説明

ウエハ保持装置およびウエハ保持方法

【課題】ウエハの反りの状態に依らず、ウエハを保持することができるウエハ保持装置およびウエハ保持方法を提供すること。
【解決手段】ウエハ保持装置は、反りの生じているウエハ1を真空吸着して保持する。ウエハ保持装置は、ウエハ1を真空吸着して保持する吸着チャック11と、ウエハ1の反りを矯正して、反りの生じているウエハ1を平坦な状態に近づける矯正部21と、ウエハ1の外周部を保持する吸引ガード31と、を備える。吸引ガード31は、矯正部21の上方にウエハ1を保持する。また、吸引ガード31は、ウエハ1を支持した状態で下降し、ウエハ1を矯正部21に押し付ける。これにより、ウエハ1は平坦な状態に近づけられる。この状態で、矯正部21の下方に位置する吸着チャック11を上昇させる。吸着チャック11は、矯正部21の吸着チャック用開口部23内を上昇して、ウエハ1の吸着チャック用開口部23に露出する部分を吸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウエハ保持装置およびウエハ保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)からなるウエハに様々な処理を施す処理装置において、1枚1枚のウエハに対して処理を行う枚葉式の処理装置が多用されている。このような処理装置または該処理装置にウエハを搬送するウエハ搬送機構では、ウエハの中央部または外周部の一部を真空吸着することによって保持した後、ウエハに様々な処理を施したり、ウエハを搬送したりしている。
【0003】
ウエハ搬送機構によってウエハを搬送する際に、ウエハに大きな外力が加わることはない。このため、ウエハの外周部の一部を吸着して保持する構成や、ウエハを吸着せずに、ウエハの水平方向の位置ずれを防止するガイドのみを有する板状の保持部を備える構成などからなる、保持力の低いウエハ搬送機構も提案されている。
【0004】
それに対して、ウエハにレジストを回転塗布する処理などを行う処理装置では、ウエハを回転させる際に、ウエハに大きな遠心力が生じる。このような処理装置では、上述したウエハ搬送機構よりも高い保持力でウエハを保持する必要がある。この場合、例えば、ウエハを真空吸着して保持する治具(以下、吸着チャックとする)を備えるウエハ保持装置が用いられている。
【0005】
図6は、従来のウエハ保持装置の一部を示す説明図である。図6では、吸着チャックとウエハとの接触面を明確にするために、吸着チャックの部分を拡大して図示している(以下、図7においても同様)。図6に示すウエハ保持装置は、ウエハ101を真空吸着する吸着チャック111を備える。吸着チャック111のウエハ101を保持する側の面(以下、ウエハ保持面とする)には、真空引き可能な複数の溝(以下、吸着溝とする)112が設けられている。
【0006】
吸着チャック111の支持軸113の内部には、真空引き可能な通気用の孔114が設けられている。通気用の孔114は、吸着溝112に連結されている。また、通気用の孔114は、真空発生源(不図示)に接続されている。このようなウエハ保持装置では、吸着チャック111のウエハ保持面にウエハ101が載置されるとともに、真空発生源によって通気用の孔114を真空引きし、吸着溝112にウエハ101を真空吸着する。
【0007】
ウエハを真空吸着するウエハ保持装置として、ウエハを吸着固定するウエハ保持面を、半導体ウエハの反りに合わせた形状に加工して、半導体ウエハの反りを吸収する構造とすることにより、半導体ウエハの反りを矯正することなく、半導体ウエハを吸着固定できるようにする装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−210704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、発明者が鋭意研究を重ねた結果、次のような問題が発生することが判明した。従来のウエハ保持装置(図6参照)を用いて、おもて面側に凹状に反ったウエハ101を、おもて面を上にして吸着チャック111のウエハ保持面に載置した場合、吸着チャック111のウエハ保持面の中央部に設けられた吸着溝112にのみ、ウエハ101が吸着される。つまり、ウエハ101は、吸着チャック111のウエハ保持面の外周部に設けられた吸着溝112には接触しない。このため、吸着チャック111のウエハ保持面の外周部に、吸着溝112から気体が流入する箇所(リーク箇所)121ができてしまう。
【0010】
このような問題は、おもて面側に凸状に反ったウエハを、おもて面を上にして吸着チャック111のウエハ保持面に載置する場合にも同様に生じる。図7は、従来のウエハ保持装置の一部を示す説明図である。図7に示すように、おもて面側に凸状に反ったウエハ102は、吸着チャック111のウエハ保持面のほぼ全ての吸着溝112に接触しない。このため、吸着チャック111のウエハ保持面のほぼ全面に、リーク箇所122ができてしまう。
【0011】
つまり、吸着チャック111のウエハ保持面の一部または全面で吸着することができない程度にウエハ101,102が反っている、また、吸着チャック111の真空吸着力によって反りを矯正することができない程度にウエハ101,102が反っている場合、上述したようにリーク箇所121,122ができ、ウエハ101,102を真空吸着して保持することができないという問題が生じる。
【0012】
具体的には、ウエハ101,102の反りが3mm以下程度である場合、吸着チャック111による真空吸着力によってウエハの反りを矯正することができ、ウエハ101,102の反りが5mm以下程度である場合、吸着チャック111にウエハを真空吸着して保持することができることがわかっている。
【0013】
つまり、ウエハ101,102の反りが5mmを超える場合、吸着チャック111にウエハ101,102を真空吸着して保持することができない。このように、従来のウエハ保持装置(図6,7参照)では、ウエハ101,102の反りがウエハ保持装置によって吸着可能な反りの範囲を超えている場合、ウエハ101,102を真空吸着して保持することができない。
【0014】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、ウエハの反りの状態に依らず、ウエハを保持することができるウエハ保持装置およびウエハ保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、請求項1の発明にかかるウエハ保持装置は、ウエハを吸着して保持するウエハ保持装置であって、反りの生じている前記ウエハの外周部を保持する保持手段と、前記ウエハを平坦な状態に近づける矯正手段と、前記ウエハの中央部を吸着する吸着手段と、を備え、前記保持手段と前記矯正手段とを相対的に移動させた後、前記吸着手段によって前記ウエハの中央部を吸着することを特徴とする。
【0016】
また、請求項2の発明にかかるウエハ保持装置は、請求項1に記載の発明において、前記保持手段は、反りの生じている前記ウエハの外周部を支持した状態で該ウエハを吸引することで、該ウエハの外周部を保持することを特徴とする。
【0017】
また、請求項3の発明にかかるウエハ保持装置は、請求項1または2に記載の発明において、前記保持手段は、前記矯正手段の上方に前記ウエハを保持した後、該ウエハが前記矯正手段に接触するまで下降することを特徴とする。
【0018】
また、請求項4の発明にかかるウエハ保持装置は、請求項3に記載の発明において、前記保持手段は、前記矯正手段の上方に前記ウエハを保持した後、前記ウエハを吸引しながら下降することを特徴とする。
【0019】
また、請求項5の発明にかかるウエハ保持装置は、請求項3または4に記載の発明において、前記矯正手段の前記ウエハが接触する部分は平坦であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項6の発明にかかるウエハ保持装置は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の発明において、前記矯正手段は、前記吸着手段が通過する開口部を有することを特徴とする。
【0021】
また、請求項7の発明にかかるウエハ保持装置は、請求項6に記載の発明において、前記吸着手段は、前記矯正手段に接触した前記ウエハの、該矯正手段の前記開口部に露出する部分を吸着することを特徴とする。
【0022】
また、請求項8の発明にかかるウエハ保持装置は、請求項2〜7のいずれか一つに記載の発明において、前記矯正手段は、前記保持手段が前記ウエハを吸引するときに排気される空気が通う吸引管を有することを特徴とする。
【0023】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、請求項9の発明にかかるウエハ保持方法は、ウエハを吸着して保持するウエハ保持方法であって、反りの生じている前記ウエハを、平坦な面を有する部材の該平坦な面に対向する位置に載置する載置工程と、前記載置工程の後、前記ウエハの外周部を保持する保持工程と、前記保持工程によって外周部が保持された前記ウエハを、前記平坦な面に接触させる矯正工程と、前記平坦な面に接触した状態の前記ウエハの中央部を吸着する吸着工程と、を含むことを特徴とする。
【0024】
また、請求項10の発明にかかるウエハ保持方法は、請求項9に記載の発明において、前記載置工程では、前記ウエハを前記平坦な面の上方に載置し、前記矯正工程では、前記ウエハを下降させて、前記平坦な面に接触させることを特徴とする。
【0025】
また、請求項11の発明にかかるウエハ保持方法は、請求項9または10に記載の発明において、反りの生じている前記ウエハの外周部を支持した状態で該ウエハを吸引することを特徴とする。
【0026】
また、請求項12の発明にかかるウエハ保持方法は、請求項9〜11のいずれか一つに記載の発明において、前記矯正工程では、前記ウエハを吸引しながら下降させることを特徴とする。
【0027】
また、請求項13の発明にかかるウエハ保持方法は、請求項9〜12のいずれか一つに記載の発明において、前記吸着工程では、前記ウエハの前記平坦な面に接する側の面の中央部を吸着することを特徴とする。
【0028】
また、請求項14の発明にかかるウエハ保持方法は、請求項9〜13のいずれか一つに記載の発明において、前記吸着工程では、前記ウエハの、前記平坦な面を有する前記部材の開口部に露出する部分を吸着することを特徴とする。
【0029】
上述した請求項1〜9によれば、ウエハを吸引してウエハの外周部を保持する保持手段と、保持手段に保持されたウエハを平坦な状態に近づける矯正手段と、保持手段および矯正手段によって平坦な状態に近づけられたウエハを吸着する吸着手段と、を備える。吸着手段は、ウエハが平坦な状態に近づけられた後にウエハを吸着するため、吸着手段のウエハ保持面の外周部や全面に、リーク箇所(図6,7参照)ができることはない。したがって、従来よりも強い吸着力で、反っているウエハを吸着することができる。
【0030】
また、矯正手段には、吸着手段が上昇したときに吸着手段が通過する開口部(以下、吸着チャック用開口部とする)が設けられている。このため、吸着手段は、矯正手段および保持手段に保持された状態にあるウエハを、矯正手段および保持手段に保持されたままの状態で吸着することができる。このため、吸着手段がウエハを吸着するときに、平坦な状態に近づけられたウエハが元の反った状態に戻ることない。これにより、吸着手段は、平坦な状態に近づけられたウエハを吸着することができる。したがって、反っているウエハを吸着手段によって確実に吸着することができる。
【0031】
また、上述した請求項9〜14によれば、ウエハを吸引力によって保持した状態で保持手段を下降し、矯正手段(平坦な面を有する部材)の平坦な面に接触させる。このため、ウエハは、保持手段から外れることなく、矯正手段の平坦な面に接触される。これにより、反りの生じているウエハを、矯正手段の平坦な面に沿って平坦な状態に近づけることができる。また、ウエハを平坦な状態に近づけた後、吸着手段によって吸着する。このため、吸着手段のウエハ保持面の外周部や全面に、リーク箇所(図6,7参照)ができることはない。したがって、反っているウエハ1を強い吸着力で吸着することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかるウエハ保持装置およびウエハ保持方法によれば、ウエハの反りの状態に依らず、ウエハを保持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態にかかるウエハ保持装置の構成を示す説明図である。
【図2】実施の形態にかかるウエハ保持方法について示す説明図である。
【図3】実施の形態にかかるウエハ保持方法について示す説明図である。
【図4】実施の形態にかかるウエハ保持方法について示す説明図である。
【図5】実施の形態にかかるウエハ保持方法について示す説明図である。
【図6】従来のウエハ保持装置の一部を示す説明図である。
【図7】従来のウエハ保持装置の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるウエハ保持装置およびウエハ保持方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0035】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかるウエハ保持装置の構成を示す説明図である。図1に示すように、実施の形態にかかるウエハ保持装置は、ウエハ1を真空吸着して保持する。ここでは、おもて面側に凹状に反ったウエハ1の裏面を真空吸着して保持する場合について説明する。
【0036】
図1に示すように、ウエハ保持装置は、ウエハ1を真空吸着して保持する治具(吸着チャック)11と、ウエハ1の反りを矯正して、反りの生じているウエハ1を平坦な状態に近づける治具(矯正部)21と、ウエハ1の外周部を支持した状態でウエハ1を吸引して、ウエハ1の外周部を保持する治具(保持部:以下、吸引ガードとする)31と、を備える。ウエハ保持装置は、吸引ガード31と矯正部21とを相対的に移動させた後、吸着チャック11によってウエハの中央部を吸着する。ウエハ保持装置の各構成の動作については後述する。
【0037】
吸着チャック11は、吸引ガード31の内部に設けられている。また、吸着チャック11は、支持軸13によって昇降可能に設けられている。吸着チャック11は、例えば円形状の平面形状を有する。吸着チャック11の直径は、例えばウエハ1の直径よりも小さい。吸着チャック11のウエハ1を保持する側の面(ウエハ保持面)には、真空引き可能な複数の溝(吸着溝)12が設けられている。
【0038】
吸着チャック11の支持軸13の内部には、真空引き可能な通気用の孔14が設けられている。通気用の孔14は、全ての吸着溝12に連結されている。また、通気用の孔14は、例えば真空ポンプなどの真空発生源(不図示)に接続されている。真空発生源によって、吸着溝12および通気用の孔14が真空引きされる。
【0039】
矯正部21は、吸引ガード31の内部の、吸着チャック11の上方に設けられている。また、矯正部21は、支持軸22によって昇降可能に設けられている。矯正部21は、吸引ガード31に保持されたウエハ1に接触して、ウエハ1を平坦な状態に近づける。具体的には、矯正部21のウエハ1が接触する面は平坦となっている。この平坦な面に、吸引ガード31に保持された状態のウエハ1が接触して押し付けられることで、ウエハ1の反りが矯正される。
【0040】
矯正部21の支持軸22は、例えば吸着チャック11を囲む。また、矯正部21は、吸着チャック11のウエハ保持面に水平に設けられている。矯正部21は、板状の断面形状を有する。矯正部21の、吸着チャック11に対向する部分には、吸着チャック11が上昇したときに吸着チャック11が通過する開口部(吸着チャック用開口部)23が設けられている。吸着チャック用開口部23は、例えば矯正部21の中央部に設けられている。
【0041】
吸着チャック用開口部23の内径は、吸着チャック11が通過することができる大きさであればよい。例えば、吸着チャック用開口部23の内径は、吸着チャック11の内径よりも若干大きい内径を有する円形状の平面形状を有する。これにより、吸着チャック11が上昇したときに、矯正部21に接触したウエハ1の、矯正部21の吸着チャック用開口部23に露出する部分が吸着チャック11に吸着される。つまり、吸着チャック用開口部23は、ウエハ1の中央部が露出する程度に開口している。
【0042】
また、矯正部21には、吸引ガード31によってウエハ1が吸引され、吸引ガード31内部の排気が行われたときに排気される空気が通う複数の通気用の孔(以下、吸引管とする)24が設けられている。吸引管24は、吸着チャック用開口部23と離れて設けられている。また、吸引管24は、吸着チャック用開口部23を囲む円周状平面形状を有している。吸引管24は、吸着チャック用開口部23を選択的に囲む円弧形状の平面形状を有していてもよい。
【0043】
吸引ガード31は、筒状の支持軸32によって昇降可能に設けられている。吸引ガード31は、上面が開口し、側壁および底面を有する形状の本体部からなり、本体部の底面には排気口が設けられている。吸引ガード31の開口部33の直径は、ウエハ1の外周部がちょうど接する寸法となっている。例えば、吸引ガード31の開口部33の直径は、反りの生じているウエハ1の平面形状の直径とほぼ同じ寸法であってもよい。ここで、反りの生じているウエハ1の平面形状の直径とは、反りの生じていない状態のウエハ1の直径よりも、反りが生じている分だけ小さい直径である。
【0044】
吸引ガード31は、側壁の上端でウエハ1の外周部を保持する。具体的には、吸引ガード31は、側壁の上端にウエハ1が載置された後、ウエハ1の外周部を支持した状態で、ウエハ1を吸引する。これにより、ウエハ1に下向きの吸引力が働き、ウエハ1の外周端部は、吸引ガード31の側壁の上端に保持される。つまり、吸引ガード31は、ウエハ1によって開口部33が塞がれるように、ウエハ1の外周部を保持する。これにより、吸引ガード31の内部において、ウエハ1と吸着チャック21との間に、矯正部21が位置される状態となる。
【0045】
また、吸引ガード31は、矯正部21の上方にウエハ1を保持した後、矯正部21に接触するまで、ウエハ1を吸引しながら下降する。これにより、吸引ガード31に保持されたウエハ1は、矯正部21に接触した後も吸引ガード31から外れない。吸引ガード31によってウエハ1にかける吸引力は、吸引ガード31が保持するウエハ1が矯正部21に接触したときに、吸引ガード31から外れない程度の吸引力であればよい。
【0046】
吸引ガード31の支持軸32は、吸引ガード31の排気口に接続されている。つまり、吸引ガード31の支持軸32は、吸引ガード31の開口部33に対して反対側の底面に設けられている。吸引ガード31の支持軸32には、排気機構(不図示)が接続されている。排気機構によって、吸引ガード31の本体部の内部が、吸引ガード31の支持軸32を介して排気される。つまり、吸引ガード31および吸引ガード31の支持軸32によって、漏斗形状の吸引ガード31が構成されている。
【0047】
吸引ガード31の開口部33に段差部34を設けてもよい。段差部34を含む吸引ガード31の開口部33の直径は、反りの生じているウエハ1が平坦な状態に近づいたときの直径とほぼ同じ寸法を有する。このような段差部34を設けることで、反りの生じているウエハ1が平坦な状態に近づいたときに、吸引ガード31の、ウエハ1の外周部を保持する部分をふやすことができる。これにより、吸引ガード31によってウエハ1を安定して保持することができる。
【0048】
次に、図1に示すウエハ保持装置を用いたウエハの保持方法について説明する。図2〜5は、実施の形態にかかるウエハ保持方法について示す説明図である。まず、図1に示すように、おもて面側に凹状に反りの生じているウエハ1を、おもて面を上にして、吸引ガード31の開口部33に載置する(載置工程)。これにより、ウエハ1は、矯正部21の上方の、矯正部21の平坦な面に対向する位置に載置される。このとき、矯正部21は、吸着チャック11の上方に位置している。ウエハ1は、矯正部21に接していてもよいし、矯正部21から離れていてもよい。
【0049】
ついで、図2に示すように、排気機構(不図示)によって吸引ガード31内部の排気30を行う。吸引ガード31の排気口は、吸引ガード31の底面に設けられている。このため、ウエハ1と排気口の間には矯正部21が位置するが、矯正部21には吸引管24が設けられているため、吸引ガード31は、矯正部21の吸引管24を介してウエハ1を吸引することができる。これにより、ウエハ1に下向きの吸引力が働き、ウエハ1の外周端部は、吸引ガード31の側壁の上端に保持される。これにより、ウエハ1は吸引ガード31に固定される(保持工程)。
【0050】
ついで、ウエハ1を保持した状態で吸引ガード31を下降させ、ウエハ1を矯正部21に接触させる。つまり、吸引ガード31の位置を、第1の位置41から第2の位置42(図3参照)に移動する。図2において、符号40は、吸引ガード31の移動方向を示している(図4においても同様)。吸引ガード31の位置とは、吸引ガード31の上端の位置を示している(以下、吸着チャック11および矯正部21においても同様)。また、吸引ガード31を下降させると同時に、排気機構によって吸引ガード31内部の排気30を行う。
【0051】
これにより、図3に示すように、吸引ガード31の開口部33に吸引力によって保持されたウエハ1の裏面側が矯正部21の平坦な面に接触し、ウエハ1が矯正部21に押し付けられる。したがって、ウエハ1の反りは、矯正部21の平坦な面に沿って矯正され、ウエハ1は平坦な状態に近づけられる。つまり、ウエハ1は、吸引ガード31に載置される前の状態よりも平坦な状態となる(矯正工程)。
【0052】
矯正工程では、ウエハ1の反りが吸着チャック11によって吸着可能な例えば1mm以下となるように、ウエハ1の反りを矯正するのがよい。ここで、ウエハ1の、吸着チャック11によって吸着される部分のみが、吸着チャック11によって吸着可能な程度に平坦な状態になっていればよい。
【0053】
ついで、矯正部21の第3の位置51よりも下方に位置する吸着チャック11を上昇させる。吸着チャック11は、矯正部21の吸着チャック用開口部23の内部を移動し、第4の位置61から、矯正部21の第3の位置51まで上昇して、第5の位置62に移動する。つまり、吸着チャック11の第5の位置62は、矯正部21の第3の位置51とほぼ同様となる。図3において、符号60は、吸着チャック11の移動方向を示している。
【0054】
これにより、図4に示すように、吸着チャック11は、ウエハ1の裏面の、矯正部21の吸着チャック用開口部23に露出する部分に接触する。ウエハ1は矯正工程によって平坦な状態に近づいているため、吸着チャック11の全ての吸着溝12(図1参照)は、ウエハ1によって塞がれた状態となる。
【0055】
ついで、真空発生手段(不図示)によって、吸着チャック11の支持軸13に設けられた通気用の孔14(図1参照)を介して、吸着チャック11の複数の吸着溝12を真空引きする。これにより、ウエハ1の裏面が吸着チャック11の吸着溝12に吸着する(吸着工程)。上述したように、ウエハ1は吸着チャック11の全ての吸着溝12に接しているため、吸着チャック11の全ての吸着溝12に確実に吸着される。
【0056】
ついで、吸引ガード31を下降させ、吸引ガード31の位置を、第2の位置42から第6の位置43(図5参照)に移動する。同時に、矯正部21を下降させ、矯正部21の位置を、第3の位置51から第7の位置52(図5参照)に移動する。図4において、符号50は、矯正部21の移動方向を示している。これにより、吸引ガード31および矯正部21がウエハ1から離れ、ウエハ1は、吸着チャック11のみで保持される。このとき、吸着チャック11は、吸引ガード31および矯正部21に保持されたままの状態のウエハ1を吸着する。
【0057】
以上、説明したように、実施の形態のウエハ保持装置によれば、ウエハ1の外周部を保持する吸引ガード31と、吸引ガード31に保持されたウエハ1を平坦な状態に近づける矯正部21と、吸引ガード31および矯正部21によって平坦な状態に近づけられたウエハを吸着する吸着チャック11と、を備える。吸着チャック11は、ウエハ1が平坦な状態に近づけられた後にウエハ1を吸着するため、吸着チャック11のウエハ保持面の外周部に、リーク箇所(図6参照)ができることはない。したがって、従来よりも強い吸着力で、反っているウエハ1を吸着することができる。
【0058】
また、矯正部21には、吸着チャック11が通過する吸着チャック用開口部23が設けられている。このため、吸着チャック11は、矯正部21および吸引ガード31に保持された状態にあるウエハ1を、矯正部21および吸引ガード31に保持されたままの状態で吸着することができる。このため、吸着チャック11がウエハ1を吸着するときに、平坦な状態に近づけられたウエハ1が元の反った状態に戻ることない。これにより、吸着チャック11は、平坦な状態に近づけられたウエハを吸着することができる。したがって、反っているウエハ1を吸着チャック11によって確実に吸着することができる。
【0059】
また、実施の形態のウエハ保持方法によれば、ウエハ1を吸引力によって保持した状態で吸引ガード31を下降し、矯正部21の平坦な面に接触させる。このため、ウエハ1は、吸引ガード31から外れることなく、矯正部21の平坦な面に接触される。これにより、反りの生じているウエハ1を、矯正部21の平坦な面に対応した平坦な状態に近づけることができる。また、ウエハを平坦な状態に近づけた後、吸着チャック11によって吸着する。このため、吸着チャック11のウエハ保持面の外周部に、リーク箇所(図6参照)ができることはない。したがって、反っているウエハ1を強い吸着力で吸着することができる。
【0060】
上述したように、ウエハ1の反りの状態に依らず、ウエハ1を吸着チャック11によって確実に吸着して保持することができる。このため、従来の自動搬送機構などを用いて処理を施すことができない程度に反っていたウエハも、本発明のウエハ保持装置に吸着して保持することができる。これにより、高い保持力を必要とする例えばレジストを回転塗布する処理なども、本発明のウエハ保持装置およびウエハ保持方法を用いて行うことができる。
【0061】
以上において本発明では、おもて面側に凹状に反ったウエハを用いて説明したが、上述した実施の形態に限らず、おもて面側に凸状に反ったウエハの裏面を吸着する場合にも適用することが可能である。この場合、吸着チャックのウエハ保持面のほぼ全面に、リーク箇所ができるのを防止する。また、平坦なウエハに適用してもよい。また、矯正部および吸着チャックの形状は一例であり、吸着チャックに吸着する前にウエハの反りを矯正して平坦な状態に近づけることができる構成であれば、他の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明にかかるウエハ保持装置およびウエハ保持方法は、ウエハを保持した後、ウエハに様々な処理を施したり、ウエハを搬送したりする際に有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 ウエハ
11 吸着チャック
12 吸着溝
13 吸着チャックの支持軸
21 矯正部
22 矯正部の支持軸
23 吸着チャック用開口部
24 吸引管
31 吸引ガード
32 吸引ガードの支持軸
33 吸引ガードの開口部
34 吸引ガードの段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを吸着して保持するウエハ保持装置であって、
反りの生じている前記ウエハの外周部を保持する保持手段と、
前記ウエハを平坦な状態に近づける矯正手段と、
前記ウエハの中央部を吸着する吸着手段と、
を備え、
前記保持手段と前記矯正手段とを相対的に移動させた後、前記吸着手段によって前記ウエハの中央部を吸着することを特徴とするウエハ保持装置。
【請求項2】
前記保持手段は、反りの生じている前記ウエハの外周部を支持した状態で該ウエハを吸引することで、該ウエハの外周部を保持することを特徴とする請求項1に記載のウエハ保持装置。
【請求項3】
前記保持手段は、前記矯正手段の上方に前記ウエハを保持した後、該ウエハが前記矯正手段に接触するまで下降することを特徴とする請求項1または2に記載のウエハ保持装置。
【請求項4】
前記保持手段は、前記矯正手段の上方に前記ウエハを保持した後、該ウエハを吸引しながら下降することを特徴とする請求項3に記載のウエハ保持装置。
【請求項5】
前記矯正手段の前記ウエハが接触する部分は平坦であることを特徴とする請求項3または4に記載のウエハ保持装置。
【請求項6】
前記矯正手段は、前記吸着手段が通過する開口部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のウエハ保持装置。
【請求項7】
前記吸着手段は、前記矯正手段に接触した前記ウエハの、該矯正手段の前記開口部に露出する部分を吸着することを特徴とする請求項6に記載のウエハ保持装置。
【請求項8】
前記矯正手段は、前記保持手段が前記ウエハを吸引するときに排気される空気が通う通気用の孔を有することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一つに記載のウエハ保持装置。
【請求項9】
ウエハを吸着して保持するウエハ保持方法であって、
反りの生じている前記ウエハを、平坦な面を有する部材の該平坦な面に対向する位置に載置する載置工程と、
前記載置工程の後、前記ウエハの外周部を保持する保持工程と、
前記保持工程によって外周部が保持された前記ウエハを、前記平坦な面に接触させる矯正工程と、
前記平坦な面に接触した状態の前記ウエハの中央部を吸着する吸着工程と、
を含むことを特徴とするウエハ保持方法。
【請求項10】
前記載置工程では、前記ウエハを前記平坦な面の上方に載置し、
前記矯正工程では、前記ウエハを下降させて、前記平坦な面に接触させることを特徴とする請求項9に記載のウエハ保持方法。
【請求項11】
前記保持工程では、反りの生じている前記ウエハの外周部を支持した状態で該ウエハを吸引することを特徴とする請求項9または10に記載のウエハ保持方法。
【請求項12】
前記矯正工程では、前記ウエハを吸引しながら下降させることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一つに記載のウエハ保持方法。
【請求項13】
前記吸着工程では、前記ウエハの前記平坦な面に接する側の面の中央部を吸着することを特徴とする請求項9〜12のいずれか一つに記載のウエハ保持方法。
【請求項14】
前記吸着工程では、前記ウエハの、前記平坦な面を有する前記部材の開口部に露出する部分を吸着することを特徴とする請求項9〜13のいずれか一つに記載のウエハ保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−119464(P2012−119464A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267271(P2010−267271)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】