説明

エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】耐半田性に優れたエポキシ樹脂組成物及び半導体装置を提供すること。
【解決手段】 本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体封止に用いるエポキシ樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機充填材と、(D)フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物と、を含むことを特徴とする。また、本発明の半導体装置は上記に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で、半導体素子が封止されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の半導体素子の封止方法として、エポキシ樹脂組成物のトランスファー成形が低コスト、大量生産に適しており、採用されて久しく、信頼性の点でもエポキシ樹脂や硬化剤であるフェノール樹脂の改良により特性の向上が図られてきた。しかし、近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体素子の高集積化が年々進み、また半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への要求は益々厳しいものとなってきている。このため、従来からのエポキシ樹脂組成物では解決出来ない問題点も出てきている。
【0003】
その最大の問題点は、表面実装の採用により半導体装置が半田浸漬、あるいはリフロー工程で急激に200℃以上の高温にさらされ、吸湿した水分が爆発的に気化する際の応力により、半導体装置にクラックが発生し、半導体素子、リードフレーム、インナーリード上の各種メッキされた各接合部分とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面で剥離が生じ信頼性が著しく低下する現象である。
【0004】
半田処理による信頼性低下を改善するために、エポキシ樹脂組成物中の無機充填材の充填量を増加させることで低吸湿化、高強度化、低熱膨張化を達成し耐半田性を向上させるとともに、低溶融粘度の樹脂を使用して、成形時に低粘度で高流動性を維持させる手法が一般的となりつつある。
【0005】
一方、半田処理後の信頼性において、エポキシ樹脂組成物の硬化物と半導体装置内部に存在する半導体素子やリードフレーム等の基材との界面の接着性は非常に重要になってきている。界面での接着力が弱いと半田処理後の基材との界面で剥離が生じ、更にはこの剥離に起因し半導体装置にクラックが発生する。
【0006】
従来から耐半田性の向上を目的として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等のシランカップリング剤がエポキシ樹脂組成物中に添加されてきた。しかし近年、実装時のリフロー温度の上昇や、ダイパッドが露出した特殊なパッケージの増加等、益々厳しくなっている耐半田性に対する要求に対して、これらのシランカップリング剤だけでは充分に対応できなくなっている。
【0007】
その対処法として、アルコキシシランカップリング剤によりリードフレームの表面処理をする方法(例えば、特許文献1参照。)やチアゾール系、スルフェンアミド系、及びチウラム系化合物を添加した樹脂組成物及び樹脂封止型半導体装置(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。しかしながら、前者のシランカップリング剤は、熱時安定性が悪く半田浸漬や半田リフロー等の半田処理時において密着向上効果が低下する欠点があり、また、後者の化合物は分子量が大きく、また不安定な結合(窒素―硫黄結合)を数多く含んでいるため、成形後の封止樹脂中において密着性の低下を招く可能性が指摘されている。
【0008】
【特許文献1】特開平6−350000号公報
【特許文献2】特開平11−181240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐半田性および流動性に優れたエポキシ樹脂組成物及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体封止に用いるエポキシ樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機充填材と、(D)フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、 前記フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)が、下記一般式(1)で表される化合物であるものとすることができる。
【0012】
【化1】

(式中、R1は単結合、二重結合、三重結合、エーテル結合、スルホン結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、及びケトン結合から選ばれる結合、あるいは芳香族環、脂肪族環、又は複素環を含む有機基、もしくは脂肪族基である。R2は、水素あるいは炭素数1〜14の有機基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルデヒド基、縮環した芳香族環、脂肪族環、又は複素環を表し、同一であっても、異なっていてもよい。aは、1〜4の整数。)
【0013】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、 前記フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)の分子量が500未満であるものとすることができる。
【0014】
前記フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)のカルボキシル基が、脂肪族炭素に結合したカルボキシル基であるものとすることができる。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記(A)エポキシ樹脂が、下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂を含むものとすることができる。
【0016】
【化2】

【0017】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記(B)硬化剤が、下記一般式(3)で表されるフェノール樹脂を含むものとすることができる。
【0018】
【化3】

【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に(E)硬化促進剤を含むものとすることができる。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に(F)シランカップリング剤及び/又は(G)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を含むものとすることができる。
【0021】
本発明の半導体装置は、上述のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で、半導体素子が封止されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、銅や42アロイ等のリードフレームに搭載した半導体素子を封止した場合において、無鉛半田に対応する高温の半田処理によっても剥離やクラックが発生しない良好な耐半田性を有するエポキシ樹脂組成物及び半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物及び半導体装置について詳細に説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体封止に用いるエポキシ樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機充填材と、(D)フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物と、を含むことを特徴とする。また、本発明の半導体装置は、上記に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で、半導体素子が封止されていることを特徴とする。
【0025】
まず、エポキシ樹脂組成物について説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)を含む。本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造は特に限定するものではないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。このようなエポキシ樹脂の中でも下記一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、耐燃性、耐半田性を特に向上させることができる。下記一般式(2)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂のエポキシ樹脂(A)全体に対する配合割合としては、特に限定するものではないが、30質量%以上、100質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上、100質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、耐燃性、耐半田性を安定的に向上させることができる。
【0026】
【化4】

【0027】
本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)全体の配合割合としては、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、2質量%以上、10質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上、8質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂(A)全体の配合割合が上記範囲内であると、耐半田性の低下、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤(B)を含む。本発明で用いられる硬化剤(B)は、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであれば特に限定されず、それらの具体例としてはフェノール系樹脂、ビスフェノールAなどのビスフェノール化合物、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物及びメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンなどが挙げられこれらを単独で用いても、2種以上の硬化剤を併用しても良い。
【0029】
これらの硬化剤の中でも特にフェノール系樹脂を用いることが好ましい。本発明で用いられるフェノール系樹脂は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。このようなフェノール系樹脂の中でも下記一般式(3)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂が好ましい。これにより、耐燃性、耐半田性を特に向上させることができる。下記一般式(3)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂の硬化剤(B)全体に対する配合割合としては、特に限定するものではないが、30質量%以上、100質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上、100質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、耐燃性、耐半田性を安定的に向上させることができる。
【0030】
【化5】

【0031】
本発明で用いられる硬化剤(B)の配合割合は、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、1質量%以上、8質量%以下であることが好ましく、2質量%以上、6質量%以下であることがより好ましい。硬化剤(B)の配合割合が上記範囲内であると、耐半田性の低下、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0032】
エポキシ樹脂と硬化剤であるフェノール系樹脂の配合割合としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(Ep)と全フェノール系樹脂のフェノール性水酸基数(Ph)との当量比(Ep/Ph)が0.8以上、1.3以下であることが好ましく、0.9以上、1.25以下であることがより好ましい。当量比が上記範囲内であると、エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のガラス転移温度の低下、耐湿信頼性の低下等を引き起こす可能性が低い。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、無機充填材(C)を含む。本発明で用いられる無機充填材(C)としては、一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられ、最も好適に使用されるものとしては、球状の溶融シリカである。これらの無機充填材は、1種類を単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。
【0034】
本発明で用いられる無機充填材(C)の平均粒子径は、特に限定されないが、5μm以上、50μm以下が好ましく、10μm以上、45μm以下がより好ましい。平均粒子径が上記範囲内であると、流動性は良好で、下限値を下回ると十分な流動性が得られず、上限値を上回ると成形時の充填性が悪くなり、空隙が多く生じる恐れがある。
【0035】
本発明で用いられる無機充填材(C)の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体の75質量%以上、94質量%以下が好ましく、80質量%以上、92質量%以下がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、耐半田性の低下や流動性の低下を引き起こす可能性が低い。
【0036】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)を含む。本発明で用いられるフェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)を用いると、銅や42アロイ等のリードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との密着性を向上させることができるため、表面実装の際の半田処理時、及びその後の各種の環境下においても、それらの界面での剥離を抑える効果が得られる。フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)としては、フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、その分子量が500未満であるものが好ましく、300未満であるものがより好ましい。上記範囲内であると、フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)自身の粘度が高すぎないため、エポキシ樹脂組成物の粘度が低く保たれる。また、フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)の分子量の下限値については、特に限定されないが、実質的な下限値は138となる。更に、フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)としては、下記一般式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0037】
【化6】

(式中、R1は単結合、二重結合、三重結合、エーテル結合、スルホン結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、及びケトン結合から選ばれる結合、あるいは芳香族環、脂肪族環、又は複素環を含む有機基、もしくは脂肪族基である。R1は水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルデヒド基等の置換基を1個以上有していてもよい。また、フェノールのベンゼン環に縮環していてもよい。R2は、水素あるいは炭素数1〜14の有機基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルデヒド基、縮環した芳香族環、脂肪族環、又は複素環を表し、同一であっても、異なっていてもよい。aは、1〜4の整数。)
【0038】
フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)の具体例としては、2−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、3−メチルサリチル酸、4−メチルサリチル酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、5−メチルサリチル酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−p−トルイル酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−o−トルイル酸、カフェイン酸、trans−p−クマル酸、trans−o−クマル酸、trans−m−クマル酸、α−シアノ−4−ヒドロキシけい皮酸、3,4−ジヒドロキシマンデル酸、ホモゲンチジン酸、ジフェノール酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシけい皮酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシけい皮酸、ゲンチズリン酸、trans−フェルラ酸、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル酢酸、2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシ−4−メトキシけい皮酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルピルビン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、2−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン、2−(4−ヒドロキシフェノキシ)プロピオン酸、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸、(4−ヒドロキシフェノキシ)酢酸、2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、DL−チロニン、チロシン及びその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
これらの化合物の中でも、カルボキシル基が脂肪族炭素に結合した化合物が特に好ましい。カルボキシル基が脂肪族炭素に結合した化合物を用いると、カルボキシルの立体的な自由度が高くなり、また、フェノール基がエポキシ樹脂(A)のエポキシ基と結合した後についても、架橋構造から一定の距離を保つことができるため、樹脂とリードフレームとの密着性向上に対して、より効率的に働くことができるものである。
【0040】
本発明で用いられるフェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物全体の0.01質量%以上、1質量%以下が好ましく、0.02質量%以上、0.5質量%以下がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、弾性率の上昇を引き起こすことなく、優れた耐半田性を得ることができる。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に硬化促進剤(E)を用いることができる。硬化促進剤(E)は、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の反応を促進するものであればよく、一般の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを利用することができる。具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等の窒素原子含有化合物等が挙げられる。これらの硬化促進剤(E)は、1種類を単独で用いても2種以上を併用して差し支えない。これらのうち、リン原子含有化合物が好ましく、特に半導体封止用エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることにより流動性を向上させることができること、更に硬化立ち上がり速度という点を考慮するとテトラ置換ホスホニウム化合物が好ましく、また半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時低弾性率という点を考慮するとホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が好ましく、また潜伏的硬化性という点を考慮すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が好ましい。
【0042】
有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0043】
テトラ置換ホスホニウム化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【0044】
【化7】

【0045】
一般式(4)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(4)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(4)で表される化合物において、リン原子に結合するR7、R8、R9及びR10がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。
【0046】
ホスホベタイン化合物としては、下記一般式(5)で表される化合物等が挙げられる。
【化8】

【0047】
一般式(5)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0048】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【化9】

【0049】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換のもの又はアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0050】
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0051】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0052】
一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR11、R12及びR13がフェニル基であり、かつR14、R15及びR16が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が半導体封止用樹脂組成物の硬化物熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0053】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【化10】

【0054】
一般式(7)において、R17、R18、R19及びR20としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0055】
また、一般式(7)において、X2は、Y2及びY3と結合する有機基である。同様に、X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3はプロトン供与性置換基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY4及びY5はプロトン供与性置換基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基Y2及びY3は互いに同一でも異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
このような一般式(7)中の−Y2−X2−Y3−、及び−Y4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0057】
また、一般式(7)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基又は脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等の脂肪族基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族基;グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基等の反応性置換基を有する有機基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が熱安定性の面からより好ましい。
【0058】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。更にそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0059】
本発明で用いることができる硬化促進剤(E)の配合量は、全半導体封止用樹脂組成物中0.1質量%以上、1質量%以下が好ましい。硬化促進剤(E)の配合量の下限値が上記範囲内であると、硬化性の低下を引き起こす恐れが少ない。また、硬化促進剤(E)の配合量の上限値が上記範囲内であると、流動性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0060】
本発明では、更にシランカップリング剤(F)を用いることができる。シランカップリング剤(F)は、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が好ましいが、特にこれらに限定されず、エポキシ樹脂と無機充填剤との間で反応し、エポキシ樹脂と無機充填剤の界面強度を向上させるものであればよい。また、後述する芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(G)(以下、「化合物(G)」とも称する。)は、当該シランカップリング剤(F)との相乗効果により、半導体封止用樹脂組成物の粘度を下げ、流動性を向上させる効果を有するため、シランカップリング剤(F)は化合物(G)の効果を充分に得るためにも有効である。エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−1,3−ベンゼンジメタナン等が挙げられ、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられ、メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤(F)は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0061】
本発明で用いることができるシランカップリング剤(F)の配合量は、全半導体封止用樹脂組成物中0.01質量%以上、1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上、0.6質量%以下であることが特に好ましい。シランカップリング剤(F)の配合量の下限値が上記範囲内であると、化合物(G)との相乗効果により、半導体封止用樹脂組成物の充分な低粘度化と流動性向上効果を得ることができる。また、シランカップリング剤(F)の配合量の下限値が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂と無機充填剤との界面強度が低下することによる半導体装置における耐半田性の低下を引き起こす恐れが少ない。また、シランカップリング剤(F)の配合量の上限値が上記範囲内であれば、半導体封止用樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することによる耐半田性の低下も引き起こす恐れが少ない。
【0062】
本発明では、更に芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(G)を用いることができる。芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(G)(以下、「化合物(G)」とも称する。)は、これを用いることにより、半導体封止用樹脂組成物の粘度を下げ、流動性を向上させる効果を有するものである。化合物(G)としては、下記一般式(8)で表される単環式化合物又は下記一般式(9)で表される多環式化合物等を用いることができ、これらの化合物は水酸基以外の置換基を有していてもよい。
【0063】
【化11】

【0064】
【化12】

【0065】
一般式(8)で表される単環式化合物の具体例としては、例えば、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル又はこれらの誘導体が挙げられる。また、一般式(9)で表される多環式化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、流動性と硬化性の制御のしやすさから、芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が好ましい。また、混練工程での揮発を考慮した場合、母核は低揮発性で秤量安定性の高いナフタレン環である化合物とすることがより好ましい。この場合、化合物(G)を、具体的には、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びその誘導体等のナフタレン環を有する化合物とすることができる。これらの化合物(G)は1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0066】
かかる化合物(G)の配合量は、全半導体封止用樹脂組成物中に0.01質量%以上、1質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以上、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上、0.5質量%以下であることが特に好ましい。化合物(G)の配合量の下限値が上記範囲内であると、シランカップリング剤(F)との相乗効果により、半導体封止用樹脂組成物の充分な低粘度化と流動性向上効果を得ることができる。また、化合物(G)の配合量の上限値が上記範囲内であると、半導体封止用樹脂組成物の硬化性の低下や硬化物物性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0067】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて離型剤が用いられる。離型剤としては、従来公知のものを用いることができるが、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックス、ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても構わない。これらのうちポリエチレン系ワックスが好ましく、ポリエチレン系ワックスとモンタン酸エステル系ワックスを併用した方がより好ましい。離型剤の配合量は、特に制限されないが、エポキシ樹脂組成物全体の0.05質量%以上、3質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、1質量%以下であることがより好ましい。配合量が上記下限値を下回ると離型性が低下する場合があり、上記上限値を上回ると密着性及び耐半田性が低下する場合がある。
【0068】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてイオントラップ剤が用いられる。イオントラップ剤としては従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類やマグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種以上を併用しても構わない。これらのうちハイドロタルサイト類が好ましい。イオントラップ剤の配合量は、特に制限されないが、エポキシ樹脂組成物全体の0.05質量%以上、3質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、1質量%以下である。配合量が前記範囲内であると、充分なイオン補足作用を発揮し、他の材料特性に対する悪影響も少ない。
【0069】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、無機充填材(C)、フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)を主成分とし、必要に応じて、硬化促進剤(E)、シランカップリング剤(F)、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(G)、離型剤及びイオントラップ剤などの他、更にカーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、ゴム等の低応力添加剤、臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン等の難燃剤等の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0070】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物は、ミキサー等を用いて原料を充分に均一に混合したもの、更にその後、熱ロール又はニーダー等で溶融混練し、冷却後粉砕したものなど、必要に応じて適宜分散度等を調整したものを用いることができる。
【0071】
次に、半導体装置について説明する。上述のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、本発明の半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形して半導体装置を得ることができる。
【0072】
本発明で封止を行う半導体素子としては、特に限定されるものではなく、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。
【0073】
本発明の半導体装置としては、特に限定されないが、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)等が挙げられる。
【0074】
トランスファーモールドなどの成形方法で封止された半導体装置は、そのまま、或いは80℃〜200℃程度の温度で、10分〜10時間程度の時間をかけて完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0075】
図1は、本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間は金線4によって接続されている。半導体素子1は、封止用樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【実施例】
【0076】
以下に本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は質量部とした。
【0077】
(実施例1)
エポキシ樹脂1:下記式(10)で表されるエポキシ樹脂(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名NC3000P、軟化点58℃、エポキシ当量273、式(10)においてnの平均値は2.3。)
6.34質量部
【0078】
【化13】

【0079】
硬化剤1:下記式(11)で表されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、商品名MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量204、式(11)においてmの平均値は1.6。)
4.26質量部
【化14】

無機充填材1:溶融球状シリカ(平均粒径30μm) 88.00質量部
化合物D1:3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(東京化成工業(株)製、分子量:166.17) 0.10質量部
硬化促進剤1:トリフェニルホスフィン 0.20質量部
シランカップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
0.10質量部
シランカップリング剤2:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
0.10質量部
シランカップリング剤3:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
0.10質量部
化合物G1:2,3−ジヒドロキシナフタレン 0.10質量部
離型剤1:モンタン酸エステル系ワックス(クラリアントジャパン(株)製、商品名リコルブWE4) 0.30質量部
イオントラップ剤1:ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、商品名DHT−4H) 0.20質量部
着色剤1:カーボンブラック 0.30質量部
をミキサーにて常温混合し、80〜100℃の加熱ロールで溶融混練し、冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、以下の方法で評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0080】
1.スパイラルフロー
低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。単位をcmとした。
【0081】
2.硬化性(硬化トルク比)
キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIVPS型)を用いて、175℃、60秒後のトルク値を300秒後のトルク値で除した値で示した。この値の大きい方が硬化性は良好である。単位は%とした。
【0082】
3.耐半田性1
低圧トランスファー成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、成形温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間120秒の条件で、チップ(チップサイズ6.0mm×6.0mm×0.35mm厚)を搭載したCu製リードフレームがインサートされた金型キャビティ内にエポキシ樹脂組成物を注入、硬化させ、80ピンQFP(Quad Flat Package、パッケージサイズ:14mm×20mm×2mm厚)を作製し、アフターベークとして175℃、8時間加熱処理した。その後、60℃、相対湿度60%で120時間の加湿処理を行った後、260℃のIRリフロー処理をした。パッケージ内部の剥離とクラックを超音波探傷機(日立建機ファインテック(株)製、mi−scope hyper II)で確認し、剥離、クラックのいずれか一方でもあったものを不良とした。評価した10個のパッケージ中の不良パッケージ数を示す。
【0083】
4.耐半田性2
低圧トランスファー成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、成形温度175℃、注入圧力8.3MPa、硬化時間120秒の条件で、チップ(チップサイズ6.0mm×6.0mm×0.35mm厚)を搭載したCu製リードフレームがインサートされた金型キャビティ内にエポキシ樹脂組成物を注入、硬化させ、80ピンQFP(Quad Flat Package、パッケージサイズ:14mm×20mm×2mm厚)を作製し、アフターベークとして175℃、8時間加熱処理した。その後、85℃、相対湿度60%で120時間の加湿処理を行った後、260℃のIRリフロー処理をした。パッケージ内部の剥離とクラックを超音波探傷機(日立建機ファインテック(株)製、mi−scope hyper II)で確認し、剥離、クラックのいずれか一方でもあったものを不良とした。評価した10個のパッケージ中の不良パッケージ数を示す。
【0084】
実施例2〜11、比較例1〜4
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を製造し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
実施例1以外で用いた成分について、以下に示す。
エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名YX−4000、エポキシ当量190、融点105℃)
硬化剤2:フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製、商品名XLC−LL、水酸基当量165、軟化点79℃)
化合物D2:4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル酢酸(東京化成工業(株)製、分子量:182.17)
化合物D3:trans−p−クマル酸(東京化成工業(株)製、分子量:164.16)
化合物D4:4−ヒドロキシ安息香酸(東京化成工業(株)製、分子量:138.12)
比較化合物1:フェノール(東京化成工業(株)製、分子量:94.11)
比較化合物2:プロピオン酸(東京化成工業(株)製、分子量:74.08)
【0085】
【表1】

【0086】
表1から明らかなように実施例1〜11で得られたエポキシ組成物を用いて成形した半導体パッケージは、耐半田性に優れていた。
【0087】
上記のように本発明に従う実施例はいずれも、無鉛半田に対応する高温の半田処理によっても剥離やクラックが発生しない良好な耐半田性を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に従うと、銅あるいは42アロイ等のリードフレームに搭載した半導体素子を封止した場合であって、無鉛半田に対応する高温の半田処理によっても剥離やクラックが発生しない良好な耐半田性を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られるので、特に表面実装型の半導体装置の製造用として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 半導体素子
2 ダイボンド材硬化体
3 ダイパッド
4 金線
5 リードフレーム
6 封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体封止に用いるエポキシ樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)無機充填材と、
(D)フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物と、
を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1は単結合、二重結合、三重結合、エーテル結合、スルホン結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、及びケトン結合から選ばれる結合、あるいは芳香族環、脂肪族環、又は複素環を含む有機基、もしくは脂肪族基である。R2は、水素あるいは炭素数1〜14の有機基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルデヒド基、縮環した芳香族環、脂肪族環、又は複素環を表し、同一であっても、異なっていてもよい。aは、1〜4の整数。)
【請求項3】
前記フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)の分子量が500未満である請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記フェノール性水酸基とカルボキシル基を有する有機化合物(D)のカルボキシル基が、脂肪族炭素に結合したカルボキシル基である請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)エポキシ樹脂が、下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂を含む請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化2】

【請求項6】
前記(B)硬化剤が、下記一般式(3)で表されるフェノール樹脂を含む請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化3】

【請求項7】
更に(E)硬化促進剤を含む請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
更に(F)シランカップリング剤及び/又は(G)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を含む請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で、半導体素子が封止されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−46866(P2011−46866A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198139(P2009−198139)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】