説明

アルツハイマー病の治療用テトラヒドロインドール誘導体

式(I)のテトラヒドロインドール誘導体を開示する。これらの化合物は、γ−セクレターゼの活性を調整し、したがって、アルツハイマー病の治療または予防における使用を見出す。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の治療的処置において使用するための方法および物質に関連する。特に、アルツハイマー病など、脳におけるβ−アミロイドペプチドの沈着を伴う疾患を治療するための、またはこうした疾患に関連する認知症の発症を予防もしくは遅延するための物質を提供する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、認知症の最も流行している形態である。この診断は、American Psychiatric Association(DSM−IV)により発行されているDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、4th ed.に記載されている。これは、臨床的には記憶および全般的な認知機能の進行性喪失を特徴とし、病理学的には患者の脳皮質領および脳連合野における細胞外タンパク性プラークの沈着を特徴とする神経変性障害である。これらのプラークは、β−アミロイドペプチド(Aβ)の原線維凝集体を主に構成する。Aβは、酵素β−セクレターゼおよびγ−セクレターゼに関係する、別の細胞内のタンパク質分解現象を介して、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から形成される。γ−セクレターゼにより仲介されるタンパク質分解の部位の多様性により、Aβが様々な鎖長、例えばAβ(1−38)、Aβ(1−40)およびAβ(1−42)になる。おそらくβ−セクレターゼにより仲介されるタンパク質分解の部位における多様性の結果である、Aβ(4−42)などのN末端切断も脳において認められる。便宜上、本明細書で使用される「Aβ(1−40)」および「Aβ(1−42)」などの表現には、こうしたN末端切断変異体が含まれる。細胞外媒体への分泌後、Aβは、初期においては可溶性である凝集体を形成し、この凝集体はADにおける主要な神経毒性作用物質であると広く考えられており(Gong et al、PNAS、100(2003)、10417−22参照)、最終的にADの病理学的特徴である不溶性沈着物および高密度の神経突起プラークとなる。
【0003】
脳におけるAβの沈着を伴う他の認知障害の状態として、脳アミロイド血管症、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血(HCHWA−D)、多重梗塞性認知症、ボクサー認知症およびダウン症候群が挙げられる。
【0004】
プラーク形成の過程における各種介入が、ADに対する治療的処置として提案されている(例えば、Hardy and Selkoe、Science、297(2002)、353−6参照)。提案されている1つのこうした治療方法は、例えばβ−またはγ−セクレターゼの阻害によって、Aβの産生をブロックするまたは減少させる方法である。グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)の阻害、特にGSK−3αの阻害により、Aβの産生を遮断することができることも報告された(Phiel et al、Nature、423(2003)、435−9参照)。提案されている他の治療方法として、Aβの凝集を遮断する化合物の投与、およびAβに選択的に結合する抗体の投与が挙げられる。
【0005】
しかし、最近の報告(Pearson and Peers、J.Physiol.、575.1(2006)、5−10)により、AβがADにおけるこの役割から独立した重要な生理的作用を及ぼす可能性があることが示唆されており、Aβの産生を遮断することにより、望ましくない副作用を起こす恐れのあることが暗に示される。さらに、γ−セクレターゼは、APP(例えばノッチ)の他にいくつかの異なる基質に作用することが知られており、これを阻害することにより、望まれない副作用を起こす恐れもある。したがって、Aβの産生を完全に抑制することなく、γ−セクレターゼの作用を阻害することのないAD治療法に関心が持たれる。
【0006】
提案されたこうした治療の一つとして、γ−セクレターゼ作用を調整してAβ(1−42)の産生を選択的に減少させることがが挙げられる。この結果、より短鎖であるAβのアイソフォームが優先的に分泌され、これは自己凝集およびプラーク形成する傾向が減少しているために脳からより容易に除去され、および/または神経毒性が低くなると考えられている。この効果を示す化合物として、ある種の非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)およびこれらの類似物が挙げられる(WO01/78721およびUS2002/0128319、ならびにWeggen et al Nature、414(2001)212−16;Morihara et al、J.Neurochem.、83(2002)1009−12;Takahashi et al、J.Biol.Chem.、278(2003)18644−70参照)。PPARαおよび/またはPPARδの活性を調整する化合物も、Aβ(1−42)を低下させる効果を有していると報告されている(WO02/100836)。酸化窒素を放出できるNSAID誘導体が、動物モデルにおいて、向上した抗神経炎症作用を示し、および/または脳内のAβ沈着を減少することが報告されている(WO02/092072;Jantzen et al、J.Neuroscience、22(2002)、226−54)。US2002/0015941では、容量性カルシウム流入の活性を増強する作用物質が、Aβ(1−42)を低下させることができることが教示されている。
【0007】
WO2005/054193およびWO2005/013985では、Aβ(1−42)を選択的に減少させる化合物のさらなる種類が開示されている。
【発明の開示】
【0008】
特定のテトラヒドロインドールアルカン酸および関連化合物が、Aβ(1−42)の産生を選択的に阻害するという望ましい特性を有していることが今や見出された。
【0009】
本発明によれば、式I
【0010】
【化2】

[式中、Vは結合、CHまたはCHCHを表し、
Xは、CR1aまたはNを表し、
Yは、COHまたはテトラゾールを表し、
Arは、炭素原子が6個までの炭化水素基および(CH−Z(式中、mは、0、1、または2であり、Zは、ハロゲン、N、CN、CF、OCFまたはORを表す。)から独立に選択される3個までの置換基を場合により有するフェニルを表し、
は、ハロゲン、CN、RCO、CF、CHN(R、分岐C1−10アルキル基、C1−10アルケニル基、もしくは環原子(これらのうち2個まではN、O、およびSから選択してよい。)が7個までの非芳香族環状基を表し、またはXがCR1aの場合、RおよびR1aは、2個までのC1−4アルキル基で場合により置換されている、5、6、もしくは7員の縮合シクロアルケン環を完成してよく、
1aは、HもしくはC1−4アルキルを表し、または上記のようにRと組み合わさり、
ただし、XがCHの場合、Rはt−ブチルではなく、
各Rは独立に、HまたはC1−4アルキルであり、
は、H、10個までの炭素原子を含む炭化水素、ベンジルオキシC1−4アルキルまたはヘテロシクリルC1−4アルキル(これらのいずれもハロゲンおよびCFから選択される3個までの置換基、またはC1−4アルコキシおよびC1−4アルキルチオから選択される1個の置換基を場合により有している。)であり、ここで「ヘテロシクリル」は、5または6個の原子(これらのうち1、2または3個はN、OおよびSから選択される。)の芳香族環または非芳香族環を示し、
は、Hであり、またはハロゲン、CN、CF、OH、C1−4アルコキシもしくはC1−4アルコキシカルボニルで場合により置換されている、炭素原子が7個までの炭化水素基を表し、または窒素原子に結合している2個のR基は、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、テトラヒドロピリジンおよびピペラジンから選択される環(これらの環はいずれもCF、C1−4アルキルおよびフェニルから選択される置換基を場合により有する。)を完成してもよく、
は、H以外であるRを表し、
pは、0、1または2であり、
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはフェニル、ベンジルもしくはヘテロアリールを表し、前記フェニル、ベンジルまたはヘテロアリールは、ハロゲン、CN、CF、OCF、OR、CO、COR、OCORおよびC1−4アルキルから選択される3個までの置換基を場合により有する。]
の化合物または医薬として許容可能なこの塩もしく水和物が提供される。
【0011】
式Iまたはこの置換基において可変因子が1回より多く起こる場合、この可変因子の個々の発生は、別段の指定がない限り互いに独立している。
【0012】
本明細書において使用する場合、「炭化水素基」という表現は、炭素原子および水素原子から単独でなる基を示す。こうした基は、炭素原子の指定された最大数と一致する、単独または組合せの、線状、分岐または環状の構造を含み、炭素原子の指定された最大数であれば、別段指定がない限り、芳香族を含め、飽和であってもまたは不飽和であってもよい。
【0013】
本明細書で使用する場合、xが1より大きい整数である「C1−xアルキル」という表現は、構成物質である炭素原子の数が1からxの範囲である、直鎖および分岐のアルキル基を示す。特定のアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびt−ブチルである。「C2−6アルケニル」、「ヒドロキシC1−6アルキル」、「ヘテロアリールC2−6アルキル」、「C2−6アルキニル」および「C1−6アルコキシ」などの派生表現は、同様に解釈されるものとする。こうした基における炭素原子数は、6以下であるのが最適である。
【0014】
本明細書で使用される「ハロゲン」という用語には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が含まれる。
【0015】
医療における使用に関し、式Iの化合物は、医薬として許容可能な塩の形態であってよい。しかし、他の塩も、式Iの化合物または医薬として許容可能なこれらの塩の調製に有用であり得る。本発明の化合物の医薬として許容可能である適当な塩として、例えば、本発明による化合物の溶液を、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸などの医薬として許容可能な酸の溶液と混合することにより形成し得る酸付加塩が挙げられる。あるいは、本発明の化合物が酸性部分を有する場合、医薬として許容可能な塩は、前記酸性部分を適当な塩基で中和することにより形成されてもよい。こうして形成される医薬として許容可能な塩の例として、ナトリウム塩またはカリウム塩などのアルカリ金属塩;アンモニウム塩;カルシウム塩またはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ならびに(ピリジニウム塩を含む)アミン塩および四級アンモニウム塩など、適当な有機塩基で形成される塩が挙げられる。
【0016】
本発明による化合物が、少なくとも1つの不斉中心を有する場合、これらはエナンチオマーとして適宜存在することがある。本発明による化合物が2つ以上の不斉中心を所有する場合、これらはジアステレオマーとして付加的に存在することがある。任意の割合におけるこうした異性体およびこれらの混合物はすべて、本発明の範囲内に包含されることは理解されるべきであろう。
【0017】
式Iにおいて、Vは結合、CHまたはCHCHを表す。特定の実施形態において、VはCHを表す。
【0018】
一実施形態において、XはNを表す。別の実施形態において、Xは、CR1aを表す。
【0019】
は、H、または炭素原子が10個までの炭化水素基、ベンジルオキシC1−4アルキル、もしくはヘテロシクリルC1−4アルキル(これらのいずれも上記で定義したように、場合により置換されている。)を表す。Rで表される炭化水素基の例として、アルキル(特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチルプロピル、n−ブチル、3−メチルブチルおよび3,3−ジメチルブチルなどのC1−6アルキル);(メトキシメチル、メチルチオメチルおよび3,3,3−トリフルオロプロピルなどの)置換アルキル;アルケニル(特に、アリルおよび3−メチルブト−3−エニルなどのC2−6アルケニル);シクロアルキル(特に、シクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどのC3−6シクロアルキル);(シクロプロピルメチルなどの)シクロアルキルアルキル;(フェニルおよび4−トリフルオロメチルフェニルなどの)アリール;および(ベンジル、2−フェニルエチル、2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル、2−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチルなどの)アリールアルキルが挙げられる。Rで表されるベンジルオキシC1−4アルキル基の例として、2−(ベンジルオキシエチル)が挙げられる。RがヘテロシクリルC1−4アルキルを表す場合、複素環基は5員または6員であってよく、N、OおよびSから選択される3個まで(通常、ヘテロ原子が2個まで)のヘテロ原子を含む。前記複素環基は、(ピリジン、チオフェンまたはフランなどの)芳香族であってよくまたは(モルホリン、チオモルホリン、ピペリジンまたはピロリジンなどの)非芳香族であってよい。Rで表されるヘテロシクリルC1−4アルキル基の例として、2−(モルホリン−4−イル)エチル、2−(2−ピリジル)エチル、2−(3−ピリジル)エチルおよび2−(4−ピリジル)エチルが挙げられる。
【0020】
Yは、COHまたはテトラゾール(特に1,2,3,4−テトラゾール−5−イル)を表すが、好ましくはCOHを表す。
【0021】
Arは、上記で定義したように、場合により置換されているフェニルを表す。Arで表されるフェニル基は、上記で定義したように、3個までの置換基を場合により有している。前記置換基が、(CH−Zで表される基を含む場合、mは0または1であるのが好ましく、最も通常なのは0である。Arが、モノ置換フェニルを表す場合、置換基は4位を占有するのが適切である。適当な置換基の例として、ハロゲン(特に、ClおよびF)、N、CF、OCF、OH、OMeおよび(メチル、エチル、n−プロピルおよびイソプロピルなどの)C1−4アルキルが挙げられる。好ましい置換基として、Cl、F、N、OCF、CFおよびOMeが挙げられる。
【0022】
Arで表される基の具体例として、フェニル、4−クロロフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−フルオロフェニル、4−アジドフェニル、4−メトキシフェニル、4−トリフルオロメトキシフェニル、2,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、3,4−ジクロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニルおよび4−ヨードフェニルが挙げられ、これらのうち4−トリフルオロメチルフェニルが特に好ましい。
【0023】
一実施形態において、Rは、ハロゲン、CN、RCO、CF、CHN(R、分岐C1−10アルキル基、C1−10アルケニル基および環原子が7個まで(このうち2個までがN、OおよびSから選択されてよい。)の非芳香族環状基から選択される。この実施形態のサブセットにおいて、Rは、ハロゲン(特に、Cl、BrまたはI)、CN、RCO、CF、CHN(R、分岐C1−10アルキル基(特に、分岐C1−6アルキル基)および環原子が7個まで(これらのうち2個までがN、OおよびSから選択されてよい。)の非芳香族環状基から選択される。
【0024】
XがNである場合、通常、Rは、ハロゲン、CNおよびRCOを表さない。
【0025】
がRCOを表す場合、通常、Rは、フェニルまたはメチルもしくはエチルなどのC1−4アルキルであり、特定の実施形態において、Rはベンゾイルである。Rで表される分岐アルキル基の例として、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルおよびネオペンチルが挙げられる。Rで表される環状基は、(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルなどの)炭素環または(テトラヒドロピラニルなどの)複素環であってよい。特定の実施形態において、環状基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびテトラヒドロピラン−4−イルから選択される。
【0026】
がCHN(Rを表す場合、R基は、上記で定義したように環を完成するのが非常に適当である。N(Rで表される環の例として、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、4−メチルピペラジニル、4−フェニルピペラジニルおよび4−トリフルオロメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジニルが挙げられる。特定の実施形態において、Rはモルホリン−4−イルメチルを表す。あるいは、1個のR基がHまたはC1−4アルキルを表すのが非常に適当であり、この他は上記で定義したように、場合により置換されているC1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはベンジルなど、炭素原子が7個までの炭化水素基を表す。したがって、CHN(Rで表される基の例として、アニリノメチル、ベンジルアミノメチルおよびシクロヘキシルアミノメチルが挙げられる。
【0027】
別の実施形態において、XはCR1aであり、RおよびR1aは、2個までのC1−4アルキル基で場合により置換されている、5、6、または7員の縮合シクロアルケン環を完成する。例えば、RおよびR1aは、縮合シクロヘキセン環を完成してよく、したがって、式Iの化合物は、オクタヒドロカルバゾール誘導体である。特定の実施形態において、縮合シクロアルケン環は置換されていない。別の特定の実施形態において、縮合シクロアルケン環は、2個までのC1−4アルキル基、例えばメチル基で置換されている。
【0028】
存在する場合、R1aは、HもしくはC1−4アルキルを表すまたは上記のようにRと組み合わさる。適当なアルキル基として、メチル、エチルおよびイソプロピル、特にメチルが挙げられる。一実施形態において、R1aはC1−4アルキルを表し、Rは、ハロゲン、CNまたはRCOを表す。さらなる実施形態において、R1aはHを表し、Rは、Rがtert−ブチルではないという条件で、上記したように、CF、分岐のアルキル基または炭素環基もしくは複素環基を表す。
【0029】
各Rは独立に、HまたはメチルもしくはエチルなどのC1−4アルキルである。好ましくは、1個のRがHであり、他方が、Hまたはメチルである。最も好ましくは、両方のR基がHである。
【0030】
存在する場合、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはt−ブチルなどの線状もしくは分岐のC1−6アルキル(好ましくはC1−4アルキル)、ビニルもしくはアリルなどのC2−6アルケニル、または上記で定義したように、場合により置換されているフェニル、ヘテロアリールもしくはベンジルを表す。好ましい置換基として、ハロゲン(特に、ClまたはF)、OCH、OCF、CFおよび(メチルなどの)C1−4アルキルが挙げられる。好ましいヘテロアリール基は、ピリジル、特に3−ピリジルである。Rで表される基の例として、メチル、エチル、イソプロピル、ビニル、3−ピリジル、フェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−フルオロ−3−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、3,4−ジクロロフェニル、3,4−ジフルオロフェニルおよび2,5−ジメチルフェニルが挙げられる。好ましい例として、4−フルオロフェニルが挙げられる。R基は、−C(R−Y部分を有する炭素原子、およびV中に含まれる任意の炭素原子を含め、該環の可能な任意の位置に結合してよい。2個のR基が存在する場合、これらは同じであっても異なっていてもよく、同じであるまたは異なる環の位置に結合してよい。pが2の場合、好ましくは、R基の1個以下が、場合により置換されている、フェニル、ヘテロアリールまたはベンジルである。特定の実施形態において、pはゼロである。
【0031】
式Iの化合物のサブセットは、式II
【0032】
【化3】

(式中、Ar、R、R1aおよびRは、上記と同じである定義および好ましいアイデンティティーを有する。)
により定義される。
【0033】
式IIによる化合物のサブセットは、RがCl、Br、I、CN、CHCO、PhCOまたはCHN(Rであり、R1aがC1−4アルキルである化合物からなる。
【0034】
式IIの化合物の別のサブセットは、R1aがHであり、Rが、CF、分岐C1−6アルキル基もしくはC3−7シクロアルキル基であるまたはRがtert−ブチルではないという条件で、テトラヒドロピラン−4−イルである化合物からなる。
【0035】
式IIのこれらサブセットの両方において、Arは、4−トリフルオロメチルフェニルであるのが非常に適当である。
【0036】
式Iの化合物の第2のサブセットは、式III
【0037】
【化4】

(式中、nは、0、1または2であり、RはC1−4アルキル(例えばメチル)であり、ArおよびRは、上記と同じである定義および好ましいアイデンティティーを有する。)
により定義される。式IIIにおいて、Arは、好ましくは4−トリフルオロメチルフェニルを表す。
【0038】
式Iの化合物の第3のサブセットは、式IV
【0039】
【化5】

(式中、R11は、CF、分岐C1−6アルキル、C3−7シクロアルキルまたはテトラヒドロピラン−4−イルを表し、ArおよびRは、上記と同じである定義および好ましいアイデンティティーを有する。)
により定義される。
【0040】
式IVにおいて、Arは、4−トリフルオロメチルフェニルであるのが非常に適当である。
【0041】
式IVの1つのサブセットにおいて、R11はt−ブチルである。別のサブセットにおいて、R11は、t−ブチル以外である分岐C1−6アルキルである。第3のサブセットにおいて、R11はC3−7シクロアルキルである。
【0042】
が、Cl、BrまたはIを表し、R1aがC1−4アルキルである式IIの化合物は、Aβ(1−42)の産生を選択的に阻害するという特性を有するさらなる化合物、例えば、WO2005/108362に開示されている種類の化合物の合成のための出発原料として、特別な有用性を有する。したがって、本発明のさらなる態様によれば、式V
【0043】
【化6】

の化合物を調製する方法であって、式VI
【0044】
【化7】

[式中、
Ar’は、環原子が10個まで(これらのうち3個までは、N、O、およびSから選択される。)のフェニル、ナフチルまたはヘテロアリールの環構造を表し、この環はいずれも、ハロゲン、NO、CF、OCF、CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシまたはC1−4アルコキシカルボニルから選択される3個までの置換基を場合により有しており、
Halは、Cl、BrまたはIを表し、
各Rは、HもしくはC1−4アルキルを表しまたは2個のR基が、環状ボロン酸エステルを一緒になって完成し、
1bはC1−4アルキルを表し、
ArおよびRは、上記と同じである定義または好ましいアイデンティティーを有する。]
の化合物とボロン酸誘導体Ar’−B(OR)との反応を含む方法が提供される。
【0045】
反応は鈴木反応の一例であり、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl)などのPd(II)触媒の存在下、(炭酸ナトリウムなどの)塩基の存在下、含水ジオキサンなどの有機物水溶液中で、高温(例えば、100℃、またはマイクロ波加熱で約170℃)により実行され得る。式VIにおけるカルボン酸は、反応の前に(例えば、メチルまたはエチルエステルとして)保護し、引き続き(例えば、アルカリ加水分解により)再生するのが非常に適当である。
【0046】
Halは、好ましくはBrまたはIを表す。
【0047】
Ar’で表されるヘテロアリール基は、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチアゾール、キノリンおよびイソキノリンなど、単環式または二環式であってよい。
【0048】
Ar’が、1つまたは複数の置換基を有する場合、前記置換基(複数も)は、ハロゲン(特に、ClまたはF)、CF、OCF、CNおよびC1−4アルキル(特に、メチル)から通常選択される。
【0049】
上記方法により得られる、式Vによる特定の化合物は、これ自体新規であり、本発明のさらなる態様を形成する。具体的には、この態様において本発明は、式Vの化合物または医薬として許容可能なこの塩を提供し、ここで、
Arは4−トリフルオロメチルフェニルを表し、Rは3−メチルブチルを表し、R1bはイソプロピルを表し、Ar’は4−ピリジルを表し、または
Arは4−トリフルオロメチルフェニルを表し、Rは3−メチルブチルを表し、R1bはメチルを表し、Ar’は、4−(トリフルオロメチル)フェニル、2,4−ジフルオロフェニル、4−クロロフェニル、4−(トリフルオロメトキシ)フェニル、2,4−ジクロロフェニル、2−(トリフルオロメチル)フェニル、3,4−ジクロロフェニル、2,3−ジクロロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、2,5−ジクロロフェニル、5−インドリル、6−キノリル、7−チオフェニル、5−ピリミジニルもしくは4−ピラゾリルを表す。
【0050】
式Vによるこれらおよび他の化合物は、本明細書に記載した式Iの化合物と同様に、同じ治療目的のために使用してよい。
【0051】
式Iによる化合物の具体例を、本明細書に添付の実施例において提供する。
【0052】
XがCHを表し、Rが、CF、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルを表す式Iの化合物は、イミン(1)とニトロオレフィン(2)
【0053】
【化8】

(式中、V、Ar、Y、p、R、R、RおよびRは、上記と同じ意味を有する。)
との反応により得ることができる。反応は、トルエン溶液中で、例えば、還流で、またはマイクロ波装置内で加熱することにより行われる。
【0054】
式(1)のイミンは、アミン(3)と式(4)のシクロヘキサノン
【0055】
【化9】

(式中、V、Ar、R、Y、p、RおよびRは、上記と同じ意味を有する。)
との反応により、in situで生成するのが好都合である。反応は、トルエン中、水を共沸除去して行うことができる。
【0056】
アミン(3)は、ケトンAr−CO−Rをヒドロキシルアミンで処理し、得られたオキシムをラネーニッケル上で水素化することにより得ることができる。別法として、ケトンAr−CO−Rを、α−メチルベンジルアミンと縮合させ、得られたイミンを(NaBHを使用して)還元してビス(ベンジルアミン)ArCH(R)−NH−CH(CH)Phを生成することができ、これから、Pd/C上で水素化することにより所望のアミン(3)が得られる。キラルのα−メチルベンジルアミンの使用により、アミン(3)を単一エナンチオマーとして単離することが促進され、式Iにおけるキラル中心の1つで立体化学を制御することが可能になる。
【0057】
XがCR1aを表し、Rが、CF、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルである式Iの化合物は、アミン(3)と1,4−ジカルボニル化合物(5)
【0058】
【化10】

との反応により得ることができる。
【0059】
反応は、トルエン溶液中で、酸触媒(例えば、酢酸)の存在下、水を共沸除去して行われる。別法として、反応を、ジクロロメタン中、トリエチルアミンおよびTiClの存在下、−78℃で行うこともできる。
【0060】
化合物(5)は、エナミン(6)
【0061】
【化11】

とハロ−ケトンR1a−CO−CH(R)−Hal(式中、Halは、塩化物または臭化物である。)との反応により入手できる。反応は、DMF中、周囲温度で行われ、RがHまたはアルキルの場合、特に適当である。
【0062】
エナミン(6)は、酢酸などの酸触媒を使用し、水を共沸除去し、トルエン溶液中でピロリジンとともに還流することにより、ケトン(4)から形成される。
【0063】
ジカルボニル化合物(5)への好ましい経路には、オレフィン(7)
【0064】
【化12】

(式中、V、Y、p、R、R1a、RおよびRは、上記と同じ意味を有する。)
の酸化的開裂が含まれる。開裂は、メタノール/ジクロロメタン中でのオゾン分解により、または別法として、RuClおよびNaIOで処理することにより達成することができる。オゾン分解は、R1aがHである場合が好ましい。
【0065】
オレフィン(7)は、ケトン(4)をトリエチルオルトギ酸で処理し、得られたジエチルケタールをアリルアルコール(8)
【0066】
【化13】

(式中、RおよびR1aは、上記と同じ意味を有する。)
と反応させることにより得ることができる。反応は、プロピオン酸の存在下、約125℃で行うことができる。初期生成物はエノールエーテルであり、クライゼン転位を経て、オレフィン(7)を得る。
【0067】
XがNである式Iの化合物は、ジケトン(9)とヒドラジン(10)
【0068】
【化14】

との反応により得ることができる。
【0069】
反応は、還流エタノール中で行われる。ジケトン(9)は、エナミン(6)とR−COClとの反応により入手できる。ヒドラジン(10)は、イソプロパノール中、70℃で、Ar−CH(R)−Brとヒドラジン水和物との反応により入手できる(EP0234708も参照)。
【0070】
式IVの化合物への好ましい経路には、テトラヒドロインダゾール(11)をAr−CH(R)−HalでN−アルキル化し、続いてアリル基を対応するカルボン酸に酸化することが含まれる。
【0071】
【化15】

(式中、Halは、Cl、Br、またはIであり、R11、RおよびArは、上記と同じ意味を有する。)。アルキル化は、周囲温度でDMF中、水素化ナトリウムの存在下で行われる。酸化は、過剰の過ヨウ素酸ナトリウムを使用し、触媒としてRuCl水和物の存在下、CCl/MeCN/HO混合物中で行うことができる。化合物(11)は、ジケトン(12)をヒドラジンで(例えば、エタノール中、周囲温度で)処理することにより得られる。ジケトン(12)は、2−アリルシクロヘキサノンとR11CO−Bt(式中、Btは、ベンゾトリアゾール−1−イルを示す。)との反応により得られる。反応は、−70℃から周囲温度で、THF中、リチウムヘキサメチルジシラジドなどの強塩基の存在下で行われる。
【0072】
が、ハロゲン、CN、またはRCOである式Iの化合物は、RがHである対応する化合物と、N−ハロコハク酸イミド、イソシアン酸クロロスルホニルまたはRCOClとを、それぞれ反応させることにより得ることができる。N−ブロモ−またはN−クロロコハク酸イミドとの反応は、THF中、−78℃で、N−ヨードコハク酸イミドとの反応は、THF中、−20℃で行うことができる。イソシアン酸クロロスルホニルとの反応は、DMF/アセトニトリル混合物中、−78℃で行うことができ、RCOClとの反応は、ジクロロメタン中、AlClの存在下、周囲温度で行うことができる。RがHである式Iの化合物は、Rが、アルキル、アルケニル、シクロアルキルまたはヘテロシクリルである上記の経路と類似の経路により得られる。
【0073】
がCHN(Rである式Iの化合物は、RがHである対応する化合物を、トルエン中約70℃で、POClおよびDMFにより処理し、得られるアルデヒドと、(RNHおよびトリアセトキシホウ水素化ナトリウムとを、例えば、クロロホルム中、室温で反応させることにより得ることができる。
【0074】
上記の全化学プロセス中、Yで表されるカルボン酸基は、メチルエステルまたはエチルエステルとして保護し、遊離酸を、最終ステップにおいて、例えば、LiOHのTHF溶液またはジオキサン溶液を使用し、加水分解により再生するのが好ましい。
【0075】
これらが市販で入手できない場合、上記概説のスキームにおいて使用される出発原料を、公開されている経路、またはこれらの単純な適応により得てもよい。本明細書の実施例の項において、適当な方法を記載する。
【0076】
式Iの化合物は、少なくとも1つの不斉中心を有しているので、エナンチオマーの形態で適宜存在する。所望であれば、個々のエナンチオマーを、従来の方法により純粋な形態に単離してもよい。例えば、ラセミ混合物を、調製用キラルHPLCにより、または光学的に純粋なアミンでの処理により、構成成分のエナンチオマーに分解して、分別結晶により分離可能なジアステレオマー塩対を形成し、これから光学的に純粋な酸を再生してもよい。同様に、ラセミ酸を光学的に純粋なアルコールまたはアミンと反応させて、ジアステレオマーのエステルまたはアミドの対を形成し、これをクロマトグラフィーまたは分別結晶により分解し、加水分解して鏡像異性的に純粋な酸を生成しもよい。これらの分解能技術を式Iの化合物の合成前駆体上で実施し、得られる光学的に純粋な中間物質を、式Iの化合物を光学的に純粋な形態に調製するのに使用しても同様によい。
【0077】
本発明は、式Iの化合物または医薬として許容可能なこの塩、および医薬として許容可能な担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0078】
これらの組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下もしくは直腸の投与または吸入もしくは吹入による投与のための、錠剤、丸薬、カプセル、散剤、顆粒、滅菌した非経口の溶液もしくは懸濁液、計量型のエアゾールもしくは液体のスプレー剤、点滴剤、アンプル、経皮のパッチ、自動注入装置または坐剤などの単位剤形であるのが好ましい。通常、医薬品担体、例えば、コーンスターチ、ラクトース、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムおよび第二リン酸カルシウムなどの従来の錠剤化成分、またはソルビタンモノオレエートおよびポリエチレングリコールなどのガム、分散剤、懸濁剤もしくは界面活性剤ならびに他の医薬希釈剤(例えば水)と、主な活性成分を混合して、本発明の化合物または医薬として許容可能なこの塩を含む均一の予備処方組成物を形成する。これらの予備処方組成物を均一と称する場合、錠剤、丸薬、およびカプセルなど、同様に有効である単位剤形に組成物を容易に細分できるように、活性成分が組成物全体に均等に分散していることを意味する。この予備処方組成物を、次いで、本発明の活性成分が0.1から約500mg含有する上記種類の単位剤形に細分する。通常の単位剤形は、活性成分を1から100mg、例えば、1、2、5、10、25、50または100mg含む。組成物の錠剤または丸薬を被覆、でなければ混合して、持続性作用の利点が得られる剤形をもたらすことができる。例えば、錠剤または丸薬を、内部投薬および外部投薬の成分で構成し、後者を前者の上の外被の形態にすることもできる。2つの成分は、胃における崩解を阻止して内部の成分をそのまま十二指腸に通過させるか、または徐放を遅延させる役目をする腸溶性層によって、分離することができる。多数のポリマー酸、ならびにセラック、セチルアルコールおよびセルロースアセテートなどの材料とポリマー酸との混合物を含む材料などの種々の材料が、こうした腸溶性層またはコーティングのために使用できる。
【0079】
本発明における有用な組成物を、経口または注入による投与のために混和することができる液状形態として、水溶液、液体またはゲル充てんカプセル、適当に香味付けされたシロップ、水性または油性の懸濁液、および綿実油、ゴマ油、やし油または落花生油などの食用油で香味付けした乳濁液、ならびにエリキシルおよび同様の医薬品賦形剤が挙げられる。水性懸濁液用の適当な分散剤または懸濁剤として、トラガカント、アカシア、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルピロリドン)またはゼラチンなどの合成および天然のガムが挙げられる。
【0080】
本発明は、治療における使用、特に脳におけるAβの沈着を伴う疾患の治療または予防における使用のための、式Iの化合物または医薬として許容可能なこの塩も提供する。
【0081】
本発明は、脳におけるAβ沈着を伴う疾患の治療または予防用薬物の製造のための、式Iの化合物または医薬として許容可能なこの塩の使用をさらに提供する。
【0082】
脳におけるAβの沈着を伴う疾患は、通常、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症、多重梗塞性認知症、ボクサー認知症またはダウン症候群、好ましくはADである。
【0083】
別の態様において、本発明は、アルツハイマー病に関連する認知症、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多重梗塞性認知症、ボクサー認知症またはダウン症候群の治療、予防または発症を遅延させるための薬物の製造において、上記で定義した式Iの化合物または医薬として許容可能なこの塩の使用を提供する。
【0084】
本発明は、脳におけるAβの沈着を伴う疾患の治療または予防する方法であって、これを必要とする患者に、上記で定義した式Iの化合物または医薬として許容可能なこの塩の治療有効量を投与することを含む方法も提供する。
【0085】
さらなる態様において、本発明は、アルツハイマー病に関連する認知症、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多重梗塞性認知症、ボクサー認知症またはダウン症候群の治療、予防または発症を遅延する方法であって、これを必要とする患者に、式Iの化合物または医薬として許容可能なこの塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0086】
式Iの化合物は、Aβ(1−40)などの、より短鎖のアイソフォームの産生を有意に低下させることなく、Aβの(1−42)アイソフォームの産生を選択的に減少させるために、γ−セクレターゼの作用を調整する。この結果、自己凝集および不溶性沈着物形成の傾向が少なくなり、脳から除去するのがより簡単になり、および/または神経毒性が少なくなるAβの分泌が得られる。したがって、本発明のさらなる態様では、脳におけるAβの貯留を遅らせ、停止しまたは予防するための方法であって、これを必要とする対象者に、上記で定義した式Iの化合物または医薬として許容可能なこの塩の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0087】
式Iの化合物は、γ−セクレターゼの活性を抑制するのとは反対に調整するため、副作用、例えば、γ−セクレターゼにより同様に制御される他の情報伝達経路(例えば、ノッチ)の破壊から起こると思われる副作用の危険が減少するとともに、上記の治療的利益が得られると考えられる。
【0088】
本発明の一実施形態において、式Iの化合物は、AD、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多重梗塞性認知症、ボクサー認知症またはダウン症候群、好ましくはADを患っている患者に投与される。
【0089】
本発明の代替実施形態において、式Iの化合物は、軽度認知障害または加齢性認知衰退を患っている患者に投与される。こうした治療の好ましい成果は、ADの予防または発症の遅延である。加齢性認知衰退および軽度認知障害(MCI)は、記憶障害はあるが認知症に対する他の診断基準がない状態のことである(Santacruz and Swagerty、American Family Physician、63(2001)、703−13)。(「The ICD−10 Classification of Mental and Behavioural Disorders」、Geneva:World Health Organisation、1992、64−5も参照)。本明細書で使用する場合、「加齢性認知衰退」は、記憶および学習;注意および集中;思考;言語;ならびに視空間機能のうち少なくとも1つにおいて少なくとも6カ月の間衰退していて、かつMMSEなどの標準化された神経心理学試験では基準より標準偏差値を超えて低いスコアであることを意味する。特に、記憶における進行性衰退がある場合がある。より重篤な状態のMCIにおいては、記憶障害の程度が患者の年齢対して正常と思われる範囲外であるが、ADは発症していない。MCIおよび軽度ADの鑑別診断が、Petersen et al.によって、Arch.Neurol.、56(1999)303−8に記載されている。MCIの鑑別診断に対するさらなる情報が、Knopman et al.によって、Mayo Clinic Proceedings、78(2003)、1290−1308に提供されている。高齢対象者の研究において、Tuokko et al(Arch、Neural.、60(2003)577−82)は、初期のMCIを呈している対象者は、5年以内に認知症が発症する危険が3倍増大することを発見した。
【0090】
Grundman et al(J.Mol.Neurosci.、19(2002)、23−28)は、MCI患者におけるベースラインが低い海馬容積が、その後のADに対する予後指標であることを報告している。同様に、Andreasen et al(Acta Neural.Stand、107(2003)47−51)は、総タウのCSF高濃度、ホスホ−タウのCSF高濃度、およびAβ42のCSF濃度低下はすべて、MCIからADに進行する危険が増大したことに関連することを報告している。
【0091】
この実施形態の範囲内において、式Iの化合物は、記憶機能障害を患っているが認知症の症状を呈していない患者に投与するのが有利である。通常、記憶機能のこうした障害は、下垂体機能不全によって引き起こされる発作または代謝障害などの全身病または大脳疾患に起因するものではない。こうした患者は、特に55歳以上の人々、とりわけ60歳以上の人々である可能性があり、65歳以上の人々であるのが好ましい。こうした患者は、患者の年齢に対して、成長ホルモン分泌の型および濃度が正常であることがある。しかし、こうした患者は、アルツハイマー病を発症するための1つまたは複数の付加的な危険因子を所有している可能性がある。こうした因子として、疾患の家族歴;疾患に対する遺伝性素因;血清コレステロール上昇;および成人発症型糖尿病が挙げられる。
【0092】
本発明の特定の実施形態において、式Iの化合物は、加齢性認知衰退またはMCIを患い、疾患の家族歴;疾患に対する遺伝性素因;血清コレステロール上昇;成人発症型糖尿病;ベースラインの海馬容積の増大;総タウのCSF濃度上昇;ホスホ−タウのCSF濃度上昇;およびAβ(1−42)のCSF濃度低下から選択される、ADが発症するための1つまたは複数の危険因子を付加的に所有している患者に投与される。
【0093】
(特に初期発症ADに関する)遺伝性素因は、APP、プレセニリン1およびプレセニリン2の遺伝子を含め、多数の遺伝子の1つまたは複数における点突然変異に起因している可能性がある。また、アポリポタンパクE遺伝子のε4アイソフォームに対して同型接合的である対象者は、ADを発症する危険が大きい。
【0094】
患者の認知衰退または障害の程度を、本発明による治療の過程の前に、その間に、および/またはその後に定期的に評価すると有利であり、例えば、認知衰退の減速または停止などの変化を検知できる可能性がある。この目的のための技術分野において、規準を年齢および教育に適合させたミニメンタルステート検査(MMSE)(Folstein et al.、J.Psych.Res.、12(1975)、196−198、Anthony et al.、Psychological Med.、12(1982)、397−408;Cockrell et al.、Psychopharmacology、24(1988)、689−692;Crum et al.、J.Am.Med.Assoc’n.18(1993)、2386−2391)など、種々の神経心理学的試験が知られている。MMSEは、成人における認知状態の簡潔な定量的測定手段である。認知衰退または障害をスクリーニングし、所与の時点で認知衰退または障害の重症度を推定した後、経時的に個々における認知変化の過程を追い、治療に対する個々の反応を記録するために使用することができる。別の適当な試験として、アルツハイマー病評価スケール(ADAS)、特にこの認知サブスケール(ADAS−cog)がある(Rosen et al.、Am.J.Psychiatry、141(1984)、1356−64参照)。
【0095】
アルツハイマー病の治療または予防に関し、活性化合物の適当な投与量は、1日当たり約0.01から250mg/kg、好ましくは1日当たり約0.01から100mg/kg、より好ましくは1日当たり約0.05から50mg/体重kgである。化合物は、1日当たり1から4回の投与計画で投与してもよい。しかし、症例によっては、これらの範囲外の投与量を使用してもよい。
【0096】
場合により、式Iの化合物は、ADまたはこの症状の治療または予防において有用であることが知られている1つまたは複数の追加の化合物と組み合わせて投与してもよい。したがって、こうした追加の化合物として、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジルおよびガランタミン)、NMDA拮抗薬(例えば、メマンチン)、またはPDE4阻害剤(例えば、Ariflo(商標)、ならびにWO03/018579、WO01/46151、WO02/074726およびWO02/098878に開示されている化合物の種類)などの認知促進薬が挙げられる。こうした追加の化合物として、スタチン、例えば、シンバスタチンなどのコレステロール低下薬も挙げられる。こうした追加の化合物として、(γ−セクレターゼ阻害剤、β−セクレターゼ阻害剤およびGSK−3α阻害剤を含めた)Aβの分泌を阻害する化合物、Aβの凝集を阻害する化合物およびAβに選択的に結合する抗体など、脳におけるAβの産生または処理を変更することが知られている化合物(「アミロイド変性剤」)も同様に挙げられる。こうした追加の化合物として、例えば、WO2004/110443およびWO2004/080459に記載されている成長ホルモン分泌促進物質をさらに挙げられる。
【0097】
本発明のこの実施形態において、アミロイド変性剤は、Aβの分泌を阻害する化合物、例えば、(WO01/53255、WO01/66564、WO01/70677、WO01/90084、WO01/77144、WO02/30912、WO02/36555、WO02/081435、WO02/081433、WO03/018543、WO03/013506、WO03/013527、WO03/014075、WO03/093251、WO03/093252、WO03/093253、WO03/093264、WO2004/031137、WO2004/031138、WO2004/031139、WO2004/039370、WO2004/039800、WO2004/101538、WO2004/101539およびWO2005/030731に開示されている化合物などの)γ−セクレターゼの阻害剤、もしくは(WO03/037325、WO03/030886、WO03/006013、WO03/006021、WO03/006423、WO03/006453、WO02/002122、WO01/70672、WO02/02505、WO02/02506、WO02/02512、WO02/02520、WO02/098849およびWO02/100820などに開示されている化合物などの)β−セクレターゼ阻害剤、またはWO98/28268、WO02/47671、WO99/67221、WO01/34639、WO01/34571、WO00/07995、WO00/38618、WO01/92235、WO01/77086、WO01/74784、WO01/74796、WO01/74783、WO01/60826、WO01/19797、WO01/27108、WO01/27091、WO00/50391、WO02/057252、US2002/0025955およびUS2002/0022621に開示されている化合物を含め、Aβの形成もしくは放出を阻害する任意の他の化合物であってよい。
【0098】
あるいは、アミロイド変性剤は、Aβの凝集を阻害するか、でなければこの神経毒性を減少させる化合物であってよい。適当な例として、クリオキノール(Gouras and Beal、Neuron、30(2001)、641−2)、およびWO99/16741に開示されている化合物、特にDP−109(Kalendarev at al、J Pharm.Biomed.Anal.、24(2001)、967−75)として知られている化合物などのキレート剤が挙げられる。本発明において使用するのに適当であるAβ凝集の他の阻害剤として、Apan(商標)(Praecis)として知られている化合物;WO00/064420、WO03/017994、WO99/59571(特に、トラミプロセートもしくはAlzhemed(商標)としても知られている3−アミノプロパン−1−スルホン酸);WO00/149281、ならびにPTI−777およびPTI−00703(ProteoTech)として知られている組成物;WO96/39834、WO01/83425、WO01/55093、WO00/76988、WO00/76987、WO00/76969、WO00/76489、WO97/26919、WO97/16194およびWO97/16191を含め、WO96/28471、WO98/08868およびWO00/052048に開示されている化合物が挙げられる。さらなる例として、US4847082に開示されているフィチン酸誘導体、およびUS2004/0204387に教示されているイノシトール誘導体が挙げられる。
【0099】
あるいは、アミロイド変性剤は、Aβに選択的に結合する抗体であってよい。前記抗体は、多クローンまたは単クローンであってよいが、好ましくは単クローンであり、ヒトまたはヒト化されているのが好ましい。抗体は、WO03/016466、WO03/016467、WO03/015691およびWO01/62801に記載されているように、体液から可溶性Aβを隔離することができるのが好ましい。適当な抗体として、(WO01/62801に記載の)ヒト化抗体266、およびWO03/016466に記載されている、この修飾型が挙げられる。適当な抗体として、WO2004/031400に開示されているような、Aβ由来の拡散性リガンド(ADDLS)に特異的な抗体も挙げられる。
【0100】
本明細書で使用する場合、「組み合わせて」という表現は、式Iの化合物と追加の化合物の両方の治療有効量を対象者に投与することを必要としているが、これを達成する方法には制限を設けていない。したがって、2種類の化合物を、対象者に同時投与するため、単一剤形において組み合わせてもよいし、または対象者に同時投与もしくは逐次投与するために、別々の剤形において提供してもよい。逐次投与は時間が近くてもよいし、または時間が遠くてもよく、例えば、1種類を午前に、他方を夕方に投与する。別々の種類を、同じ頻度で投与してもよいし、または異なる頻度、例えば、1種類を1日1回、他方を1日2回以上投与してもよい。可能であれば、両種類とも経口投与が好ましいが、別々の種類を、同じ経路で投与してもよいし、または異なる経路、例えば、1種を経口で、他方を非経口で投与してもよい。追加の化合物が抗体である場合、非経口で、式Iの化合物とは別に投与するのが一般的である。
【0101】
式Iの化合物の、Aβ(1−42)の産生を選択的に阻害する能力を、下記アッセイを使用して決定した。
【0102】
細胞ベースのγ−セクレターゼアッセイ
γ−セクレターゼ直接基質SPA4CTを過剰発現しているヒトSH−SY5Y神経芽腫細胞を、平板接種前に4時間、酪酸ナトリウム(10mM)で誘導した。細胞をフェノールレッド不含MEM/10%FBS、50mM HEPES、1%グルタミン中、96ウェルプレートに35000細胞/ウェル/100μl蒔き、37℃、5%COで2時間温置した。
【0103】
試験を行う化合物をMeSO中に希釈して、10ポイント用量反応曲線とした。通常、MeSO中のこれらの溶出化合物10μlを、希釈緩衝液(フェノールレッド不含MEM/10%FBS、50mM HEPES、1%グルタミン)182μl中にさらに希釈し、各希釈液10μlを、(MeSOの最終濃度を0.5%にした)96ウェルプレート中の細胞に添加した。適切な溶媒および阻害剤対照を使用して、アッセイのウィンドウを決定した。
【0104】
37℃、5%COで終夜温置した後、10μlおよび50μlの培養液を、未使用のCostar丸底96ウェルプレートに移し、Aβ(40)およびAβ(42)ペプチドをそれぞれ検出した。Origen緩衝液(PBS、2%BSA、0.2%Tween−20)40μlを、Aβ(40)ウェルに添加した後、各抗体のプレミックス25μlを各ウェルに添加した。
【0105】
Aβ(40)プレミックス:Origen緩衝液中に希釈したルテニル化G2−10抗体1μg/ml、ビオチン化4G8抗体4μg/ml
Aβ(42)プレミックス:Origen緩衝液中に希釈したルテニル化G2−11抗体0.5μg/ml、ビオチン化4G8抗体4μg/ml
(Signet Pathology Ltdから供給したビオチン化4G8抗体;Chemiconから供給したG2−10およびG2−11抗体)
アッセイプレートをシェーカー上で、終夜4℃で温置した後、Origen M8アナライザー(Igen Inc.)を、製造業者の使用説明書に従って較正した。ストレプトアビジン電磁ビーズ(Dynal)プレミックス(Origen緩衝液中のストレプトアビジンビーズ/ml 400μg/ml)25μ1を、アッセイプレートに添加し、シェーカー上で15分間温置した。Origen緩衝液150μlを各ウェルに添加し、Origen M8アナライザー上で、製造業者の使用説明書に従いプレートを読み取った。
【0106】
培養液を除去した後、Aβアッセイのため、MTS(Owen’s試薬)のホルマザンへの生体内還元を利用する細胞増殖比色アッセイ(CellTiter96(商標)AQアッセイ、Promega)により、製造業者の使用説明書に従って、対応する細胞中で細胞生存性を測定した。手短に言えば、インキュベーターに戻す前に、10×MTS/PES 5μlを、培養液の残り50μlに添加した。約4時間後、光学密度を495nmで読み取った。
【0107】
Aβ(40)およびAβ(42)の阻害のためのLD50およびIC50値を、適切なソフトウェア(例えば、Excel fit)を使用して、非線形回帰フィット分析により算定した。全信号およびバックグラウンドを、対応するMeSO、および阻害剤コントロールにより確定した。
【0108】
本発明の化合物は、Aβ(1−40)阻害のための対応するIC50値よりも少なくとも2倍低い、通常少なくとも5倍低い、好ましい例においては、少なくとも50倍低い、Aβ(1−42)阻害のためのIC50値をもたらす。
【実施例】
【0109】
中間物質1
(1S)−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチルアミン
【0110】
【化16】

【0111】
ステップ1
マグネシウム(17g)を窒素下で10分攪拌し、次いでTHF(400mL)を添加した。1−ブロモ−4−メチルブタン(5mL)を添加し、反応(発熱)が開始するまで混合物を5分攪拌した。ブロモメチルブタンの残部(100g、0.672mol)を温度を35℃未満に保持(水浴)しながら添加した。混合物を1時間、RTで攪拌し、一部CuBrを含む4−トリフルオロメチルベンゾニトリル100g、0.584mol)のトルエン溶液(1L)を、温度を25℃に保持しながら滴下により添加した。溶液を1時間攪拌し、15%HSOで慎重に停止した(発熱)。有機層を傾瀉し、ブラインで洗浄、(MgSO)上で乾燥、真空で濃縮した。イソヘキサンを溶出液として使用したシリカ上のカラムクロマトグラフィーにより該油を精製して、4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン−1−オン(126g)を得たが、これは直ちに凝固した。H NMR δ(ppm)(CDCl):8.06(2H,d,J 8.1Hz)、7.73(2H,d,J 8.1Hz)、2.99(2H,app.t,J 7.4Hz)、1.68−1.60(3H,m)、0.96(6H,d,J 6.3Hz)。
【0112】
ステップ2
4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン−1−オン[ステップ1](70g、0.312mol)のトルエン(500mL)溶液に、RTで、S−フェニルエチルアミン(44.5g、0.374mol)および塩化亜鉛(2g、15.61mmcl)を添加した。ディーンスターク装置を取り付け、反応生成物を16時間還流した。反応生成物を冷却し、1N NaOH(800mL)、飽和塩化アンモニウム(×3)で洗浄、(MgSO)乾燥し、蒸発させて、4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチリデン}[(1S)−1−フェニルエチル]アミン(87g)を異性体の3:1油混合物として得て、ステップ3に直接用いた。
【0113】
ステップ3
{4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチリデン}[(1S)−1−フェニルエチル]アミン[ステップ2](87g、0.25mol)のメタノール(0.5L)溶液に、−20℃で、水素化ホウ素ナトリウム(10g、0.263mol)を少量ずつ添加した。溶液を0℃で1/2時間攪拌し、1N HClで慎重にクエンチし、4N NaOHで塩基化し、EtOAcで抽出した。有機層をデカントし、(MgSO)乾燥し、蒸発させて、{4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル}[(1S)−1−フェニルエチル]アミン85gを、NMRによりジアステレオマーの3:1混合物として得た。これをメタノール(250mL)中に溶解し、フタル酸(40g)を添加した。溶液が結晶化し始めた時、RTで攪拌した。混合物を2時間、RTで攪拌し、次いで、固体をろ過して、単一ジアステレオマー{(1S)−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル}[(1S)−1−フェニルエチル]アミンを、フタル酸塩(70.5g)として得た。フタル酸塩のごく一部を、CDClと水性KCOとの間で分配して遊離塩基を形成し、H NMRに供した。H NMR δ(ppm)(CDCl):7.57(2H,d,J 8.0Hz)、7.33(5H,dd,J 7.6,9.8Hz)、7.16(2H,d,J 6.9Hz)、3.40(1H,q,J 6.7Hz)、3.32(1H,t,J 6.9Hz)、1.66−1.48(2H,m)、1.46−1.32(1H,m)、1.26(3H,d,J 6.7Hz)、1.19−1.09(1H,m)、0.95−0.85(1H,m)、0.79(3H,d,J 3.6Hz)、0.77(3H,d,J 3.5Hz)。
【0114】
ステップ4
{(1S)−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル}[(1S)−1−フェニルエチル]アミンフタル酸塩[ステップ3](70g、0.135mol)と10%カーボン担持パラジウム(900mg)とのEtOH(300mL)懸濁液を、40psi下、57℃で3.5時間水素化した。触媒をろ過により除去し、ろ液を半分にまで濃縮し、酢酸エチルで希釈し、4N NaOH、次いでブラインで3回洗浄し、(MgSO)乾燥し、蒸発させて、標題化合物を液体として得た(60g)。H NMR δ(ppm)(CDCl):7.58(2H,d,J 8.2Hz)、7.43(2H,d,J 8.0Hz)、3.93(1H,t,J 6.8Hz)、1.69−1.59(2H,m)、1.57−1.49(1H,m)、1.28−1.18(1H,m)、1.11−1.01(1H,m)、0.87(3H,d,J 1.8Hz)、0.85(3H,d,J 1.8Hz);m/z(ES)246(M+H);α20=−9.0(c=1,CHCl)。
【0115】
中間物質2
(1R)−4−メチル−1−[4−(トリドルオロメチル)フェニル]ペンチルアミン
【0116】
【化17】

【0117】
エナンチオマー(+)−{(1R)−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチルアミンを、ステップ2におけるS−フェニルエチルアミンの代わりにR−フェニルエチルアミンを用いて、中間物質1として調製した。
【0118】
中間物質3
【0119】
【化18】

【0120】
ステップ1
【0121】
【化19】

【0122】
2−メチルプロプ−2−エン−1−オール(57g、0.79mol)および1,1−ジエトキシシクロヘキサン(190g、1.1mol)およびプロピオン酸(10mL)を、還流下で16時間、170℃に加熱した。混合物を冷却し、ディーンスタークトラップを取り付け、混合物を170℃に再加熱した。揮発性物質(主にエタノール)を、該トラップを使用して除去し、さらに30分間加熱を続けた後、室温に冷却した。得られた油を、蒸留(bp76−80℃/50mbar)により精製した。無色油(104.5g、87%)。H NMR δ(ppm)(CDCl):4.76(1H,s)、4.66(1H,s)、2.25−2.50(5H,m)、2.0−2.15(2H,m)、1.4−1.8(5H,m)、1.25−1.35(2H,m)。
【0123】
ステップ2
【0124】
【化20】

実施例12ステップ2に記載の手順を用いて、THF中、−78℃で、KHMDSの存在下、ステップ1の生成物をブロモ酢酸エチルでアルキル化することにより調製した。
【0125】
ステップ3
【0126】
【化21】

【0127】
エチル[3−(2−メチルプロプ−2−エン−1−イル)−2−オキソシクロヘキシル]アセテート[ステップ2](25g、105mmol)と過ヨウ素酸ナトリウム(89.8g、420mmol)との激しく攪拌したCCl(50mL)/MeCN(50mL)懸濁液、および水(75mL)に、三塩化ルテニウム一水和物(0.44g、2.1mmol)を添加し、攪拌を16時間続けた。得られた混合物を、水(850mL)とDCM(850mL)との間で分配し、水層/固体残渣をDCM(×2)で抽出した。合わせた有機相を(ブライン)洗浄し、(硫酸ナトリウム)乾燥し、濃縮して暗褐色の油を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1、65M、10−40%EtOAc/イソヘキサン)により精製し、ジアステレオ異性体の混合物を淡黄色の油として得た(11g、43%)。H NMR δ(ppm)(CDCl):4.09−4.15(2H,m)、2.65−3.05(4H,m)、2.35−2.45(1H,m)、2.05−2.2(4H,m)、1.6−2.0(5H,m)1.3−1.45(1H,m)、1.25−1.3(3H,m)。
【0128】
ステップ4
ステップ3の生成物(2.0g、8.33mmol)、中間物質2(2.04g、8.33mmol)、および4−ベンゼンスルホン酸水和物(0.16g、0.83mmol)を、トルエン(7mL)中に溶解し、ディーンスタークトラップで48時間150℃に加熱した。混合物を冷却し、DCMとNaHCO(aq)との間で分配した。有機相を(硫酸ナトリウム)乾燥し、減圧下で濃縮して暗褐色の油を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1、40M、0−>15%EtOAc/イソヘキサン)により精製して、淡黄色油を得た。ジアステレオ異性体の混合物。H NMR(360MHz)、δ(ppm)(CDCl):7.54(2H,t)、7.14(1H,d)、7.03(1H,d)、5.71(1H,d)、5.23−5.17(1H,m)、4.14−3.99(2H,m)、3.28−2.94(1H,m)2.50−0.83(25H,m)。
【0129】
中間物質4
エチル(2−エトキシシクロヘキス−2−エン−1−イル)アセテートとエチル(2,2−ジエトキシシクロヘキシル)アセテートとの混合物
【0130】
【化22】

【0131】
エチル(2−オキソシクロヘキシル)アセテート(40.2mL、0.228mol)のエタノール(66mL)攪拌溶液に、p−トルエンスルホン酸(422mg、2.28mmol)およびトリエチルオルトギ酸(113mL、0.684mol)を添加した。反応混合物を95℃に加熱し、16時間攪拌した。混合物を、60℃で2 1/2時間、真空で濃縮して、過剰なトリエチルオルトギ酸を除去した。混合物を、後続の反応にこのまま使用した。H NMR δ(ppm)(CDCl):4.60(1H,t,J 3.9Hz)、4.17−4.09(4H,m)、3.76−3.58(4H,m)、3.47−3.41(3H,m)、3.11(1H,s)、2.71−2.63(2H,m)、2.58−2.40(1H,m)、2.37−2.09(4H,m)、2.07−1.97(4H,m)、1.91−1.33(8H,m)、1.31−1.16(14H,m)。
【0132】
中間物質5
1−ブロモ−4−メチル−1−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)ペンタン
【0133】
【化23】

【0134】
水素化ホウ素ナトリウム(2.8g、0.074mol)を、4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンタン−1−オン[中間物質1;ステップ1]の氷中で冷却したEtOH(50mL)溶液に、少量ずつ添加した。添加が完了した時(30分)、混合物をRTで1時間攪拌し、次いで、NHCl溶液(50mL)、それに続く2N HCl(20mL)でクエンチした。エーテル(3×50mL)で抽出し、それに続いて有機相を(MgSO)乾燥、濃縮して、4−メチル−1−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)ペンタン−1−オールを無色油として得た。
【0135】
PBr(5g、0.018mol)を、RTで攪拌しながら、このアルコール(5g、0.02mol)溶液に滴下により添加した。混合物をRTで1時間攪拌し、次いで、氷中に注ぎ、混合物をEtO(3×20mL)で抽出した。有機相を(MgSO)乾燥し、濃縮して、臭化物を油として得た。H NMR δ(ppm)(CDCl):7.6(2H,d,J 8Hz)、7.49(2H,d,J 8Hz)、4.90(1H,t,J 7hz)、2.4−1.1(5H,m)、0.89(6H,d,J 7Hz)。
【0136】
中間物質6
【0137】
【化24】

【0138】
DMF(2.32ml、30.03mmol)の乾燥トルエン(10ml)攪拌溶液に、POCl(4.14g、27.03mmol)を滴下により添加した。得られた二相混合物を70℃で5分間攪拌した後、中間物質2をトルエン(10m1)溶液として添加した。得られた溶液をこの温度で2時間攪拌し、次いで、飽和酢酸ナトリウム(aq)上に注いだ。水性相をEtOAcで抽出し、合わせた有機相を(ブライン)洗浄し、(硫酸ナトリウム)乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1、25S、2−30%EtOAc/イソヘキサン)により精製して、無色油をジアステレオマーの1:1混合物として得た。1H NMR(360MHz,CDCl3):δ 9.91(m,1H)、7.60(t,2H)、7.16(t,2H)、5.30(m,1H)、4.13−3.99(m,2H)、3.21(d,1H)、2.95(t,1H)、2.70−1.18(m,14H)、0.98−0.90(m,8H)。
【0139】
中間物質7
(1S)−3−フェニル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロピルアミン塩酸塩
【0140】
【化25】

【0141】
2−メチル−N−{(1S)−3−フェニル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロピル}プロパン−2−スルフィンアミド(JACS、2005、127、1092−3)(8.3g、21.7mmol)をメタノール(50mL)中に溶解し、HClのジオキサン(10.8mL)4M溶液を添加した。溶液をRTで1時間攪拌し、次いで濃縮した。残渣をイソヘキサンで倍散して無色の固体を得て、これをろ過により回収した。H NMR(400MHz)、δ(ppm)(DMSO−D):8.7(3H,s)、7.85(2H,d,J 8.3Hz)、7.77((2H,d,J 8.3Hz)、7.29−7.26(2H,m)、7.20−7.13(3H,m)、4.36(1H,m)、2.4−2.35(2H,m)、2.35−2.25(m,1H)、2.2−2.1(1H,m)。
【0142】
実施例1
(3−ブロモ−2−メチル−1−{(1R)−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル}−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インドール−7−イル)酢酸
【0143】
【化26】

【0144】
ステップ1
中間物質3(72mg、0.16mmol)の乾燥THF(4ml)攪拌溶液に、−78℃でNBS(34mg、0.19mmol)を固体として添加した。得られた混合物をこの温度で2時間攪拌し、次いで、NaHCO(aq)でクエンチした。混合物をEtOAc(×2)で抽出し、合わせた有機相を(MgSO)乾燥し、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1、12M、0−>8%EtOAc/イソヘキサン)により精製して、淡黄色油を得た。(70mg、82%)。
【0145】
ステップ2
ステップ1の生成物(25mg、0.05mmol)をEtOH(3mL)中に溶解し、0.5M NaOH(aq)(0.29mL)を添加した。RTで2時間攪拌した後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を2M HCl(aq)/DCMの間で分配し、相分離カートリッジを通してろ過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1、25S、20−>75%EtOAc/イソヘキサン)により精製して、白い泡状物質(15mg、63%)を得た。ジアステレオ異性体の混合物。H NMR(400MHz)、δ(ppm)(CDCl):7.56(2H,t)、7.14(1H,d)、7.02(1H,t)、5.22−5.16(1H,m)、3.18(1H,d)、2.52−2.0(9H,m)、1.55−1.86(5H,m)、1.37−1.17(2H,m)、0.99−0.85(6H,m);(ES)500、502(M+H)。
【0146】
実施例2
(3−クロロ−2−メチル−1−{(1R)−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル}−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インドール−7−イル)酢酸
【0147】
【化27】

【0148】
実施例1と類似の手順を用いて、中間物質3およびN−クロロコハク酸イミドから調製した。H NMR(500MHz)、δ(ppm)(CDCl3):7.56(2H,t,)、7.14(1H,d)、7.03(1H,d)、5.20−5.14(1H,m)、3.19(1H,m)、2.57−2.33(4H,m)、2.26−2.18(1H,m)、2.14−2.01(3H,s)、1.86−1.68(6H,m)、1.38−1.19(2H,m)、0.96−0.89(6H,m);(ES)456、458(M+H)。
【0149】
実施例3
(3−ベンゾイル−2−メチル−1−{(1R)−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル}−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インドール−7−イル)酢酸
【0150】
【化28】

【0151】
ステップ1
中間物質3(80mg、0.18mmol)と塩化ベンゾイル(25mg、0.18mmol)とのDCM(3mL)攪拌溶液に、三塩化アルミニウム(24mg、0.18mmol)を添加した。得られたワインレッドの溶液をRTで18時間攪拌し、次いで、NaHCO(aq)でクエンチした。混合物をDCMで抽出し、合わせた有機相を(硫酸ナトリウム)乾燥し、減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1、12M 0−>40% EtOAc/イソヘキサン)により精製して、黄色油(9mg、9%)を得た。
【0152】
ステップ2
実施例1、ステップ2に類似の手順。
【0153】
H NMR(400MHz)、δ(ppm)(CDCl):7.68(2H,d)、7.60(2H,t)、7.51−7.39(3H,m)、7.21−7.02(2H,m)、5.30(1H,m)、3.15−3.3(1H,m)、2.56−1.36(17H,m)、0.99−0.85(6H,m);(ES)526(M+H)。
【0154】
実施例4
(3−シアノ−2−メチル−1−{(1R)−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル}−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インドール−7−イル)酢酸
【0155】
【化29】

【0156】
ステップ1
中間物質3(72mg、0.16mmol)のDMF(1mL)攪拌溶液に、−78℃で、アセトニトリル(1mL)中のイソシアン酸クロロスルホニル(45mg、0.32mmol)を添加し、得られた混合物をこの温度で4時間攪拌し、次いで、4時間かけて放置してRTにまで温め、さらに16時間攪拌した。混合物をNaHCO(aq)でクエンチし、DCM(×3)で抽出し、合わせた有機相を(硫酸ナトリウム)乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(0−>30%EtOAc/イソヘキサン)により精製して、泡状物質(12mg、16%)を得た。
【0157】
ステップ2
実施例1、ステップ2と類似の手順。
【0158】
H NMR(400MHz)、δ(ppm)(CDCl):δ 7.60(2H,t)、7.10(2H,dd)、5.27−5.21(1H,m)、3.17(1H,m)、2.65(1H,m)、2.56−2.36(3H,m)、2.23−2.04(5H,m)、1.86−1.67(4H,m)、1.35−1.09(4H,m)、0.97−0.83(6H,m);(ES)447(M+H)。
【0159】
実施例5
(3−シクロヘキシル−1−{(1R)−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル}−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インドール−7−イル)酢酸
【0160】
【化30】

【0161】
ステップ1
水素化ナトリウム、油中60%分散液(13.9g、34.8mmol)を、ジメトキシエタン(300mL)に、水冷却しながら少量ずつ添加した。ホスホノ酢酸トリエチル(69mL、34.8mmol)を徐々に添加した。混合物を90分RTで攪拌した。シクロヘキサンカルボキシアルデヒド(15g、13.4mmol)を添加し、混合物をRTで18時間攪拌した。水(200mL)を添加し、混合物をエーテルで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固した。残渣をカラムクロマトグラフィー(40:1 イソヘキサン−酢酸エチル)により精製して、油(19.8g、79%)を得た。
【0162】
H NMR(400MHz)、δ(ppm)(CDCl):6.91(1H,dd,J 6.7,15.8)、5.76(1H,dd,J 1.5,15.8)、4.18(2H,q,J 7.1)、2.16−2.10(1H,m)、1.76(4H,dd,J 3.0,12.9)、1.69(1H,d,J 1.3)、1.31−1.13(8H,m)。
【0163】
ステップ2
DIBAH、ヘキサン中1M(268mL、26.8mmol)を、ステップ1の生成物(19.5g、10.7mmol)のエーテル(25mL)攪拌溶液に、温度を−70℃未満に保持しながら滴下により添加した。混合物を−78℃で3時間攪拌し、次いで、メタノール、それに続く飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。混合物を放置してRTにまで温め、エーテルで希釈し、2M HOで洗浄した。有機相を、水、次いで、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮して、無色油(12.3g、82%)を得た。H NMR(400MHz)、δ(ppm)(CDCl):5.67−5.55(2H,m)、4.08(2H,m)、2.00−1.94(1H,m)、1.70(5H,m)、1.32−1.02(6H,m)。
【0164】
ステップ3
数滴のプロピオン酸を、ステップ2の生成物(2.5g、17.9mmol)および中間物質4(8.4g)に添加した。混合物を、150℃で18時間攪拌および加熱し、次いで、RTに冷却した。反応混合物をカラムクロマトグラフィー(5−>10% EtOAc/イソヘキサン)により直接精製し、油(703mg、13%)をジアステレオマーの混合物として得た。
【0165】
ステップ4
窒素を気泡にして、ステップ3の生成物(703mg、2.28mmol)のDCM(40mL)攪拌溶液中に、−78℃で数分間注入した。次いで、酸素、それに続くオゾンを気泡にして、混合物に注入した。数分後から、青色が持続した。酸素、それに続く窒素を気泡にして、青色が消えるまで混合物に通した。硫化ジメチル(1.0mL、13.7mmol)を添加し、混合物を−78℃で2時間攪拌し、次いで、終夜放置してRTにまで温めた。混合物を濃縮乾固した。残渣をEtOAc中に溶解し、水およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固して、ジカルボニル化合物をジアステレオマーケタールの複合混合物として得た(774mg)。
【0166】
ステップ5
ステップ4からの生成物(774mg、2.51mmnol)、中間物質2(739mg、3.01mmol)、過塩素酸リチウム(266mg、2.51mmol)、および酢酸(0.4ml)のトルエン(25ml)混合物を、ディーンスターク装置を装着したフラスコ内で20時間、還流下で攪拌および加熱した。RTに冷却し、EtOAcで希釈した後、混合物を飽和NaHCO溶液およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固した。残渣をカラムクロマトグラフィー(20:1 イソヘキサン:EtOAc)により精製して、ジアステレオマーの1:1混合物として油を得た(398mg、31%)。m/z(ES)518(M+H)。
【0167】
ステップ6
ステップ5の生成物(398mg、0.768mmol)と水酸化リチウム(184mg、7.68mmol)との、水(4mL)とジオキサン(30mL)と混合物を、18時間、還流下で攪拌および加熱した。RTに冷却し、1M塩酸でpH1に酸性化した後、混合物をEtOAcで抽出し、有機抽出物を水およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固した。残渣をカラムクロマトグラフィー(40:1 DCM:メタノール中の0.5%酢酸)により精製して、薄茶色の泡沫状の固体を得た。クロマトグラフした材料を、分取用HPLC(HIRPBカラム250×20mm id、(0.1%)水中の85%MeCNおよび15%TFA、20m1/分)を使用して、単一ジアステレオマーに分離した。第1溶出化合物を、ジアステレオマー1(61mg)と命名した。H NMR(500MHz)、δ(ppm)(CDCl):7.49(2H,d,J 8.2)、7.02(2H,d,J 8.1)、6.53(1H,s)、4.95(1H,dd,J 6.2,9.2)、2.93(1H,m)、2.63−2.55(2H,m)、2.49(1H,m)、2.37−2.31(2H,m)、2.17−2.09(1H,m)、2.04−1.97(1H,m)、1.93(2H,m)、1.76−1.66(8H,m)、1.40−1.30(4H,m)、1.24−1.16(3H,m)、0.88(6H,t,J 6.1)。第2溶出化合物を、ジアステレオマー2(60mg)と命名する。H NMR(500MHz)、δ(ppm)(CDCl):7.55(2H,d,J 8.2)、7.25(2H,d,J 8.2)、6.50(1H,s)、5.00(1H,t,J 7.6)、3.29(1H,m)、2.53(1H,m)、2.44−2.36(2H,m)、2.24(1H,dd,J 11.1,15.7)、2.09−2.01(2H,m)、1.95(3H,m)、1.81−1.51(7H,m)、1.43−1.07(8H,m)、0.88(6H,m)。
【0168】
実施例6−9
【0169】
【化31】

【0170】
実施例6−9は、適当なアルデヒドから出発し、実施例5と類似の方法で行った。
【0171】
【表1】

【0172】
実施例10−11
【0173】
【化32】

【0174】
実施例10−11は、適当なアルデヒドから出発し、中間物質2の代わりにステップ5における中間物質1を使用し、実施例5と類似の方法で行った。
【0175】
【表2】

【0176】
実施例12
【0177】
【化33】

【0178】
ステップ1
(テトラヒドロピラン−4−カルボキシアルデヒから出発し、実施例5のステップ1および2の方法により調製した)3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロプ−2−エン−1−オール(2.16g、15.2mmol)、および数滴のプロピオン酸を含むシクロヘキサノンジエチルケタール(3.66g、21.3mmol)を、150℃で18時間攪拌および加熱した。RTに冷却後、混合物をカラムクロマトグラフィー(7:1−>4:1 イソヘキサン:EtOAc)により精製して、油をジアステレオマーの混合物として得た;1.17g(35%)。
【0179】
ステップ2
ステップ1からの生成物(1.17g、5.27mmol)のTHF(5mL)溶液を、KHMDS、ヘキサン中0.5M(11.6ml、5.80mmol)のTHF(25mL)溶液に、温度を−70℃未満に維持しながら、−78℃で徐々に添加した。混合物を−78℃で1時間攪拌した。ブロモ酢酸エチル(641μL、5.80mmol)を、温度を−70℃未満に確保しながら、滴下により添加した。混合物を−78℃で2時間攪拌し、放置してRTにまで温め、直ちに、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固した。残渣をカラムクロマトグラフィー(4:1 イソヘキサン:EtOAc)により精製して、油620mg(38%)をジアステレオマーの混合物として得た。
【0180】
ステップ3
ステップ2の生成物を、実施例5ステップ4−6のように処理して、標題化合物を得た。m/z ES(M−H)490。
【0181】
実施例13
(3−トリフルオロメチル)−1−{(1R)−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル}−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インドール−7−イル)酢酸
【0182】
【化34】

【0183】
ステップ1における4,4,4−トリフルオロブト−2−エン−1−オールを使用し、実施例12の方法により調製した。m/z ES(M−H)474。
【0184】
実施例14
【0185】
【化35】

【0186】
ステップ1
中間物質4を、実施例5ステップ3の方法により、2−イソプロピルプロプ−2−エン−1−オールと反応させ、生成物を、中間物質3のステップ3のために記載したように、RuCl/NaIOで酸化した。得られたジケトンと中間物質2とを、実施例5ステップ1の方法により反応させて、(2−イソプロピル−1−{(1S)−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル}−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インドール−7−イル)酢酸のエチルエステルを得た。
【0187】
ステップ2
ステップ1の生成物(1.0g、2.1mmol)のDMF(8mL)攪拌溶液に、−78℃で、アセトニトリル(8mL)中のイソシアン酸クロロスルホニル(0.2ml、2.1mmol)に添加した。得られた混合物を、この温度で4時間攪拌し、次いで、4時間かけて放置して室温にまで温め、さらに16時間攪拌した。混合物をNaHCO(aq)でクエンチし、DCM(×3)で抽出し、合わせた有機相を(MgSO)乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(0−>30% EtOAc/イソヘキサン)により精製して、泡状物質(720mg、65%)を得た。
【0188】
ステップ3
ステップ3の生成物を、実施例1ステップ2に記載したように加水分解した。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、9:1−>2:1 イソヘキサン:EtOAc)により精製して、生成物をジアステレオ異性体の混合物として得た。分取用逆相HPLCを使用し、ジアステレオ異性体を分離した。第1溶出化合物(ジアステレオ異性体1)H NMR δ(ppm)(CDCl):7.59(2H,d,J 8.2Hz)、7.14(2H,br)、5.17(1H,br)、3.29(1H,m)、2.66−2.49(5H,m)、2.10(2H,m)、1.77−1.23(13H,m)、0.99(3H,d,J 6.5Hz)、0.93(3H,d,J 6.5Hz)。
【0189】
第2溶出化合物(ジアステレオ異性体2)H NMR δ(ppm)(CDCl):7.62(2H,d,J 8.2Hz)、7.22(2H,d,J 8.2Hz)、5.20(1H,m)、3.28(1H,br)、2.71−2.49(5H,m)、2.10(2H,m)、1.77−1.23(13H,m)、0.99(3H,d,J 6.5Hz)、0.93(3H,d,J 6.5Hz)。
【0190】
実施例15
【0191】
【化36】

【0192】
実施例14ステップ1の生成物(500mg、1.1mmol)の乾燥THF(10ml)攪拌溶液に、−20℃で、N−ヨードコハク酸イミド(242mg、1.1mmol)を添加した。反応生成物を放置して室温にまで徐々に温め、2時間攪拌した。次いで、反応生成物をNaHCO(aq)でクエンチし、次いで、生成物をEtOAc(×3)で抽出した。有機物をブラインで洗浄し、(MgSO)乾燥し、ろ過し、蒸発させた。残渣を実施例1、ステップ2の手順により加水分解し、フラッシュクロマトグラフィー(SiO、4:1−>1:1 イソヘキサン:EtOAc)により精製して、生成物をジアステレオ異性体の混合物として得た。
【0193】
H NMR δ(ppm)(CDCl):7.57(2H,m)、7.25(1H,m)、7.07(1H,m)、5.12(1H,br)、3.21(1H,m)、2.60−0.85(26H,m)。
【0194】
実施例16
(3−(1,1−ジメチルエチル)−1−{1−4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル}−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インダゾール−7−イル)酢酸
【0195】
【化37】

【0196】
ステップ1:7−アリル−3−(1,1−ジメチルエチル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インダゾール;
リチウムヘキサメチルジシラジドのTHF(40mL、0.04mol)1M溶液を、N下で−70℃未満に冷却した2−アリルシクロヘキサノン(5g、0.036mol)の乾燥THF(50mL)溶液に、滴下により添加した。1時間後、1−(2,2,2−トリメチルアセチル)−1H−ベンゾトリアゾール(7.2g、0.036mol)の乾燥THF(10mL)溶液を一度に添加し、混合物を2時間かけて室温に達するまで放置した。さらに1時間後、1N塩酸(50mL)を添加し、混合物をエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機相を1N NaCO溶液(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、(MgSO)乾燥し、油に濃縮した。TLCシリカ(EtOAc:ヘキサン10%)により、3種の生成物A、B、およびC(Rf、それぞれ、0.6、0.25、および0.2)が示された。EtOAc:ヘキサン 0−>20%で溶出するシリカ上のMPLCにより、A3g、油、B1.5g、およびC0.7gを単離することができた。NMRにより、AがO−アシル化物質であり、BおよびCが、所望のジアステレオマー生成物、シス−およびトランス−2−アリル−6−(1−(2,2,2−トリメチルアセチル))シクロヘキサン−1−オンであることが示された。
【0197】
H NMR δ(ppm)(CDCl):A;5.85−5.65(1H,m)、5.35−5.3(1H,m)、5.05−4.95(2H,m)、2.5−1.4(9H,m)、1.25(s,9H):B;5.85−5.65(1H,m)、5.05−4.95(2H,m)、4.15−4.05(1H,m)、2.8−1.3(9H,m)、1.14(s,9H):C;5.85−5.65(1H,m)、(5.05−4.95(2H,m)、3.95−3.85(1H,m)、2.6−1.3(9H,m)、1.10(s,9H)。
【0198】
合わせた画分BおよびC(1.9g)を、エタノール(20mL)中に溶解し、ヒドラジン水和物(2mL)を添加し、得られた溶液をRTで2時間攪拌した。混合物を濃縮し、残渣をエーテル(50mL)中に溶解した。溶液を1N塩酸(10mL)で洗浄し、(MgSO)乾燥し、再濃縮して、7−アリル−3−(1,1−ジメチルエチル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インダゾールをガムとして1.8g得た。
【0199】
H NMR δ(ppm)(CDCl):5.9−5.75(1H,m)、5.15−5.05(2H,m)、3.15−2.85(2H,m)、2.5−2.7(2H,m)、2.5−2.35(1H,m)、1.95−1.85(2H,m)、1.75−1.5(2H,m)、1.45(9H,m)。
【0200】
ステップ2:
油中に60%分散された水素化ナトリウム(0.4g、0.01mol)を、7−アリル−3−(1,1−ジメチルエチル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インダゾール[ステップ1](1.8g、0.082mol)の乾燥DMF溶液に、室温で攪拌しながら少量ずつ添加した。30分後、中間物質5(3g、0.01mol)を添加し、混合物を室温で18時間攪拌した。混合物を、エーテル(100mL)と水(50mL)との間で分配した。有機相を分離し、(MgSO)乾燥し、油に濃縮し、これを、EtOAc:ヘキサン 0−>10%を溶出液とするシリカ上のMPLCにより精製して、7−アリル−(3−(1,1−ジメチルエチル)−1−{1−(4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル)}−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インダゾール1.5gを油として得た。
【0201】
ステップ3:
RuCl水和物(15mg)を、7−アリル−(3−(1,1−ジメチルエチル)−1−{1−(4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル)}−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インダゾール[ステップ2](1g、0.002mol)と過ヨウ素酸ナトリウム(1.7g、0.008mol)との混合物に、CCl(4mL)、CHCN(4mL)、および水(6mL)の混合物中で、室温で素早く攪拌しながら添加した。24時間後、混合物を水(10mL)とDCM(3×50mL)との間で分配した。有機相を濃縮し、DCM:MeOH 0−>10%を溶出液とするシリカ上のMPLC、それに続く70%CHCN:0.1%TFAaq.を溶出液として溶出するC−18カラム上のRP HPLCにより残渣を精製して、(3−(1,1−ジメチルエチル)−1−{1−(4−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ペンチル)}−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インダゾール−7−イル)酢酸を、ジアステレオマーの1:1混合物として得た。MS ES(M+1)、465。H NMR δ(ppm)(CDCl):7.56−7.51(2HがジアステレオマーA+1HがジアステレオマーB)、7.37、(1HがジアステレオマーB,d,J=8Hz)、4.95−5.05(1H A+1H B,m)、3.4−3.3(1H A,m)、3.1−3.2(1H B,m)、2.7−1.4(13H A+B,m)、1.33および1.31(9H A+B,2s)、0.88および0.84(6H A+B,d,J=6Hz)。
【0202】
実施例17
【0203】
【化38】

【0204】
ステップ1:
【0205】
【化39】

【0206】
ステップ1における1−シクロヘキセン−1−メタノールを使用し、中間物質3の方法に従って調製した;m/z ES(M+H)490。
【0207】
ステップ2
ステップ1を、実施例5、ステップ6のための方法に従って、対応する酸に変換した。m/z ES(M+H)462。
【0208】
実施例18
【0209】
【化40】

【0210】
ステップ1
【0211】
【化41】

【0212】
ステップ1における1−シクロヘキセン−1−メタノール、およびステップ4における中間物質7を使用し、中間物質3の方法を用いて調製した;m/z ES(M+H)524。
【0213】
ステップ2
ステップ1を、実施例5、ステップ6のための方法に従って、対応する酸に変換した。m/z ES(M+H)496。
【0214】
実施例19−22
【0215】
【化42】

【0216】
以下の通常の手順に従って調製した(X=モルホリン):
ステップ1
中間物質6(60mg、0.13mmol)とモルホリン(11mg、0.13mmol)とのクロロホルム(3ml)攪拌溶液に、トリアセトキシホウ水素化ナトリウム(82mg、0.39mmol)を添加し、得られた混合物を、室温で16時間攪拌した。混合物を飽和NaHCO(aq)でクエンチし、DCMで洗浄しながら相分離カートリッジを通してろ過した。減圧下で濃縮して、粗エステルを無色油として得て、これをこのままステップ2に用いた。
【0217】
ステップ2
ステップ1を、実施例5、ステップ6のための方法に従って、対応する酸に変換した。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.54(d,2H)、7.16(t,2H)、5.23(m,1H)、3.70(t,4H)、3.42(s,2H)、3.22(d,1H)、2.53−0.70(m,26H)m/z ES(M+H)507。
【0218】
【表3】

【0219】
実施例23
【0220】
【化43】

【0221】
ジオキサン(4ml)中の実施例15からのヨウ化物(320mg、0.54mmol)に、ピリジン−4−ボロン酸(100mg、0.81mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)(20mg、5mol%)および2M NaCO(aq)を添加した。混合物にマイクロ波放射を当て、170℃で15分間加熱した。反応生成物を水で希釈し、EtOAc(×3)で抽出した。有機抽出物をブラインで洗浄し、(硫酸マグネシウム)乾燥し、ろ過し、蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、9:1 DCM/MeOHから5:1 DCM/MeOH)により精製して、白色固体をジアステレオ異性体の混合として得た。1H NMR δ(ppm)(CDCl):8.53(2H,br)、7.60(2H,d,J=8.0Hz)、7.27(4H,m)、5.27(1H,br)、3.39(1H,br)、2.61−0.87(20H,m)。
m/z(ES)527(MH)。
【0222】
実施例24−38
【0223】
【化44】

【0224】
ステップ1
【0225】
【化45】

【0226】
(a)中間物質3(28.1g、66.7mmol)の0℃に冷却した乾燥THF(300ml)攪拌溶液に、トリエチルアミン(18.6ml、133mmol)、それに続いて塩化トリメチルアセチル(9.8ml、80mmol)を添加した。得られた混合物を10分間攪拌した後、(S)−5−ベンジル−2−オキサゾリジノン(14.19、80mmol)と塩化リチウム(8.03g、189mmol)との混合物を固体として添加した。攪拌をさらに16時間続けた後、溶媒を減圧下で除去した。残渣を、水と酢酸エチルとの間で分配し、水性相を(3×酢酸エチル)抽出した。合わせた有機相を(ブライン)洗浄し、(硫酸ナトリウム)乾燥し、減圧下で濃縮して油を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1システム、3−30% ジエチルエーテル/イソヘキサンから勾配溶出)により精製した。表面に溶出しているジアステレオ異性体を、白色固体(15.5g、40%)として単離し、次のステップに用いた。
【0227】
(b)オキサゾリジノン(10.4g、17.9mmol)の(3:1)THF−水(100m1)攪拌溶液に、水酸化リチウム一水和物(1.5g、35.8mmol)を添加し、得られた混合物を室温で16時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を、2M HCl(aq)とEtOAcとの間で分配した。水性相をEtOAcで抽出し、合わせた有機相を(ブライン)で洗浄し、(硫酸ナトリウム)乾燥し、減圧下で濃縮して油を得て、これをDMF(50m1)中に溶解した。炭酸カリウム(7.43g、53.7mmol)、それに続いてヨードメタン(3.35ml、53.7mmol)を添加し、混合物を40℃に16時間加熱した。混合物をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮して油を得て、これをEtOAcと水との間で分配した。水性相をEtOAcで抽出し、合わせた有機相を(ブライン)洗浄し、(硫酸ナトリウム)乾燥し、減圧下で濃縮して油を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1、2−20% EtOAc/イソヘキサンから勾配溶出)により精製して、無色油(4.0g、51%)を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.55(d,2H)、7.14(d,2H)、5.72(s,1H)、5.21(dd,1H)、3.60(s,3H)、3.23(d,1H)、2.55−2.31(m,4H)、2.21−2.03(m,2H)、1.87(s,3H)、1.76(br,4H)、1.30−1.24(m,2H)、1.02(t,1H)、0.94−0.86(m,6H)。m/z(ES)436(M+H)。
【0228】
ステップ2(a)
ステップ1の生成物を、実施例1ステップ1において記載したように、NBSで処理し、3−ブロモ誘導体を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.57(d,2H)、7.16(t,2H)、5.23(dd,1H)、3.60(d,3H)、3.24(d,1H)、2.54−2.32(m,4H)、2.20−2.04(m,3H)、1.85−1.73(m,6H)、1.27−1.19(m,2H)、0.98−0.90(m,7H)。
【0229】
別法ステップ2(b)
ステップ1の生成物を、実施例15のように、N−ヨードコハク酸イミドで処理し、3−ヨード誘導体を得た。1H NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.57(d,2H)、7.14(d,2H)、5.25(dd,1H)、3.59(s,3H)、3.23(d,1H)、2.49−2.27(m,4H)、2.19−2.04(m,2H)、1.89(s,3H)、1.82−1.65(m,2H)、1.63−1.51(m,1H)1.36−1.20(m,2H)、0.97−0.83(m,8H)。
【0230】
ステップ3
ジオキサン(2ml)中の、ステップ2(b)の生成物(0.162mmol)、4−(トリフルオロメチル)ベンゼンボロン酸(46mg、0.243mmol)、Pd(dppf)Cl(5.9mg、0.008mmol)、および2M炭酸ナトリウム溶液(324μl、0.694mmol)を、100℃で18時間、攪拌および加熱した。混合物を放置して室温にまで冷却し、次いで、濃縮乾固した。5:1 ジオキサン−水(2ml)中の粗残渣および水酸化リチウム(44mg、1.91mmol)を、100℃で18時間、攪拌および加熱した。混合物を室温に冷却し、濃縮乾固した。残渣をDCM(2ml)および水(2ml)で希釈し、希釈塩酸でpH5/6に調整した。有機相を、相分離カートリッジを使用して分離し、濃縮乾固した。残渣をDMSO(1ml)中に溶解し、実施例24を、質量分析計に連動した分取用HPLCを使用して単離した。
【0231】
この方法を用い、既述したステップ2(a)または2(b)を使用して、以下を調製した。
【0232】
【表4】

【0233】
実施例39−47
実施例5−13のために記載した手順と同様の手順に従い、以下も調製した。
【0234】
【化46】

【0235】
【表5】

【0236】
用語集
KHMDS−カリウムヘキサメチルジシラジド
DCM −ジクロロメタン
THF −テトラヒドロフラン
DMF −ジメチルホルムアミド
RT −室温
DIBAH−水素化ジイソブチルアルミニウム
TFA −トリフルオロ酢酸
EtOAc−酢酸エチル
EtOH −エタノール
EtO −ジエチルエーテル
NBS −N−ブロモコハク酸イミド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、Vは結合、CHまたはCHCHを表し、
Xは、CR1aまたはNを表し、
Yは、COHまたはテトラゾールを表し、
Arは、炭素原子が6個までの炭化水素基および(CH−Z(式中、mは、0、1、または2であり、Zは、ハロゲン、N、CN、CF、OCFまたはORを表す。)から独立に選択される3個までの置換基を場合により有するフェニルを表し、
は、ハロゲン、CN、RCO、CF、CHN(R、分岐C1−10アルキル基、C1−10アルケニル基、もしくは環原子(これらのうち2個まではN、O、およびSから選択してよい。)が7個までの非芳香族環状基を表し、またはXがCR1aの場合、RおよびR1aは、2個までのC1−4アルキル基で場合により置換されている、5、6、もしくは7員の縮合シクロアルケン環を完成してよく、
1aは、HもしくはC1−4アルキルを表し、または上記のようにRと組み合わさり、
ただし、XがCHの場合、Rはt−ブチルではなく、
各Rは独立に、HまたはC1−4アルキルであり、
は、H、10個までの炭素原子を含む炭化水素、ベンジルオキシC1−4アルキルまたはヘテロシクリルC1−4アルキル(これらのいずれもハロゲンおよびCFから選択される3個までの置換基、またはC1−4アルコキシおよびC1−4アルキルチオから選択される1個の置換基を場合により有している。)であり、ここで「ヘテロシクリル」は、5または6個の原子(これらのうち1、2または3個はN、OおよびSから選択される。)の芳香族環または非芳香族環を示し、
は、Hであり、またはハロゲン、CN、CF、OH、C1−4アルコキシもしくはC1−4アルコキシカルボニルで場合により置換されている、炭素原子が7個までの炭化水素基を表し、または窒素原子に結合している2個のR基は、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、テトラヒドロピリジンおよびピペラジンから選択される環(これらの環はいずれもCF、C1−4アルキルおよびフェニルから選択される置換基を場合により有する。)を完成してもよく、
は、H以外であるRを表し、
pは、0、1または2であり、
は、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはフェニル、ベンジルもしくはヘテロアリールを表し、前記フェニル、ベンジルまたはヘテロアリールは、ハロゲン、CN、CF、OCF、OR、CO、COR、OCORおよびC1−4アルキルから選択される3個までの置換基を場合により有する。]
の化合物または医薬として許容可能なこの塩もしくは水和物。
【請求項2】
が、Cl、Br、I、CN、RCO、CF、CHN(R、分岐C1−6アルキルおよび環原子(これらのうち2個まではN、O、およびSから選択されてよい。)が7個までの非芳香族環状基から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、Cl、Br、I、CNまたはRCOを表し、XがCR1aを表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
XがCR1aを表し、R1aがC1−4アルキルを表し、Rが、ハロゲン、CNまたはRCOを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Xが、CHを表し、Rが、分岐C1−10アルキルまたは環原子(これらのうち2個まではN、O、およびSから選択されてよい。)が7個までの非芳香族環状基を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Xが、CR1aを表し、RおよびR1aが、2個までのC1−4アルキル基で場合により置換されている、5、6、または7員の縮合シクロアルケン環を完成させている、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
VがCHを表し、pが0であり、R基の両方がHを表す、請求項1から6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
Arが4−トリフルオロメチルフェニルを表す、請求項1から7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の化合物、および医薬として許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項10】
治療における使用のための、請求項1から8のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
脳におけるAβの沈着を伴う疾患の治療または予防のための薬物を製造するための、請求項1から8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項12】
脳におけるAPの沈着を伴う疾患の治療または予防を必要とする患者に、請求項1に記載の化合物の治療有効量を投与することを含む、脳におけるAPの沈着を伴う疾患の治療または予防の方法。

【公表番号】特表2009−515864(P2009−515864A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539507(P2008−539507)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050368
【国際公開番号】WO2007/054739
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【Fターム(参考)】