説明

エマルジョン組成物

【課題】エマルジョン粒子径の保存経時安定性を維持しつつ、カロチノイド色素を高い安定性で保存する、カロチノイド色素を含有するエマルジョン組成物を提供する。
【解決手段】平均粒子径が1nm以上200nm未満の範囲のエマルジョン組成物であって、少なくとも1種のカロチノイド色素を含有する油状成分を含み、かつ、少なくとも1種のラジカル捕捉剤を含有することを特徴とするエマルジョン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロチノイド色素を含有するエマルジョン組成物、および該エマルジョン組成物を含有する飲食物および化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品、化粧品、医薬品の原材料及びそれらの加工品等におけるカロチノイド系などの色素の安定性は産業上重要な問題である。食品、化粧品、医薬品等における色素は、一般に紫外線、酸素、酵素、熱、水分、光等の原因により分解される。色素の安定化方法として、様々な手段が現在までに試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、酵素処理ルチン、水酸化抗防止剤、食塩、塩化カルシウム、ミョウバンの少なくとも一種を色素液に添加することにより色素を安定化させる方法が記載されているが、多量の添加が必要であり、着色などの弊害が生じる。また、特許文献2には、安定化剤として有機酸を用いるカロチノイド色素の安定化方法が記載されているが、有機酸を用いる安定化では乳化安定性が悪くなる可能性がある。特許文献3には、β−カロチンおよびビタミンを含有するソリュビリゼートについて記載されている。
【0004】
また、特許文献4には、アスタキチンサン類と薬効剤を組み合わせた組成物について記載されている。しかしながら、これらの方法はカロチノイド色素の安定性を図る充分な手段ではなく、その開発が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−112076号公報
【特許文献2】特開平6−264055号公報
【特許文献3】特開平9−249554号公報
【特許文献4】特開平9−143063号公報
【特許文献5】特開2001−97888号公報
【特許文献6】特開2006−104118号公報
【特許文献7】特表2004−523528号
【特許文献8】特開平5−320036号公報
【特許文献9】特開平9−208461号公報
【特許文献10】特開2004−83477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、エマルジョン粒子径の保存経時安定性を維持しつつ、カロチノイド色素を高い安定性で保存する、カロチノイド色素を含有するエマルジョン組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、平均粒子径が1nm以上200nm未満の範囲であって、少なくとも1種のカロチノイド色素を含有する油状成分を含み、かつ、少なくとも1種のラジカル捕捉剤を含有するエマルジョン組成物において、エマルジョン粒子径の保存経時安定性、および該色素の保存安定性が向上することを見出した。
【0008】
また、本発明者らは、0.1質量%以上のカロチノイド色素を含有するエマルジョン組成物であって、平均粒子径が200nm以上であり、かつ、少なくとも1種のラジカル捕捉剤を含有する高濃度エマルジョンは、エマルジョン粒子径の保存経時安定性、および該色素の保存安定性を有しており、該高濃度エマルジョンを経由して前記エマルジョン組成物を調製することができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は下記構成よりなる。
1.平均粒子径が1nm以上200nm未満の範囲のエマルジョン組成物であって、少なくとも1種のカロチノイド色素を含有する油状成分を含み、かつ、少なくとも1種のラジカル捕捉剤を含有することを特徴とするエマルジョン組成物。
2.カロチノイド色素の含有量が、0.001〜0.09質量%であることを特徴とする前項1に記載のエマルジョン組成物。
3.0.1質量%以上のカロチノイド色素を含有するエマルジョン組成物(高濃度エマルジョン)であって、平均粒子径が200nm以上であり、かつ、少なくとも1種のラジカル捕捉剤を含有することを特徴とするエマルジョン組成物。
4.ラジカル捕捉剤の含有量が0.001〜5.0質量%であることを特徴とする前項1〜3のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。
5.前項3または4に記載の高濃度エマルジョンを経由して調製されることを特徴とする前項1または2に記載のエマルジョン組成物。
6.ラジカル捕捉剤が、フェノール性OH基を有する化合物および/またはアミン系化合物であることを特徴とする、前項1〜5のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。
7.フェノール性OH基を有する化合物が、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、トコフェロール類およびビスフェノール類から選ばれる少なくとも1である、前項6に記載のエマルジョン組成物。
8.没食子酸エステル類が、没食子酸プロピル、没食子酸ブチルおよび没食子酸オクチルから選ばれる少なくとも1である、前項7に記載のエマルジョン組成物。
9.アミン系化合物が、ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは4−アミノ−p−ジフェニルアミンである、前項6〜8のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。
10.乳化剤としてレシチンを含むことを特徴とする、前項1〜9のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。
11.カロチノイド色素が、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルであることを特徴とする、前項1〜10のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。
12.アスタキサンチンおよび/またはそのエステルがヘマトコッカス藻由来色素であることを特徴とする、前項11に記載のエマルジョン組成物。
13.前項1〜12のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする飲食物。
14.前項1〜12のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする化粧品。
15.前項1〜12のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする医薬品。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、エマルジョン粒子径の保存経時安定性を維持しつつ、カロチノイド色素を高い安定性で保存することを可能とする、カロチノイド色素を含有するエマルジョン組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<エマルジョン組成物>
本発明のエマルジョン組成物は平均粒子径が1nm以上200nm未満であることが好ましく、より好ましくは5nm〜100nmである。また、本発明において「高濃度エマルジョン」とはカロチノイド色素の含有量が0.1%質量以上のエマルジョン組成物を示す。本発明の高濃度エマルジョンの平均粒子径は200nm以上であることが好ましく、より好ましくは300〜10000nm以上である。
【0012】
本発明のエマルジョン組成物は、公知のエマルジョン調製方法にて調製することができる。詳細については、「乳化・可溶化の技術」(辻 著、工業図書(株)発行)の65−66頁、92−105頁に記載されており、凝集法・分散法のいずれも好ましく用いられる。また、「食品用乳化剤 第2版」(日高 著、幸書房発行)の88−90頁記載のように、(1)自己乳化法、(2)セッケン生成法、(3)単純乳化法、(4)転送乳化法、(5)界面活性剤法乳化法と分類されるいずれの方法も好ましいが、特に、高濃度エマルジョンの調製には、単純乳化法または界面活性剤法乳化法が好ましく、界面活性剤法乳化法が特に好ましい。
【0013】
また、本発明のエマルジョン組成物は、上記いずれの方法で調製して構わないが、単純乳化法または界面活性剤法乳化法が好ましく、特に、本発明の高濃度エマルジョンを経由して調製される場合は、界面活性剤法乳化法により調製することが特に好ましい。本発明のエマルジョン組成物は、本発明の高濃度エマルジョンを経由して調製されることが好ましい。
【0014】
界面活性剤法乳化法により本発明の高濃度エマルジョンを経由して本発明のエマルジョン組成物を調製する場合は、エマルジョン組成物となる溶液に高濃度エマルジョンを攪拌しながら添加して高濃度エマルジョンを希釈することにより、所望のエマルジョン組成物を調製することができる。この場合の希釈倍率は、5〜1000倍が好ましく、10〜200倍がより好ましい。
【0015】
本発明のエマルジョン組成物の粒子径は、前述した調製方法における攪拌条件(せん断力・温度・圧力)や、添加剤の使用量、油相と水相比率、界面活性剤の使用量などの要因によって変動するが、本発明における粒子径の範囲内であれば、実用上問題ない。本発明のエマルジョン組成物の粒子径は、粒度分布計等で計測することができる。
【0016】
<カロチノイド色素>
本発明のエマルジョン組成物は、カロチノイド色素を油状成分に含有することを特徴とする。本発明のエマルジョン組成物におけるカロチノイド色素の含有量は、好ましくは0.001〜0.09質量%、より好ましくは0.01〜0.09質量%である。また、本発明の高濃度エマルジョンにおけるカロチノイド色素の含有量は、好ましくは0.1〜5.0質量%、より好ましくは0.2〜2.0質量%である。
【0017】
本発明に使用するカロチノイド色素として、アスタキサンチン、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、ルティン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、クロセチン、パプリカ色素、アナトー、クチナシ黄色色素、リコピン色素等が挙げられ、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルがより好ましい。アスタキサンチンは自然界では動植物界に広く分布しており、主として養殖魚や養鶏の色揚げ剤として使用されている。アスタキチンサンは酸化防止効果、抗炎症効果(特開平2−49091号公報)、皮膚老化防止効果(特開平5−155736号公報)、美白効果(日本香粧品科学会第19回学術大会講演要旨集 1994年、P.66)を有することが知られている。
【0018】
アスタキサンチンおよび同エステル体はR.Kuhnらによってロブスター(Astacus gammarus L.)から初めて分離され、その推定構造が開示された(Kuhn, R., Soerensen, N.A. : The coloring matters of the lobster (Astacus gammarus L.), Z. Angew. Chem.,1938, 51, p.465-466.)。それ以来、アスタキサンチンが自然界に広く分布し、通常アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白(オボルビン、クラスタシアニン)としても存在することが明らかにされている(Cheesman, D.F. : Ovorubin, a chromoprotein from the eggs of the gastropod mollusc Pomacea canaliculata, Proc. Roy. Soc. B, 1958, 149, p.571-587.)。
【0019】
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でカロチノイドの一種キサントフィルに属している(Davies, B.H. : In “Chemistry and Biochemistry of Plant Pigments”, T. W. Goodwin ed., 2nd ed., Academic Press, NY, 1976, p.38-165)。アスタキサンチンの化学構造は3,3’−dihydroxy−β,β−carotene-4,4’−dione (COH52、分子量596.82)であり、化学式は下記一般式(1)で示される。
【0020】
一般式(1)
【0021】
【化1】

【0022】
アスタキサンチンは、分子の両端 に存在する環構造の3(3’)−位の水酸基の立体配置により異性体が存在する3S,3S’−体、3S,3R’-体(meso−体)、3R,3R’−体の三種で、さらに分子中央の 共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば全cis−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0023】
前記3(3’)-位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル(Yamaguchi, K., Miki, W., Toriu, N., Kondo, Y., Murakami, M., Konosu, S., Satake,M., Fujita,T. : The composition of carotenoid pigments in the antarctic krill Euphausia superba, Bull. Jap. Sos. Sci. Fish., 1983, 49, p.1411-1415.)、H. pluvialisから得られるものは3S,3S’−体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている(Renstrom, B., Liaaen-Jensen, S. : Fatty acids of some esterified carotenols, Comp. Biochem. Physiol. B, Comp. Biochem., 1981, 69, p.625-627.)。また、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’−体(Andrewes, A.G., Starr, M.P. : (3R,3'R)-Asttaxanthin from the yeast Phaffa rhodozyma, Phytochem., 1976, 15, p.1009-1011.)で通常天然に見出される3S,3S’-体と反対の構造を持っている。脂肪酸とエステル形成していない フリー体で存在している(Andrewes, A.G., Phaffia, H.J., Starr, M.P. : Carotenids of Phaffa rhodozyma, a red pigmented fermenting yeast, Phytochem., 1976, 15, p.1003-1007.)。
【0024】
本発明に使用するアスタキサンチンはヘマトコッカス藻由来色素であることが好ましい。ヘマトコッカス藻由来色素は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとは異なることが知られている。
本発明に使用するヘマトコッカス藻色素の原料としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
【0025】
本発明に使用するヘマトコッカス藻の培養方法は、文献〔特開平8−103288号公報(特許請求の範囲、段落[0001]〜[0008])〕等に開示された様々な方法を採用することができ、特に限定されるものではなく、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞に形態変化していればよい。
【0026】
本発明に使用するヘマトコッカス藻由来色素は、上記の原料を、必要に応じて、例えば文献〔特開平5−68585号公報(特許請求の範囲、段落[0001]〜[0005])〕等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得られる。また、広く市販されているものを用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5 O、同−5 O、同−10 O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstin SCE7等が挙げられる。
【0027】
本発明に使用するヘマトコッカス藻由来色素中の色素純分の含有量は、好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。抽出液を使用する場合は、溶質の含有量が上記範囲内であれば、その抽出液濃度等は何ら限定されるものではない。なお、色素純分の含有量が50%を超えた濃度での使用を制限するものではない。
【0028】
なお、本発明に使用するヘマトコッカス藻由来色素は、特開平2−49091号公報に記載の色素同様に色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含むが、エステル体を、一般的には50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上含むものである。さらに詳細な説明は「アスタキサンチンの化学」、平成17年、インターネット〈URL: http://www.astaxanthin.co.jp/chemical/basic.htm〉に記載されている。
【0029】
<ラジカル捕捉剤>
本発明のエマルジョン組成物は、ラジカル捕捉剤を含有することを特徴とする。本発明のエマルジョン組成物および高濃度エマルジョンにおけるラジカル補足剤の含有量は一般的には0.001〜5.0質量%であり、好ましくは0.01〜3.0質量%、より好ましくは0.1〜2.0質量%である。
【0030】
従来から、生体内で発生する活性酸素等のラジカルの消去を目的として各種の化合物が化粧品、食品や医薬品に用いられている(特許文献4〜9;特開平9−143063号公報;特開平2001−97888号公報;特開平2006−104118号公報;特表2004−523528号;特開平5−320036号公報;特開平9−208461号公報)。また、特開2004−83477号公報では、色素の変退色防止剤としてカロテン(リコピン)にBHTを添加しているが、使用上問題があることを示す記載がある(段落番号[0005])。
【0031】
一般にラジカル捕捉剤とは、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である(「油化学便覧 第4版」、日本油化学会編 2001)。ラジカル捕捉剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
【0032】
本発明においては、油脂の自動酸化反応を利用して下記実験条件で実験を行い、油脂の過酸化物価(POV値)を60meq/kgに引き上げるまでに要する時間が、ブランクに対し2倍以上、より好ましくは、5倍以上である化合物をラジカル捕捉剤とする。
【0033】
実験条件:油脂(オリーブオイル)に被検試料を0.1質量%となるように添加したものを190℃にて加熱し、時間を追ってPOV値を測定し、60meq/kgとなる時間を算出する。
【0034】
本発明のラジカル捕捉剤として使用できる化合物は、「抗酸化剤の理論と実際」(梶本著、三書房 1984)や、「酸化防止剤ハンドブック」(猿渡、西野、田端著、大成社 1976)に記載の各種酸化防止剤のうち、ラジカル捕捉剤として機能するものであれば良く、具体的には、フェノール性OHを有する化合物、アミン系酸化防止剤を挙げることができる。以下に好ましい化合物を例示するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
前記フェノール性OHを有する化合物として、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、トコフェロール類およびビスフェノール類等が挙げられる。没食子酸エステル類として、没食子酸プロピル、没食子酸ブチルおよび没食子酸オクチルが挙げられる。
【0036】
アミン系化合物としてフェニレンジアミンが挙げられ、ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは4−アミノ−p−ジフェニルアミンがより好ましい。
【0037】
<酸化防止剤>
本発明のエマルジョン組成物は、酸化防止剤として化合物群(a)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩、あるいはアスコルビン酸誘導体またはエリソルビン酸誘導体またはその塩からなる化合物群、(b)トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群、(c)ポリフェノール類からなる化合物群の少なくとも2群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含有してもよい。
【0038】
本発明のエマルジョン組成物における酸化防止剤の含有量は一般的には0.001〜5.0質量%であり、好ましくは0.01〜3.0質量%、より好ましくは0.1〜2.0質量%である。
【0039】
以下、化合物群(a)〜(c)の具体的な化合物例を挙げるが、本発明に使用できる化合物を制限するものではない。
【0040】
(a)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩
アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはその塩として、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸K、L−アスコルビン酸Ca、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビル等が挙げられる。これらのうち、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルが特に好ましい。
【0041】
エリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはその塩として、エリソルビン酸、エリソルビン酸Na、エリソルビン酸K、エリソルビン酸Ca、エリソルビン酸リン酸エステル、エリソルビン酸硫酸エステル、エリソルビン酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸エリソルビル、等が挙げられる。これらのうち、エリソルビン酸、エリソルビン酸Naが特に好ましい。
【0042】
本発明に用いる化合物群(a)に属する酸化防止剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、L−アスコルビン酸(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、L−アスコルビン酸Na(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、アスコルビン酸2−グルコシド(商品名 AA−2G:林原生物化学研究所)、L−アスコルビン酸燐酸Mg(商品名 アスコルビン酸PM「SDK」(昭和電工)、商品名 NIKKOL VC−PMG(日光ケミカルズ)、商品名 シーメート(武田薬品工業))、パルミチン酸アスコルビル(DSM ニュートリション ジャパン、金剛薬品、メルク、ほか)等が挙げられる。
【0043】
(b)トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群
トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群として、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等のトコフェロール及びその誘導体、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が挙げられる。これらは、混合物の状態で使用する場合が多く、抽出トコフェロール、ミックストコフェロールなどと呼ばれる状態で使用できる。
【0044】
本発明に用いる化合物群(b)に属する酸化防止剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、ミックストコフェノール(商品名 理研Eオイル800:理研ビタミン(株))、トコトリエノール(商品名 オリザトコトリエノール−90(オリザ油化))等が挙げられる。
【0045】
(c)ポリフェノール類からなる化合物群
ポリフェノール類からなる化合物群として、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができる。また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物という状態で利用することができる。
【0046】
例えば、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(ボタンピ)抽出物、モッカ(ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、微生物醗酵代謝産物、羅漢果抽出物等が挙げられる(かっこ内は、植物の別名、生薬名等を記載した。)。これらのポリフェノール類のうち、特に好ましいものとしては、カテキン、ローズマリー抽出物、グルコシルルチン、エラグ酸、没食子酸を挙げることができる。
【0047】
本発明に用いる化合物群(c)に属する酸化防止剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、エラグ酸(和光純薬ほか)、ローズマリー抽出物(商品名 RM−21A、RM−21E:三菱化学フーズほか)、カテキン(商品名 サンカトールW−5、No.1:太陽化学、ほか)、没食子酸Na(商品名 サンカトール:太陽化学、ほか)、ルチン・グルコシルルチン・酵素分解ルチン(商品名 ルチンK−2、P−10:キリヤ化学、商品名 αGルチン:林原生物化学研究所、ほか)等が挙げられる。
【0048】
<乳化剤>
本発明のエマルジョン組成物に乳化剤は水溶性乳化剤が好ましい。水溶性乳化剤としては、水性媒体に溶解する乳化剤であれば、特に限定は無いが、例えばHLBが10以上、好ましくは12以上のノニオン界面活性剤が好ましい。HLBが低すぎると、乳化力が不十分となることがある。
【0049】
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性-疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。川上式を次に示す。
【0050】
[式1]
HLB=7+11.7log(Mw/M0)
【0051】
ここで、Mwは親水基の分子量、M0は疎水基の分子量である。また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。さらに、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の乳化剤を得ることが出来る。
【0052】
本発明で使用することの出来る乳化剤は、特に制限は無いが、ノニオン性乳化剤が好ましい。ノニオン性乳化剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルおよびレシチンなどが挙げられる。より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルである。また、上記の乳化剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0053】
本発明に用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS、NIKKOL DGMO-CV、NIKKOL DGMO−90V、NIKKOL DGDO、NIKKOL DGMIS、NIKKOL DGTIS,NIKKOL Tetraglyn 1-SV、NIKKOL Tetraglyn 1-O、NIKKOL Tetraglyn 3−S、NIKKOL Tetraglyn 5−S、NIKKOL Tetraglyn 5−O、NIKKOL Hexaglyn 1−L、NIKKOL Hexaglyn 1−M、NIKKOL Hexaglyn 1-SV,NIKKOL Hexaglyn 1-O,NIKKOL Hexaglyn 3−S、NIKKOL Hexaglyn 4−B、NIKKOL Hexaglyn 5−S、NIKKOL Hexaglyn 5−O、NIKKOL Hexaglyn PR−15、NIKKOL Decaglyn 1−L、NIKKOL Decaglyn 1−M、NIKKOL Decaglyn 1−SV、NIKKOL Decaglyn 1−50SV、NIKKOL Decaglyn 1−ISV、NIKKOL Decaglyn 1−O、NIKKOL Decaglyn 1−OV、NIKKOL Decaglyn 1−LN、NIKKOL Decaglyn 2−SV、NIKKOL Decaglyn 2−ISV、NIKKOL Decaglyn 3−SV、NIKKOL Decaglyn 3−OV、NIKKOL Decaglyn 5−SV、NIKKOL Decaglyn 5−HS、NIKKOL Decaglyn 5−IS、NIKKOL Decaglyn 5−OV、NIKKOL Decaglyn 5−O−R、NIKKOL Decaglyn 7−S、NIKKOL Decaglyn 7−O、NIKKOL Decaglyn 10−SV、NIKKOL Decaglyn 10−IS、NIKKOL Decaglyn 10−OV、NIKKOL Decaglyn 10−MAC、NIKKOL Decaglyn PR−20、三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル L−10D、L−7D、M−10D、M−7D、P−8D、S−28D、S−24D、SWA−20D、SWA−15D、SWA−10D、O−50D、O−15D、B−100D、B−70D、ER−60D、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
【0054】
本発明に用いられる、ソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL SL−10、SP−10V、SS−10V、SS−10MV、SS−15V、SS−30V、SI−10RV、SI−15RV、SO−10V、SO−15MV、SO−15V、SO−30V、SO−10R、SO−15R、SO−30R、SO−15EX、第一工業製薬(株)社製の、ソルゲン30V、40V、50V、90、110などが挙げられる。
【0055】
本発明に用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステル S−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
【0056】
本発明のエマルジョン組成物および高濃度エマルジョンの調製に使用する界面活性剤として、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性の活性剤が用いられる。本発明のエマルジョン組成物における、界面活性剤の含有量は一般的には0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.02〜1.0質量%である。また、高濃度エマルジョンにおける、界面活性剤の含有量は一般的には0.1〜30質量%、好ましくは0.2〜20質量%、より好ましくは0.3〜10質量%である。
【0057】
<添加薬品>
本発明のエマルジョン組成物は、上記したカロチノイド色素、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、界面活性剤の他に、各種オイル、水溶性溶媒(グリセリン、1,3−ブタンジオールなどの多価アルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール類)、水溶性ポリマー(例えば、キサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、カラギーナン、アルギン酸Na、ゼラチン、ポリアクリル酸Na、カルボマー、カルボキシメチルセルロースNaなど)、香料、防腐剤等を含有することができる。また、食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物に仕上げるために必要な原材料や添加剤は、公知のものを使用することができ、具体的には、「食品添加剤便覧2005年版」(食品と科学社発行)、「天然物便覧」(食品と科学社発行)、「香粧品原料便覧 第5版」(フレグランスジャーナル社発行)、「日本 化粧品成分表示名称事典 第2版」(薬事日報社発行)、「第十四改正 日本薬局方」などに記載のものを挙げることができる。
【0058】
本発明のエマルジョン組成物は、食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物に含有させることができる。食品組成物の例として、清涼飲料水、炭酸飲料、錠剤、ソフトカプセル、魚肉練り製品、乳製品(飲料、アイスクリーム)、ゼリー、豆乳等が挙げられる。化粧品組成物の例として、化粧水、美容液、乳液、クリーム等が挙げられる。医薬品組成物の例として、シロップ、点眼薬、点鼻薬等が挙げられる。これら組成物における本発明のエマルジョン組成物の含有量はその目的により適宜調整することができる。
【実施例】
【0059】
実施例1:高濃度エマルジョンHDE−1〜9、および、エマルジョン組成物EM−1〜9の調製
【0060】
1−1:高濃度エマルジョンHDE−1〜9の調製
高濃度エマルジョンHDE−1〜9を下記に示す組成及び下記製法で調製した。下記成分(3)別表のラジカル捕捉剤は、表1に記載のものを使用した。ただし、HDE−5にはラジカル捕捉剤は添加せず、HOを41.2質量%とした。
【0061】
<組成>
(成分) (質量%)
(1)ヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン類含有率20質量%)5.0
(ASTOTS−S:武田紙器(株)製)
(2)オリーブオイル 0.2
(3)表1のラジカル捕捉剤 1.2
(4)オレイン酸モノグリセリド 2.0
(エキセルO−95R:花王(株)製)
(5)グリセリン 47.39
(6)HO 40.0
(7)ショ糖ラウリン酸エステル 1.2
(リョートーシュガーエステルL−1695:三菱化学フーズ(株)製)
(8)ラウリン酸ポリグリセリル−10 3.0
(NIKKOL Decaglyn 1−L:日光ケミカルズ(株)製)
(9)防腐剤(メチルパラベン) 0.01
【0062】
<製法>
A.上記成分(1)〜(4)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、70℃に保った。
B.上記成分(5)〜(8)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、加熱混合し、70℃に保った。
C.BにAを加えて混合し、均一に乳化した。乳化装置は、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、15000回転にて5分間攪拌し、Cを得た。
D.Cを冷却後上記成分(9)のエタノール溶液を加え、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、5000回転にて2分間攪拌し、均一に混合して高濃度エマルジョンHDE−1〜9を得た。
【0063】
1−2:エマルジョン組成物EM−1〜9の調製
1−1で得られた高濃度エマルジョンHDE−1を用いて、エマルジョン組成物EM−1を下記製法で調製した。
【0064】
<組成>
(成分) (質量%)
(10)HO 99.0
(11)HDE−1〜9 1.0
【0065】
<製法>
上記成分(10)に、成分(11)を加え乳化して、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、15000回転にて4分間攪拌し、エマルジョン組成物EM−1を得た。EM−2〜9も、同様の手順で調製した。
【0066】
1−3.エマルジョン組成物EM−1〜9の平均粒子径および分光吸収測定
1−2の調製方法により得られたエマルジョン組成物EM−1〜9の平均粒子径を、粒度分布計(LB−550:堀場製作所製)で測定した(表1)。また、エマルジョン組成物EM−1〜9の分光吸収測定(ND−1000:ナノドロップ社製)を行ったところ、可視域での極大波長はいずれも479nmであった。
【0067】
1−4.ラジカル捕捉力の測定
エマルジョン組成物EM−1〜9の調製に使用したラジカル捕捉剤のラジカル捕捉力を下記方法により評価した。その結果を表1に示す。
油脂の自動酸化反応を利用して下記実験条件で実験を行い、油脂の過酸化物価(POV値)を60meq/kgに引き上げるまでに要する時間が、ブランクに対し2倍以上、より好ましくは、5倍以上である化合物をラジカル捕捉剤とした。
【0068】
実験条件:油脂(オリーブオイル)に被検試料を0.1質量%となるように添加したものを190℃にて加熱し、時間を追ってPOV値を測定し、60meq/kgとなる時間を算出した。油脂に被検試料を添加していないものをブランクとし、算出された時間をブランクの場合と比較して以下の基準で能力を区分した。
A:5倍以上
B:2倍以上 5倍未満
C:ブランクと同等か、2倍未満
【0069】
実施例2:エマルジョン組成物および高濃度エマルジョンの評価
2−1:粒子径の保存安定性の評価
実施例1で得られた試料を2つに分け、一方を100mlガラス瓶に隙間なく充填し、50℃にて3日間保存した。その後、エマルジョン組成物および高濃度エマルジョンの平均粒子径を、粒度分布計(LB−550:堀場製作所製)で測定した。保存前の平均粒子径をD0、保存後の平均粒子径をD1とし、次式にて変化率を求めた。保存安定性が悪い場合変化率は0より大きい方に振れることになる。
【0070】
[式2]
変化率(%)=(D1−D0)/D0*100
【0071】
以下の基準で評点をつけ、その結果を表1に示した。
4:0%以下または20%以内
3:20%を超え、50%以内(実用的に許容)
2:50%を超え、100%以内
1:100%超え
【0072】
2−2:色素の保存安定性の評価
試料を2つに分け、一方を100mlガラス瓶に隙間なく充填し、50℃にて3日間保存した。その後、エマルジョン組成物および高濃度エマルジョンの分光吸収測定を、分光光度計(ND−1000:ナノドロップ社製)で行った。保存前の479nmでの吸光度をAb0、保存後の479nmでの吸光度をAb1とし、次式にて変化率を求めた。保存安定性が悪い場合変化率は0より大きい方に振れる。
【0073】
[式3]
変化率(%)=(Ab0−Ab1)/Ab0*100
【0074】
以下の基準で評点をつけ、その結果を表1に示した。
4:0%以下または10%以内
3:10%を超え、20%以内(実用的に許容)
2:20%を超え、50%以内
1:50%超え
【0075】
【表1】

【0076】
実施例で用いた化合物A〜Dの構造式を以下に示す。
【0077】
【化2】

【0078】
化合物Aは、ラジカル捕捉剤ではない化合物である。
【0079】
【化3】

【0080】
化合物Bは、ラジカル捕捉剤ではない化合物である。
【0081】
【化4】

【0082】
化合物Cは、ラジカル捕捉剤である。
【化5】

【0083】
化合物Dは、ラジカル捕捉剤である。
【0084】
実施例3:乳化剤としてレシチンを用いた場合のエマルジョン組成物の調製
3−1.高濃度エマルジョンの調製
乳化剤としてレシチンを用いて、高濃度エマルジョンHDE−10〜18を下記に示す組成及び下記製法で調製した。下記成分(3)別表のラジカル捕捉剤は、表2に記載のものを使用した。ただし、HDE−14にはラジカル捕捉剤は添加せず、HOを38.2質量%とした。
<組成>
(成分) (質量%)
(1)ヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン類含有率20質量%)5.0
(ASTOTS−S:武田紙器(株)製)
(2)オリーブオイル 0.2
(3)表2のラジカル捕捉剤 1.2
(4)オレイン酸モノグリセリド 2.0
(エキセルO−95R:花王(株)製)
(5)グリセリン 47.39
(6)HO 37.0
(7)ショ糖ラウリン酸エステル 1.2
(リョートーシュガーエステルL−1695:三菱化学フーズ(株)製)
(8)ラウリン酸ポリグリセリル−10 3.0
(NIKKOL Decaglyn 1−L:日光ケミカルズ(株)製)
(9)レシオンP(大豆レシチン:理研ビタミン(株)製) 3.0
(10)防腐剤(メチルパラベン) 0.01
【0085】
<製法>
A.上記成分(1)〜(4)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、70℃に保った。
B.上記成分(5)〜(9)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、加熱混合し、70℃に保った。C.BにAを加えて混合し、均一に乳化した。乳化装置は、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、15000回転にて5分間攪拌し、Cを得た。
D.Cを冷却後上記成分(10)のエタノール溶液を加え、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、5000回転にて2分間攪拌し、均一に混合して高濃度エマルジョンHDE−10〜18を得た。
【0086】
3−2:エマルジョン組成物EM−10〜18の調製
3−1で得られた高濃度エマルジョンHDE−10を用いて、エマルジョン組成物EM−10を下記製法で調製した。
【0087】
【表2】

【0088】
<組成>
(成分) (質量%)
(10)HO 99.0
(11)HDE−10 1.0
【0089】
<製法>
上記成分(10)に、成分(11)を加え乳化して、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、15000回転にて4分間攪拌し、エマルジョン組成物EM−10を得た。エマルジョン組成物EM−11〜18も、同様の手順で調製した。
【0090】
実施例4:飲料
実施例1で調製したHDE−2を用いて下記の組成および製法で飲料を調製した。ただし、本発明のHDE−2は、防腐剤を含有しないものを用いた。
【0091】
<組成>
レモン果汁 50g
ブドウ糖果糖液糖 110g
はちみつ 45g
クエン酸 2g
本発明のHDE−2 10g
レモンエッセンス 0.3g
L−アスコルビン酸Na 5g
飲料水 777.7g
【0092】
<製法>
以上を混合し、90℃にて殺菌して、褐色ガラス瓶に充填し飲料に供した。その結果、得られた飲料は、保存後の色の変化や、色素の分離もなく良好であった
【0093】
実施例5:食品(菓子)
下記の組成および製法でゼリーを調製した。ただし、本発明のHDE−2は、防腐剤を含有しないものを用いた。
【0094】
<組成>
ブドウ糖果糖液糖 110g
ショ糖 40g
冷凍イチゴ果実(スライス) 40g
カラギーナン 10g
クエン酸Na 2g
クエン酸 1.8g
本発明のHDE−2 8g
レモンエッセンス 0.3g
L−アスコルビン酸Na 1g
飲料水 786.9g
【0095】
<方法>
1.水にブドウ糖果糖液糖を溶解し、ショ糖・カラギーナンを添加してよく溶解させる。
2.残りの材料を添加して、混合しよく溶解させる。
3.得られた液を95℃にて加熱溶解し、アルミカップに入れて冷却した。
以上の手順にて、食品(菓子)に供した。その結果、得られた食品(菓子)は、保存後の色の変化や、色素の分離もなく良好であった
【0096】
実施例6:化粧品
実施例1で調製したHDE−2を用いて、下記の組成および製法で化粧品を調製した。
【0097】
<組成>
(1)1,3−ブチレングリコール 125g
(2)エタノール 125g
(3)HO 1500g
(4)ヒアルロン酸原液 0.25g
(5)スクワラン 125g
(6)ワセリン 50g
(7)ミツロウ 12.5g
(8)ソルビタンセスキオレイン酸エステル 20g
(9)ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル30g
(10)本発明のHDE−2 2.5g
(11)防腐剤(メチルパラベン) 5g
(12)キサンタンガムの2%水溶液 500g
【0098】
<製法>
1.前記成分(1)〜(4)を混合し、70℃に保温する。
2.前記成分(5)〜(11)を70℃にて加熱溶解し、よく混合する。
3.2.で調製した液を1.の液に添加して、70℃にて均一に乳化した。
4.乳化後30℃に冷却し、前記成分(12)を加えて乳液を得た。
以上の手順にて、化粧品に供した。その結果、得られた化粧品は、保存後の色の変化や、色素の分離もなく良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1nm以上200nm未満の範囲のエマルジョン組成物であって、少なくとも1種のカロチノイド色素を含有する油状成分を含み、かつ、少なくとも1種のラジカル捕捉剤を含有することを特徴とするエマルジョン組成物。
【請求項2】
カロチノイド色素の含有量が、0.001〜0.09質量%であることを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン組成物。
【請求項3】
0.1質量%以上のカロチノイド色素を含有するエマルジョン組成物(高濃度エマルジョン)であって、平均粒子径が200nm以上であり、かつ、少なくとも1種のラジカル捕捉剤を含有することを特徴とするエマルジョン組成物。
【請求項4】
ラジカル捕捉剤の含有量が0.001〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。
【請求項5】
請求項3または4に記載の高濃度エマルジョンを経由して調製されることを特徴とする請求項1または2に記載のエマルジョン組成物。
【請求項6】
ラジカル捕捉剤が、フェノール性OH基を有する化合物および/またはアミン系化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。
【請求項7】
フェノール性OH基を有する化合物が、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、トコフェロール類およびビスフェノール類から選ばれる少なくとも1である、請求項6に記載のエマルジョン組成物。
【請求項8】
没食子酸エステル類が、没食子酸プロピル、没食子酸ブチルおよび没食子酸オクチルから選ばれる少なくとも1である、請求項7に記載のエマルジョン組成物。
【請求項9】
アミン系化合物が、ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたは4−アミノ−p−ジフェニルアミンである、請求項6〜8のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。
【請求項10】
乳化剤としてレシチンを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。
【請求項11】
カロチノイド色素が、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する天然抽出物であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物。
【請求項12】
アスタキサンチンおよび/またはそのエステルがヘマトコッカス藻由来色素であることを特徴とする、請求項11に記載のエマルジョン組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする飲食物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする化粧品。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする医薬品。

【公開番号】特開2007−326829(P2007−326829A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160808(P2006−160808)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】