させる構成であることから、ロック機構Rを作動させるための駆動源を別途配設させる必要もなく、構成が複雑化することを抑えて、部品点数の増加も防止することができる。
【0037】
さらに、実施形態のアクチュエータAでは、シリンダ21に、摺動部23より大径とした大径部24を、配設させ、大径部24における摺動部23からの段差面24aを、係止面25として、構成している。そのため、シリンダの内周面にロックピンを挿通可能な凹部等を設けて係止面とする場合と比較して、係止面25の製造が容易となって好ましい。
【0038】
さらにまた、実施形態のアクチュエータAでは、ロックピン43を、ピストン38の外周面側において、軸回り方向に沿って略等間隔となるように、ピストン38の中心軸を中心として放射状となる4箇所に、配設させていることから、
シリンダ21の軸回り方向に沿った全域にわたって、ロックピン43が係止面25に対して係止されることとなり、支持ロッド45の突出状態を安定させることができて、好ましい。勿論、このような点を考慮しなければ、ロックピンを1個だけ配設させる構成としてもよい。また、ロックピンの数は、複数であれば特に4個に限られるものではないが、支持ロッド45の突出状態の安定性や製造コストを考慮すれば、3個乃至4個配設させることが望ましい。
【0039】
さらにまた、実施形態のアクチュエータAでは、収納凹部39が、ロックピン43のピストン38中心側への移動を防止する移動防止壁部としての段差39bを備えていることから、ロックピン43が必要以上にピストン38の中心側へ移動することを防止できて、好ましい。勿論、このような点を考慮しなければ、収納凹部と、流入路部における横流路と、を、略同一の内径寸法として、収納凹部に段差を設けない構成としてもよい。
【0040】
また、実施形態のアクチュエータAには配設されていないが、図10に示すごとく、収納部位におけるロックピンの周囲に、突出したロックピンの戻りを防止する戻り防止手段、具体的には、ロックピン43と収納凹部39における段差39bとの間に、戻り防止手段として、ロックピン43を突出方向側へ付勢するコイルばね(付勢手段)51を配設させる構成としてもよい。このような構成とすれば、収納凹部39から突出したロックピン43が、シリンダ21の内周面に当たって収納凹部39側へ戻るような反力を受けても、ロックピン43が収納凹部39内へ戻ることを防止でき、ロックピン43の突出状態を安定して維持させることができて、好ましい。勿論このような点を考慮しなければ、実施形態のごとく、戻り防止手段を設けない構成としてもよい。また、戻り防止手段は、復元可能なコイルばね等の付勢手段に限られるものではなく、例えば、ロックピンを突出させるガスの圧力を受けて、ロックピンの突出状態を支持可能に、変形後の形状を維持するように塑性変形する線状材等から、戻り防止手段を構成してもよい。
【0041】
なお、実施形態のアクチュエータAでは、前進移動を上昇させる移動とし、後退移動を下降させる移動とした場合を示したが、作動方向は、これに限定されず、例えば、水平方向の作動方向に本発明のアクチュエータを使用してもよく、また、本発明のアクチュエータは、歩行者保護装置M1以外の自動車用安全装置に使用してもよい。たとえば、図11に示す自動車用安全装置としての膝保護装置M2に、アクチュエータAを使用してもよい。
【0042】
この膝保護装置M2は、保護対象物としての運転者DRの膝Kを受け止めて、運転者DRの膝Kを保護するものであり、車両の前面衝突時、アクチュエータAが作動し、インストルメントパネル54に配設された膝受止材55を後方側に押出、膝Kが前進して膝受止材55と衝突した際、支持ロッド45の軸部45bを曲げ塑性変形させて、運転者DRの運動エネルギーを、膝Kを受け止めつつ吸収することとなる。なお、膝受止材55は、下端55b側を、インストルメントパネル54に取り付けられたヒンジ部56に軸支されて、アクチュエータAの作動時、上端55aがヒンジ部56を回転中心として後方側に押し出されることとなる。
【0043】
また、実施形態のアクチュエータAでは、シリンダ21内に流入させる作動用流体として、ガス発生器35から発生されるガスGを使用して、ピストン38を前進移動させている。すなわち、実施形態のアクチュエータAでは、ガス発生器35として、着火時に爆発的に急激にガスを発生可能なマイクロガスジェネレータを使用できることから、迅速に、ピストン38を移動させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、シリンダ内に流入させる作動用流体として、水、油、空気等を利用することができ、それらの水圧、油圧、エア圧等を利用してピストンを移動させる構成としてもよい。
【0044】
さらに、実施形態のアクチュエータAでは、ピストン38と支持ロッド45が一体とされているが、勿論支持ロッド45とピストン38とを別体としてもよい。支持ロッドをピストンと別体とする場合、支持ロッドの軸部の外径寸法を変更することにより、保護対象物の運動エネルギーを吸収する吸収量を、容易に変更することができ、設計変更が容易となって好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態であるアクチュエータを使用した歩行者保護装置を搭載させた車両の斜視図である。
【図2】実施形態のアクチュエータを使用した歩行者保護装置を搭載させた車両の部分拡大平面図である
【図3】実施形態の歩行者保護装置における車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態の歩行者保護装置の作動時を示す概略縦断面図である。
【図5】実施形態のアクチュエータの支持ロッドの塑性変形状態を示す概略図である。
【図6】実施形態のアクチュエータの支持ロッドの塑性変形状態を示す概略図であり、図5よりさらに変形した状態を示す図である。
【図7】実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図8】実施形態のアクチュエータにおけるロック機構の部位を示す概略拡大縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図9】実施形態のアクチュエータにおけるロック機構の部位を示す概略拡大横断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図10】実施形態のアクチュエータにおいて、ロック機構の変形例を示す概略拡大縦断面図である。
【図11】実施形態のアクチュエーターを膝保護装置に適用した変形例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0046】
9…エアバッグ装置、
15…フードパネル(受止材)、
16…ヒンジ部、
21…シリンダ、
22…本体、
23…摺動部、
24…大径部、
25…係止面、
35…ガス発生器、
38…ピストン、
39…収納凹部(収納部位)、
39b…段差(移動防止壁部)、
40…流入路部、
43…ロックピン、
43a…元部、
43b…先端部、
45…支持ロッド、
51…コイルばね(戻り防止手段)、
54…インストルメントパネル、
55…膝受止材(受止材)、
G…ガス(作動用流体)、
R…ロック機構、
U…上昇装置、
M1…歩行者保護装置、
M2…膝保護装置、
A…アクチュエータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に配置されたピストンを、前記シリンダ内に作動用流体を流入させることにより、前記ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプとして、構成されるとともに、
前進移動した前記支持ロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
前記シリンダの先端壁部から突出した前記支持ロッドが、保護対象物を受け止める受止材に連結される構成のアクチュエータであって、
前記支持ロッドが、前進移動後における前記受止材の前記保護対象物の受け止め時、前記保護対象物の運動エネルギーを吸収可能に、塑性変形可能に配設され、
前記ロック機構が、
前進移動時に、元部側を前記ピストン内に収納させた状態で、前記ピストンの軸回り方向に沿った外周面から、先端部側を前記ピストンの軸直交方向に沿って突出可能として、前記ピストンの軸方向に沿った移動を規制されて、前記ピストン内に収納保持されるロックピンと、
前記シリンダ内に流入する前記作動用流体を、前記ロックピンの元部側の収納部位まで流入可能に、前記ピストンに形成される流入路部と、
前記シリンダの内周面における前記ピストンの前進移動後の配置位置に配設されて、前記支持ロッドの後退移動を規制可能に、先端部側を前記ピストンから突出させた前記ロックピンを係止する係止面と、
を備える構成とされて、
作動時に、前記流入路部を経て前記ロックピンの収納部位内に流入させた前記作動用流体の圧力を利用して、前記ロックピンの先端部側を前記ピストンの外周面から突出させるように移動させる構成とされていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記シリンダにおいて、前記ピストンの前進移動後における前記ロックピンの突出位置に、前進移動時の前記ピストンを摺動させる摺動部より大径とした大径部が、設けられ、
該大径部における前記摺動部からの段差面が、前記係止面として、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ロックピンが、前記ピストンの軸回り方向に沿って略等間隔となる複数箇所に、配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記収納部位に、前記ロックピンの前記ピストン中心側への移動を防止する移動防止壁部が、形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記収納部位における前記ロックピンの周囲に、突出した前記ロックピンの戻りを防止する戻り防止手段が、配設されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項1】
自動車安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に配置されたピストンを、前記シリンダ内に作動用流体を流入させることにより、前記ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプとして、構成されるとともに、
前進移動した前記支持ロッドの後退移動を規制するロック機構を備えて構成され、さらに、
前記シリンダの先端壁部から突出した前記支持ロッドが、保護対象物を受け止める受止材に連結される構成のアクチュエータであって、
前記支持ロッドが、前進移動後における前記受止材の前記保護対象物の受け止め時、前記保護対象物の運動エネルギーを吸収可能に、塑性変形可能に配設され、
前記ロック機構が、
前進移動時に、元部側を前記ピストン内に収納させた状態で、前記ピストンの軸回り方向に沿った外周面から、先端部側を前記ピストンの軸直交方向に沿って突出可能として、前記ピストンの軸方向に沿った移動を規制されて、前記ピストン内に収納保持されるロックピンと、
前記シリンダ内に流入する前記作動用流体を、前記ロックピンの元部側の収納部位まで流入可能に、前記ピストンに形成される流入路部と、
前記シリンダの内周面における前記ピストンの前進移動後の配置位置に配設されて、前記支持ロッドの後退移動を規制可能に、先端部側を前記ピストンから突出させた前記ロックピンを係止する係止面と、
を備える構成とされて、
作動時に、前記流入路部を経て前記ロックピンの収納部位内に流入させた前記作動用流体の圧力を利用して、前記ロックピンの先端部側を前記ピストンの外周面から突出させるように移動させる構成とされていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記シリンダにおいて、前記ピストンの前進移動後における前記ロックピンの突出位置に、前進移動時の前記ピストンを摺動させる摺動部より大径とした大径部が、設けられ、
該大径部における前記摺動部からの段差面が、前記係止面として、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ロックピンが、前記ピストンの軸回り方向に沿って略等間隔となる複数箇所に、配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記収納部位に、前記ロックピンの前記ピストン中心側への移動を防止する移動防止壁部が、形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記収納部位における前記ロックピンの周囲に、突出した前記ロックピンの戻りを防止する戻り防止手段が、配設されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−138875(P2009−138875A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317216(P2007−317216)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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