説明

エレベータシステム

【課題】より好適に乗場と乗りかごとの間の敷居部に存在する異物を検出することを可能とするエレベータシステムを提供することである。
【解決手段】エレベータシステム10において、乗場11と乗りかご16との間の境界部分である敷居部に存在する物を撮影する敷居用カメラ24と、敷居用カメラ24の撮影情報に基づき、乗場扉14、乗りかご扉18が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であるか否かを判断する判断部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムに係り、特に、乗場と乗りかごとの間の境界部分である敷居部を有するエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な商業施設等において、エレベータシステムが設置されている。そして、エレベータシステムにおいて乗客が乗りかごに乗り降りする際に、乗場扉あるいはかご扉が触れた場合に自動的に扉が開く等といった種々の安全上対策等が施されている。本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、エレベータシステムの安全装置として、エレベータシステムの扉先端部近傍に配置され物体の接触により扉を反転制御し扉への挟まれ事故を防ぐ安全装置において、この安全装置の検出器として扉に挟まれた物体が擦れ動くことで発せられる固有の振動音を検知するセンサーを配置するようにした構成が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、エレベータシステム装置として、昇降可能なエレベータシステムの乗りかごと、この乗りかごの床面に所定間隔で設けられた複数の導電部と、これら導電部に接続され各導電部の通電状態によりペットの乗り込みを検知する導電検知装置と、この導電検知装置が上記ペットの乗り込みを検知したとき点灯するペット同乗ランプとを備える構成が開示されている。
【0004】
そして、特許文献3には、エレベータシステムドアの制御装置として、エレベータシステムかご戸の戸当たり面に設けられ、エレベータシステムドア全閉動作時にエレベータシステムかご戸に異物が挟まれたとき、それを検出して異物検出信号を出力する異物検出装置と、上記異物検出装置から発せられる上記異物検出信号に応答して警報を発する警報信号処理手段と、上記異物検出信号に応答してエレベータシステムの始動を禁止する手段と、上記異物検出信号に応答して上記エレベータシステムかご戸を開放動作させる手段とを備える構成が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献4には、エレベータシステムのドア装置として、エレベータシステムの扉の前縁に設けられ、上記扉の前進移動中に異物に接触したときに上記扉の高さ方向に移動しながら後退して上記扉の前進方向への移動を停止させる接触棒を備える構成が開示されている。そして、上記接触棒の下端から乗り口の床方向に進退可能に突出して設けられ、上記接触棒と床との間の空間を常時実質的に閉塞してこの空間内への異物の侵入を防止する閉塞体を備える構成が開示されている。
【0006】
また、特許文献5には、エレベータシステム装置として、エレベータシステム出入口を水平方向に開閉する戸と、上記戸の全閉時における戸当り部付近の上下部の一方に設けられ、戸の全閉付近で垂直方向の光を出力する投光手段と、上記戸の全閉時における戸当り部付近の上下部の他方に設けられ、上記投光手段からの垂直方向の光を受光する受光手段と、上記戸の全閉付近で動作して上記投光手段からの光が遮られたとき、戸当たり部の隙間に紐状物体が挟まれたことを検出する挟まり検出装置とを備える構成が開示されている。そして、ここでは、上記挟まり検出装置が紐状物体の挟まれを検出したとき、エレベータシステムを停止させる構成が開示されている。
【0007】
そして、特許文献6には、エレベータシステム装置として、エレベータシステム出入口の一側に設けられ、上記出入口の所定の高さの範囲に渡って配置された複数の発光素子と、上記出入口の他側に設けられ、上記各発光素子に対応するように、上記出入口の所定の高さの範囲に渡って配置された複数の受光素子と、上記受光素子を複数の区分に分割し、その区分毎に、上記受光素子による受光量を検出する検出部と、上記検出部によって検出された上記区分毎の受光量に基づいて、上記出入口の異物の有無を判定する判定部と、上記判定部の判定結果に基づいて、エレベータシステムの戸を開閉制御する戸駆動制御部と、を備える構成が開示されている。そして、上記判定部は、上記複数の区分のうち何れかの区分の受光量が第1所定値に満たない場合、及び、全区分の総受光量が第2所定値に満たない場合のそれぞれの場合において、上記出入口の異物有りを判定する構成が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献7には、エレベータシステムの出入口装置として、全戸閉状態のエレベータシステムドアの戸当たり側端部に対向する部分に開口が設けられた上枠を有する出入口枠、及び上記開口に臨んで上記上枠内に設けられ、上記開口から上記上枠内に異物が入ることにより操作される検出スイッチを備えている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−312510号公報
【特許文献2】特開2005−1801号公報
【特許文献3】特開2004−262636号公報
【特許文献4】特開2005−343675号公報
【特許文献5】特開2008−169009号公報
【特許文献6】特開2009−51615号公報
【特許文献7】特開2009−113932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献のように、エレベータシステムの乗場扉あるいはかご扉が開閉する際等にあたって種々の安全上対策が施されているが、いずれの構成を用いても非常に小さい物、例えば、紐などが乗場と乗りかごとの間の敷居部に跨ったまま乗場扉あるいはかご扉が閉じようとした場合に、それらを異物としてうまく検出できない可能性もある。
【0011】
本発明の目的は、より好適に乗場と乗りかごとの間の敷居部に存在する異物を検出することを可能とするエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るエレベータシステムは、乗場と乗りかごとの間の境界部分である敷居部に存在する物を撮影する敷居用カメラと、敷居用カメラの撮影情報に基づき、扉が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であるか否かを判断する判断部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、乗場に存在する物を撮影する乗場用カメラを備え、判断部は、乗場用カメラが撮影する物の形態と、敷居用カメラが撮影する物の形態とが一致したときに、物が敷居部に残ったままの状態であると判断することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、乗りかご内に存在する物を撮影する乗りかご用カメラを備え、判断部は、乗りかご用カメラが撮影する物の形態と、敷居用カメラが撮影する物の形態とが一致したときに、物が敷居部に残ったままの状態であると判断することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、敷居用カメラは、扉の下部に設けられるドアシューに取り付けられることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、敷居用カメラは、敷居部周辺を広角で撮影することが好ましい。
【0017】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、扉が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であると判断されたときに、扉を開放状態とし乗りかごを作動させない状態とする制御部を備えることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、制御部は、扉が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であると判断されたときに、監視センタに通報することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、敷居用カメラは、敷居部に存在する物を撮影する敷居用カメラであるとともに、乗場に存在する物を撮影する乗場用カメラとしても機能することが好ましい。
【0020】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、敷居用カメラは、敷居部に存在する物を撮影する敷居用カメラであるとともに、乗りかご内に存在する物を撮影する乗りかご用カメラとしても機能することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
上記構成のエレベータシステムによれば、敷居用カメラの撮影情報に基づき、扉が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であるか否かを判断することができる。これにより、より好適に乗場と乗りかごとの間の敷居部に存在する異物を検出することができる。
【0022】
また、上記構成の乗場用カメラを有するエレベータシステムによれば、乗場用カメラが撮影する物の形態と、敷居用カメラが撮影する物の形態とが一致したときに、物が敷居部に残ったままの状態であると判断することができる。これにより、乗りかごと乗場との間に異物が跨っていることをより好適に検出することができる。
【0023】
また、上記構成の乗りかご用カメラを有するエレベータシステムによれば、乗りかご用カメラが撮影する物の形態と、敷居用カメラが撮影する物の形態とが一致したときに、物が敷居部に残ったままの状態であると判断することができる。これにより、乗りかごと乗場との間に異物が跨っていることをより好適に検出することができる。
【0024】
また、上記構成の敷居用カメラが扉の下部に設けられるドアシューに取り付けられるエレベータシステムによれば、異物が敷居溝の中に入り込んでいる場合であってもより好適に異物を検出することができる。
【0025】
また、上記構成の敷居部周辺を広角で撮影する敷居用カメラを有するエレベータシステムによれば、死角が少なくなるためより好適に異物を検出することができる。
【0026】
また、上記構成の制御部を有するエレベータシステムによれば、扉が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であると判断されたときに、扉を開放状態とし乗りかごを作動させない状態とすることができる。したがって、より安全にエレベータシステムを作動させることができる。
【0027】
また、上記構成の制御部を有するエレベータシステムによれば、扉が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であると判断されたときに、監視センタに通報されるため、保守作業員が迅速に対応することができる。
【0028】
また、上記構成の乗場用カメラとしても機能する敷居用カメラを有するエレベータシステムによれば、より少ない部品点数でシステムを構成することができる。したがって、より低コストで好適に乗場と乗りかごとの間の敷居部に存在する異物を検出可能なエレベータシステムを提供することができる。
【0029】
また、上記構成の乗りかご用カメラとしても機能する敷居用カメラを有するエレベータシステムによれば、より少ない部品点数でシステムを構成することができる。したがって、より低コストで好適に乗場と乗りかごとの間の敷居部に存在する異物を検出することができるエレベータシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第一実施形態であるエレベータシステムを示す図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図に相当する図である
【図3】本発明に係る第一実施形態において、敷居用カメラを乗りかご扉のドアシューに取り付けている様子を示す図である。
【図4】本発明に係る第一実施形態において、制御部の各要素を示す図である。
【図5】本発明に係る第一実施形態であるエレベータシステムにおいて、乗場扉、乗りかご扉が閉じようとしている際に、敷居部に異物が残っていることを検出する手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る第二実施形態であるエレベータシステムを示す図である。
【図7】図6におけるB−B線断面図に相当する図である
【図8】本発明に係る第二実施形態であるエレベータシステムにおいて、乗場扉、乗りかご扉が閉じようとしている際に、敷居部に異物が残っていることを検出する手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る第三実施形態であるエレベータシステムを示す図である。
【図10】図9におけるC−C線断面図に相当する図である
【図11】本発明に係る第三実施形態であるエレベータシステムにおいて、乗場扉、乗りかご扉が閉じようとしている際に、敷居部に異物が残っていることを検出する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、以下では敷居用カメラは扉のドアシューに設けられるものとして説明するが、ドアシューに限定されずに敷居部を好適に撮影することができる場所に設けられていればよい。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0032】
図1は、本発明に係る第一実施形態であるエレベータシステム10を示す図である。図2は、図1におけるA−A線断面図に相当する図である。エレベータシステム10は、乗場11と、乗場壁12と、乗場扉14と、乗りかご16と、乗りかご扉18と、敷居用カメラ24と、制御部26とを含んで構成される。なお、乗りかご12を移動させるための主ロープ8を巻き上げる巻上機(図示せず)と制御部26は機械室に設置されている。もちろん、エレベータシステム10において、巻上機と制御部26は特別に設けられた機械室ではなく、いわゆる機械室レスエレベータシステムのピット部に設けられるものであってもよい。
【0033】
乗場11は、乗客2が乗りかご16の到着を待つための広場である。図1では、乗客2が紐3で繋がれたペット4(例えば、犬)とともに乗りかご16の到着を待っている様子が示されている。
【0034】
乗場壁12は、乗場11と、乗りかご16が昇降するための昇降路7とを区画するための壁である。乗場壁12には、乗りかご16の呼びを登録するための呼びボタンや乗りかご16が現在位置している情報を示すインジケータ等が取り付けられている。
【0035】
乗場扉14は、乗客2が乗りかご16に対して乗り降りするために乗場壁12に設けられた開口13を開閉するための両開き扉である。また、乗場扉14は、先に述べた両開き扉に限定されず、例えば、片開き扉であってもよい。
【0036】
乗場側敷居溝15は、乗場扉14の開閉動作を案内するための溝である。かご側敷居溝19は、乗りかご扉18の開閉動作を案内するための溝である。ここで、乗場側敷居溝15とかご側敷居溝19をあわせた敷居溝の周辺部分を敷居部と呼ぶ。
【0037】
乗りかご16は、乗客2が望む行先階へ移動するために乗客2が乗るものであり、その内部には適当な人数が収容可能な程度の空間が設けられている。また、乗りかご16内の天井には、図示しない照明が取り付けられており、乗りかご16内を照らしている。
【0038】
乗りかご扉18は、乗客2が乗りかご16に対して乗り降りするために、乗りかご16が各乗場11に着床した際に、乗場壁12に設けられた開口13と対向する位置となる乗りかご16の側壁部分に設けられた開口17を開閉するための両開き扉である。また、乗りかご扉18は、上記両開き扉に限定されず、例えば、片開き扉であってもよいが、扉の形式は乗場扉14と乗りかご扉18とで通常は同じものであり、また開閉動作も連動して行われることが通常である。
【0039】
敷居用カメラ24は、乗場側敷居溝15とかご側敷居溝19をあわせた敷居溝の周辺部分である敷居部の様子を撮影する機能を有する。敷居用カメラ24は、敷居部に存在する物を撮影した画像を4800コマに分割、各コマに映っている物を解析することで物の形態(物の形状、物の模様、物の色彩、またはこれらの結合)をデータとして記録することができる。敷居用カメラ24は、敷居部の周辺を広い角度で撮影できるように取り付けられており、例えば、乗場扉14のドアシューあるいは乗りかご扉18のドアシュー18aに取り付けられていてもよい。図3は、敷居用カメラ24を乗りかご扉18のドアシュー18aに取り付けている様子を示す図である。具体的には、図3(a)は、図2のX方向から乗りかご扉18のドアシュー18a周辺を見た拡大図であり、図3(b)は、図3(a)をY方向から見た図である。敷居用カメラ24は、広角レンズを用いたり、レンズ部分の角度を調整することにより、敷居部の周辺を広い角度で撮影するように取付られている。
【0040】
制御部26は、エレベータシステム10の全般の制御に関する制御回路を含んで構成される。ここでは、特に、制御部26は、乗りかご16の昇降制御機能と、乗場扉14および乗りかご扉18の開閉制御機能と、敷居部に存在する物に関する判断機能と、敷居用カメラ24の撮影データの取得機能と、監視センタへの通報機能とについて説明する。図4は、制御部26の各要素を示す図である。制御部26は、かご昇降制御処理部262と、開閉制御処理部264と、撮影データ取得部266と、判断処理部268と、通報処理部269とを含んで構成される。
【0041】
かご昇降制御処理部262は、乗客2等を所望の階床に移動させるために、乗りかご16を昇降路7内で昇降させる制御を行う機能を有する。具体的には、各乗場11において乗客2が呼びボタンを押せば、該当乗場11に向かって乗りかご16を昇降させ、また、その後乗りかご16内に乗り込んだ乗客2が行先設定階を設定することで、行先階まで乗りかご16を昇降させる機能を有する。
【0042】
開閉制御処理部264は、乗客2等によって乗場扉14、乗りかご扉18の開閉操作に応じてそれぞれの扉の開閉制御を行う機能を有する。また、開閉制御処理部264は、乗りかご16が所定の乗場11へ着床したときに乗客2を乗り降りさせるために乗場扉14、乗りかご扉18の開制御を行う機能を有する。さらに、開閉制御処理部264は、乗場扉14、乗りかご扉18を開いた後は、乗客2から乗場扉14、乗りかご扉18に対する閉操作が所定の時間無かった場合に、乗場扉14、乗りかご扉18の閉制御を行う機能も有する。また、開閉制御処理部264は、判断処理部268からの指示に基づいて乗場扉14、乗りかご扉18に対して開制御を行う機能を有する。
【0043】
撮影データ取得部266は、敷居用カメラ24が撮影した敷居部に存在する物の形態(物の形状、物の模様、物の色彩、またはこれらの結合)のデータを取得する機能を有する。
【0044】
判断処理部268は、撮影データ取得部266が取得したデータが予め記録された敷居部のデータ(敷居部に異物のないデータ)を比較し、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、両データが異なる場合に異物が残っていると判断し、開閉制御処理部264に対して乗場扉14、乗りかご扉18の開制御指令を与えるとともに、通報処理部269に対して監視センタへの通報を行わせる通報指令を与える機能を有する。
【0045】
通報処理部269は、判断処理部268から監視センタへの通報指令が与えられた場合に、監視センタに対して敷居部に異物が存在する旨の通報を送信する機能を有する。
【0046】
上記構成のエレベータシステム10の動作について図1〜図5を用いて説明する。図5は、エレベータシステム10において、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、敷居部に異物が残っていることを検出する手順を示すフローチャートである。まず、制御部26は、敷居用カメラ24によって撮影されたデータを取得する(S10)。この工程は、制御部26の撮影データ取得部266の機能によって実行される。
【0047】
次に、撮影データ取得部266が取得したデータが予め記録された敷居部のデータ(敷居部に異物のないデータ)を比較し、敷居部に異物が存在するか否かを判断する(S12)。具体的には、撮影データ取得部266が取得したデータが予め記録された敷居部のデータ(敷居部に異物のないデータ)を比較し、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、両データが異なる場合に異物が残っていると判断し、両データが一致する場合には異物が残っていないと判断する。この工程は、制御部26の判断処理部268の機能によって実行される。S12において、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、撮影データ取得部266が取得したデータが予め記録された敷居部に異物のないデータと一致したときは、敷居部に異物がないと判断して再びS10へと戻る。
【0048】
S12において、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、撮影データ取得部266が取得したデータが予め記録された敷居部に異物のないデータと一致しないときは、敷居部に異物が残っていると判断し、乗場扉14、乗りかご扉18の開制御を行う(S14)。この工程は、制御部26の開閉制御処理部264の機能によって実行される。
【0049】
続いて、S14の後は、遠隔に位置する監視センタに対して、敷居部に異物が残っている旨の通報を行う(S16)。この工程は、制御部26の通報処理部269の機能によって実行される。その後、リターン処理へと進む。このように、エレベータシステム10によれば、敷居用カメラ24が撮影したデータに基づいて、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、敷居部に異物が残っているか否かをより好適に判断することができる。
【0050】
また、エレベータシステム10によれば、敷居用カメラ24が乗りかご18の下部に設けられるドアシュー18aに取り付けられているため、異物がかご側敷居溝19の中に入り込んでいる場合であってもより好適に異物を検出することができる。そして、エレベータシステム10によれば、敷居部周辺を広角で撮影する敷居用カメラ24を有しているため、死角が少なくなるためより好適に異物を検出することができる。
【0051】
さらに、エレベータシステム10によれば、乗場扉14、乗りかご扉18が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であると判断されたときに、乗場扉14、乗りかご扉18を開放状態とし乗りかご16を作動させない状態とすることができる。したがって、より安全にエレベータシステム10を作動させることができる。また、エレベータシステム10によれば、乗場扉14、乗りかご扉18が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であると判断されたときに、監視センタに通報されるため、保守作業員が迅速に対応することができる。
【0052】
次に、本発明に係る第二実施形態であるエレベータシステム101について説明する。図6は、本発明に係る第二実施形態であるエレベータシステム101を示す図である。図7は、図6におけるB−B線断面図に相当する図である。エレベータシステム101は、エレベータシステム10とほぼ同様の構成を有しており、エレベータシステム10の構成に加え、さらに乗場用カメラ20を有する点と、制御部27の機能が異なる点で相違するため、その相違点を中心に説明する。
【0053】
乗場用カメラ20は、乗場11の様子を撮影する機能と、物の動き等を最新の画像解析技術で検出する機能とを有する。乗場用カメラ20は、乗場11に存在する物を撮影した画像を4800コマに分割、各コマに映っている物を解析することで物の形態(物の形状、物の模様、物の色彩、またはこれらの結合)をデータとして記録することができる。乗場用カメラ20は、例えば、乗場11の天井部分に取り付けられて、乗場11において乗りかご16の到着を待つ乗客2等を撮影している。
【0054】
制御部27は、かご昇降制御処理部と、開閉制御処理部と、撮影データ取得部と、判断処理部と、通報処理部とを有する。ここで、制御部27のかご昇降制御処理部と開閉制御処理部と通報処理部は、それぞれ制御部26のかご昇降制御処理部262と開閉制御処理部264と通報処理部269と同一の機能であるため詳細な説明は、省略する。
【0055】
制御部27の撮影データ取得部は、敷居用カメラ24が撮影したデータと乗場用カメラ20が撮影したデータの2つのデータを取得する機能を有する。
【0056】
制御部27の判断処理部は、制御部27の撮影データ取得部が取得した2つのデータ(乗場用カメラ20によって撮影されたデータと敷居用カメラ24によって撮影されたデータの2つ)を比較し、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、両データが一致している場合に異物が残っていると判断し、制御部27の開閉制御処理部に対して乗場扉14、乗りかご扉18の開制御指令を与えるとともに、制御部27の通報処理部に対して監視センタへの通報を行わせる通報指令を与える機能を有する。
【0057】
上記構成のエレベータシステム101の動作について図6〜図8を用いて説明する。図8は、エレベータシステム101において、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、敷居部に異物が残っていることを検出する手順を示すフローチャートである。まず、制御部27は、敷居用カメラ24によって撮影されたデータを取得する(S20)。この工程は、制御部27の撮影データ取得部の機能によって実行される。
【0058】
次に、乗場用カメラ20によって撮影されたデータを取得する(S22)。この工程は、制御部27の撮影データ取得部の機能によって実行される。
【0059】
そして、制御部27の撮影データ取得部が取得した2つのデータを比較し、敷居部に異物が存在するか否かを判断する(S24)。具体的には、制御部27の撮影データ取得部が取得した両データを比較し、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、両データが一致している場合に異物が残っていると判断し、両データが一致しない場合には異物が残っていないと判断する。この工程は、制御部27の判断処理部の機能によって実行される。S24において、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、制御部27の撮影データ取得部が取得した両データが一致しないときは、敷居部に異物がないと判断して再びS20へと戻る。
【0060】
S24において、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、制御部27の撮影データ取得部が取得した両データが一致したときは、敷居部に異物が残っていると判断し、乗場扉14、乗りかご扉18の開制御を行う(S26)。この工程は、制御部27の開閉制御処理部の機能によって実行される。
【0061】
続いて、S26の後は、遠隔に位置する監視センタに対して、敷居部に異物が残っている旨の通報を行う(S28)。この工程は、制御部27の通報処理部の機能によって実行される。その後、リターン処理へと進む。このように、エレベータシステム101によれば、敷居用カメラ24と乗場用カメラ20が撮影したデータに基づいて、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、敷居部に異物が残っているか否かをより好適に判断することができる。例えば、紐3でつながれたペット4を連れた乗客2がエレベータシステム101を利用する場合に、ペット4が乗場11に残ったままで乗客2のみが乗りかご16に乗り込んで紐3が敷居部に跨ったままの状態で乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしているときに、紐3を異物として検出することができるというメリットがある。
【0062】
なお、エレベータシステム101では、乗場用カメラ20と敷居用カメラ24とはそれぞれ別々のカメラであるとして説明したが、敷居用カメラ24が敷居部を撮影するともに乗場11も撮影できるように機能を兼用すると、さらに低コストでエレベータシステムを構築できるというメリットがある。
【0063】
次に、本発明に係る第三実施形態であるエレベータシステム102について説明する。図9は、本発明に係る第三実施形態であるエレベータシステム102を示す図である。図10は、図9におけるC−C線断面図に相当する図である。エレベータシステム102は、エレベータシステム10とほぼ同様の構成を有しており、エレベータシステム10の構成に加え、さらに乗りかご用カメラ22を有する点と、制御部28の機能が異なる点で相違するため、その相違点を中心に説明する。
【0064】
乗りかご用カメラ22は、乗りかご16内の様子を撮影する機能と、物の動き等を最新の画像解析技術で検出する機能とを有する。乗りかご用カメラ22は、乗りかご16に存在する物を撮影した画像を4800コマに分割、各コマに映っている物を解析することで物の形態(物の形状、物の模様、物の色彩、またはこれらの結合)をデータとして記録することができる。乗りかご用カメラ22は、例えば、乗りかご16の天井部分に取り付けられて、乗りかご16内にいる乗客2等を撮影している。
【0065】
制御部28は、かご昇降制御処理部と、開閉制御処理部と、撮影データ取得部と、判断処理部と、通報処理部とを有する。ここで、制御部28のかご昇降制御処理部と開閉制御処理部と通報処理部は、それぞれ制御部26のかご昇降制御処理部262と開閉制御処理部264と通報処理部269と同一の機能であるため詳細な説明は、省略する。
【0066】
制御部28の撮影データ取得部は、敷居用カメラ24が撮影したデータと乗りかご用カメラ22が撮影したデータの2つのデータを取得する機能を有する。
【0067】
制御部28の判断処理部は、制御部28の撮影データ取得部が2つのデータ(取得した乗りかご用カメラ22による撮影データと敷居用カメラ24が撮影したデータの2つ)を比較し、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、両データが一致している場合に異物が残っていると判断し、制御部28の開閉制御処理部に対して乗場扉14、乗りかご扉18の開制御指令を与えるとともに、制御部28の通報処理部に対して監視センタへの通報を行わせる通報指令を与える機能を有する。
【0068】
上記構成のエレベータシステム102の動作について図9〜図11を用いて説明する。図9は、エレベータシステム102において、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、敷居部に異物が残っていることを検出する手順を示すフローチャートである。まず、制御部28は、敷居用カメラ24によって撮影されたデータを取得する(S30)。この工程は、制御部28の撮影データ取得部の機能によって実行される。
【0069】
次に、乗りかご用カメラ22によって撮影されたデータを取得する(S32)。この工程は、制御部28の撮影データ取得部の機能によって実行される。
【0070】
そして、制御部28の撮影データ取得部が取得した2つのデータを比較し、敷居部に異物が存在するか否かを判断する(S34)。具体的には、制御部28の撮影データ取得部が取得した両データを比較し、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、両データが一致している場合に異物が残っていると判断し、両データが一致しない場合には異物が残っていないと判断する。この工程は、制御部28の判断処理部の機能によって実行される。S34において、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、制御部28の撮影データ取得部が取得した両データが一致しないときは、敷居部に異物がないと判断して再びS30へと戻る。
【0071】
S34において、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、制御部28の撮影データ取得部が取得した両データが一致したときは、敷居部に異物が残っていると判断し、乗場扉14、乗りかご扉18の開制御を行う(S36)。この工程は、制御部28の開閉制御処理部の機能によって実行される。
【0072】
続いて、S36の後は、遠隔に位置する監視センタに対して、敷居部に異物が残っている旨の通報を行う(S38)。この工程は、制御部28の通報処理部の機能によって実行される。その後、リターン処理へと進む。このように、エレベータシステム102によれば、敷居用カメラ24と乗りかご用カメラ22が撮影したデータに基づいて、乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしている際に、敷居部に異物が残っているか否かをより好適に判断することができる。例えば、紐3でつながれたペット4を連れた乗客2がエレベータシステム101を利用する場合に、ペット4が乗りかご16内に残ったままで乗客2のみが乗りかご16から乗場11へ降りて紐3が敷居溝部に跨ったままの状態で乗場扉14、乗りかご扉18が閉じようとしているときに、紐3を異物として検出することができるというメリットがある。
【0073】
なお、エレベータシステム102では、乗りかご用カメラ22と敷居用カメラ24とはそれぞれ別々のカメラであるとして説明したが、敷居用カメラ24が敷居部を撮影するともに乗りかご16内も撮影できるように機能を兼用すると、さらに低コストでエレベータシステムを構築できるというメリットがある。
【0074】
上記第一実施形態から第三実施形態においては、それぞれ敷居用カメラ24のみ有する形態、敷居用カメラ24と乗場用カメラ20とを有する形態、敷居用カメラ24と乗りかご用カメラ22とを有する形態について説明したが、敷居用カメラ24と乗場用カメラ20と乗りかご用カメラ22の3つのカメラを用いて敷居部の異物を検出する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
2 乗客、3 紐、4 ペット、7 昇降路、8 主ロープ、10,101,102 エレベータシステム、11 乗場、12 乗場壁、13,17 開口、14 乗場扉、15 乗場側敷居溝、16 乗りかご、18 乗りかご扉、18a ドアシュー、19 かご側敷居溝、20 乗場用カメラ、22 乗りかご用カメラ、24 敷居用カメラ、26,27,28 制御部、262 昇降制御処理部、264 開閉制御処理部、266 撮影データ取得部、268 判断処理部、269 通報処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場と乗りかごとの間の境界部分である敷居部に存在する物を撮影する敷居用カメラと、
敷居用カメラの撮影情報に基づき、扉が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であるか否かを判断する判断部と、
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
乗場に存在する物を撮影する乗場用カメラを備え、
判断部は、
乗場用カメラが撮影する物の形態と、敷居用カメラが撮影する物の形態とが一致したときに、物が敷居部に残ったままの状態であると判断することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
乗りかご内に存在する物を撮影する乗りかご用カメラを備え、
判断部は、
乗りかご用カメラが撮影する物の形態と、敷居用カメラが撮影する物の形態とが一致したときに、物が敷居部に残ったままの状態であると判断することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
敷居用カメラは、扉の下部に設けられるドアシューに取り付けられることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベータシステムにおいて、
敷居用カメラは、敷居部周辺を広角で撮影することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
扉が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であると判断されたときに、扉を開放状態とし乗りかごを作動させない状態とする制御部を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のエレベータシステムにおいて、
制御部は、
扉が閉まる際に物が敷居部に残ったままの状態であると判断されたときに、監視センタに通報することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項8】
請求項2に記載のエレベータシステムにおいて、
敷居用カメラは、
敷居部に存在する物を撮影する敷居用カメラであるとともに、乗場に存在する物を撮影する乗場用カメラとしても機能することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項9】
請求項3に記載のエレベータシステムにおいて、
敷居用カメラは、
敷居部に存在する物を撮影する敷居用カメラであるとともに、乗りかご内に存在する物を撮影する乗りかご用カメラとしても機能することを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−98787(P2011−98787A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252912(P2009−252912)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】