説明

エポキシ系接着樹脂組成物、接着剤フィルム、カバーレイ、金属張積層板、プリント配線基板

【課題】高温時における弾性率の低下が少なく、かつ柔軟性および電気絶縁性に優れたエポキシ系接着樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係るエポキシ系接着樹脂組成物は、エポキシ樹脂に硬化剤を含有してなるベース樹脂と、ゴム成分と、ポリイミドシリコーン樹脂とを含有する。前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の配合比は、質量比で70:30〜94:6である。前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量は、前記ベース樹脂100質量部に対して、10〜100質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ系接着樹脂組成物、および、このエポキシ系接着樹脂組成物を用いた可撓性を有する接着剤フィルム、カバーレイ、金属張積層板、プリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化に伴い、軽量で三次元的な実装が可能なフレキシブルプリント基板(FPC=Flexible Printed Circuit)が多く用いられている。
このフレキシブルプリント基板は、可撓性の基材に接着剤層を介して配線層が形成されたものであり、その表面には、配線層を保護する目的で絶縁性のカバーレイフィルムが接着されている。
可撓性の基材としては、例えば、ポリイミドフィルムが用いられており、配線層は銅箔などの金属箔などから形成されている。カバーレイフィルムには、可撓性の絶縁フィルム、例えば、ポリイミドフィルムが用いられている。
【0003】
これらを接着する接着剤としては、柔軟性(可撓性)に優れたエポキシ樹脂が用いられている。柔軟性に優れた接着剤を得るためには、エポキシ樹脂に、カルボキシ化アクリロニトリルブタジエンゴム(以下、「カルボキシ化NBR」と略す。)、アクリルゴム等のゴム成分を添加したエポキシ系接着樹脂組成物が用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
【特許文献1】特公昭62−199627号公報
【特許文献2】特開平07−235767号公報
【特許文献3】特開2007−138149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エポキシ樹脂にカルボキシ化NBRや、カルボキシ化エチレンアクリルゴム等のゴム成分を添加すると、高温時における接着剤の弾性率が低下するという問題があった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、高温時における弾性率の低下が少なく、かつ柔軟性および電気絶縁性に優れたエポキシ系接着樹脂組成物、及び、このエポキシ系接着樹脂組成物を用いた可撓性を有する接着剤フィルム、カバーレイ、金属張積層板、プリント配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るエポキシ系接着樹脂組成物は、エポキシ樹脂に硬化剤を含有してなるベース樹脂と、ゴム成分と、ポリイミドシリコーン樹脂とを含み、前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の配合比は、質量比で70:30〜94:6であり、前記ベース樹脂100質量部に対して、前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量が10〜100質量部であることを特徴とする。
本発明の請求項2に係る接着剤フィルムは、請求項1に記載のエポキシ系接着樹脂組成物を用いてなることを特徴とする。
本発明の請求項3に係るカバーレイは、絶縁フィルムの片面に接着剤層を設けてなるカバーレイにおいて、前記接着剤層を構成する接着剤が、エポキシ樹脂に硬化剤を含有してなるベース樹脂と、ゴム成分と、ポリイミドシリコーン樹脂とを含み、前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の配合比は、質量比で70:30〜94:6であり、前記ベース樹脂100質量部に対して、前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量が10〜100質量部であることを特徴とする。
本発明の請求項4に係る金属張積層板は、ベースフィルムと金属箔との間に接着剤層を設けてなる金属張積層板において、 前記接着剤層を構成する接着剤が、エポキシ樹脂に硬化剤を含有してなるベース樹脂と、ゴム成分と、ポリイミドシリコーン樹脂とを含み、前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の配合比は、質量比で70:30〜94:6であり、前記ベース樹脂100質量部に対して、前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量が10〜100質量部であることを特徴とする。
本発明の請求項5に係るプリント配線基板は、請求項3に記載のカバーレイを、請求項4に記載の金属張積層板の金属箔面に貼着してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエポキシ系接着樹脂組成物によれば、エポキシ樹脂に硬化剤を含有してなるベース樹脂と、ゴム成分と、ポリイミドシリコーン樹脂とを含むので、硬化後のエポキシ系接着樹脂組成物の高温時における弾性率を十分に高い値とすることができる。
また、ゴム成分とポリイミドシリコーン樹脂の配合比を、質量比で70:30〜94:6とするとともに、ゴム成分とポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量を、ベース樹脂100質量部に対して10〜100質量部とすることによって、硬化後のエポキシ系接着樹脂組成物に十分な柔軟性を与えることができる。
よって、高温時における弾性率の低下が少なく、しかも柔軟性および電気絶縁性に優れた接着剤層を形成することができる。
したがって、本発明のエポキシ系接着剤によれば、狭ピッチの配線を要するFPCなどのプリント配線基板を提供することができ、各種電子機器の小型化、高機能化及び長寿命化に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のエポキシ系接着樹脂組成物は、エポキシ樹脂に硬化剤を含有してなるベース樹脂と、ゴム成分と、ポリイミドシリコーン樹脂とを含有してなる接着樹脂組成物である。
【0009】
ベース樹脂をなすエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂、及びこれらのハロゲン化物(臭素化エポキシ樹脂等)や水素添加物等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。臭素化エポキシ樹脂等は、接着剤に難燃性が要求される場合に、特に有効である。また、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)は、感光性を有するので、エポキシ系樹脂組成物に光硬化性を付与するために有効である。また、これらのエポキシ樹脂は、架橋反応するノボラック型フェノール樹脂、ビニルフェノール樹脂、臭素化ビニルフェノール樹脂等と共に用いることもできる。
【0010】
硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化に用い得るものであれば、特に制限なく使用することが可能であるが、例えば、脂肪族アミン系硬化剤、脂環式アミン系硬化剤、第2級もしくは第3級アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、イミダゾール化合物、トリアジン構造を有するフェノールノボラック樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂に応じて定められるとともに、硬化剤が通常使用される範囲内において成形条件や特性等に応じて適宜調整される。
【0011】
ベース樹脂における硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂に応じて調整されるが、例えば、エポキシ樹脂が有するエポキシ基数を1としたとき、硬化剤が有する活性水素(水酸基)数の比が0.5以上、1.2以下となるように配合されるのが好ましい。
【0012】
ゴム成分は、エポキシ樹脂中に分散し、エポキシ樹脂に柔軟性を付与するものであり、例えば、カルボキシ化エチレンアクリルゴム、カルボキシ化NBRが挙げられる。
【0013】
ポリイミドシリコーン樹脂は、シロキサン結合を含むポリイミド樹脂であり、例えば化学式(1)に示すXとYの少なくとも一方がシロキサン結合を有する繰り返し単位を含むものである。
【0014】
【化1】

(式中、X、Yは有機基である。)
【0015】
本発明のエポキシ系接着樹脂組成物において、ゴム成分とポリイミドシリコーン樹脂の配合比は、質量比で70:30〜94:6である。
ポリイミドシリコーン樹脂の配合比は、低すぎれば高温時の弾性率が低くなるが、上記範囲とすることで、硬化後のエポキシ系接着樹脂組成物の高温時における弾性率を十分に高い値とすることができる。
ポリイミドシリコーン樹脂の配合比は、高すぎれば柔軟性が低くなるが、上記範囲とすることで、硬化後のエポキシ系接着樹脂組成物に十分な柔軟性を与えることができる。
【0016】
ゴム成分とポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量は、ベース樹脂100質量部に対して、10〜100質量部とされる。
この合計添加量は、少なすぎる場合には柔軟性が低くなるが、上記範囲とすることで、硬化後のエポキシ系接着樹脂組成物に十分な柔軟性を与えることができる。
ゴム成分とポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量は、多すぎれば絶縁性が低下するが、上記範囲とすることで、硬化後のエポキシ系接着樹脂組成物に十分な絶縁性を与えることができる。
【0017】
本発明のエポキシ系接着樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤、難燃剤、その他の添加剤等を配合してもよい。
充填剤としては、例えば、シリカ、マイカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられる。
難燃剤としては、一般的に知られているものが制限無く用いられるが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等の無機水酸化物、無機酸化物、リン酸エステル系難燃剤、含ハロゲンリン酸エステル系難燃剤、無機臭素系難燃剤、有機臭素系難燃剤、有機塩素系難燃剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他の添加剤としては、回路との接着力を向上させるために用いられる、シランカップリング剤、イミダゾール等が挙げられる。
【0018】
次に、本発明のエポキシ系接着樹脂組成物の使用方法を説明する。
本発明のエポキシ系接着樹脂組成物を使用するには、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、ゴム成分、ポリイミドシリコーン樹脂等の構成材料と、有機溶剤とを所定量配合し、ポットミル、ボールミル、ホモジナイザー、スーパーミル等を用いて攪拌混合することにより接着性の溶液を調製し、この接着性の溶液を対象物に塗布する方法が用いられる。
【0019】
本発明のエポキシ系接着樹脂組成物は、上記の接着性の溶液を対象物に塗布し、乾燥及び硬化させることで、対象物の接着や封止等を行うために用いることができる。この接着性の溶液の乾燥及び硬化は、例えば20〜200℃程度の温度下で行うことができる。
【0020】
接着性の溶液の調製に用いられる有機溶剤としては、例えば、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、ジメチルホルムアミド、2−メトキシエタノール等が挙げられる。
接着性の溶液中の固形分濃度は、塗工むらの抑制と、エポキシ系接着樹脂組成物の溶解性とを考慮して、好ましくは5〜70質量%の範囲内であり、より好ましくは10〜50質量%の範囲内である。
【0021】
本発明のエポキシ系接着樹脂組成物は、種々の用途に好適に用いることができるが、とりわけ、フレキシブルプリント基板(FPC)に用いられる各種材料に適用することによって優れた効果を発揮する。FPC用材料としては、カバーレイ(CL)、銅箔張積層板(CCL)等の金属張積層板、プリント配線基板等が挙げられる。
【0022】
図1は、本発明のカバーレイの一実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態のカバーレイ1は、絶縁フィルム(フィルム基材)2の片面2aに、本発明のエポキシ系接着樹脂組成物からなる接着剤層3が設けられてなるものであり、フレキシブルプリント基板において、CCLに形成した回路等の上に積層して、この回路等を絶縁保護するために用いられる。
【0023】
絶縁フィルム2としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アラミド樹脂等からなる厚み1μm〜150μm程度のフィルム等を用いることができる。
接着剤層3の厚み(乾燥後)は、例えば、1μm〜100μm程度とすることができる。
本発明のエポキシ系接着樹脂組成物から接着剤層を形成する方法は、上述したように、塗布等の方法によることができる。
【0024】
なお、本発明のカバーレイが適用されるCCLとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド等からなるベースフィルムに銅箔(金属箔)を接着剤で接着してなる3層CCLや、銅箔(金属箔)の片面にポリイミドワニスを塗布して乾燥してなる2層CCL(接着剤層を有しないCCL)等を用いることができる。
【0025】
本発明のカバーレイによれば、本発明のエポキシ系接着樹脂組成物により接着剤層を形成したものであるので、高温時における弾性率、柔軟性、および電気絶縁性に優れている。
したがって、本発明のカバーレイによれば、狭ピッチの配線を要するFPCなどのプリント配線基板を提供することができ、各種電子機器の小型化、高機能化及び長寿命化に寄与することができる。
また、本発明のカバーレイは、可撓性を有するから、これをプリント配線基板に適用すれば、プリント配線基板も可撓性を有するものとなる。
【0026】
図2は、本発明の金属張積層板の一実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の金属張積層板4は、本発明にかかるエポキシ系接着樹脂組成物からなる接着剤層6が、ベースフィルム5と金属箔7との間に設けられてなるものである。
【0027】
ベースフィルム5としては、電気絶縁性と可撓性を有する樹脂フィルムが用いられ、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。
金属箔7は、銅箔等からなり、所定の回路パターンをなしている。
【0028】
本発明の金属張積層板によれば、本発明にかかる接着剤層が、ベースフィルムと金属箔との間に設けられてなるものであるので、高温時における弾性率、柔軟性、および電気絶縁性に優れている。
したがって、本発明の金属張積層板によれば、狭ピッチの配線を要するFPCなどのプリント配線基板を提供することができ、各種電子機器の小型化、高機能化及び長寿命化に寄与することができる。
また、本発明の金属張積層板は、可撓性を有するから、これをプリント配線基板に適用すれば、プリント配線基板も可撓性を有するものとなる。
【0029】
図3は、本発明のプリント配線基板の一実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態のプリント配線基板10は、カバーレイ1を、金属張積層板4の金属箔7が設けられている面(金属箔面)に貼着し、カバーレイ1と金属張積層板4とを積層一体化したものである。
【0030】
このプリント配線基板10の製造は、金属張積層板4の金属箔7に対してエッチング等を施して配線を形成したのち、金属箔面にカバーレイ1を貼着する方法などによって行うことができる。
カバーレイ1の貼着は、カバーレイ1の接着剤層3と金属張積層板4の金属箔面とが向かい合うように重ね合わせ、熱プレスなどにより一体化させる。熱プレス条件としては、例えば、加熱温度を140〜200℃程度、加熱時間を0.1〜5時間程度とすることができる。
【0031】
本発明のプリント配線基板によれば、本発明のカバーレイを、本発明の金属張積層板の金属箔が設けられている面に貼着し、本発明のカバーレイと本発明の金属張積層板とを積層一体化したものであるので、高温時における弾性率、柔軟性、および電気絶縁性に優れている。
したがって、本発明のプリント配線基板によれば、狭ピッチの配線を要するFPCなどのプリント配線基板を提供することができ、各種電子機器の小型化、高機能化及び長寿命化に寄与することができる。
また、本発明のプリント配線基板は、可撓性を有するカバーレイと金属張積層板を積層一体化したものであるから、可撓性を有する。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
「実施例1」
表1に示す配合により、実施例1に係るエポキシ系接着樹脂組成物を調製した。
ベース樹脂A、カルボキシ化NBR及びポリイミドシリコーン樹脂をメチルエチルケトンに溶解、分散させて接着剤溶液を調製した。
ベース樹脂Aとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂77質量%と、硬化剤の4,4−ジアミノジフェニルスルフォン23質量%とから構成されるものを用いた。
カルボキシ化NBRとしては、日本ゼオン社製、商品名:ニポール1072を用いた。
ポリイミドシリコーン樹脂としては、信越化学工業社製、商品名:SMP−2006を用いた。
なお、各成分の配合量は、ベース樹脂Aを100質量部とした質量部で表した。
【0033】
「実施例2〜4」
表1に示す配合により、エポキシ系接着樹脂組成物を調製した。その他の条件は実施例1に準じた。
【0034】
「実施例5」
表1に示す配合により、ベース樹脂Aに代えてベース樹脂Bを用いてエポキシ系接着樹脂組成物を調製した。その他の条件は実施例1に準じた。
ベース樹脂Bとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂51.8質量%と、酸無水物系硬化剤47.7質量%と、第3級アミン系硬化剤0.5質量%とから構成されるものを用いた。
【0035】
「実施例6」
表1に示す配合により、ベース樹脂Aに代えてベース樹脂Cを用いてエポキシ系接着樹脂組成物を調製した。その他の条件は実施例1に準じた。
ベース樹脂Cとしては、ノボラック型エポキシ樹脂17.3質量%と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂53.6質量%と、フェノール樹脂28.8質量%と、イミダゾール0.3質量%とから構成されるものを用いた。
【0036】
「実施例7」
表1に示す配合により、カルボキシ化NBRに代えて、カルボキシ化エチレンアクリルゴム(三井・デュポンポリケミカル社製、商品名:ベイマックGLS)を用いてエポキシ系接着樹脂組成物を調製した。その他の条件は実施例1に準じた。
【0037】
「実施例8〜10」
表1に示す配合により、カルボキシ化NBRとカルボキシ化エチレンアクリルゴムを併用してエポキシ系接着樹脂組成物を調製した。その他の条件は実施例1に準じた。
【0038】
「実施例11〜16」
表1に示す配合により、エポキシ系接着樹脂組成物を調製した。その他の条件は実施例1に準じた。
【0039】
「比較例1」
表1に示す配合により、ポリイミドシリコーン樹脂を使用せずに、エポキシ系接着樹脂組成物を調製した。その他の条件は実施例1に準じた。
【0040】
「比較例2」
表1に示す配合により、ポリイミドシリコーン樹脂を使用せず、カルボキシ化NBRに代えてカルボキシ化エチレンアクリルゴムを用いてエポキシ系接着樹脂組成物を調製した。その他の条件は実施例1に準じた。
【0041】
「比較例3」
表1に示す配合により、ゴム成分を使用せずに、エポキシ系接着樹脂組成物を調製した。その他の条件は実施例1に準じた。
【0042】
「比較例4〜7」
表1に示す配合により、エポキシ系接着樹脂組成物を調製した。その他の条件は実施例1に準じた。
【0043】
各実施例および比較例のエポキシ系接着樹脂組成物を、次の試験に供した。
(高温時弾性率)
エポキシ系接着樹脂組成物を160℃にて1時間硬化させた後、動的粘弾性測定により、100℃における貯蔵弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
(絶縁抵抗の測定)
厚み25μmのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン100H)に、乾燥後の厚みが10μmとなるように、接着剤溶液を塗布し、この接着剤溶液を乾燥して、接着剤層を形成した。
次いで、このポリイミドフィルムに形成された接着剤層の接着面に、厚み35μmの圧延銅箔を貼着して、片面板を得た。
次いで、この片面板の銅箔に、図4に示すような銅回路パターンを形成した。なお、図4に示す寸法の単位はμmである。
次いで、別の厚み25μmのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン100H)に乾燥後の厚みが25μmとなるように接着剤溶液を塗布し、この接着剤溶液を乾燥して、接着剤層を形成した。
次いで、このポリイミドフィルムに形成された接着剤層を、上記の銅回路パターンが形成された片面板の接着面に貼り合わせ、170℃、圧力40kg/cmにて40分間プレスし、絶縁抵抗測定用のプリント配線基板を作製した。
このプリント配線基板に、常態において、500Vの直流電圧を印加し、1分間保持し、図4に示した銅回路パターンの間の絶縁抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
(柔軟性の評価)
厚み25μmのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン100H)に乾燥後の厚みが25μmとなるように接着剤溶液を塗布し、さらに120℃にて5分間乾燥することにより、接着剤層が形成されたカバーレイを得た。
次いで、このカバーレイを2つ用意し、互いの接着剤層面を重ね合わせて、170℃、圧力40kg/cmにて40分間プレスすることにより、柔軟性評価用サンプルを作製した。
得られた柔軟性評価用サンプルを180度折り曲げた後、接着剤層に割れ、白化が生じなかった場合を合格(○)、接着剤層に割れ、白化が生じた場合を不合格(×)と評価した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1〜16は、エポキシ系接着樹脂組成物が、エポキシ樹脂に硬化剤を含有してなるベース樹脂と、ゴム成分と、ポリイミドシリコーン樹脂とを含有してなり、ゴム成分とポリイミドシリコーン樹脂の配合比は質量比で70:30〜94:6であり、ベース樹脂100質量部に対して、ゴム成分とポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量が10〜100質量部である。
表1の結果から、これら実施例1〜16は、高温時弾性率、柔軟性、電気絶縁性に優れていることが確認された。
【0048】
比較例1、2より、ポリイミドシリコーン樹脂を使用しない場合は、高温時弾性率が低くなったことが確認された。
比較例3、4より、ゴム成分とポリイミドシリコーン樹脂の配合比70:30よりもポリイミドシリコーン樹脂が多くなると、柔軟性が低くなったことが確認された。
比較例5より、ゴム成分とポリイミドシリコーン樹脂の配合比94:6よりもゴム成分が多くなると、高温時弾性率が低くなったことが確認された。
比較例6より、ゴム成分とポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量がベース樹脂100質量部に対して10質量部より少なくなると柔軟性が低下したことが確認された。
比較例7より、ゴム成分とポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量がベース樹脂100質量部に対して100質量部より多くなると絶縁抵抗値が低下したことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のエポキシ系接着樹脂組成物は、カバーレイ、金属張積層板、プリント配線基板にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のカバーレイの一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の金属張積層板の一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明のプリント配線基板の一実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施例および比較例において、プリント配線基板の絶縁抵抗を測定するための銅回路パターンを示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1・・・カバーレイ、2・・・絶縁フィルム、3・・・接着剤層、4・・・金属張積層板、5・・・ベースフィルム、6・・・接着剤層、7・・・金属箔、10・・・プリント配線基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂に硬化剤を含有してなるベース樹脂と、ゴム成分と、ポリイミドシリコーン樹脂とを含み、
前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の配合比は、質量比で70:30〜94:6であり、
前記ベース樹脂100質量部に対して、前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量が10〜100質量部であることを特徴とするエポキシ系接着樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のエポキシ系接着樹脂組成物を用いてなることを特徴とする接着剤フィルム。
【請求項3】
絶縁フィルムの片面に接着剤層を設けてなるカバーレイにおいて、
前記接着剤層を構成する接着剤が、エポキシ樹脂に硬化剤を含有してなるベース樹脂と、ゴム成分と、ポリイミドシリコーン樹脂とを含み、
前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の配合比は、質量比で70:30〜94:6であり、
前記ベース樹脂100質量部に対して、前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量が10〜100質量部であることを特徴とするカバーレイ。
【請求項4】
ベースフィルムと金属箔との間に接着剤層を設けてなる金属張積層板において、
前記接着剤層を構成する接着剤が、エポキシ樹脂に硬化剤を含有してなるベース樹脂と、ゴム成分と、ポリイミドシリコーン樹脂とを含み、
前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の配合比は、質量比で70:30〜94:6であり、
前記ベース樹脂100質量部に対して、前記ゴム成分と前記ポリイミドシリコーン樹脂の合計添加量が10〜100質量部であることを特徴とする金属張積層板。
【請求項5】
請求項3に記載のカバーレイを、請求項4に記載の金属張積層板の金属箔面に貼着してなることを特徴とするプリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−1387(P2010−1387A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161694(P2008−161694)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】