説明

エンジン装置

【課題】動力源としてのエンジン70と、前記エンジン70の排気経路に配置された排気ガス浄化用のフィルタ装置60と、予め設定された低回転条件の成立時にエンジン回転数を所定の第1低回転数まで低下させる低回転制御を実行する制御手段311とを備えているエンジン装置において、低回転制御と強制再生制御との両方を実行できるようにする。
【解決手段】前記制御手段311は、前記低回転条件と予め設定された強制再生条件との両方が成立したときに、排気ガス温度の低下を抑制するために、エンジン回転数を前記第1低回転数より高い第2低回転数に維持するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、作業機(例えば農作業機、建設機械、船舶等)に搭載されるエンジン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインや油圧ショベルといった作業機においては、所定の条件下でエンジン回転数をローアイドル回転数まで自動的に低下させて低燃費化及び低騒音化を図る、いわゆる自動低回転制御(オートデセル制御)の技術が採用されている(特許文献1及び2等参照)。例えば特許文献1には、コンバインにおいて、アイドリング選択スイッチを入り操作した状態のもとで、脱穀装置への動力伝達を継断する脱穀クラッチが切り状態であると共に、走行機体の変速操作を行うための主変速レバーが中立状態になると、エンジン回転数をローアイドル回転数まで低下させることが開示されている。特許文献2には、油圧ショベルの作業部(バケット等)を操作する操作レバーを所定時間継続して操作しない場合に、エンジン回転数をローアイドル回転数まで低下させることが開示されている。
【0003】
また、作業機においては、操縦部内に配置された押しボタン式スイッチの押下操作にて、エンジン回転数をローアイドル回転数まで自動的に低下させて低燃費化及び低騒音化を図る、いわゆる強制低回転制御(ワンタッチデセル制御)の技術を採用したものもある(特許文献3等参照)。
【0004】
他方、ディーゼルエンジンに関する高次の排ガス規制が適用されるのに伴い、ディーゼルエンジンが搭載される作業機に、排気ガス中の大気汚染物質を浄化処理する排気ガス浄化装置を搭載することが要望されつつある。排気ガス浄化装置としては例えばDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)が知られている(特許文献3及び4参照)。DPFでは、経年使用にて排気ガス中の粒子状物質がスートフィルタに堆積するため、ディーゼルエンジンの駆動時に粒子状物質を燃焼除去してスートフィルタを再生させている。よく知られているように、スートフィルタ再生動作は、排気ガス温度が再生可能温度(例えば300℃程度)以上で起こるものである。
【0005】
排気ガス温度が再生可能温度未満である状態が続くと、粒子状物質がスートフィルタ内に大量に堆積する結果、スートフィルタが目詰まりして排圧が上昇し、エンジントラブルを招来することになる。かかる問題を解消する方策の一例としては、粒子状物質堆積量が所定量に達した場合に、ディーゼルエンジンの出力(回転数や負荷)を高めて、DPFに導かれる排気ガス温度を強制的に上昇させ、DPFに捕集された粒子状物質を燃焼除去する強制再生制御が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−25838号公報
【特許文献2】特開平5−312082号公報
【特許文献3】特開平9−88650号公報
【特許文献4】特開2000−145430号公報
【特許文献5】特開2003−27922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の通り、自動低回転制御(オートデセル制御)及び強制低回転制御(ワンタッチデセル制御)はエンジンの出力を下げる制御であるのに対して、強制再生制御はエンジンの出力を上げる制御であり、両者は相反する関係にある。しかし、作業機にDPFを搭載する場合は、各低回転制御と強制再生制御とを両立させる必要がある。本願発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、低回転制御と強制再生制御との両方を実行できるエンジン装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、動力源としてのエンジンと、前記エンジンの排気経路に配置された排気ガス浄化用のフィルタ装置と、予め設定された低回転条件の成立時にエンジン回転数を所定の第1低回転数まで低下させる低回転制御を実行する制御手段とを備えているエンジン装置であって、前記制御手段は、前記低回転条件と予め設定された強制再生条件との両方が成立したときに、排気ガス温度の低下を抑制するために、エンジン回転数を前記第1低回転数より高い第2低回転数に維持するように構成されているというものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載したエンジン装置において、前記制御手段は、前記エンジン回転数を前記第2低回転数にしてから、前記強制再生条件だけが解消したときに、前記エンジン回転数を前記第1低回転数まで低下させるように構成されているというものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載したエンジン装置において、前記制御手段は、前記エンジン回転数を前記第2低回転数にしてから、前記低回転条件及び前記強制再生条件の両方が解消したときに、前記エンジン回転数を前記両条件成立前の元の回転数に戻すように構成されているというものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によると、動力源としてのエンジンと、前記エンジンの排気経路に配置された排気ガス浄化用のフィルタ装置と、予め設定された低回転条件の成立時にエンジン回転数を所定の第1低回転数まで低下させる低回転制御を実行する制御手段とを備えているエンジン装置であって、前記制御手段は、前記低回転条件と予め設定された強制再生条件との両方が成立したときに、排気ガス温度の低下を抑制するために、エンジン回転数を前記第1低回転数より高い第2低回転数に維持するように構成されているから、前記エンジンの出力を下げる低回転制御の実行中であっても、前記フィルタ装置がある程度詰りつつあれば、エンジン回転数を第1低回転数(ローアイドル回転数)より高い第2低回転数(ハイアイドル回転数)に維持することになる。このため、低回転制御による燃費の節約や騒音の抑制を図りつつ、排気ガス温度の低下を抑制して前記フィルタ装置の詰り状態の悪化を防止できる。つまり、低回転制御の機能を損なわない範囲で、前記フィルタ装置の詰りの進行を抑制でき、従って、作業機での燃費節約と排気ガス浄化という2つの利益を享受することが可能になる。低回転制御を実行したために、前記フィルタ装置の詰りが高じて故障するといったトラブルを回避できるという効果を奏する。
【0012】
また、請求項2の発明によると、請求項1に記載したエンジン装置において、前記制御手段は、前記エンジン回転数を前記第2低回転数にしてから、前記強制再生条件だけが解消したときに、前記エンジン回転数を前記第1低回転数まで低下させるように構成されているから、低回転制御による燃費低減効果をより一層向上できるという効果を奏する。
【0013】
更に、請求項3の発明によると、請求項1又は2に記載したエンジン装置において、前記制御手段は、前記エンジン回転数を前記第2低回転数にしてから、前記低回転条件及び前記強制再生条件の両方が解消したときに、前記エンジン回転数を前記両条件成立前の元の回転数に戻すように構成されているから、作業機を発進させる操作や、作業部を駆動させる操作をするだけで、前記エンジンの出力を容易に確保できることになる。従って、低回転制御から復帰する際に、前記第1低回転数(ローアイドル回転数)にて作業機を発進させたり作業部を駆動させたりして、前記エンジンが出力不足又は過負荷で急停止するといった不具合を確実に防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態におけるコンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】走行機体に対するディーゼルエンジンの位置関係を示す正面図である。
【図4】ディーゼルエンジンの吸気マニホールド設置側の側面図である。
【図5】ディーゼルエンジンの排気マニホールド設置側の側面図である。
【図6】ディーゼルエンジンのフライホイール設置側の側面図である。
【図7】ディーゼルエンジンの平面図である。
【図8】DPFの断面説明図である。
【図9】コモンレールシステムの平面説明図である。
【図10】ディーゼルエンジンの上部側の断面説明図である。
【図11】ディーゼルエンジンの燃料系統説明図である。
【図12】自動低回転制御のフローチャートである。
【図13】第2実施形態における油圧ショベルの側面図である。
【図14】油圧ショベルの平面図である。
【図15】ディーゼルエンジンの燃料系統説明図である。
【図16】自動低回転制御のフローチャートである。
【図17】第3実施形態における電子ガバナ式ディーゼルエンジンの排気マニホールド設置側の側面図である。
【図18】電子ガバナ式ディーゼルエンジンの吸気マニホールド設置側の側面図である。
【図19】電子ガバナ式ディーゼルエンジンの平面図である。
【図20】電子ガバナ式ディーゼルエンジンのフライホイール設置側の側面図である。
【図21】電子ガバナ式ディーゼルエンジンの冷却ファン設置側の側面図である。
【図22】電子ガバナコントローラの機能ブロック図である。
【図23】自動低回転制御のフローチャートである。
【図24】第4実施形態における電子ガバナ式コントローラの機能ブロック図である。
【図25】強制低回転制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(1).第1実施形態
図1〜図12は、作業機であるコンバインに本願発明を適用した場合の第1実施形態を示している。なお、図1〜図3までのコンバインに関する説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。これらを便宜的に、コンバインにおける四方及び上下の位置関係の基準としている。
【0017】
(1−1).コンバインの全体構造
まず、図1〜図3を参照しながら、作業機の第1実施形態であるコンバインの全体構造について説明する。コンバインは、左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。この場合、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。走行機体1の後部に旋回可能な穀粒排出オーガ8が設けられている。穀粒タンク7の内部の穀粒が、穀粒排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。脱穀装置5及び穀粒排出オーガ8が作業部に相当するものである。刈取装置3の右側方で且つ穀粒タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
【0018】
運転キャビン10内に操縦ハンドル11及び運転座席12を配置している。なお、図2に示すように、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップ(図示省略)、操縦ハンドル11を設けたハンドルコラム14、運転座席12の左側方のレバーコラム15に設けた変速操作手段としての主変速レバー16、副変速レバー17、作業クラッチ(刈取クラッチ及び脱穀クラッチ、図示省略)を入り切り操作するための作業クラッチレバー18等が配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのディーゼルエンジン70が配置されている。
【0019】
図1に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン70の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。ディーゼルエンジン70の出力がミッションケース19に伝達され、ミッションケース19によってディーゼルエンジン70の出力が変速され、ミッションケース19の変速出力によって走行クローラ2が駆動される。
【0020】
図1及び図2に示されるように、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場の未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置されている。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。ディーゼルエンジン70にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0021】
図1〜図3に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230とを備えている。なお、扱胴226の回転軸はフィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀される。
【0022】
図1及び図2に示されるように、揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。なお、揺動駆動軸242によって、略一定速度で前後及び上下方向に、揺動選別盤227を往復揺動させるように構成されている。扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物は、揺動選別盤227のフィードパン238及びチャフシーブ239によって揺動選別(比重選別)される。
【0023】
揺動選別盤227にて脱穀物が揺動選別されることによって、脱穀物中の穀粒が揺動選別盤227のグレンシーブ240から下方に落下する。グレンシーブ240から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下する。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀筒233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀筒233を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集される。なお、穀粒タンク7の後面の傾斜に沿わせて、揚穀筒233の上端側が後方に傾斜する後傾姿勢で、穀粒タンク7の後方に揚穀筒233が立設されている。
【0024】
また、図1及び図2に示されるように、揺動選別盤227は、揺動選別(比重選別)によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する唐箕ファン228を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下することになる。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、揚穀筒233と交差して前後方向に延びる還元筒236を介して、フィードパン238の上面側に連通接続され、二番物をフィードパン238の上面側に戻して再選別するように構成している。
【0025】
一方、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
【0026】
(1−2).ディーゼルエンジンの全体構造
次に、主として図3〜図7を参照しながら、コモンレール式のディーゼルエンジン70の全体構造について説明する。なお、図4〜図7までのディーゼルエンジン70に関する説明では、走行機体1に対して後向きになるディーゼルエンジン70の吸気マニホールド73設置側を単にディーゼルエンジン70の後側と称し、同じく走行機体1に対して前向きになるディーゼルエンジン70の排気マニホールド71設置側を単にディーゼルエンジン70の前側と称する。
【0027】
図3乃至図7に示す如く、ディーゼルエンジン70におけるシリンダヘッド72の前側面に排気マニホールド71が配置されている。シリンダヘッド72の後側面には吸気マニホールド73が配置されている。シリンダヘッド72は、エンジン出力軸74(クランク軸)とピストン(図示省略)が内蔵されたシリンダブロック75に上載されている。シリンダブロック75の左右両側面から、エンジン出力軸74の左右先端側を突出させている。シリンダブロック75の右側面側には冷却ファン76が設けられている。エンジン出力軸74の右先端側からVベルト77を介して冷却ファン76に回転力を伝達するように構成している。
【0028】
図3〜図7に示す如く、シリンダブロック75の左側面側にフライホイールハウジング78が固着されている。フライホイールハウジング78内にフライホイール79が配置されている。フライホイール79はエンジン出力軸74の左先端側に軸支されている。フライホイール79は、エンジン出力軸74と一体的に回転するように構成されている。走行部(高負荷作業部)としての走行クローラ2、高負荷作業部としての刈取装置3や脱穀装置5、低負荷作業部としての穀粒排出オーガ8等の駆動部に、フライホイール79を介してディーゼルエンジン70の動力を取り出すように構成している。
【0029】
また、シリンダブロック75の下面にはオイルパン81が配置されている。シリンダブロック75の左右側面とフライホイールハウジング78の左右側面とには、機関脚取付部82がそれぞれ設けられている。各機関脚取付部82には、防振ゴムを有する機関脚体83がボルト締結されている。ディーゼルエンジン70は、各機関脚体83を介して、走行機体1に一体形成されたエンジン支持シャーシ84に防振支持される。上記の説明から明らかなように、ディーゼルエンジン70は、フライホイール79が走行機体1の中央側に、冷却ファン77が走行機体1の右側に位置するようにして、運転キャビン10の下方に形成されたエンジンルーム内に配置されている。すなわち、エンジン出力軸74の向きが左右方向に延びるように、ディーゼルエンジン70が配置されている。
【0030】
図3、図4及び図7に示すように、吸気マニホールド73には、EGR装置(排気ガス再循環装置)91及び過給管108を介して、エアクリーナ88が連結される。EGR装置91は、ディーゼルエンジン70の再循環排気ガス(排気マニホールド71からのEGRガス)と新気(エアクリーナからの外部空気)とを混合させて吸気マニホールド73に供給するEGR本体ケース(コレクタ)92と、排気マニホールド71にEGRクーラ94を介して接続する再循環排気ガス管95と、再循環排気ガス管95にEGR本体ケース92を連通させるEGRバルブ96とを有する。
【0031】
EGR本体ケース92内には外気が供給される一方、排気マニホールド71からEGRバルブ96を介してEGR本体ケース92内にEGRガス(排気マニホールド71から排出される排気ガスの一部)が供給される。外気と排気マニホールド71からのEGRガスとがEGR本体ケース92内で混合された後、EGR本体ケース92内の混合ガスが吸気マニホールド73に供給される。すなわち、ディーゼルエンジン70から排気マニホールド71に排出された排気ガスの一部が、吸気マニホールド73からディーゼルエンジン70に還流されることによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が下がり、ディーゼルエンジン70からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減される。
【0032】
図4〜図7に示す如く、シリンダヘッド72の後側面には、ターボ過給機100が取り付けられている。ターボ過給機100は、タービンホイール(図示省略)を内蔵したタービンケース101と、ブロアホイール(図示省略)を内蔵したコンプレッサケース102とを有する。タービンケース101の排気ガス取入れ管105に排気マニホールド71が接続されている。タービンケース101の排気ガス排出管103には、フィルタ装置としてのディーゼルパティキュレートフィルタ60(以下、DPFという)を介して、テールパイプ107が接続される。すなわち、ディーゼルエンジン70の各気筒から排気マニホールド71に排出された排気ガスは、ターボ過給機100及びDPF60等を経由して、テールパイプ107から外部に放出される。
【0033】
一方、コンプレッサケース102の給気取入れ側に、給気管104を介してエアクリーナ88の給気排出側が接続される。コンプレッサケース102の給気排出側に過給管108を介して吸気マニホールド73が接続される。エアクリーナ88の吸気取入れ側は、吸気ダクト89を介してプリクリーナ90に接続される。すなわち、プリクリーナ90及びエアクリーナ88によって除塵された外気は、コンプレッサケース102から過給管108を介して、吸気マニホールド73に送られ、そして、ディーゼルエンジン70の各気筒に供給される。
【0034】
図4〜図7に示すように、フィルタ装置としてのDPF60は、排気ガス中の粒子状物質(PM)等を捕集するためのものであり、シリンダヘッド72における排気マニホールド71の上方に配置されている。実施形態のDPF60は、平面視でエンジン出力軸74と平行な左右方向に長い形態になっている。タービンケース101の排気ガス排出管103に、DPF60の排気ガス取入れ側が連結され、DPF60の排気ガス排出側に、テールパイプ107が接続されている。
【0035】
図8に示すように、DPF60は、耐熱金属材料製のDPFケーシング61に内蔵された略筒型のフィルタケース62,63に、例えば白金等のディーゼル酸化触媒64とハニカム構造のフィルタ体であるスートフィルタ65とを直列に並べて収容した構造になっている。DPFケーシング61の長手方向一端側(右側)は、固定脚体109の上端側が溶接固定されている。固定脚体109の下端側はシリンダヘッド72の前面側にボルト締結されている。つまり、上記したDPF60は、固定脚体109とタービンケース101の排気ガス排出管103とにより、排気マニホールド71の上方に安定的に連結支持されている。
【0036】
DPFケーシング61には、DPF60の詰り状態を検出する詰り検出手段の一例として、圧力センサ66が設けられている(図8参照)。圧力センサ66は、例えばピエゾ抵抗効果を利用した周知構造のものでよい。この場合は、スートフィルタ65に粒子状物質が堆積していないとき(DPF60が新品のとき)におけるスートフィルタ65上流側の圧力Ps(基準圧力値)を、後述する燃料噴射コントローラ311のROM等に予め記憶させておき、同じ測定箇所における現在の圧力Pを圧力センサ66にて検出し、基準圧力値Psと圧力センサ66の検出値Pとの差ΔPを求め、当該圧力差ΔPに基づいてスートフィルタ65の粒子状物質堆積量が換算(推定)される(図12参照)。なお、DPF60のうちスートフィルタ65を挟んで上下流側に、それぞれ圧力センサを配置し、両者の検出値の差からスートフィルタ65の粒子状物質堆積量を換算(推定)するようにしてもよい。
【0037】
上記の構成において、ディーゼルエンジン70の排気ガスは、タービンケース101の排気ガス排出管103から、DPFケーシング61のうちディーゼル酸化触媒64より上流側の空間に流入し、ディーゼル酸化触媒64からスートフィルタ65の順に通過して浄化処理される。排気ガス中の粒子状物質は、この段階でスートフィルタ65における各セル間の多孔質な仕切り壁を通り抜けできずに捕集される。その後、ディーゼル酸化触媒64及びスートフィルタ65を通過した排気ガスがテールパイプ107に放出される。
【0038】
排気ガスがディーゼル酸化触媒64及びスートフィルタ65を通過するに際して、排気ガス温度が再生可能温度(例えば約300℃)を超えていれば、ディーゼル酸化触媒64の作用にて、排気ガス中のNO(一酸化窒素)が不安定なNO(二酸化窒素)に酸化する。そして、NOがNOに戻る際に放出するO(酸素)にて、スートフィルタ65に堆積した粒子状物質が酸化除去されることにより、スートフィルタ65の粒子状物質捕集能力が回復する(スートフィルタ65が再生する)ことになる。
【0039】
(1−3).コモンレールシステム及びディーゼルエンジンの燃料系統構造
次に、図3〜図7及び図9〜図11を参照しながら、コモンレールシステム117とディーゼルエンジン70の燃料系統構造を説明する。図4及び図9に示す如く、ディーゼルエンジン70に設けられた4気筒分の各インジェクタ115に、燃料ポンプ116とコモンレールシステム117とを介して、燃料タンク118が接続されている。各インジェクタ115は、電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ119を有する。コモンレールシステム117は、円筒状のコモンレール120を有する。
【0040】
図4、図9及び図11に示す如く、燃料ポンプ116の吸入側には、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料タンク118が接続される。燃料タンク118内の燃料が、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料ポンプ116に吸い込まれる。一方、燃料ポンプ116の吐出側には、高圧管123を介してコモンレール120が接続される。円筒状のコモンレール120の長手方向の中間に高圧管コネクタ124を設け、高圧管コネクタ124に高圧管123の端部が高圧管コネクタナット125の螺着にて連結されている。
【0041】
また、コモンレール120には、4本の燃料噴射管126を介して4気筒分の各インジェクタ115がそれぞれ接続されている。円筒状のコモンレール120の長手方向に4気筒分の燃料噴射管コネクタ127を設け、燃料噴射管コネクタ127に燃料噴射管126の端部が燃料噴射管コネクタナット128の螺着にて連結されている。
【0042】
上記の構成により、燃料タンク118の燃料が燃料ポンプ116によってコモンレール120に圧送され、高圧の燃料がコモンレール120に蓄えられる。各燃料噴射バルブ119がそれぞれ開閉制御されることによって、コモンレール120内の高圧の燃料が各インジェクタ115からディーゼルエンジン70の各気筒に噴射される。すなわち、各燃料噴射バルブ119を電子制御することによって、各インジェクタ115から供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)を高精度にコントロールできる。このため、ディーゼルエンジン70から排出される窒素酸化物(NOx)を低減できると共に、ディーゼルエンジン70の騒音振動を低減できる。
【0043】
なお、図11に示すように、燃料タンク118にポンプ燃料戻り管129を介して燃料ポンプ116を接続する。円筒状のコモンレール120の長手方向の端部に、コモンレール120内の燃料の圧力を制限する圧力調整バルブ付き戻り管コネクタ130を介して、コモンレール燃料戻り管131を接続する。即ち、燃料ポンプ116の余剰燃料とコモンレール120の余剰燃料が、ポンプ燃料戻り管129とコモンレール燃料戻り管131を介して、燃料タンク118に回収される。
【0044】
さらに、図4及び図10に示す如く、シリンダブロック75の一側方に設けたオイルクーラハウジング132に締結台133を一体的に形成する。また、コモンレール120に締結ボス134を一体的に形成する。レール取付ボルト135によって締結台133に締結ボス134が固着されている。シリンダブロック75の一側方にオイルクーラハウジング132を介してコモンレール120が着脱可能に締結されている。即ち、シリンダブロック75の一側方にコモンレール120が設けられている。吸気マニホールド73の斜め下方の角隅部に近接させてコモンレール120が配置されている。
【0045】
図4及び図10に示す如く、吸気マニホールド73の斜め下方にコモンレール120を並設している。コモンレール120の上面側に配置された燃料噴射管コネクタ127が斜め上方外向きになる姿勢に、コモンレール120を傾倒させるように構成している。したがって、吸気マニホールド73によってコモンレール120の上面側の一部がカバーされるから、ディーゼルエンジン70等の組立分解作業中に、コモンレール120に向けて上方から工具等を落としても、吸気マニホールド73によってコモンレール120の衝突等による損傷を低減できる。また、燃料噴射管コネクタ127に燃料噴射管126を接続させる燃料噴射管コネクタナット128の螺着操作等が簡単に実行できる。燃料噴射管126の配管等の組立分解作業性を向上できる。
【0046】
(1−4).燃料噴射制御を実行するための構造
次に、図11を参照して、燃料噴射制御を実行するための構造を説明する。第1実施形態のコンバインには、制御手段の一例として、ディーゼルエンジン70における各気筒の燃料噴射バルブ119を作動させる燃料噴射コントローラ311が搭載されている。燃料噴射コントローラ311は、各種演算処理や制御を実行するCPUの他、制御プログラムやデータを記憶させる記憶手段としてのROM、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるためのRAM、及び入出力インターフェイス等を備えている。
【0047】
燃料噴射コントローラ311の入力側には、コモンレール120内の燃料圧力を検出するレール圧センサ312と、燃料ポンプ116を回転又は停止させる電磁クラッチ313と、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数(エンジン出力軸74のクランク型カムシャフト位置)を検出するエンジン回転センサ314と、インジェクタ115の燃料噴射回数(1行程の燃料噴射期間中の燃料噴射回数)を検出及び設定する噴射設定器315と、アクセルレバー又はアクセルペダル等のアクセル操作具(図示省略)の操作位置を検出するアクセルセンサ316と、ターボ過給機100の圧力を検出するターボ昇圧センサ317と、吸気マニホールド73の吸気温度を検出する吸気温度センサ318と、ディーゼルエンジン70の冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ319とが接続されている。
【0048】
燃料噴射コントローラ311の出力側には、4気筒分の各燃料噴射バルブ119の電磁ソレノイドがそれぞれ接続されている。すなわち、コモンレール120に蓄えられた高圧燃料が、燃料噴射圧力、燃料噴射時期又は燃料噴射期間を制御しながら、1行程中に複数回に分けて燃料噴射バルブ119から噴射されるように構成されている。このため、窒素酸化物の発生を抑え、且つ、粒子状物質(すす)や二酸化炭素等の発生も低減した完全燃焼を実行して、燃費を向上できることになる。なお、アクセル操作具を手動操作した場合、燃料噴射コントローラ311は、エンジン回転数がアクセル操作具による設定回転数となるように、各燃料噴射バルブ119を電子制御して各インジェクタ115から供給される燃料を調節する。このため、エンジン回転数はアクセル操作具の操作位置に応じた値に保持される。
【0049】
図11に示す如く、燃料噴射コントローラ311の入力側には、作業クラッチレバー18の入り切り操作(脱穀装置5の駆動又は停止)を検出する作業クラッチセンサ331と、穀粒排出オーガ8の作動の有無(穀粒タンク7の穀粒排出作業の有無)を検出する穀粒排出センサ332と、主変速レバー16の操作位置(前進・中立・後進)を検出するポテンショメータ型の変速センサ333と、排気マニホールド71の排気ガス温度を検出する排気温度センサ334と、エンジン回転数をローアイドル回転数まで低下させるオートデセル制御の可否を選択操作する選択操作手段としてのデセルスイッチ335と、走行機体1の車速(移動速度)を検出する車速センサ336と、DPF60の詰り状態を検出する圧力センサ66とがそれぞれ接続されている。
【0050】
また、燃料噴射コントローラ311の出力側には、報知手段としての報知装置337が電気的に接続されている。報知装置337はコンバインの作動状態に応じた視覚的な報知を行うランプであり、各種明滅データは燃料噴射コントローラ311の記憶手段(ROM)に予め記憶されている。なお、報知手段としては視覚的に報知するランプに限らず、ブザーや音声装置、若しくは、文字や記号等を表示する液晶パネルのような表示手段であってもよい。
【0051】
第1実施形態の燃料噴射コントローラ311では、燃料噴射制御の一例として、後述する自動低回転条件の成立時にエンジン回転数を所定の第1低回転数(ローアイドル回転数)まで低下させる自動低回転制御(オートデセル制御)を実行すると共に、前記自動低回転条件及び後述する強制再生条件との両方が成立したときに、排気ガス温度の低下を抑制するために、エンジン回転数をローアイドル回転数より高い第2低回転数(ハイアイドル回転数)に維持するように設定されている。
【0052】
ここで、自動低回転制御(オートデセル制御)とは、前記自動低回転条件が成立したときに、各燃料噴射バルブ119を電子制御して各インジェクタ115から供給される燃料の噴射状態(噴射圧力、噴射時期及び噴射期間等)を調節することによって、エンジン回転数をローアイドル回転数まで自動的に低下させる(ディーゼルエンジン70の出力を下げる)というものである。強制再生制御とは、圧力センサ66及び排気温度センサ334の検出情報に基づき、各燃料噴射バルブ119を電子制御して各インジェクタ115から供給される燃料の噴射状態を調節することによって、ディーゼルエンジン70の出力を上げて排気ガス温度を上昇させ、DPF60(スートフィルタ65)内の粒子状物質を強制燃焼させるというものである。
【0053】
第1実施形態では、デセルスイッチ335を許可(入り)操作した状態のもとで、作業部(脱穀装置5及び穀粒排出オーガ8)が非作動で且つ走行機体1が停止しているときに、前記自動低回転条件が成立する設定になっている。換言すると、第1実施形態での自動低回転条件は、デセルスイッチ335を入り操作することと、作業部(脱穀装置5及び穀粒排出オーガ8)が非作動状態であることと、走行機体1が停止していることとの3つの条件から成り立っている。その上、排気ガス温度の検出値Texが再生可能温度(例えば約300℃)以下で、且つ、圧力センサ66の検出値Pと基準圧力値Psとの圧力差ΔPが限界圧力差値ΔP0以上のときに、前記強制再生条件が成立する設定になっている。つまり、第1実施形態での強制再生条件は、排気ガス温度の検出値Texが再生可能温度(例えば約300℃)以下であることと、圧力センサ66の検出値Pと基準圧力値Psとの圧力差ΔPが限界圧力差値ΔP0以上であることとの2つの条件から成り立っている。
【0054】
また、第1実施形態の燃料噴射コントローラ311は、エンジン回転数をハイアイドル回転数にしてから前記強制再生条件だけが解消したときに、エンジン回転数をハイアイドル回転数からローアイドル回転数まで低下させる一方、エンジン回転数をハイアイドル回転数にしてから、前記低回転条件及び前記強制再生条件の両方が解消したときに、エンジン回転数を両条件成立前の元の回転数に戻すように構成されている。
【0055】
上記の構成により、ディーゼルエンジン70の出力を下げる自動低回転制御の実行中であっても、DPF60(スートフィルタ65)がある程度詰りつつあれば、エンジン回転数をローアイドル回転数より高いハイアイドル回転数に維持することになる。このため、自動低回転制御による燃費の節約や騒音の抑制を図りつつ、排気ガス温度の低下を抑制してDPF60の詰り状態の悪化を防止できる。つまり、自動低回転制御の機能を損なわない範囲で、DPF60の詰りの進行を抑制でき、従って、コンバインでの燃費節約と排気ガス浄化という2つの利益を享受することが可能になる。自動低回転制御を実行したために、DPF60の詰りが高じて故障するといったトラブルを回避できる。
【0056】
また、第1実施形態の燃料噴射コントローラ311は、エンジン回転数をハイアイドル回転数にしてから前記強制再生条件だけが解消したときに、エンジン回転数をハイアイドル回転数からローアイドル回転数まで低下させるように構成されているから、自動低回転制御による燃費低減効果をより一層向上できることになる。更に、第1実施形態の燃料噴射コントローラ311は、エンジン回転数をハイアイドル回転数にしてから、前記低回転条件及び前記強制再生条件の両方が解消したときに、エンジン回転数を両条件成立前の元の回転数に戻すように構成されているから、コンバインを発進させる操作や、作業部(脱穀装置5等)を駆動させる操作をするだけで、ディーゼルエンジン70の出力を容易に確保できることになる。従って、自動低回転制御から復帰する際に、ローアイドル回転数にてコンバインを発進させたり作業部を駆動させたりして、ディーゼルエンジン70が出力不足又は過負荷で急停止するといった不具合を確実に防止できる。
【0057】
(1−5).自動低回転制御の説明
次に、図12のフローチャートを参照しながら、上記した自動低回転制御の一例について説明する。第1実施形態の自動低回転制御は、まず、デセルスイッチ335を入り操作した状態のもとで、作業クラッチレバー18の切り操作(脱穀装置5の停止)が作業クラッチセンサ331にて検出され、穀粒排出オーガ8の停止が穀粒排出センサ332にて検出され、更に、主変速レバー16の中立位置操作(走行機体1の停止)が車速センサ336にて検出されているか否か、すなわち、自動低回転条件が成立しているか否かを判別する(ステップS1)。当該条件が成立していれば(ステップS1:YES)、次いで、排気ガス温度の検出値Texが再生可能温度(例えば約300℃)以下で、且つ、圧力センサ66の検出値Pと基準圧力値Psとの圧力差ΔPが限界圧力差値ΔP0以上か否か、すなわち、強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS2)。
【0058】
強制再生条件が不成立であれば(ステップS2:NO)、後述するステップS7に移行して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を(元の回転数から)ローアイドル回転数まで低下させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知する。強制再生条件が成立しているときは(ステップS2:YES)、スートフィルタ65に粒子状物質がある程度堆積していて、スートフィルタ65再生動作が進行し難い状態にある。そこで、次に、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数をハイアイドル回転数に維持する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS3)、排気ガス温度の低下を抑制してDPF60の詰り状態の悪化を防止するために、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、ローアイドル回転数より高いハイアイドル回転数に維持する(ステップS4)。
【0059】
それから、前述の自動低回転条件が継続して成立しているか否かを判別し(ステップS5)、成立していれば(ステップS5:YES)、前述の強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS6)。強制再生条件が不成立であれば(ステップS6:NO)、スートフィルタ65における粒子状物質の堆積状態がある程度緩和されていることになるので、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数をローアイドル回転数まで低下させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS7)、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を(準低回転数から)ローアイドル回転数まで低下させる(ステップS8)。
【0060】
次いで、ステップS1、S5と同様の自動低回転条件が継続して成立しているか否かを判別し(ステップS9)、成立していれば(ステップS9:YES)、前述のステップS2に戻る。自動低回転条件が不成立であれば(ステップS9:NO)、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を元の回転数に復帰させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS10)、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、両条件(自動低回転条件と強制再生条件)成立前の元の回転数まで戻す(ステップS11)。
【0061】
ステップS5に戻り、自動低回転条件が不成立であれば(ステップS5:NO)、次いで、強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS12)。強制再生条件が成立しているときは(ステップS12:YES)、DPF60の強制再生制御を実行する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS13)、DPF60の強制再生制御を実行する(ステップS14)。すなわち、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70の出力を上げて排気ガス温度を上昇させ、スートフィルタ65内の粒子状物質を強制燃焼させる。次いで、強制再生条件が不成立になれば(ステップS15:NO)、DPF60の強制再生制御を解除する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS16)、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70の出力を、両条件(自動低回転条件と強制再生条件)成立前の元の出力状態に戻す(ステップS17)。
【0062】
ステップS12に戻り、強制再生条件が不成立であれば(ステップS12:NO)、ステップS10に移行して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を元の回転数に復帰させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち、ステップS11において、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、両条件(自動低回転条件と強制再生条件)成立前の元の回転数まで戻すのである。
【0063】
以上の説明から明らかなように、動力源としてのエンジン70と、前記エンジン70の排気経路に配置された排気ガス浄化用のフィルタ装置60と、予め設定された低回転条件の成立時にエンジン回転数を所定の第1低回転数(ローアイドル回転数)まで低下させる低回転制御を実行する制御手段311とを備えているエンジン装置であって、前記制御手段311は、前記低回転条件と予め設定された強制再生条件との両方が成立したときに、排気ガス温度の低下を抑制するために、エンジン回転数を前記第1低回転数(ローアイドル回転数)より高い第2低回転数(ハイアイドル回転数)に維持するように構成されているから、前記エンジン70の出力を下げる低回転制御の実行中であっても、前記フィルタ装置60がある程度詰りつつあれば、エンジン回転数をローアイドル回転数より高いハイアイドル回転数に維持することになる。このため、低回転制御による燃費の節約や騒音の抑制を図りつつ、排気ガス温度の低下を抑制して前記フィルタ装置60の詰り状態の悪化を防止できる。つまり、低回転制御の機能を損なわない範囲で、前記フィルタ装置60の詰りの進行を抑制でき、従って、作業機での燃費節約と排気ガス浄化という2つの利益を享受することが可能になる。低回転制御を実行したために、前記フィルタ装置60の詰りが高じて故障するといったトラブルを回避できるという効果を奏する。
【0064】
また、前記制御手段311は、前記エンジン回転数を前記ハイアイドル回転数にしてから、前記強制再生条件だけが解消したときに、前記エンジン回転数を前記ローアイドル回転数まで低下させるように構成されているから、低回転制御による燃費低減効果をより一層向上できるという効果を奏する。
【0065】
前記制御手段311は、前記エンジン回転数を前記ハイアイドル回転数にしてから、前記低回転条件及び前記強制再生条件の両方が解消したときに、前記エンジン回転数を前記両条件成立前の元の回転数に戻すように構成されているから、作業機を発進させる操作や、作業部(脱穀装置5等)を駆動させる操作をするだけで、前記エンジン70の出力を容易に確保できることになる。従って、低回転制御から復帰する際に、前記ローアイドル回転数にて作業機を発進させたり作業部を駆動させたりして、前記エンジン70が出力不足又は過負荷で急停止するといった不具合を確実に防止できるという効果を奏する。
【0066】
(2).第2実施形態
図13〜図16は、作業機である油圧ショベルに本願発明を適用した場合の第2実施形態を示している。なお、図13及び図14での油圧ショベルに関する説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。これらを便宜的に、油圧ショベルにおける四方及び上下の位置関係の基準としている。
【0067】
(2−1).油圧ショベルの全体構造
図13及び図14を参照しながら、作業機の第2実施形態である油圧ショベルの全体構造について説明する。図13及び図14に示す如く、油圧ショベル400は、左右一対の走行クローラ403を有する履帯式の走行装置402と、走行装置402上に設けられた旋回機体404とを備えている。旋回機体404は、図示しない旋回用油圧モータによって、360°の全方位にわたって水平旋回可能に構成されている。走行装置402の後部には、対地作業用の土工板405が昇降動可能に装着されている。旋回機体404の左側部には、操縦部406とディーゼルエンジン70とが搭載されている。ディーゼルエンジン70及びその補機群の構成は第1実施形態と基本的に同じものなので、第1実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。旋回機体404の右側部には、掘削作業のためのブーム411及びバケット413を有する作業部410が設けられている。
【0068】
操縦部406には、オペレータが着座する操縦座席408と、ディーゼルエンジン70等を出力操作する操作手段や、作業部410用の操作手段としての操作レバー416又はスイッチ等が配置されている。作業部410の構成要素であるブーム411には、ブームシリンダ412とバケットシリンダ414とが配置されている。ブーム411の先端部には、掘削用アタッチメントとしてのバケット413が、掬い込み回動可能に枢着されている。ブームシリンダ412又はバケットシリンダ414を作動させて、バケット413によって土工作業(作溝等の対地作業)を実行するように構成している。
【0069】
(2−2).燃料噴射制御を実行するための構造
次に、図15を参照して、燃料噴射制御を実行するための構造を説明する。第2実施形態の油圧ショベル400に搭載された燃料噴射コントローラ311の基本構成は、第1実施形態のものと同様である。燃料噴射コントローラ311の入力側には、コモンレール120内の燃料圧力を検出するレール圧センサ312と、燃料ポンプ116を回転又は停止させる電磁クラッチ313と、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数(エンジン出力軸74のクランク型カムシャフト位置)を検出するエンジン回転センサ314と、インジェクタ115の燃料噴射回数(1行程の燃料噴射期間中の燃料噴射回数)を検出及び設定する噴射設定器315と、アクセルレバー又はアクセルペダル等のアクセル操作具(図示省略)の操作位置を検出するアクセルセンサ316と、ターボ過給機100の圧力を検出するターボ昇圧センサ317と、吸気マニホールド73の吸気温度を検出する吸気温度センサ318と、ディーゼルエンジン70の冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ319とが接続されている。
【0070】
燃料噴射コントローラ311の出力側には、4気筒分の各燃料噴射バルブ119の電磁ソレノイドがそれぞれ接続されている。すなわち、コモンレール120に蓄えられた高圧燃料が、燃料噴射圧力、燃料噴射時期又は燃料噴射期間を制御しながら、1行程中に複数回に分けて燃料噴射バルブ119から噴射されるように構成されている。
【0071】
図15に示す如く、燃料噴射コントローラ311の入力側には、操作レバー416の操作位置を検出するポテンショメータ型のレバーセンサ433と、排気マニホールド71の排気ガス温度を検出する排気温度センサ334と、エンジン回転数をローアイドル回転数まで低下させるオートデセル制御の可否を選択操作する選択操作手段としてのデセルスイッチ335と、油圧ショベル400の車速(移動速度)を検出する車速センサ336と、DPF60の詰り状態を検出する圧力センサ66とがそれぞれ接続されている。また、燃料噴射コントローラ311の出力側には、各種警報等を視覚的に報知する報知装置337が電気的に接続されている。報知装置337の各種明滅データは燃料噴射コントローラ311の記憶手段(ROM)に予め記憶されている。
【0072】
第2実施形態の燃料噴射コントローラ311も、予め設定された自動低回転条件の成立時にエンジン回転数を所定の第1低回転数(ローアイドル回転数)まで低下させる自動低回転制御(オートデセル制御)を実行すると共に、前記自動低回転条件及び後述する強制再生条件との両方が成立したときに、排気ガス温度の低下を抑制するために、エンジン回転数をローアイドル回転数より高い第2低回転数(ハイアイドル回転数)に維持するように設定されている。
【0073】
第2実施形態では、デセルスイッチ335を許可(入り)操作した状態のもとで、作業部410(ブーム411及びバケット413)が所定時間継続して非作動であるときに、前記自動低回転条件が成立するように設定されている。換言すると、第2実施形態での自動低回転条件は、デセルスイッチ335を入り操作することと、作業部410(ブーム411及びバケット413)が所定時間継続して非作動状態であることとの2つの条件から成り立っている。また、第2実施形態での強制再生条件は、排気ガス温度の検出値Texが再生可能温度(例えば約300℃)以下であることと、圧力センサ66の検出値Pと基準圧力値Psとの圧力差ΔPが限界圧力差値ΔP0以上であることとの2つの条件から成り立っている。
【0074】
(2−3).自動低回転制御の説明
次に、図16のフローチャートを参照しながら、上記した自動低回転制御の一例について説明する。第2実施形態の自動低回転制御は、まず、デセルスイッチ335を入り操作したときに、走行レバー415の位置固定状態(走行装置402の停止)が走行センサ432にて検出され、且つ、操作レバー416の位置固定状態(ブーム及びバケットの停止)がレバーセンサ433にて所定時間継続して検出されているか否か、すなわち、自動低回転条件が成立しているか否かを判別する(ステップS21)。当該条件が成立していれば(ステップS21:YES)、次いで、排気ガス温度の検出値Texが再生可能温度(例えば約300℃)以下で、且つ、圧力センサ66の検出値Pと基準圧力値Psとの圧力差ΔPが限界圧力差値ΔP0以上か否か、すなわち、強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS22)。
【0075】
強制再生条件が不成立であれば(ステップS22:NO)、後述するステップS27に移行して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を(元の回転数から)ローアイドル回転数まで低下させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知する(詳細は後述する)。強制再生条件が成立しているときは(ステップS22:YES)、スートフィルタ65に粒子状物質がある程度堆積していて、スートフィルタ65再生動作が進行し難い状態にある。そこで、次に、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数をハイアイドル回転数に維持する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS23)、排気ガス温度の低下を抑制してDPF60の詰り状態の悪化を防止するために、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、ローアイドル回転数より高いハイアイドル回転数に維持する(ステップS24)。
【0076】
それから、前述の自動低回転条件が継続して成立しているか否かを判別し(ステップS25)、成立していれば(ステップS25:YES)、前述の強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS26)。強制再生条件が不成立であれば(ステップS26:NO)、スートフィルタ65における粒子状物質の堆積状態がある程度緩和されていることになるので、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数をローアイドル回転数まで低下させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS27)、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を(ハイアイドル回転数から)ローアイドル回転数まで低下させる(ステップS28)。
【0077】
次いで、ステップS21、S25と同様の自動低回転条件が継続して成立しているか否かを判別し(ステップS29)、成立していれば(ステップS29:YES)、前述のステップS22に戻る。自動低回転条件が不成立であれば(ステップS29:NO)、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を元の回転数に復帰させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS30)、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、両条件(自動低回転条件と強制再生条件)成立前の元の回転数まで戻す(ステップS31)。
【0078】
ステップS25に戻り、自動低回転条件が不成立であれば(ステップS25:NO)、次いで、強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS32)。強制再生条件が成立しているときは(ステップS32:YES)、DPF60の強制再生制御を実行する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS33)、DPF60の強制再生制御を実行する(ステップS34)。すなわち、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70の出力を上げて排気ガス温度を上昇させ、スートフィルタ65内の粒子状物質を強制燃焼させる。次いで、強制再生条件が不成立になれば(ステップS35:NO)、DPF60の強制再生制御を解除する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS36)、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70の出力を、両条件(自動低回転条件と強制再生条件)成立前の元の出力状態に戻す(ステップS37)。
【0079】
ステップS32に戻り、強制再生条件が不成立であれば(ステップS32:NO)、ステップS30に移行して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を元の回転数に復帰させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち、ステップS31において、各インジェクタ115からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、両条件(自動低回転条件と強制再生条件)成立前の元の回転数まで戻すのである。
【0080】
以上の説明から明らかなように、第2実施形態のように構成した場合も、第1実施形態の場合と同様の作用効果が得られることになる。
【0081】
(3).第3実施形態
図17〜図23は、電子ガバナ式のディーゼルエンジンを搭載した油圧ショベルに本願発明を適用した場合の第3実施形態を示している。油圧ショベル400の構成は第2実施形態と基本的に同じものなので、第2実施形態の符号と同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0082】
(3−1).電子ガバナ式ディーゼルエンジンの全体構造
図17〜図21を参照しながら、電子ガバナ式のディーゼルエンジン570の全体構造について説明する。なお、ディーゼルエンジン570に関する説明では、油圧ショベル400に対して後向きになるディーゼルエンジン570の吸気マニホールド573設置側を単にディーゼルエンジン570の後側と称し、同じく油圧ショベル400に対して前向きになるディーゼルエンジン570の排気マニホールド571設置側を単にディーゼルエンジン70の前側と称する。
【0083】
図17及び図19に示す如く、ディーゼルエンジン570のシリンダヘッド572の前側面に排気マニホールド571が配置されている。シリンダヘッド72の右側面には吸気マニホールド73が配置されている。シリンダヘッド72は、エンジン出力軸74(クランク軸)とピストン(図示省略)を有するシリンダブロック575に上載されている。シリンダブロック575の左右両側面からエンジン出力軸574の左右先端部をそれぞれ突出させている。シリンダブロック575の右側面には冷却ファン576が設けられている。エンジン出力軸574の前端側からVベルト577を介して冷却ファン576に回転力を伝達するように構成している。
【0084】
図17、図18及び図20に示す如く、シリンダブロック575の左側面にフライホイールハウジング578を固着している。フライホイールハウジング578内にフライホイール579を設ける。エンジン出力軸574の左先端側にフライホイール579を軸支させている。油圧ショベルの作業部に、フライホイール579を介してディーゼルエンジン570の動力を取り出すように構成している。
【0085】
また、シリンダブロック75の下面にはオイルパン581が配置されている。オイルパン581内には潤滑油が貯留されている。オイルパン581内の潤滑油は、シリンダブロック575内における右側面寄りの部位に配置されたオイルポンプ656にて吸引され、シリンダブロック75の右側面に配置されたオイルフィルタ657を介して、ディーゼルエンジン570の各潤滑部に供給される。各潤滑部に供給された潤滑油はその後オイルパン581に戻される。オイルポンプ156はエンジン出力軸74の回転にて駆動するように構成されている。
【0086】
シリンダブロック575の後側面のうちオイルフィルタ657の上方(吸気マニホールド573の下方)には、シリンダブロック575内の燃焼室内に燃料を供給するための燃料噴射装置658が取り付けられている。燃料噴射装置658は、燃料噴射量を調整するための電子ガバナ及び燃料フィードポンプ(共に図示省略)を備えている。燃料フィードポンプの駆動にて、燃料タンク内の燃料が燃料フィルタを介して燃料噴射装置658に送り込まれる。
【0087】
シリンダブロック575の右側面側には、冷却水潤滑用の冷却水ポンプ659が冷却ファン576のファン軸620と同軸状に配置されている。冷却水ポンプ659はエンジン出力軸574の回転にて冷却ファン576と共に駆動するように構成されている。油圧ショベルに搭載されたラジエータ(図示省略)内の冷却水が、冷却水ポンプ659の上部に設けられたサーモスタットケース660を介して、冷却水ポンプ659に供給される。そして、冷却水ポンプ659の駆動にて、冷却水がシリンダヘッド572及びシリンダブロック575に形成された水冷ジャケット(図示省略)に供給され、ディーゼルエンジン570を冷却する。ディーゼルエンジン570の冷却に寄与した冷却水はラジエータに戻される。なお、冷却水ポンプ159の左側方にはオルタネータ161が設けられている。
【0088】
シリンダブロック575の前後側面とフライホイールハウジング578の前後側面とには、機関脚取付部582がそれぞれ設けられている。各機関脚取付部582には、防振ゴムを有する機関脚体583がボルト締結されている。ディーゼルエンジン570は、各機関脚体583を介して、油圧ショベルのエンジン支持シャーシ584に防振支持されている。
【0089】
図18に示すように、吸気マニホールド573の入口部は、当該吸気マニホールド573の略中央部から上向きに突出している。そして、吸気マニホールド573の入口部は、EGR装置591(排気ガス再循環装置)を構成するEGR本体ケース592を介してエアクリーナ(図示省略)に連結されている。エアクリーナに吸い込まれた新気(外部空気)は、当該エアクリーナにて除塵・浄化されたのち、EGR装置591を介して吸気マニホールド573に送られ、そして、ディーゼルエンジン570の各気筒に供給される。
【0090】
図18及び図19に示すように、EGR装置591は、ディーゼルエンジン570の排気ガスの一部と新気とを混合させて吸気マニホールド573に供給するEGR本体ケース592と、エアクリーナにEGR本体ケース592を連通させる吸気スロットル弁593と、排気マニホールド571にEGRクーラ594を介して接続される再循環排気ガス管595と、再循環排気ガス管595にEGR本体ケース592を連通させるEGRバルブ596とを備えている。
【0091】
すなわち、吸気マニホールド573と新気導入用の吸気スロットル弁593とがEGR本体ケース592を介して接続されている。そして、EGR本体ケース592には、排気マニホールド571から延びる再循環排気ガス管595の出口側が連通している。図19に示すように、EGR本体ケース592は長筒状に形成されている。吸気スロットル弁593は、EGR本体ケース592の長手方向の一端部にボルト締結されている。EGR本体ケース592のうち吸気スロットル弁593と反対側の部位に形成された下向きの開口端部が、吸気マニホールド573の入口部に着脱可能にボルト締結されている。
【0092】
第3実施形態では、再循環排気ガス管595の出口側が、EGRバルブ596を介してEGR本体ケース592に連結されている。EGRバルブ596は、その開度を調節することにより、EGR本体ケース592へのEGRガスの供給量を調節するものである。EGRバルブ596の外周面から斜め下向きに突出した開口端部がEGR本体ケース592の長手中途部に連結されている。再循環排気ガス管595の入口側は、EGRクーラ594を介して排気マニホールド571の下面側に連結されている。
【0093】
上記の構成により、エアクリーナから吸気スロットル部材593を介してEGR本体ケース592内に新気(外部空気)を供給する一方、排気マニホールド571からEGRバルブ596を介してEGR本体ケース592内にEGRガス(排気マニホールド571から排出される排気ガスの一部)を供給する。エアクリーナからの新気と、排気マニホールド571からのEGRガスとが、EGR本体ケース592内で混合された後、EGR本体ケース592内の混合ガスが吸気マニホールド573に供給される。すなわち、ディーゼルエンジン570から排気マニホールド571に排出された排気ガスの一部が、吸気マニホールド573からディーゼルエンジン570に還流されることによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が低下し、ディーゼルエンジン570からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減される。
【0094】
吸気スロットル弁593は、ディーゼルエンジン570の吸気圧を高めるためのものである。すなわち、粒子状物質(すす)がスートフィルタ65に堆積したときは、吸気スロットル弁593の作動制御にてディーゼルエンジン570の吸気圧を高くすることにより、ディーゼルエンジン570からの排気ガス温度を高温にして、スートフィルタ65に堆積した粒子状物質(すす)が燃焼する。その結果、粒子状物質が消失し、スートフィルタ65が再生することになる。このため、負荷が小さく排気ガスの温度が低くなり易い作業(粒子状物質が堆積し易い作業)を継続して行っても、吸気スロットル弁593による吸気圧の強制上昇にてスートフィルタ65を再生でき、DPF60の排気ガス浄化能力を適正に維持できる。また、スートフィルタ65に堆積したスートを燃やすためのバーナー等も不要になる。
【0095】
図17〜図19に示す如く、DPFケーシング61には、固定脚体109の一端側が溶接固定されている。固定脚体109の他端側は、フライホイールハウジング578の上面に形成されたDPF取付け部622にボルト623にて着脱可能に締結されている。このため、上記したDPF60は、両固定脚体109を介して、高剛性のフライホイールハウジング578に支持されることになる。なお、DPF60の構成は第1及び第2実施形態と基本的に同じものなので、第1及び第2実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0096】
図17に示すように、排気マニホールド571の出口部は、当該排気マニホールド571の左端部側から上向きに突出している。排気マニホールド571の出口部は、ディーゼルエンジン570の排気圧を調節するための排気絞り装置626を介して、DPF60の排気入口側に着脱可能に連結されている。排気マニホールド571の出口部からDPF60内に移動した排気ガスは、DPF60にて浄化されたのち、排気排出側からテールパイプ(図示省略)に移動して、最終的に機外に排出されることになる。
【0097】
(3−2).燃料噴射制御を実行するための構造及びその制御態様
次に、図22及び図23を参照しながら、燃料噴射制御を実行するための構造とその制御態様とについて説明する。DPF60において、排気ガスの浄化性能を適正状態に維持するには、排気ガス温度が所定温度(概ね300℃程度)以上である必要がある。この点、第3実施形態では、吸気スロットル弁593を利用することによって、ディーゼルエンジン570からの排気ガス温度を調節し得るように構成されている。
【0098】
油圧ショベルに搭載された制御手段としての電子ガバナコントローラ611も、第1及び第2実施形態と同様に、予め設定された自動低回転条件の成立時にエンジン回転数を所定の第1低回転数(ローアイドル回転数)まで低下させる自動低回転制御(オートデセル制御)を実行すると共に、前記自動低回転条件及び後述する強制再生条件との両方が成立したときに、排気ガス温度の低下を抑制するために、エンジン回転数をローアイドル回転数より高い第2低回転数(ハイアイドル回転数)に維持するように設定されており、中央演算装置(CPU)や記憶手段等を有している。
【0099】
図22に示すように、電子ガバナコントローラ611には、ディーゼルエンジン570の燃料噴射装置658と、燃料噴射装置658からの燃料噴射量を検出する噴射量検出センサ666と、操作レバー416の操作位置を検出するポテンショメータ型のレバーセンサ433と、排気マニホールド571の排気ガス温度を検出する排気温度センサ334と、エンジン回転数をローアイドル回転数まで低下させるオートデセル制御の可否を選択操作する選択操作手段としてのデセルスイッチ335と、油圧ショベル400の車速(移動速度)を検出する車速センサ336と、DPF60の詰り状態を検出する圧力センサ66と、報知手段としての報知装置337と、正逆回転可能な吸気絞り駆動モータ667に対するモータ駆動回路668と、吸気スロットル弁593の弁開閉角度を検出する角度センサ669とが電気的に接続されている。なお、報知装置337の各種明滅データは電子ガバナコントローラ611の記憶手段に予め記憶されている。
【0100】
この場合、図23のフローチャートに示すように、まず、デセルスイッチ335を入り操作したときに、走行レバー415の位置固定状態(走行装置402の停止)が走行センサ432にて検出され、且つ、操作レバー416の位置固定状態(ブーム及びバケットの停止)がレバーセンサ433にて所定時間継続して検出されているか否か、すなわち、自動低回転条件が成立しているか否かを判別し(ステップS41)、当該条件が成立していれば(ステップS41:YES)、次いで、排気ガス温度の検出値Texが再生可能温度(例えば約300℃)以下で、且つ、圧力センサ66の検出値Pと基準圧力値Psとの圧力差ΔPが限界圧力差値ΔP0以上か否か、すなわち、強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS42)。
【0101】
強制再生条件が不成立であれば(ステップS42:NO)、後述するステップS37に移行して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を(元の回転数から)ローアイドル回転数まで低下させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知する(詳細は後述する)。強制再生条件が成立しているときは(ステップS42:YES)、スートフィルタ65に粒子状物質がある程度堆積していて、スートフィルタ65再生動作が進行し難い状態にある。そこで、次に、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数をハイアイドル回転数に維持する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS43)、排気ガス温度の低下を抑制してDPF60の詰り状態の悪化を防止するために、燃料噴射装置658からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、ローアイドル回転数より高いハイアイドル回転数に維持する(ステップS44)。
【0102】
それから、前述の自動低回転条件が継続して成立しているか否かを判別し(ステップS45)、成立していれば(ステップS45:YES)、前述の強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS46)。強制再生条件が不成立であれば(ステップS46:NO)、スートフィルタ65における粒子状物質の堆積状態がある程度緩和されていることになるので、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数をローアイドル回転数まで低下させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS47)、燃料噴射装置658からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を(準低回転数から)ローアイドル回転数まで低下させる(ステップS48)。
【0103】
次いで、ステップS41、S45と同様の自動低回転条件が継続して成立しているか否かを判別し(ステップS49)、成立していれば(ステップS49:YES)、前述のステップS42に戻る。自動低回転条件が不成立であれば(ステップS49:NO)、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を元の回転数に復帰させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS50)、燃料噴射装置658からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、両条件(自動低回転条件と強制再生条件)成立前の元の回転数まで戻す(ステップS51)。
【0104】
ステップS45に戻り、自動低回転条件が不成立であれば(ステップS45:NO)、次いで、強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS52)。強制再生条件が成立しているときは(ステップS52:YES)、DPF60の強制再生制御を実行する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS53)、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、両条件(自動低回転条件と強制再生条件)成立前の元の回転数まで戻してから、DPF60の強制再生制御を実行する(ステップS54)。すなわち、吸気絞り駆動モータ667の駆動にて吸気スロットル弁593を閉じ作動させる。そうすると、ディーゼルエンジン570の負荷が増大して、エンジン回転数維持のためにディーゼルエンジン570の出力(燃料噴射量)が増大し、その結果、ディーゼルエンジン570からの排気ガス温度が上昇する。そして、スートフィルタ65内の粒子状物質が強制燃焼することになる。次いで、強制再生条件が不成立になれば(ステップS55:NO)、DPF60の強制再生制御を解除する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS56)、吸気絞り駆動モータ667の駆動にて吸気スロットル弁593を開き作動させ、吸気スロットル弁593の弁開閉角度を、閉じ作動前の元の状態にまで戻す(ステップS57)。そうすると、ディーゼルエンジン570の負荷が減少するので、エンジン回転数維持のためにディーゼルエンジン570の出力(燃料噴射量)が減少するのである。
【0105】
ステップS52に戻り、強制再生条件が不成立であれば(ステップS52:NO)、ステップS50に移行して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を元の回転数に復帰させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち、ステップS51において、燃料噴射装置658からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、両条件(自動低回転条件と強制再生条件)成立前の元の回転数まで戻すのである。
【0106】
以上の説明から明らかなように、第3実施形態のように構成した場合も、第1及び第2実施形態の場合と同様の作用効果が得られることになる。
【0107】
(4).第4実施形態
図24及び図25は、電子ガバナ式のディーゼルエンジンを搭載した油圧ショベルに本願発明を適用した場合の第4実施形態を示している。第4実施形態において、油圧ショベル400及びディーゼルエンジン570の構成は第3実施形態と基本的に同じものなので、第3実施形態の符号と同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0108】
(4−1).燃料噴射制御を実行するための構造及びその制御態様
油圧ショベルに搭載された制御手段としての電子ガバナコントローラ611は、強制低回転スイッチ35を入り操作(1回目の押し操作)したとき(強制低回転条件が成立したとき)に、エンジン回転数を所定の第1低回転数(ローアイドル回転数)まで低下させる強制低回転制御(ワンタッチデセル制御)を実行すると共に、前記強制低回転条件及び後述する強制再生条件との両方が成立したときに、後述する強制再生条件が成立していれば、排気ガス温度の低下を抑制するために、エンジン回転数をローアイドル回転数より高い第2低回転数(ハイアイドル回転数)に維持するように設定されている。電子ガバナコントローラ611は中央演算装置(CPU)や記憶手段等を有している(図示省略)。
【0109】
図24に示すように、電子ガバナコントローラ611には、ディーゼルエンジン570の燃料噴射装置658と、燃料噴射装置658からの燃料噴射量を検出する噴射量検出センサ666と、走行レバー415の操作位置を検出するポテンショメータ型の走行センサ432と、操作レバー416の操作位置を検出するポテンショメータ型のレバーセンサ433と、排気マニホールド571の排気ガス温度を検出する排気温度センサ334と、エンジン回転数を所定の第1低回転数(ローアイドル回転数)まで強制的に低下させる強制低回転制御を実行する強制低回転操作手段としての強制低回転スイッチ35と、油圧ショベル400の車速(移動速度)を検出する車速センサ336と、DPF60の詰り状態を検出する圧力センサ66と、報知手段としての報知装置337と、正逆回転可能な吸気絞り駆動モータ667に対するモータ駆動回路668と、吸気スロットル弁593の弁開閉角度を検出する角度センサ669とが電気的に接続されている。なお、報知装置337の各種明滅データは電子ガバナコントローラ611の記憶手段に予め記憶されている。
【0110】
この場合、図25のフローチャートに示すように、まず、強制低回転スイッチ35の1回目の押下操作をしたときに、走行レバー415の位置固定状態(走行装置402の停止)が走行センサ432にて検出され、且つ、操作レバー416の位置固定状態(ブーム411及びバケット413等の停止)がレバーセンサ433にて検出されているか否か、すなわち、強制低回転条件が成立しているか否かを判別する(ステップS61)。当該条件が成立していれば(ステップS61:YES)、次いで、排気ガス温度の検出値Texが再生可能温度(例えば約300℃)以下で、且つ、圧力センサ66の検出値Pと基準圧力値Psとの圧力差ΔPが限界圧力差値ΔP0以上か否か、すなわち、強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS62)。
【0111】
強制再生条件が不成立であれば(ステップS62:NO)、後述するステップS67に移行して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を(元の回転数から)ローアイドル回転数まで低下させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知する(詳細は後述する)。強制再生条件が成立しているときは(ステップS62:YES)、スートフィルタ65に粒子状物質がある程度堆積していて、スートフィルタ65再生動作が進行し難い状態にある。そこで、次に、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数をハイアイドル回転数に維持する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS63)、排気ガス温度の低下を抑制してDPF60の詰り状態の悪化を防止するために、燃料噴射装置658からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、ローアイドル回転数より高いハイアイドル回転数に維持する(ステップS64)。
【0112】
それから、2回目の強制低回転スイッチ35を押し操作したか、若しくは、走行レバー415又は操作レバー416等を操作したか否か、つまり、強制低回転条件が解除されていないかどうかを判別し(ステップS65)、解除されていれば(ステップS65:YES)、前述の強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS66)。強制再生条件が不成立であれば(ステップS66:NO)、スートフィルタ65における粒子状物質の堆積状態がある程度緩和されていることになるので、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数をローアイドル回転数まで低下させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS67)、燃料噴射装置658からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を(ハイアイドル回転数から)ローアイドル回転数まで低下させる(ステップS68)。
【0113】
次いで、2回目の強制低回転スイッチ35を押し操作したか、若しくは、走行レバー415又は操作レバー416等を操作したか否か(強制低回転条件が解除されていないかどうか)を判別し(ステップS69)、解除されていなければ(ステップS69:NO)、前述のステップS62に戻る。強制低回転条件が解除されていれば(ステップS69:YES)、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を元の回転数に復帰させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS70)、燃料噴射装置658からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、両条件(強制低回転条件と強制再生条件)成立前の元の回転数まで戻す(ステップS71)。
【0114】
ステップS65に戻り、2回目の強制低回転スイッチ35を押し操作したか、若しくは、走行レバー415又は操作レバー416等を操作したか否か(強制低回転条件が解除されていないかどうか)が不成立であれば(ステップS65:NO)、次いで、強制再生条件が成立しているか否かを判別する(ステップS72)。強制再生条件が成立しているときは(ステップS72:YES)、DPF60の強制再生制御を実行する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS73)、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、両条件(強制低回転条件と強制再生条件)成立前の元の回転数まで戻してから、DPF60の強制再生制御を実行する(ステップS74)。すなわち、吸気絞り駆動モータ667の駆動にて吸気スロットル弁593を閉じ作動させる。そうすると、ディーゼルエンジン570の負荷が増大して、エンジン回転数維持のためにディーゼルエンジン570の出力(燃料噴射量)が増大し、その結果、ディーゼルエンジン570からの排気ガス温度が上昇する。そして、スートフィルタ65内の粒子状物質が強制燃焼することになる。次いで、強制再生条件が不成立になれば(ステップS75:NO)、DPF60の強制再生制御を解除する旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち(ステップS76)、吸気絞り駆動モータ667の駆動にて吸気スロットル弁593を開き作動させ、吸気スロットル弁593の弁開閉角度を、閉じ作動前の元の状態にまで戻す(ステップS77)。そうすると、ディーゼルエンジン570の負荷が減少するので、エンジン回転数維持のためにディーゼルエンジン570の出力(燃料噴射量)が減少するのである。
【0115】
ステップS72に戻り、強制再生条件が不成立であれば(ステップS72:NO)、ステップS70に移行して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を元の回転数に復帰させる旨を、報知装置337にて所定時間にわたって報知したのち、ステップS71において、燃料噴射装置658からの燃料の噴射状態を調節して、ディーゼルエンジン70のエンジン回転数を、両条件(自動低回転条件と強制再生条件)成立前の元の回転数まで戻すのである。
【0116】
以上の説明から明らかなように、第4実施形態のように構成した場合も、第1〜第3実施形態の場合と同様の作用効果が得られることになる。
【0117】
(5).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば本願発明を適用する作業機のエンジンは、コモンレール式でも電子ガバナ式でもよい。また、本願発明は、第1〜第4実施形態に例示するように、自動低回転制御(オートデセル制御)にも、強制低回転制御(ワンタッチデセル制御)にも適用できる。つまり、本願発明の低回転制御とは、自動低回転制御(オートデセル制御)と強制低回転制御(ワンタッチデセル制御)との両方を含む概念である。強制再生制御のための構成は、燃料噴射量や排気絞り装置を制御するタイプに限らず、油圧機器等を利用してのダミー負荷をエンジンに掛けたり、吸気スロットルを制御したりしてもよい。要は排気ガス温度を強制上昇させ得る構成になっていればよい。更に、農作業機(コンバインやトラクタ等)や建設機械(油圧ショベルやフォークリフト等)に限らず、発電機又は船舶等にも本願発明を適用できる。作業機は、農作業機、建設機械、発電機、船舶等の総称として使用している。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0118】
60 DPF
64 ディーゼル酸化触媒
65 スートフィルタ
66 圧力センサ
70 コモンレール式のディーゼルエンジン
117 コモンレールシステム
311 制御手段としての燃料噴射コントローラ
331 作業クラッチセンサ
332 穀粒排出センサ
333 変速センサ
334 排気温度センサ
335 デセルスイッチ
336 車速センサ
337 音声装置
433 レバーセンサ
570 電子ガバナ式のディーゼルエンジン
593 吸気スロットル弁
658 燃料噴射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としてのエンジンと、前記エンジンの排気経路に配置された排気ガス浄化用のフィルタ装置と、予め設定された低回転条件の成立時にエンジン回転数を所定の第1低回転数まで低下させる低回転制御を実行する制御手段とを備えているエンジン装置であって、
前記制御手段は、前記低回転条件と予め設定された強制再生条件との両方が成立したときに、排気ガス温度の低下を抑制するために、エンジン回転数を前記第1低回転数より高い第2低回転数に維持するように構成されている、
エンジン装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記エンジン回転数を前記第2低回転数にしてから、前記強制再生条件だけが解消したときに、前記エンジン回転数を前記第1低回転数まで低下させるように構成されている、
請求項1に記載したエンジン装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記エンジン回転数を前記第2低回転数にしてから、前記低回転条件及び前記強制再生条件の両方が解消したときに、前記エンジン回転数を前記両条件成立前の元の回転数に戻すように構成されている、
請求項1又は2に記載したエンジン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−12612(P2011−12612A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158143(P2009−158143)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】