説明

エンジンの上部構造

【課題】 マフラーの組立を効率良く行え、ブリーザの配置を工夫して、エンジン本体が傾斜してもエア抜きが確実に行えるエンジンを提供しようとする。
【解決手段】 エンジン1上部にマフラー8やエアクリーナ20を取り付ける構成において、マフラー取付ステー44を正面視クランク状に構成して、シリンダヘッド6上面に取り付けた。また、前記シリンダヘッド6上方を覆うボンネット7上にブリーザ42を配置し、該ブリーザをシリンダ中心を挟んで燃料噴射ノズル30に対向して配置した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空冷ディーゼルエンジンの上部に配置するマフラーやボンネットやエアクリーナの構成に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のディーゼルエンジンにおけるマフラーをエンジン上部に取り付ける場合、該マフラーの支持は排気マニホールドと該マフラーの下面とシリンダブロックの間を連結する取付ステーを用いて固定する構造を採っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、マフラーを固定するために取付ステーを下方から支持して取り付けると、組立時には下方よりボルト等を締め付けなければならず、取付姿勢が悪くなり、組立性が悪くなっていた。また、メンテナンスもやりにくい構成となっていた。
【0004】また、クランクケース内には潤滑油を充填してギヤ等を潤滑するのであるが、クランクケース内はピストンの上下の移動によって圧力が大きく変化するために、内部と外部との間で空気の流通ができるようにブリーザを設けるが、該ブリーザはエンジン上部に位置するシリンダヘッドに設けることが多い。しかし、シリンダヘッドに取り付けるには吸気マニホールドや排気マニホールド等をさけた位置とするために上部中央に取付ることが難しく、エンジンが傾斜したときに油漏れが生じることがあった。
【0005】そこで、本発明は、エンジンの上部においてマフラーやボンネット等を組立易く効率良くコンパクトに配置しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、以上のような課題を解決すべく、次のような手段を採用するものである。まず、請求項1においては、エンジン上部にマフラーやエアクリーナを取り付ける構成において、マフラー取付ステーを正面視クランク状に構成して、シリンダヘッド上面に取り付けたものである。
【0007】また、請求項2においては、前記マフラー本体を覆うマフラーカバーの上部を隙間形成部材を介して前記マフラー取付ステーに、下部をシリンダブロックに固定し、マフラー本体以外で支持したものである。
【0008】また、請求項3においては、前記シリンダヘッド上方を覆うボンネット上にブリーザを配置し、該ブリーザをシリンダ中心を挟んで燃料噴射ノズルに対向して配置したものである。
【0009】また、請求項4においては、前記シリンダヘッド上方を覆うボンネットであって、燃料噴射ノズル上部や該燃料噴射ノズルに連通する高圧管や弁腕等を覆ったものである。
【0010】また、請求項5においては、前記シリンダヘッド側面にエアヒータを介してエアクリーナを取り付けたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について、添付の図面に従って説明する。図1は本発明に係る空冷ディーゼルエンジンの正面断面図、図2は図1におけるX−X矢視断面図、図3は図1におけるY−Y矢視断面図、図4はエンジンの上部平面図一部断面図、図5はエンジンの下部平面図一部断面図、図6はボンネット部の平面断面図、図7はエンジン上部の側面断面図、図8R>8はシリンダヘッドにエアヒータを取り付けた側面図、図9は同じく後面図である。
【0012】まず図1乃至図5より、本発明に係るエンジンの全体構成から説明する。エンジン1は本体の上部をシリンダブロック2、下部をクランクケース5とし、シリンダブロック2は中央に上下方向にシリンダ2aを形成してピストン4を収納し、クランクケース5にはクランク軸3が前後方向に軸支され、該ピストン4とクランク軸3の間はコンロッド17により連結している。シリンダブロック2の上部がシリンダヘッド6により覆われ、該シリンダヘッド6の上部はボンネット7により覆われ弁腕室65を構成し、該ボンネット7の一側(左側)にマフラー8が配置され、他側(右側)に燃料タンク9が配置されている。
【0013】前記シリンダブロック2下部のクランクケース5内の右側にはガバナ11が配置され、その上部に燃料噴射ポンプ12が配置されている。該燃料噴射ポンプ12はクランク軸3上に設けた歯車50を介してカム軸13上に設けたカムギヤ51に動力が伝えられ、該カム軸13の前後中央上に設けたポンプ駆動カム14が前記燃料噴射ポンプ12のプランジャを押し引きして燃料タンク9からの燃料を吸入して、高圧管19を介して燃料噴射ノズル30に所定のタイミングで所定量の燃料を供給するようにしている。該燃料噴射ポンプ12の燃料供給量はコントロールレバーを回動することによってプランジャのストロークを変更して燃料噴射量を調節できるようにしている。該コントロールレバーはガバナ11と連動連結されており、該ガバナ11は前記カムギヤ51に噛合した潤滑油ポンプ駆動ギヤ52を介してガバナギヤ53に動力が伝えられて作動するようにしている。
【0014】また、前記カム軸13のポンプ駆動カム14の両側には吸気カム21と排気カム22が設けられ、該吸気カム21と排気カム22に吸気プッシュロッド23と排気プッシュロッド24の下端がそれぞれ当接されている。該吸気プッシュロッド23と排気プッシュロッド24を収納する吸気プッシュロッド室60と排気プッシュロッド室61とを略垂直方向にシリンダブロック2及びシリンダヘッド6及びボンネット7に形成して、更に、吸気プッシュロッド室60と排気プッシュロッド室61の間に燃料噴射ポンプ室62を形成している。該吸気プッシュロッド23と排気プッシュロッド24と燃料噴射ポンプ12は略平行に配設されて、鉛直方向に延出している。
【0015】そして、図3に示すように、前記シリンダブロック2にガイド支持される吸気プッシュロッド23と排気プッシュロッド24の外両側には、潤滑油連通路63・64が設けられ、エンジン1が傾斜しても弁腕室65等に潤滑油が溜まることがなくクランクケース5内に抜けるようにしている。また、前記シリンダヘッド6の吸気プッシュロッド室60と排気プッシュロッド室61は図3に示すように、上下中途部に括れ部66・67を構成して鋳造時の型抜きが容易に行えるようにして製造を簡単にしている。
【0016】上述のように、吸気プッシュロッド23と排気プッシュロッド24の間に燃料噴射ポンプ12が並べて配置され、該吸気プッシュロッド23と排気プッシュロッド24と燃料噴射ポンプ12は略平行に上下方向に配置することで、コンパクトな配置となり、上方より組立られ、組立性も向上した構造としている。
【0017】前記吸気プッシュロッド23と排気プッシュロッド24の上端は吸気弁腕25・排気弁腕26の一側下端にそれぞれ当接され、吸気弁腕25・排気弁腕26の他側の下端にそれぞれ吸気弁27と排気弁28の上端が当接されている。該吸気弁腕25・排気弁腕26の中途部がシリンダヘッド6上に固設した支持部材31・31に支持されている。該支持部材31・31は燃料噴射ノズル30の前後両側方に配置されて、外側から吸気弁腕25及び排気弁腕26をそれぞれ片持ち支持するようにしている。
【0018】このようにして、前記吸気弁腕25、排気弁腕26、及び、吸気プッシュロッド23と排気プッシュロッド24と吸気弁27と排気弁28の上部、及び、燃料噴射ノズル30の上部、及び、該燃料噴射ノズル30に連通される高圧管19等がシリンダヘッド6上部に固定されるボンネット7により覆われる構成として、騒音が漏れ難くなるようにし、配管や突出物をボンネット7により隠すことで外観を向上している。
【0019】そして、該ボンネット7の上部の左側にはブリーザ42が設けられ、該ブリーザ42は図1、図6に示すように、エンジン1本体の中心、所謂、シリンダ2aの中心O1を挟んで燃料噴射ポンプ30に対向して配置して、前後の弁腕室の丁度中央となる位置に配置されている。つまり、ブリーザ42はクランクケース5から抜けるブローバイガスや上部まで流れた潤滑油等が、ボンネット7やシリンダヘッド6内における内部圧力が上昇したときに、その圧が抜けるようにしており、エンジン1が前後左右に傾斜した場合であっても油が漏れないようにしている。特に、本発明はエンジン本体の最上部位置に設けるボンネット7の前後左右中心の近傍にブリーザ42を配置しておくことによって、エンジン1が多少傾斜してもブリーザ孔が塞がれたり、該ブリーザ42から油が漏れないようにしているのである。
【0020】図2、図3、図7に示すように、前記吸気弁27と排気弁28は前記ピストン4の上方に配置され、弁頭27a(28a)がシリンダヘッド6下面に形成したバルブシートに着座させ、シリンダブロック2に形成したシリンダ2aとシリンダヘッド6に形成した吸気ポート6a(排気ポート6b)の間に配置している。該吸気ポート6aはエアクリーナー20と連通され、排気ポート6bは排気マニホールド72を介してマフラー8と連通されている。弁棒27b(28b)はシリンダブロック6を上方に貫通してボンネット7内突出され、該ボンネット7内においてバネ32を外嵌して吸気弁27(排気弁28)を上方に摺動するように付勢して吸気弁27(排気弁28)を閉じるようにしている。
【0021】また、図1、図4、図6に示すように、前記吸気弁27と排気弁28の間でボンネット7により隔てられてシリンダ2aの中心上方位置に燃料噴射ノズル30の先端(吐出部)が挿入されて、シリンダ2a内に燃料を噴射できるようにしており、該燃料噴射ノズル30はシリンダヘッド6に鉛直より前記燃料噴射ポンプ12側に傾斜して配置されている。該燃料噴射ノズル30はシリンダヘッド6に固定した支持部材39により支持固定され、該燃料噴射ポンプ12と燃料噴射ノズル30は前後の中心線上に配設されて、該燃料噴射ノズル30の燃料吸入口30aはノズルボディの燃料噴射ポンプ12側の側面より突出して、燃料噴射ポンプ12と燃料噴射ノズル30の間の距離ができるだけ短くなるように配設している。
【0022】つまり、燃料噴射ポンプ12と燃料噴射ノズル30ができるだけ接近して配置されることになって、コンパクトな配置とすることがでるとともに、燃料噴射ポンプ12と燃料噴射ノズル30を連通する高圧管19を短く構成することができ、燃料の供給経路が短くなって、噴射遅れ等がなくなり、損失も小さく燃料噴射ポンプ12から圧送される燃料圧を高く維持しながら燃料を燃料噴射ノズル30から噴射させることができるのである。
【0023】また、前記吸気弁27と排気弁28や吸気弁腕25・排気弁腕26等を覆うボンネット7は平面視において凹状に構成され、中央の凹部7aに燃料噴射ノズル30を配置し、平面視において、該ボンネット7と燃料タンク9で囲まれる閉空間内に、正面視において、ボンネット7とシリンダヘッド6と燃料タンク9で囲まれる空間に燃料噴射ポンプ12と高圧管19と燃料噴射ノズル30配置して、ボンネット7で覆っているのである。
【0024】そして、図7、図8、図9に示すように、シリンダヘッド6の前記吸気ポート6aにはエアヒータ43を介してエアクリーナ20が取り付けられている。つまり、吸気ポート6aとエアクリーナ20の間にエアヒータ43を介装している。該エアヒータ43はケース43a内にニクロム線等の発熱体43bを収納し、該発熱体43bの両端をケース43aより突出して端子43c・43cとし、該端子43c・43cをバッテリー等の電源と接続するようにして、冬期等寒い時期にはエアヒータ43に電気を供給して吸入空気を温めて、着火し易くする。
【0025】前記ケース43aの周囲の四隅にはボルト孔43d・43d・・・を設けて、図示しないボルトをエアクリーナ20とエアヒータ43とのそれぞれのフランジ部を貫通して吸気ポート6aに螺装して、三者を一体的に固定するようにして、組立性の向上を図っている。従来、吸気ポート6aとエアクリーナ20の取付部の大きさが異なっていたために、間座を設ける必要があったが、エアヒータ43を間座として兼用することができ、その他の部材と干渉することなくエアクリーナ20を取り付けることができる。また、エアヒータ43をなくしてエアクリーナ20を直接吸気ポート6aに取り付けることも可能である。
【0026】また、前記排気ポート6bには排気マニホールド72を介してマフラー8を取り付けている。該マフラー8は図1に示すように、正面視クランク状に折り曲げて構成した取付プレート44に支持固定されており、該取付プレート44の外側に位置する「L」部分がマフラー8の上面と側面が当接して安定して支持できるようにしている。そして、他端の水平部分がシリンダヘッド6の上面固定される。
【0027】そして、該マフラー8は更にマフラーカバー45に覆われて、マフラー8が直接露出しないようにして、該マフラー8とマフラーカバー45との間に断熱層を形成することによって、マフラーカバー45の表面温度は高くならず、誤ってマフラーカバー45に触れても火傷するようなことがないようにしている。
【0028】該マフラーカバー45の取付は、下部はシリンダブロック2にボルト等によって固定し、上部は図1R>1に示すように、シリンダヘッド6上に前記取付プレート44、その上に間隙形成部材となるカラー46、その上にマフラーカバー45の上部一端を位置させて、これら取付プレート44、カラー46、マフラーカバー45をボルト47・47によって一度にシリンダヘッド6上に固定できるようにしている。こうして、マフラーカバー45はマフラー8から離れた位置で固定できるようになり、断熱性を維持できる構成とし、また、マフラーカバー45とマフラー8を取付ステー44を介して一度に組み立てることができて組立性を向上できる構成としている。
【0029】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成したので次のような効果を奏する。まず、請求項1の如く、エンジン上部にマフラーやエアクリーナを取り付ける構成において、マフラー取付ステーを正面視クランク状に構成して、シリンダヘッド上面に取り付けたので、マフラー取付ステーの剛性をアップして、強固にマフラーを取り付けることが可能となり、上方より固定することが可能となって容易に取り付けられるようになり、組立性を向上できるようになった。
【0030】そして、請求項2の如く、前記マフラー本体を覆うマフラーカバーの上部を隙間形成部材を介して前記マフラー取付ステーに、下部をシリンダブロックに固定し、マフラー本体以外で支持したので、マフラーとマフラーカバーは直接連結されず、その間に断熱層を形成することができて、マフラーカバーの表面温度を低下させることができ、誤って触れても火傷をすることがない。
【0031】また、請求項3の如く、前記シリンダヘッド上方を覆うボンネット上にブリーザを配置し、該ブリーザをシリンダ中心を挟んで燃料噴射ノズルに対向して配置したので、シリンダ中心近傍にブリーザが位置することになり、エンジン本体が多少傾斜してもブリーザとボンネット内との間で流通可能であり、ブリーザから油が漏れることが殆どない。
【0032】また、請求項4の如く、前記シリンダヘッド上方を覆うボンネットであって、燃料噴射ノズル上部や該燃料噴射ノズルに連通する高圧管や弁腕等を覆ったので、騒音の漏れが少なくなり、騒音を低下することができる。また、燃料噴射ノズルやその配管等を隠すことができて、外観、デザイン性を向上することができる。
【0033】また、請求項5の如く、前記シリンダヘッド側面にエアヒータを介してエアクリーナを取り付けたので、エアヒータとエアクリーナを一度にボルト等で取り付けることができ、組立性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る空冷ディーゼルエンジンの正面断面図である。
【図2】図1におけるX−X矢視断面図である。
【図3】図1におけるY−Y矢視断面図である。
【図4】エンジンの上部平面図一部断面図である。
【図5】エンジンの下部平面図一部断面図である。
【図6】ボンネット部の平面断面図である。
【図7】エンジン上部の側面断面図である。
【図8】シリンダヘッドにエアヒータを取り付けた側面図である。
【図9】同じく後面図である。
【符号の説明】
1 エンジン
6 シリンダヘッド
7 ボンネット
8 マフラー
12 燃料噴射ポンプ
19 高圧管
20 エアクリーナ
30 燃料噴射ノズル
42 ブリーザ
44 取付ステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジン上部にマフラーやエアクリーナを取り付ける構成において、マフラー取付ステーを正面視クランク状に構成して、シリンダヘッド上面に取り付けたことを特徴とするエンジンの上部構造。
【請求項2】 前記マフラー本体を覆うマフラーカバーの上部を隙間形成部材を介して前記マフラー取付ステーに、下部をシリンダブロックに固定し、マフラー本体以外で支持したことを特徴とする請求項1記載のエンジンの上部構造。
【請求項3】 前記シリンダヘッド上方を覆うボンネット上にブリーザを配置し、該ブリーザをシリンダ中心を挟んで燃料噴射ノズルに対向して配置したことを特徴とする請求項1記載のエンジンの上部構造。
【請求項4】 前記シリンダヘッド上方を覆うボンネットであって、燃料噴射ノズル上部や該燃料噴射ノズルに連通する高圧管や弁腕等を覆ったことを特徴とする請求項1記載のエンジンの上部構造。
【請求項5】 前記シリンダヘッド側面にエアヒータを介してエアクリーナを取り付けたことを特徴とする請求項1記載のエンジンの上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2003−49626(P2003−49626A)
【公開日】平成15年2月21日(2003.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−236911(P2001−236911)
【出願日】平成13年8月3日(2001.8.3)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】