説明

エッチング装置

【課題】処理基板の中心部と周辺部のエッチング速度が異なるローディング効果を抑制することの出来るエッチング装置を提供する。
【解決手段】処理基板11が載置されるステージ7が配置された陰極側電極3と、該電極に対向する陽極側電極との間に、前記陽極側電極側から前記陰極側電極側に貫通して、開口状態が調整可能な複数の開口部100を有する障害物9を、処理基板11の近傍に該基板の全面を覆うように配設することによって、前記基板の面内中心部のプラズマ密度を低減させて前記基板の中心部と外周部のプラズマ密度の偏りを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
処理基板(例えば、ガラス、樹脂、金属、シリコンなど)に特定の微細パターンを形成したパターン形成体が広範に用いられている。例えば半導体デバイス、光学素子、配線回路、記録デバイス(ハードディスクやDVDなど)、医療検査用チップ(DNA分析用途など)、ディスプレイパネル、マイクロ流路などが挙げられる。
【0003】
このようなパターン形成体を形成する方法として、フォトリソグラフィや電子線リソグラフィによって、レジストパターンを形成し、該レジストパターンをエッチングマスクとして、露出された部分の処理基板をドライエッチングすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ドライエッチングは、真空引きされたチャンバ内にガスを導入し、一定圧力に保持して、チャンバ内に設けられた電極にRF電力を印加することでプラズマを発生させ、生じた活性種であるイオン・ラジカル等の作用により基板の表面をエッチングするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平7−503815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のドライエッチング装置では、プラズマ密度は処理基板中心部が高く、外周部が低い特性があり、処理基板中心部と外周部とではエッチング速度に差が生じる(ローディング効果)。このローディング効果により、処理基板中心部と外周部とで微細パターンにおいて線幅にばらつきが生じ、微細パターンの面内均一性が損なわれ、寸法精度が低下するという問題を有する。
【0007】
最終的に所望するパターン形成体は、ドライエッチング処理により形成されるため、パターン形成体の寸法精度の向上を目指すには、ドライエッチング処理において、基材の処理面側のプラズマ密度の偏りを抑制することが望ましい。
【0008】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、ローディング効果を抑制することの出来るエッチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、陽極側電極に対向して設けた陰極側電極上に処理基板を載せて、該処理基板をエッチング処理するエッチング装置において、前記処理基板と前記陽極側電極との間に一つまたは複数の部材から構成され、且つ前記処理基板の少なくとも一部領域を覆うような障害物を設け、前記障害物は前記陽極側電極側から前記陰極側電極側に貫通している複数の開口部を有していることを特徴とする。
【0010】
また、前記障害物は、前記陽極側電極側もしくは前記陰極側電極側に対向する両側もしくは片側の面が面内の一点を頂点とし周辺部位に向けて傾斜している部材であってもよい。
【0011】
また、前記障害物は、前記陽極側電極側もしくは前記陰極側電極側に対向する面が面内の一点を頂点とし周辺部位に向けて傾斜しており、前記陽極側電極側もしくは前記陰極側電極側に対向する面の反対の面が平面である部材であってもよい。
【0012】
また、前記障害物は、前記陽極側電極側に対向する面が面内の一点を頂点とし周辺部位に向けて傾斜しており、前記処理基板側に対向する面が前記陽極側電極側に対向する面に沿って傾斜されている部材であってもよい。
【0013】
また、前記障害物の開口部は、開口調整可能な部材であってもよい。
【0014】
また、前記障害物の垂直方向の厚みは、任意に設定可能であってもよい。
【0015】
また、前記障害物は、メッシュ構造の部材であってもよい。
【0016】
また、前記障害物は、前記陽極側電極側に対向する面が面内の一点から周辺部位に向けて直線で結ばれた円錐形状であってもよい。
【0017】
また、前記障害物は、前記陽極側電極側に対向する面が面内の一点から周辺部位に向けて曲線で結ばれたドーム形状であってもよい。
【0018】
また、前記障害物は個々の円柱状の部材が、同一または異なる半径をそれぞれ有し、一つまたは複数の円柱状の部材を積み重ねて構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエッチング装置は、障害物が、陽極側電極側から陰極側電極側に貫通している複数の開口調整可能な開口部を有し、処理基板の少なくとも一部を覆っていることにより、処理基板面内中心部のプラズマ密度を低減させることが出来る。このため、処理基板において、中心部と外周部のプラズマ密度の偏りを抑制することが出来ることから、ローディング効果を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係るエッチング装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1の処理基板近傍の部位を拡大して示す概略図である。
【図3】図1の障害物の一例を示す概略図である。
【図4】図1の障害物の他の例を示す概略図である。
【図5】図1の障害物の他の例を示す概略図である。
【図6】図1の障害物の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係るエッチング装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態に係るエッチング装置の概略構成を示すもので、真空チャンバ1の内部には、陰極側電極3、ステージ7上に配置した処理基板11、処理基板11を覆う障害物9、陽極側電極5が順に収容配置される。そして、真空チャンバ1には、エッチングガスを導入するガス導入口13、該真空チャンバ1内からエッチングガスを排出するガス排気口15、陰極側電極3に印加するRF電源17が設置されている。
【0023】
真空チャンバ1には、ガス導入口13からエッチングガスを導入すると共に、RF電源17でプラズマを発生させ、イオンやラジカルなど反応種を励起活性化し、陰極側電極3の上部に載せられた処理基板11をエッチングする。
【0024】
図2は、前記処理基板近傍の部位を拡大して示すもので、陰極側電極3上のステージ7には、処理基板11を設置し、例えばこの処理基板11の全面または一部、即ち、少なくとも一部を覆うように、障害物9を設置する。この障害物9には、複数の開口部100が形成されており、この開口部100でエッチングガスおよびプラズマを透過させる。
【0025】
障害物9は、陽極側電極側に対向する面が面内の一点を頂点とし周辺部位に向けて傾斜され、処理基板11にエッチングガスおよびプラズマが到達するにあたり、処理基板11の中心部ほどエッチングガスおよびプラズマが到達するための抵抗がおおきく、処理基板面内中心部のプラズマ密度を低減する。このため、処理基板11の中心部と外周部のプラズマ密度の偏りを抑制することが出来、ローディング効果を抑制することが出来る。
【0026】
障害物9に用いる材料は、エッチングに用いるガスに応じて適宜選択してよい。例えばアルミ系材質、ガラス系材質などを用いてもよい。また、複数種の材料を組み合わせた複合材料であってもよい。
【0027】
また、障害物9は、メッシュ構造の部材を用いてもよい。メッシュ構造の部材を用いた場合、陽極側電極側の開口部100を面内で均質に設置することが出来、メッシュの厚みを制御することで好適に処理基板11に到達するエッチングガスおよびプラズマのイオン、ラジカルの量を制御することが出来る。
【0028】
この障害物9は、例えば図3(a)(b)に示すように開口部100を備えて構成される。ここで、図3(a)は、障害物9を上面から見た状態を示し、図3(b)は、同図(a)のA−A´断面を示す。
【0029】
即ち、障害物9は、前記陽極側電極側に対向する面が面内の一点から周辺部位に向けて直線で結ばれた円錐形状に形成され、処理基板側に対向する面が陽極側電極側に対向する面に沿って傾斜されて形成される。
【0030】
また、障害物9は、その他、例えば図4(a)(b)に示すように開口部100を備えて構成するようにしてもよい。ここで、図4(a)は、障害物9を上面から見た状態を示し、図4(b)は、同図(a)のA−A´断面を示す。
【0031】
即ち、この図4に示す障害物9は、陽極側電極側に対向する面が面内の一点から周辺部位に向けて直線で結ばれた円錐形状に形成され、その処理基板側に対向する面が平面に形成される。
【0032】
さらに、障害物9は、例えば図5(a)(b)に示すように開口部100を備えて構成するようにしてもよい。ここで、図5(a)は、障害物9を上面から見た状態を示し、図5(b)は、同図(a)のA−A´断面を示す。
【0033】
即ち、この図5に示す障害物9は、陽極側電極側に対向する面が面内の一点から周辺部位に向けて曲線で結ばれたドーム形状に形成され、処理基板側に対向する面が陽極側電極側に対向する面に沿って傾斜されて形成される。
【0034】
また、さらに障害物9は、例えば図6(a)(b)に示すように開口部100を備えて構成するようにしてもよい。ここで、図6(a)は、障害物9を上面から見た状態を示し、図6(b)は、同図(a)のA−A´断面を示す。
【0035】
即ち、この図6に示す障害物9は、一つ又は複数の円柱状の部材9aを積み重ねて所望の形状に形成される。
【0036】
本発明のエッチング装置によれば、ローディング効果を抑制することが出来ることから、微細パターンを形成したとき寸法精度の面内均一性を高めることが出来る。特に、フォトマスクを製造するにあたり、微細パターンの面内均一性が求められることから、フォトマスクの製造に好適に用いることが出来る。一般的にフォトマスクは、ガラス、モリブデン、クロム、タンタル、タングステン、シリコンからなる群から選ばれた一つ以上の材料を含む処理基板11をエッチングすることにより製造される。
【実施例】
【0037】
次に、本願発明による実施例と参考例を作製して比較検討する。
【0038】
<実施例1>
実施例1として、石英ガラス基板に遮光膜としてクロムが積層されたフォトマスク基板を用意した。そして、このフォトマスク基板の遮光膜側に、レジストを塗布し、電子線露光によりパターン形成し、レジストパターンを形成した。
【0039】
次に、レジストパターンをマスクとして遮光膜のエッチングを行い、遮光膜のパターニングを行なった。このとき、フォトマスク基板を覆うように以下のような障害物9を設置した。
【0040】
障害物半径 : 15cm
障害物高さ : 10cm
開口部ピッチ : 隣り合う開口部が3mmピッチで配置
開口部半径 : 円錐頂点より外周にかけて半径5cmの範囲では開口部半径0.3mmそれ以降は開口部半径0.5mm
<参考例1>
参考例1として、実施例1と同様に遮光膜のパターニングを行なった。ただし、遮光膜のエッチングに際し、障害物を設置しなかった。
【0041】
[評価]
実施例1では、パターン線幅の面内分布が前記障害物を用いることで、レンジが4.8nm、3σが3.2nmになった。
【0042】
また、参考例1では、レンジが7.3nm、3σが4.5nmであった。
【0043】
本願発明による実施例1の如く障害物9を設置することにより、参考例1に比して面内均一性の改善が見られた。
【0044】
この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより、種々の発明が抽出され得る。
【0045】
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のエッチング装置は、微細加工が求められる種々の分野に応用が期待出来る。例えばインプリントモールド、フォトマスク、半導体デバイス、光学素子(反射防止膜、偏光板)、配線回路(光導波路、デュアルダマシン構造の配線回路など)、パターンドメディア(ハードディスクや光学メディアなど)、医療検査用チップ(DNA分析用途など)、ディスプレイ(拡散板、導光板など)、バイオチップ、細胞培養シート、マイクロ流路などの製造工程において好適に利用することが期待出来る。
【符号の説明】
【0047】
1・・・真空チャンバ
3・・・陰極側電極
5・・・陽極側電極
7・・・ステージ
9・・・障害物
9a・・・円柱状の部材
11・・・処理基板
13・・・ガス導入口
15・・・ガス排気口
17・・・RF電源
100・・・開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極側電極に対向して設けた陰極側電極上に処理基板を載せて、該処理基板をエッチング処理するエッチング装置において、
前記処理基板と前記陽極側電極との間に一つまたは複数の部材から構成され、且つ前記処理基板の少なくとも一部領域を覆うような障害物を設け、
前記障害物は前記陽極側電極側から前記陰極側電極側に貫通している複数の開口部を有していることを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
前記障害物は、前記陽極側電極側もしくは前記陰極側電極側に対向する両側もしくは片側の面が面内の一点を頂点とし周辺部位に向けて傾斜している部材からなることを特徴とする請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記障害物は、前記陽極側電極側もしくは前記陰極側電極側に対向する面が面内の一点を頂点とし周辺部位に向けて傾斜しており、前記陽極側電極側もしくは前記陰極側電極側に対向する面の反対の面が平面である部材からなることを特徴とする請求項2に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記障害物は、前記陽極側電極側に対向する面が面内の一点を頂点とし周辺部位に向けて傾斜しており、前記処理基板側に対向する面が前記陽極側電極側に対向する面に沿って傾斜されている部材からなることを特徴とする請求項2に記載のエッチング装置。
【請求項5】
前記障害物の開口部は、開口調整可能な部材からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエッチング装置。
【請求項6】
前記障害物の垂直方向の厚みは、任意に設定可能な部材からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエッチング装置。
【請求項7】
前記障害物は、メッシュ構造の部材からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエッチング装置。
【請求項8】
前記障害物は、前記陽極側電極側に対向する面が面内の一点から周辺部位に向けて直線で結ばれた円錐形状であることを特徴とする請求項2又は3に記載のエッチング装置。
【請求項9】
前記障害物は、前記陽極側電極側に対向する面が面内の一点から周辺部位に向けて曲線で結ばれたドーム形状であることを特徴とする請求項2又は3に記載のエッチング装置。
【請求項10】
前記障害物は個々の円柱状の部材が、同一または異なる半径をそれぞれ有し、一つまたは複数の円柱状の部材を積み重ねて構成されていること特徴とする請求項1に記載のエッチング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−164927(P2012−164927A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26096(P2011−26096)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】