説明

アライメントマークの認識方法

【課題】半導体ウェハやガラス、フィルムなどの基板と基板との接続で、アライメントマークの形成時にエッチング不足やオーバーエッチングが生じたり、アライメントマーク上の一部に不透明な粒子等が存在する場合でも、アライメントマークを正確に認識し、位置合せを精度よく行う。
【解決手段】アライメントマークを有する部材上に、粒子を含有する樹脂層が形成され、樹脂層を介して撮像したアライメントマーク画像にもとづいてアライメントマークの位置を検出するアライメントマークの認識方法であって、樹脂層に含まれる粒子のフェレー径の最大値を算出し、次いで撮像したアライメントマーク画像を2値化した後、2値化されたアライメントマーク画像を、粒子のフェレー径の最大値に対応する画素数分だけ収縮する処理、または膨張する処理を有し、2値化されたアライメントマーク画像から雑音を除去し、アライメントマークの位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子デバイス、電子機器および半導体モジュール等における基板上のアライメントマークを認識する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などに用いられる実装技術の発展に伴い、駆動用ICの配線の狭ピッチ化及び接続信頼性の向上が求められている。半導体チップと基板の各々の配線を接続する方法として、導電性粒子を接着剤中に均一に分散したフィルム状接着剤である異方導電性フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を利用する方法があり、高密度の電気的接続配線が可能になっている(特許文献1参照)。
【0003】
駆動用ICチップと基板との接続にあたっては、両者の位置合せ(アライメント)を高精度に行う必要がある。すなわち、ICチップ上のアライメントマークと配線を有する基板(回路基板)上のアライメントマークを検出し、ICチップとそれを貼り付ける回路基板との位置あわせを精密かつ正確に行うことが重要となる。
【0004】
アライメントマークの位置を検出する方法には、カメラ等で撮像したディジタル画像とあらかじめメモリーに記憶させておいた基準となるチップや基板上のアライメントマークとを比較することにより行う方法がある。この場合、撮像した画像の画像認識を行い、記憶してあるアライメントマーク画像と一致するか否かでアライメントマークの位置を検出する。たとえば、撮像した画像がX画素であれば、すべてのX画素に対して演算を行って特徴を抽出し、重心座標を求めることでアライメントマークの位置を求める。また基準となるアライメントマークのパターン情報と撮像した画像を各々2値化して比較し、アライメントマークの位置を検出する方法もある(特許文献2参照)。
【0005】
アライメントマークの位置を直接検出する方法として、アライメントマークに光を当て、その反射光もしくは透過光からの光強度により、アライメントマークの位置を求めるものがある。またアライメントマークの検出の際に基準となるパターンと実際のアライメントマークとのずれ量が最小となるよう演算を行ってアライメントマークの位置を認識する方法や、位置合わせの際、アライメントマークの位置情報をディジタル化することにより生じるサンプリング誤差を低減する方法もある(特許文献3、4参照)。
【0006】
しかし、カメラ等により撮像したアライメントマーク画像は、基板上のゴミや埃による雑音の混入や、アライメントマーク形成時のオーバーエッチングなどによるアライメントマーク形状の歪みなどの影響を受けることや、さらにACFをアライメントマーク上に形成した場合の図1に示すようなアライメントマークの一部が不透明な導電粒子により隠れてしまうこと、などから正確なアライメントマーク位置を特定できないことがあった。
【0007】
一方で、画像認識の精度を向上させる方法として、画像上に生じた雑音の除去があり、2値化した画像の収縮処理や膨張処理によって除去する方法がある。撮像の際に生じる焦点ボケを検知するため、検出対象物のパターンの輪郭が収縮、膨張する度合いを画像認識で判定する方法もある。
【特許文献1】特開平2−23387号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平3−129481号公報(2頁目)
【特許文献3】特開平7−22307号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平10−82742号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、半導体チップ、やガラス基板、フィルム基板などの間の接続にあたって、アライメントマークの形成時にエッチング不足やオーバーエッチングが生じた場合や、アライメントマーク上の一部に粒子等が存在する場合でも、アライメントマークを適切に認識でき、両者の位置合せを行うことができる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、アライメントマークを有する部材上に、粒子を含有する樹脂層が形成され、樹脂層を介して撮像したアライメントマーク画像にもとづいてアライメントマークの位置を検出するアライメントマークの認識方法であって、樹脂層に含まれる粒子のフェレー径の最大値を算出し、次いで撮像したアライメントマーク画像を2値化した後、2値化されたアライメントマーク画像を、粒子のフェレー径の最大値に対応する画素数分だけ収縮する処理、または前記画素数分だけ膨張する処理を有し、2値化されたアライメントマーク画像から雑音を除去し、アライメントマークの位置を検出するアライメントマークの認識方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アライメントマーク上の一部に存在する粒子等の雑音を精度よく除去でき、正確なアライメントマーク位置を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の最良の形態について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0012】
本発明のアライメントマークを有する部材は、例えば半導体ウェハ、半導体チップ、ガラスやフィルムなどの基板であり、アライメントマークの上に粒子と樹脂を含む樹脂層が形成されている(図1参照)。
【0013】
このような樹脂層を介して、部材上に形成されたアライメントマークを観察した場合、図1のようにアライメントマーク1が粒子2と一体となって観察されることになる。粒子とアライメントマークのコントラスト比が大きく、かつ透明な基板を用いる場合には、基板の裏側から観察を行い、撮像した画像の2値化処理を行うことにより、両者を区別することができるが、樹脂層を介してアライメントマークを観察する場合には、たとえ粒子とアライメントマークのコントラスト比が大きくてもアライメントマークの形状を正確に認識することができない。
【0014】
本発明のアライメントマークの認識方法は、図1のように粒子と一体となって観察されたアライメントマークの画像について2値化処理を行い、粒子のフェレー径の中で最大値に対応する画素数分を収縮処理、または膨張処理することにより、雑音の除去を行うものである。樹脂層に含まれる粒子のフェレー径の中の最大値を算出しておくので、画像の収縮や膨張の度合いを前記最大値に対応する画素数分に決めることができるため、収縮処理や膨張処理が簡便に行え、さらにアライメントマーク画像からの雑音の除去が容易であるため、アライメントマークの認識を正確かつ精度よく行うことができる。なお、2値化されたアライメントマーク画像の収縮処理、または膨張処理は、後述にあるように、2値化の際のアライメントマークと粒子に適用される値が同じか、異なるかによって決定される。アライメントマークおよびその位置が認識できれば、収縮処理、もしくは膨張処理のどちらか一方のみでもよいが、好ましくは、例えば粒子のフェレー径の中で最大値に対応する画素数分を収縮処理した後に、前記画素数分だけ膨張処理を行う、あるいは前記画素数分だけ膨張処理をした後に、前記画素数分だけ収縮処理を行うというような2つの処理を併用する。この場合、2値化されたアライメントマーク画像の収縮処理、または膨張処理の順番は、後述にあるように、2値化の際のアライメントマークと粒子に適用される値が同じか、異なるかによって決定される。
【0015】
フェレー径の最大値に対応する画素数とは、フェレー径の最大値をL、対応する画素数をNとしたとき、N=L/Rで表すことができる。なお、Rは撮像した画像の画素1個のサイズとする。たとえば、解像度100×100の画像で視野100μm×100μmのサイズを撮像した場合、一画素のサイズRは1μmとなり、たとえば、解像度100×100の画像で視野50μm×50μmのサイズを撮像した場合、一画素のサイズRは0.5μmとなる。得られたフェレー径の最大値が5.5μmであれば、R=0.1μmのとき対応する画素数Nは5.5/0.1=55画素と算出され、R=0.5μmのとき対応する画素数Nは5.5/0.5=11画素と算出される。
【0016】
2値化とは色の濃さを、あるしきい値を境に「1(白)」または「0(黒)」の値に変換して表現することである。しきい値とは、画像の階調を変換する場合の境界値のことであり、たとえば、濃淡画像が256階調でしきい値を128とした場合、128以上の階調はすべて「1」、128未満は「0」の画像に変換される。このような2値化を行うことにより、情報量を減少させて画像処理の負荷を軽減することができる。しきい値は、用いる粒子や樹脂、アライメントマーク材料の種類によって、また観察画像の明るさによって適宜決定することができる。
【0017】
ここでは、アライメントマークの図形を縮める処理を収縮処理、膨らませる処理を膨張処理という。すなわち、収縮処理とはアライメントマークの図形の境界にある画素の値をすべて背景画素の値に変換して1画素分縮めることである。一方、膨脹処理とは、収縮処理とは逆にアライメントマークの図形の境界画素に接する背景画素の値を図形の画素の値に変換して1画素分膨らませることである。これらの収縮処理と膨張処理とをそれぞれ複数ステップ行ったり、互いに組み合わせることによって、2値化した画像中にある図形の雑音成分の除去が可能となる。具体的に、8近傍、すなわち隣接した8画素を対象とした収縮処理の場合、図形を「1」、背景を「0」で示すとすると、ある画素の隣接した8画素についていずれか一つでも「0」なら次のステップで「0」となる処理である。また、膨張処理では、ある画素の隣接した8画素についていずれか一つでも「1」なら次のステップで「1」となる。もう一回り外側の16画素を考慮する等、様々な収縮処理、膨張処理ルールが適用可能である。また、上記の画像処理を行う前に、前処理として一般的な各種の空間フィルタ、すなわち、平滑化フィルタ、メディアンフィルタ、線やエッジを強調する微分フィルタ、ラプラシアンフィルタ等を用いることもできる。
【0018】
粒子のフェレー径とは、図2のように粒子に外接するように長方形を描いた場合の辺のうち、長い方の長さである。粒子のフェレー径の最大値とは、画像中にある粒子のフェレー径の内、ランダムに抽出した100個程度の粒子を観察し、粒子のフェレー径を算出し、その中で最も大きい値をとる。長方形の辺は、画像の水平、垂直に対して平行なものを用いる。
【0019】
特にACFやACP(異方導電性接着ペースト)用途では、平均フェレー径が1μm以上20μm以下の粒子が好ましく用いられる。粒子の平均フェレー径が1μm以上あれば、部材間の電気的接続に十分であり、20μm以下であれば隣り合った配線間が電気的にショートすることがなく狭ピッチの配線接続が可能である。
【0020】
アライメントマークの大きさは、粒子を収縮処理および膨張処理により取り除いた際の誤差が小さくなるようアライメントマークのフェレー径が粒子のフェレー径の最大値よりも大きく5倍以上であり、さらに、位置合わせ精度が低くならないよう、また実装面積が小さくならないように1000倍以下であることが好ましい。アライメントマークのフェレー径は、粒子のフェレー径と同様にアライメントマークに外接するように長方形を描いた場合の辺のうち、短い方の長さである。
【0021】
アライメントマークの撮像には、例えば光学顕微鏡に取り付けたCCDカメラを用いることができる。撮像の倍率は、サンプリングによる誤差の影響がでないよう、粒子を十分な画素数で表現するため100画素以上となるよう設定することが好ましい。また、膨張や収縮などの画像処理による演算時間が大きくなりすぎないよう、100000画素以下にすることが好ましい。粒子1個あたり100000画素よりも多く、高解像度で撮像しておき、後から画像処理を行って解像度を落とすこともできる。したがって、撮像する実視野のサイズにもよるが、使用するカメラの有効画素数は、1画素あたりの分解能が0.1μm以下となるようなものを用いることが好ましい。
【0022】
アライメントマークの形状としては、特に限定されず様々な形状のアライメントマークを使用することが可能である。アライメントマークの加工プロセスにおいては、通常フォトリソグラフィーなどを用いることが多く、オーバーエッチングやエッチング不足など加工上の不具合が生じることがある。この場合、アライメントマークが多角形の場合、角部分が丸められることがある。この場合加工上の不具合が等方的に生じるため、とくに円形状を有するアライメントマークを用いることで、画像の収縮処理や膨張処理の操作により、本来の形状に近づけて認識することができる。また、撮像時の境界線のぼやけや、2値化しきい値における画像のずれも解決することができるので好ましい。
【0023】
本発明のアライメントマークの認識方法の具体的な手順を次に説明する。まず、樹脂層に含まれる粒子のフェレー径の最大値を求める。フェレー径の最大値はランダムに抽出した100個程度の粒子の観察を行い、粒子のフェレー径を算出し、その中で最も大きい値とする。次いで、画像処理に必要な樹脂層に含まれる粒子のフェレー径の最大値の情報とアライメントマークのパターンの画像情報(基準パターン)を記憶しておく。次に、観察カメラを用いて樹脂層が形成された基板のアライメントマークを撮像し、その画像データを取り込む。図1は撮像したものを示したものである。撮像の際、アライメントマークのフェレー径と粒子のフェレー径の最大値がわかっているため、画像の解像度は所定の範囲内となるよう設定することができる。取り込んだ画像は、適切なしきい値にもとづき「0」、「1」からなる2値のデータとして変換される。変換された状態を示したものが図3、4である。2値化を行うときのしきい値については、あらかじめ登録しておくことが可能である。
【0024】
図3は2値化する際に粒子とアライメントマークに同じ値(粒子、アライメントマークのいずれも「1」)を適用した場合、図4は2値化する際に粒子とアライメントマークに各々異なる値(例えば粒子を「0」、アライメントマークを「1」とする)を適用した場合を表している。
【0025】
図3の場合、粒子のフェレー径の最大値に対応した画素数分のステップだけ、画像の収縮処理を行うとアライメントマークに重ならない部分の粒子の情報(雑音)はすべて消去され、アライメントマークに重なっていた部分についても、消去することができる。収縮処理によって雑音が除去された状態を示したものが図5である。収縮処理の回数は、1画素あたりの実サイズRを計算し粒子の最大のフェレー径Lに対応する画素数を算出し、得られた画素数分の収縮処理を行う。次いで、収縮処理された画像をまた画素数分のステップだけ膨張させるとアライメントマークだけが残ることになる。図5を膨張処理したものが図7である。
【0026】
また図4の場合、図3の場合とは収縮、膨張処理の順序が異なり、まず粒子のフェレー径の最大値に対応した画素数分のステップだけ画像の膨張処理を行う。膨張処理によって雑音が除去された状態を示したものが図6である。次いで図6を収縮処理したものが図7である。
【0027】
アライメントマークの形成時にエッチング不足やオーバーエッチングが生じていた場合にも、上記の膨張処理および収縮処理の後、さらに収縮または膨張処理の回数のいずれかを調整することにより、基準となるアライメントマークとの一致度を向上させることができる。
【0028】
ここで、基板のアライメントマークの形状があらかじめ記憶されているアライメントマークの基準パターンの形状に一致するかを判断するため、パターンマッチングを行う。パターン一致度の評価は、例えば、基準パターンとアライメントマークの各画素の値(1か0)を比較し、不一致である画素の個数Aをカウントする。基準パターンの位置を移動させていき、Aが最小となる値を求め、(|B−A|/B)×100%と算出することができる。Bは基準パターンを形成する画素の数である。
【0029】
本発明において、アライメントマークを形成する材料は、レジストや各種の配線パターンなどを加工した金属材料、基板を加工したものなど、とくに限定されない。
【0030】
また、樹脂層に用いられる粒子としては、ニッケル、銅、銀などの各種金属粉、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウムなどの金属酸化物微粒子、硬度の高いカーボン粒子やポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマー粒子、ガラス繊維、さらにはこれらの粒子に金被覆したものや金−ニッケル2層被覆したものが用いられる。金めっきしたポリマーや固体の金、銀、銅、錫ベースの合金なども使われる。
【0031】
例えば、樹脂層としては接着剤や樹脂中に導電性粒子を均一に分散したACF(異方導電性接着フィルム)や、ACP(異方導電性接着ペースト)がある。本発明のアライメントマークの認識方法は、光の透過率が50%未満の粒子を含む樹脂層にとって、有効に働く。
【0032】
本発明のアライメントマークの認識方法が適用される樹脂層に用いられる樹脂の光の透過率は50%以上であることが好ましい。観察時のコントラスト比を大きくするという観点から、樹脂の光の透過率は、できるだけ大きいことが好ましい。
【0033】
樹脂層に用いられる樹脂の具体例としては、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系、ポリイミド系などがあるが、主に接着性などの点でエポキシ系を好ましく用いることができる。
【0034】
本発明は、ACFを半導体チップと基板の接続に用いたものに応用することができ、例えばLCDパネルとTCP(Tape Carrier Package)、液晶駆動用などのIC、フィルム回路基板、あるいはフィルム回路基板やTCPとPWB(Printed Wiring Board)の電気的接続及び接着などに広く用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0036】
実施例1
4インチのシリコンウェハ上全面に膜厚14nmのNi-Cr、100nmの銅の順にスパッタリング成膜を行った。さらに電解銅めっきを行い膜厚5μmの金属層を形成し、サブトラクティブ法によってパターン加工を行い、線幅25μm、長さ150μmの「+」形状のアライメントマークを作製した。アライメントマークのフェレー径は、150μmである。このアライメントマークをCCDカメラ付きの光学顕微鏡(オリンパス(株)製、MX61L)で観察し、解像度2000×2000で200μm×200μmの視野の画像を取り込み、さらに256階調の濃淡画像からしきい値128のところで2値化することにより、参照となるアライメントマーク画像の基準パターンを作製した。
【0037】
次に、アライメントマーク上を覆うように、樹脂層として厚さ18μmの異方導電性フィルムをシリコンウェハに貼り付けた。異方導電性フィルムには、樹脂に金を被覆した粒子径5μmの球状の粒子が15体積%となるよう充填されている。また粒子の粒子径は、異方導電性フィルムをシリコンウェハに貼る前に、光学顕微鏡を用いて異方導電性フィルム中のランダムに抽出した100個の粒子を観察し、その100個の粒子の粒子径の平均値である。また、光学顕微鏡を用いて異方導電性フィルム中のランダムに抽出した100個の粒子を観察し、その中で最大のフェレー径を求めたところ、5.5μmだった。解像度2000×2000における粒子1個あたりの画素数は3025画素であり、撮像した画像の画素1個あたりの実サイズが0.1μmなので、フェレー径に対応する画素数は55である。
【0038】
光学顕微鏡を用い、樹脂層を介してアライメントマークを観察し、基準パターンの作製と同様に2値化したアライメントマーク画像を作製した。2値化に用いたしきい値は180であり、粒子とアライメントマークは同一の値を用いて2値化された。このアライメントマーク画像において、8近傍の画素を対象として収縮処理を55ステップ行い、続いて膨張処理を55ステップ行った。アライメントマーク画像と基準パターンのテンプレートパターンマッチングを行ったところ、一致度が97%であった。パターン一致度の評価は、基準パターンとアライメントマークの各画素の値(1か0)を比較し、不一致である画素の個数Aをカウントしながら基準パターンの位置を移動させていき、Aが最小となる値を求め、(|B−A|/B)×100%と算出した。Bは基準パターンを形成する画素の数である。
【0039】
実施例2
粒子径5μmの粒子を粒子径20μmの粒子に換えて、アライメントマークのフェレー径を120μmとした以外は、実施例1と同様に基準パターンと、アライメントマーク画像を作製した。
【0040】
またフェレー径の最大値を求めたところ、20.7μmだった。解像度2000×2000における粒子1個あたりの画素数は42849画素であり、撮像した画像の画素1個あたりの実サイズが0.1μmなのでフェレー径の最大値に対応する画素数は207である。収縮処理を207ステップ行い、続いて膨張処理を207ステップ行った。実施例1と同様にしてアライメントマーク画像と基準パターンのテンプレートパターンマッチングを行ったところ、一致度が92%であった。
【0041】
実施例3
粒子径5μmの粒子を粒子径20μmの粒子に換えて、アライメントマークのフェレー径を80μmとした以外は、実施例1と同様に基準パターンと、アライメントマーク画像を作製した。
【0042】
またフェレー径の最大値を求めたところ、20.7μmだった。解像度2000×2000における粒子1個あたりの画素数は42849画素であり、フェレー径の最大値に対応する画素数は207である。収縮処理を207ステップ行い、続いて膨張処理を同じ207ステップ行った。実施例1と同様にしてアライメントマーク画像と基準パターンのテンプレートパターンマッチングを行ったところ、一致度が83%であった。
【0043】
実施例4
解像度を320×320とした以外は、実施例1と同様に基準パターンを作製した。
粒子1個あたりの画素数が81画素であり、撮像した画像の画素1個あたりの実サイズが0.6μmなのでフェレー径の最大値に対応する画素数は9である。収縮処理を9ステップ行い、続いて膨張処理を同じ9ステップ行った。実施例1と同様にしてアライメントマーク画像と基準パターンのテンプレートパターンマッチングを行ったところ、一致度が80%であった。
【0044】
実施例5
粒子径5μmの粒子を粒子径20μmの粒子に換えて、粒子1個あたりの画素数が102400画素となるように、解像度を設定した他は、実施例4と同様に行った。フェレー径の最大値を求めたところ、20.8μmだった。撮像した画像の画素1個あたりの実サイズが0.065μmなのでフェレー径の最大値に対応する画素数は320である。この状態で、実施例1と同様にしてアライメントマーク画像と基準パターンのテンプレートパターンマッチングを行ったところ、一致度が81%であった。ただし、アライメントマーク全体を表示するための解像度が大きくなったため、カメラの視野内にアライメントマーク全体を収めることができなかった。
【0045】
比較例1
収縮処理および膨張処理を行わない以外は、実施例1と同様に基準パターンと、アライメントマーク画像を作製した。アライメントマーク画像と基準パターンのテンプレートパターンマッチングを行ったところ、一致度が76%であった。
【0046】
実施例6
粒子径5μmの粒子を粒子径0.5μmの粒子に換えた以外は、実施例1と同様に行った。フェレー径の最大値を求めたところ、0.6μmだった。解像度2000×2000における粒子1個あたりの画素数は36画素であり、撮像した画像の画素1個あたりの実サイズが0.1μmなのでフェレー径の最大値に対応する画素数は6である。収縮処理を6ステップ行い、続いて膨張処理を6ステップ行った。実施例1と同様にしてアライメントマーク画像と基準パターンのテンプレートパターンマッチングを行ったところ、一致度が96%であった。
【0047】
次に4インチのシリコンウェハ上全面に膜厚14nmのNi−Cr、100nmの銅の順にスパッタリング成膜を行った。さらに電解銅めっきを行い膜厚5μmの金属層を形成し、サブトラクティブ法によって50μmピッチのストライプ状の電極パターンを形成した。次に、長手方向がストライプ状の電極と平行になるように、シリコンウェハを2cm×3cmの大きさにカットし、ストライプ状電極付き基板を得た。この基板を2枚作製し、一方の基板上にストライプ状の電極を覆うように、厚さ18μmの異方導電性フィルムを基板の中心2cm×2.5cmの部分に貼り付けた。すなわち、ストライプ状電極の端部が露出した状態で異方導電性フィルムが貼り付けられている。また、異方導電性フィルムには、粒子径0.5μmの球状の銀粒子が15体積%となるよう充填されている。次に、この異方導電性フィルムの両面にストライプ状電極が貼り合わさるよう、また、ストライプ状電極が互いに垂直方向となるように、もう一方の基板を中心2cm×2cmの部分で貼り合わせた。
【0048】
0.01MPaの圧力で圧着し貼り合わせた2つの基板の任意の電極を1つずつ選びデジタルマルチメーター((株)カスタム製、CDM−03D)を用いて両電極間の抵抗値を測定したところ、両電極間の抵抗は測定器の測定限界以上となり、電気的接続を行うことができなかった。
【0049】
実施例7
粒子径5μmの粒子を粒子径25μmの粒子に換えた以外は、実施例1と同様に行った。フェレー径の最大値を求めたところ、25.6μmだった。解像度2000×2000における粒子1個あたりの画素数は65536画素であり、撮像した画像の画素1個あたりの実サイズが0.1μmなのでフェレー径の最大値に対応する画素数は256である。収縮処理を256ステップ行い、続いて膨張処理を256ステップ行った。実施例1と同様にしてアライメントマーク画像と基準パターンのテンプレートパターンマッチングを行ったところ、一致度が93%であった。
【0050】
次に実施例6と同様にして、ストライプ状電極付き基板上にストライプ状の電極を覆うように、厚さ18μmの異方導電性フィルムを基板の中心2cm×2.5cmの部分に貼り付けた。すなわち、ストライプ状電極の端部が露出した状態で異方導電性フィルムが貼り付けられている。また、異方導電性フィルムには、樹脂に金を被覆した粒子径25μmの球状の粒子が15体積%となるよう充填されている。次に、2cm×3cmの大きさにカットしたガラス基板を、この異方導電性フィルム付き基板と中心2cm×2cmの部分で貼り合わせた。
【0051】
実施例6と同様にして、電極間の抵抗値を測定したところ、両電極間が導通してしまった。
【0052】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の認識方法を適用するアライメントマークの観察像
【図2】本発明における粒子のフェレー径の説明図
【図3】図1のアライメントマークの観察像を2値化で表した図(粒子とアライメントマークが同じ値の場合)
【図4】図1のアライメントマークの観察像を2値化で表した図(粒子とアライメントマークが異なる値の場合)
【図5】図3を得られた画素数分だけ収縮処理し、雑音を除去した図
【図6】図4を得られた画素数分だけ膨張処理し、雑音を除去した図
【図7】図5を得られた画素数分だけ膨張処理した図(図6を得られた画素数分だけ収縮処理した図と同じ)
【符号の説明】
【0054】
1 アライメントマーク(粒子に対し下部に位置する)
2 粒子
3 粒子のフェレー径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アライメントマークを有する部材上に、粒子を含有する樹脂層が形成され、樹脂層を介して撮像したアライメントマーク画像にもとづいてアライメントマークの位置を検出するアライメントマークの認識方法であって、樹脂層に含まれる粒子のフェレー径の最大値を算出し、次いで撮像したアライメントマーク画像を2値化した後、2値化されたアライメントマーク画像を、粒子のフェレー径の最大値に対応する画素数分だけ収縮する処理、または前記画素数分だけ膨張する処理を有し、2値化されたアライメントマーク画像から雑音を除去し、アライメントマークの位置を検出するアライメントマークの認識方法。
【請求項2】
アライメントマーク画像にある樹脂層の粒子が、粒子1個あたり100画素以上100000画素以下で撮像されている請求項1記載のアライメントマークの認識方法。
【請求項3】
樹脂層の粒子のフェレー径の最大値が1μm以上20μm以下であり、かつアライメントマークのフェレー径が、樹脂層に含まれる粒子のフェレー径の最大値の5倍以上1000倍以下である請求項1記載のアライメントマークの認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−101962(P2008−101962A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283409(P2006−283409)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】