説明

アリールオキシプロピルアミンの調製方法

【課題】式(I)の化合物の低コストな、また容易に入手可能なまたは調製が容易な出発生成物製造方法の提供。


【解決手段】アリールメチルオキシアリール化合物を塩基性剤の存在下で、塩化−2−N,N−ジアルキルエチル等の化合物と反応させ、所望により、化合物(I)を他の化合物(I)に変換し、および/または、所望により、化合物(I)の異性体混合物を個々の異性体に分離し、および/または、所望により、化合物(I)をその塩に変換することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の化合物またはその塩を、個々の異性体および異性体混合物の両方として調製する方法に関する
【0002】
【化1】

【0003】
[式中、AおよびBのそれぞれは、独立に、本明細書において定義の通りの場合によって置換されているアリールまたはヘテロアリールであり、RおよびR1は、同一または異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、またはアミノ保護基である]。式(I)の化合物は薬物として有用であり、特にRが水素でありかつR1がメチルであるものは抗うつ剤として有用である。
【背景技術】
【0004】
式(I)の化合物は、「オキセチン」ファミリーに属し、抗うつ剤、ならびにセロトニンおよびノルアドレナリンなどのニューロン媒介物質のシナプス再吸着の阻害剤である。前記「オキセチン」の例は、デュロキセチン、アトモキセチン、フルオキセチン、およびニソキセチンである。これらの化合物を調製するためのいくつかの合成方法が知られている。しかし、それらの方法の多くは、高価な、ほとんど入手不可能な出発生成物を利用し、さらにそれらの合成には多くのステップを要し、このため方法が煩雑になっている。前記合成方法の例は、デュロキセチンについは米国特許第5023269号、米国特許第5362886号、および欧州特許第457559号に、またフルオキセチンおよびアトモキセチンについては米国特許第4018895号に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、コストを低減させるように、容易に入手可能なまたは調製が容易な出発生成物、ならびに工業生産に適合した操作条件を使用した、前記化合物の代替的調製方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式(I)の化合物
【0007】
【化2】

【0008】
[式中、AおよびBのそれぞれは、独立に、本明細書において定義の通りの、場合によって置換されているアリールまたはヘテロアリールであり、RおよびR1は、同一または異なっていることができ、水素、C1〜C6アルキル、またはアミノ保護基である]
またはその塩を、個々の異性体および異性体混合物の両方として調製する方法であって、
式(II)の化合物の式(III)の化合物との塩基性剤の存在下での反応:
【0009】
【化3】

【0010】
(式中、AおよびBは本明細書定義の通りであり、R1およびR2は、独立に、C1〜C6アルキル、またはアミノ保護基であり、Xは脱離基である)を含む方法に関する。
【0011】
本発明の方法により、上述の問題を克服している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の目的は、式(I)の化合物またはその塩を、個々の異性体またはその異性体混合物の両方として調製する方法であって、
【0013】
【化4】

【0014】
[式中、AおよびBのそれぞれは、独立に、1〜4個の置換基により場合によって置換されているアリールまたはヘテロアリールであり、前記置換基は、同一または異なっていることができ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C6アルキル(ハロゲンにより場合によって置換されている)、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6アルコキシ、ならびに−N(Rab)(式中、RaおよびRbは、同一または異なっていてもよく、C1〜C6アルキルであり、またはRaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、窒素および酸素から選択される1、2または3個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する5員または6員の飽和または不飽和環を形成する)から選択され、
RおよびR1は、同一または異なっていてもよく、水素、C1〜C6アルキル、またはアミノ保護基であり、
化合物(II)
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、AおよびBは、上記定義の通りである)を、塩基性剤の存在下で、
化合物(III)
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、RおよびR1のそれぞれは、独立に、C1〜C6アルキル、またはアミノ保護基であり、Xは脱離基である)と反応させ、所望により化合物(I)を他の化合物(I)に変換し、および/または、所望により、化合物(I)の異性体混合物を個々の異性体に分離し、および/または、所望により、化合物(I)をその塩に変換することを含む方法である。
【0019】
化合物(I)の異性体は、例えば幾何または光学異性体、好ましくは(R)または(S)鏡像異性体とすることができる。
【0020】
化合物(I)の塩は、例えば酸または塩基との塩、好ましくは医薬的に許容可能な塩、特に塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、マンデル酸塩、酒石酸塩、ジベンゾイル−酒石酸塩、ジトルイル−酒石酸塩、シュウ酸塩、メシレート、マレイン酸塩、好ましくはマンデル酸塩、塩酸塩、およびシュウ酸塩である。
【0021】
Aおよび/またはBがアリール、例えばフェニルまたはナフチルである場合、Aは、場合によってC1〜C4アルキルで置換され、次にさらに場合によってハロゲンで置換されている、あるいはC1〜C4アルコキシで置換されているフェニルまたはナフチルが好ましい。アリールとしてのBはフェニルが好ましい。
【0022】
ヘテロアリールとしての置換基AまたはBは、例えば、通常単環式または二環式の、不飽和の、窒素、酸素および硫黄から選択される1、2または3個のヘテロ原子を場合によって含有する複素環である。前記複素環の例は、チオフェン、フラン、ピロール、ピリジン、ピラジン、キノリン、インドール、チオナフテン、ベンゾフラン、キノキサリン、およびフタラジンである。特にヘテロアリールとしてのBはチエニルが好ましい。
【0023】
ハロゲン原子は、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、特にフッ素または塩素である。
【0024】
1〜C6アルキル基は、典型的にはC1〜C4アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、またはtert−ブチル、特にメチル、エチル、プロピル、またはイソプロピルである。これがハロゲンで置換されている場合、それは1〜3個の上記において定義したハロゲン原子により置換でき、かつトリフルオロメチルが好ましい。
【0025】
1〜C6アルキルチオ基は、典型的にはC1〜C4アルキルチオ基、特にメチルチオ、またはエチルチオである。
【0026】
1〜C6アルコキシ基は、典型的にはC1〜C4アルコキシ基、特にメトキシ、エトキシまたはプロポキシである。
【0027】
−N(Rab)基は、例えばジメチルアミノ、メチル−エチルアミノ、ジエチルアミノ、またはジイソプロピルアミノ基である。
【0028】
−N(Rab)基が、上記において定義している5員または6員環を形成する場合、これは例えばピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、ピロリル、イミダゾリル、またはピラゾリル残基である。
【0029】
アミノ保護基は、ペプチド化学で従来使用されている保護基の1つで保護されるアミノ基とすることができる。典型的にはアミノ基は、カルバミン酸エステル、アミド、イミド、またはエナミンとして、特にカルバミン酸エチル、カルバミン酸フェニル、アセトアミド、またはフタルイミドとして保護される。
【0030】
脱離基Xは、例えばハロゲン原子好ましくは塩素または臭素、特に臭素、あるいは、エステル化により活性化されたヒドロキシ基、例えばアルカンスルホニルオキシ基、典型的にはメシルオキシ、またはアリールスルホニルオキシ基、典型的にはトシルオキシ、または、トリフルオロメタンスルホニルオキシおよびノナフルオロブタンスルホニルオキシなどのペルフルオロアルカンスルホニルオキシ基、好ましくは塩素、臭素、ヨウ素、メタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、より好ましくは塩素とすることができる。
【0031】
塩基性剤は、例えば式E−Mの化合物(式中、Mはナトリウム、リチウム、カリウム、またはマグネシウムなどのアルカリもしくはアルカリ土類金属であり、Eは水素化物、アルコキシド、アルキルカルボアニオン、シリルアニオン、またはアミドアニオンなどの強有機もしくは無機塩基である)、あるいは式Rc−MgYまたは(Rc2Mgの化合物(式中、RcはC1〜C6アルキル、C5〜C7シクロアルキル、アリール、またはアリール−C1〜C6アルキルであり、Yはハロゲン、または上記において定義している−N(Rab)基である)である。
【0032】
1〜C6アルキル基、またはアリール基は、上記定義の通りである。
【0033】
ハロゲンとしてのYは、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素または臭素とすることができる。
【0034】
1〜C6アリール−アルキル基は、好ましくはC1〜C4アリール−アルキル基、特にベンジルまたはフェニルエチルである。
【0035】
5〜C7シクロアルキル基は、典型的にはC5〜C6シクロアルキル基、好ましくはシクロヘキシルである。
【0036】
塩基性剤の好ましい例は、ブチル−リチウム、ヘキシル−リチウム、t−ブチル−リチウム、フェニルリチウム、エチル−マグネシウムブロミド、シクロヘキシル−マグネシウムクロリド、ベンジル−マグネシウムブロミド、エチル−マグネシウム−ジイソプロピルアミド、ジブチル−マグネシウム、マグネシウムジイソプロピルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス−トリメチルシリルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、カリウムtert−ブトキシド、水素化ナトリウムまたはカリウム、より好ましくはブチルリチウム、ヘキシルリチウム、およびリチウムジイソプロピルアミドである。
【0037】
化合物(II)と化合物(III)の間の反応は、溶媒、好ましくは無水有機溶媒、典型的には脂肪族もしくは芳香族炭化水素、例えばヘキサン、トルエン、石油エーテル、エーテル例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、あるいは前記溶媒の2種以上の、好ましくは2または3種の混合物の存在下において行うことができる。この反応は、エーテル溶媒、特にテトラヒドロフランまたはメチル−tert−ブチルエーテル中で行われることが好ましい。
【0038】
化合物(II)の塩基性剤に対する化学量論比は、およそ0.5〜10、好ましくはおよそ1〜3の範囲である。反応は、およそ−80℃〜10℃、好ましくは−15℃〜0℃の範囲にある温度で行うことができる。
【0039】
塩基性剤が、上記において定義している式E−Mの化合物である場合、反応は配位子、典型的にはポリアミン、特に例えばテトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンおよびtrans−テトラメチルシクロヘキサントリアミン、好ましくはテトラメチルエチレンジアミンから選択されるジアミンの存在下において行うことができる。
【0040】
化合物(I)の他の化合物(I)への変換、異性体混合物のその個々の異性体への分離、ならびに化合物(I)のその塩への変換は、知られている方法により行うことができる。
【0041】
例えばRがアミノ保護基である化合物(I)は、知られている方法、例えば加水分解によって保護基を除去することにより、Rが水素である化合物(I)に変換することができる。
【0042】
Rがメチル基である化合物は、知られている方法、例えばデュロキセチンの調製について欧州特許第457559号に開示されている例えばクロロギ酸エステルによる、脱メチル化反応によって、Rがアミノ保護基である化合物(I)に変換することができる。
【0043】
最後に、所望により、この生成物は、欧州特許第52492号にアトモキセチンについて記載されているものなどの知られている方法により、その鏡像異性体に分割することができる。
【0044】
好ましい式(I)の化合物は:
Aが、場合によってC1〜C4アルキルで置換され、次にさらに場合によってハロゲンで置換されている、あるいはC1〜C4アルコキシで置換されているフェニルまたはナフチルであり、
Bがフェニルまたはチエニルであり、
RおよびR1の一方がC1〜C4アルキルであり、他方が水素、C1〜C4アルキル、またはアミノ保護基であり、その化合物の塩であるものである。
【0045】
式(I)の化合物の特定の例は:
・ (+)−N−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミン(ズロキセチン);
・ N,N−ジメチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミン;
・ (−)−N−メチル−3−(2−メチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン(アトモキセチン);
・ N,N−ジメチル−3−(2−メチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン;
・ N−メチル−3−(4−トリフルオロメチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン(フルオキセチン);
・ N,N−ジメチル−3−(4−トリフルオロメチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン;
・ N−メチル−3−(4−メトキシ−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン(ニソキセチン);
・ N,N−ジメチル−3−(4−メトキシ−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン;
・ フェニル N−メチル−3−(2−メチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロピルカルバメート;
・ フェニル N−メチル−3−(4−トリフルオロメチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロピルカルバメート;
・ フェニル N−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)−プロピルカルバメート;
・ フェニル N−メチル−3−(4−メトキシ−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロピルカルバメート;
およびそれらの塩である。
【0046】
場合によって単離することができる化合物(II)は、化合物(IV)またはその塩の、化合物(V)との間の反応により得ることができる(但しこれらの化合物において、A、B、およびXは上記定義の通りである)。特にXはBrまたはClである。
【0047】
こうしてスキーム化することができる反応:
【0048】
【化7】

【0049】
は、塩基性剤の存在下において行われるのが好ましい。前記薬剤の例は、ナトリウム、カリウム、リチウムまたはカルシウム等の水酸化物;炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの第三級有機アミン;あるいはナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドなどのアルカリアルコキシドである。この塩基性剤は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、あるいは炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムが好ましい。
【0050】
化合物(V)の、化合物(IV)またはその塩に対する化学量論比は、およそ0.5〜10、好ましくはおよそ1〜1.5の範囲とする。
【0051】
この反応は、場合によって溶媒の存在下において行うことができる。溶媒は通常、ケトン、例えばアセトン、ジエチルケトン、メチル−イソブチルケトン;エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル;塩素化溶媒、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、またはジクロロベンゼン;アルカノール、例えばメタノール、エタノール、またはイソプロパノール、ならびに前記溶媒の2種以上の、特に2または3種の(場合によって水との)混合物などの有機溶媒とすることができる。反応はケト溶媒、特にアセトン、またはアセトン/水混合物中で行われるのが好ましい。
【0052】
この反応は、およそ0℃から反応混合物の還流温度までの範囲にある温度、好ましくはおよそ25℃〜50℃で行うことができる。
【実施例】
【0053】
下記の実施例は、本発明を例証している。
【0054】
実施例1
N,N−ジメチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)−プロパンアミン
温度約−70℃で磁気撹拌および不活性雰囲気下に保持した、テトラヒドロフラン(2ml)中の2−(ナフタレン−1−イルオキシメチル)−チオフェン(0.89g、3.71ミリモル)の溶液に、予め調製したリチウムジイソプロピルアミドの溶液(3.71ミリモル、テトラヒドロフラン中1.4M)を添加する。
【0055】
−50℃〜−20℃の範囲にある温度を保持し、この混合物を約30分間反応させ、次いでこの中に、塩化ジメチルアミノエチル(0.44g、4.10ミリモル)の溶液を滴下させる。添加が終わった後、反応混合物を約20℃に14時間保持する。その後、10mlのH2Oを添加する。水性相について、メチル−tert−ブチルエーテルで2回抽出する。有機相を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、セライトを通して濾過し、残渣となるまで減圧下で蒸留する。生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィにより単離している。(酢酸エチル:メタノール:2−プロパノール=5:4:1)。
【0056】
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ:2.17〜2.32 m,2H;2.26 s,6H;2.38〜2.58 m,2H;5.78 dd,1H;6.89 d,1H;6.93 dd,1H;7.05 d,1H;7.19 d,1H;7.25 dd,1H;7.37 d,1H;7.42〜7.50 m,2H;7.62〜7.80 m,1H;8.21〜8.38 m,1H。
【0057】
実施例2
N,N−ジメチル−3−(2−メチルフェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン
機械的撹拌機、温度計を取り付けた3つ口反応器に、窒素流のもとで約95%o−トリル−ベンジルエーテル(30.0g、0.144モル)、テトラメチルエチレンジアミン(20.0g、0.173モル)、メチル−tert−ブチルエーテル(120ml)を装入し、およそ−15℃〜−20℃の範囲にある温度まで冷却する。温度を−10℃未満に保持し、ヘキサン中の2.3Mヘキシル−リチウム溶液(68.8mL、0.158モル)をゆっくり添加する。添加が終わった後、およそ−10℃で混合物を約15〜20分間反応させる。
【0058】
メチル−tert−ブチルエーテル(60mL)中の塩化2−ジメチルアンミノエチル(24.8g、0.173モル)の溶液を調製し、温度を0未満〜5℃に保持しながら上記溶液中に滴下させる。混合物を約10℃の温度でおよそ1〜2時間反応させ、次いで水(100ml)を添加して、反応を止める。相を分離し、水(100ml)による洗浄を繰り返す。約40〜45℃の温度で有機相中に、イソプロパノール(60ml)中のシュウ酸(16.3g、0.173モル)の溶液をゆっくり滴下させ、この温度をおよそ30分間保持し、次いで室温で混合物を自然に冷却するままとする。得られた固体を濾過し、メチル−tert−ブチルエーテルおよびイソプロパノール1:1混合物で洗浄し、次いで真空下約45℃で静的乾燥器内において一晩にわたり乾燥する。40.4gの生成物が得られ、収率78%である。
【0059】
1H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ(ppm):7.40〜7.22(m,5H);7.10(d,1H);6.95(t,1H);6.76〜6.66(m,2H);5.80(m,1H);3.20〜3.00(m,2H);2.70(s,3H);2.60(s,3H);2.25(s,3H);2.40〜2.10(m,2H)。
【0060】
同じように進めることにより、下記の化合物を得ることができる:
・ N,N−ジメチル−3−(4−トリフルオロメチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン;および
・ N,N−ジメチル−3−(4−メトキシ−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン。
【0061】
実施例3
o−トリル−ベンジルエーテル
冷却器、磁気撹拌機、温度計を取り付けた三首丸底フラスコに、窒素流のもとでo−クレゾール(100g、0.925モル)、ヨウ化カリウム(7.7g、0.046モル)、およびアセトン(650ml)を装入し、次いで懸濁液を撹拌し続けながら、炭酸ナトリウム(166g、1.20モル)を添加する。次いで得られた混合物を還流させ、その間塩化ベンジル(127g、1.00モル)を30分でその中に滴下させる。18時間後、この混合物を減圧下で残渣となるまで濃縮し、水(400ml)およびトルエン(200ml)を添加し、次いで塩が溶解するまで加熱する。
【0062】
相を分離し、有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、残渣となるまで蒸発させる。油として156.1gのo−トリル−ベンジルエーテルが得られている。
【0063】
実施例4
N−メチル−3−(2−メチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロピルカルバミン酸フェニル
機械的撹拌機、温度計を取り付けた三つ口反応器に、窒素流のもとでN,N−ジメチル−(3−フェニル−3−o−トリルオキシ−プロピル)−アミン(11.9g、0.0441モル)、およびトルエン(50ml)を装入し、還流させる。還流温度をおよそ1〜2時間保持し、その中にクロロギ酸フェニル(7.6g、0.0486モル)を、約30分でゆっくり滴下させる。室温で撹拌下において反応混合物を16時間冷却し、次いでジクロロメタン(100ml)で希釈し、有機相を10%水酸化ナトリウム溶液(50ml)で洗浄する。相を分離し、水性相をジクロロメタン(100ml)で逆抽出する。集合した有機相を1N塩酸溶液(50ml)で洗浄し、次いで塩化ナトリウム飽和溶液(50ml)で洗浄する。有機相を減圧下で濃縮して、15.8gの油を得ている。
【0064】
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)(アミド異性により二重化したシグナル:7.40〜7.05(m,10H);7.00〜6.90(m,2H);6.80(t,1H);6.60(t,1H);5.25(m,1H);3.90〜3.50(m,2H);3.05(m,3H);2.40〜2.20(m,5H)。
【0065】
同じように進めることにより、下記の化合物を得ることができる:
・ フェニル N−メチル−3−(4−トリフルオロメチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロピルカルバメート;
・ フェニル N−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)−プロピルカルバメート;および
・ フェニル N−メチル−3−(4−メトキシ−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロピルカルバメート。
【0066】
実施例5
N−メチル−3−(2−メチルフェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン
機械的撹拌機、温度計を取り付けた三つ口反応器に、窒素流のもとでメチル−(3−フェニル−3−o−トリルオキシ−プロピル)カルバミン酸フェニル(15.8g、0.0441モル)、1−ブタノール(50ml)を装入し、温度50〜60℃まで加熱し、次いで水酸化カリウム(8.20g、0.132モル)を添加し、16時間還流させる。この混合物を室温において冷却し、水(50ml)で希釈する。相を分離し、有機相をトルエン(50ml)で希釈し、水(25ml)で3回洗浄し、次いで減圧下で濃縮し、それにより油、9.30gを得ており、収率82%である。
【0067】
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):7.35〜7.25(m,5H);7.15(d,1H);6.95(t,1H);6.80(t,1H);6.65(d,1H);5.30(dd,1H);2.80(t,2H);2.45(s,3H);2.35(s,3H);2.20(m,1H);2.05(m,1H)。
【0068】
同じように進めることにより、下記の化合物を得ることができる:
・ N−メチル−3−(4−トリフルオロメチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン;
・ N−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)−プロパンアミン;および
・ N−メチル−3−(4−メトキシ−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン。
【0069】
所望により、化合物N−メチル−3−(2−メチルフェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン、およびN−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)−プロパンアミンは、知られている方法により単一鏡像異性体に分離して、それぞれ(−)−N−メチル−3−(2−メチルフェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン、および(+)−N−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)−プロパンアミンを得ることができる。
【0070】
実施例6
N、N−ジメチル−3−(2−メチルフェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン
機械的撹拌機、温度計を取り付けた3つ口反応器に、窒素流のもとで約95%o−トリル−ベンジルエーテル(30.0g、0.144モル)、テトラメチルエチレンジアミン(20.0g、0.173モル)、メチル−tert−ブチルエーテル(120ml)を装入し、およそ−15℃〜−20℃の範囲にある温度まで冷却する。温度を−10℃未満に保持しながら、ヘキサン中の2.5Mブチル−リチウム溶液(63.2mL、0.158モル)をゆっくり添加する。添加が終わった後、およそ−10℃で混合物を約15〜20分間反応させる。
【0071】
メチル−tert−ブチルエーテル(60mL)中の塩化ジメチルアンミノエチル(24.8g、0.173モル)の溶液を調製し、温度をおよそ0未満〜5℃に保持しながら上記溶液中に滴下させる。混合物を約10℃の温度でおよそ1〜2時間反応させ、次いで水(100ml)を添加して、反応を止める。相を分離し、水(100ml)による洗浄を繰り返す。約40〜45℃の温度で有機相に、イソプロパノール(60ml)中のシュウ酸(16.3g、0.173モル)溶液をゆっくり1滴ずつ添加する。この温度をおよそ30分間保持し、次いで室温で混合物を自然に冷却するままとする。得られた固体を濾過し、メチル−tert−ブチルエーテルおよびイソプロパノール1:1混合物で洗浄し、次いで真空下約45℃で静的乾燥器内において一晩にわたり乾燥する。40.4gの生成物が得られ、収率78%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】


[式中、AおよびBのそれぞれは、独立に、1〜4個の置換基により場合によって置換されているアリールまたはヘテロアリールであり、前記置換基は、同一または異なっていることができ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C6アルキル(ハロゲンにより場合によって置換されている)、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6アルコキシ、ならびに−N(Rab)(式中、RaおよびRbは同一または異なっていることができ、C1〜C6アルキルであり、またはRaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、窒素および酸素から選択される1、2または3個のさらなるヘテロ原子を場合によって含有する5員または6員の飽和または不飽和環を形成する)から選択され、
RおよびR1は、同一または異なっていることができ、水素、C1〜C6アルキル、またはアミノ保護基である]
またはその塩を、個々の異性体、またはその混合物として調製する方法であって、
化合物(II)
【化2】


(式中、AおよびBは、上記定義の通りである)を、塩基性剤の存在下で、
化合物(III)
【化3】


(式中、RおよびR1のそれぞれは、独立に、C1〜C6アルキル、またはアミノ保護基であり、Xは脱離基である)と反応させ、所望により、化合物(I)を他の化合物(I)に変換し、および/または、所望により、化合物(I)の異性体混合物を前記個々の異性体に分離し、および/または、所望により、化合物(I)をその塩に変換することを含む方法。
【請求項2】
式(I)の化合物またはその塩において、
Aが、ハロゲンまたはC1〜C4アルコキシで置換されていてもよいC1〜C4アルキルで置換されていてもよいフェニルまたはナフチルであり、
Bが、フェニルまたはチエニルであり、
RおよびR1の一方がC1〜C4アルキルであり、他方が水素、C1〜C4アルキル、またはアミノ保護基である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)の化合物が
(+)−N−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミン;
N,N−ジメチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパンアミン;
(−)−N−メチル−3−(2−メチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン;
N,N−ジメチル−3−(2−メチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン;
N−メチル−3−(4−トリフルオロメチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン;
N,N−ジメチル−3−(4−トリフルオロメチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン;
N−メチル−3−(4−メトキシ−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン;
N,N−ジメチル−3−(4−メトキシ−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロパンアミン;
フェニル N−メチル−3−(2−メチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロピルカルバメート;
フェニル N−メチル−3−(4−トリフルオロメチル−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロピルカルバメート;
フェニル N−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)−プロピルカルバメート;
フェニル N−メチル−3−(4−メトキシ−フェニルオキシ)−3−フェニル−プロピルカルバメート;
またはそれらの塩から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基性剤が、式E−Mの化合物(式中、Mはアルカリまたはアルカリ土類金属であり、Eは強有機または無機塩基である)、または式Rc−MgYのまたは式(Rc2Mgの化合物(式中、RcはC1〜C6アルキル、C5〜C7シクロアルキル、アリール、またはアリール−C1〜C6アルキルであり、Yはハロゲン、または請求項1において定義の通りの基−N(Rab)である)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記塩基性剤が、ブチル−リチウム、ヘキシル−リチウム、t−ブチル−リチウム、フェニルリチウム、エチル−マグネシウムブロミド、シクロヘキシル−マグネシウムクロリド、ベンジル−マグネシウムブロミド、エチル−マグネシウム−ジイソプロピルアミド、ジブチル−マグネシウム、マグネシウムジイソプロピルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス−トリメチルシリルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、カリウムtert−ブトキシド、および水素化ナトリウムまたはカリウムから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基性剤が、ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、およびリチウムジイソプロピルアミドから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応が、配位子の存在下で行われる、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記脱離基が、ハロゲン原子、またはエステル化により活性化されたヒドロキシ基である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応が、無水有機溶媒中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、脂肪族もしくは芳香族炭化水素、石油エーテル、エーテル、または前記溶媒の2種以上の混合物から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式(II)の化合物の塩基性剤に対する化学量論比が、およそ0.5〜10の範囲にある、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2007−308496(P2007−308496A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131612(P2007−131612)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(507161569)ディフアルマ フランチス ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (11)
【氏名又は名称原語表記】DIPHARMA FRANCIS S.R.L.
【Fターム(参考)】