説明

ウエーハの洗浄方法

【課題】ウエーハの表面を短時間で確実に洗浄することができるウエーハの洗浄方法を提供する。
【解決手段】スピンナーテーブルに保持されたウエーハの表面に洗浄水噴射ノズルから洗浄水を噴射してウエーハの表面を洗浄するウエーハの洗浄方法であって、スピンナーテーブルに保持されたウエーハの回転中心に洗浄水噴射ノズルを位置付ける噴射ノズル位置付け工程と、スピンナーテーブルを回転させ洗浄水噴射ノズルから洗浄水を噴射しつつ洗浄水噴射ノズルをウエーハの回転中心から外周に向けて移動せしめる洗浄工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等のウエーハの表面を洗浄するためのウエーハの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には周知の如く、半導体デバイス製造工程においては、シリコン等の半導体基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された積層体によって複数のIC、LSI等のデバイスをマトリックス状に形成した半導体ウエーハが形成される。このように形成された半導体ウエーハは上記デバイスがストリートと呼ばれる分割予定ラインによって区画されており、このストリートに沿って切断することによって個々のデバイスを製造している。また、サファイア基板等の表面に格子状に形成されたストリートによって複数の領域が区画され、この区画された領域に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスが形成された光デバイスウエーハは、ストリートに沿って個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
このような半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハ等の被加工物に形成されたストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている。
【0004】
レーザー加工は切削加工に比して加工速度を速くすることができるとともに、サファイアのように硬度の高い素材からなるウエーハであっても比較的容易に加工することができる。しかしながら、ウエーハのストリートに沿ってレーザー光線を照射すると、照射された領域に熱エネルギーが集中してデブリが発生し、このデブリがデバイスの表面に付着してデバイスの品質を低下させるという新たな問題が生じる。
【0005】
上記デブリによる問題を解消するために、ウエーハの表面にポリビニールアルコール等の保護膜を被覆し、保護膜を通してウエーハにレーザー光線を照射するようにしたレーザー加工機が提案されている。このレーザー加工機に装備されている保護膜被覆装置は、スピンナーテーブルにウエーハを吸引保持し、スピンナーテーブルを回転しつつウエーハの中心部にポリビニールアルコール等の液状樹脂を供給してスピンコーティングする。そして、保護膜が被覆されたウエーハに保護膜を通して全てのストリートに沿ってレーザー光線を照射した後、スピンナーテーブルにウエーハを吸引保持し、スピンナーテーブルを回転しつつ洗浄水噴射ノズルから洗浄水をウエーハの表面に噴射してウエーハの表面から保護膜を除去する。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−322168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、上記特許文献1の保護膜被覆装置においては、保護膜が被覆されたウエーハを加工後に洗浄する場合、ウエーハの表面から保護膜を完全に除去するためには洗浄水噴射ノズルをウエーハの直径方向に数回往復しなければならず生産性が悪いとともに洗浄水の使用量が多くなり不経済であるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ウエーハの表面を短時間で確実に洗浄することができるウエーハの洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、スピンナーテーブルに保持されたウエーハの表面に洗浄水噴射ノズルから洗浄水を噴射してウエーハの表面を洗浄するウエーハの洗浄方法であって、
スピンナーテーブルに保持されたウエーハの回転中心に洗浄水噴射ノズルを位置付ける噴射ノズル位置付け工程と、
スピンナーテーブルを回転させ洗浄水噴射ノズルから洗浄水を噴射しつつ洗浄水噴射ノズルをウエーハの回転中心から外周に向けて移動せしめる洗浄工程と、を含む
ことを特徴とするウエーハの洗浄方法が提供される。
【0010】
ウエーハの表面には水溶性樹脂からなる保護膜が被覆されており、上記噴射ノズル位置付け工程においてウエーハの回転中心に位置付けられた洗浄水噴射ノズルはウエーハの回転中心に洗浄水を1〜3秒間噴射した後、上記洗浄工程においてウエーハの回転中心から外周に向けて5〜20mm/秒の移動速度で移動せしめ、ウエーハの表面から水溶性樹脂を除去する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるウエーハの洗浄方法は、スピンナーテーブルを回転しつつ洗浄水噴射ノズルから噴射する洗浄水をスピンナーテーブルに保持されたウエーハの回転中心から外周に向けて移動せしめるので、ウエーハの回転中心に噴射された洗浄水は回転するウエーハの遠心力によってウエーハの回転中心から外周に向けて移動しウエーハの表面を洗浄しながら飛散するため、ウエーハの回転中心に淀みが生ずることなく洗浄水噴射ノズルの1回の移動で効率よくウエーハの表面を洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるウエーハの洗浄方法を実施するための保護膜被覆兼洗浄装置を装備したレーザー加工機の斜視図。
【図2】被加工物であるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図。
【図3】図1に示すレーザー加工機に装備される保護膜被覆兼洗浄装置の一部を破断して示す斜視図。
【図4】図3に示す保護膜被覆兼洗浄装置のスピンナーテーブルを被加工物搬入・搬出位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図5】図3に示す保護膜被覆兼洗浄装置のスピンナーテーブルを作業位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図6】図3に示す保護膜被覆兼洗浄装置を構成する洗浄水噴射ノズルの要部断面図。
【図7】図3に示す保護膜被覆兼洗浄装置によって実施する保護膜被覆工程の説明図。
【図8】図1に示すレーザー加工機を用いて実施するレーザー加工工程を示す説明図。
【図9】図8に示すレーザー加工工程によってレーザー加工溝が形成された半導体ウエーハの要部拡大断面図。
【図10】本発明によるウエーハの洗浄方法における洗浄工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるウエーハの洗浄方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明によるウエーハの洗浄方法を実施するための保護膜被覆兼洗浄装置を装備したレーザー加工機の斜視図が示されている。
図1に示すレーザー加工機1は、略直方体状の装置ハウジング2を具備している。この装置ハウジング2内には、被加工物としてのウエーハを保持するチャックテーブル3が矢印Xで示す加工送り方向および該加工送り方向Xと直交する割り出し送り方向Yに移動可能に配設されている。チャックテーブル3は、吸着チャック支持台31と、該吸着チャック支持台31上に装着された吸着チャック32を具備しており、該吸着チャック32の表面である載置面上に被加工物であるウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。また、チャックテーブル3は、図示しない回転機構によって回動可能に構成されている。このように構成されたチャックテーブル3の吸着チャック支持台31には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ34が配設されている。なお、レーザー加工機1は、上記チャックテーブル3を加工送り方向Xに加工送りする図示しない加工送り手段、および割り出し送り方向Yに割り出し送りする図示しない割り出し送り手段を具備している。
【0015】
図示のレーザー加工機1は、上記チャックテーブル3に保持された被加工物としてのウエーハにレーザー加工を施すレーザー光線照射手段4を備えている。レーザー光線照射手段4は、レーザー光線発振手段41と、該レーザー光線発振手段41によって発振されたレーザー光線を集光する集光器42を具備している。なお、レーザー加工機1は、レーザー光線発振手段41をチャックテーブル3の上面である載置面に垂直な方向である矢印Zで示す集光点位置調整方向に移動する図示しない移動手段を具備している。
【0016】
図示のレーザー加工機1は、上記チャックテーブル3の吸着チャック32上に保持された被加工物の表面を撮像し、上記レーザー光線照射手段4の集光器42から照射されるレーザー光線によって加工すべき領域を検出する撮像手段5を具備している。この撮像手段5は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。また、図示のレーザー加工機1は、撮像手段5によって撮像された画像を表示する表示手段6を具備している。
【0017】
図示のレーザー加工機1は、被加工物であるウエーハとしての半導体ウエーハ10を収容するカセットが載置されるカセット載置部11aを備えている。カセット載置部11aには図示しない昇降手段によって上下に移動可能にカセットテーブル111が配設されており、このカセットテーブル111上にカセット11が載置される。半導体ウエーハ10は、環状のフレームFに装着された保護テープTの表面に貼着されており、保護テープTを介して環状のフレームFに支持された状態で上記カセット11に収容される。なお、半導体ウエーハ10は、図2に示すように表面10aに格子状に配列された複数の分割予定ライン101によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように構成された半導体ウエーハ10は、図1に示すように環状のフレームFに装着された保護テープTに表面10a即ちストリート101およびデバイス102が形成されている面を上側にして裏面が貼着される。
【0018】
図示のレーザー加工機1は、上記カセット11に収納された加工前の半導体ウエーハ10を仮置き部12aに配設された位置合わせ手段12に搬出するとともに加工後の半導体ウエーハ10をカセット11に搬入するウエーハ搬出・搬入手段13と、位置合わせ手段12に搬出された加工前の半導体ウエーハ10を後述する保護膜被覆兼洗浄装置7に搬送するとともに保護膜被覆兼洗浄装置7によって表面に保護膜が被覆された半導体ウエーハ10を上記チャックテーブル3上に搬送する第1のウエーハ搬送手段14と、チャックテーブル3上で加工された半導体ウエーハ10を保護膜被覆兼洗浄装置7に搬送する第2のウエーハ搬送手段15を具備している。
【0019】
次に、加工前の被加工物である半導体ウエーハ10の表面(被加工面)に保護膜を被覆するとともに、加工後の半導体ウエーハ10の表面に被覆された保護膜を除去する保護膜被覆兼洗浄装置7について、図3乃至図6を参照して説明する。
図示の実施形態における保護膜被覆兼洗浄装置7は、スピンナーテーブル機構71と、該スピンナーテーブル機構71を包囲して配設された水受け手段72を具備している。スピンナーテーブル機構71は、スピンナーテーブル711と、該スピンナーテーブル711を回転駆動する回転駆動手段としての電動モータ712と、該電動モータ712を上下方向に移動可能に支持する支持手段713を具備している。スピンナーテーブル711は多孔性材料から形成された吸着チャック711aを具備しており、この吸着チャック711aが図示しない吸引手段に連通されている。従って、スピンナーテーブル711は、吸着チャック711aに被加工物であるウエーハを載置し図示しない吸引手段により負圧を作用せしめることにより吸着チャック711上にウエーハを保持する。電動モータ712は、その駆動軸712aの上端に上記スピンナーテーブル711を連結する。上記支持手段713は、複数本(図示の実施形態においては3本)の支持脚713aと、該支持脚713aをそれぞれ連結し電動モータ712に取り付けられた複数本(図示の実施形態においては3本)のエアシリンダ713bとからなっている。このように構成された支持手段713は、エアシリンダ713bを作動することにより、電動モータ712およびスピンナーテーブル711を図4に示す上方位置である被加工物搬入・搬出位置と、図5に示す下方位置である作業位置に位置付ける。
【0020】
上記水受け手段72は、洗浄水受け容器721と、該洗浄水受け容器721を支持する3本(図3には2本が示されている)の支持脚722と、上記電動モータ712の駆動軸712aに装着されたカバー部材723とを具備している。洗浄水受け容器721は、図4および図5に示すように円筒状の外側壁721aと底壁721bと内側壁721cとからなっている。底壁721bの中央部には上記電動モータ712の駆動軸712aが挿通する穴721dが設けられおり、この穴721dの周縁から上方に突出する内側壁721cが形成されている。また、図3に示すように底壁721bには排液口721eが設けられており、この排液口721eにドレンホース724が接続されている。上記カバー部材723は、円盤状に形成されており、その外周縁から下方に突出するカバー部723aを備えておる。このように構成されたカバー部材723は、電動モータ712およびスピンナーテーブル711が図5に示す作業位置に位置付けられると、カバー部723aが上記洗浄水受け容器721を構成する内側壁721cの外側に隙間をもって重合するように位置付けられる。
【0021】
図示の実施形態における保護膜被覆兼洗浄装置7は、上記スピンナーテーブル711に保持された加工前の被加工物である半導体ウエーハ10の表面(被加工面)に液状樹脂を供給する樹脂液供給機構74を具備している。樹脂液供給機構74は、スピンナーテーブル711に保持された加工前の半導体ウエーハ10の表面(被加工面)に向けて液状樹脂を供給する樹脂供給ノズル741と、該樹脂供給ノズル741を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ742を備えており、樹脂供給ノズル741が図示しない樹脂液供給手段に接続されている。樹脂供給ノズル741は、水平に延びるノズル部741aと、該ノズル部741aから下方に延びる支持部741bとからなっており、支持部741bが上記洗浄液回収容器721を構成する底壁721bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設されている。なお、樹脂供給ノズル741の支持部741bが挿通する図示しない挿通穴の周縁には、支持部741bとの間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。
【0022】
図示の実施形態における保護膜被覆兼洗浄装置7は、上記スピンナーテーブル711に保持された加工後の被加工物である半導体ウエーハ10に洗浄水を供給するための洗浄水供給機構75を具備している。洗浄水供給機構75は、スピンナーテーブル711に保持されたウエーハに向けて洗浄水を供給する洗浄水噴射ノズル751と、該洗浄水噴射ノズル751を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ752を備えている。洗浄水噴射ノズル751は、水平に延び先端部が下方に屈曲されたノズル部751aと、該ノズル部751aの基端から下方に延びる支持部751bとからなっており、支持部751bが上記収容容器721を構成する底壁721bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設されている。洗浄水噴射ノズル751のノズル部751aは、図6に示すように洗浄水通路751cとエアー通路751dを備えており、洗浄水通路751cが図示しない洗浄水供給手段に接続されており、エアー通路751dが図示しないエアー供給手段に接続されている。なお、図示しない洗浄水供給手段は0.2Mpaの洗浄水を供給し、図示しないエアー供給手段は0.3Mpaのエアーを供給するように構成されている。上記洗浄水噴射ノズル751の支持部751bが挿通する図示しない挿通穴の周縁には、支持部751bとの間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。
【0023】
また、図示の実施形態における保護膜被覆兼洗浄装置7は、上記スピンナーテーブル711に保持された加工後の被加工物である半導体ウエーハ10にエアーを供給するためのエアー供給機構76を具備している。エアー供給機構76は、スピンナーテーブル711に保持された洗浄後のウエーハに向けてエアーを噴出するエアーノズル761と、該エアーノズル761を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ762を備えており、該エアーノズル761が図示しないエアー供給手段に接続されている。エアーノズル761は、水平に延び先端部が下方に屈曲されたノズル部761aと、該ノズル部761aの基端から下方に延びる支持部761bとからなっており、支持部761bが上記洗浄液回収容器721を構成する底壁721bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設されている。なお、エアーノズル761の支持部761bが挿通する図示しない挿通穴の周縁には、支持部761bとの間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。
【0024】
上述した保護膜被覆兼洗浄装置7を装備したレーザー加工機1は以上のように構成されており、以下その作動について説明する。
図1に示すように環状のフレームFに保護テープTを介して支持された加工前の半導体ウエーハ10(以下、単に半導体ウエーハ10という)は、被加工面である表面10aを上側にしてカセット11の所定位置に収容されている。カセット11の所定位置に収容された加工前の半導体ウエーハ10は、図示しない昇降手段によってカセットテーブル111が上下動することにより搬出位置に位置付けられる。次に、被加工物搬出・搬入手段13が進退作動して搬出位置に位置付けられた半導体ウエーハ10を仮置き部12aに配設された位置合わせ手段12に搬出する。位置合わせ手段12に搬出された半導体ウエーハ10は、位置合わせ手段12によって所定の位置に位置合せされる。次に、位置合わせ手段12によって位置合わせされた加工前の半導体ウエーハ10は、第1のウエーハ搬送手段14の旋回動作によって保護膜被覆兼洗浄装置7を構成するスピンナーテーブル711の吸着チャック711a上に搬送され、該吸着チャック711aに吸引保持される(ウエーハ保持工程)。このとき、スピンナーテーブル711は図4に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けられており、樹脂供給ノズル741と洗浄水噴射ノズル751およびエアーノズル761は図3および図4に示すようにスピンナーテーブル711の上方から離隔した待機位置に位置付けられている。
【0025】
加工前の半導体ウエーハ10が保護膜被覆兼洗浄装置7のスピンナーテーブル711上に保持するウエーハ保持工程を実施したならば、半導体ウエーハ10の被加工面である表面10aに保護膜を被覆する保護膜被覆工程を実施する。即ち、樹脂液供給機構74の電動モータ742を作動して樹脂供給ノズル741のノズル部741aを図7の(a)に示すようにスピンナーテーブル711に保持された半導体ウエーハ10の被加工面である表面10aの中央部上方に位置付ける。そして、図示しない樹脂液供給手段を作動してスピンナーテーブル711に保持された半導体ウエーハ10の被加工面である表面10aの中心部に液状樹脂110を所定量滴下する(液状樹脂滴下工程)。この液状樹脂滴下工程において滴下する液状樹脂110の量は、被加工物ある半導体ウエーハ10に直径が200mmの場合には2ミリリットルでよい。なお、液状樹脂滴下工程において滴下する液状樹脂110は、例えばPVA(Poly Vinyl Alcohol)、PEG(Poly Ethylene Glycol)、PEO(Poly Ethylene Oxide)等の水溶性のレジストが望ましい。
【0026】
上述した第2の液状樹脂滴下工程を実施したならば、制御手段8は図7の(b)に示すようにスピンナーテーブル機構71の電動モータ712を作動してスピンナーテーブル711を矢印Aで示す方向に500rpmの回転速度で15秒間回転する。この結果、半導体ウエーハ10の回転に伴う遠心力により滴下された液状樹脂110を外周に向けて流動せしめることにより半導体ウエーハ10の被加工面である表面10aに厚みが0.2〜1.0μmの保護膜120が形成される(保護膜被覆工程)。
【0027】
上述したように半導体ウエーハ10の被加工面である表面10aに保護膜120を被覆する保護膜被覆工程を実施したならば、スピンナーテーブル711を図4に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けるとともに、スピンナーテーブル711に保持されている半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、スピンナーテーブル711上の半導体ウエーハ10は、第2のウエーハ搬送手段15によってチャックテーブル3の吸着チャック32上に搬送され、該吸着チャック32に吸引保持される。このようにして半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル3は、図示しない加工送り手段によってレーザー光線照射手段4に配設された撮像手段5の直下に位置付けられる。
【0028】
チャックテーブル3が撮像手段5の直下に位置付けられると、撮像手段5および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ10に所定方向に形成されているストリート101と、ストリート101に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段4の集光器42との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理が実行され、レーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。また、半導体ウエーハ10に形成されている上記所定方向に対して直行する方向に延びるストリート101に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ10のストリート101が形成されている表面10aには保護膜120が形成されているが、保護膜120が透明でない場合は赤外線で撮像して表面からアライメントすることができる。
【0029】
以上のようにしてチャックテーブル3上に保持されている半導体ウエーハ10に形成されているストリート101を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図で示すようにチャックテーブル3をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段4の集光器42が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート101を集光器42の直下に位置付ける。このとき、図8の(a)で示すように半導体ウエーハ10は、ストリート101の一端(図8の(a)において左端)が集光器42の直下に位置するように位置付けられる。次に、レーザー光線照射手段4の集光器42からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル3を図8の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図8の(b)で示すようにストリート101の他端(図8の(b)において右端)が集光器42の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル3即ち半導体ウエーハ10の移動を停止する。このレーザー加工溝形成工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pをストリート101の表面付近に合わせる。
【0030】
上述したレーザー光線照射工程を実施することにより、半導体ウエーハ10のストリート101には図9に示すようにレーザー加工溝140が形成される。このとき、図9に示すようにレーザー光線の照射によりデブリ150が発生しても、このデブリ150は保護膜120によって遮断され、デバイス102およびボンディングパッド等に付着することはない。そして、上述したレーザー光線照射工程を半導体ウエーハ10の全てのストリート101に実施する。
【0031】
なお、上記レーザー光線照射工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
繰り返し周波数 :50kHz
出力 :4W
集光スポット径 :9.2μm
加工送り速度 :200mm/秒
【0032】
上述したレーザー光線照射工程を半導体ウエーハ10の全てのストリート101に沿って実施したならば、半導体ウエーハ10を保持しているチャックテーブル3は、最初に半導体ウエーハ10を吸引保持した位置に戻され、ここで半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、半導体ウエーハ10は、第2のウエーハ搬送手段15によって保護膜被覆兼洗浄装置7を構成するスピンナーテーブル711の吸着チャック711a上に搬送され、該吸着チャック711aに吸引保持される。このとき樹脂供給ノズル741とエアーノズル751および洗浄水ノズル761は、図3および図4に示すようにスピンナーテーブル711の上方から離隔した待機位置に位置付けられている。
【0033】
加工後の半導体ウエーハ10が保護膜被覆兼洗浄装置7のスピンナーテーブル711上に保持されたならば、洗浄工程を実行する。即ち、スピンナーテーブル711を作業位置に位置付けるとともに、洗浄水供給機構75の電動モータ752を作動して図10に示すように洗浄水噴射ノズル751のノズル部751aをスピンナーテーブル711上に保持された半導体ウエーハ10の回転中心上方に位置付ける(噴射ノズル位置付け工程)。そして、スピンナーテーブル711を矢印Bで示す方向に例えば700rpmの回転速度で回転しつつ図示しない洗浄水供給手段を作動して0.2Mpaの洗浄水を洗浄水噴射ノズル751に供給するとともに図示しないエアー供給手段を作動して0.3Mpaのエアーを洗浄水噴射ノズル751供給する。この結果、洗浄水噴射ノズル751のノズル部751aから洗浄水がエアーの圧力で噴出する。なお、洗浄水噴射ノズル751のノズル部751aから噴射される洗浄水の噴射量は、図示の実施形態においては2リットル/分に設定されている。このとき、洗浄水噴射ノズル751のノズル部751aを半導体ウエーハ10の回転中心上方位置に1〜3秒間停止して半導体ウエーハ10の回転中心に洗浄水を噴射する。このように半導体ウエーハ10の回転中心に洗浄水を1〜3秒間噴射したならば、洗浄水供給機構75の電動モータ752を作動して洗浄水噴射ノズル751を図10に他印Cで示す方向に揺動し、ノズル部751aを半導体ウエーハ10の回転中心から外周に向けて移動せしめる(洗浄工程)。なお、ノズル部751aの移動速度は、5〜20mm/秒でよく、図示の実施形態においては10mm/秒に設定されている。従って、半導体ウエーハ10の直径が200mmの場合、ノズル部751aは半導体ウエーハ10の回転中心から外周まで10秒で移動する。このように洗浄工程においては、洗浄水噴射ノズル751のノズル部751aから噴射された洗浄水は半導体ウエーハ10の回転中心から外周に向けて移動するので、半導体ウエーハ10の回転中心に噴射された洗浄水は回転する半導体ウエーハ10の遠心力によって半導体ウエーハ10の回転中心から外周に向けて移動し半導体ウエーハ10の表面10aに被覆された保護膜120を溶解しながら飛散するため、半導体ウエーハ10の回転中心に淀みが生ずることなく洗浄水噴射ノズル751のノズル部751aの1回の移動で効率よく保護膜120を洗い流すことができるとともに、レーザー加工時に発生したデブリ150も除去することができる。
【0034】
上述した洗浄工程が終了したら、乾燥工程を実行する。即ち、洗浄水噴射ノズル751を待機位置に位置付け、スピンナーテーブル711を例えば3000rpmの回転速度で15秒程度回転せしめる。このとき、エアー供給機構76の電動モータ762を作動してエアーノズル761のノズル部761aをスピンナーテーブル711に保持された半導体ウエーハ10の被加工面である表面10aの中央部上方に位置付け、エアー供給手段760を作動して半導体ウエーハ10の被加工面である表面10aにエアーノズル761のノズル部761aから200ミリリットル/秒のエアーを供給しつつエアーノズル761のノズル部761aを所要角度範囲で揺動せしめることが望ましい。
【0035】
上述したように加工後の半導体ウエーハ10の洗浄および乾燥が終了したら、スピンナーテーブル711の回転を停止するとともに、エアー供給手段76のエアーノズル761を待機位置に位置付ける。そして、スピンナーテーブル711を図4に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けるとともに、スピンナーテーブル711に保持されている半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。次に、スピンナーテーブル711上の加工後の半導体ウエーハ10は、第1のウエーハ搬送手段14によって仮置き部12aに配設された位置合わせ手段12に搬出する。位置合わせ手段12に搬出された加工後の半導体ウエーハ10は、被加工物搬出手段13によってカセット11の所定位置に収納される。
【0036】
1:レーザー加工機
2:装置ハウジング
3:チャックテーブル
4:レーザー光線照射手段
41: レーザー光線発振手段
42:集光器
5:撮像機構
6:表示手段
7:保護膜被覆兼洗浄手段
71:スピンナーテーブル機構
711:スピンナーテーブル
712:電動モータ
72:水受け手段
74:液状樹脂供給機構
740:液状樹脂供給手段
741:液状樹脂供給ノズル
75:洗浄水供給機構
751:洗浄水噴射ノズル
76:エアー供給機構
760:エアー供給手段
761:エアー供給ノズル
10:半導体ウエーハ
11:カセット
12:位置合わせ手段
13:ウエーハ搬出・搬入手段
14:第1のウエーハ搬送手段
15:第2のウエーハ搬送手段
F:環状のフレーム
T:保護テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンナーテーブルに保持されたウエーハの表面に洗浄水噴射ノズルから洗浄水を噴射してウエーハの表面を洗浄するウエーハの洗浄方法であって、
スピンナーテーブルに保持されたウエーハの回転中心に洗浄水噴射ノズルを位置付ける噴射ノズル位置付け工程と、
スピンナーテーブルを回転させ洗浄水噴射ノズルから洗浄水を噴射しつつ洗浄水噴射ノズルをウエーハの回転中心から外周に向けて移動せしめる洗浄工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの洗浄方法。
【請求項2】
ウエーハの表面には水溶性樹脂からなる保護膜が被覆されており、該噴射ノズル位置付け工程においてウエーハの回転中心に位置付けられた該洗浄水噴射ノズルはウエーハの回転中心に洗浄水を1〜3秒間噴射した後、該洗浄工程においてウエーハの回転中心から外周に向けて5〜20mm/秒の移動速度で移動せしめ、ウエーハの表面から水溶性樹脂を除去する、請求項1記載のウエーハの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−176035(P2011−176035A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37609(P2010−37609)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】