説明

エンジンの伝動ケースの密封装置

【課題】カラーの交換が不要になるエンジンの伝動ケースの密封装置を提供すること。
【解決手段】伝動ケース1内に回転伝動軸2を挿通し、伝動ケース1内で回転伝動軸2の外周に内部伝動輪4を嵌め、伝動ケース1のケース壁3に伝動軸挿通孔5をあけ、伝動軸挿通孔5を介して伝動ケース1外に回転伝動軸2に突出させ、伝動ケース1外で回転伝動軸2の突出部6の外周に外部伝動輪7を嵌め、伝動軸挿通孔5内で回転伝動軸2の外周にカラー8を嵌め、伝動軸挿通孔5の内周にオイルシール9を嵌め、オイルシール9をカラー8の外周面8aに接当させた、エンジンの伝動ケースの密封装置において、カラー8の外周面8aに窒化処理層を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの伝動ケースの密封装置に関し、詳しくは、カラーの交換が不要になるエンジンの伝動ケースの密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの伝動ケースの密封装置として、伝動ケース内に回転伝動軸を挿通し、伝動ケース内で回転伝動軸の外周に内部伝動輪を嵌め、伝動ケースのケース壁に伝動軸挿通孔をあけ、伝動軸挿通孔を介して伝動ケース外に回転伝動軸に突出させ、伝動ケース外で回転伝動軸の突出部の外周に外部伝動輪を嵌め、伝動軸挿通孔内で回転伝動軸の外周にカラーを嵌め、伝動軸挿通孔の内周にオイルシールを嵌め、オイルシールをカラーの外周面に接当させたものがある(例えば、特許文献1参照)。
この種の密封装置によれば、伝動ケース内のオイルが伝動軸挿通孔から伝動ケース外に漏れ出すのを防止することができる利点がある。
しかし、従来、この種の密封装置では、通常、カラーの外周面に硬質クロムメッキ処理層を形成しているため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−22552号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 カラーの交換が必要になる。
カラーの外周面に硬質クロムメッキ処理層を形成しているため、カラーの耐久性が十分ではなく、エンジンの耐用年数を越える耐久性を得ることができ、カラーの交換が必要になる。
【0005】
本発明の課題は、カラーの交換が不要になるエンジンの伝動ケースの密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1〜図6の各(A)〜(C)に例示するように、伝動ケース(1)内に回転伝動軸(2)を挿通し、伝動ケース(1)内で回転伝動軸(2)の外周に内部伝動輪(4)を嵌め、伝動ケース(1)のケース壁(3)に伝動軸挿通孔(5)をあけ、伝動軸挿通孔(5)を介して伝動ケース(1)外に回転伝動軸(2)に突出させ、伝動ケース(1)外で回転伝動軸(2)の突出部(6)の外周に外部伝動輪(7)を嵌め、伝動軸挿通孔(5)内で回転伝動軸(2)の外周にカラー(8)を嵌め、伝動軸挿通孔(5)の内周にオイルシール(9)を嵌め、オイルシール(9)をカラー(8)の外周面(8a)に接当させた、エンジンの伝動ケースの密封装置において、
カラー(8)の外周面(8a)に窒化処理層を形成した、ことを特徴とするエンジンの伝動ケースの密封装置。
【発明の効果】
【0007】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 カラーの交換が不要になる。
カラー(8)の外周面(8a)に窒化処理層を形成したので、カラー(8)の耐摩耗性が優れ、エンジンの耐用年数を越える耐久性を得ることができ、カラー(8)の交換が不要になる。
【0008】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 カラーの潤滑性が高い。
窒化処理層の最表面に浸硫処理層を設けたので、カラー(8)の潤滑性が高い。
【0009】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 カラーからのオイル漏れを防止することができる。
図1〜図6の各(A)(B)に例示するように、回転伝動軸(2)の軸長方向を前後方向として、カラー(8)を前後対称形状としたので、回転伝動軸(2)にカラー(8)を両端部のどちらから嵌め込んでも、カラー(8)の組み間違いが起こらず、これに起因するカラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
【0010】
《効果》 カラーの組み付け作業が簡単になる。
図1〜図6の各(A)(B)に例示するように、回転伝動軸(2)の軸長方向を前後方向として、カラー(8)を前後対称形状としたので、回転伝動軸(2)にカラー(8)を両端部のどちらから嵌め込んでも、カラー(8)の組み間違いが起こらず、カラー(8)の組み付け作業が簡単になる。
【0011】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 カラーからのオイル漏れを防止することができる。
図1(A)〜(D)に例示するように、回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、カラー(8)と内部伝動輪(4)との間にガスケット(12)を挟み、このガスケット(12)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)の端面(13)とカラー(8)との間に挟み付けたので、封止面積が小さいキー溝開口(14)よりも径方向外側の部分をガスケット(12)で強力に封止することができ、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しにくく、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
【0012】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 カラーからのオイル漏れを防止することができる。
図2(A)〜(D)に例示するように、回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、カラー(8)の端面(15)の外周に沿ってOリング嵌合部(16)を設け、このOリング嵌合部(16)にOリング(17)を嵌合させ、このOリング(17)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)の端面(13)とカラー(8)との間に挟み付けたので、封止面積が小さいキー溝開口(14)よりも径方向外側の部分をOリング(17)で強力に封止することができ、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しにくく、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
【0013】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 カラーからのオイル漏れを防止することができる。
図3(A)〜(C)に例示するように、回転伝動軸(2)のカラー嵌合部分(18)の外周面(18a)に周方向に沿うOリング嵌合溝(19)を設け、このOリング嵌合溝(19)にOリング(20)を嵌合させ、このOリング(20)をカラー(8)の内周面(8b)に圧接させたので、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しても、Oリング(20)で伝動ケース(1)の外側への流出を止めることができ、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
【0014】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 カラーからのオイル漏れを防止することができる。
図4(A)〜(D)に例示するように、回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、内部伝動輪(4)の端面(13)に周方向に沿ってOリング嵌合溝(21)を設け、このOリング嵌合溝(21)にOリング(22)を嵌合させ、このOリング(22)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)とカラー(8)の端面(15)との間に挟み付けたので、封止面積が小さいキー溝開口(14)よりも径方向外側の部分をOリング(22)で強力に封止することができ、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しにくく、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
【0015】
(請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 カラーからのオイル漏れを防止することができる。
図5(A)〜(D)に例示するように、回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、カラー(8)の端面(15)に周方向に沿ってOリング嵌合溝(23)を設け、このOリング嵌合溝(23)にOリング(24)を嵌合させ、このOリング(24)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)の端面(13)とカラー(8)との間に挟み付けたので、封止面積が小さいキー溝開口(14)よりも径方向外側の部分をOリング(24)で強力に封止することができ、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しにくく、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
【0016】
(請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 カラーからのオイル漏れを防止することができる。
図6(A)〜(C)に例示するように、カラー(8)の内周面(8b)に周方向に沿うOリング嵌合溝(41)を設け、このOリング嵌合溝(41)にOリング(42)を嵌合させ、このOリング(42)を回転伝動軸(2)のカラー嵌合部分(18)の外周面(18a)に圧接させたので、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しても、Oリング(42)で伝動ケース(1)の外側への流出を止めることができ、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンの伝動ケースの密封装置を説明する図で、図1(A)は縦断側面図、図1(B)は図1(A)のB矢視部分の拡大図、図1(C)は図1(A)のC矢視部分の拡大図、図1(D)は図1(A)のD−D線断面図、図1(E)は防塵カバーの後面図、図1(F)は図1(E)のF−F線断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るエンジンの伝動ケースの密封装置を説明する図で、図2(A)は縦断側面図、図2(B)は図2(A)のB矢視部分の拡大図、図2(C)は図2(A)のC矢視部分の拡大図、図2(D)は図2(A)のD−D線断面図、図2(E)は防塵カバーの後面図、図2(F)は図2(E)のF−F線断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るエンジンの伝動ケースの密封装置を説明する図で、図3(A)は縦断側面図、図3(B)は図3(A)のB矢視部分の拡大図、図3(C)は図3(A)のC矢視部分の拡大図、図3(D)は図3(A)のD−D線断面図、図3(E)は防塵カバーの後面図、図3(F)は図3(E)のF−F線断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係るエンジンの伝動ケースの密封装置を説明する図で、図4(A)は縦断側面図、図4(B)は図4(A)のB矢視部分の拡大図、図4(C)は図4(A)のC矢視部分の拡大図、図4(D)は図4(A)のD−D線断面図、図4(E)は防塵カバーの後面図、図4(F)は図4(E)のF−F線断面図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係るエンジンの伝動ケースの密封装置を説明する図で、図5(A)は縦断側面図、図5(B)は図5(A)のB矢視部分の拡大図、図5(C)は図5(A)のC矢視部分の拡大図、図5(D)は図5(A)のD−D線断面図、図5(E)は防塵カバーの後面図、図5(F)は図5(E)のF−F線断面図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係るエンジンの伝動ケースの密封装置を説明する図で、図6(A)は縦断側面図、図6(B)は図6(A)のB矢視部分の拡大図、図6(C)は図6(A)のC矢視部分の拡大図、図6(D)は図6(A)のD−D線断面図、図6(E)は防塵カバーの後面図、図6(F)は図6(E)のF−F線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図6は本発明の第1〜第6実施形態に係るエンジンの伝動ケースの密封装置を説明する図であり、この実施形態では、ディーゼルエンジンの調時伝動ギヤケースの密封装置について説明する。
【0019】
図1に示す第1実施形態の構成は、次の通りである。
図1の(A)〜(C)に示すように、伝動ケース(1)内に回転伝動軸(2)を挿通し、伝動ケース(1)内で回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)を固定し、伝動ケース(1)のケース壁(3)に伝動軸挿通孔(5)をあけ、伝動軸挿通孔(5)を介して伝動ケース(1)外に回転伝動軸(2)に突出させ、伝動ケース(1)外で回転伝動軸(2)の突出部(6)に外部伝動輪(7)を嵌め、伝動軸挿通孔(5)内で回転伝動軸(2)にカラー(8)を嵌め、伝動軸挿通孔(5)内にオイルシール(9)を嵌め、オイルシール(9)をカラー(8)の外周面(8a)に接当させている。
カラー(8)の外周面(8a)に窒化処理層を形成している。このため、カラー(8)の耐摩耗性が優れ、エンジンの耐用年数を越える耐久性を得ることができ、カラー(8)の交換が不要になる。
窒化処理層の最表面に浸硫処理層を設けている。このため、カラー(8)の潤滑性が高い。
【0020】
伝動ケース(1)は調時伝動ギヤケース(33)で、調時伝動ギヤケース(33)内には調時伝動ギヤトレインが収容されている。
回転伝動軸(2)はクランク軸(34)である。
内部伝動輪(4)はクランクギヤ(35)であり、調時伝動ギヤトレインの構成要素の1つである。
外部伝動輪(7)はプーリ(36)であり、伝動ベルトを介してエンジン冷却ファンや冷却水ポンプに動力を伝達する。プーリ(36)はキー(37)とキー溝(38)で回転伝動軸(2)に廻り止めされている。
回転伝動軸(2)の受座(39)に内部伝動輪(4)の後側の端面を接当させ、内部伝動輪(4)の前側にカラー(8)を配置し、カラー(8)の前側に外部伝動輪(7)を配置し、外部伝動輪(7)を回転伝動軸(2)に取り付けた締結具(40)の締結力で後向きに圧をかけ、回転伝動軸(2)の受座(39)と外部伝動輪(7)との間に、カラー(8)や内部伝動輪(4)等を挟み付けている。締結具(40)は締結ナットである。
【0021】
カラー(8)は円筒形鋼材で構成されている。
窒化処理層は、円筒形鋼材の外周面に形成されるとともに、内周面にも形成されている。
円筒形鋼材の表面に窒化処理層を形成するには、次のようにする。
アルミニウム、クロム、モリブデン等の窒化物形成元素を含む円筒形鋼材を、アンモニアまたは窒素を含んだ雰囲気中に暴露し、オーステナイト化温度以下の温度域で過熱することにより、円筒形鋼材の表面近傍(1mm以下)に窒素を浸透させて硬化させる。カラー(8)の表面硬度は、ビッカース硬さで900HV以上である。
浸硫処理層は、ガス浸硫窒化等により、窒化化合物層の上に形成される数ミクロンの硫化物層である。
【0022】
図1(A)(B)に示すように、回転伝動軸(2)の軸長方向を前後方向として、カラー(8)を前後対称形状としている。すなわち、端部の面取りやアール等によるカラー(8)の形状が前後対称になるようにしている。このため、回転伝動軸(2)にカラー(8)を両端部のどちらから嵌め込んでも、カラー(8)の組み間違いが起こらず、これに起因するカラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。また、カラー(8)の嵌め込み作業が簡単になる。
【0023】
図1(A)〜(D)に示すように、回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、次のようにしている。
カラー(8)と内部伝動輪(4)との間にガスケット(12)を挟み、このガスケット(12)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)の端面(13)とカラー(8)の端面(15)との間に挟み付けている。
このため、封止面積が小さいキー溝開口(14)よりも径方向外側の部分をガスケット(12)で強力に封止することができ、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しにくく、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
【0024】
図1(A)(B)に示すように、回転伝動軸(2)の軸長方向を前後方向、回転伝動軸(2)の突出方向を前として、外部伝動輪(7)とカラー(8)との間に環状の防塵カバー(25)を挟み付け、この防塵カバー(25)でオイルシール(9)をその前側から覆っている。
このため、伝動ケース(1)外の塵埃がオイルシール(9)に接近しにくく、塵埃の噛み込みによるオイルシール(9)の磨耗を抑制することができる。
【0025】
図1(B)に示すように、伝動ケース(1)のケース壁(3)から前側に伝動軸挿通孔(5)のボス(26)を突出させ、このボス(26)の内周にオイルシール(9)を嵌め、防塵カバー(25)の外周縁部(27)をボス(26)の外周面(28)に沿って後向きに導出している。
このため、伝動ケース(1)外の塵埃が防塵カバー(25)とボス(26)の間に進入しにくく、塵埃によるオイルシール(9)の磨耗を抑制することができる。
【0026】
図1(B)(E)(F)に示すように、防塵カバー(25)の後面(29)に突部(30)を設け、防塵カバー(25)の回転により、オイルシール(9)の前方で突部(30)による風が起こるようにしている。突部(30)に代えて、防塵カバー(25)の後面(29)に凹部を設け、防塵カバー(25)の回転により、オイルシール(9)の前方で凹部による風が起こるようにしてもよい。
このため、風によってオイルシール(9)への塵埃の進入が妨げられ、塵埃の噛み込みによるオイルシール(9)の磨耗を抑制することができる。
また、風によるオイルシール(9)付近の空気の流動でオイルシール(9)が冷却される効果もある。
突部(30)は防塵カバー(25)の径方向に伸びる突条である。凹部も防塵カバー(25)の径方向に伸びる凹条として形成する。
【0027】
図2に示す第2実施形態は、第1実施形態のガスケット(12)に代えて、Oリング(17)を用いており、次の点が第1実施形態と異なる。
図2(A)〜(D)に例示するように、回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、カラー(8)の端面(15)の外周に沿ってOリング嵌合部(16)を設け、このOリング嵌合部(16)にOリング(17)を嵌合させ、このOリング(17)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)の端面(13)とカラー(8)との間に挟み付けている。
【0028】
このため、封止面積が小さいキー溝開口(14)よりも径方向外側の部分をOリング(17)で強力に封止することができ、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しにくく、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
他の構成や機能は第1実施形態と同じであり、図2中、第1実施形態と同一の要素には図1と同一の符号を付しておく。
【0029】
図3に示す第3実施形態は、第1実施形態のガスケット(12)に代えて、Oリング(20)を用いており、次の点が第1実施形態と異なる。
図3(A)〜(C)に示すように、回転伝動軸(2)のカラー嵌合部分(18)の外周面(18a)に周方向に沿うOリング嵌合溝(19)を設け、このOリング嵌合溝(19)にOリング(20)を嵌合させ、このOリング(20)をカラー(8)の内周面(8b)に圧接させている。
【0030】
このため、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しても、Oリング(20)で伝動ケース(1)の外側への流出を止めることができ、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
他の構成や機能は第1実施形態と同じであり、図3中、第1実施形態と同一の要素には図1と同一の符号を付しておく。
【0031】
図4に示す第4実施形態は、第1実施形態のガスケット(12)に代えて、Oリング(22)を用いており、次の点が第1実施形態と異なる。
図4(A)〜(D)に示すように、回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、カラー(8)の端面(15)の外周に沿ってOリング嵌合溝(21)を設け、このOリング嵌合溝(21)にOリング(22)を嵌合させ、このOリング(22)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)とカラー(8)の端面(15)との間に挟み付けている。
【0032】
このため、封止面積が小さいキー溝開口(14)よりも径方向外側の部分をOリング(22)で強力に封止することができ、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しにくく、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
他の構成や機能は第1実施形態と同じであり、図4中、第1実施形態と同一の要素には図1と同一の符号を付しておく。
【0033】
図5に示す第5実施形態は、第1実施形態のガスケット(12)に代えて、Oリング(24)を用いており、次の点が第1実施形態と異なる。
図5(A)〜(D)に示すように、回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、カラー(8)の端面(15)に周方向に沿ってOリング嵌合溝(23)を設け、このOリング嵌合溝(23)にOリング(24)を嵌合させ、このOリング(24)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)の端面(13)とカラー(8)との間に挟み付けている。
【0034】
このため、封止面積が小さいキー溝開口(14)よりも径方向外側の部分をOリング(24)で封止することができ、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しにくく、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
他の構成や機能は第1実施形態と同じであり、図5中、第1実施形態と同一の要素には図1と同一の符号を付しておく。
【0035】
図6に示す第6実施形態は、第1実施形態のガスケット(12)に代えて、Oリング(42)を用いており、次の点が第1実施形態と異なる。
図6(A)〜(C)に示すように、カラー(8)の内周面(8b)に周方向に沿うOリング嵌合溝(41)を設け、このOリング嵌合溝(41)にOリング(42)を嵌合させ、このOリング(42)を回転伝動軸(2)のカラー嵌合部分(18)の外周面(18a)に圧接させている。
【0036】
このため、伝動ケース(1)内のエンジンオイルが回転伝動軸(2)とカラー(8)との隙間に進入しても、Oリング(42)で伝動ケース(1)の外側への流出を止めることができ、カラー(8)からのオイル漏れを防止することができる。
他の構成や機能は第1実施形態と同じであり、図6中、第1実施形態と同一の要素には図1と同一の符号を付しておく。
【符号の説明】
【0037】
(1) 伝動ケース
(2) 回転伝動軸
(3) ケース壁
(4) 内部伝動輪
(5) 伝動軸挿通孔
(6) 突出部
(7) 外部伝動輪
(8) カラー
(8a) 外周面
(8b) 内周面
(9) オイルシール
(10) キー
(11) キー溝
(12) ガスケット
(13) 内部伝動輪の端面
(14) キー溝開口
(15) カラーの端面
(16) Oリング嵌合部
(17) Oリング
(18) 回転伝動軸のカラー嵌合部分
(18a) 外周面
(19) Oリング嵌合溝
(20) Oリング
(21) Oリング嵌合溝
(22) Oリング
(23) Oリング嵌合溝
(24) Oリング
(41) Oリング嵌合溝
(42) Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝動ケース(1)内に回転伝動軸(2)を挿通し、伝動ケース(1)内で回転伝動軸(2)の外周に内部伝動輪(4)を嵌め、伝動ケース(1)のケース壁(3)に伝動軸挿通孔(5)をあけ、伝動軸挿通孔(5)を介して伝動ケース(1)外に回転伝動軸(2)に突出させ、伝動ケース(1)外で回転伝動軸(2)の突出部(6)の外周に外部伝動輪(7)を嵌め、伝動軸挿通孔(5)内で回転伝動軸(2)の外周にカラー(8)を嵌め、伝動軸挿通孔(5)の内周にオイルシール(9)を嵌め、オイルシール(9)をカラー(8)の外周面(8a)に接当させた、エンジンの伝動ケースの密封装置において、
カラー(8)の外周面(8a)に窒化処理層を形成した、ことを特徴とするエンジンの伝動ケースの密封装置。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジンの伝動ケースの密封装置において、
窒化処理層の最表面に浸硫処理層を設けた、ことを特徴とするエンジンの伝動ケースの密封装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したエンジンの伝動ケースの密封装置において、
回転伝動軸(2)の軸長方向を前後方向として、カラー(8)を前後対称形状とした、ことを特徴とするエンジンの伝動ケースの密封装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したエンジンの伝動ケースの密封装置において、
回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、
カラー(8)と内部伝動輪(4)との間にガスケット(12)を挟み、このガスケット(12)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)の端面(13)とカラー(8)の端面(15)との間に挟み付けた、ことを特徴とするエンジンの伝動ケースの密封装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したエンジンの伝動ケースの密封装置において、
回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、
カラー(8)の端面(15)の外周に沿ってOリング嵌合部(16)を設け、このOリング嵌合部(16)にOリング(17)を嵌合させ、このOリング(17)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)の端面(13)とカラー(8)との間に挟み付けた、ことを特徴とするエンジンの伝動ケースの密封装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したエンジンの伝動ケースの密封装置において、
回転伝動軸(2)のカラー嵌合部分(18)の外周面(18a)に周方向に沿うOリング嵌合溝(19)を設け、このOリング嵌合溝(19)にOリング(20)を嵌合させ、このOリング(20)をカラー(8)の内周面(8b)に圧接させた、ことを特徴とするエンジンの伝動ケースの密封装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したエンジンの伝動ケースの密封装置において、
回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、
内部伝動輪(4)の端面(13)に周方向に沿ってOリング嵌合溝(21)を設け、このOリング嵌合溝(21)にOリング(22)を嵌合させ、このOリング(22)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)とカラー(8)の端面(15)との間に挟み付けた、ことを特徴とするエンジンの伝動ケースの密封装置。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したエンジンの伝動ケースの密封装置において、
回転伝動軸(2)に内部伝動輪(4)をキー(10)とキー溝(11)で廻り止めし、外部伝動輪(7)と内部伝動輪(4)との間にカラー(8)を挟み付けるに当たり、
カラー(8)の端面(15)に周方向に沿ってOリング嵌合溝(23)を設け、このOリング嵌合溝(23)にOリング(24)を嵌合させ、このOリング(24)を内部伝動輪(4)の端面(13)のキー溝開口(14)よりも径方向外側で内部伝動輪(4)の端面(13)とカラー(8)との間に挟み付けた、ことを特徴とするエンジンの伝動ケースの密封装置。
【請求項9】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したエンジンの伝動ケースの密封装置において、
カラー(8)の内周面(8b)に周方向に沿うOリング嵌合溝(41)を設け、このOリング嵌合溝(41)にOリング(42)を嵌合させ、このOリング(42)を回転伝動軸(2)のカラー嵌合部分(18)の外周面(18a)に圧接させた、ことを特徴とするエンジンの伝動ケースの密封装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−67710(P2012−67710A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214815(P2010−214815)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】