説明

エンジン始動制御装置及びエンジン始動制御方法

【課題】クラッチのばらつきによるトルク変動を吸収し得るハイブリッド車両のエンジン始動制御の技術を提供する。
【解決手段】エンジンに第1クラッチCL1を介してモータを連結し、モータを第2クラッチCL2を介して駆動輪に連結する。モータの動力だけで走行している状態でエンジンを始動する場合に、モータを回転制御して、第1クラッチCL1を締結制御すると共に、目標クラッチ伝達トルク指令で第2クラッチCL2を滑り締結制御する。上記エンジンの始動制御中に第2クラッチCL2の滑り状態を推定する。その推定に基づき、エンジンの始動制御中の第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクを、第2クラッチCL2の滑り状態が適正に近づくように、上記目標クラッチ伝達トルク指令に対し補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの動力で車両を駆動可能であると共に、当該モータの動力でエンジンを始動可能なハイブリッド車両におけるエンジン始動制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両のエンジン始動制御の技術としては、特許文献1に記載の技術がある。この技術は、モータの動力で走行中にエンジン動力が必要になると、エンジンとモータとの間に介装したクラッチについて、目標クラッチ締結力を0から漸増させる。これによるクラッチ締結力の漸増によりエンジンをクランキングし、エンジン回転数が始動可能回転数に達すると、エンジン始動指令によりエンジンを始動させる。この始動中はエンジンでトルク変動を発生するので、目標クラッチ締結力を保持し、クラッチ締結力の増大を禁止する。これによりクラッチ締結容量をエンジン始動中は小さく保ち、始動中のトルク変動を上記クラッチのスリップにより吸収していた。
【特許文献1】特開2005−162142
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、伝達トルクを制御する上記クラッチは固体ばらつきが大きく、また経時劣化による磨耗や油量の変化によってばらつきが大となる可能性がある。
本発明は、上記のような点を考慮し、クラッチのばらつきによるトルク変動を吸収し得るハイブリッド車両のエンジン始動制御の技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、モータの動力だけで走行している状態でエンジンを始動する場合に、モータを回転数制御すると共に第2クラッチを目標クラッチ伝達トルク指令で滑り締結制御し、かつ第1クラッチを所定のクラッチ伝達トルクで締結制御することで、モータの動力によって車両の走行を確保しつつクランキングしてエンジンの始動を行う。このとき、上記クランキング中における第2クラッチの滑り状態を推定し、エンジンの始動制御中の上記第2クラッチのクラッチ伝達トルクが第2クラッチの滑り状態が適正に近づくように、上記第2クラッチのクラッチ伝達トルクを上記目標クラッチ伝達トルク指令に対し補正する。
【発明の効果】
【0005】
エンジンの始動制御中の第2クラッチのクラッチ伝達トルクを、第2クラッチの滑り状態が適正に近づくように補正する。第2クラッチの滑り状態が適正に近づくことで、クラッチのばらつきによるトルク変動を吸収し得るハイブリッド車両のエンジン始動制御の技術を提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、車両としてハイブリッド車両を例に挙げて説明するが、エンジンだけ若しくはモータだけで駆動する構成の車両であっても適用可能である。
図1は実施形態の制駆動装置を備える後輪駆動によるハイブリッド車両の概要構成図である。
(構成)
まず駆動系の構成について説明する。
エンジンEから左右後輪(駆動輪)までのトルク伝達経路の途中に、モータMG及び自動変速機AT(=トランスミッションT/M)を介装する。第2クラッチCL2は、自動変速機AT(=トランスミッションT/M)の一部を構成する。また、エンジンEとモータMGとの間に、第1クラッチCL1を介装する。自動変速機ATは、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、及びドライブシャフトDSL、DSRを介して駆動輪に接続する。符号FL、FRは、従動輪としての左右前輪を示す。
【0007】
上記エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンである。エンジンは、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づき、スロットルバルブのバルブ開度等が制御可能となっている。なお、エンジンEの出力軸に、フライホイールFWを設ける。
上記モータMGは、例えばロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルを巻き付けた同期型モータである。モータMGは、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づき、インバータ3で作り出した三相交流を印加することで制御出来る。このモータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできる(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)。また、モータMGは、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータMGのロータは、図外のダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結する。
【0008】
上記第1クラッチCL1は、上記エンジンEとモータMGとの間に介装された油圧式単板クラッチである。上記第1クラッチCL1は、後述する第1クラッチコントローラ5からの制御指令に基づいて、所定のクラッチ伝達トルクとなるように、第1クラッチ油圧ユニット6が作り出した制御油圧により、締結状態若しくは開放状態となる。なお、締結・開放には、滑り締結と滑り開放を含む。
【0009】
上記第2クラッチCL2は、油圧式多板クラッチである。上記第2クラッチCL2は、後述するATコントローラ7からの制御指令に基づき、所定のクラッチ伝達トルクとなるように、第2クラッチ油圧ユニット8で作り出した制御油圧により、締結状態若しくは開放状態となる。なお、締結・開放には、滑り締結と滑り開放を含む。
上記自動変速機ATは、例えば、前進5速後退1速や前進6速後退1速等の有段階の変速比を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機である。ここで、上記第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用して構成する。
【0010】
また、各輪FR、FL、RR、RLには、それぞれブレーキユニットを備える。各ブレーキユニットは、例えばディスクブレーキやドラムブレーキからなる。各ブレーキユニットは、油圧ブレーキ装置であっても、電動ブレーキ装置であっても良い。各ブレーキユニットは、ブレーキコントローラ9からの指令に応じて、対応する車輪に制動力を付与する。なお、ブレーキユニットは、全ての車輪に設ける必要はない。
【0011】
次に、ハイブリッド車両の制御系の構成について説明する。
上記ハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有する。なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、互いに情報交換が可能なCAN通信線11を介して接続する。
【0012】
上記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報を入力する。そして、上記エンジンコントローラ1は、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne、Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。なお、エンジン回転数Neの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0013】
上記モータコントローラ2は、モータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報を入力する。そして、上記モータコントローラ2は、統合コントローラ10からの目標モータトルク指令が回転数指令等に応じ、モータMGのモータ動作点(Nm、Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリSOCを監視していて、バッテリSOC情報は、モータMGの制御情報に用いると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0014】
上記第1クラッチコントローラ5は、第1クラッチ油圧センサ14と第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報を入力する。そして上記第1クラッチコントローラ5は、統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令(目標第1クラッチ伝達トルク指令)に応じ、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。なお、第1クラッチストロークC1Sの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0015】
上記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と車速センサ17と第2クラッチ油圧センサ18からのセンサ情報を入力する。そして、上記ATコントローラ7は、統合コントローラ10からの第2クラッチ制御指令(目標第2クラッチトルク指令)に応じ、変速制御における第2クラッチ制御に優先し、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブ内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する。なお、アクセル開度APと車速VSPの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0016】
上記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19とブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報を入力する。上記ブレーキコントローラ9は、所定の制御サイクルで、ブレーキペダルのストローク量や車速VSPに基づき目標減速度P0を演算する。 そして、目標減速度P0に相当する減速が車両に発生するように、各ブレーキユニットに制動力指令値を出力する。
【0017】
また、上記ブレーキコントローラ9は、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、回生協調ブレーキ制御を行う。すなわち、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、統合コントローラ10からの回生協調制御指令に基づいて回生協調ブレーキ制御を行う。
【0018】
上記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うものである。上記統合コントローラ10は、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21と、第2クラッチ出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ22と、第2クラッチトルクを検出する第2クラッチトルクセンサ23からの情報を入力する。また、上記統合コントローラ10は、CAN通信線11を介して取得した情報を入力する。そして、上記統合コントローラ10は、上記エンジンコントローラ1への制御指令によりエンジンEの動作制御を実行する。上記統合コントローラ10は、上記モータコントローラ2への制御指令によりモータMGの動作制御を実行する。上記統合コントローラ10は、上記第1クラッチコントローラ5への制御指令により第1クラッチCL1の締結・開放制御を実行する。上記統合コントローラ10は、上記ATコントローラ7への制御指令により第2クラッチCL2の締結・開放制御を実行する。
【0019】
次に、本実施形態のハイブリッド車両における基本動作モードについて説明する。
車両停止中において、バッテリSOCの低下時であれば、エンジンEを始動して発電を行い、バッテリ4を充電する。そして、バッテリSOCが通常範囲になれば、第1クラッチCL1は締結で第2クラッチCL2は開放のままでエンジンEを停止する。
エンジン発進時には、アクセル開度APとバッテリSOC状態によって、モータMGを連れ回し、力行/発電に切り替える。
モータ発進時では、ロールバックにより自動変速機ATの出力回転が負回転となったら、第2クラッチCL2の滑り制御を行い、モータMGの回転を正回転に維持する。次に、駆動力を車両が前進するまで上昇させ、第2クラッチCL2を滑り制御から締結に移行させる。
【0020】
モータ走行は、エンジン始動に必要なモータトルクとバッテリ出力を確保し、不足する場合はエンジン走行に移行する。また、所定車速以上となると、モータ走行からエンジン走行に移行する。またエンジン走行時において、アクセル踏み込み時のレスポンス向上のために、エンジントルク遅れ分をモータMGによりアシストする。すなわち、エンジン走行中は、エンジンの動力だけ、若しくはエンジンモータの動力の両方で走行するモードが存在する。
ブレーキON減速時には、運転者のブレーキ操作に応じた減速力を回生協調ブレーキ制御にて得る。
エンジン走行やモータ走行中における変速時には、加減速中の変速に伴う回転数合わせのために、モータMGを回生/力行させ、トルクコンバータ無しでのスムーズな変速を行う。
【0021】
次に、統合コントローラ10にて実行する制駆動制御処理における、本発明に関わる部分について説明する。
統合コントローラ10は、図2に示すように、制駆動制御部本体10A、目標駆動力演算部10B、モータ走行制御部10C、エンジン走行制御部10D、及び走行モード遷移処理部10Eを備える。なお、統合コントローラ10は、制動制御部その他の制御部も備える。
【0022】
制駆動制御部本体10Aは、入力した情報(車速情報やアクセル開度情報、SOC情報など)に基づき車両の状態を判定して、モータ走行制御部10C、エンジン走行制御部10D、及び走行モード遷移処理部10Eを起動する。走行モード遷移処理部10Eは、エンジン始動制御部40を備える。
目標駆動力演算部10Bは、アクセル開度及び車速に基づき目標駆動力を演算する。そして、目標駆動力演算部10Bは、走行モードに応じて目標駆動力を目標エンジントルク及び目標モータトルクに配分する。
【0023】
モータ走行制御部10Cは、第1クラッチコントローラ5に第1クラッチCL1の開放指令を出力すると共に、ATコントローラに第2クラッチCL2の締結指令を出力することで、第1クラッチCL1を開放状態とすると共に、第2クラッチCL2を締結状態とする。また、モータ走行制御部10Cは、上記目標モータトルクに対応する目標モータトルク指令をモータコントローラ2に出力する。
【0024】
エンジン走行制御部10Dは、上記目標エンジントルクに対応する目標エンジントルク指令をエンジンコントローラ1に出力する。
走行モード遷移処理部10Eは、各モード間の遷移時における第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、モータMG、エンジンEの制御を行う。
エンジン始動制御部40は、モータ走行中にエンジンEを始動してエンジン走行モードへの移行処理を行う。
【0025】
次に、エンジン始動制御部40の処理について説明する。
エンジン始動制御部40は、モータ走行中にエンジン始動指令を取得すると起動する。エンジン始動制御部40は、図3に示すように、始動制御部本体40Aと、学習補正部40Bとを備える。
始動制御部本体40Aの処理を図4を参照して説明する。
【0026】
まずステップS100にて、エンジンEの始動要求があるか否かを判定する。エンジン始動要求があると判定するとステップS110に移行する。
ステップS110では、第2クラッチCL2を目標クラッチ伝達トルクにするための目標第2クラッチCL2トルク指令を、ATコントローラ7に出力する。但し、学習補正部40Bが補正量T1を設定している場合には、目標クラッチ伝達トルク指令TCL2を補正量T1分だけオフセットして増大補正若しくは減少補正したトルク指令をATコントローラ7に出力する。
【0027】
上記目標第2クラッチ伝達トルク指令TCL2は、エンジン始動処理前の出力トルク相当のトルクを伝達可能な伝達トルク指令であって、モータMGが出力する駆動力を増大したとしても出力軸トルクに影響を与えない範囲とする。
ここで、ATコントローラ7は、指令に応じたクラッチ油圧が発生するように第2クラッチ油圧ユニット8を制御する。上記学習補正部40Bが設定した補正量T1の増大補正若しくは減少補正は、ATコントローラ7で実施しても良い。
【0028】
ステップS120では、モータコントローラに対して、モータ電圧を増大すると共にモータMGを回転数制御する指令を出力する。なお、モータMGの実トルクはモータMGに作用する負荷によって決定される。
ステップS130では、第1クラッチコントローラ5に対して、第1クラッチCL1のトルク伝達トルクがエンジンクランキング用のトルクとなるトルク指令を出力する。
【0029】
ステップS140では、エンジン回転数とモータ回転数とが同期したことを検知したら、ステップS150に移行して、クランキング処理の終了として第1クラッチCL1を完全締結とする指令を出力する。第1クラッチCL1の同期判定は、実モータ回転と実エンジン回転の差回転が規定値以下の状態が規定時間経過したときに同期したと判定する。規定値は第1クラッチトルク制御中から完全締結移行時の応答無駄時間相当の差回転を設定する。
さらに、ステップS160にて、エンジン回転数が始動可能回転数以上になったことを検知したら、エンジンコントローラ1に対してエンジン始動指令を出力する。そして復帰する。
【0030】
次に、学習補正部40Bについて説明する。
学習補正部40Bは、図5に示すように、滑り状態推定手段41、及び滑り締結トルク補正手段42を備える。
滑り状態推定手段41は、上記クランキング処理中における第2クラッチCL2の滑り状態を推定する。
滑り締結トルク補正手段42は、滑り状態推定手段41による推定に基づき、エンジン始動制御手段が作動中の第2クラッチCL2の実クラッチ伝達トルクが第2クラッチCL2の滑り状態が適正に近づくように、第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクを上記目標クラッチ伝達トルク指令TCL2に対し補正を実行する。
【0031】
上記滑り状態推定手段41は、図5に示すように、モータ実トルク取得手段41A、トルク補正量演算手段41B、滑り量検出手段41C、及び回転数差検出手段41Dを備える。
モータ実トルク取得手段41Aは、上記モータMGの実トルクを取得する。モータ実トルクMG−RTは、モータ電流から実トルクを推定することで取得する。
【0032】
トルク補正量演算手段41Bは、上記エンジンEの始動中に、モータ実トルク取得手段41Aが取得したモータ実トルクMG−RTに基づき、上記モータMGの実トルクMG−RTの最大値を取得する。そして、トルク補正量演算手段41Bは、上記取得した実トルクMG−RTの最大値が、使用可能なモータトルクよりも小さいと判定すると、上記使用可能なモータトルクと上記モータMGの実トルクMG−RTの最大値の差分である、トルク偏差量ΔTを演算する。
【0033】
滑り量検出手段41Cは、上記第2クラッチCL2の入力軸と出力軸との回転数差を検出する。上記第2クラッチCL2の入力軸及び出力軸の回転数は、各軸に設けた回転センサで取得すればよい。
回転数差検出手段41Dは、上記エンジンEの始動中における上記第2クラッチCL2の回転数差の最小値を検出する。
ここで、上述のクランキング処理中とは、モータMGの回転数制御を開始し、第1クラッチCL1にクラッチ伝達トルク指令を出力してから、第1クラッチCL1の入力軸及び出力軸が同期するまでの期間とする。
また、上記滑り締結トルク補正手段42は、図5に示すように、滑り締結トルク増大補正手段42A、及び滑り締結トルク減少補正手段42Bを備える。
【0034】
滑り締結トルク増大補正手段42Aは、上記トルク補正量演算手段41Bが算出したトルク偏差量ΔTが正値である場合には、当該トルク補正量ΔT以下の正値であるクラッチ増大補正量を求める。例えば、トルク補正量ΔTに1以下のゲインを乗算することでクラッチ増大補正量を求める。
そして、滑り締結トルク増大補正手段42Aは、エンジン始動制御が作動中の第2クラッチCL2の実クラッチ伝達トルクを、クラッチ増大補正量分だけ、上記目標クラッチ伝達トルク指令TCL2よりも増大補正する。
【0035】
滑り締結トルク減少補正手段42Bは、回転数差検出手段41Dが検出した回転数差ΔNの所定回転数ΔN0以下と判定すると、エンジン始動制御手段が作動中の第2クラッチCL2の実クラッチ伝達トルクを、所定のクラッチ減少補正量分だけ、上記目標クラッチ伝達トルク指令TCL2よりも減少補正する。
上記増大補正及び減少補正は、上記目標クラッチ伝達トルク指令TCL2そのものを補正しない。ATコントローラ7へ出力する指令を、上記目標クラッチ伝達トルク指令TCL2に対し学習した補正量T1分だけ増大補正及び減少補正する。又は、ATコントローラ7が、増大補正又は減少補正分だけ、クラッチ油圧分を補正して制御するようにさせても良い。
但し、下記の学習禁止条件のいずれかの場合には、補正処理を実施しない。
学習禁止条件:
・始動制御中の足離しによる停止時
・始動制御中の踏み込みによる第2クラッチCL2の解放始動時
・始動制御中のセレクト動作時
・フェールセーフ作動時
【0036】
次に、学習処理部の処理を、図6に示すフローで説明する。
なお、上述のように、エンジンEの始動制御中に作動する。
まず、ステップS210にて、クランキング処理中に第2クラッチCL2が指令に対して油圧が掴めていない場合か、それ以外かを判定する。それ以外とは、指令通り応答できている場合と油圧が掴み過ぎている場合とである。
具体的には、クランキング時のモータ実トルクMG−RTの最大値と、使用可能なモータトルクとのトルク偏差ΔTを求め、そのトルク偏差ΔTが0よりも大きいか否かを判定する。クランキング時に第2クラッチCL2が指令に対して油圧が掴めていない場合には、差ΔTが0よりも大きい。
【0037】
ここで、モータ実トルクMG−RTは、上述のようにモータMGの電流値から推定する。使用可能なモータトルクは、回転や温度等の出力制限及びトルク制限等のモータ使用の諸元から決まる使用可能最大トルクとする。
トルク偏差ΔTがゼロよりも大きい場合には、ステップS220に移行する。トルク偏差ΔT=ゼロの場合にはステップS300に移行する。
ステップS220では、トルク偏差ΔTがαよりも小さいか否かを判定する。トルク偏差ΔTがαよりも小さい場合にはステップS230に移行する。トルク偏差ΔTがα以上の場合にはステップS240に移行する。
【0038】
αは、一回の学習補正量T1(トルクまたは油圧)である。このαは一回の補正で運転手がG変化を感じない値(例:0.02G以下)に設定する。
トルク偏差ΔTがαよりも小さい場合には、ステップS230にて、補正量はゼロとする。変速段毎に第2クラッチCL2が異なる場合はクラッチ毎に補正量を設定する。
トルク偏差ΔTがα以上の場合には、次回のエンジン始動時に第2クラッチCL2の目標指令トルクTCL2に対して増加側にα分オフセットする。増大補正量として補正量T1にαを設定する。
【0039】
ここで、始動制御部本体40Aは、目標第2クラッチ伝達トルク指令TCL2に対して+αNm増大補正した指令を、ATコントローラ7に主力する。または、ATコントローラ7が、目標第2クラッチ伝達トルク指令TCL2に対する油圧指令に+αNm相当の油圧を補正する。
また、第2クラッチCL2が指令通りか、掴み過ぎの場合には、ステップS300に移行して、次回のエンジン始動時に第2クラッチ伝達トルク指令TCL2に対してオフセットする減少補正量を設定する。
【0040】
すなわち、ステップS300にて、クランキング時における第2クラッチCL2の差回転ΔN(またはギア比)が規定回転より大きいか否かを判定する。
クランキング時における第2クラッチCL2の差回転ΔN(またはギア比)>規定回転ΔN0の場合には、ステップS310に移行して、オフセット量はゼロとする。すなわち減少補正量をゼロとする。
クランキング時における第2クラッチCL2の差回転ΔN(またはギア比)≦規定回転ΔN0の場合には、ステップS320に移行する。
ステップS320では、第2クラッチCL2の差回転の最小値≧規定値ΔN0か否かを判定する。
【0041】
第2クラッチCL2の差回転の最小値≧規定値ΔN0の場合には、ステップS330に移行して、一回の減少補正量をβ(トルクまたは油圧)とする。すなわち、補正量T1に−βを設定する。βは、前述したαの設定方法と同様に設定する。
また、CL2差回転最小値<規定値の場合は、ステップS340に移行して、一回の減少補正量をγ(トルクまたは油圧)とする。すなわち、補正量T1に−γを設定する。
なお、変速段毎に第2クラッチCL2が異なる場合はクラッチ毎に補正量β、γを設定する。
【0042】
ここで、上記規定値はゼロまたはモータMGの回転数制御の外乱に対する応答性に応じて設定する。
ここで、始動制御部本体40Aは、目標第2クラッチ伝達トルク指令TCL2に対して減少補正した指令を、ATコントローラ7に主力する。または、ATコントローラ7が、目標第2クラッチ伝達トルク指令TCL2に対する油圧指令に減少補正量相当の油圧を減少補正する。
【0043】
(動作・作用)
本実施形態のようなハイブリッド車両では、アクセル低開度でモータMGのみで走行する状態からエンジン始動する際は、モータMGのみで駆動力コントロールと始動を実施することとなる。このため、駆動力コントロールと入力トルク変動の遮断を行う為に第2クラッチCL2を滑り締結することが重要である。しかし、第2クラッチCL2は固体ばらつきが大きく、また経時劣化による磨耗や油量の変化によってばらつきが大となる可能性がある。
【0044】
ここで、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルク指令値の合計が、モータトルク最大値の場合を考える。
この場合、第2クラッチCL2の実クラッチ伝達トルクが指令に対して掴みすぎていると、実モータトルク(最大値)<(第1クラッチ実トルク+第2クラッチ実トルク)となる。この場合、第2クラッチCL2の滑り締結が維持出来ず、入力トルク変動が出力軸に伝達してショックを生じる。
【0045】
一方、第2クラッチCL2の実クラッチ伝達トルクが指令に対して弱掴みになっていると、モータ実トルクMG−RTが最大トルクで使えていないにも関わらず、始動時の駆動力が低く、遅れがでる。
本実施形態は、これを解消することが可能となる。
ここで、燃費の観点から、モータ走行領域を拡大している。このため、エンジン始動時のモータトルクとして、ほぼ最大値を使うこととなる。なお、モータトルクに余裕がある場合や、バッテリのSOC低下によるシステム要求始動時は、第2クラッチCL2の掴みすぎについては、モータトルク余裕分で補える為、上記課題は無いか小さい。
【0046】
本実施形態のエンジン始動の前提とする処理は、第2クラッチCL2の滑り締結状態を維持することで、入力トルク変動を遮断することである。ここで、本実施形態のハイブリッドシステムはモータMGが1つしかない。このため、モータトルクを、第1クラッチCL1を介したエンジンのクランキングトルクと、第2クラッチCL2の駆動トルクとに配分を実施し、さらにクラッチの滑り締結状態を維持させる必要がある。
【0047】
エンジン始動する代表的なシーンは、運転手がアクセルペダルを踏み込み駆動力を要求するシーンなので、モータトルクは出来る限り最大トルクを使い切って駆動力を確保出来ることが望ましい。これに対応するために、本実施形態では、クランキング時に第2クラッチCL2が指令に対して油圧を掴み過ぎている場合と、掴めていない場合、つまり滑りが適正でない場合を判定する。そして、滑りが適正でない場合には、次回の始動時の第2クラッチCL2の指令に対するオフセットを行い、補正する。
【0048】
具体的には、アクセル低開度でモータMGのみで走行する状態からエンジン始動する際において、第1クラッチCL1によるエンジンクランキング時のモータ実トルクMG−RTを求める。そして、クランキング時のモータ実トルクMG−RTと、使用可能なモータトルクの差であるΔTがゼロより大きい場合は、第2クラッチCL2の実油圧が指令に対して小さいと判定する。この場合には、次回のエンジン始動時に、第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクの指令値に対してトルクを増加側にΔT以下のトルク分だけオフセットする。
【0049】
ここで、モータ実トルクMG−RTは、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2の合計実トルクとなる。また、クランキング時とは、上述のように、モータMGの回転数制御を開始し、第1クラッチCL1のトルク指令を開始してから第1クラッチCL1が同期するまでとする。
なお、第1クラッチCL1のトルクは、ストロークセンサやエンジン回転上昇等からトルクを推定可能である。このため、別途第1クラッチCL1のトルク補正を行なう。
【0050】
このように、第2クラッチCL2の実油圧が指令トルクに対して小さい場合、次回の始動時に増加側にオフセットして補正する。この結果、第2クラッチCL2の滑り締結状態を維持して入力トルク変動を遮断した状態で、第2クラッチCL2が指令トルク相当の油圧を確保出来る。つまり駆動力が確保出来る。このとき、モータ実トルクMG−RTは出来る限り使用可能トルクを最大限使えることが望ましい。また第2クラッチCL2をスリップさせる前の駆動力にたいしてスリップ時の油圧を高く保持できるので、つまり、前回始動時より第2クラッチCL2の油圧抜き量が小さくなるので、スリップイン時のショックが改善できる。また第1クラッチCL1同期後に、第2クラッチCL2の油圧を上昇させる為、クランキング時の第2クラッチCL2油圧を指令相当に保持できていることで、加速度の応答を早期化出来る。
【0051】
また、使用可能なモータトルクのトルク偏差ΔT=ゼロの場合(=モータ実トルクMG−RTがモータ使用可能トルク制限にかかっている)は、次のように処理する。
クランキング時の第2クラッチCL2差回転ΔN(またはギア比)≧規定回転ΔN0であれば第2クラッチCL2の実油圧が指令に対してほぼ確保できている、この場合には、次回のエンジン始動時に第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクの指令値に対して、補正をしない。
【0052】
一方、クランキング時の第2クラッチCL2差回転ΔN(またはギア比)<規定回転ΔN0であれば、第2クラッチCL2の実油圧が指令に対して掴み過ぎている。この場合には、次回のエンジン始動時に第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクの指令値に対してトルクを減少側にオフセットする。オフセット量はクランキング時のCL2差回転ΔNの最小値にて設定する。
【0053】
このように、第2クラッチCL2が指令トルクに対して大きい場合に次回の始動時に減少側にオフセットして補正する。これによって、モータ実トルクMG−RTは出来る限り使用可能トルクを最大限使えている状態は保持した状態で、何らかの外乱があった場合でも第2クラッチCL2のスリップを維持出来る。この結果、入力トルク変動を遮断することが出来る様に余裕トルク(=モータ回転数制御時、外乱が入って実回転が目標回転を保持できなくなった場合に復帰させるトルク)を確保出来る。
【0054】
ここで、第2クラッチCL2が指令通り出ている場合と、第2クラッチCL2が指令に対して掴みすぎている場合とは、どちらもモータ実トルクMG−RTと使用可能トルクのトルク偏差ΔTが同じなので、第2クラッチCL2の差回転を用いて次回の補正量を判定する。
図7に本実施形態のタイムチャート例を示す。
ここで、始動制御部本体40Aはエンジン始動制御手段を構成する。ステップS220〜S240は、滑り締結トルク増大補正手段42Aを構成する。ステップS300〜S340は、滑り締結トルク減少補正手段42Bを構成する。
【0055】
(本実施形態の効果)
(1)エンジン始動制御手段は、モータMGの動力だけで走行している状態でエンジンEを始動する場合に、モータMGを回転数制御すると共に第2クラッチCL2を目標クラッチ伝達トルク指令TCL2で滑り締結制御し、かつ第1クラッチCL1を所定のクラッチ伝達トルクで締結制御することで、エンジン始動のためのクランキングを行う。滑り状態推定手段41は、上記クランキング中における第2クラッチCL2の実際の滑り状態を推定する。滑り締結トルク補正手段42は、滑り状態推定手段41による推定に基づき、エンジン始動制御手段が作動中の第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクが第2クラッチCL2の滑り状態が適正に近づく方向に、上記目標クラッチ伝達トルク指令TCL2に対し当該第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクを補正する。
これによって、クランキング時の第2クラッチCL2の滑り状態が適正に近づく。この結果、第2クラッチCL2の滑り締結状態を維持できる。
【0056】
(2)トルク補正量演算手段41Bは、上記クランキング中における上記モータMGの実トルクMG−RTが、使用可能なモータトルクよりも小さいと判定すると、上記使用可能なモータトルクと上記モータMGの実トルクMG−RTとの差分である、トルク偏差ΔTを演算する。滑り締結トルク増大補正手段42Aは、エンジン始動制御手段が作動中の第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクを、上記トルク補正量演算手段41Bが算出したトルク偏差ΔT以下の正値であるクラッチ増大補正量T1分だけ、上記目標クラッチ伝達トルク指令TCL2よりも増大補正する。
【0057】
すなわち、クランキング時のモータ実トルクMG−RTと、使用可能なモータトルクのトルク偏差ΔTがゼロより大きい場合は、第2クラッチCL2の目標クラッチ伝達トルク指令TCL2に対してトルクを増加側にΔT以下のトルクT1だけオフセットする。
第2クラッチCL2が指令トルクに対して小さいのを増加側にオフセットして補正することで、第2クラッチCL2の滑り締結状態を維持できる。
【0058】
(3)回転数差検出手段41Dは、上記クランキング中における上記第2クラッチCL2の回転数差を検出する。滑り締結トルク減少補正手段42Bは、回転数差検出手段41Dが検出した回転数差が所定回転数以下と判定すると、エンジン始動制御手段が作動中の第2クラッチCL2のクラッチ伝達トルクを、所定のクラッチ減少補正量分だけ、上記目標クラッチ伝達トルク指令TCL2よりも減少補正する。
すなわち、クランキング時の第2クラッチCL2差回転ΔN(またはギア比)が規定回転ΔN0未満であれば、第2クラッチCL2の目標クラッチ伝達トルク指令TCL2に対してトルクを減少側にオフセットする。
これによって、第2クラッチCL2が指令トルクに対して小さいのを増加側にオフセットして補正することで、第2クラッチCL2のスリップを維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に基づく実施形態に係るハイブリッド車両のシステム構成を説明する図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る統合コントローラの構成を示す図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係るエンジン始動制御部の構成を示す図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係る始動制御部本体の処理を説明する図である。
【図5】本発明に基づく実施形態に係る学習補正部の構成を示す図である。
【図6】本発明に基づく実施形態に係る学習補正部の処理を説明する図である。
【図7】本発明に基づく実施形態に係るタイムチャート例である。
【符号の説明】
【0060】
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
5 第1クラッチコントローラ
7 ATコントローラ
10 統合コントローラ
10A 制駆動制御部本体
10B 目標駆動力演算部
10C モータ走行制御部
10D エンジン走行制御部
10E 走行モード遷移処理部
40 エンジン始動制御部
40A 始動制御部本体
40B 学習補正部
41 状態推定手段
41A モータ実トルク取得手段
41B トルク補正量演算手段
41C 量検出手段
41D 回転数差検出手段
42 締結トルク補正手段
42A 締結トルク増大補正手段
42B 締結トルク減少補正手段
E エンジン
MG モータ
MG モータ実トルク
T1 補正量
TCL2 目標クラッチ伝達トルク指令
ΔN 回転数差
ΔT トルク偏差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから駆動輪までのトルク伝達経路に介装するモータと、エンジンとモータとの間のトルク伝達経路に介装する第1クラッチと、モータと駆動輪との間のトルク伝達経路に介装する第2クラッチと、を備えた車両のエンジン始動制御装置であって、
モータの動力だけで走行している状態でエンジンを始動する場合に、モータを回転数制御すると共に第2クラッチを目標クラッチ伝達トルク指令で滑り締結制御し、かつ第1クラッチを所定のクラッチ伝達トルクで締結制御することで、エンジン始動のためのクランキングを行うエンジン始動制御手段と、
上記クランキング中における第2クラッチの実際の滑り状態を推定する滑り状態推定手段と、
滑り状態推定手段による推定に基づき、上記目標クラッチ伝達トルク指令に対し当該第2クラッチのクラッチ伝達トルクを補正する滑り締結トルク補正手段と、
を備え、
上記滑り状態推定手段は、
上記モータの実トルクを取得するモータ実トルク取得手段と、
上記クランキング中における上記モータの実トルクが、使用可能なモータトルクよりも小さいと判定すると、上記使用可能なモータトルクと上記モータの実トルクとの差分である、トルク偏差量を演算するトルク補正量演算手段と、
上記第2クラッチの入力軸と出力軸との回転数差を検出する滑り量検出手段と、
上記クランキング中における上記第2クラッチの回転数差を検出する回転数差検出手段と、
を備え、
上記滑り締結トルク補正手段は、
エンジン始動制御手段が作動中の第2クラッチのクラッチ伝達トルクを、上記トルク補正量演算手段が算出したトルク偏差量以下の正値である増大補正量分だけ、上記目標クラッチ伝達トルク指令よりも増大補正する滑り締結トルク増大補正手段と、
回転数差検出手段が検出した回転数差が所定回転数以下と判定すると、エンジン始動制御手段が作動中の第2クラッチのクラッチ伝達トルクを、所定の減少補正量分だけ、上記目標クラッチ伝達トルク指令よりも減少補正する滑り締結トルク減少補正手段と、
を備えることを特徴とするエンジン始動制御装置。
【請求項2】
エンジンに第1クラッチを介してモータを連結し、そのモータを第2クラッチを介して駆動輪に連結した車両のエンジン始動制御方法であって、
モータの動力だけで走行している状態でエンジンを始動する場合に、モータを回転数制御すると共に第2クラッチを目標クラッチ伝達トルク指令で滑り締結制御し、かつ第1クラッチを所定のクラッチ伝達トルクで締結制御することで、モータの動力によって車両の走行を確保しつつクランキングしてエンジンの始動を行い、
上記クランキング中における第2クラッチの滑り状態の推定に基づき、エンジンの始動制御中の上記第2クラッチのクラッチ伝達トルクが、第2クラッチの滑り状態が適正に近づくように、上記第2クラッチのクラッチ伝達トルクを上記目標クラッチ伝達トルク指令に対し補正すること特徴とするエンジン始動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−149640(P2010−149640A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328655(P2008−328655)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】