説明

インクジェットヘッドの製造方法

【課題】目的とするインク流路を正確に形成可能なインクジェットヘッドの製造方法を提供すること。
【解決手段】 流路パターンを規定する型となる溶解除去可能な固体層(流路となる構造)とそれを被覆するネガ型レジスト層とを少なくとも用いたインクジェットヘッドの製造において、流路となる構造を、特定の物性を有する(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を樹脂成分とするポジ型感光性樹脂組成物から形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットヘッドの製造方法およびインクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インク等の記録液を吐出して記録を行うインクジェット記録方式(液体吐出記録方式)に適用されるインクジェットヘッドは、一般にインク流路、該インク流路の一部に設けられる液体吐出エネルギー発生部、及び前記インク流路のインクを液体吐出エネルギー発生部のエネルギーによって吐出するための微細なインク吐出口(「オリフィス」と呼ばれる)とを備えている。従来、このようなインクジェットヘッドを作製する方法としては、例えば(特許文献1参照。)、液体吐出エネルギー発生素子を形成した基板上に感光性材料にてインク流路の型をパターンニングし、次いで型パターンを被覆するように前記基板上に被覆樹脂層を塗布形成し、該被覆樹脂層に前記インク流路の型に連通するインク吐出口を形成した後、型に使用した感光性材料を除去してなるインクジェットヘッドの製法(注型法とも称する)を施しているものもある。該ヘッドの製造方法では感光性材料としては、除去の容易性の観点からポジ型レジストが用いられている。また、この製法によると、半導体のフォトリソグラフィーの手法を適用しているので、インク流路、インク吐出口等の形成に関して極めて高精度で微細な加工が可能である。
【0003】
しかしながら、ポジ型レジストにより形成されたインク流路パターン上にネガ型レジストを塗布するため、ネガ型レジストの塗布時にインク流路パターンが溶解、変形してしまう等の問題を生じる場合がある。
【0004】
この問題を回避するため、従来のインク流路のパターニングにおいては(例えば、特許文献2参照。)、分子間架橋可能な構造単位を含む電離放射線分解型の感光性樹脂組成物を用い、分子間架橋させて耐溶剤性を向上させた後に、ネガ型レジストを塗布する方法が提案されており、メチルメタクリレート/メタクリル酸の8/2共重合体(重量平均分子量18万)からなる感光性樹脂を、180℃で1時間ベークして分子間架橋させる方法を施したものもある。
【0005】
さらに、本発明者等は先に、特に好ましいアクリル系の樹脂として、メタクリル酸エステルを主成分として含み、熱架橋因子としてメタクリル酸を2〜30重量%の割合で含み、かつ分子量が5000〜50000のアクリル系共重合体を熱架橋してインク流路形成用のポジ型レジストとして使用することを提案した(特許文献3参照。)。
【特許文献1】特公平6−45242号公報
【特許文献2】特開平8−323985号公報
【特許文献3】特開2004−42396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの方法によると、インク流路パターンの変形を防止することは可能であるが、
(1)分子間架橋しているため、ポジ型レジストの光崩壊反応に、より多くのエネルギーを必要とし、感度が低下する傾向がある。また、光崩壊反応が十分に進行しないため、特に厚膜で使用する場合においては、解像性の低下が生じる場合がある。
(2)ポジ型レジストを厚膜で使用する場合においては、分子間架橋に伴う硬化収縮応力により、クラックが発生する場合がある。さらに、現像時あるいはネガ型レジストの塗布時にクラックが発生する場合がある。
(3)十分な耐溶剤性を付与するためには、高温で長時間の熱処理を必要とする。
等の問題を内在している。このことは、インク流路の幅や高さを制限することなり、インク流路設計の足かせとなると共に、製造タクトの低下にも繋がりかねない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、特に、アクリル系の樹脂を流路形成用のポジ型レジストとして用いる場合、特定の現像液を用いることでクラックの発生を防止し、分子間架橋の進行を極力抑え、樹脂中の(メタ)アクリル酸成分の比率を変化させることで(メタ)アクリル樹脂の極性を制御し、これによって、現像液に対する感度を向上できる点、さらには、ネガ型レジストの塗布溶媒として特定の有機溶剤を用いることで、該ポジ型レジストにより形成されたインク流路のパターンの溶解、変形を防ぎ、クラックの発生を抑制して、ネガ型レジストを被覆できる点に着目してなされたものであり、インクジェットヘッドの製造方法として、高密度なインクジェットヘッドを高スループットで製造する際に、特に有効な新規な手段である。
【0008】
以下に上記の目的を達成するための詳細な手段を述べる。インク吐出口と該吐出口に連通するインク流路と、該吐出口からインク滴を吐出するためのエネルギー発生素子を、少なくとも含むインクジェットヘッドの製造方法であって、
(1)エネルギー発生素子を有する基板に、光崩壊性ポジ型レジスト層を形成する工程と、
(2)該光崩壊性ポジ型レジスト層からインク流路となる構造を、露光および現像過程からなるフォトリソ過程により形成する工程と、
(3)該インク流路となる構造上にネガ型レジスト層を被覆させる工程と、
(4)該ネガ型レジスト層に、該インク流路となる構造に達するインク吐出口を形成する工程と、
(5)インク流路となる構造を除去することで、該インク吐出口と連通するインク流路を形成する工程と、
を有し、
前記光崩壊性ポジ型レジストが、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルから得られる単位を主成分とし、(メタ)アクリル酸から得られる単位を更に含むアクリル系共重合体組成物からなり、該アクリル系共重合体組成物には(メタ)アクリル酸単位が5〜30重量%の割合で含まれ、かつ該アクリル系共重合体の重量平均分子量が50000〜300000であることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
【0009】
また、本発明にかかるインクジェットヘッドは、上記の製造方法で製造されたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、高感度化による歩留まりの向上およびクラックの抑制およびインク流路の低温形成による高スループット、等々を実現する高密度なインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において用いられる光崩壊性ポジ型レジストは、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルから得られる単位を主成分とし、(メタ)アクリル酸から得られる単位を更に含むアクリル系共重合体組成物である。(メタ)アクリル酸エステル単位としては一般式(1)で示される単位を、(メタ)アクリル酸単位としては一般式(2)で示される単位を好適なものとして挙げることができる。
【0012】
【化1】

【0013】
(R1は水素および炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基であり、mは正の整数である。)
【0014】
【化2】

【0015】
(R3は水素および炭素数1〜3のアルキル基であり、nは正の整数である。)
少なくとも(メタ)アクリル酸エステルから得られる単位としては一般式(1)の単位が、また(メタ)アクリル酸から得られる単位としては一般式(2)の単位を挙げることができる。
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明を工程毎に詳細に説明する。図1〜7は、本発明のインクジェットヘッドの製造方法を模式的に示したものである。
【0017】
工程1:ポジ型レジスト層の形成
まず、本発明では、エネルギー発生素子を有する基板1上に、光崩壊性ポジ型レジスト層2を形成する(図1)。本発明に用いられる基板1としては、インクを吐出させるためのエネルギー発生素子(不図示)が含まれるガラス、セラミック、金属等からなる基板が用いられる。エネルギー発生素子としては、電気熱発生素子や圧電素子等が使用されるが、これに限られるものではない。また、エネルギー発生素子に電気熱発生素子を用いる場合には、発泡時の衝撃の緩和やインクからのダメージの軽減等の目的で、保護膜(不図時)が形成されていても良い。
【0018】
まず、前記基板1の表面上に光崩壊性のポジ型レジストを塗布し、ポジ型レジスト層2を形成する。塗布する方法としては、スピンコート法、ダイレクトコート法、ラミネート転写法などの方法があるが、これに限られるものではない。該光崩壊性ポジ型レジストとしては、一般的にはポリメチルイソプロペニルケトン(PMIPK)やポリビニルケトン等の290nm付近に感光波長域を有するレジストや、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のメタクリル酸エステル単位から構成される高分子化合物のように250nm付近に感光波長域を持つレジストが用いられている。これらのレジストは、光照射により低分子量化が進行することを利用して、ベースとなる樹脂を溶解しない現像液を用い、低分子量化した部分のみを現像液に溶解させることでポジ型の画像を形成するものである。本発明に用いられるアクリル系共重合体も、同様に光照射により低分子量化が進行することを利用してポジ型の画像を形成すものであるが、アクリル系共重合体の樹脂極性に着目して、従来の課題を解決するものである。
【0019】
本発明では現像時のクラックの発生を防止することを目的として、詳細を後述する塩基性成分を含有する現像液を用いることを特徴としている。しかしながら、後述する塩基性成分を含有する現像液を用いると、先に述べたように分子間架橋させたアクリル系共重合体では、感度および解像性の低下が起こるため望ましくない。そのため、本発明で用いられるアクリル系共重合体では、分子間架橋を極力抑え、分子量および組成を最適化することにより、現像時のクラックが発生しにくい高感度なレジストとすることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に用いられるアクリル系共重合体は、構造中に含まれる(メタ)アクリル酸成分の含有量により極性が大きく変化する。すなわちアクリル系共重合体の極性は『共重合体中に含まれる(メタ)アクリル酸成分の割合』および『熱処理(プリベーク)による分子間架橋の程度』に大きく依存している。構造中に(メタ)アクリル酸を含有するアクリル系共重合体は、高温で処理することによりカルボン酸の脱水縮合が進行し、分子間架橋が生じるため、耐溶剤性を向上させるのに効果的ではあるが、後述するポジ型レジスト上に被覆されるネガ型レジストに対する溶解性も極性により大きく影響されるため、分子間架橋することにより極性が低下し、結果的に耐溶剤性が低下してしまう場合がある。
【0021】
これらの点を鑑み、本発明は、ポジ型レジストとして用いるアクリル系共重合体の、『共重合体中に含まれる(メタ)アクリル酸成分の割合』および『熱処理による分子間架橋の程度』を制御して、極性((メタ)アクリル酸成分の量)を調整することにより最適な状態でポジ型レジストとして使用するものである。
【0022】
本発明者等は、鋭意検討の結果、一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、さらに一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸成分を5〜30重量%含有し、さらに重量平均分子量(ポリスチレン換算)が、50000〜300000のアクリル系共重合体が特に好適に用いられることを見いだした。
【0023】
本発明に用いられる(メタ)アクリル酸エステルは、例えば下記[化3]および[化4]に記載のモノマーを用いたラジカル共重合等から生成可能である。
【0024】
【化3】

【0025】
(R1は水素および炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0026】
【化4】

【0027】
(R3は水素および炭素数1〜3のアルキル基である。)
インクジェットヘッドとして用いられるインク流路を形成するためのポジ型レジストとして重要な特性としては、「耐クラック性」および「現像液への溶解性(感度)」および「被覆レジスト耐性(解像性)」があり、それぞれの特性に対して効果的な条件が好適なものとなる。まず、本発明によるアクリル系共重合体の、「耐クラック性」は、後述する現像液の種類および分子間架橋の程度および後述するネガ型レジストの塗布溶媒に大きく影響を受ける。具体的には、後述する塩基性の極性現像液を用いた際に、クラックの低減効果が大きく、メチルイソブチルケトンやキシレンなどの非極性現像液に比べて本発明のポジ型レジストの現像時にクラックが発生しにくい。また、分子間架橋が進行すると、共重合体中で硬化収縮による応力が発生するため、ある程度の架橋が進んだ共重合体では、プリベーク後の冷却に伴う収縮により、あるいは現像時の急激な膨潤によりクラックが発生する場合がある。これは、後述するポジ型レジストを被覆するネガ型レジストの塗布溶媒によっても、同様に起こり得る現象であり、ネガ型レジストの塗布溶媒としてクラックを発生しない溶剤を選定することが必要である。
【0028】
次に、本発明によるアクリル系共重合体の、「現像液への溶解性(感度)」はポジ型レジストの極性と現像液の極性との関係が大きく影響する。具体的には高い極性のポジ型レジストに対して、極性の現像液を用いると溶解性が向上する。しかしながら、(メタ)アクリル酸成分の割合があまり多い場合には、樹脂としての極性が高くなりすぎるため、現像時に未露光部の膜減りが顕著となり、さらには、重合時の粘度が高くなり、合成が困難となるため、ポジ型レジストとしては適さない。本発明において後述する塩基性の極性現像液を用いた場合には、(メタ)アクリル酸成分の割合を5〜30%で、分子間架橋の進行を極力抑えた条件で用いることが好適である。また、分子量が低い場合には未露光部の溶解性が増加し、高い場合は感度が低下するため、ポジ型レジストの分子量としては50000〜300000で用いることが好適である。また、分子間架橋を抑えることは高温で長時間の熱処理させる必要がないためタクトが向上することにもなり好適である。
【0029】
非極性現像液を用いた場合には、ポジ型レジストの極性が低い条件である(メタ)アクリル酸成分の割合が5%未満または分子間架橋を進行させることで溶解性が向上するが、後述する被覆レジストへの耐性および耐クラック性で両立しないためインク流路用のポジ型レジストとしては適していない。
【0030】
次に、本発明によるアクリル系共重合体の「被覆レジスト耐性(解像性)」はポジ型レジストの極性と被覆するネガ型レジストの塗布溶媒の極性との関係が大きく影響する。具体的には高い極性を有するポジ型レジスト上に低い極性を有するネガ型レジストを被覆することによって、ポジ型レジストの溶解、変形を抑制し、目的の解像性を有するインク流路を形成することが可能となる。また、ポジ型レジストの溶解、変形をさせない条件として分子量を50000以上で用いることが好適である。被覆するために適したネガ型レジストについては、詳細を後述する。
【0031】
工程2:インク流路パターンの形成
ポジ型レジスト層2を形成後、引き続きポジ型レジスト層2の所定領域を、露光および現像過程からなるフォトリソ過程により除去し、インク流路パターンを形成する(図2)。まず、ポジ型レジスト層2に、インク流路パターンの描かれた石英マスクを通して、電離放射線を照射する。この際、電離放射線としては、本発明に使用される光崩壊性ポジ型レジストの感光波長域である250nm付近の波長域を含むものを使用する。これによりポジ型レジスト層2の、電離照射線を照射した領域にて主鎖分解反応が生じ、その領域の現像液に対する溶解性が選択的に向上する。したがって、このポジ型レジスト層2を現像することで、インク流路となる構造を形成することができる。
【0032】
現像液としては、溶解性の向上した露光部を溶解し、且つ未露光部を溶解しない溶剤であれば特に制限はないが、本発明においては現像時のクラックを防止し、先に述べたように、分子量の大小のみではなく、樹脂の極性に着目して高感度、高解像性を達成するものであることから、塩基性の現像液を用いることが好ましい。本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、(1)水と任意な割合で混合可能な炭素数6以上のグリコールエーテル、(2)含窒素塩基性有機溶剤、(3)水を含有する現像液が好適に用いられることを見いだした。例えば、X線リソグラフィーにおいてレジストとして用いられるPMMA用の現像液として、特公平3−10089号公報に開示されている組成の現像液を、本発明においても好適に用いることが可能である。それぞれの組成は任意に選択することが可能であり、特に(1)50%〜70%(2)20%〜30%残成分を(3)とした現像液を用いることが好ましい。
【0033】
工程3:ネガ型レジスト層の形成
次に、該インク流路パターンを形成するポジ型レジスト上に、インク流路壁を形成するためのネガ型レジスト層3を被覆する(図3)。ネガ型レジストとしては、カチオン重合・ラジカル重合などの反応を利用したものを使用できるが、これに限られるものではない。カチオン重合反応を利用したネガ型レジストを例にとると、ネガ型レジスト中に含まれる光カチオン重合開始剤から発生するカチオンにより、ネガ型レジスト中に含まれるカチオン重合可能なモノマーやポリマーの分子間での重合や架橋が進むことで硬化する。光カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩など、具体的には旭電化工業から上市されているSP−170、SP−150(以上、商品名)等が挙げられる。
【0034】
また、カチオン重合可能なモノマーやポリマーとしては、エポキシ基やビニルエーテル基やオキセタン基を有するものが適しているが、これに限られるものではない。一例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アロンオキセタンOXT−211(商品名、東亜合成株式会社製)、セロキサイド2021(商品名、ダイセル化学工業製)等の脂環式エポキシ樹脂、AOE(商品名、ダイセル化学工業製)等の直鎖アルキル基を有するモノエポキシド等を挙げることができる。さらに、特許第3143308号公報に記載の多官能性エポキシ樹脂、例えばEHPE−3150(商品名、ダイセル化学工業製)等は、非常に高いカチオン重合性を示し、かつ、硬化させると高い架橋密度を示し、これにより優れた強度を有する硬化物が得られるので特に好ましい。
【0035】
また、本発明においては、ネガ型レジストは、ポジ型レジストにより形成された流路パターン上に被覆して用いられるため、ポジ型レジストを溶解、変形させない塗布溶剤を選ぶ必要がある。本発明者等は、鋭意検討の結果、ネガ型レジストに用いられる塗布溶剤として、ポジ型レジストに相対する極性を持つメチルイソブチルケトンやキシレンを用いることが好適であることを見出した。
【0036】
また、塗布成膜時の膜均一性などの塗布性を向上させるために、ネガ型レジスト中にグリコール系の化合物を含ませることも好ましい。例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテルやトリエチレングリコールメチルエーテルなどの化合物が挙げられるが、これらにとらわれる必要はない。
【0037】
このようなネガ型レジストをスピンコート法、ダイレクトコート法、などの方法によって前記インク流路となる構造上に塗布することでネガ型レジスト層3を形成する。
【0038】
次いで、必要に応じて撥インク層4をネガ型レジスト層3上に形成する。この場合撥インク層4は、ネガ型レジストと同様に分子間架橋可能な感光性を有することが望ましい。また、ネガ型レジストと相溶しないことも重要である。なお、撥インク層4は、スピンコート法、ダイレクトコート法、ラミネート転写法等の方法で形成することができる。
【0039】
工程4:インク吐出口の形成
次に、ネガ型レジスト層の所定部分にインク吐出口を形成する(図4)。この工程では、インク吐出口となる部分を遮光して、インク吐出口となる部分以外の領域に光を照射することで、ネガ型レジストを硬化させる。この際、撥インク層4の樹脂も同時に硬化させ、その後現像することで、インク吐出口7を形成する。ネガ型レジスト層3と、撥インク層4の現像液としては、露光部が溶解せず、未露光部を完全に取り除くことができ、且つその下に配置されている光崩壊性ポジ型レジストを溶解しない現像液が最適であり、メチルイソブチルケトン、キシレン、あるいはメチルイソブチルケトン/キシレンの混合溶媒等が使用可能である。なお、光崩壊性ポジ型レジストを溶かさないことが重要である理由としては、一般的には、一枚の基板上に複数のヘッドが配置され、切断工程を経てインクジェットヘッドとして使用されるため、切断時のごみ対策として、インク流路パターンを形成するポジ型レジストを、切断工程後に溶解除去するのが望ましいためである。
【0040】
工程5:インク供給口およびインク流路の形成
次いで、基板1を貫通するインク供給口8を形成する(図5、6)。インク供給口8を形成する方法としては、異方性エッチングやドライエッチングなどが一般的に用いられるが、これに限られるものではない。一例として、特定の結晶方位を持ったSi基板を用いた異方性エッチングの方法について説明する。まず、基板1の裏面にインク供給口の大きさのスリット部だけを残してエッチングマスク6(例えば日立化成製HIMAL)を形成する(図5)。次いで、アルカリ系のエッチング溶液である水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の水溶液からなるエッチング液に、加温しながら浸漬させることで、スリット部から露出した部分の基板のみを異方性をもって溶解させることが可能であり、これによりインク供給口8を形成することができる(図6)。次いで、必要に応じてエッチングマスク6を取り除く。なお、この際、基板表面のネガ型レジスト層3および撥インク層4をエッチング液から保護する目的で、保護層5として、エッチング液耐性を有する樹脂(例えば東京応化製OBC)等を基板表面に形成しても良い。
【0041】
その後、インク流路パターンを形成するポジ型レジストを除去して、インク吐出口と連通するインク流路を形成する(図7)。この工程では、インク流路パターンを形成するポジ型レジスト上に電離放射線を照射し、ポジ型レジストの分解反応を起こすことで、除去液に対する溶解性を向上させる。電離放射線としては、ポジ型レジスト層2のパターニングの際に使用したものと同様のものが使用できる。ただし、本工程ではインク流路となる構造を除去してインク流路を形成することが目的であるため、電離照射線はマスクを介さずに全面に照射することができる。その後、ポジ型レジスト層2のパターニングの際に使用した現像液と同様のものを用いて、インク流路パターンを形成するポジ型レジストを完全に取り除くことが可能であるが、この工程では、パターニング性を考慮する必要がなく、ポジ型レジストを溶解可能で、ネガ型レジスト層および撥インク層に影響しない溶剤を用いることができる。以上の工程により、インクジェットヘッドを作成することができる。
【0042】
なお、本発明で述べたアクリル系共重合体を用いたインクジェットヘッドの製造方法は、吐出口形成領域にこの材料が使われるものであるならば、その形態に関係なく本発明に包含されるものである。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0044】
(実施例1)
本実施例においては、図1〜7で示すインクジェットヘッドの製造方法によって、インクジェットヘッドを製造した。まずインクを吐出させるためのエネルギー発生素子とドライバーやロジック回路が形成されたシリコン基板1を準備した。次いでこの基板1上に、光崩壊性ポジ型レジストからなるポジ型レジスト層2を形成した(図1)。なお、光崩壊性ポジ型レジストとしては、
・メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸(MAA)共重合体
・MMA/MAA=90/10(重量比)
・重量平均分子量=170000(ポリスチレン換算)
をジエチレングリコールジメチルエーテルに、25重量%の固形分濃度にて溶解したレジスト溶液を、スピンコート法によって塗布し、その後、ホットプレート上にて100℃の温度で3分間、引き続き窒素置換されたオーブンにて、150℃の温度で1時間のプリベークを行い、14μm膜厚のポジ型レジスト層2を形成した(図1)。IRを用いて樹脂中のメタクリル酸に含まれるカルボキシル基由来の水酸基量から同定したところ、分子間架橋に使用されたカルボキシル基は20%以下であった。
【0045】
次いで該ポジ型レジスト層2上に、ウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000(商品名)を用い、流路パターンの描かれたマスクを介して、50000mJ/cm2の露光量でDeep−UV光を照射した。その後、以下の組成の混合溶液を使用して現像し、
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:60vol%
モノエタノールアミン:5vol%
モルホリン:20vol%
イオン交換水:15vol%
引き続きイソプロピルアルコールを用いてリンス処理を行うことで、インク流路パターンを形成した(図2)。
【0046】
次いで、インク流路パターン上に、ネガ型レジストを被覆させた(図3)。ネガ型レジストとしては以下の組成のレジスト溶液を使用して、
・エポキシ樹脂:EHPE-3150(商品名、ダイセル化学工業社製):100重量部
・シランカップリング剤:A-187(商品名、日本ユニカー社製):5重量部
・光重合開始剤:SP170(商品名、旭電化工業社製): 2重量部
・添加剤:HFAB(商品名、セントラル硝子社製:20重量部
・溶剤:キシレン:80重量部
スピンコート法によって塗布し、ホットプレート上にて90℃の温度で3分間のプリベークを行い、20μm(平板上)のネガ型レジスト層3を形成した。さらに、ネガ型レジスト層3上に感光性を有する以下の組成の樹脂からなる撥インク層4をラミネート法により形成した。
・エポキシ樹脂:EHPE-3150(商品名、ダイセル化学工業社製):35重量部
・2、2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)ヘキサフロロプロパン:25重量部
・1、4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフロロイソプロピル)ベンゼン:25重量部
・3−(2−パーフルオロヘキシル)エトキシ−1、2−エポキシプロパン:16重量部
・シランカップリング剤:A-187(商品名、日本ユニカー社製):4重量部
・光重合開始剤:SP170(商品名、旭電化工業社製):1.5重量部
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル:200重量部
次いで、マスクアライナーMPA600FA(キヤノン製)を用い、インク吐出口のパターンが描かれたマスクを介して、300mJ/cm2の露光量にてパターン露光した。
【0047】
次いで、90℃で180秒のPEBを行い、メチルイソブチルケトン/キシレン=2/3溶液を用いて現像し、キシレンを用いてリンス処理を行うことで、インク吐出口7を形成した(図4)。
【0048】
次いで基板1の裏面にインク供給口8をエッチング処理により形成した。まず撥インク層4上に、保護層5としてOBC(商品名、東京応化製)を全面に塗布した。そして基板の裏面にポリエーテルアミド樹脂(日立化成製HIMAL(商品名))を用いてスリット状のエッチングマスク6を形成し(図5)、80℃のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液中に浸漬することでシリコン基板に対して異方性エッチングを行い、インク供給口8を形成した(図6)。なお、エッチングマスク6は基板を用意する際に、あらかじめ形成されていてもよい。
【0049】
次いで保護層5であるOBC(商品名)をキシレンにて除去した後、ウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000(商品名)を用いて撥インク層4上から70000mJ/cm2の露光量で全面に露光し、インク流路パターンを形成するポジ型レジストを可溶化した。そして乳酸メチル中に超音波を付与しつつ浸漬することで、インク流路パターンを除去し、図7に示すようなインクジェットヘッドを作成した。
【0050】
IRを用いて樹脂中のメタクリル酸に含まれるカルボキシル基由来の水酸基量から同定したところ、分子間架橋に使用されたカルボキシル基は20%以下であった。
上記の方法で作成したインクジェットヘッドでは、クラックおよびポジ型レジスト層2の溶解、変形は見られなかった。
さらに、上記の方法で作成したインクジェットヘッドをプリンターに搭載し、吐出及び記録評価を行ったところ、安定な印字が可能であり、得られた印字物は高品位なものであった。
【0051】
(実施例2)
ポジ型レジスト層2として、以下に示す樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェットヘッドを作成した。
・メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸(MAA)共重合体
・MMA/MAA=90/10(重量比)
・重量平均分子量=72000(ポリスチレン換算)
なお、実施例1と同様のIR測定において、分子間架橋に使用されたカルボキシル基は20%以下であった。
【0052】
上記の方法で作成したインクジェットヘッドでは、クラックおよびポジ型レジスト層2の溶解、変形は見られなかった。また、上記の方法で作成したインクジェットヘッドをプリンターに搭載し、吐出及び記録評価を行ったところ、安定な印字が可能であり、得られた印字物は高品位なものであった。
【0053】
(実施例3)
ポジ型レジスト層2として、以下に示す樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェットヘッドを作成した。
・メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸(MAA)共重合体
・MMA/MAA=90/10(重量比)
・重量平均分子量=220000(ポリスチレン換算)
なお、実施例1と同様のIR測定において、分子間架橋に使用されたカルボキシル基は20%以下であった。
【0054】
上記の方法で作成したインクジェットヘッドでは、クラックおよびポジ型レジスト層2の溶解、変形は見られなかった。また、上記の方法で作成したインクジェットヘッドをプリンターに搭載し、吐出及び記録評価を行ったところ、安定な印字が可能であり、得られた印字物は高品位なものであった。
【0055】
(実施例4)
ポジ型レジスト層2として、以下に示す樹脂を用い、パターニングの際の露光量を68000mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェットヘッドを作成した。
・メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸(MAA)共重合体
・MMA/MAA=93/7(重量比)
・重量平均分子量=170000(ポリスチレン換算)
なお、実施例1と同様のIR測定において、分子間架橋に使用されたカルボキシル基は20%以下であった。
【0056】
上記の方法で作成したインクジェットヘッドでは、クラックおよびポジ型レジスト層2の溶解、変形は見られなかった。また、上記の方法で作成したインクジェットヘッドをプリンターに搭載し、吐出及び記録評価を行ったところ、安定な印字が可能であり、得られた印字物は高品位なものであった。
【0057】
(実施例5)
ポジ型レジスト層2として、以下に示す樹脂を用い、パターニングの際の露光量を42000mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェットヘッドを作成した。
・メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸(MAA)共重合体
・MMA/MAA=85/15(重量比)
・重量平均分子量=170000(ポリスチレン換算)
なお、実施例1と同様のIR測定において、分子間架橋に使用されたカルボキシル基は20%以下であった。
【0058】
上記の方法で作成したインクジェットヘッドでは、クラックおよびポジ型レジスト層2の溶解、変形は見られなかった。また、上記の方法で作成したインクジェットヘッドをプリンターに搭載し、吐出及び記録評価を行ったところ、安定な印字が可能であり、得られた印字物は高品位なものであった。
【0059】
(実施例6)
ポジ型レジスト層2の現像液として、以下の組成の混合溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェットヘッドを作成した。
【0060】
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:55vol%
モノエタノールアミン:5vol%
モルホリン:20vol%
イオン交換水:20vol%
上記の方法で作成したインクジェットヘッドでは、クラックおよびポジ型レジスト層2の溶解、変形は見られなかった。また、上記の方法で作成したインクジェットヘッドをプリンターに搭載し、吐出及び記録評価を行ったところ、安定な印字が可能であり、得られた印字物は高品位なものであった。
【0061】
(比較例1)
ポジ型レジスト層のパターニングとして以下の組成の樹脂および工程を用いる以外は、実施例1と同様の工程においてインクジェットヘッドを作成した。
ポジ型レジスト層2を形成する光崩壊性ポジ型レジストとしては、ポリメチルイソプロペニルケトン(東京応化工業(株)社製ODUR-1010)を樹脂濃度を20wt%になるように調節し、スピンコート法によって塗布し、その後、ホットプレート上にて120℃の温度で3分間、引き続き窒素置換されたオーブンにて、150℃の温度で30分間のプリベークを行い、15μm膜厚のポジ型レジスト層2を形成した(図1)。次いで該ポジ型レジスト層2上に、ウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000(商品名)を用い、流路パターンの描かれたマスクを介して、Deep−UV光を照射した。その後、非極性溶剤であるメチルイソブチルケトン(MIBK)/キシレン(Xylene)=2/3溶液により現像し、キシレン(Xylene)を用いてリンス処理を行うことで、インク流路パターンを形成した(図2)。上記の方法で作成したインクジェットヘッドでは、クラックは見られなかったが、ポジ型レジスト層2の変形が少し確認された。
【0062】
(比較例2)
ポジ型レジスト層2を形成する工程について以下のように変更する以外は実施例1と同様の工程においてインクジェットヘッドを作成した。窒素置換されたオーブンにて、200℃の温度で1時間のプリベークを行うことで分子間架橋を進行させ、13μm膜厚のポジ型レジスト層2を形成した。IRを用いて樹脂中のメタクリル酸に含まれるカルボキシル基由来の水酸基量から同定したところ、分子間架橋に使用されたカルボキシル基は80%以上であった。上記の方法で作成したインクジェットヘッドでは、共にポジ型レジスト層の溶解、変形が少なかったが、感度が低下したためパターニングに65000mJ/cm^2以上の露光量を必要とした。
【0063】
(比較例3)
ポジ型レジスト層2として以下の組成の樹脂および工程を用いる以外は実施例1と同様の工程においてインクジェットヘッドを作成した。
・メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸(MAA)共重合体(MMA/MAA=97/3(重量比)、重量平均分子量=33000(ポリスチレン換算))
この樹脂粒子をシクロヘキサノンに約30重量%の固形分濃度にて溶解したレジスト溶液を、スピンコート法によって塗布し、その後、ホットプレート上にて120℃の温度で3分間のプリベークを行い、15μm膜厚のポジ型レジスト層2を形成した(図1)。IRを用いて樹脂中のメタクリル酸に含まれるカルボキシル基由来の水酸基量から同定したところ、分子間架橋に使用されたカルボキシル基は20%以下であった。次いで該ポジ型レジスト層2上に、ウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000(商品名)を用い、流路パターンの描かれたマスクを介して、Deep−UV光を照射した。その後、非極性溶剤であるメチルイソブチルケトン(MIBK)/キシレン(Xylene)=2/3溶液により現像し、キシレン(Xylene)を用いてリンス処理を行うことで、インク流路パターンを形成した(図2)。上記の方法で作成したインクジェットヘッドでは、ポジ型レジスト層の溶解、変形が見られなかったが、感度が低下したためパターニングに60000mJ/cm2以上の露光量を必要とし、現像時のクラックが発生した。
【0064】
(比較例4)
ポジ型レジスト層2を形成する工程について以下のように変更する以外は実施例1と同様の工程においてインクジェットヘッドを作成した。窒素置換されたオーブンにて、200℃の温度で1時間のプリベークを行うことで分子間架橋を進行させ、14μm膜厚のポジ型レジスト層2を形成した。IRを用いて樹脂中のメタクリル酸に含まれるカルボキシル基由来の水酸基量から同定したところ、分子間架橋に使用されたカルボキシル基は80%以上であった。次いで該ポジ型レジスト層2上に、ウシオ電機製Deep−UV露光装置UX−3000(商品名)を用い、流路パターンの描かれたマスクを介して、Deep−UV光を照射した。その後、非極性溶剤であるメチルイソブチルケトン(MIBK)/キシレン(Xylene)=2/3溶液により現像し、キシレン(Xylene)を用いてリンス処理を行うことで、インク流路パターンを形成した(図2)。上記の方法で作成したインクジェットヘッドでは、共にポジ型レジスト層の溶解、変形が少なかったが、感度が低下したためパターニングに65000mJ/cm2以上の露光量を必要とし、クラックの発生が見られた。
【0065】
(比較例5)
ポジ型レジスト層2として以下の組成の樹脂および工程を用いる以外は実施例1と同様の工程においてインクジェットヘッドを作成した。
・メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸(MAA)共重合体(MMA/MAA=97/3(重量比)、重量平均分子量=33000(ポリスチレン換算))
この樹脂粒子をシクロヘキサノンに約30重量%の固形分濃度にて溶解したレジスト溶液を、スピンコート法によって塗布し、その後、ホットプレート上にて120℃の温度で3分間のプリベークを行い、窒素置換されたオーブンにて、200℃の温度で1時間のプリベークを行うことで分子間架橋を進行させ、15μm膜厚のポジ型レジスト層2を形成した。IRを用いて樹脂中のメタクリル酸に含まれるカルボキシル基由来の水酸基量から同定したところ、分子間架橋に使用されたカルボキシル基は80%以上であった(図1)。上記の方法で作成したインクジェットヘッドでは、ポジ型レジスト層の溶解、変形が見られ、感度が低下したためパターニングに70000mJ/cm2以上の露光量を必要とした。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】基板上にポジ型レジスト層2を形成した状態を示す模式的断面図である。
【図2】ポジ型レジスト層2にインク流路となる構造を形成した状態を示す模式的断面図である。
【図3】ネガ型レジスト層および撥インク層を形成した状態を示す模式的断面図である。
【図4】インク吐出口を形成した状態を示す模式的断面図である。
【図5】保護層およびエッチングマスクを形成した状態を示す模式的断面図である。
【図6】インク供給口を形成した状態を示す模式的断面図である。
【図7】インク流路を形成したインクジェットヘッドの構造を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 基板
2 ポジ型レジスト層
3 ネガ型レジスト層
4 撥インク層
5 保護層
6 エッチングマスク
7 インク吐出口
8 インク供給口
9 インク流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吐出口と該吐出口に連通するインク流路と、該吐出口からインク滴を吐出するためのエネルギー発生素子を、少なくとも含むインクジェットヘッドの製造方法であって、
(1)エネルギー発生素子を有する基板に、光崩壊性ポジ型レジスト層を形成する工程と、
(2)該光崩壊性ポジ型レジスト層からインク流路となる構造を、露光および現像過程からなるフォトリソ過程により形成する工程と、
(3)該インク流路となる構造上にネガ型レジスト層を被覆させる工程と、
(4)該ネガ型レジスト層に、該インク流路となる構造に達するインク吐出口を形成する工程と、
(5)インク流路となる構造を除去することで、該インク吐出口と連通するインク流路を形成する工程と、
を有し、
前記光崩壊性ポジ型レジストが、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルから得られる単位を主成分とし、(メタ)アクリル酸から得られる単位を更に含むアクリル系共重合体組成物からなり、該アクリル系共重合体組成物には(メタ)アクリル酸単位が5〜30重量%の割合で含まれ、かつ該アクリル系共重合体の重量平均分子量が50000〜300000であることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステルが一般式(1)で示され、前記(メタ)アクリル酸が一般式(2)で示されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【化1】

(R1は水素および炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基であり、mは正の整数である。)
【化2】

(R3は水素および炭素数1〜3のアルキル基であり、nは正の整数である。)
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸エステルからなることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸が、メタクリル酸であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸エステルがメタクリル酸エステルからなり、さらに前記(メタ)アクリル酸がメタクリル酸であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記アクリル系共重合体組成物からなる光崩壊性ポジ型レジストを現像する工程(2)において、現像液としてアルカリ水溶液を用いることを特徴とする請求項1〜5記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記現像液として少なくとも、
(1)水と任意の割合で混合可能な炭素数6以上のグリコールエーテル、
(2)含窒素塩基性有機溶剤及び
(3)水
を含有する現像液を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記グリコールエーテルが、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記含窒素塩基性有機溶剤が、エタノールアミンおよびモルホリンの少なくとも1種であることを特徴とする請求項7〜8のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記インク流路となる構造上にネガ型レジスト層を被覆させる工程(3)において、被覆樹脂に用いられる溶剤がメチルイソブチルケトンおよび/またはキシレンを主成分とすることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10記載のインクジェットヘッドの製造方法により製造されたインクジェットヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−7675(P2006−7675A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190480(P2004−190480)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】