エンジンの過給装置
【課題】 電動過給機を有するエンジンの過給装置において、バッテリの劣化が検出されたときに、劣化の更なる進行を抑制する。
【解決手段】 運転状態が所定の過給領域に突入したときに、電動過給機の通常時の作動電流よりも高い突入電流が供給されるように構成されたエンジンの過給装置であって、バッテリの劣化状態を検出するバッテリ劣化検出手段と、該検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記突入電流を低下させる電動過給機制御手段とを有する。
【解決手段】 運転状態が所定の過給領域に突入したときに、電動過給機の通常時の作動電流よりも高い突入電流が供給されるように構成されたエンジンの過給装置であって、バッテリの劣化状態を検出するバッテリ劣化検出手段と、該検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記突入電流を低下させる電動過給機制御手段とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動過給機を有するエンジンの過給装置に関し、エンジンの吸気システムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジントルクの増大を図る手段として吸気を過給するスーパーチャージャやターボチャージャが周知であるが、いずれも過給能力がエンジン回転数の影響を大きく受ける結果、低回転領域で過給圧が不足するという欠点がある。これに対し、電気的に駆動される電動過給機は、エンジン回転数の影響を受けることなく回転数を制御できるので、低回転領域でも十分な過給圧を発生し得る利点がある。
【0003】
そして、この電動過給機を備えた吸気システムとして、例えば特許文献1には、電動過給機が配設された過給通路と、該過給通路における電動過給機の上、下流側に接続されて吸気制御弁が配設されたバイパス通路と、前記過給通路とバイパス通路との合流部から下流側に延びてスロットル弁が配設された合流通路とが設けられた吸気システムが開示されている。この吸気システムでは、エンジンの運転領域が高負荷側の所定の過給領域にあるときに、前記吸気制御弁を閉じた状態で電動過給機を作動させるようになっている。
【0004】
一方、この種の電動過給機は、コンプレッサと該コンプレッサを駆動させるモータとを有し、該モータに対する供給電流に応じてコンプレッサの回転数が増減し、得られる過給圧が決定されることになる。ここで、特許文献2には、電動過給機への供給電流の制御に関する発明が開示されている。即ち、この特許文献2に記載の発明では、通常、電動過給機への供給電流は、過給時の目標過給圧と実過給圧との差に基づいて、圧力差が大きいときは供給電流を増加させるように過給圧のフィードバック制御が行われるようになっているが、過給開始時、つまりエンジンの運転状態が過給領域に突入した際に限っては、過給機に能力最大の電流を供給するように制御される。これによって、電動過給機の回転数を速やかに上昇させ、過給領域への突入時における過給圧の立ち上がりの応答性が確保されるようになっている。なお、以下の説明において、エンジンの運転領域が過給領域に突入した際に過給機に供給される高い供給電流を「突入電流」という。
【特許文献1】特開2004−346910号公報
【特許文献2】特開2004−169629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力に基づいて駆動されるのが通例であるが、電動過給機の作動開始時、つまり停止又はごく低回転の状態から回転を上昇させるときに、応答性を確保するために大きな突入電流が要求される場合は、要求される電流をオルタネータからの供給電力では賄いきれず、バッテリからの電流の持ち出しが行われることになる。ここで、バッテリが長時間の使用等で劣化している場合に、このようにバッテリから電流の持ち出しが行われると、劣化が一挙に進行してしまい、例えばスタータを回すために比較的大電力が必要となるエンジン始動時などに影響が及ぶ可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、電動過給機を有するエンジンの過給装置において、バッテリの劣化が検出されたときに、劣化の更なる進行を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
まず、請求項1に記載の発明は、運転状態が所定の過給領域に突入したときに、電動過給機の通常時の作動電流よりも高い突入電流が供給されるように構成されたエンジンの過給装置であって、バッテリの劣化状態を検出するバッテリ劣化検出手段と、該検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記突入電流を低下させる電動過給機制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、前記電動過給機制御手段は、突入電流を電動過給機の通常時の作動電流に該過給機の実回転数と目標回転数との差に応じた値の付加電流を加えた値に設定すると共に、前記バッテリ劣化検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記付加電流を低下させることにより前記突入電流を低下させることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、過給によるエンジントルクの上昇の不足を抑制するトルク低下抑制手段を有することを特徴とする。
【0011】
一方、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、前記トルク低下抑制手段は、前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジンの制御量を出力増大方向に制御することを特徴とする。
【0012】
なお、前記エンジンの制御量とは、スロットル開度や燃料噴射量などに相当する。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、前記トルク低下抑制手段は、前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジン補機の作動を抑制することを特徴とする。
【0014】
そして、請求項6に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力により駆動されると共に、前記バッテリ劣化検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記トルク低下抑制手段は、オルタネータを停止させ、前記電動過給機制御手段は、オルタネータを作動させた状態で得られるエンジントルクと略同等のトルクが得られるように突入電流を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
まず、請求項1に記載の発明によれば、まず、運転状態が所定の過給領域に突入したときに、電動過給機に通常時(非突入時)の作動電流よりも高い突入電流が供給され、過給圧の立ち上がりの応答性が確保されるようになっている。ここで、バッテリ劣化検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときは、電動過給機制御手段により前記突入電流が低下するように制御される。この結果、バッテリの劣化時に、バッテリから持ち出される電流が抑制されるので、バッテリの劣化の進行が抑制される。
【0016】
また、請求項2に記載の発明によれば、突入電流が、電動過給機の通常の作動電流に該過給機の実回転数と目標回転数との差に応じた値の付加電流を加えた値に設定されている。このように突入電流が設定されることにより、運転状態が過給領域に突入した直後の実回転数が小さいときに、実回転数と目標回転数との差が最も大きくなるので、付加電流が大きくなって、過給圧の立ち上がりの応答性が確保されることになる。ここで、バッテリの劣化時には、電動過給機制御手段により前記付加電流を低下させるので、バッテリから持ち出される電流が抑制され、バッテリの劣化の進行が抑制される。
【0017】
一方、このように突入電流が低下されると、過給機の回転の立ち上がり、ないし過給圧の立ち上がりの応答性が低下するため、要求されるエンジントルクに対して得られるトルクが抑制されることになる。この結果、所望の加速感が得られないなどの走行性悪化の問題が生じうる。
【0018】
これに対し、請求項3に記載の発明によれば、トルク低下抑制手段により、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制されるので、前記の走行性悪化が防止される。
【0019】
そして、この請求項3に記載の発明におけるトルク低下抑制手段の具体的態様として、請求項4〜6に記載の発明がある。
【0020】
まず、請求項4に記載の発明によれば、電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジンの制御量が出力増大方向に制御されるので、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。このとき、スロットル開度を増大補正し、或いは燃料噴射量を増大補正するなどによって、エンジンの出力が増大され、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。
【0021】
また、請求項5に記載の発明によれば、電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジン補機が停止されるので、エンジンの負荷が低減され、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。
【0022】
そして、請求項6に記載の発明によれば、電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、オルタネータが停止されるので、エンジンの負荷が低減され、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。さらに、オルタネータの作動時に通常の突入電流を供給したときに得られるエンジントルクと、オルタネータを停止した状態で得られるトルクとが略同一になるように突入電流の低下量が設定される。この結果、バッテリの劣化時には突入電流を低下させてバッテリの劣化の進行が抑制されると共に、バッテリの劣化状態に拘らず同等のエンジントルクが得られることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0024】
図1に、本実施の形態に係るエンジンの吸気システム1を示す。この吸気システム1は、新気が導入される吸気通路2を有し、該吸気通路2は、上流側でエアクリーナ10に接続されて電動過給機11が配設された過給通路20と、該過給通路20における過給機11の上、下流側に接続されて吸気制御弁12が配設されたバイパス通路21と、過給通路20と該バイパス通路21とが合流した下流側に延びてスロットル弁13が配設された合流通路22と、該合流通路22の下流側に形成されたサージタンク23と、該サージタンク23から各気筒#1〜#4に分岐する複数の独立吸気通路24…24とを有している。
【0025】
前記電動過給機11は、モータ11aに電力供給することによりコンプレッサ11bが回転する構成であり、過給通路20における該過給機11の上流側から吸入した空気を下流側に圧送するようになっている。なお、この過給機11の定格出力時の消費電力は2kWである。
【0026】
また、電動過給機11のモータ11aへの供給電流を制御する電動過給機ドライバ30と、該ドライバ30を介してモータ11aに電力供給するバッテリ31及びオルタネータ32とが備えられている。前記バッテリ31は電圧14Vの電源であり、矢印Aに示すように前記ドライバ30に給電可能に接続されていると共に、前記オルタネータ32で発電された電力を蓄電可能とされている。また、前記オルタネータ32は、エンジンの駆動により電圧14Vの発電を行うようになっており、矢印Bに示すように直接ドライバ30に電力供給する一方、矢印Cに示すように該バッテリ31に電力供給して充電するようになっている。
【0027】
また、エンジン全体を制御するエンジンコントロールユニット100と、該エンジンコントロールユニット100から出力された制御信号に基いて吸気システム1の各機器を制御する吸気システムコントローラ101とが備えられている。
【0028】
前記エンジンコントロールユニット100は、エンジン負荷を検出するものとしてアクセルペダル40aの踏込み量を検出するアクセル開度センサ40からの信号、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ41からの信号、前記バッテリ31の劣化状態を検出する電圧センサ42、前記電動過給機11のモータ11aの回転数を検出するモータ回転数センサ43からの信号等が入力されるようになっている。なお、バッテリ31の劣化状態を検出するものは前記電圧センサ42に限らず、クランキング時の電圧降下に応じてバッテリ31の劣化を検出するものや、矢印C及び矢印Bで示されるライン上に電流センサを設けて充電時及び放電時の電流値を検出し、これらの電流値の関係によりバッテリ31の劣化を検出するものであってもよい。
【0029】
そして、前記エンジンコントロールユニット100は、これらの入力信号に基いて、スロットル弁13を開閉駆動するスロットルアクチュエータ44、吸気システムコントローラ101などに各種の制御信号を出力する。
【0030】
前記吸気システムコントローラ101は、吸気制御弁12を開閉駆動する吸気制御弁アクチュエータ45、前記電動過給機ドライバ30などに制御信号を出力する。
【0031】
ところで、図2に示すように、前記エンジンコントロールユニット100には、アクセル開度及びエンジン回転数に応じて各運転領域が設定された制御マップが記憶されている。この制御マップは、低負荷側及び高回転側に非過給領域が設定され、高負荷低回転側に過給領域が設定されている。
【0032】
非過給領域では、前記エンジンコントロールユニット100は、前記スロットルアクチュエータ44にスロットル弁13の開度を制御する信号、及び吸気システムコントローラ101を介して前記吸気制御弁アクチュエータ45に吸気制御弁12を全開にする信号を出力する。また、エンジンコントロールユニット100は、吸気システムコントローラ101を介して前記電動過給機ドライバ30に、前記モータ11aに微小な電流を供給するための信号を出力する。なお、前記スロットル弁13は電子制御式のものであって、スロットル開度はアクセルペダル40aの踏込み量に必ずしも対応しない。
【0033】
そして、過給領域では、前記エンジンコントロールユニット100は、前記スロットルアクチュエータ44にスロットル弁13の開度を制御する信号、及び吸気システムコントローラ101を介して前記吸気制御弁アクチュエータ45に吸気制御弁12を全閉にする信号を出力する。また、この過給領域においては、エンジンコントロールユニット100は、吸気システムコントローラ101を介して電動過給機ドライバ30に、以下の式1で表される電流を過給機11に供給するようになっている。
供給電流=ベース電流+(目標回転数−実回転数)×ゲイン (式1)
【0034】
ここで、ベース電流は、1kWの電力供給を実現するために必要となる電流値である。また、アクセル開度とエンジン回転数とに応じて過給時における過給機11の目標回転数が決定される。そして、この過給機11の目標回転数から前記モータ回転数センサ43により検出した実回転数を減算した値に所定のゲインを乗算した値を前記ベース電流に加算して、これをトータルの供給電流としている。
【0035】
なお、前記電圧センサ42は請求項1に記載のエンジンの過給装置におけるバッテリ劣化検出手段に相当し、前記エンジンコントロールユニット100は同じく電動過給機制御手段及び請求項3に記載のエンジンの過給装置におけるトルク低下抑制手段に相当する。
【0036】
次に、前記吸気システム1の作用について説明する。
【0037】
まず、エンジンの運転状態が非過給領域にあるときに、エンジンコントロールユニット100から、スロットル弁13を制御する信号、及び吸気システムコントローラ101を介して吸気制御弁12を全開にする信号が出力されているので、吸気通路2に導入された空気は、バイパス通路21を通って合流通路22に至り、スロットル弁13の開度に応じてエンジンに吸入されることになる。スロットル弁13の開度は、アクセル開度及びエンジン回転数のパラメータに基づいて算出された目標トルクに対して、該目標トルクが得られるように吸入空気量を制御されるようになっている。
【0038】
また、この領域では、電動過給機11への微小な電流の供給により、該過給機11はアイドル回転(5000rpm)を維持するようになっている。このようにアイドル回転を行っておくことで、エンジンコントロールユニット100がモータ11aの回転位相を常時認識することができるので、運転状態が過給領域に移行した際の過給機11の制御の応答性が向上し、過給圧の立ち上がりの応答性が確保されるようになっている。
【0039】
この結果、図3に示すように、非過給領域においては、自然吸気のみにより高回転側で高トルクが得られるエンジン特性となる。
【0040】
そして、エンジンの運転状態が過給領域にあるときに、エンジンコントロールユニット100から、スロットル弁13を制御する信号、及び吸気システムコントローラ101を介して吸気制御弁12を全閉にする信号が出力されているので、吸気通路2に導入された空気は、バイパス通路21は通過できず、過給通路20のみを通過可能となる。そして、電動過給機11に前記式1で示された電力が供給され、過給通路20に導入された空気が過給機11の下流側に圧送されることになる。さらに、この圧送された空気が合流通路22に導入され、スロットル弁13の開度に応じてエンジンに吸入されることになる。
【0041】
この結果、図3に示すように、過給領域においては、主に低回転側において自然吸気のみにより得られるトルク以上のトルクが得られることになる。
【0042】
次に、図4に示すフローチャートに基づいて、この吸気システム1の制御について説明する。
【0043】
まず、ステップS1で、各種信号の読み込みを行う。このとき、アクセル開度センサ40により検出されたアクセル開度、エンジン回転数センサ41により検出されたエンジン回転数、電圧センサ42により検出されたバッテリ31の電圧、モータ回転数センサ43により検出されたモータ11aの回転数などの信号を入力する。
【0044】
次に、ステップS2で、図2の制御マップに基づいて、運転状態が過給領域にあるか否かを判定する。運転状態が過給領域にあるときは、ステップS3で吸気制御弁12を閉じると共に、ステップS4に進み、前記ステップS1で検出したバッテリ31の電圧値に基づいてバッテリ31が劣化状態にあるか否かについて判定する。
【0045】
そして、バッテリ31が劣化状態にあるときは、ステップS5でゲインの値を増大させ、また、バッテリ31が劣化状態にないときは、ステップS6でゲインの値を減少させて、ステップS7に進む。
【0046】
ステップS7では、過給機11への供給電流の設定を行う。この供給電流は、前記式1に示したように、目標回転数と実回転数との差にゲインを乗算したものをベース電流に加算して求められるが、このときのゲインが前記ステップS5又はS6で設定されたものとなる。したがって、バッテリ31が劣化状態にあるときは、供給電流の値が小さくなり、バッテリ31が劣化状態にないときは、供給電流の値が大きくなる。そして、ステップS7で設定された供給電流をステップS8で実際に過給機11に供給する。
【0047】
一方、前記ステップS2で、運転状態が非過給領域にあると判定されたときは、ステップS9に進み、吸気制御弁12を開くと共に、ステップS10で、過給機11への供給電流をアイドル回転用の微小な電流に設定し、ステップS8に進み、過給機11に実際に電力供給を行う。
【0048】
なお、前記ステップS4〜S6におけるバッテリ31の劣化状態に応じたゲインの設定に際して、図5のマップに基づいてゲインを設定するようにしてもよい。即ち、このマップによると、劣化が進行しているほど、つまり電圧センサ42により検出された電圧値が低いほどゲインの値が小さくなるように設定される。
【0049】
また、図4のフローチャートによる主に電動過給機11の制御と並行して、図6のフローチャートよるスロットル弁13の制御が行われる。
【0050】
このスロットル弁13の制御は、まず、ステップS21で、各種信号の読み込みを行う。このとき、アクセル開度センサ40により検出されたアクセル開度、エンジン回転数センサ41により検出されたエンジン回転数、電圧センサ42により検出されたバッテリ31の電圧などの信号を入力する。
【0051】
次に、ステップS22で、前記ステップS21で求めたアクセル開度などのパラメータに基づいて目標トルクを設定する。そして、この目標トルクに基づいて、ステップS23で目標スロットル開度を設定する。そして、ステップS24で、非過給領域から過給領域への移行後の所定期間内であるか否かの判定を行う。この所定期間は、図2の矢印Dに示すように運転状態が過給領域に突入した後、過給機11の実回転が目標回転に達するまでの期間であり、この期間内であるときは、ステップS25でバッテリ31が劣化状態にあるか否かの判定を行う。ここで、バッテリ31が劣化状態にあるときは、ステップS26に進み、前記ステップS23で設定されたスロットル開度に対する増大補正量を設定する。そして、ステップS27で最終的なスロットル開度の設定を行い、ステップS28で、このスロットル開度を実現すべくスロットルアクチュエータ44に信号を出力する。
【0052】
一方、前記ステップS24で過給領域に移行して所定期間が経過した後であると判定されたとき、また、ステップS25でバッテリ31の劣化状態が検出されないときは、ステップS29に進み、スロットル開度の増大補正量をゼロに設定する。そして、ステップS27に進み、最終的なスロットル開度の設定を行うが、このときのスロットル開度は、前記ステップS23で設定したスロットル開度と同一になる。
【0053】
なお、前記ステップS25、S26、S29におけるバッテリ31の劣化状態に応じたスロットル開度の増大補正量の設定に際して、図7のマップに基づいて増大補正量を設定するようにしてもよい。即ち、このマップによると、劣化が進行しているほど、つまり電圧センサ42により検出された電圧値が低いほどスロットル開度の増大補正量が大きくなるように設定される。
【0054】
そして、図4に示した電動過給機11の制御により、バッテリ31の劣化時は、前記式1におけるゲインの値が小さくなるように制御されるので、突入電流が抑制されることになる。
【0055】
ここで、突入電流は、前記ベース電流に相当する作動電流と、実回転数と目標回転数との差に応じて設定された付加電流とを加えたものとして設定される。付加電流は実回転数と目標回転数との差に前記ゲインを乗算したものであるから、ゲインが大きいほど値が大きくなる。このため、図8に示すように、前記ステップS5を経由してゲインが大きく設定されたときの付加電流Aよりも、前記ステップS6を経由してゲインが小さく設定されたときの付加電流Bの値が小さくなり、突入電流としても小さくなる。また、突入電流が小さい場合は、過給機11の実回転数の上昇が抑制されることになり、実回転数と目標回転数との差が緩やかに小さくなるため、過給機11に供給される電流は緩やかに下降することになる。
【0056】
一方、図9に示すように、ゲインを小さくして突入電流が抑制される結果、アイドル回転状態(5000rpm)から運転状態が過給領域に突入して目標回転数(60000rpm)に至るまでの時間が、ゲインが大きいときに比べて長くなる。過給機11の回転数は、過給により得られる増加トルクに対応しており、突入電流が抑制されているときは、得られるトルクが抑制されることになる。
【0057】
ここで、図10に示すように、図6に示したスロットル弁13の制御において、エンジントルクの上昇が不足する期間内(前記所定期間内)にあるときに、スロットル開度が増大補正されるので、得られるエンジントルクが増加し、突入電流を低下させたことによるトルクの不足が補われることになる。
【0058】
また、このようなトルクの不足を補う手段として、パワー・ステアリング、オルタネータ、エアコン、冷却ファンなどのエンジン補機を停止させ、負荷を低減させるようにしてもよい。
【0059】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。この実施の形態は、前記第1の実施の形態に対してバッテリ31の劣化状態に応じた過給機11の制御が異なるものであり、その制御を図11のフローチャートに基づいて説明する。
【0060】
まず、ステップS31で、各種信号の読み込みを行う。このとき、アクセル開度センサ40により検出されたアクセル開度、エンジン回転数センサ41により検出されたエンジン回転数、電圧センサ42により検出されたバッテリ31の充電量、モータ回転数センサ43により検出されたモータ11aの回転数などの信号を入力する。
【0061】
次に、ステップS32で、図2の制御マップに基づいて、運転状態が過給領域にあるか否かを判定する。運転状態が過給領域にあるときは、ステップS33で吸気制御弁12を閉じると共に、ステップS34に進み、図2の矢印Dに示すように非過給領域から過給領域に突入した後の所定期間内にあるか否かについての判定を行う。そして、所定期間内にあるときは、ステップS35で、前記ステップS31で検出したバッテリ31の電圧値に基づいてバッテリ31が劣化状態にあるか否かについての判定を行う。
【0062】
ステップS35で、バッテリ31が劣化状態にあると判定されたときは、ステップS36で、過給機11を0.7kWの消費電力で作動させると共に、ステップS37でオルタネータ32を停止させる。なお、ステップS35における過給機11への供給電流の設定においては、前記式1におけるベース電流を0.7kWの消費電力となる電流値に設定する。
【0063】
一方、前記ステップS32で、運転状態が非過給領域にあると判定されたときは、ステップS38に進み、吸気制御弁12を開く。さらに、ステップS39で過給機11を1kWの消費電力で作動させると共に、ステップS40でオルタネータ32を作動させる。
【0064】
また、ステップS34で、所定期間経過後であることが判定されたとき、及び、ステップS35でバッテリ31の劣化状態が検出されないときは、ステップS39に進む。
【0065】
このような制御により、バッテリ31の劣化時は、前記式1におけるベース電流の値が小さくなるように制御されるので、突入電流が抑制されることになる。
【0066】
前述のように、突入電流は、前記ベース電流に相当する作動電流と、実回転数と付加電流を加えたものとして設定される。このため、図12に示すように、前記ステップS39を経由して過給機11が1kW運転されるときの作動電流Aよりも、前記ステップS36を経由して過給機11が0.7kW運転されるときの作動電流Bの値が小さくなり、突入電流としても小さくなる。
【0067】
また、突入電流が小さい場合は、過給機11の実回転数の上昇が抑制されることになり、実回転数と目標回転数との差が緩やかに小さくなるため、過給機11に供給される電流は緩やかに下降することになる。
【0068】
一方、図13に示すように、0.7kW運転により突入電流が抑制される結果、アイドル回転状態(5000rpm)から運転状態が過給領域に移行して目標回転数(60000rpm)に至るまでの時間が、1kW運転時に比べて長くなる。過給機11の回転数は、過給により得られる増加トルクに対応しており、突入電流が抑制されているときは、得られるトルクが抑制されることになる。
【0069】
ここで、図14に示すように、前記ステップS37のように、0.7kW運転時、即ちエンジントルクの上昇が不足する前記所定期間内にあるときに、オルタネータ32を停止させるので、該オルタネータ32の負荷が低減され、突入電流を低下させたことによるトルクの不足が補われることになる。
【0070】
また、図11のフローチャートでは、バッテリ31の劣化時の過給機11の消費電力は0.7kWとされているが、この電力は以下のように設定される。
【0071】
図15に示すように、電動過給機11の消費電力の増加に比例して増加トルクが得られるが、消費電力が1kW付近を超えると、ノッキングの発生により、消費電力に比例する理論上の発生トルクに比べて得られる発生トルクは抑制される。このため、消費電力1kWで過給機11を作動させることにより、効率的な運転が可能であると共に、モータ11aの発熱が抑えられる利点がある。
【0072】
また、オルタネータ32による発電が行われているときに損失トルクが発生し、実質的に得られる正味実トルクは抑制される。このような過給機11の特性によれば、点Xに示すようにオルタネータ32による発電を行う状態で消費電力1kWで過給機11を作動させるときに得られるエンジントルクに対して、点Yに示すようにオルタネータ32による発電を停止させた状態で消費電力0.7kWで過給機11を作動させることによって同等のエンジントルクが得られることになる。このように、バッテリ31の劣化時の作動電流は、オルタネータを停止させたときに同一トルクが得られる値に設定される。
【0073】
以上のように、前記第1、第2の実施の形態によれば、運転状態が所定の過給領域に突入したときに、電動過給機11に通常時(非突入時)の作動電流よりも高い突入電流が供給され、過給圧の立ち上がりの応答性が確保されるようになっている。ここで、電圧センサ42によりバッテリ31の劣化が検出されたときは、前記突入電流が低下するように制御される。この結果、バッテリ31の劣化時に、バッテリ31から持ち出される電流が抑制されるので、バッテリ31の劣化の進行が抑制される。
【0074】
また、前記第1の実施の形態によれば、突入電流が、電動過給機11の通常の作動電流に該過給機11の実回転数と目標回転数との差に応じた値の付加電流を加えた値に設定されている。このように突入電流が設定されることにより、運転状態が過給領域に突入した直後の実回転数が小さいときに、実回転数と目標回転数との差が最も大きくなるので、付加電流が大きくなって、過給圧の立ち上がりの応答性が確保されることになる。ここで、バッテリ31の劣化時には、前記付加電流を低下させるので、バッテリ31から持ち出される電流が抑制され、バッテリ31の劣化の進行が抑制される。
【0075】
一方、このように突入電流が低下されると、過給機11の回転の立ち上がり、ないし過給圧の立ち上がりの応答性が低下するため、要求されるエンジントルクに対して得られるトルクが抑制されることになる。この結果、所望の加速感が得られないなどの走行性悪化の問題が生じうる。
【0076】
これに対し、前記第1、第2の実施の形態においては、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制されるようになっているので、前記の走行性悪化が防止される。
【0077】
つまり、第1の実施の形態では、突入電流が低下されたときに、スロットル開度が増大補正されるので、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。このとき、燃料噴射量を増大補正してエンジンの出力を増大したり、エンジン補機を停止させるなどによって負荷を低減するようにしてもよい。
【0078】
そして、第2の実施の形態では、突入電流が低下されたときに、オルタネータ32が停止されるので、エンジンの負荷が低減され、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。さらに、オルタネータ32の作動時に通常の突入電流を供給したときに得られるエンジントルクと、オルタネータ32を停止した状態で得られるトルクとが略同一になるように突入電流の低下量が設定される。この結果、バッテリ31の劣化時には突入電流を低下させてバッテリ31の劣化の進行が抑制されると共に、バッテリ31の劣化状態に拘らず同等のエンジントルクが得られることになる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、電動過給機を有するエンジンの過給装置に関し、自動車産業に広く好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る吸気システムの全体図である。
【図2】エンジンの運転領域を示す制御マップである。
【図3】エンジンの出力特性の説明図である。
【図4】吸気システムの制御に係るフローチャートである。
【図5】バッテリの劣化度合いに対するゲインのマップである。
【図6】スロットル弁の制御に係るフローチャートである。
【図7】バッテリの劣化度合いに対するスロットル開度増大補正量のマップである。
【図8】ゲインの値に応じた突入電流の説明図である。
【図9】ゲインの値に応じた過給機回転数の説明図である。
【図10】スロットル開度の制御に応じたエンジントルクの説明図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態の吸気システムの制御に係るフローチャートである。
【図12】作動電流の値に応じた突入電流の説明図である。
【図13】過給機の消費電力に応じた過給機回転数の説明図である。
【図14】オルタネータの制御に応じたエンジントルクの説明図である。
【図15】過給機の特性の説明図である。
【符号の説明】
【0081】
1 吸気システム
11 電動過給機
13 スロットル弁
42 電圧センサ
100 エンジンコントロールユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動過給機を有するエンジンの過給装置に関し、エンジンの吸気システムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジントルクの増大を図る手段として吸気を過給するスーパーチャージャやターボチャージャが周知であるが、いずれも過給能力がエンジン回転数の影響を大きく受ける結果、低回転領域で過給圧が不足するという欠点がある。これに対し、電気的に駆動される電動過給機は、エンジン回転数の影響を受けることなく回転数を制御できるので、低回転領域でも十分な過給圧を発生し得る利点がある。
【0003】
そして、この電動過給機を備えた吸気システムとして、例えば特許文献1には、電動過給機が配設された過給通路と、該過給通路における電動過給機の上、下流側に接続されて吸気制御弁が配設されたバイパス通路と、前記過給通路とバイパス通路との合流部から下流側に延びてスロットル弁が配設された合流通路とが設けられた吸気システムが開示されている。この吸気システムでは、エンジンの運転領域が高負荷側の所定の過給領域にあるときに、前記吸気制御弁を閉じた状態で電動過給機を作動させるようになっている。
【0004】
一方、この種の電動過給機は、コンプレッサと該コンプレッサを駆動させるモータとを有し、該モータに対する供給電流に応じてコンプレッサの回転数が増減し、得られる過給圧が決定されることになる。ここで、特許文献2には、電動過給機への供給電流の制御に関する発明が開示されている。即ち、この特許文献2に記載の発明では、通常、電動過給機への供給電流は、過給時の目標過給圧と実過給圧との差に基づいて、圧力差が大きいときは供給電流を増加させるように過給圧のフィードバック制御が行われるようになっているが、過給開始時、つまりエンジンの運転状態が過給領域に突入した際に限っては、過給機に能力最大の電流を供給するように制御される。これによって、電動過給機の回転数を速やかに上昇させ、過給領域への突入時における過給圧の立ち上がりの応答性が確保されるようになっている。なお、以下の説明において、エンジンの運転領域が過給領域に突入した際に過給機に供給される高い供給電流を「突入電流」という。
【特許文献1】特開2004−346910号公報
【特許文献2】特開2004−169629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力に基づいて駆動されるのが通例であるが、電動過給機の作動開始時、つまり停止又はごく低回転の状態から回転を上昇させるときに、応答性を確保するために大きな突入電流が要求される場合は、要求される電流をオルタネータからの供給電力では賄いきれず、バッテリからの電流の持ち出しが行われることになる。ここで、バッテリが長時間の使用等で劣化している場合に、このようにバッテリから電流の持ち出しが行われると、劣化が一挙に進行してしまい、例えばスタータを回すために比較的大電力が必要となるエンジン始動時などに影響が及ぶ可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、電動過給機を有するエンジンの過給装置において、バッテリの劣化が検出されたときに、劣化の更なる進行を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
まず、請求項1に記載の発明は、運転状態が所定の過給領域に突入したときに、電動過給機の通常時の作動電流よりも高い突入電流が供給されるように構成されたエンジンの過給装置であって、バッテリの劣化状態を検出するバッテリ劣化検出手段と、該検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記突入電流を低下させる電動過給機制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、前記電動過給機制御手段は、突入電流を電動過給機の通常時の作動電流に該過給機の実回転数と目標回転数との差に応じた値の付加電流を加えた値に設定すると共に、前記バッテリ劣化検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記付加電流を低下させることにより前記突入電流を低下させることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、過給によるエンジントルクの上昇の不足を抑制するトルク低下抑制手段を有することを特徴とする。
【0011】
一方、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、前記トルク低下抑制手段は、前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジンの制御量を出力増大方向に制御することを特徴とする。
【0012】
なお、前記エンジンの制御量とは、スロットル開度や燃料噴射量などに相当する。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、前記トルク低下抑制手段は、前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジン補機の作動を抑制することを特徴とする。
【0014】
そして、請求項6に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力により駆動されると共に、前記バッテリ劣化検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記トルク低下抑制手段は、オルタネータを停止させ、前記電動過給機制御手段は、オルタネータを作動させた状態で得られるエンジントルクと略同等のトルクが得られるように突入電流を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
まず、請求項1に記載の発明によれば、まず、運転状態が所定の過給領域に突入したときに、電動過給機に通常時(非突入時)の作動電流よりも高い突入電流が供給され、過給圧の立ち上がりの応答性が確保されるようになっている。ここで、バッテリ劣化検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときは、電動過給機制御手段により前記突入電流が低下するように制御される。この結果、バッテリの劣化時に、バッテリから持ち出される電流が抑制されるので、バッテリの劣化の進行が抑制される。
【0016】
また、請求項2に記載の発明によれば、突入電流が、電動過給機の通常の作動電流に該過給機の実回転数と目標回転数との差に応じた値の付加電流を加えた値に設定されている。このように突入電流が設定されることにより、運転状態が過給領域に突入した直後の実回転数が小さいときに、実回転数と目標回転数との差が最も大きくなるので、付加電流が大きくなって、過給圧の立ち上がりの応答性が確保されることになる。ここで、バッテリの劣化時には、電動過給機制御手段により前記付加電流を低下させるので、バッテリから持ち出される電流が抑制され、バッテリの劣化の進行が抑制される。
【0017】
一方、このように突入電流が低下されると、過給機の回転の立ち上がり、ないし過給圧の立ち上がりの応答性が低下するため、要求されるエンジントルクに対して得られるトルクが抑制されることになる。この結果、所望の加速感が得られないなどの走行性悪化の問題が生じうる。
【0018】
これに対し、請求項3に記載の発明によれば、トルク低下抑制手段により、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制されるので、前記の走行性悪化が防止される。
【0019】
そして、この請求項3に記載の発明におけるトルク低下抑制手段の具体的態様として、請求項4〜6に記載の発明がある。
【0020】
まず、請求項4に記載の発明によれば、電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジンの制御量が出力増大方向に制御されるので、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。このとき、スロットル開度を増大補正し、或いは燃料噴射量を増大補正するなどによって、エンジンの出力が増大され、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。
【0021】
また、請求項5に記載の発明によれば、電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジン補機が停止されるので、エンジンの負荷が低減され、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。
【0022】
そして、請求項6に記載の発明によれば、電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、オルタネータが停止されるので、エンジンの負荷が低減され、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。さらに、オルタネータの作動時に通常の突入電流を供給したときに得られるエンジントルクと、オルタネータを停止した状態で得られるトルクとが略同一になるように突入電流の低下量が設定される。この結果、バッテリの劣化時には突入電流を低下させてバッテリの劣化の進行が抑制されると共に、バッテリの劣化状態に拘らず同等のエンジントルクが得られることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0024】
図1に、本実施の形態に係るエンジンの吸気システム1を示す。この吸気システム1は、新気が導入される吸気通路2を有し、該吸気通路2は、上流側でエアクリーナ10に接続されて電動過給機11が配設された過給通路20と、該過給通路20における過給機11の上、下流側に接続されて吸気制御弁12が配設されたバイパス通路21と、過給通路20と該バイパス通路21とが合流した下流側に延びてスロットル弁13が配設された合流通路22と、該合流通路22の下流側に形成されたサージタンク23と、該サージタンク23から各気筒#1〜#4に分岐する複数の独立吸気通路24…24とを有している。
【0025】
前記電動過給機11は、モータ11aに電力供給することによりコンプレッサ11bが回転する構成であり、過給通路20における該過給機11の上流側から吸入した空気を下流側に圧送するようになっている。なお、この過給機11の定格出力時の消費電力は2kWである。
【0026】
また、電動過給機11のモータ11aへの供給電流を制御する電動過給機ドライバ30と、該ドライバ30を介してモータ11aに電力供給するバッテリ31及びオルタネータ32とが備えられている。前記バッテリ31は電圧14Vの電源であり、矢印Aに示すように前記ドライバ30に給電可能に接続されていると共に、前記オルタネータ32で発電された電力を蓄電可能とされている。また、前記オルタネータ32は、エンジンの駆動により電圧14Vの発電を行うようになっており、矢印Bに示すように直接ドライバ30に電力供給する一方、矢印Cに示すように該バッテリ31に電力供給して充電するようになっている。
【0027】
また、エンジン全体を制御するエンジンコントロールユニット100と、該エンジンコントロールユニット100から出力された制御信号に基いて吸気システム1の各機器を制御する吸気システムコントローラ101とが備えられている。
【0028】
前記エンジンコントロールユニット100は、エンジン負荷を検出するものとしてアクセルペダル40aの踏込み量を検出するアクセル開度センサ40からの信号、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ41からの信号、前記バッテリ31の劣化状態を検出する電圧センサ42、前記電動過給機11のモータ11aの回転数を検出するモータ回転数センサ43からの信号等が入力されるようになっている。なお、バッテリ31の劣化状態を検出するものは前記電圧センサ42に限らず、クランキング時の電圧降下に応じてバッテリ31の劣化を検出するものや、矢印C及び矢印Bで示されるライン上に電流センサを設けて充電時及び放電時の電流値を検出し、これらの電流値の関係によりバッテリ31の劣化を検出するものであってもよい。
【0029】
そして、前記エンジンコントロールユニット100は、これらの入力信号に基いて、スロットル弁13を開閉駆動するスロットルアクチュエータ44、吸気システムコントローラ101などに各種の制御信号を出力する。
【0030】
前記吸気システムコントローラ101は、吸気制御弁12を開閉駆動する吸気制御弁アクチュエータ45、前記電動過給機ドライバ30などに制御信号を出力する。
【0031】
ところで、図2に示すように、前記エンジンコントロールユニット100には、アクセル開度及びエンジン回転数に応じて各運転領域が設定された制御マップが記憶されている。この制御マップは、低負荷側及び高回転側に非過給領域が設定され、高負荷低回転側に過給領域が設定されている。
【0032】
非過給領域では、前記エンジンコントロールユニット100は、前記スロットルアクチュエータ44にスロットル弁13の開度を制御する信号、及び吸気システムコントローラ101を介して前記吸気制御弁アクチュエータ45に吸気制御弁12を全開にする信号を出力する。また、エンジンコントロールユニット100は、吸気システムコントローラ101を介して前記電動過給機ドライバ30に、前記モータ11aに微小な電流を供給するための信号を出力する。なお、前記スロットル弁13は電子制御式のものであって、スロットル開度はアクセルペダル40aの踏込み量に必ずしも対応しない。
【0033】
そして、過給領域では、前記エンジンコントロールユニット100は、前記スロットルアクチュエータ44にスロットル弁13の開度を制御する信号、及び吸気システムコントローラ101を介して前記吸気制御弁アクチュエータ45に吸気制御弁12を全閉にする信号を出力する。また、この過給領域においては、エンジンコントロールユニット100は、吸気システムコントローラ101を介して電動過給機ドライバ30に、以下の式1で表される電流を過給機11に供給するようになっている。
供給電流=ベース電流+(目標回転数−実回転数)×ゲイン (式1)
【0034】
ここで、ベース電流は、1kWの電力供給を実現するために必要となる電流値である。また、アクセル開度とエンジン回転数とに応じて過給時における過給機11の目標回転数が決定される。そして、この過給機11の目標回転数から前記モータ回転数センサ43により検出した実回転数を減算した値に所定のゲインを乗算した値を前記ベース電流に加算して、これをトータルの供給電流としている。
【0035】
なお、前記電圧センサ42は請求項1に記載のエンジンの過給装置におけるバッテリ劣化検出手段に相当し、前記エンジンコントロールユニット100は同じく電動過給機制御手段及び請求項3に記載のエンジンの過給装置におけるトルク低下抑制手段に相当する。
【0036】
次に、前記吸気システム1の作用について説明する。
【0037】
まず、エンジンの運転状態が非過給領域にあるときに、エンジンコントロールユニット100から、スロットル弁13を制御する信号、及び吸気システムコントローラ101を介して吸気制御弁12を全開にする信号が出力されているので、吸気通路2に導入された空気は、バイパス通路21を通って合流通路22に至り、スロットル弁13の開度に応じてエンジンに吸入されることになる。スロットル弁13の開度は、アクセル開度及びエンジン回転数のパラメータに基づいて算出された目標トルクに対して、該目標トルクが得られるように吸入空気量を制御されるようになっている。
【0038】
また、この領域では、電動過給機11への微小な電流の供給により、該過給機11はアイドル回転(5000rpm)を維持するようになっている。このようにアイドル回転を行っておくことで、エンジンコントロールユニット100がモータ11aの回転位相を常時認識することができるので、運転状態が過給領域に移行した際の過給機11の制御の応答性が向上し、過給圧の立ち上がりの応答性が確保されるようになっている。
【0039】
この結果、図3に示すように、非過給領域においては、自然吸気のみにより高回転側で高トルクが得られるエンジン特性となる。
【0040】
そして、エンジンの運転状態が過給領域にあるときに、エンジンコントロールユニット100から、スロットル弁13を制御する信号、及び吸気システムコントローラ101を介して吸気制御弁12を全閉にする信号が出力されているので、吸気通路2に導入された空気は、バイパス通路21は通過できず、過給通路20のみを通過可能となる。そして、電動過給機11に前記式1で示された電力が供給され、過給通路20に導入された空気が過給機11の下流側に圧送されることになる。さらに、この圧送された空気が合流通路22に導入され、スロットル弁13の開度に応じてエンジンに吸入されることになる。
【0041】
この結果、図3に示すように、過給領域においては、主に低回転側において自然吸気のみにより得られるトルク以上のトルクが得られることになる。
【0042】
次に、図4に示すフローチャートに基づいて、この吸気システム1の制御について説明する。
【0043】
まず、ステップS1で、各種信号の読み込みを行う。このとき、アクセル開度センサ40により検出されたアクセル開度、エンジン回転数センサ41により検出されたエンジン回転数、電圧センサ42により検出されたバッテリ31の電圧、モータ回転数センサ43により検出されたモータ11aの回転数などの信号を入力する。
【0044】
次に、ステップS2で、図2の制御マップに基づいて、運転状態が過給領域にあるか否かを判定する。運転状態が過給領域にあるときは、ステップS3で吸気制御弁12を閉じると共に、ステップS4に進み、前記ステップS1で検出したバッテリ31の電圧値に基づいてバッテリ31が劣化状態にあるか否かについて判定する。
【0045】
そして、バッテリ31が劣化状態にあるときは、ステップS5でゲインの値を増大させ、また、バッテリ31が劣化状態にないときは、ステップS6でゲインの値を減少させて、ステップS7に進む。
【0046】
ステップS7では、過給機11への供給電流の設定を行う。この供給電流は、前記式1に示したように、目標回転数と実回転数との差にゲインを乗算したものをベース電流に加算して求められるが、このときのゲインが前記ステップS5又はS6で設定されたものとなる。したがって、バッテリ31が劣化状態にあるときは、供給電流の値が小さくなり、バッテリ31が劣化状態にないときは、供給電流の値が大きくなる。そして、ステップS7で設定された供給電流をステップS8で実際に過給機11に供給する。
【0047】
一方、前記ステップS2で、運転状態が非過給領域にあると判定されたときは、ステップS9に進み、吸気制御弁12を開くと共に、ステップS10で、過給機11への供給電流をアイドル回転用の微小な電流に設定し、ステップS8に進み、過給機11に実際に電力供給を行う。
【0048】
なお、前記ステップS4〜S6におけるバッテリ31の劣化状態に応じたゲインの設定に際して、図5のマップに基づいてゲインを設定するようにしてもよい。即ち、このマップによると、劣化が進行しているほど、つまり電圧センサ42により検出された電圧値が低いほどゲインの値が小さくなるように設定される。
【0049】
また、図4のフローチャートによる主に電動過給機11の制御と並行して、図6のフローチャートよるスロットル弁13の制御が行われる。
【0050】
このスロットル弁13の制御は、まず、ステップS21で、各種信号の読み込みを行う。このとき、アクセル開度センサ40により検出されたアクセル開度、エンジン回転数センサ41により検出されたエンジン回転数、電圧センサ42により検出されたバッテリ31の電圧などの信号を入力する。
【0051】
次に、ステップS22で、前記ステップS21で求めたアクセル開度などのパラメータに基づいて目標トルクを設定する。そして、この目標トルクに基づいて、ステップS23で目標スロットル開度を設定する。そして、ステップS24で、非過給領域から過給領域への移行後の所定期間内であるか否かの判定を行う。この所定期間は、図2の矢印Dに示すように運転状態が過給領域に突入した後、過給機11の実回転が目標回転に達するまでの期間であり、この期間内であるときは、ステップS25でバッテリ31が劣化状態にあるか否かの判定を行う。ここで、バッテリ31が劣化状態にあるときは、ステップS26に進み、前記ステップS23で設定されたスロットル開度に対する増大補正量を設定する。そして、ステップS27で最終的なスロットル開度の設定を行い、ステップS28で、このスロットル開度を実現すべくスロットルアクチュエータ44に信号を出力する。
【0052】
一方、前記ステップS24で過給領域に移行して所定期間が経過した後であると判定されたとき、また、ステップS25でバッテリ31の劣化状態が検出されないときは、ステップS29に進み、スロットル開度の増大補正量をゼロに設定する。そして、ステップS27に進み、最終的なスロットル開度の設定を行うが、このときのスロットル開度は、前記ステップS23で設定したスロットル開度と同一になる。
【0053】
なお、前記ステップS25、S26、S29におけるバッテリ31の劣化状態に応じたスロットル開度の増大補正量の設定に際して、図7のマップに基づいて増大補正量を設定するようにしてもよい。即ち、このマップによると、劣化が進行しているほど、つまり電圧センサ42により検出された電圧値が低いほどスロットル開度の増大補正量が大きくなるように設定される。
【0054】
そして、図4に示した電動過給機11の制御により、バッテリ31の劣化時は、前記式1におけるゲインの値が小さくなるように制御されるので、突入電流が抑制されることになる。
【0055】
ここで、突入電流は、前記ベース電流に相当する作動電流と、実回転数と目標回転数との差に応じて設定された付加電流とを加えたものとして設定される。付加電流は実回転数と目標回転数との差に前記ゲインを乗算したものであるから、ゲインが大きいほど値が大きくなる。このため、図8に示すように、前記ステップS5を経由してゲインが大きく設定されたときの付加電流Aよりも、前記ステップS6を経由してゲインが小さく設定されたときの付加電流Bの値が小さくなり、突入電流としても小さくなる。また、突入電流が小さい場合は、過給機11の実回転数の上昇が抑制されることになり、実回転数と目標回転数との差が緩やかに小さくなるため、過給機11に供給される電流は緩やかに下降することになる。
【0056】
一方、図9に示すように、ゲインを小さくして突入電流が抑制される結果、アイドル回転状態(5000rpm)から運転状態が過給領域に突入して目標回転数(60000rpm)に至るまでの時間が、ゲインが大きいときに比べて長くなる。過給機11の回転数は、過給により得られる増加トルクに対応しており、突入電流が抑制されているときは、得られるトルクが抑制されることになる。
【0057】
ここで、図10に示すように、図6に示したスロットル弁13の制御において、エンジントルクの上昇が不足する期間内(前記所定期間内)にあるときに、スロットル開度が増大補正されるので、得られるエンジントルクが増加し、突入電流を低下させたことによるトルクの不足が補われることになる。
【0058】
また、このようなトルクの不足を補う手段として、パワー・ステアリング、オルタネータ、エアコン、冷却ファンなどのエンジン補機を停止させ、負荷を低減させるようにしてもよい。
【0059】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。この実施の形態は、前記第1の実施の形態に対してバッテリ31の劣化状態に応じた過給機11の制御が異なるものであり、その制御を図11のフローチャートに基づいて説明する。
【0060】
まず、ステップS31で、各種信号の読み込みを行う。このとき、アクセル開度センサ40により検出されたアクセル開度、エンジン回転数センサ41により検出されたエンジン回転数、電圧センサ42により検出されたバッテリ31の充電量、モータ回転数センサ43により検出されたモータ11aの回転数などの信号を入力する。
【0061】
次に、ステップS32で、図2の制御マップに基づいて、運転状態が過給領域にあるか否かを判定する。運転状態が過給領域にあるときは、ステップS33で吸気制御弁12を閉じると共に、ステップS34に進み、図2の矢印Dに示すように非過給領域から過給領域に突入した後の所定期間内にあるか否かについての判定を行う。そして、所定期間内にあるときは、ステップS35で、前記ステップS31で検出したバッテリ31の電圧値に基づいてバッテリ31が劣化状態にあるか否かについての判定を行う。
【0062】
ステップS35で、バッテリ31が劣化状態にあると判定されたときは、ステップS36で、過給機11を0.7kWの消費電力で作動させると共に、ステップS37でオルタネータ32を停止させる。なお、ステップS35における過給機11への供給電流の設定においては、前記式1におけるベース電流を0.7kWの消費電力となる電流値に設定する。
【0063】
一方、前記ステップS32で、運転状態が非過給領域にあると判定されたときは、ステップS38に進み、吸気制御弁12を開く。さらに、ステップS39で過給機11を1kWの消費電力で作動させると共に、ステップS40でオルタネータ32を作動させる。
【0064】
また、ステップS34で、所定期間経過後であることが判定されたとき、及び、ステップS35でバッテリ31の劣化状態が検出されないときは、ステップS39に進む。
【0065】
このような制御により、バッテリ31の劣化時は、前記式1におけるベース電流の値が小さくなるように制御されるので、突入電流が抑制されることになる。
【0066】
前述のように、突入電流は、前記ベース電流に相当する作動電流と、実回転数と付加電流を加えたものとして設定される。このため、図12に示すように、前記ステップS39を経由して過給機11が1kW運転されるときの作動電流Aよりも、前記ステップS36を経由して過給機11が0.7kW運転されるときの作動電流Bの値が小さくなり、突入電流としても小さくなる。
【0067】
また、突入電流が小さい場合は、過給機11の実回転数の上昇が抑制されることになり、実回転数と目標回転数との差が緩やかに小さくなるため、過給機11に供給される電流は緩やかに下降することになる。
【0068】
一方、図13に示すように、0.7kW運転により突入電流が抑制される結果、アイドル回転状態(5000rpm)から運転状態が過給領域に移行して目標回転数(60000rpm)に至るまでの時間が、1kW運転時に比べて長くなる。過給機11の回転数は、過給により得られる増加トルクに対応しており、突入電流が抑制されているときは、得られるトルクが抑制されることになる。
【0069】
ここで、図14に示すように、前記ステップS37のように、0.7kW運転時、即ちエンジントルクの上昇が不足する前記所定期間内にあるときに、オルタネータ32を停止させるので、該オルタネータ32の負荷が低減され、突入電流を低下させたことによるトルクの不足が補われることになる。
【0070】
また、図11のフローチャートでは、バッテリ31の劣化時の過給機11の消費電力は0.7kWとされているが、この電力は以下のように設定される。
【0071】
図15に示すように、電動過給機11の消費電力の増加に比例して増加トルクが得られるが、消費電力が1kW付近を超えると、ノッキングの発生により、消費電力に比例する理論上の発生トルクに比べて得られる発生トルクは抑制される。このため、消費電力1kWで過給機11を作動させることにより、効率的な運転が可能であると共に、モータ11aの発熱が抑えられる利点がある。
【0072】
また、オルタネータ32による発電が行われているときに損失トルクが発生し、実質的に得られる正味実トルクは抑制される。このような過給機11の特性によれば、点Xに示すようにオルタネータ32による発電を行う状態で消費電力1kWで過給機11を作動させるときに得られるエンジントルクに対して、点Yに示すようにオルタネータ32による発電を停止させた状態で消費電力0.7kWで過給機11を作動させることによって同等のエンジントルクが得られることになる。このように、バッテリ31の劣化時の作動電流は、オルタネータを停止させたときに同一トルクが得られる値に設定される。
【0073】
以上のように、前記第1、第2の実施の形態によれば、運転状態が所定の過給領域に突入したときに、電動過給機11に通常時(非突入時)の作動電流よりも高い突入電流が供給され、過給圧の立ち上がりの応答性が確保されるようになっている。ここで、電圧センサ42によりバッテリ31の劣化が検出されたときは、前記突入電流が低下するように制御される。この結果、バッテリ31の劣化時に、バッテリ31から持ち出される電流が抑制されるので、バッテリ31の劣化の進行が抑制される。
【0074】
また、前記第1の実施の形態によれば、突入電流が、電動過給機11の通常の作動電流に該過給機11の実回転数と目標回転数との差に応じた値の付加電流を加えた値に設定されている。このように突入電流が設定されることにより、運転状態が過給領域に突入した直後の実回転数が小さいときに、実回転数と目標回転数との差が最も大きくなるので、付加電流が大きくなって、過給圧の立ち上がりの応答性が確保されることになる。ここで、バッテリ31の劣化時には、前記付加電流を低下させるので、バッテリ31から持ち出される電流が抑制され、バッテリ31の劣化の進行が抑制される。
【0075】
一方、このように突入電流が低下されると、過給機11の回転の立ち上がり、ないし過給圧の立ち上がりの応答性が低下するため、要求されるエンジントルクに対して得られるトルクが抑制されることになる。この結果、所望の加速感が得られないなどの走行性悪化の問題が生じうる。
【0076】
これに対し、前記第1、第2の実施の形態においては、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制されるようになっているので、前記の走行性悪化が防止される。
【0077】
つまり、第1の実施の形態では、突入電流が低下されたときに、スロットル開度が増大補正されるので、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。このとき、燃料噴射量を増大補正してエンジンの出力を増大したり、エンジン補機を停止させるなどによって負荷を低減するようにしてもよい。
【0078】
そして、第2の実施の形態では、突入電流が低下されたときに、オルタネータ32が停止されるので、エンジンの負荷が低減され、過給によるエンジントルクの上昇の不足が抑制される。さらに、オルタネータ32の作動時に通常の突入電流を供給したときに得られるエンジントルクと、オルタネータ32を停止した状態で得られるトルクとが略同一になるように突入電流の低下量が設定される。この結果、バッテリ31の劣化時には突入電流を低下させてバッテリ31の劣化の進行が抑制されると共に、バッテリ31の劣化状態に拘らず同等のエンジントルクが得られることになる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、電動過給機を有するエンジンの過給装置に関し、自動車産業に広く好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る吸気システムの全体図である。
【図2】エンジンの運転領域を示す制御マップである。
【図3】エンジンの出力特性の説明図である。
【図4】吸気システムの制御に係るフローチャートである。
【図5】バッテリの劣化度合いに対するゲインのマップである。
【図6】スロットル弁の制御に係るフローチャートである。
【図7】バッテリの劣化度合いに対するスロットル開度増大補正量のマップである。
【図8】ゲインの値に応じた突入電流の説明図である。
【図9】ゲインの値に応じた過給機回転数の説明図である。
【図10】スロットル開度の制御に応じたエンジントルクの説明図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態の吸気システムの制御に係るフローチャートである。
【図12】作動電流の値に応じた突入電流の説明図である。
【図13】過給機の消費電力に応じた過給機回転数の説明図である。
【図14】オルタネータの制御に応じたエンジントルクの説明図である。
【図15】過給機の特性の説明図である。
【符号の説明】
【0081】
1 吸気システム
11 電動過給機
13 スロットル弁
42 電圧センサ
100 エンジンコントロールユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転状態が所定の過給領域に突入したときに、電動過給機の通常時の作動電流よりも高い突入電流が供給されるように構成されたエンジンの過給装置であって、
バッテリの劣化状態を検出するバッテリ劣化検出手段と、
該検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記突入電流を低下させる電動過給機制御手段とを有することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、
前記電動過給機制御手段は、突入電流を電動過給機の通常時の作動電流に該過給機の実回転数と目標回転数との差に応じた値の付加電流を加えた値に設定すると共に、前記バッテリ劣化検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記付加電流を低下させることにより前記突入電流を低下させることを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、
前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、過給によるエンジントルクの上昇の不足を抑制するトルク低下抑制手段を有することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
前記トルク低下抑制手段は、前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジンの制御量を出力増大方向に制御することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項5】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
前記トルク低下抑制手段は、前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジン補機の作動を抑制することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項6】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力により駆動されると共に、
前記バッテリ劣化検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、
前記トルク低下抑制手段は、オルタネータを停止させ、
前記電動過給機制御手段は、オルタネータを作動させた状態で得られるエンジントルクと略同等のトルクが得られるように突入電流を低下させることを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項1】
運転状態が所定の過給領域に突入したときに、電動過給機の通常時の作動電流よりも高い突入電流が供給されるように構成されたエンジンの過給装置であって、
バッテリの劣化状態を検出するバッテリ劣化検出手段と、
該検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記突入電流を低下させる電動過給機制御手段とを有することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、
前記電動過給機制御手段は、突入電流を電動過給機の通常時の作動電流に該過給機の実回転数と目標回転数との差に応じた値の付加電流を加えた値に設定すると共に、前記バッテリ劣化検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、前記付加電流を低下させることにより前記突入電流を低下させることを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、
前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、過給によるエンジントルクの上昇の不足を抑制するトルク低下抑制手段を有することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
前記トルク低下抑制手段は、前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジンの制御量を出力増大方向に制御することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項5】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
前記トルク低下抑制手段は、前記電動過給機制御手段により突入電流が低下されたときに、エンジン補機の作動を抑制することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項6】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力により駆動されると共に、
前記バッテリ劣化検出手段によりバッテリの劣化が検出されたときに、
前記トルク低下抑制手段は、オルタネータを停止させ、
前記電動過給機制御手段は、オルタネータを作動させた状態で得られるエンジントルクと略同等のトルクが得られるように突入電流を低下させることを特徴とするエンジンの過給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−77943(P2007−77943A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269464(P2005−269464)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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