エッジ検出装置
【課題】金属粗面上におけるエッジの検出が可能であるエッジ検出装置を提供する。
【解決手段】フォーカス検出部150を備え、被測定物6を照射光ビームがスキャンしながら、かつ被測定物と投光系110との間の距離を変化させることで、被測定物にて反射した反射光を分割光検出器にて、複数回、検出を行う。得られた複数の反射光信号の振幅に着目し、振幅が最大となる場合の投光系の照射方向位置を求めることで、被測定物に対する投光系の合焦位置を検出する。このような合焦状態において、被測定物を光ビームでスキャンすることで、エッジ検出部160は、被測定物のエッジを検出する。
【解決手段】フォーカス検出部150を備え、被測定物6を照射光ビームがスキャンしながら、かつ被測定物と投光系110との間の距離を変化させることで、被測定物にて反射した反射光を分割光検出器にて、複数回、検出を行う。得られた複数の反射光信号の振幅に着目し、振幅が最大となる場合の投光系の照射方向位置を求めることで、被測定物に対する投光系の合焦位置を検出する。このような合焦状態において、被測定物を光ビームでスキャンすることで、エッジ検出部160は、被測定物のエッジを検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面にレーザ光を照射しその反射光を捉えることで対象物表面における、高度差を有する段の境界いわゆるエッジを検出するエッジ検出装置に関し、特に放電加工や切削加工、研削加工等において被加工物の形状を計測するために使用可能なエッジ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤ放電加工においては、加工時に被加工物の形状を測定し、計測された寸法をフィードバックして追加工することを繰り返して最終形状に追い込むことが行なわれる。このように加工途中での計測作業が必要なため、作業時間を短縮するためには、短時間での計測が望まれている。被加工物の計測は、従来、接触式のプローブを各加工断面に接触させて断面間の寸法を測定することで行なわれていた。この接触プローブ方式は、広く知られた方式であり、例えば特許文献1にその一例が開示されている。
【0003】
一方、測定対象物が金属ではない場合、例えばIC等の微細加工技術におけるマスクとウエハとの位置合わせやパターンの線幅測定等の場合には、レーザ光を集光し測定対象物面に照射し、測定対象物からの反射光を検出することで、エッジを検出して測定を行う方法が存在する。尚、エッジとは、上述のように測定対象物面における高度差を有する段の境界をいう。
【0004】
例えば特許文献2では、半導体レーザ(LD)からのレーザビームを被測定面に集光照射し、その反射散乱光を2分割光検出器(PD)上に結像して、反射光強度あるいは反射光強度パターンからエッジ検出信号を得ることが開示されている。エッジ検出を正確に行なうためには、被測定面へレーザビームを合焦させる必要があることから、上記反射散乱光をさらに4分割光検出器に結像させて、非点収差法によりフォーカス検知を行なっている。
【0005】
また、特許文献3では、被測定物面にレーザビームを照射し、さらにレーザビームを焦点方向にも移動させて、その反射光の微分強度の絶対値が最大となる状態に制御することで、ベストフォーカス位置への設定を行っている。このようなフォーカス状態にて、レーザビームを被測定物面上でスキャンし、微分信号のピーク位置を検知してエッジ位置としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3015636号公報
【特許文献2】特開昭62−142205号公報
【特許文献3】特開平2−239215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるような接触プローブ方式では、複数の加工断面の計測を行うためには、被加工物に対して、プローブを2次元平面内だけでなく3次元的に移動させる必要があり、計測に長時間を要するという問題がある。また、ワイヤ放電加工では、水や油などの加工液中で被加工物に対して加工を行なうが、プローブを被加工物に接触させるためには、加工液を一旦排出する必要がある。よって、放電加工等での計測には、さらに時間を要するという問題があった。
【0008】
また、放電加工等で加工される金属製の被加工物は、通常、その表面が荒れた散乱面である。ここで言う、荒れた散乱面とは、被加工物面の位置によって光の反射率及び散乱放射角特性が変化する表面のことである。金属の粗面では、光沢表面上に数μmオーダーの山、谷が刻まれている。よって、粗面に入射した光線は、山、谷における微小傾斜に応じて正反射散乱するため、被加工物面の位置によってその反射率が大きく変化する。したがって、金属製の被加工物に対して、特許文献2、3に開示されるようなレーザ光を用いたエッジ検出方式を採用した場合、エッジ検出用のフォトダイオード上の集光スポットの形状は、被加工物上の集光スポットの形状とは大きく異なったものとなる。
【0009】
即ち、特許文献2にて説明されている非点収差法は、面荒れのない表面からの反射スポットを検知することを前提としている。図14には、このような面荒れのない鏡面への照射光がデフォーカス(非合焦)状態からフォーカス(合焦)状態、さらにデフォーカス状態へ変化したとき、その反射光のフォトダイオード検出面における反射スポット形状がどのように変化するかが示されている。図14から分かるように、鏡面の場合、フォーカス状態では、反射スポット形状は、真円形になる。
【0010】
一方、図15には、荒れた金属表面による反射スポット形状について、フォーカスからデフォーカスによる変化例が示されている。図15に示すように、荒れた金属表面による反射スポット形状は、上述のように金属表面上への光照射位置によって大きく変化することから、反射スポット形状からフォーカス位置を反映した正しい信号を得ることはできない。換言すると、特許文献2にて説明されている非点収差法では、荒れた金属表面による反射光から、金属表面に対する照射光のフォーカス位置を得ることはできない。
【0011】
また、特許文献3にて説明されているフォーカス制御方法を、鏡面に適用したときに得られる信号と、金属粗面に適用したときに得られる信号とを、図16及び図17にそれぞれ示す。鏡面の場合、上述のように照射光形状と反射スポット形状とは相関関係にあることから、反射光強度の変化は、エッジ位置だけで生じる。よって、微分信号のピークは、エッジ位置にのみ発現する。
【0012】
これに対して金属粗面の場合には、エッジ以外にも粗面に起因して反射光量が大きく変化するため、その微分信号もエッジ以外に多数発生する。また、エッジ端面の欠けなどによっても信号強度が変化するため、エッジ近傍では、本来のエッジによる微分ピーク以外の微分ピークが重畳される。このように、特許文献3に開示されるフォーカス制御方法も、面荒れのない表面に対するフォーカス制御を前提としており、金属粗面に適用した場合には、微分信号を作成しても正確なフォーカス位置が検出できないばかりか、エッジ位置の検出も困難である。
【0013】
このように、放電加工等で加工される金属製の被加工物、つまり粗面を有する被測定物に対しては、特許文献2、3に開示されるような方法では、フォーカス検知が困難であり、正確なエッジ検出ができない。また、従来、金属粗面上におけるエッジを、レーザ光の反射光を用いて検出する技術は、存在していない。
【0014】
本発明は、金属粗面上におけるエッジの検出が可能であるエッジ検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様におけるエッジ検出装置は、被測定物の測定面にて高低差を有するエッジを、測定面に光ビームを照射しながら測定面をスキャンすることで検出するエッジ検出装置であって、光源及び対物レンズを有し、光源からの光を対物レンズを介して上記測定面に集光する投光系と、投光系から照射された光ビームの測定面での反射光を受光位置まで導き集光させ、かつ上記投光系における被測定物に対する集光位置と上記受光位置との間に結像関係を有する光学系を含むとともに、上記受光位置に複数の検出部を設置した分割光検出器を含む受光系と、投光系の光ビームの照射方向に対して直交する方向へ投光系と被測定物とを相対的に移動させる第1駆動装置と、投光系と被測定物とを上記照射方向に相対的に移動させる第2駆動装置と、上記分割光検出器に電気的に接続され、第2駆動装置により測定面と投光系との間の距離を変化させて行うそれぞれのスキャンによって分割光検出器から得られる複数の出力信号の中から最大振幅を有する信号を検出して、測定面に対する投光系の合焦位置を決定するフォーカス検出部と、得られた合焦位置に投光系を配置して上記測定面に対して行うスキャンにより、上記分割光検出器の複数の検出部から供給される振幅強度信号の出力強度差から測定面のエッジを検出するエッジ検出部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様におけるエッジ検出装置によれば、投光系、受光系、フォーカス検出部、エッジ検出部等を備え、フォーカス検出部は、複数の反射光信号の振幅に着目し、振幅が最大となる場合の投光系の照射方向位置を求めることで、被測定物に対する投光系の合焦位置を検出する。よって、被測定物が荒れた金属粗面の場合で、光ビームの照射位置によって光ビームの反射率や散乱放射角特性が異なり反射光信号に複数のピークが発現するような場合であっても、最大振幅を有する反射光信号を見つけることで、被測定物に対する投光系の合焦位置を検出することができる。被測定物に対する投光系の集光位置と、受光系における分割光検出器の受光位置とは、予め、結像関係に設定しておくことで、投光系を合焦位置に設定することで必然的に受光系も合焦状態に設定される。このような合焦状態において、被測定物を光ビームでスキャンすることで、エッジ検出部は、被測定物のエッジを検出することができる。
【0017】
このように本発明の一態様におけるエッジ検出装置によれば、金属粗面上におけるエッジを、レーザ光の反射光を用いて検出することが可能となる。したがって、従来の接触プローブ方式に比べて、測定時間を短縮することができる。また、測定時間の短縮から派生して、エッジ検出装置におけるエネルギー消費量の削減、及び環境負荷低減を図ることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1におけるエッジ検出装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す投光系の構成を示す図である。
【図3】図1に示す受光系の構成を示す図である。
【図4a】エッジ検出時における4分割フォトダイオード上の集光スポットの形状変化を示す図である。
【図4b】エッジ検出時における4分割フォトダイオード上の集光スポットの形状変化を示す図である。
【図4c】エッジ検出時における4分割フォトダイオード上の集光スポットの形状変化を示す図である。
【図5a】鏡面である測定物におけるエッジ部分の断面の模式図である。
【図5b】図5aに示すエッジ部分の4分割フォトダイオードでの受光信号を示す図である。
【図5c】図5bに示す受光信号の差信号を示す図である。
【図5d】図5aに示すエッジ部分へ照射する光ビームをデフォーカスした場合の4分割フォトダイオードでの受光信号を示す図である。
【図5e】図5dに示す受光信号の差信号を示す図である。
【図6】投光系のフォーカス調整における投光系の集光ビームと被測定物との位置関係を説明するための図である。
【図7】図6に示す各位置関係における受光信号の振幅強度の変化を説明するためのグラフである。
【図8a】粗面である金属の被測定物におけるエッジ部分の断面の模式図である。
【図8b】図8aに示すエッジ部分の4分割フォトダイオードでの受光信号を示す図である。
【図8c】図8bに示す受光信号の差信号を示す図である。
【図8d】図8aに示すエッジ部分へ照射する光ビームをデフォーカスした場合の4分割フォトダイオードでの受光信号を示す図である。
【図8e】図8dに示す受光信号の差信号を示す図である。
【図9a】本発明の実施の形態2におけるエッジ検出装置の構成を示す図であり、投光系のフォーカス調整時における構成図である。
【図9b】本発明の実施の形態2におけるエッジ検出装置の構成を示す図であり、エッジ検出時における構成図である。
【図10a】実施の形態2におけるエッジ検出装置にて得られる、エッジ部分の4分割フォトダイオードでの受光信号を示す図である。
【図10b】図10aに示す受光信号の差信号を示す図である。
【図11a】4分割フォトダイオードにおけるフォーカス状態での集光スポットを示す図である。
【図11b】4分割フォトダイオードにおけるデフォーカス状態での集光スポットを示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3におけるエッジ検出装置の構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態4におけるエッジ検出装置の構成を示す図である。
【図14】鏡面の測定面に対する、非点収差法における4分割フォトダイオードでの集光スポットのフォーカス状態及びデフォーカス状態での形状を示す図である。
【図15】金属の粗面に対する、非点収差法における4分割フォトダイオードでの集光スポットのフォーカス状態及びデフォーカス状態での形状を示す図である。
【図16】鏡面の測定面に対する、特許文献3によるフォーカス検知信号を示す図である。
【図17】金属の粗面に対する、特許文献3によるフォーカス検知信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態であるエッジ検出装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0020】
実施の形態1.
図1には、本発明の実施の形態1におけるエッジ検出装置101の概略構成が示されている。エッジ検出装置101は、特に、荒れた散乱面つまり粗面を有する金属製の被測定物6の粗面におけるエッジを、粗面に照射したレーザ光の反射光を用いて検出する装置である。ここでエッジとは、既に説明した、金属面において高度差を有する段の境界をいう。また、エッジ検出装置101は、放電加工や切削加工、研削加工等において被加工物の形状を計測するために使用可能である。尚、エッジ検出装置101の被測定物6は、粗面を有する金属製の測定物に限定されるものではなく、エッジ検出装置101は、勿論、荒れた散乱面ではない鏡面状の被測定物に対しても適用可能である。
【0021】
このようなエッジ検出装置101は、基本的構成部分として、投光系110、受光系120、第1駆動装置130、第2駆動装置140、フォーカス検出部150、及びエッジ検出部160を備える。これらの各構成部分について、順次、以下に説明していく。
【0022】
投光系110は、図2に示すように、被測定物6に対してレーザ光を集光し照射する構成部分であり、基本的に光源1と光学系とを備える。当該投光系110の光学系としては、第1レンズ3と対物レンズ5とを有する。光源1は、半導体レーザから構成される。また、光源1、第1レンズ3、及び対物レンズ5は、直線状の光路を形成して鏡筒2に収められている。鏡筒2は、第2駆動装置140と接続されている。
【0023】
上述のように本実施形態では、光源1、第1レンズ3、及び対物レンズ5は、直線状の光路を形成しているが、光路形状はこれに限定されない。尚、第1レンズ3と対物レンズ5との間には、受光系120を構成するビームスプリッター4が設置される。投光系110において、ビームスプリッター4は単に光を透過させる物であり、光学的作用を行わない。
【0024】
このような投光系110は、光源1から出射された光51が第1レンズ3でコリメートされた後、対物レンズ5で集光され、被測定物6の測定面6aに光ビーム51a(図2)として照射され、集光スポット52を形成する。尚、図1では、集光スポット52の半分だけ被測定物6の測定面6aに存在する様子を示している。
【0025】
第2駆動装置140は、対物レンズ5における光軸の方向、つまり図2に矢印bで示す照射方向に鏡筒2ごと投光系110を移動可能とする機構である。即ち、第2駆動装置140は、被測定物6の測定面6aに対する投光系110の合焦動作を可能にする。尚、本実施形態では、第2駆動装置140は、被測定物6に対して投光系110を矢印b方向に移動させるが、この構成に限定されず、投光系110と被測定物6とを相対的に矢印b方向へ移動させる装置であればよい。
【0026】
受光系120は、図3に示すように、被測定物6の測定面6aへ投光系110により集光された光ビーム51aの測定面6aにおける反射光を受光する光学部分であり、基本的に光検出器8と光学系とを備える。光検出器8は、図4aに示すように、一つの受光位置8aに配置される一つの受光面を複数の検出部に分割したフォトダイオードであり、本実施形態では受光面を4等分したフォトダイオードである。受光系120における光学系としては、対物レンズ5と、ビームスプリッター4と、第3レンズ7とを有し、反射光の進行に沿ってこの順に配置されている。また本実施形態では、受光系120は、投光系110の対物レンズ5と同一のレンズを対物レンズとして共用している。ビームスプリッター4は、対物レンズ5を通過した反射光を反射し、第3レンズ7へ入射させる。第3レンズ7は、集光レンズであり、光検出器8の受光位置8aにおける受光面に反射光を集光させる。第3レンズ7及び光検出器8は、鏡筒9内に設置される。尚、ビームスプリッター4は、上述のように、投光系110の鏡筒2内に設置されており、受光系120の鏡筒9と、投光系110の鏡筒2とは、直交して接続されている。
【0027】
受光系120の光学系では、光検出器8である4分割フォトダイオードの受光位置8aは、投光系110からの光ビームが集光する位置と結像関係にあるように調整されている。即ち、投光系110からの光ビーム51aの集光位置に被測定物6の測定面6aがあるとき、その反射光は、光検出器8の受光位置8aに結像されることになる。
【0028】
このように構成される受光系120は、図3に示すように、投光系110による集光スポット52のうち被測定物6の測定面6aにある領域53からの反射光54が、投光系110の集光レンズでもある対物レンズ5によりコリメートされ、ビームスプリッター4で反射され、第3レンズ7により光検出器8の受光位置8aにある受光面の中心に集光され、集光スポット55を形成する。
【0029】
第1駆動装置130は、被測定物6を載置するステージを有し、平面上で互いに直交するX,Y方向へステージつまり被測定物6を可動とする装置である。ここで、X,Y方向は、第2駆動装置140による投光系110の移動方向である矢印bで示す照射方向に直交する方向である。尚、本実施形態では、第1駆動装置130は、固定された投光系110に対して被測定物6を移動させるが、この構成に限定されず、投光系110と被測定物6とを相対的にX,Y方向へ移動させる装置であればよい。
【0030】
フォーカス検出部150は、光検出器8、第1駆動装置130、及び第2駆動装置140と電気的に接続され、被測定物6に対する投光系110の合焦位置を検出する部分である。詳しくは以下の動作説明箇所にて説明する。
【0031】
エッジ検出部160は、フォーカス検出部150及び第1駆動装置130と電気的に接続され、被測定物6のエッジを検出する部分である。詳しくは以下の動作説明箇所にて説明する。
【0032】
フォーカス検出部150及びエッジ検出部160は、実際にはコンピュータを用いて実現され、それぞれの機能に対応するソフトウェアと、これを実行するためのCPU(中央演算処理装置)やメモリ等のハードウェアから構成されている。
【0033】
以上のように構成されるエッジ検出装置101の動作について、以下に説明する。尚、以下の説明では、第1駆動装置130によって被測定物6をX方向に移動させてエッジ検出を行う場合を例に採るが、Y方向への移動に関しても同様である。
【0034】
まず、エッジ検出装置101におけるエッジ検出の原理から説明する。
説明の都合上、まず、被測定物上面における光ビームの照射位置の変化によって、光ビームの反射率及び散乱放射角特性が変わらない場合について考察する。具体的には、散乱のない鏡面、もしくは紙などの被測定物上面の粗面構造が光の波長構造以下である表面などが挙げられる。尚、このような表面を有する被測定物について、被測定物6と区別するため、ここの説明箇所では、非粗面測定物と記す。
【0035】
このような状態において、エッジから十分離れた非粗面測定物に集光スポット52が照射されている場合には、光検出器8(4分割フォトダイオード)上の集光スポット55の形状は、集光スポット52の形状を反映したものとなる。つまり、集光スポット52が円形状であれば、集光スポット55も円形状となる。
【0036】
エッジを検出するには、第1駆動装置130により非粗面測定物をX方向に移動させることにより、投光系110から非粗面測定物に照射される光ビーム51aにて非粗面測定物をスキャンし、光ビーム51aが非粗面測定物のエッジを通過するようにする。
【0037】
光ビーム51aの集光スポット52が非粗面測定物で反射した反射光は、対物レンズ5を透過し、ビームスプリッター4で反射されて、第3レンズ7にて集光され、光検出器8の受光面に入射する。光検出器8の受光面における集光スポット55の形状は、光ビーム51aの集光スポット52が非粗面測定物で反射される領域に応じて、変化する。その様子を図4aから図4cに示す。
【0038】
図4aは、非粗面測定物上の一部にのみ集光スポット52が乗っている状態を示し、図4bは、集光スポット52のちょうど半分が非粗面測定物に乗った状態を示し、図4cは、集光スポット52の大部分が非粗面測定物に乗っている状態を示す。ここで、光検出器8の4つに分割されている受光面における、領域81と領域82との和の受光強度をI(A)、領域83と領域84との和の受光強度をI(B)とする。
【0039】
ここで、非粗面測定物における、図5aに示す断面の上面を、集光スポット52がスキャンしたときの、受光強度I(A)、I(B)を図5bに示す。受光強度I(A)と受光強度I(B)とは、X方向に分離した信号となるので、図5cに示すように、この差信号、I(A)−I(B)は、図5aに示す断面のエッジ位置に対応してピークが現れる。これらのピークの現れるX方向の位置を、それぞれエッジ位置とする。
【0040】
ここで、仮に、非粗面測定物上の集光スポット52をデフォーカス(非合焦)した場合での、光検出器8の受光面上における集光スポット55の、受光強度をI’(A)、I’(B)とし、これらを図5dに示す。尚、受光強度I’(A)、I’(B)は、上述の受光強度をI(A)、I(B)に相当する。また、受光強度をI’(A)、I’(B)の差信号を図5eに示す。
【0041】
図5eから明らかなように、光検出器8の受光面上における集光スポット55がデフォーカスすると、つまり、非粗面測定物に対して投光系110がデフォーカスしていると、受光強度I’(A)と、受光強度I’(B)とは、X方向においてほとんど重なってしまい、これらの差信号を取っても、ピークが小さくなり、エッジ検出精度は低下する。このように、非粗面測定物(被測定物6でも同じ)に対する投光系110の集光位置と、受光系120の光検出器8の受光位置8aとが結像関係にあることは、エッジ検出にとって重要である。
【0042】
次に、受光系120のフォーカス調整、換言すると被測定物6のエッジ検出動作について説明する。
上では非粗面測定物を例に説明したが、エッジ検出装置101は、被測定物上面が粗面である金属の場合でもフォーカス調整が可能である。これについても以下に説明する。
投光系110に対して、集光スポット52が最小となる位置に被測定物6の測定面6aがあるとき、「投光系はフォーカス調整されている」と呼ぶことにする。同様に、被測定物6の測定面6aと、光検出器8とが結像関係にあるとき、「受光系がフォーカス調整されている」と呼ぶことにする。本実施の形態では、上述したように、光検出器(4分割フォトダイオード)8の受光面の位置は、投光系110からの光ビームが集光する位置と結像関係にあるように調整されているので、投光系110がフォーカス調整されていると、受光系120もフォーカス調整されていることになる。このように、投光系110と受光系120とがともにフォーカス調整されている状態を、「投受光系がフォーカス調整されている」と呼ぶことにする。
【0043】
図6は、投光系110からの光ビーム51aで被測定物6の測定面6aをスキャンするときの、測定面6aの測定配置位置を示す。即ち、投光系110の対物レンズ5と、被測定物6の測定面6aとの間の、矢印b方向における距離を、測定面6aが、図に示す(a),(b),(c)の各位置に配置されるように、フォーカス検出部150は第2駆動装置140にて変化させ、さらにフォーカス検出部150は、第1駆動装置130にて被測定物6を移動させることで、各位置に配置された測定面6aをスキャンする。尚、位置(c)が投光系110の合焦位置に相当し、位置(a)が最も非合焦(デフォーカス)の位置に相当する。
【0044】
このような設定下で、測定面6aが粗面である金属に対してスキャンを行い、フォーカス検出部150によって、光検出器8の4つの検出部より得られる全信号の和を、被測定物6の送り距離Xに対して測定することで、図7に示すように、位置(a)〜(c)に対応する各信号波形が得られる。これらの信号波形から分かるように、位置(a)から(b),(c)とフォーカスが合うに従って、投光系110の集光スポット52の径は小さくなり、光検出器8の信号波形も金属の粗面構造を反映して大きな振幅を有するようになる。
【0045】
このように、フォーカス検出部150によって、投光系110の対物レンズ5と、被測定物6の測定面6aとの間の、矢印b方向における距離を変化させながら、被測定物6の測定面6aを光ビーム51aでスキャンすることを繰り返して、光検出器8からの出力信号における振幅強度が最も大きくなる矢印b方向における距離を見つけることで、投光系110のフォーカス調整を行うことができる。即ち、このような手法を採ることで、測定面6aが粗面である金属に対しても投光系110のフォーカス調整が可能となる。
【0046】
また、図7の信号振幅は、投光系110がフォーカス調整されているかどうかに依存し、受光系120がフォーカス調整されているかどうかには依存しない。しかしながら、エッジ検出装置101では、上述のように、予め「投受光系がフォーカス調整されている」状態に設定しているので、受光系120のフォーカス調整も同時になされたことになる。したがって、上述の手法を採ることで、測定面6aが粗面である金属に対しても受光系120のフォーカス調整も可能となる。
【0047】
尚、光検出器8における4分割の検出部の位置を平面内で移動させ、集光ビーム55がある一つの検出部上にあるように調整し、その一つの信号の振幅強度を用いてフォーカス検知を行っても良い。
【0048】
上述のようにして得られる、測定面6aが粗面である金属製の被測定物6におけるエッジの測定例を図8a〜図8eに示す。このエッジ検出動作は、エッジ検出部160によって実行される。
投受光系がフォーカス調整されている状態で、図8aに示すような断面を持つ被測定物6の測定面6aをスキャンしたときの信号I(A)、I(B)を図8bに示し、この差信号I(A)−I(B)を図8cに示す。図8cにおける両端のピークを与える位置Xが被測定物6の両端のエッジ位置に相当する。このエッジ位置を元に、被測定物6の寸法測定を行うことができる。
【0049】
尚、投光系110はフォーカス調整されているが、受光系120はデフォーカスされている場合の信号I(A)、I(B)を図8dに示し、図8eは、その差信号I(A)−I(B)を示している。図8d及び図8eから明らかなように、測定面6aが粗面である金属製の被測定物6におけるエッジを測定する場合においても、受光系120がデフォーカス状態では、信号I(A)と信号I(B)との差は小さくなり、エッジ測定が困難になる。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態1では、上述したように、第2駆動装置140によって投光系110の合焦動作を行い、即ち、被測定物6の測定面6aにおける集光スポット52が最小の状態において、エッジ検出用のスキャンを行っている。これに対し、本実施形態2のエッジ検出装置102は、合焦後、意図的に集光スポット52の測定面6aでの大きさを変化させてデフォーカスしてスキャンを行う。図9a及び図9bに示すように、このためのデフォーカス機構170を、エッジ検出装置102はさらに備える。尚、エッジ検出装置102におけるその他の構成は、エッジ検出装置101の構成に同じである。よって、以下では、デフォーカス機構170に関する部分についてのみ説明を行う。
【0051】
デフォーカス機構170を設けることで、投光系110の対物レンズ5と被測定物6との距離を変えることなく、投光系110における集光スポット52の測定面6aでの大きさを変える、つまりデフォーカスさせることができる。その一つの手法として、デフォーカス機構170は、光源1と対物レンズ5との間に配置された光学素子間の間隔を変更する。本実施の形態2では、デフォーカス機構170は、光源1と第1レンズ3との間の距離aを変化させて、集光スポット52のデフォーカスを行う。ここで、a=a0に設定すると、投光系110からの光ビーム51aの集光位置と、光検出器(4分割フォトダイオード)8の受光面の受光位置8aとは、結像関係にあるように調整されるものとする。被測定物6を測定する前、例えば当該エッジ検出装置102を組み立てる段階において、各レンズ間の距離等を正確に測定する等の手段により、上記条件を満たす距離a0を探すことは容易である。
【0052】
受光系120のフォーカス調整のために、まず光源1と第1レンズ3との間の距離をa=a0に合わせる。その後、実施の形態1で説明した手順により、被測定物6に対する投光系110のフォーカス位置を合わせる。そのときの装置構成図を図9aに示す。a=a0とし、「投受光系がフォーカス調整されている」状態であるので、受光系120のフォーカス調整もなされたことになる。
【0053】
投光系110の集光スポット52が過小ではない場合は、金属粗面によるノイズも小さく、投受光系がフォーカス調整されている状態でエッジ検出を行なっても問題がない。一方、投光系の集光スポット52が小さくなり過ぎると、金属粗面によるノイズが大きくなってしまい、エッジ検出精度が劣化する。このような場合、投受光系のフォーカス調整を行った後、デフォーカス機構170によって、光源1と第1レンズ3との間の距離をa=a0から意図的にずらし、受光系120はフォーカス状態のまま、投光系110のみをデフォーカス状態とする。そのときのエッジ検出装置102の配置図を図9bに示す。例えば距離a>a0とすることで、被測定物6の測定面6aにおける投光系110の集光スポット52の大きさは拡大する。
【0054】
このように集光スポット52の大きさを拡大させることで、実施の形態1で述べた効果に加えて、さらに以下の効果を得ることができる。
即ち、投光系110が合焦位置にあるときには、図8bに示すように、受光強度には鋭いピークが見られるが、デフォーカス機構170によって投光系110の集光スポット52を大きくすることで、光照射領域内の各点の反射信号を積分した信号が光検出器8で検出されることになる。よって、被測定物6の測定面6aの位置の違いによる反射信号のゆらぎが小さくなり、図10aに示すように、受光強度は、なだらかなピークとなる。信号I(A)、I(B)の各波形は、なだらかになるが、信号I(A)と信号I(B)とは、被測定物6の移動方向において左右に分離されたままであるので、図10bに示すように、差信号I(A)−I(B)は、エッジ位置で大きなピークが発現する。このように、デフォーカス機構170により、金属粗面によるノイズを低減し、エッジ検出精度を向上させることができる。
【0055】
また、投光系110からの集光スポット52を大きくすると、図9bに示されるように、光検出器8の受光面における集光スポット55が大きくなることから、光検出器8における不感度領域による光量低下を低減することができるという効果もある。即ち、図11a及び図11bに示すように、4分割フォトダイオードは、通常、各検出部同士の境界部に、光に対する感度がない不感度領域85を有する。よって、図11aに示すように、集光スポット55が小さい場合には、集光スポット55に対する不感度領域85の割合が大きい。これに対し図11bに示すように、投光系110をデフォーカスし集光スポット55を大きくすることで、集光スポット55に対する不感度領域85の割合は小さくなり、受光領域81〜84で受光される光量は増加する。よって、不感度領域による光量低下防止効果が得られる。
【0056】
実施の形態3.
上述の実施の形態2では、投光系110からの集光スポット52を拡大させる手法として、上述したようにデフォーカス機構170を設け、投光系110における光学系の素子間隔を変える手法を採った。
これに対し図12に示すように、本実施の形態3のエッジ検出装置103では、投光系110及び受光系120におけるフォーカス状態を維持した状態で集光スポット52を拡大させるために、開口径が可変である絞り機構60を設ける。絞り機構60は、投光系110の光路中に光線束を制限する絞りを有し、これにより実施の形態2の場合と同様の効果を得ることができる。即ち、絞りを小さくしぼることにより生じる回折の効果によって、投光系110からの集光スポット52を大きくするものである。
【0057】
絞り機構60を設ける手法は、投光系110における光学系の素子間隔を変える手法に比べて構造上の変更が少なくて済むという利点がある。また、被測定物6の測定面6aは、光ビーム51aの集光位置にあるので、エッジ検出中に被測定物6の高さが変動したとしても、集光スポット52の位置変動が小さいという利点もある。
【0058】
尚、絞り機構60の設置場所は、本実施の形態3における対物レンズ5と被測定物6との間に限定するものではない。
【0059】
実施の形態4.
本実施の形態4では、図13に示すように、例えばワイヤ加工放電等における加工液11内に配置した被測定物6に対して適用可能なエッジ検出装置104について説明する。
エッジ検出装置104は、上述した実施の形態1から3におけるエッジ検出装置101〜103に対して防液構造180をさらに備えた構造である。尚、図13では、例えば図1に示すエッジ検出装置101に防液構造180をさらに備えた構成例を示している。また、エッジ検出装置が投光系110と受光系120とで対物レンズ5を共用しない構成を採る場合には、投光系110では対物レンズ5の出射側に、受光系120では対物レンズ5の入射側に、それぞれ防液構造180を備える構成を採ることができる。
【0060】
防液構造180は、投光系110の鏡筒2に対して対物レンズ5側に防液仕様で取り付けられる。防液構造180は、対物レンズ5と被測定物6との間に、投光系110から被測定物6へ照射される光ビーム51a及び被測定物6から受光系120へ入射する反射光54が透過する透明な材料からなる窓181を有する。このような防液構造180は、例えば窓181部分が加工液11に浸される。
【0061】
また、第1駆動装置130は、加工液11の外側に配置され、被測定物6を例えばX方向に移動させる、あるいは、エッジ検出装置104を例えばX方向に移動させる。その他の構成は、上述の、エッジ検出装置101における構成に同様である。
このように構成されるエッジ検出装置104によれば、実施の形態1〜3で述べた効果に加えて、以下の効果をさらに得ることができる。
【0062】
即ち、エッジ検出装置104によれば、被測定物6のエッジ検出を行う、いわゆる光学ヘッド部分を加工液11に浸してエッジを検出することが可能になる。詳しく説明すると、防液構造180を持たない構造では、エッジ検出装置の光学ヘッド部分が加工液11に触れないようにして測定を行う必要があり、加工液11の上から、加工液11を通してエッジ測定を行うことになる。この場合、加工液11と空気との界面ゆらぎにより、信号がゆらぎ、正確なエッジ測定ができないという問題がある。一方、この信号のゆらぎを無くすために、加工液11を一旦排出して測定を行うと、加工液11の排出に時間を要し、また、被測定物6のエッジ部に残留する加工液滴も測定精度を悪化させるという問題が生じる。このように防液構造180を有しないエッジ検出装置は、問題を有する。
【0063】
一方、本実施形態4のエッジ検出装置104によれば、上述の問題を解決することができ、高速で、かつ精度の良いエッジ計測が可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1 光源、4 ビームスプリッター、5 対物レンズ、6 被測定物、8 光検出器、 11 加工液、60 絞り、
101〜104 エッジ検出装置、
110 投光系、120 受光系、130 第1駆動装置、140 第2駆動装置、
150 フォーカス検出部、160 エッジ検出部、170 デフォーカス機構、
180 防液機構、181 窓。
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面にレーザ光を照射しその反射光を捉えることで対象物表面における、高度差を有する段の境界いわゆるエッジを検出するエッジ検出装置に関し、特に放電加工や切削加工、研削加工等において被加工物の形状を計測するために使用可能なエッジ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤ放電加工においては、加工時に被加工物の形状を測定し、計測された寸法をフィードバックして追加工することを繰り返して最終形状に追い込むことが行なわれる。このように加工途中での計測作業が必要なため、作業時間を短縮するためには、短時間での計測が望まれている。被加工物の計測は、従来、接触式のプローブを各加工断面に接触させて断面間の寸法を測定することで行なわれていた。この接触プローブ方式は、広く知られた方式であり、例えば特許文献1にその一例が開示されている。
【0003】
一方、測定対象物が金属ではない場合、例えばIC等の微細加工技術におけるマスクとウエハとの位置合わせやパターンの線幅測定等の場合には、レーザ光を集光し測定対象物面に照射し、測定対象物からの反射光を検出することで、エッジを検出して測定を行う方法が存在する。尚、エッジとは、上述のように測定対象物面における高度差を有する段の境界をいう。
【0004】
例えば特許文献2では、半導体レーザ(LD)からのレーザビームを被測定面に集光照射し、その反射散乱光を2分割光検出器(PD)上に結像して、反射光強度あるいは反射光強度パターンからエッジ検出信号を得ることが開示されている。エッジ検出を正確に行なうためには、被測定面へレーザビームを合焦させる必要があることから、上記反射散乱光をさらに4分割光検出器に結像させて、非点収差法によりフォーカス検知を行なっている。
【0005】
また、特許文献3では、被測定物面にレーザビームを照射し、さらにレーザビームを焦点方向にも移動させて、その反射光の微分強度の絶対値が最大となる状態に制御することで、ベストフォーカス位置への設定を行っている。このようなフォーカス状態にて、レーザビームを被測定物面上でスキャンし、微分信号のピーク位置を検知してエッジ位置としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3015636号公報
【特許文献2】特開昭62−142205号公報
【特許文献3】特開平2−239215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるような接触プローブ方式では、複数の加工断面の計測を行うためには、被加工物に対して、プローブを2次元平面内だけでなく3次元的に移動させる必要があり、計測に長時間を要するという問題がある。また、ワイヤ放電加工では、水や油などの加工液中で被加工物に対して加工を行なうが、プローブを被加工物に接触させるためには、加工液を一旦排出する必要がある。よって、放電加工等での計測には、さらに時間を要するという問題があった。
【0008】
また、放電加工等で加工される金属製の被加工物は、通常、その表面が荒れた散乱面である。ここで言う、荒れた散乱面とは、被加工物面の位置によって光の反射率及び散乱放射角特性が変化する表面のことである。金属の粗面では、光沢表面上に数μmオーダーの山、谷が刻まれている。よって、粗面に入射した光線は、山、谷における微小傾斜に応じて正反射散乱するため、被加工物面の位置によってその反射率が大きく変化する。したがって、金属製の被加工物に対して、特許文献2、3に開示されるようなレーザ光を用いたエッジ検出方式を採用した場合、エッジ検出用のフォトダイオード上の集光スポットの形状は、被加工物上の集光スポットの形状とは大きく異なったものとなる。
【0009】
即ち、特許文献2にて説明されている非点収差法は、面荒れのない表面からの反射スポットを検知することを前提としている。図14には、このような面荒れのない鏡面への照射光がデフォーカス(非合焦)状態からフォーカス(合焦)状態、さらにデフォーカス状態へ変化したとき、その反射光のフォトダイオード検出面における反射スポット形状がどのように変化するかが示されている。図14から分かるように、鏡面の場合、フォーカス状態では、反射スポット形状は、真円形になる。
【0010】
一方、図15には、荒れた金属表面による反射スポット形状について、フォーカスからデフォーカスによる変化例が示されている。図15に示すように、荒れた金属表面による反射スポット形状は、上述のように金属表面上への光照射位置によって大きく変化することから、反射スポット形状からフォーカス位置を反映した正しい信号を得ることはできない。換言すると、特許文献2にて説明されている非点収差法では、荒れた金属表面による反射光から、金属表面に対する照射光のフォーカス位置を得ることはできない。
【0011】
また、特許文献3にて説明されているフォーカス制御方法を、鏡面に適用したときに得られる信号と、金属粗面に適用したときに得られる信号とを、図16及び図17にそれぞれ示す。鏡面の場合、上述のように照射光形状と反射スポット形状とは相関関係にあることから、反射光強度の変化は、エッジ位置だけで生じる。よって、微分信号のピークは、エッジ位置にのみ発現する。
【0012】
これに対して金属粗面の場合には、エッジ以外にも粗面に起因して反射光量が大きく変化するため、その微分信号もエッジ以外に多数発生する。また、エッジ端面の欠けなどによっても信号強度が変化するため、エッジ近傍では、本来のエッジによる微分ピーク以外の微分ピークが重畳される。このように、特許文献3に開示されるフォーカス制御方法も、面荒れのない表面に対するフォーカス制御を前提としており、金属粗面に適用した場合には、微分信号を作成しても正確なフォーカス位置が検出できないばかりか、エッジ位置の検出も困難である。
【0013】
このように、放電加工等で加工される金属製の被加工物、つまり粗面を有する被測定物に対しては、特許文献2、3に開示されるような方法では、フォーカス検知が困難であり、正確なエッジ検出ができない。また、従来、金属粗面上におけるエッジを、レーザ光の反射光を用いて検出する技術は、存在していない。
【0014】
本発明は、金属粗面上におけるエッジの検出が可能であるエッジ検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様におけるエッジ検出装置は、被測定物の測定面にて高低差を有するエッジを、測定面に光ビームを照射しながら測定面をスキャンすることで検出するエッジ検出装置であって、光源及び対物レンズを有し、光源からの光を対物レンズを介して上記測定面に集光する投光系と、投光系から照射された光ビームの測定面での反射光を受光位置まで導き集光させ、かつ上記投光系における被測定物に対する集光位置と上記受光位置との間に結像関係を有する光学系を含むとともに、上記受光位置に複数の検出部を設置した分割光検出器を含む受光系と、投光系の光ビームの照射方向に対して直交する方向へ投光系と被測定物とを相対的に移動させる第1駆動装置と、投光系と被測定物とを上記照射方向に相対的に移動させる第2駆動装置と、上記分割光検出器に電気的に接続され、第2駆動装置により測定面と投光系との間の距離を変化させて行うそれぞれのスキャンによって分割光検出器から得られる複数の出力信号の中から最大振幅を有する信号を検出して、測定面に対する投光系の合焦位置を決定するフォーカス検出部と、得られた合焦位置に投光系を配置して上記測定面に対して行うスキャンにより、上記分割光検出器の複数の検出部から供給される振幅強度信号の出力強度差から測定面のエッジを検出するエッジ検出部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様におけるエッジ検出装置によれば、投光系、受光系、フォーカス検出部、エッジ検出部等を備え、フォーカス検出部は、複数の反射光信号の振幅に着目し、振幅が最大となる場合の投光系の照射方向位置を求めることで、被測定物に対する投光系の合焦位置を検出する。よって、被測定物が荒れた金属粗面の場合で、光ビームの照射位置によって光ビームの反射率や散乱放射角特性が異なり反射光信号に複数のピークが発現するような場合であっても、最大振幅を有する反射光信号を見つけることで、被測定物に対する投光系の合焦位置を検出することができる。被測定物に対する投光系の集光位置と、受光系における分割光検出器の受光位置とは、予め、結像関係に設定しておくことで、投光系を合焦位置に設定することで必然的に受光系も合焦状態に設定される。このような合焦状態において、被測定物を光ビームでスキャンすることで、エッジ検出部は、被測定物のエッジを検出することができる。
【0017】
このように本発明の一態様におけるエッジ検出装置によれば、金属粗面上におけるエッジを、レーザ光の反射光を用いて検出することが可能となる。したがって、従来の接触プローブ方式に比べて、測定時間を短縮することができる。また、測定時間の短縮から派生して、エッジ検出装置におけるエネルギー消費量の削減、及び環境負荷低減を図ることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1におけるエッジ検出装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す投光系の構成を示す図である。
【図3】図1に示す受光系の構成を示す図である。
【図4a】エッジ検出時における4分割フォトダイオード上の集光スポットの形状変化を示す図である。
【図4b】エッジ検出時における4分割フォトダイオード上の集光スポットの形状変化を示す図である。
【図4c】エッジ検出時における4分割フォトダイオード上の集光スポットの形状変化を示す図である。
【図5a】鏡面である測定物におけるエッジ部分の断面の模式図である。
【図5b】図5aに示すエッジ部分の4分割フォトダイオードでの受光信号を示す図である。
【図5c】図5bに示す受光信号の差信号を示す図である。
【図5d】図5aに示すエッジ部分へ照射する光ビームをデフォーカスした場合の4分割フォトダイオードでの受光信号を示す図である。
【図5e】図5dに示す受光信号の差信号を示す図である。
【図6】投光系のフォーカス調整における投光系の集光ビームと被測定物との位置関係を説明するための図である。
【図7】図6に示す各位置関係における受光信号の振幅強度の変化を説明するためのグラフである。
【図8a】粗面である金属の被測定物におけるエッジ部分の断面の模式図である。
【図8b】図8aに示すエッジ部分の4分割フォトダイオードでの受光信号を示す図である。
【図8c】図8bに示す受光信号の差信号を示す図である。
【図8d】図8aに示すエッジ部分へ照射する光ビームをデフォーカスした場合の4分割フォトダイオードでの受光信号を示す図である。
【図8e】図8dに示す受光信号の差信号を示す図である。
【図9a】本発明の実施の形態2におけるエッジ検出装置の構成を示す図であり、投光系のフォーカス調整時における構成図である。
【図9b】本発明の実施の形態2におけるエッジ検出装置の構成を示す図であり、エッジ検出時における構成図である。
【図10a】実施の形態2におけるエッジ検出装置にて得られる、エッジ部分の4分割フォトダイオードでの受光信号を示す図である。
【図10b】図10aに示す受光信号の差信号を示す図である。
【図11a】4分割フォトダイオードにおけるフォーカス状態での集光スポットを示す図である。
【図11b】4分割フォトダイオードにおけるデフォーカス状態での集光スポットを示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3におけるエッジ検出装置の構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態4におけるエッジ検出装置の構成を示す図である。
【図14】鏡面の測定面に対する、非点収差法における4分割フォトダイオードでの集光スポットのフォーカス状態及びデフォーカス状態での形状を示す図である。
【図15】金属の粗面に対する、非点収差法における4分割フォトダイオードでの集光スポットのフォーカス状態及びデフォーカス状態での形状を示す図である。
【図16】鏡面の測定面に対する、特許文献3によるフォーカス検知信号を示す図である。
【図17】金属の粗面に対する、特許文献3によるフォーカス検知信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態であるエッジ検出装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0020】
実施の形態1.
図1には、本発明の実施の形態1におけるエッジ検出装置101の概略構成が示されている。エッジ検出装置101は、特に、荒れた散乱面つまり粗面を有する金属製の被測定物6の粗面におけるエッジを、粗面に照射したレーザ光の反射光を用いて検出する装置である。ここでエッジとは、既に説明した、金属面において高度差を有する段の境界をいう。また、エッジ検出装置101は、放電加工や切削加工、研削加工等において被加工物の形状を計測するために使用可能である。尚、エッジ検出装置101の被測定物6は、粗面を有する金属製の測定物に限定されるものではなく、エッジ検出装置101は、勿論、荒れた散乱面ではない鏡面状の被測定物に対しても適用可能である。
【0021】
このようなエッジ検出装置101は、基本的構成部分として、投光系110、受光系120、第1駆動装置130、第2駆動装置140、フォーカス検出部150、及びエッジ検出部160を備える。これらの各構成部分について、順次、以下に説明していく。
【0022】
投光系110は、図2に示すように、被測定物6に対してレーザ光を集光し照射する構成部分であり、基本的に光源1と光学系とを備える。当該投光系110の光学系としては、第1レンズ3と対物レンズ5とを有する。光源1は、半導体レーザから構成される。また、光源1、第1レンズ3、及び対物レンズ5は、直線状の光路を形成して鏡筒2に収められている。鏡筒2は、第2駆動装置140と接続されている。
【0023】
上述のように本実施形態では、光源1、第1レンズ3、及び対物レンズ5は、直線状の光路を形成しているが、光路形状はこれに限定されない。尚、第1レンズ3と対物レンズ5との間には、受光系120を構成するビームスプリッター4が設置される。投光系110において、ビームスプリッター4は単に光を透過させる物であり、光学的作用を行わない。
【0024】
このような投光系110は、光源1から出射された光51が第1レンズ3でコリメートされた後、対物レンズ5で集光され、被測定物6の測定面6aに光ビーム51a(図2)として照射され、集光スポット52を形成する。尚、図1では、集光スポット52の半分だけ被測定物6の測定面6aに存在する様子を示している。
【0025】
第2駆動装置140は、対物レンズ5における光軸の方向、つまり図2に矢印bで示す照射方向に鏡筒2ごと投光系110を移動可能とする機構である。即ち、第2駆動装置140は、被測定物6の測定面6aに対する投光系110の合焦動作を可能にする。尚、本実施形態では、第2駆動装置140は、被測定物6に対して投光系110を矢印b方向に移動させるが、この構成に限定されず、投光系110と被測定物6とを相対的に矢印b方向へ移動させる装置であればよい。
【0026】
受光系120は、図3に示すように、被測定物6の測定面6aへ投光系110により集光された光ビーム51aの測定面6aにおける反射光を受光する光学部分であり、基本的に光検出器8と光学系とを備える。光検出器8は、図4aに示すように、一つの受光位置8aに配置される一つの受光面を複数の検出部に分割したフォトダイオードであり、本実施形態では受光面を4等分したフォトダイオードである。受光系120における光学系としては、対物レンズ5と、ビームスプリッター4と、第3レンズ7とを有し、反射光の進行に沿ってこの順に配置されている。また本実施形態では、受光系120は、投光系110の対物レンズ5と同一のレンズを対物レンズとして共用している。ビームスプリッター4は、対物レンズ5を通過した反射光を反射し、第3レンズ7へ入射させる。第3レンズ7は、集光レンズであり、光検出器8の受光位置8aにおける受光面に反射光を集光させる。第3レンズ7及び光検出器8は、鏡筒9内に設置される。尚、ビームスプリッター4は、上述のように、投光系110の鏡筒2内に設置されており、受光系120の鏡筒9と、投光系110の鏡筒2とは、直交して接続されている。
【0027】
受光系120の光学系では、光検出器8である4分割フォトダイオードの受光位置8aは、投光系110からの光ビームが集光する位置と結像関係にあるように調整されている。即ち、投光系110からの光ビーム51aの集光位置に被測定物6の測定面6aがあるとき、その反射光は、光検出器8の受光位置8aに結像されることになる。
【0028】
このように構成される受光系120は、図3に示すように、投光系110による集光スポット52のうち被測定物6の測定面6aにある領域53からの反射光54が、投光系110の集光レンズでもある対物レンズ5によりコリメートされ、ビームスプリッター4で反射され、第3レンズ7により光検出器8の受光位置8aにある受光面の中心に集光され、集光スポット55を形成する。
【0029】
第1駆動装置130は、被測定物6を載置するステージを有し、平面上で互いに直交するX,Y方向へステージつまり被測定物6を可動とする装置である。ここで、X,Y方向は、第2駆動装置140による投光系110の移動方向である矢印bで示す照射方向に直交する方向である。尚、本実施形態では、第1駆動装置130は、固定された投光系110に対して被測定物6を移動させるが、この構成に限定されず、投光系110と被測定物6とを相対的にX,Y方向へ移動させる装置であればよい。
【0030】
フォーカス検出部150は、光検出器8、第1駆動装置130、及び第2駆動装置140と電気的に接続され、被測定物6に対する投光系110の合焦位置を検出する部分である。詳しくは以下の動作説明箇所にて説明する。
【0031】
エッジ検出部160は、フォーカス検出部150及び第1駆動装置130と電気的に接続され、被測定物6のエッジを検出する部分である。詳しくは以下の動作説明箇所にて説明する。
【0032】
フォーカス検出部150及びエッジ検出部160は、実際にはコンピュータを用いて実現され、それぞれの機能に対応するソフトウェアと、これを実行するためのCPU(中央演算処理装置)やメモリ等のハードウェアから構成されている。
【0033】
以上のように構成されるエッジ検出装置101の動作について、以下に説明する。尚、以下の説明では、第1駆動装置130によって被測定物6をX方向に移動させてエッジ検出を行う場合を例に採るが、Y方向への移動に関しても同様である。
【0034】
まず、エッジ検出装置101におけるエッジ検出の原理から説明する。
説明の都合上、まず、被測定物上面における光ビームの照射位置の変化によって、光ビームの反射率及び散乱放射角特性が変わらない場合について考察する。具体的には、散乱のない鏡面、もしくは紙などの被測定物上面の粗面構造が光の波長構造以下である表面などが挙げられる。尚、このような表面を有する被測定物について、被測定物6と区別するため、ここの説明箇所では、非粗面測定物と記す。
【0035】
このような状態において、エッジから十分離れた非粗面測定物に集光スポット52が照射されている場合には、光検出器8(4分割フォトダイオード)上の集光スポット55の形状は、集光スポット52の形状を反映したものとなる。つまり、集光スポット52が円形状であれば、集光スポット55も円形状となる。
【0036】
エッジを検出するには、第1駆動装置130により非粗面測定物をX方向に移動させることにより、投光系110から非粗面測定物に照射される光ビーム51aにて非粗面測定物をスキャンし、光ビーム51aが非粗面測定物のエッジを通過するようにする。
【0037】
光ビーム51aの集光スポット52が非粗面測定物で反射した反射光は、対物レンズ5を透過し、ビームスプリッター4で反射されて、第3レンズ7にて集光され、光検出器8の受光面に入射する。光検出器8の受光面における集光スポット55の形状は、光ビーム51aの集光スポット52が非粗面測定物で反射される領域に応じて、変化する。その様子を図4aから図4cに示す。
【0038】
図4aは、非粗面測定物上の一部にのみ集光スポット52が乗っている状態を示し、図4bは、集光スポット52のちょうど半分が非粗面測定物に乗った状態を示し、図4cは、集光スポット52の大部分が非粗面測定物に乗っている状態を示す。ここで、光検出器8の4つに分割されている受光面における、領域81と領域82との和の受光強度をI(A)、領域83と領域84との和の受光強度をI(B)とする。
【0039】
ここで、非粗面測定物における、図5aに示す断面の上面を、集光スポット52がスキャンしたときの、受光強度I(A)、I(B)を図5bに示す。受光強度I(A)と受光強度I(B)とは、X方向に分離した信号となるので、図5cに示すように、この差信号、I(A)−I(B)は、図5aに示す断面のエッジ位置に対応してピークが現れる。これらのピークの現れるX方向の位置を、それぞれエッジ位置とする。
【0040】
ここで、仮に、非粗面測定物上の集光スポット52をデフォーカス(非合焦)した場合での、光検出器8の受光面上における集光スポット55の、受光強度をI’(A)、I’(B)とし、これらを図5dに示す。尚、受光強度I’(A)、I’(B)は、上述の受光強度をI(A)、I(B)に相当する。また、受光強度をI’(A)、I’(B)の差信号を図5eに示す。
【0041】
図5eから明らかなように、光検出器8の受光面上における集光スポット55がデフォーカスすると、つまり、非粗面測定物に対して投光系110がデフォーカスしていると、受光強度I’(A)と、受光強度I’(B)とは、X方向においてほとんど重なってしまい、これらの差信号を取っても、ピークが小さくなり、エッジ検出精度は低下する。このように、非粗面測定物(被測定物6でも同じ)に対する投光系110の集光位置と、受光系120の光検出器8の受光位置8aとが結像関係にあることは、エッジ検出にとって重要である。
【0042】
次に、受光系120のフォーカス調整、換言すると被測定物6のエッジ検出動作について説明する。
上では非粗面測定物を例に説明したが、エッジ検出装置101は、被測定物上面が粗面である金属の場合でもフォーカス調整が可能である。これについても以下に説明する。
投光系110に対して、集光スポット52が最小となる位置に被測定物6の測定面6aがあるとき、「投光系はフォーカス調整されている」と呼ぶことにする。同様に、被測定物6の測定面6aと、光検出器8とが結像関係にあるとき、「受光系がフォーカス調整されている」と呼ぶことにする。本実施の形態では、上述したように、光検出器(4分割フォトダイオード)8の受光面の位置は、投光系110からの光ビームが集光する位置と結像関係にあるように調整されているので、投光系110がフォーカス調整されていると、受光系120もフォーカス調整されていることになる。このように、投光系110と受光系120とがともにフォーカス調整されている状態を、「投受光系がフォーカス調整されている」と呼ぶことにする。
【0043】
図6は、投光系110からの光ビーム51aで被測定物6の測定面6aをスキャンするときの、測定面6aの測定配置位置を示す。即ち、投光系110の対物レンズ5と、被測定物6の測定面6aとの間の、矢印b方向における距離を、測定面6aが、図に示す(a),(b),(c)の各位置に配置されるように、フォーカス検出部150は第2駆動装置140にて変化させ、さらにフォーカス検出部150は、第1駆動装置130にて被測定物6を移動させることで、各位置に配置された測定面6aをスキャンする。尚、位置(c)が投光系110の合焦位置に相当し、位置(a)が最も非合焦(デフォーカス)の位置に相当する。
【0044】
このような設定下で、測定面6aが粗面である金属に対してスキャンを行い、フォーカス検出部150によって、光検出器8の4つの検出部より得られる全信号の和を、被測定物6の送り距離Xに対して測定することで、図7に示すように、位置(a)〜(c)に対応する各信号波形が得られる。これらの信号波形から分かるように、位置(a)から(b),(c)とフォーカスが合うに従って、投光系110の集光スポット52の径は小さくなり、光検出器8の信号波形も金属の粗面構造を反映して大きな振幅を有するようになる。
【0045】
このように、フォーカス検出部150によって、投光系110の対物レンズ5と、被測定物6の測定面6aとの間の、矢印b方向における距離を変化させながら、被測定物6の測定面6aを光ビーム51aでスキャンすることを繰り返して、光検出器8からの出力信号における振幅強度が最も大きくなる矢印b方向における距離を見つけることで、投光系110のフォーカス調整を行うことができる。即ち、このような手法を採ることで、測定面6aが粗面である金属に対しても投光系110のフォーカス調整が可能となる。
【0046】
また、図7の信号振幅は、投光系110がフォーカス調整されているかどうかに依存し、受光系120がフォーカス調整されているかどうかには依存しない。しかしながら、エッジ検出装置101では、上述のように、予め「投受光系がフォーカス調整されている」状態に設定しているので、受光系120のフォーカス調整も同時になされたことになる。したがって、上述の手法を採ることで、測定面6aが粗面である金属に対しても受光系120のフォーカス調整も可能となる。
【0047】
尚、光検出器8における4分割の検出部の位置を平面内で移動させ、集光ビーム55がある一つの検出部上にあるように調整し、その一つの信号の振幅強度を用いてフォーカス検知を行っても良い。
【0048】
上述のようにして得られる、測定面6aが粗面である金属製の被測定物6におけるエッジの測定例を図8a〜図8eに示す。このエッジ検出動作は、エッジ検出部160によって実行される。
投受光系がフォーカス調整されている状態で、図8aに示すような断面を持つ被測定物6の測定面6aをスキャンしたときの信号I(A)、I(B)を図8bに示し、この差信号I(A)−I(B)を図8cに示す。図8cにおける両端のピークを与える位置Xが被測定物6の両端のエッジ位置に相当する。このエッジ位置を元に、被測定物6の寸法測定を行うことができる。
【0049】
尚、投光系110はフォーカス調整されているが、受光系120はデフォーカスされている場合の信号I(A)、I(B)を図8dに示し、図8eは、その差信号I(A)−I(B)を示している。図8d及び図8eから明らかなように、測定面6aが粗面である金属製の被測定物6におけるエッジを測定する場合においても、受光系120がデフォーカス状態では、信号I(A)と信号I(B)との差は小さくなり、エッジ測定が困難になる。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態1では、上述したように、第2駆動装置140によって投光系110の合焦動作を行い、即ち、被測定物6の測定面6aにおける集光スポット52が最小の状態において、エッジ検出用のスキャンを行っている。これに対し、本実施形態2のエッジ検出装置102は、合焦後、意図的に集光スポット52の測定面6aでの大きさを変化させてデフォーカスしてスキャンを行う。図9a及び図9bに示すように、このためのデフォーカス機構170を、エッジ検出装置102はさらに備える。尚、エッジ検出装置102におけるその他の構成は、エッジ検出装置101の構成に同じである。よって、以下では、デフォーカス機構170に関する部分についてのみ説明を行う。
【0051】
デフォーカス機構170を設けることで、投光系110の対物レンズ5と被測定物6との距離を変えることなく、投光系110における集光スポット52の測定面6aでの大きさを変える、つまりデフォーカスさせることができる。その一つの手法として、デフォーカス機構170は、光源1と対物レンズ5との間に配置された光学素子間の間隔を変更する。本実施の形態2では、デフォーカス機構170は、光源1と第1レンズ3との間の距離aを変化させて、集光スポット52のデフォーカスを行う。ここで、a=a0に設定すると、投光系110からの光ビーム51aの集光位置と、光検出器(4分割フォトダイオード)8の受光面の受光位置8aとは、結像関係にあるように調整されるものとする。被測定物6を測定する前、例えば当該エッジ検出装置102を組み立てる段階において、各レンズ間の距離等を正確に測定する等の手段により、上記条件を満たす距離a0を探すことは容易である。
【0052】
受光系120のフォーカス調整のために、まず光源1と第1レンズ3との間の距離をa=a0に合わせる。その後、実施の形態1で説明した手順により、被測定物6に対する投光系110のフォーカス位置を合わせる。そのときの装置構成図を図9aに示す。a=a0とし、「投受光系がフォーカス調整されている」状態であるので、受光系120のフォーカス調整もなされたことになる。
【0053】
投光系110の集光スポット52が過小ではない場合は、金属粗面によるノイズも小さく、投受光系がフォーカス調整されている状態でエッジ検出を行なっても問題がない。一方、投光系の集光スポット52が小さくなり過ぎると、金属粗面によるノイズが大きくなってしまい、エッジ検出精度が劣化する。このような場合、投受光系のフォーカス調整を行った後、デフォーカス機構170によって、光源1と第1レンズ3との間の距離をa=a0から意図的にずらし、受光系120はフォーカス状態のまま、投光系110のみをデフォーカス状態とする。そのときのエッジ検出装置102の配置図を図9bに示す。例えば距離a>a0とすることで、被測定物6の測定面6aにおける投光系110の集光スポット52の大きさは拡大する。
【0054】
このように集光スポット52の大きさを拡大させることで、実施の形態1で述べた効果に加えて、さらに以下の効果を得ることができる。
即ち、投光系110が合焦位置にあるときには、図8bに示すように、受光強度には鋭いピークが見られるが、デフォーカス機構170によって投光系110の集光スポット52を大きくすることで、光照射領域内の各点の反射信号を積分した信号が光検出器8で検出されることになる。よって、被測定物6の測定面6aの位置の違いによる反射信号のゆらぎが小さくなり、図10aに示すように、受光強度は、なだらかなピークとなる。信号I(A)、I(B)の各波形は、なだらかになるが、信号I(A)と信号I(B)とは、被測定物6の移動方向において左右に分離されたままであるので、図10bに示すように、差信号I(A)−I(B)は、エッジ位置で大きなピークが発現する。このように、デフォーカス機構170により、金属粗面によるノイズを低減し、エッジ検出精度を向上させることができる。
【0055】
また、投光系110からの集光スポット52を大きくすると、図9bに示されるように、光検出器8の受光面における集光スポット55が大きくなることから、光検出器8における不感度領域による光量低下を低減することができるという効果もある。即ち、図11a及び図11bに示すように、4分割フォトダイオードは、通常、各検出部同士の境界部に、光に対する感度がない不感度領域85を有する。よって、図11aに示すように、集光スポット55が小さい場合には、集光スポット55に対する不感度領域85の割合が大きい。これに対し図11bに示すように、投光系110をデフォーカスし集光スポット55を大きくすることで、集光スポット55に対する不感度領域85の割合は小さくなり、受光領域81〜84で受光される光量は増加する。よって、不感度領域による光量低下防止効果が得られる。
【0056】
実施の形態3.
上述の実施の形態2では、投光系110からの集光スポット52を拡大させる手法として、上述したようにデフォーカス機構170を設け、投光系110における光学系の素子間隔を変える手法を採った。
これに対し図12に示すように、本実施の形態3のエッジ検出装置103では、投光系110及び受光系120におけるフォーカス状態を維持した状態で集光スポット52を拡大させるために、開口径が可変である絞り機構60を設ける。絞り機構60は、投光系110の光路中に光線束を制限する絞りを有し、これにより実施の形態2の場合と同様の効果を得ることができる。即ち、絞りを小さくしぼることにより生じる回折の効果によって、投光系110からの集光スポット52を大きくするものである。
【0057】
絞り機構60を設ける手法は、投光系110における光学系の素子間隔を変える手法に比べて構造上の変更が少なくて済むという利点がある。また、被測定物6の測定面6aは、光ビーム51aの集光位置にあるので、エッジ検出中に被測定物6の高さが変動したとしても、集光スポット52の位置変動が小さいという利点もある。
【0058】
尚、絞り機構60の設置場所は、本実施の形態3における対物レンズ5と被測定物6との間に限定するものではない。
【0059】
実施の形態4.
本実施の形態4では、図13に示すように、例えばワイヤ加工放電等における加工液11内に配置した被測定物6に対して適用可能なエッジ検出装置104について説明する。
エッジ検出装置104は、上述した実施の形態1から3におけるエッジ検出装置101〜103に対して防液構造180をさらに備えた構造である。尚、図13では、例えば図1に示すエッジ検出装置101に防液構造180をさらに備えた構成例を示している。また、エッジ検出装置が投光系110と受光系120とで対物レンズ5を共用しない構成を採る場合には、投光系110では対物レンズ5の出射側に、受光系120では対物レンズ5の入射側に、それぞれ防液構造180を備える構成を採ることができる。
【0060】
防液構造180は、投光系110の鏡筒2に対して対物レンズ5側に防液仕様で取り付けられる。防液構造180は、対物レンズ5と被測定物6との間に、投光系110から被測定物6へ照射される光ビーム51a及び被測定物6から受光系120へ入射する反射光54が透過する透明な材料からなる窓181を有する。このような防液構造180は、例えば窓181部分が加工液11に浸される。
【0061】
また、第1駆動装置130は、加工液11の外側に配置され、被測定物6を例えばX方向に移動させる、あるいは、エッジ検出装置104を例えばX方向に移動させる。その他の構成は、上述の、エッジ検出装置101における構成に同様である。
このように構成されるエッジ検出装置104によれば、実施の形態1〜3で述べた効果に加えて、以下の効果をさらに得ることができる。
【0062】
即ち、エッジ検出装置104によれば、被測定物6のエッジ検出を行う、いわゆる光学ヘッド部分を加工液11に浸してエッジを検出することが可能になる。詳しく説明すると、防液構造180を持たない構造では、エッジ検出装置の光学ヘッド部分が加工液11に触れないようにして測定を行う必要があり、加工液11の上から、加工液11を通してエッジ測定を行うことになる。この場合、加工液11と空気との界面ゆらぎにより、信号がゆらぎ、正確なエッジ測定ができないという問題がある。一方、この信号のゆらぎを無くすために、加工液11を一旦排出して測定を行うと、加工液11の排出に時間を要し、また、被測定物6のエッジ部に残留する加工液滴も測定精度を悪化させるという問題が生じる。このように防液構造180を有しないエッジ検出装置は、問題を有する。
【0063】
一方、本実施形態4のエッジ検出装置104によれば、上述の問題を解決することができ、高速で、かつ精度の良いエッジ計測が可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1 光源、4 ビームスプリッター、5 対物レンズ、6 被測定物、8 光検出器、 11 加工液、60 絞り、
101〜104 エッジ検出装置、
110 投光系、120 受光系、130 第1駆動装置、140 第2駆動装置、
150 フォーカス検出部、160 エッジ検出部、170 デフォーカス機構、
180 防液機構、181 窓。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の測定面にて高低差を有するエッジを、測定面に光ビームを照射しながら測定面をスキャンすることで検出するエッジ検出装置であって、
光源及び対物レンズを有し、光源からの光を対物レンズを介して上記測定面に集光する投光系と、
投光系から照射された光ビームの測定面での反射光を受光位置まで導き集光させ、かつ上記投光系における被測定物に対する集光位置と上記受光位置との間に結像関係を有する光学系を含むとともに、上記受光位置に複数の検出部を設置した分割光検出器を含む受光系と、
投光系の光ビームの照射方向に対して直交する方向へ投光系と被測定物とを相対的に移動させる第1駆動装置と、
投光系と被測定物とを上記照射方向に相対的に移動させる第2駆動装置と、
上記分割光検出器に電気的に接続され、第2駆動装置により測定面と投光系との間の距離を変化させて行うそれぞれのスキャンによって分割光検出器から得られる複数の出力信号の中から最大振幅を有する信号を検出して、測定面に対する投光系の合焦位置を決定するフォーカス検出部と、
得られた合焦位置に投光系を配置して上記測定面に対して行うスキャンにより、上記分割光検出器の複数の検出部から供給される振幅強度信号の出力強度差から測定面のエッジを検出するエッジ検出部と、
を備えたことを特徴とするエッジ検出装置。
【請求項2】
投光系から照射された光ビームの測定面における光スポットを拡大させるデフォーカス機構を投光系に備えた、請求項1記載のエッジ検出装置。
【請求項3】
上記デフォーカス機構は、投光系における光源から対物レンズまでに配置された光学素子の間隔を変更する機構である、請求項2記載のエッジ検出装置。
【請求項4】
上記光スポットを拡大させる機構は、投光系における光源から対物レンズまでの光路に設けた、開口径が可変の絞り機構である、請求項2記載のエッジ検出装置。
【請求項5】
上記受光系は、投光系における対物レンズを共用し、投光系と受光系との光路を分離するビームスプリッタを、受光系において上記対物レンズの出射側に備えた、請求項1から4のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項6】
投光系及び受光系と被測定物との間に配置され、投光系から測定面へ照射される光ビーム及び測定面から受光系へ入射する反射光が透過する窓を有する防液構造をさらに備え、加工液内に配置した被測定物に対して上記防液構造を介して投光系及び受光系はエッジ検出を行う、請求項1から5のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項1】
被測定物の測定面にて高低差を有するエッジを、測定面に光ビームを照射しながら測定面をスキャンすることで検出するエッジ検出装置であって、
光源及び対物レンズを有し、光源からの光を対物レンズを介して上記測定面に集光する投光系と、
投光系から照射された光ビームの測定面での反射光を受光位置まで導き集光させ、かつ上記投光系における被測定物に対する集光位置と上記受光位置との間に結像関係を有する光学系を含むとともに、上記受光位置に複数の検出部を設置した分割光検出器を含む受光系と、
投光系の光ビームの照射方向に対して直交する方向へ投光系と被測定物とを相対的に移動させる第1駆動装置と、
投光系と被測定物とを上記照射方向に相対的に移動させる第2駆動装置と、
上記分割光検出器に電気的に接続され、第2駆動装置により測定面と投光系との間の距離を変化させて行うそれぞれのスキャンによって分割光検出器から得られる複数の出力信号の中から最大振幅を有する信号を検出して、測定面に対する投光系の合焦位置を決定するフォーカス検出部と、
得られた合焦位置に投光系を配置して上記測定面に対して行うスキャンにより、上記分割光検出器の複数の検出部から供給される振幅強度信号の出力強度差から測定面のエッジを検出するエッジ検出部と、
を備えたことを特徴とするエッジ検出装置。
【請求項2】
投光系から照射された光ビームの測定面における光スポットを拡大させるデフォーカス機構を投光系に備えた、請求項1記載のエッジ検出装置。
【請求項3】
上記デフォーカス機構は、投光系における光源から対物レンズまでに配置された光学素子の間隔を変更する機構である、請求項2記載のエッジ検出装置。
【請求項4】
上記光スポットを拡大させる機構は、投光系における光源から対物レンズまでの光路に設けた、開口径が可変の絞り機構である、請求項2記載のエッジ検出装置。
【請求項5】
上記受光系は、投光系における対物レンズを共用し、投光系と受光系との光路を分離するビームスプリッタを、受光系において上記対物レンズの出射側に備えた、請求項1から4のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項6】
投光系及び受光系と被測定物との間に配置され、投光系から測定面へ照射される光ビーム及び測定面から受光系へ入射する反射光が透過する窓を有する防液構造をさらに備え、加工液内に配置した被測定物に対して上記防液構造を介して投光系及び受光系はエッジ検出を行う、請求項1から5のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図8e】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図8e】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−194085(P2012−194085A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58761(P2011−58761)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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