説明

インドール化合物

式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体(式(I)ここで、R1、R2およびR3は、本明細書で定義したとおりである)、かかる化合物の製造方法、かかる化合物を含む医薬組成物および医薬におけるかかる化合物の使用。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インドール化合物、それらの製造方法、それらを含有する医薬組成物、および医薬におけるそれらの使用、特に、EP1受容体でのPGE2の作用により媒介される状態の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
EP1受容体は、7回膜貫通型受容体であり、その天然リガンドは、プロスタグランジンPGE2である。PGE2は他のEP受容体(EP2型、EP3型およびEP4型)に対しても親和性を有する。EP1受容体は、平滑筋収縮、疼痛(特に、炎症性、神経因性および内臓性)、炎症、アレルギー活性、腎臓制御および胃粘液分泌または腸管粘液分泌に関与している。本発明者らは、この度、EP1受容体に対して高い親和性で結合する新規な化合物群を見出した。
【0003】
多くの論文が、プロスタノイド受容体の特徴付けおよび治療的関連性ならびに最も一般的に使用される選択的アゴニストおよびアンタゴニストについて記載している:非特許文献1および非特許文献2および非特許文献3。非特許文献4の論文は、プロスタグランジンE2(PGE2)が、マウスの脊髄において、EP1受容体サブタイプを介して異痛を発現し、EP2受容体およびEP3受容体を介して痛覚過敏を発現することを示唆している。さらにまた、非特許文献5の論文は、EP1ノックアウトマウスにおいて痛覚感受性反応が約50%減少することを示している。Anesthesia and Analgesiaからの2つの研究論文は、EP1受容体アンタゴニスト(ONO−8711)がラットの慢性狭窄損傷モデルにおいて痛覚過敏および異痛を減少させること(非特許文献6)、および同アンタゴニストが齧歯類の術後痛モデルにおいて機械的な痛覚過敏を阻害すること(非特許文献7)を示している。非特許文献8は、ヒトの過敏症モデルでの内臓痛の治療におけるEP1受容体アンタゴニストの効力を立証している。かくして、選択的プロスタグランジンリガンド、アゴニストまたはアンタゴニストに依存してプロスタグランジンE受容体サブタイプが考慮され、それらは、慣用の非ステロイド性抗炎症薬と同様の抗炎症性、抗発熱性および鎮痛性を有し、加えて、ホルモン誘発性子宮収縮を阻害し、抗癌効果を有する。これらの化合物は、広範囲なシクロオキシゲナーゼ阻害剤であるNSAIDの機序に基づく副作用のいくつかを誘発する能力を低下させる。特に、該化合物は、胃腸毒性を低下させる能力、腎副作用を減少させる能力、出血時間を減少させる効果およびアスピリン感受性喘息患者における喘息発作誘発を低下させる能力を有する。さらにまた、潜在的に有益なプロスタグランジン経路を割愛することにより、これらの剤は、NSAIDSおよび/またはCOX−2阻害剤よりも増強された効果を有することができる。
【0004】
非特許文献9における研究は、ラットにおけるPGE2誘発性の体温上昇が主にEP1受容体を介して媒介されることを示唆している。
【0005】
特許文献1(1996年3月7日)、特許文献2(1996年4月25日)、特許文献3(1997年1月8日)、特許文献4(2001年3月22日)、特許文献5(2003年10月16日)、特許文献6(2003年12月11日)、特許文献7(2004年5月13日)、特許文献8(2004年9月30日)、特許文献9(2005年4月28日)、特許文献10(2005年4月28日)、特許文献11(2005年4月28日)、特許文献12(2005年5月6日)、特許文献13(2005年6月16日)、特許文献14(2005年11月17日)、特許文献15(2006年6月29日)、特許文献16(2006年11月2日)、特許文献17(2006年11月2日)、特許文献18(2006年11月2日)には、プロスタグランジン媒介疾患の治療に有用な化合物が開示されている。
【0006】
非特許文献10には、ヒトEP1プロスタノイド受容体に対するリガンドとしての2,3−ジアリールチオフェン類が開示されている。非特許文献11には、EP1受容体アンタゴニストとしての2,3−ジアリールチオフェン類が開示されている。非特許文献12にはまた、選択的EP1受容体アンタゴニストとしての2,3−ジアリールチオフェンが開示されている。
【0007】
非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16、非特許文献17、非特許文献18、非特許文献19、非特許文献20は、EP1受容体アンタゴニスト化合物に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第96/06822号
【特許文献2】国際公開第96/11902号
【特許文献3】欧州特許出願公開第752421号明細書
【特許文献4】国際公開第01/19814号
【特許文献5】国際公開第03/084917号
【特許文献6】国際公開第03/101959号
【特許文献7】国際公開第2004/039753号
【特許文献8】国際公開第2004/083185号
【特許文献9】国際公開第2005/037786号
【特許文献10】国際公開第2005/037793号
【特許文献11】国際公開第2005/037794号
【特許文献12】国際公開第2005/040128号
【特許文献13】国際公開第2005/054191号
【特許文献14】国際公開第2005/108369号
【特許文献15】国際公開第2006/066968号
【特許文献16】国際公開第2006/114272号
【特許文献17】国際公開第2006/114274号
【特許文献18】国際公開第2006/114313号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Eicosanoids; From Biotechnology to Therapeutic Applications, Folco, Samuelsson, Maclouf, and Velo eds, Plenum Press, New York, 1996, chap. 14, 137-154
【非特許文献2】Journal of Lipid Mediators and Cell Signalling, 1996, 14, 83-87
【非特許文献3】Prostanoid Receptors, Structure, Properties and Function, S Narumiya et al, Physiological Reviews 1999, 79(4), 1193-126
【非特許文献4】The British Journal of Pharmacology, 1994, 112, 735-740
【非特許文献5】The Journal of Clinical Investigation, 2001, 107(3), 325
【非特許文献6】Anesthesia and Analgesia, 2001, 93, 1012-7
【非特許文献7】Anesthesia and Analgesia, 2001, 92, 233-238
【非特許文献8】S. Sarkar et al in Gastroenterology, 2003, 124(1), 18-25
【非特許文献9】The American Physiological Society (1994, 267, R289-R-294)
【非特許文献10】P. Lacombe et al (220th National Meeting of The American Chemical Society, Washington D.C., USA, 20-24 August, 2000)
【非特許文献11】Y. Ducharme et al (18th International Symposium on Medicinal Chemistry; Copenhagen, Denmark and Malmo, Sweden; 15th-19th August 2004)
【非特許文献12】Y. Ducharme et al, Biorg. Med. Chem. Lett., 2005, 15(4): 1155
【非特許文献13】S.C.McKeown et al, Bioorg. Med. Chem. Lett., 2007, 17, 1750
【非特許文献14】A. Hall et al, Bioorg. Med. Chem. Lett., 2007, 17, 1200
【非特許文献15】A. Hall et al, Bioorg. Med. Chem. Lett., 2007, 17, 916
【非特許文献16】A. Hall et al, Bioorg. Med. Chem. Lett., 2007, 17, 732
【非特許文献17】G.M.P. Giblin et al, Bioorg. Med. Chem. Lett., 2007, 17, 385-389
【非特許文献18】S.C.McKeown et al, Bioorg. Med. Chem. Lett., 2006, 16(18), 4767-4771
【非特許文献19】A. Hall et al, Bioorg. Med Chem. Lett., 2006, 16(14), 3657-3662
【非特許文献20】A. Hall et al, Bioorg. Med. Chem. Lett., 2006, 16(10), 2666-2671
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この度、新規なインドールおよびインダゾール誘導体群がEP1受容体でのPGE2の作用により媒介される状態の治療に有用であることを示すことが示唆される。かかる状態としては、疼痛、または炎症性障害、免疫障害、骨障害、神経変性性障害もしくは腎障害が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、式(I):
【化1】

[式中、
1は、−CF3、塩素または臭素を表し;
2は、式(i):
【化2】

で示される基を表し;
3は、イソブチル、−CH2−シクロプロピルまたはシクロペンチルを表し、
4は、−CO−NH−R5、−CO−モルホリニルまたは式(ii)〜(iii):
【化3】

で示される基を表し;
4aは、水素、−CH2OHまたは−CH2−NRabを表し;
5は、水素、ピリジル、モルホリニル、テトラヒドロピラニルまたは−CH2−テトラヒドロピラニルを表し;
aおよびRbは、独立して、水素またはC1-3アルキルを表すか、またはRaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になってピロリジニルまたはピペリジニル環を形成し;
YおよびZの一方は、CHを表し、他方はNを表す;
ただし、R2が式(i)で示される基を表し、R4が−CO−モルホリニルを表す場合、R3は、シクロペンチルを表す]
で示される化合物から選択される1種類またはそれ以上の化学物質またはそれらの誘導体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好適には、R1は、塩素を表す。
【0013】
式(I)で示される化合物としては、実施例1〜14の化合物およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0014】
本発明の特定の化合物としては、実施例5および8の化合物およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0015】
実施例の化合物には、EP3に対するよりもEP1に対する方が選択的であるものがある。実施例の化合物には、30倍よりも大きい選択性を有するものがある。
【0016】
式(I)で示される化合物の誘導体としては、式(I)で示される化合物の塩、溶媒和物(水和物を含む)、塩の溶媒和物(水和物を含む)、エステルおよび多形体が挙げられる。式(I)で示される化合物の誘導体は、医薬上許容される誘導体を包含する。
【0017】
本発明は、式(I)の全ての異性体およびそれらの医薬上許容される誘導体を包含し、全ての幾何異性体、互変異性体および光学異性体ならびにそれらの混合物(例えば、ラセミ混合物)を包含する。式(I)で示される化合物にさらなるキラル中心が存在する場合、本発明は、その範囲内に、全ての起こり得るジアステレオ異性体(それらの混合物を包含する)を包含する。異なる異性体形態は、慣用の方法により1つのものを他のものから分離または分割することができるか、または、慣用の合成法または立体特異的合成法もしくは不斉合成法により所定の異性体を得ることができる。
【0018】
本発明はまた、1個またはそれ以上の原子が、自然界にて通常見られる原子量または質量数とは異なる原子量または質量数を有する原子と置き換えられたこと以外は式(I)で示される化合物と同一である同位体標識化合物を含む。本発明の化合物に取り込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、ヨウ素および塩素の同位体が挙げられ、例えば、2H、3H、11C、14C、18F、35S、123Iおよび125Iが挙げられる。
【0019】
上記同位体および/または他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物および該化合物の医薬上許容される誘導体(例えば、塩)は本発明の範囲内である。本発明の同位体標識化合物、例えば、3Hおよび/または14Cのような放射性同位体が取り込まれているものは、薬物および/または基質組織分布アッセイに有用である。3Hおよび14Cは、それらの製造の容易さおよび検出能のために有用であると考えられる。11Cおよび18F同位体は、PET(陽電子放射型断層撮影)に有用であると考えられ、125I同位体は、SPECT(単一光子放射型コンピューター断層撮影)に有用であると考えられ、全て、脳画像診断に有用である。さらに、2Hのようなより重い同位体での置換は、大きい代謝安定性によりもたらされるある種の治療的利点、例えば、インビボ半減期の増加または必要用量の減少をもたらすことができ、故に、状況によっては有用であると考えられる。本発明の式(I)の同位体標識化合物は、一般に、同位体標識されていない試薬の代わりに容易に入手可能な同位体標識試薬を用いることによって下記スキームおよび/または下記実施例に記載されている方法を行うことにより製造され得る。
【0020】
他に指摘しない限り、本明細書では以下の定義を使用する。
【0021】
「医薬上許容される誘導体」なる用語は、式(I)で示される化合物の医薬上許容される塩、溶媒和物、エステル、または塩もしくはエステルの溶媒和物、または、受容者への投与後に(直接または間接的に)式(I)で示される化合物となり得る他の化合物を意味する。一の態様では、「医薬上許容される誘導体」なる用語は、医薬上許容される塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物を意味する。別の態様では、「医薬上許容される誘導体」なる用語は、医薬上許容される塩を意味する。
【0022】
当然のことながら、医薬用途について、上記誘導体は、医薬上許容される誘導体であるが、他の誘導体は、例えば式(I)で示される化合物およびその医薬上許容される誘導体の製造における使用を見出すことができる。
【0023】
医薬上許容される塩としては、Berge, Bighley and Monkhouse, J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19によって記載されているものが挙げられる。「医薬上許容される塩」なる用語は、無機塩基および有機塩基を包含する医薬上許容される塩基から製造される塩をいう。無機塩基から誘導される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛および同類のものが挙げられる。医薬上許容される有機塩基から誘導される塩としては、第一、第二および第三アミン;天然の置換アミンを包含する置換アミン;ならびに環状アミンの塩が挙げられる。特定の医薬上許容される有機塩基としては、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、トロメタモール)および同類のものが挙げられる。塩はまた、塩基性イオン交換樹脂、例えばポリアミン樹脂から形成することもできる。本発明の化合物が塩基性である場合、塩は、無機酸および有機酸を含む医薬上許容される酸から製造され得る。かかる酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、および同類のものが挙げられる。
【0024】
式(I)で示される化合物は、結晶形態または非結晶形態で製造することができ、水和化または溶媒和化されていてもよい。本発明は、その範囲に、化学量論的水和物、および可変量の水を含有する化合物を含む。
【0025】
好適な溶媒和物としては、水和物のような医薬上許容される溶媒和物が挙げられる。
【0026】
溶媒和物は、化学量論的溶媒和物および非化学量論的溶媒和物を含む。
【0027】
式(I)で示される化合物は、下記スキームおよび実施例に記載するように製造することができる。以下の方法は、本発明の別の態様を成す。
【0028】
4が−CO−NH−R5を表す式(I)で示される化合物は、下記スキーム1に示される一般的な経路により製造することができる:
【0029】
【化4】

ここで、R1、R3およびR5は、式(I)で示される化合物についての上記定義と同じである。
【0030】
工程(i)は、典型的には、式(II)で示される化合物を塩化チオニルで処理し、次いで、式NH2−R5で示される化合物で処理することを含む。別法として、工程(i)はまた、EDAC、HOBtおよび式NH2−R5で示される化合物の存在下で行うこともできる。
【0031】
当然のことながら、R4が−CO−モルホリニルを表す式(I)で示される化合物は、R4が−CO−NH−R5を表す化合物についてスキーム1に記載した方法と類似の方法で製造することができる。
【0032】
4が式(ii)で示される基を表し、R4aが水素を表す式(I)で示される化合物は、下記スキーム2に示される一般的な経路により製造することができる:
【0033】
【化5】

ここで、R1およびR3は、式(I)で示される化合物についての上記定義と同じである。
【0034】
工程(i)は、典型的には、例えば酸塩化物の形成(例えば、カルボン酸とオキシ塩化リンとの反応による)によるカルボン酸の活性化、次いで、式(III)で示される化合物との反応、次いで、適当な脱水剤(例えば、オキシ塩化リン)の存在下での脱水を含む。
【0035】
当然のことながら、R4が式(iii)で示される基を表す式(I)で示される化合物は、R4が式(ii)で示される基を表す化合物についてスキーム2に記載の方法と類似の方法で製造することができる。
【0036】
4が式(ii)で示される基を表し、R4aが−CH2OHまたは−CH2−NRabを表す式(I)で示される化合物は、下記スキーム3に示される一般的な経路によって製造することができる:
【0037】
【化6】

ここで、R1、R3、RaおよびRbは、上記定義と同じである。
【0038】
工程(i)は、典型的には、好適な溶媒(例えば、ジクロロメタン)中でEDACおよびHOBtの存在下にて式(II)で示される化合物を式(IV)で示される化合物と反応させることを含む。
【0039】
工程(ii)は、典型的には、例えば酢酸中で加熱することによる、式(V)で示される化合物の脱水を含む。
【0040】
工程(iii)は、典型的には、好適な還元剤(例えば、水素化アルミニウムリチウム)の存在下での還元反応を含む。
【0041】
工程(iv)は、典型的には、例えばDess Martin Periodinaneを使用する、酸化反応を含む。
【0042】
工程(v)は、典型的には、好適な溶媒(例えば、ジクロロメタン)中の好適な還元剤(例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)および好適な酸(例えば、酢酸)の存在下での式(VII)で示される化合物と式NHRabで示される化合物との反応を含む。
【0043】
式(IIA)で示される化合物は、下記スキーム4に示される一般的な経路により製造することができる:
【0044】
【化7】

ここで、R1およびR3は、上記定義と同じであり、L1およびL2は、各々、ハロゲン原子(例えば、臭素)のような好適な脱離基を表す。
【0045】
工程(i)は、典型的には、式(VIII)で示される化合物を塩化チオニルと反応させ、次いで、アンモニアと反応させることを含む。
【0046】
工程(ii)は、典型的には、好適な溶媒(例えば、エタノール)中で式(IX)で示される化合物を式(X)で示される化合物と反応させることを含む。
【0047】
工程(iii)は、典型的には、好適な溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)中で塩基(例えば、炭酸カリウム)の存在下にて式(XI)で示される化合物を式(XII)で示される化合物と反応させることを含む。
【0048】
工程(iv)は、典型的には、アルコール溶媒(例えば、メタノールまたはエタノール)中で式(XIII)で示される化合物を水酸化ナトリウム水溶液で処理することを含む。
【0049】
式(IIA)で示される化合物はまた、式(VII)で示される化合物を、式(IX)で示される化合物との反応の前に式(XI)で示される化合物と反応させる、スキーム4と類似の方法で製造することもできる。
【0050】
反応中間体および式(I)で示される化合物における置換基には、当業者に公知の慣用的な方法によって他の置換基に変換することができるものがある。かかる変換の例としては、エステルの加水分解およびカルボン酸のエステル化が挙げられる。かかる変換は、当業者に周知であり、例えば、Richard Larock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd edition, Wiley-VCH, ISBN 0-471-19031-4に記載されている。
【0051】
当業者にとっては当然のことながら、上記工程には、その工程中にある種の反応性置換基を保護することを必要とするものがある。当業者は、保護基が必要な場合を認識するであろう。Greene T.W. ‘Protective groups in organic synthesis’, New York, Wiley (1981)に記載されるもののような標準的な保護および脱保護技術を使用することができる。例えば、カルボン酸基は、エステルとして保護することができる。かかる基の脱保護は、当該技術分野で知られている慣用的な方法を使用して行われる。当然のことながら、保護基は、慣用的な手段によって相互変換することができる。
【0052】
式(III)、(IV)、(VIII)、(X)および(XII)で示される化合物は、商業的に入手可能であるか、または、公知の方法によって製造することができる。
【0053】
本発明の化合物は、EP1受容体と結合し、この受容体のアンタゴニストである。したがって、それらは、EP1受容体でのPGE2の作用によって媒介される状態の治療に有用であると考えられる。
【0054】
EP1受容体でのPGE2の作用によって媒介される一の状態は疼痛であり、急性痛、慢性痛、慢性関節痛、筋骨格痛、神経因性疼痛、炎症性疼痛、内臓痛、癌に伴う疼痛、片頭痛、緊張型頭痛および群発性頭痛に伴う疼痛、腸機能障害に伴う疼痛、腰部頸部痛、捻挫および筋挫傷に伴う疼痛、交感神経依存性疼痛;筋炎、インフルエンザまたは感冒のような他のウイルス感染症に伴う疼痛、リウマチ熱に伴う疼痛、心筋虚血に伴う疼痛、術後痛、頭痛、歯痛ならびに月経困難症が挙げられる。
【0055】
慢性関節痛状態としては、関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎および若年性関節炎が挙げられる。
【0056】
腸機能障害に伴う疼痛としては、非潰瘍性ディスペプシア、非心臓性胸痛および過敏性腸症候群が挙げられる。
【0057】
神経因性疼痛症候群としては、糖尿病性神経障害、坐骨神経痛、非特異的腰痛、多発性硬化症痛、線維筋痛症、HIV関連神経障害、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、および身体的外傷、切断、癌、トキシンまたは慢性炎症状態に起因する疼痛が挙げられる。加えて、神経因性疼痛状態としては、「しびれてピリピリとする感覚(pins and needles)」のような通常は無痛の感覚に伴う疼痛(知覚異常および異常感覚)、接触に対する感受性の増大(知覚過敏)、非侵害性刺激後の痛みの感覚(動的異痛症、静的異痛症、温熱性異痛症または冷感異痛症)、侵害性刺激に対する感受性の増大(温熱性痛覚過敏、冷感痛覚過敏、機械的痛覚過敏)、刺激除去後の断続的な痛みの感覚(痛感過敏)、または選択的感覚経路の欠如もしくは消失(痛覚鈍麻)が挙げられる。
【0058】
EP1受容体でのPGE2の作用によって媒介される他の状態としては、発熱、炎症、免疫疾患、血小板機能異常疾患(例えば、閉塞性血管疾患)、インポテンスまたは勃起不全;異常な骨代謝または骨吸収を特徴とする骨疾患;非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤の血行力学的副作用、心血管疾患;神経変性性疾患および神経変性、外傷後神経変性、耳鳴、オピオイド(例えば、モルヒネ)、CNS抑制薬(例えば、エタノール)、覚醒剤(例えば、コカイン)およびニコチンのような依存症誘発性薬剤による依存症;I型糖尿病の合併症、腎機能障害、肝機能障害(例えば、肝炎、肝硬変)、胃腸機能障害(例えば、下痢)、大腸癌、過活動性膀胱および切迫性尿失禁が挙げられる。
【0059】
炎症状態としては、皮膚状態(例えば、日焼け、火傷、湿疹、皮膚炎、乾癬)、眼病、例えば、緑内障、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、および眼組織への急性損傷(例えば、結膜炎)、炎症性肺障害(例えば、喘息、気管支炎、肺気腫、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、ハト愛好家病、農夫肺、慢性閉塞性肺疾患(COPD));胃腸管障害(例えば、アフタ性潰瘍、クローン病、アトピー性胃炎、疣状胃炎(gastritis varialoforme)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、限局性回腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、胃腸逆流症);臓器移植、ならびに血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、重症無筋力症、多発性硬化症、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、歯肉炎、心筋虚血、発熱、全身性紅斑性狼瘡、多発性筋炎、腱炎、滑液包炎およびシェーグレン症候群のような炎症性要素を有する他の症状が挙げられる。
【0060】
免疫疾患としては、自己免疫疾患、免疫不全疾患または臓器移植が挙げられる。式(I)で示される化合物はまた、HIV感染症の潜伏期を延長するのに効果的である。
【0061】
異常な骨代謝または骨吸収を特徴とする骨疾患としては、骨粗鬆症(特に、閉経後骨粗鬆症)、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進、骨パジェット病、骨溶解症、骨転移を伴うか伴わない悪性高カルシウム血症、関節リウマチ、歯周炎、変形性関節症、骨痛、骨減少症、癌性悪液質、結石症(calculosis)、結石症(lithiasis)(特に、尿路結石症)、固形癌、痛風および強直性脊椎炎、腱炎および滑液包炎が挙げられる。
【0062】
心血管疾患としては、高血圧または心筋虚血;機能性または器質性静脈不全;静脈瘤療法;痔;および動脈圧の著しい低下に伴うショック状態(例えば、敗血症性ショック)が挙げられる。
【0063】
神経変性性疾患としては、認知症、特に、変性認知症(老人性認知症、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびクロイツフェルト・ヤコブ病、ALS、運動ニューロン疾患を含む);血管性認知症(多発脳梗塞性認知症を含む);ならびに、頭蓋内占拠性病変、外傷、感染症および関連状態(HIV感染症を含む)、代謝、トキシン、無酸素症およびビタミン欠乏症に伴う認知症;ならびに加齢に伴う軽度認知機能障害、特に加齢に伴う記憶障害が挙げられる。
【0064】
式(I)で示される化合物はまた、神経保護の治療、ならびに、脳卒中、心停止、肺バイパス、外傷性脳障害、脊髄損傷または同類のもののような外傷後の神経変性の治療に有用であると考えられる。
【0065】
1型糖尿病の合併症としては、糖尿病性微小血管症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、黄斑変性症、緑内障、ネフローゼ症候群、再生不良性貧血、ブドウ膜炎、川崎病およびサルコイドーシスが挙げられる。
【0066】
腎機能障害としては、腎炎、特に、メサンギウム増殖性糸球体腎炎および腎炎症候群が挙げられる。
【0067】
式(I)で示される化合物はまた、利尿作用を有する薬物の調製に有用であると考えられる。
【0068】
治療への言及は、他に明示的に記載しない限り、確立された症状の治療および予防的治療の両方を包含すると解されるべきである。
【0069】
本発明のさらなる態様によると、本発明は、ヒトまたは獣医学において使用するための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体を提供する。
【0070】
本発明の別の態様によると、本発明は、EP1受容体でのPGE2の作用によって媒介される状態の治療に使用するための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体を提供する。
【0071】
本発明のさらなる態様によると、本発明は、EP1受容体でのPGE2の作用によって媒介される状態に苦しんでいるヒトまたは動物対象体を治療する方法であって、該対象体に式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0072】
本発明のさらなる態様によると、本発明は、疼痛、炎症障害、免疫障害、骨障害、神経変性性障害または腎障害に罹患しているヒトまたは動物対象体を治療する方法であって、該対象体に式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0073】
本発明のさらなる態様によると、本発明は、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛に苦しむヒトまたは動物対象体を治療する方法であって、該対象体に式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0074】
本発明の別の態様によると、本発明は、EP1受容体でのPGE2の作用によって媒介される状態の治療のための薬剤の製造のための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体の使用を提供する。
【0075】
本発明の別の態様によると、本発明は、疼痛、炎症性障害、免疫障害、骨障害、神経変性性障害または腎障害のような状態の治療または予防のための薬剤の製造のための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体の使用を提供する。
【0076】
本発明の別の態様によると、本発明は、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内蔵痛のような状態の治療または予防のための薬剤の製造のための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体の使用を提供する。
【0077】
式(I)で示される化合物およびそれらの医薬上許容される誘導体は、好都合には、医薬組成物の形態で投与される。かかる組成物は、好都合には、1種類またはそれ以上の生理学的に許容される担体または賦形剤と混合して慣用の方法で使用するために提供され得る。
【0078】
かくして、本発明の別の態様では、本発明は、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体を含む医薬組成物を提供する。
【0079】
式(I)で示される化合物またはそれらの医薬上許容される誘導体のヒトの治療のために提案される日用量は、1日あたり体重1kgにつき0.01〜80mg、特に、1日あたり体重1kgにつき0.01〜30mg、例えば、1日あたり体重1kgにつき0.1〜10mgであり、単回投与または分割投与として投与することができ、例えば、1日1〜4回投与することができる。成人のための投与量範囲は、一般に、8〜4000mg/日、特に、8〜2000mg/日、例えば、20〜1000mg/日、例えば、35〜200mg/日である。
【0080】
宿主(特に、ヒト患者)に投与される式(I)で示される化合物の正確な量は、主治医の責務であろう。しかしながら、使用される用量は、患者の年齢および性別、処置される正確な状態およびその重篤度ならびに投与経路を包含する多数のファクターに依存するであろう。
【0081】
式(I)で示される化合物およびそれらの医薬上許容される誘導体は、好適な方法での投与のために製剤化され得る。それらは、吸入による投与、または経口投与、局所投与、経皮投与もしくは非経口投与のために製剤化され得る。医薬組成物は、式(I)で示される化合物およびそれらの医薬上許容される誘導体の制御放出を行うことができるような形態であり得る。
【0082】
経口投与のためには、医薬組成物は、例えば、許容される賦形剤を用いて慣用の手段によって調製される、錠剤(舌下錠を含む)、カプセル剤、散剤、液剤、シロップ剤または懸濁剤の剤形をとり得る。
【0083】
経皮投与のためには、医薬組成物は、イオントフォレーシス経皮パッチ剤のような経皮パッチ剤の剤形で提供され得る。
【0084】
非経口投与のためには、医薬組成物は、注射または持続点滴(例えば、静脈内、血管内または皮下)として提供され得る。該組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションのような形態をとり得、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤のような処方剤を含有することができる。注射による投与のためには、これらは、単位投与形態または複数投与形態(好ましくは、保存剤を添加)をとり得る。別法として、非経口投与については、活性成分は、適当なビヒクルによる復元用の粉末形態であり得る。
【0085】
本発明の化合物はまた、デポー製剤としても製剤化され得る。かかる長期作用性製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉注射により投与され得る。かくして、例えば、本発明の化合物は、好適な高分子材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として、製剤化され得る。
【0086】
本発明で用いるためのEP1受容体化合物は、他の治療薬、例えば、COX−2(シクロオキシゲナーゼ−2)阻害剤、例えば、セレコキシブ、デラコキシブ(deracoxib)、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、COX−189または2−(4−エトキシ−フェニル)−3−(4−メタンスルホニル−フェニル)−ピラゾロ[1,5−b]ピリダジン(WO99/012930);5−リポキシゲナーゼ阻害剤;NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)、例えば、ジクロフェナク、インドメタシン、ナブメトンまたはイブプロフェン;ロイコトリエン受容体アンタゴニスト;DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬)、例えば、メトトレキサート;アデノシンA1受容体アゴニスト;ナトリウムチャネル遮断剤、例えば、ラモトリジン;NMDA(N−メチル−D−アスパルテート)受容体モジュレーター、例えば、グリシン受容体アンタゴニスト;電位依存性カルシウムチャネルのα2δ−サブユニットに対するリガンド、例えば、ガバペンチンおよびプレガバリン;三環系抗うつ剤、例えば、アミトリプチリン;ニューロン安定化抗癲癇薬;モノアミン作動性取り込み阻害剤、例えば、ベンラファキシン;オピオイド鎮痛剤;局所麻酔薬;5HT1アゴニスト、例えば、トリプタン、例えば、スマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、アルモトリプタンまたはリザトリプタン;ニコチン性アセチルコリン(nACh)受容体モジュレーター;グルタミン酸受容体モジュレーター、例えば、NR2Bサブタイプのモジュレーター;EP4受容体リガンド;EP2受容体リガンド;EP3受容体リガンド;EP4アゴニストおよびEP2アゴニスト;EP4アンタゴニスト;EP2アンタゴニストおよびEP3アンタゴニスト;カンナビノイド受容体リガンド;ブラジキニン受容体リガンド;バニロイド受容体リガンド;およびプリン受容体リガンド(P2X3、P2X2/3、P2X4、P2X7またはP2X4/7でのアンタゴニストを含む)と組み合わせて使用してもよい。該化合物を他の治療薬と組み合わせて使用する場合、化合物は、好都合な経路によって連続的または同時に投与すればよい。
【0087】
さらなるCOX−2阻害剤は、米国特許第5,474,995号、米国特許第5,633,272号;米国特許第5,466,823号、米国特許第6,310,099号および米国特許第6,291,523号;ならびにWO96/25405、WO97/38986、WO98/03484、WO97/14691、WO99/12930、WO00/26216、WO00/52008、WO00/38311、WO01/58881およびWO02/18374に開示されている。
【0088】
かくして、本発明は、さらなる態様において、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体をさらなる治療薬と一緒に含む組合せを提供する
【0089】
上記組合せは、好都合には、医薬製剤の形態で使用するために提供され得、かくして、上記定義の組合せを医薬上許容される担体または賦形剤と一緒に含む医薬製剤は、本発明のさらなる態様を構成する。かかる組合せの個々の成分は、別々のまたは合わせた医薬製剤で連続的にまたは同時に投与することができる。
【0090】
式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される誘導体を同じ病態に対して活性な別の治療薬と組み合わせて使用する場合には、個々の化合物の投与量は、該化合物が単独で使用される場合の投与量とは異なることがある。適当な投与量は、当業者にとって容易に理解されるであろう。
【0091】
本発明の化合物についての非毒物学的効果は、現在のところ観察されていない。
【0092】
本明細書にて引用した特許および特許出願を包含するがこれらに限定されない全ての刊行物は、個々の刊行物が十分に開示されているかの如く具体的かつ個別的に出典明示により本明細書の一部とすることが明示されているかのように出典明示により本明細書の一部とする。
【0093】
以下の非限定的な実施例は、本発明の医薬的に活性な化合物の製造を例示する。
【実施例】
【0094】
略語
固相抽出法(SPE);液体クロマトグラフィー/質量分析(LCMS、LC/MSおよびLC−MS);MDAP(Mass Directed Auto Preparation);NMR(核磁気共鳴);s、d、t、dd、m、b(一重線、二重線、三重線、二重の二重線、多重線、幅広);Ph、Me、Et、Pr、Bu、Bn(フェニル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ベンジル)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、h(時間)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール・水和物)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド・塩酸塩(EDCおよびEDAC)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、紫外線(UV)、室温(RT、rt)、保持時間(Rt)、分(min)、EtOAc(酢酸エチル)、Et2O(ジエチルエーテル)、MeCN(アセトニトリル)、EtOH(エタノール)、PhCH3およびPhMe(トルエン)。
【0095】
反応生成物の精製
実施例の反応物の後処理および生成物の精製のために本明細書では慣用的な技術を使用することができる。
【0096】
有機層または有機相の乾燥に関する下記実施例における言及は、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムにより溶液を乾燥させ、慣用的な技術に従って乾燥剤を濾去することをいう。生成物は、一般に、減圧下での蒸発によって溶媒を除去することによって得ることができる。
【0097】
実施例の精製は、クロマトグラフィーおよび/または適当な溶媒を使用する再結晶のような慣用的な方法によって行うことができる。クロマトグラフィー方法は、当業者に公知であり、例えば、カラムクロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、およびMDAP(質量依存型自動調製、質量依存型LCMS精製とも称される)が挙げられる。MDAPは、例えば、W. Goetzinger et al, Int. J. Mass Spectrom., 2004, 238, 153-162に記載されている。
【0098】
LCMS
実施例の製造の間、以下のLCMS条件を使用した。
ソフトウェア
Waters MassLynx version 4.0 SP2
カラム
使用したカラムは、Waters Atlantisであり、その寸法は、4.6mm×50mmである。固定相粒径は3mである。
溶媒
A: 水性溶媒=水+0.05%ギ酸
B: 有機溶媒=アセトニトリル+0.05%ギ酸
方法
使用した一般的な方法は5分の実行時間を有する。
【表1】

全ての保持時間は分で測定する。
【0099】
記載例1
5−クロロ−1H−インドール−3−カルボニルクロリド(D1)
【化8】

5−クロロ−1H−インドール−3−カルボン酸(2.50g、12.8mmol)および塩化チオニル(4.7ml、63.9mmol)の混合物をアルゴン雰囲気下にて60℃で30分間撹拌した。ピンク色のスラリーが得られた。冷却後、さらなる塩化チオニル(1.0ml、12.8mmol)を添加し、次いで、反応混合物を60℃に再加熱し、アルゴン雰囲気下にて1時間撹拌した。その後、反応混合物を冷却し、減圧下で濃縮して、5−クロロ−1H−インドール−3−カルボニルクロリドを得た。残留物は、さらなる精製をせずに次工程に直接使用した。
【0100】
記載例2
5−クロロ−1H−インドール−3−カルボキシアミド(D2)
【化9】

5−クロロ−1H−インドール−3−カルボニルクロリド(0.22g、1.01mmol;D1の記載に従って製造することができる)およびアンモニアの1,4−ジオキサン(0.5M、8.0ml、4.02mmol)中溶液をアルゴン雰囲気下にて室温で30分間撹拌した。その後、溶媒を減圧下にて蒸発させた。残留物をEtOAcとNaHCO3(飽和水溶液)との間で分配させた。有機物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、白色固体、5−クロロ−1H−インドール−3−カルボキシアミド(0.18g、92%)を得た。残留物は、さらなる精製をせずに次工程で使用した。
LCMS Rt=1.92分、[MH+]195。
【0101】
記載例3
2−(5−クロロ−1H−インドール−3−イル)−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸エチル(D3)
【化10】

5−クロロ−1H−インドール−3−カルボキシアミド(1.03g、5.30mmol;D2の記載に従って製造することができる)および3−ブロモ−2−オキソプロパン酸エチル(0.66ml、5.30mmol)のEtOH(11ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて80℃で最大16時間(一夜)撹拌した。反応物をLC−MSによってモニターした。その後、反応混合物を減圧濃縮した。残留物をEtOAcで希釈し、水(×2)で洗浄した。有機物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、茶色の固体を得た。残留物をEtOAcおよびヘキサンから再結晶して、2−(5−クロロ−1H−インドール−3−イル)−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸エチル(0.46g、30%)を得た。
LCMS Rt=3.00分、[M+H]291、293。
【0102】
記載例4
2−[5−クロロ−1−(シクロプロピルメチル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸エチル(D4)
【化11】

2−(5−クロロ−1H−インドール−3−イル)−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸エチル(0.060g、0.207mmol;D3の記載に従って製造することができる)および炭酸カリウム(0.057g、0.414mmol)の乾燥DMF(0.5ml)中混合物を室温で撹拌した。(ブロモメチル)シクロプロパン(80μl、0.828mmol)を添加し、反応混合物をアルゴン雰囲気下にて室温で17時間(一夜)撹拌した。反応物をLC−MSによってモニターした。その後、反応混合物をEtOAcで希釈し、水で洗浄した。有機物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、無色の油状物を得た。精製を要する場合には、カラムクロマトグラフィー処理[SiO2、ヘキサン:EtOAc(9:1〜2:3)]して、2−[5−クロロ−1−(シクロプロピルメチル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸エチル(58mg、82%)を得た。
LCMS Rt=3.61分、[MH+]345、347。
場合によっては、さらなる臭化アルキル(4当量)を添加し、さらに完了に向けて反応を進行させるために最大17時間(一夜)50℃に加熱することが必要であった。
【0103】
記載例5
2−(5−クロロ−1−シクロペンチル−1H−インドール−3−イル)−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸エチル(D5)
【化12】

D4に記載の方法と類似の方法を用いてD5を製造した。
LCMS Rt=3.90分、[MH+]359、361。
【0104】
記載例6
2−[5−クロロ−1−(シクロプロピルメチル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸(D6)
【化13】

2−[5−クロロ−1−(シクロプロピルメチル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸エチル(D4の記載に従って製造することができる)および2M水酸化ナトリウム(4.0当量)のEtOH(2.7ml)中溶液を90℃で30分間から18時間(一夜)撹拌した。反応をLC−MSによりモニターした。その後、反応混合物を室温に冷却させ、減圧濃縮した。残留物を水で希釈し、2M HClを用いてpH1に酸性化した。生成物をEtOAcで抽出した。合わせた有機物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。精製が必要な場合、Mass Directed Automated Purification(MDAP)を使用した。ヘキサンを用いて得られた残留物を粉砕して、白色の固体、2−[5−クロロ−1−(シクロプロピルメチル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸(26mg、48%)を得た。
LCMS Rt=3.01分、[M+H]317、319。
【0105】
記載例7
2−(5−クロロ−1−シクロペンチル−1H−インドール−3−イル)−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸(D7)
【化14】

D6に記載の方法と類似の方法を使用してD5からD7を製造した。
LCMS Rt=3.20分、[MH+]:331、333。
【0106】
記載例8
5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−カルボン酸2−メチルプロピル(D8)
【化15】

5−クロロインドール−3−カルボン酸(2.00g、10.26mmol)の乾燥DMF(35ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて室温で撹拌した。K2CO3(2.831g、20.52mmol)を添加した。該溶液に1−ブロモ−2−メチルプロパン(4.462ml、41.04mmol)を添加し、該溶液を一夜60℃に加熱した。該混合物を室温まで冷却し、次いで、EtOAc(約200ml)で希釈した。有機物をH2O(×3)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、ピンク色の固体を得た。残留物をクロマトグラフィー処理して[SiO2、ヘキサン:EtOAc 0〜25%]、生成物を得た(2.217g、収率70%)。
LCMS Rt=4.03分、[MH+]308、310。
【0107】
記載例9
5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−カルボン酸(D9)
【化16】

5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−カルボン酸2−メチルプロピル(2.217g、7.22mmol;D8の記載に従って製造することができる)のEtOH(10.0ml)中溶液を室温で撹拌した。NaOH(2M、10.0ml)を添加し、この段階で沈殿物が形成された。該混合物を約16時間(一夜)60℃に加熱した。その後、溶液を室温まで冷却し、溶媒を減圧除去した。2M HClを用いて溶液を酸性化し、有機物をEtOAc中に抽出した。合わせた有機物を水(×2)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、白色固体を得た(1.711g、収率95%)。
LCMS Rt=2.96分、[MH+]252、254。
【0108】
記載例10
5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−カルボニルクロリド(D10)
【化17】

5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−カルボン酸(1.711g、6.82mmol;D9の記載に従って製造することができる)のSOCl2(3.0ml)中溶液を1.5時間60℃に加熱した。その後、溶液を室温まで冷却し、該混合物を減圧濃縮した。残留物を精製せずに直接使用した。
【0109】
記載例11
5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−カルボキシアミド(D11)
【化18】

5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−カルボニルクロリド(6.82mmol;D10の記載に従って製造することができる)のNH4OH(4.0ml)中溶液を0℃で5分間撹拌した。溶媒を減圧除去して、薄茶色の固体を得た。残留物をさらなる精製をせずに使用した。
LCMS Rt=2.68分、[MH+]251、253。
【0110】
記載例12
2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸エチル(D12)
【化19】

5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−カルボキシアミド(1.705g、6.82mmol;D11の記載に従って製造することができる)のEtOH(15.0ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて60℃で約16時間(一夜)撹拌した。該溶液を室温まで冷却し、溶媒を減圧除去した。残留物をEtOAc(約200ml)とH2O(約100ml)との間で分配させた。有機物を水(2×100ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、茶色の油状物を得た。残留物をクロマトグラフィー処理して[SiO2、ヘキサン:EtOAc(3:1)]、生成物を得た(2.161g、収率92%)。
LCMS Et=3.77分、[MH+]347、349。
【0111】
記載例13
2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸(D13)
【化20】

2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸エチル(2.161g、6.82mmol;D12の記載に従って製造することができる)のEtOH(10.0ml)中溶液を室温で撹拌した。NaOH(2M、5.0ml)を添加し、該溶液を一夜60℃に加熱した。該溶液を室温まで冷却し、溶媒を減圧除去した。2M HClを用いて混合物を酸性化し、有機物をEtOAc中に抽出した。合わせた有機物をH2O(×2)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、黄色油状物を得た。
LCMS Rt=3.12分、[MH+]319、321。
【0112】
記載例14
2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボニルクロリド(D14)
【化21】

2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸(0.213g、0.67mmol;D13の記載に従って製造することができる)の溶液をアルゴン雰囲気下にて室温で撹拌した。SOCl2(1.5ml)を添加し、該溶液を室温で1.5時間撹拌した。次いで、溶液を1時間60℃に加熱した。その後、溶媒を減圧除去した。残留物を精製せずに直接使用した。
【0113】
記載例15
4−アミノ−3−[({2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−イル}カルボニル)アミノ]安息香酸メチル(D15)
【化22】

2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸(0.300g、0.94mmol;D13の記載に従って製造することができる)のDCM(3.1ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて室温で撹拌した。EDAC(0.215g、1.13mmol)を添加し、該溶液を5分間撹拌した。HOBt(0.173g、1.13mmol)を添加し、該溶液をさらに10分間撹拌した。3,4−ジアミン安息香酸メチル(0.188g、1.13mmol)を添加し、該溶液を室温で一夜撹拌した。溶液をDCM(約30ml)で希釈し、水(3×20ml)で洗浄した。有機物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、茶色の油状物を得た。残留物をクロマトグラフィー処理して[SiO2、ヘキサン:EtOAc 36〜56%]、純粋な生成物を得た(0.232g)。
LCMS Rt=3.48分、[MH+]467、469。
【0114】
記載例16
2−{2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチル(D16)
【化23】

4−アミノ−3−[({2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−イル}カルボニル)アミノ]安息香酸メチル(0.232g、0.5mmol;D15の記載に従って製造することができる)のAcOH(4.0ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて120℃で2.5時間撹拌した。該溶液を室温に冷却した。溶液をEtOAc(約50ml)で希釈し、水(3×50ml)で洗浄した。有機物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、黄色油状物を得た。
LCMS Rt=3.70分、[MH+]449、451。
【0115】
記載例17
2−{2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−カルボアルデヒド(D17)
【化24】

(2−{2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル)メタノール(0.200g、0.47mmol;E11の記載に従って製造することができる)の乾燥DCM(2.4ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて0℃で撹拌した。該冷却溶液にDess−Martin Periodinane(0.202g、0.47mmol)を添加した。混合物を0℃で3.25時間撹拌した。0℃にて該混合物にNa223(10%水溶液、11ml)およびNaHCO3(飽和水溶液、11ml)を添加した。該混合物を室温に加温した。有機物をDCM(×2)中に抽出した。合わせた有機物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、茶色の油状物を得た。
LCMS Rt=3.50分、[MH+]419、421。
【0116】
実施例1
2−[5−クロロ−1−(シクロプロピルメチル)−1H−インドール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1,3−オキサゾール−4−カルボキシアミド(E1)
【化25】

2−[5−クロロ−1−(シクロプロピルメチル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸(0.050g、0.158mmol;D6の記載に従って製造することができる)のDCM(0.6ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて室温で撹拌した。該撹拌溶液にN−エチルカルボジイミド・塩酸塩(EDAC)(0.036g、0.190mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(0.026g、0.190mmol)およびテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルアミン(0.020mg、0.190mmol)を添加した。反応混合物をアルゴン雰囲気下にて室温で1時間撹拌した。反応をLC−MSによりモニターした。反応混合物をアルゴン雰囲気下にて室温でさらに17時間(一夜)放置した。その後、該反応混合物にさらなるテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルアミン(1.2当量、0.020mg、0.190mmol)を添加した。該反応混合物を室温でさらに3時間撹拌した。その後、反応混合物を過剰のDCMで希釈し、NaHCO3(飽和水溶液)で洗浄した。有機層を水(3×10ml)で洗浄した。有機物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。精製が必要な場合、Mass Directed Automated Purification(MDAP)を使用した。ヘキサンを使用して得られた生成物を粉砕して、白色固体、2−[5−クロロ−1−(シクロプロピルメチル)−1H−インドール−3−イル]−N−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1,3−オキサゾール−4−カルボキシアミド(10mg、16%)を得た。
LCMS Rt=3.20分、[MH+]400、402。
【0117】
実施例2
2−[5−クロロ−1−(シクロプロピルメチル)−1H−インドール−3−イル]−N−4−モルホリニル−1,3−オキサゾール−4−カルボキシアミド(E2)
【化26】

E1に記載の方法と類似の方法を使用してE2を製造した。
LCMS Rt=2.95分、[MH+]400、402。
【0118】
実施例3〜4
2−(5−クロロ−1−シクロペンチル−1H−インドール−3−イル)−N−4−モルホリニル−1,3−オキサゾール−4−カルボキシアミドおよび5−クロロ−1−シクロペンチル−3−[4−(4−モルホリニルカルボニル)−1,3−オキサゾール−2−イル]−1H−インドール(E3、E4)
【化27】

2−(5−クロロ−1−シクロペンチル−1H−インドール−3−イル)−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸(0.060g、0.182mmol;D7の記載に従って製造することができる)のDCM(0.6ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて室温で撹拌した。該撹拌溶液にN−エチルカルボジイミド・塩酸塩(EDAC)(0.042g、0.218mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(0.030g、0.218mmol)および4−モルホリンアミン(0.021mo、0.218mmol)を添加した。反応混合物をアルゴン雰囲気下にて室温で1時間撹拌した。反応をLC−MSによりモニターした。反応混合物をアルゴン雰囲気下にて室温でさらに17時間(一夜)放置した。その後、該反応混合物にさらなる4−モルホリンアミン(1.2当量、0.021ml、0.218mmol)を添加した。該反応混合物を室温でさらに3時間撹拌した。その後、反応混合物を過剰のDCMで希釈し、NaHCO3(飽和水溶液)で洗浄した。有機層を水(3×10ml)で洗浄した。有機物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。Mass Directed Automated Purification、MDAPを使用して2つの生成物を分取した。ヘキサンを用いて得られた残留物を粉砕して、2種類の白色固体、2−(5−クロロ−1−シクロペンチル−1H−インドール−3−イル)−N−4−モルホリニル−1,3−オキサゾール−4−カルボキシアミド(11mg、15%)および5−クロロ−1−シクロペンチル−3−[4−(4−モルホリニルカルボニル)−1,3−オキサゾール−2−イル]−1H−インドール(7mg)を得た。
それぞれ、LCMS Rt=3.17分、[MH+]414、416およびLCMS Rt=3.42分、[MH+]400、402。
【0119】
実施例5
2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−N−3−ピリジニル−1,3−オキサゾール−4−カルボキシアミド(E5)
【化28】

2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボニルクロリド(0.038g、0.11mmol;D14の記載に従って製造することができる)の乾燥DCM(0.5ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて室温で撹拌した。Et3N(0.018ml、0.13mmol)を添加し、次いで、3−アミノピリジン(0.01g、0.13mmol)を添加した。該溶液を室温で1時間撹拌した。その後、該溶液に水を添加し、相分離カートリッジを使用して有機物を分取した。有機物を減圧濃縮した。MDAPを使用して粗生成物を精製して、純粋な生成物を得た(8mg)。
LCMS Rt=3.14分、[MH+]395、397。
【0120】
実施例6〜8(E6〜E8)
E5に記載の方法と類似の方法を使用して下記化合物を製造した:
【0121】
【表2】

【0122】
実施例9
2−{2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール・塩酸塩(E9)
【化29】

2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−カルボン酸(0.050g、0.16mmol;D13に記載に従って製造することができる)のPOCl3(1.0ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて室温で撹拌した。該溶液に1,2−フェニレンジアミン(0.017g、0.16mmol)を添加し、該溶液を約63時間(週末にかけて)120℃に加熱した。5M NaOHに該混合物を添加することによりPOCl3をクエンチした。有機物をEtOAc中に抽出し、水で洗浄した。有機物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。MDAPを用いて試料を精製し、次いで、Et2O中のHClで処理して、生成物を得た(0.017g)。
LCMS Rt=3.13分、[MH+]391、393。
【0123】
実施例10
2−{2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−イル}−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(E10)
【化30】

E9に記載の方法と類似の方法を使用してE10を製造した。
LCMS Rt=2.38分、[MH+]392、394。
【0124】
実施例11
(2−{2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル)メタノール(E11)
【化31】

2−{2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチル(0.200g、0.45mmol;D16の記載に従って製造することができる)のTHF(2.5ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて0℃で一夜のLiAlH4(THF中1M、0.27ml、0.27mmol)のTHF(2.0ml)中撹拌溶液に添加した。さらなるLiAlH4(THF中1M、0.27ml、0.27mmol)を添加し、該混合物を室温でさらに3時間撹拌した。H2O(数滴)を添加して混合物をクエンチした。有機物をEtOAc中に抽出し、水で洗浄した。有機物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、黄色油状物を得た。
LCMS Rt=2.73分、[MH+]421、423。
【0125】
実施例12
2−{2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−イル}−5−(1−ピペリジニルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール・二塩酸塩(E12)
【化32】

2−{2−[5−クロロ−1−(2−メチルプロピル)−1H−インドール−3−イル]−1,3−オキサゾール−4−イル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−カルボアルデヒド(0.030g、0.07mmol;D17の記載に従って製造することができる)の乾燥DCM(1.0ml)中溶液をアルゴン雰囲気下にて室温で撹拌した。該溶液にピペリジン(0.014ml、0.14mmol)を添加し、該溶液を室温で1.5時間撹拌した。その後、該溶液にNaBH(OAc)3(0.023g、0.11mmol)およびAcOH(0.01ml)を添加した。混合物を室温で一夜撹拌した。その後、該混合物に水(数滴)を添加した。溶媒を減圧除去し、MDAPを用いて残留物を精製した。純粋な生成物を2M HCl/Et2Oで処理した。
LCMS Rt=2.39分、[MH+]488。
【0126】
実施例13〜14
E12に記載の方法を使用して下記化合物を製造した:
【0127】
【表3−1】

【表3−2】

【0128】
本発明は、上記の特定のものおよび好ましいサブグループの全ての組合せに及ぶものと解すべきである。
【0129】
生物学的活性の測定のためのアッセイ
式(I)で示される化合物を、インビトロおよびインビボでそれらのプロスタノイドアンタゴニストまたはアゴニスト活性を示すためおよびそれらの選択性を示すために以下のアッセイを使用して試験することができる。研究することができるプロスタグランジン受容体は、DP、EP1、EP2、EP3、EP4、FP、IPおよびTPである。
【0130】
EP1およびEP3受容体での生物学的活性
化合物のEP1およびEP3受容体をアンタゴナイズする能力は、機能性カルシウム動員アッセイを使用して示すことができる。すなわち、化合物のアンタゴニスト特性は、それらの、天然アゴニストホルモンプロスタグランジンE2(PGE2)によるEP1またはEP3受容体の活性化に応答して細胞内カルシウム([Ca2+i)の動員を阻害する能力によって評価することができる。アンタゴニストの濃度の増大は、所定の濃度のPGE2が動員することができるカルシウムの量を減少させる。正味の効果は、PGE2濃度−効果曲線を高い濃度のPGE2にずらすことである。生産されたカルシウムの量は、カルシウム感受性蛍光染料、例えば、Fluo−4、AMおよび好適な装置、例えば、Fluorimetric Imaging Plate Reader(FLIPR)を使用して評価される。受容体活性化により生産される[Ca2+iの量の増加は、該染料により生産される蛍光の量が増加させ、シグナルの増加を引き起こす。該シグナルは、FLIPR装置を使用して検出することができ、得られたデータは、好適な曲線適合ソフトウェアを用いて解析することができる。
【0131】
ヒトEP1またはEP3カルシウム動員アッセイ(以下、「カルシウムアッセイ」という)は、EP1またはEP3のいずれかのcDNAを含有する安定な(pCIN;BioTechniques 20(1996): 102-110)ベクターが予めトランスフェクトされているチャイニーズ・ハムスター卵巣−K1(CHO−K1)細胞を利用する。10%v/vウシ胎仔血清、2mM L−グルタミン、0.25mg/mlゲネチシン、100μMフルルビプロフェンおよび10μg/mlプロマイシンを補足したDMEM:F−12のような培養培地を含有する適当なフラスコにて細胞を培養する。
【0132】
アッセイについては、Verseneのような細胞を取り出す独自に開発した試薬を用いて細胞を集める。384ウェルプレートへの導入のために細胞を適量の新鮮な培地に再び懸濁させる。37℃にて24時間インキュベートした後、該培地をFluo−4およびデタージェントであるプルロニックアシッド(pluronic acid)を含有する培地と置き換え、さらにインキュベーションを行う。次いで、濃度−効果曲線を作成するために、種々の濃度の化合物を該プレートに添加する。化合物のアゴニスト特性を評価するために、この操作をFLIPRで行ってもよい。次いで、化合物のアンタゴニスト特性を評価するために、種々の濃度のPGE2を該プレートに添加する。
【0133】
このようにして得られたデータをコンピュータ曲線適合ルーチンにより解析することができる。次いで、PGE2により誘発されるカルシウム動員の最大阻害の半分を惹起する化合物の濃度(pIC50)を推定することができる。
【0134】
ヒト・プロスタノイドEP1受容体についての結合アッセイ
3H]−PGE2を使用する競合アッセイ
放射性リガンド結合アッセイを使用して化合物の効力を決定する。このアッセイでは、化合物の効力を、それらの、ヒトEP1受容体への結合に関してトリチウム化プロスタグランジンE2([3H]−PGE2)と競合する能力により決定する。
【0135】
このアッセイは、EP1のcDNAを含有する安定なベクターが予めトランスフェクトされているチャイニーズ・ハムスター卵巣−K1(CHO−K1)細胞を利用する。10%v/vウシ胎仔血清、2mM L−グルタミン、0.25mg/mlゲネチシン、10μg/mlプロマイシンおよび10μMインドメタシンを補足したDMEM:F−12のような培養培地を含有する適当なフラスコにて細胞を培養する。
【0136】
1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(Na2EDTA)および10μMインドメタシンを含有するカルシウムおよびマグネシウム不含リン酸緩衝生理食塩水中にて5分間インキュベートすることにより培養フラスコから細胞を分離させる。250×gで5分間の遠心分離により細胞を単離し、50mM Tris、1mM Na2EDTA、140mM NaCl、10μMインドメタシン(pH7.4)のような氷冷バッファーに懸濁する。Polytron組織破壊器(フルセッティングで2×10sバースト)を使用して細胞をホモジナイズし、48,000×gで20分間遠心分離し、膜分画を含有するペレットを懸濁および48,000×gで20分間の遠心分離により3回(任意)洗浄する。最終膜ペレットを、10mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸、1mM Na2EDTA、10mM MgCl2(pH6)のようなアッセイバッファーに懸濁する。必要となるまで、アリコートを−80℃で冷凍する。
【0137】
結合アッセイのために、細胞膜、競合化合物および[3H]−PGE2(最終アッセイ濃度3nM)を最終容量100μlにて30℃で30分間インキュベートする。全ての試薬は、アッセイバッファー中にて調製する。反応は、Brandellセル・ハーベスターを使用してGF/Bフィルターを用いる急速真空濾過により停止する。該フィルターを氷冷アッセイバッファーで洗浄し、乾燥させ、フィルター上に保持されている放射能を、Packard TopCountシンチレーションカウンターにおいて液体シンチレーションカウンティングにより測定する。
【0138】
データは、特異的結合の50%阻害を生じる化合物の濃度(IC50)を決定するために非線形曲線適合法を使用して解析する。
【0139】
結果
ヒト・プロスタノイドEP1受容体についての結合アッセイで実施例1〜14の化合物を試験した。結果は、pIC50値として表される。pIC50は、IC50の負の対数10である。得られた結果は、多数の実験の平均である。実施例1〜5および7〜14の化合物は、≧6のpIC50値を有した。さらに詳しくは、実施例2〜3、5および7〜13の化合物は、≧6.5のpIC50値を示した。
【0140】
ヒトEP1カルシウム動員アッセイで実施例1〜14の化合物を試験した。結果は、機能的pKi値として表される。機能的pKiは、ヒトEP1カルシウム動員アッセイで決定されるアンタゴニスト解離定数の負の対数10である。得られた結果は、多数の実験の平均である。実施例2〜11の化合物は、≧6.0の機能的pKi値を示した。さらに詳しくは、実施例3、5〜9および11の化合物は、≧6.5の機能的pKi値を示した。実施例1および12〜14の化合物は、カルシウム動員アッセイでは不活性であった。
【0141】
この説明および特許請求の範囲が一部を構成する本願は、いずれの後願についても優先権の基礎として使用することができる。このような後願の特許請求の範囲は、本明細書に記載されているいずれもの特徴または特徴の組合せを対象とすることができる。それらは、生成物、組成物、方法または使用の発明の形態を取ることができ、例えば、特許請求の範囲を含むことができるが、これに限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
1は、−CF3、塩素または臭素を表し;
2は、式(i):
【化2】

で示される基を表し;
3は、イソブチル、−CH2−シクロプロピルまたはシクロペンチルを表し、
4は、−CO−NH−R5、−CO−モルホリニルまたは式(ii)〜(iii):
【化3】

で示される基を表し;
4aは、水素、−CH2OHまたは−CH2−NRabを表し;
5は、水素、ピリジル、モルホリニル、テトラヒドロピラニルまたは−CH2−テトラヒドロピラニルを表し;
aおよびRbは、独立して、水素またはC1-3アルキルを表すか、またはRaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になってピロリジニルまたはピペリジニル環を形成し;
YおよびZの一方はCHを表し、他方はNを表す;
ただし、R2が式(i)で示される基を表し、R4が−CO−モルホリニルを表す場合、R3は、シクロペンチルを表す]
で示される化合物またはその誘導体。
【請求項2】
実施例1〜14の化合物から選択される請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体。
【請求項3】
請求項1もしくは2記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体を医薬担体および/または賦形剤と一緒に含む医薬組成物。
【請求項4】
活性な治療物質として使用するための請求項1もしくは2記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体。
【請求項5】
EP1受容体でのPGE2の作用によって媒介される状態の治療に用いるための請求項1もしくは2記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体。
【請求項6】
EP1受容体でのPGE2の作用によって媒介される状態に苦しんでいるヒトまたは動物対象体の治療方法であって、該対象体に請求項1もしくは2記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体の有効量を投与することを含む方法。
【請求項7】
疼痛、または炎症性障害、免疫障害、骨障害、神経変性性障害もしくは腎障害に罹患しているヒトまたは動物対象体の治療方法であって、該対象体に請求項1もしくは2記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体の有効量を投与することを含む方法。
【請求項8】
炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛に苦しんでいるヒトまたは動物対象体の治療方法であって、該対象体に請求項1もしくは2記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体の有効量を投与することを含む方法。
【請求項9】
EP1受容体でのPGE2の作用によって媒介される状態の治療のための薬剤の製造のための請求項1もしくは2記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体の使用。
【請求項10】
疼痛、または炎症性障害、免疫障害、骨障害、神経変性性障害もしくは腎障害のような状態の治療または予防のための薬剤の製造のための請求項1もしくは2記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体の使用。
【請求項11】
炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛のような状態の治療または予防のための薬剤の製造のための請求項1もしくは2記載の化合物またはその医薬上許容される誘導体の使用。

【公表番号】特表2009−543838(P2009−543838A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519923(P2009−519923)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056946
【国際公開番号】WO2008/006795
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】