エンジン駆動式作業機
【課題】エンジンの負荷に応じて、作業者がエンジンの回転数を簡便に調節できるようにすることで、エンジン駆動式作業機の操作性を高めるとともに、作業効率を高める。
【解決手段】エンジン駆動式作業機10は、作業部15を駆動するエンジン14の実際の回転数を目標回転数に合わせるようにスロットル弁92を電気的に開閉制御するものである。エンジン駆動式作業機は、目標回転数を複数の段階の値に予め設定しておき、その中から任意に選択した1つの目標回転数の値を指示する目標回転数切替操作部65と、この目標回転数切替操作部の指示に基づく1つの目標回転数の値に対して実際の回転数が合うようにスロットル弁を開閉制御する制御部89とを備える。
【解決手段】エンジン駆動式作業機10は、作業部15を駆動するエンジン14の実際の回転数を目標回転数に合わせるようにスロットル弁92を電気的に開閉制御するものである。エンジン駆動式作業機は、目標回転数を複数の段階の値に予め設定しておき、その中から任意に選択した1つの目標回転数の値を指示する目標回転数切替操作部65と、この目標回転数切替操作部の指示に基づく1つの目標回転数の値に対して実際の回転数が合うようにスロットル弁を開閉制御する制御部89とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンで駆動される各種作業部を備えたエンジン駆動式作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンで駆動される作業部を備えた作業機としては、例えば、自走しながらカッタで芝を刈るとともに作業者が歩行しつつ操縦するという、歩行型芝刈機が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−301015号公報
【0003】
特許文献1に示す歩行型芝刈機は、エンジンの出力で走行輪及び芝刈り用カッタが回転することにより、自走しながら芝を刈るものである。作業者が走行用クラッチレバーを操作して、走行用クラッチを遮断・結合させることにより、走行輪を停止状態又は走行状態に切り替えることができる。スロットル弁を、走行用クラッチレバーの切替動作に連動させて一時的に絞ることにより、エンジンの回転数を一時的に減少させることができる。この結果、歩行型芝刈機は低速状態で円滑に発進、停止する。
【0004】
ところで近年、芝刈機や草刈機等の各種のエンジン駆動式作業機において、エンジンに備えた電子式ガバナでスロットル弁を自動的に制御するものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献2】特開平4−350333号公報
【0005】
特許文献2に示す芝刈機や草刈機等のエンジン駆動式作業機は、スロットルレバーを操作して作業をするときに、電子ガバナが負荷の大きさに応じてスロットル弁の開度を自動制御するというものである。更にこのエンジン駆動式作業機は、スロットルレバーから手を放して作業を停止したときに、エンジン回転数が次の(1)又は(2)の状態に戻されるように、スロットル弁を自動的に閉じるようにした構成である。
(1)スロットル弁を全閉位置まで閉じることで、アイドリング回転数に戻す。
(2)スロットル弁を常用位置まで閉じることで、常用最低回転数に戻す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1〜2に示すような各種のエンジン駆動式作業機で作業するときの作業条件は、必ずしも一定ではない。作業条件によっては、作業途中で作業部の負荷が大きく変動することがある。この結果、エンジンにかかる負荷も大きく変動し得る。
【0007】
これに対し、エンジンの負荷に応じて、作業者がスロットルレバーを操作してエンジンの回転数を適宜調節することも考えられる。負荷が小さいときには、エンジンの回転数を下げた状態で作業をしても、エンジン出力は十分である。また、負荷が大きいときには、エンジンの回転数を上げてエンジン出力を高めた状態で、作業をすればよい。
【0008】
しかしながら、作業中においてエンジンの負荷が変動する度に、作業者がスロットルレバーを操作してエンジンの回転数を適切な値に調節するのでは、調節操作が面倒である。また、エンジンの回転数を下げ過ぎた場合には、エンジン出力が過小になってしまい、負荷に対応しきれなくなる。このように、回転数の微妙な調節を適切に行うには、ある程度の熟練を要する。
【0009】
この面倒で熟練を要する調節操作を止めるためには、エンジンの負荷の大きさにかかわらず、エンジンの回転数を常に十分に上げておくことによって、エンジン出力を大きいままで維持させることが考えられる。しかし、負荷が小さいときであっても、エンジンの回転数は大きいままである。この結果、大回転数のときのエンジン騒音が続くことになるので、作業環境を高める上で不利である。しかも、エンジンの燃料消費量を節減する上でも不利である。
【0010】
本発明は、(1)エンジンの負荷に応じて、作業者がエンジンの回転数を簡便に調節できるようにすることで、エンジン駆動式作業機の操作性を高めるとともに、作業効率を高め、さらに(2)エンジン駆動式作業機が発生する騒音を低減して作業環境を高めることができる、技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明では、作業部を駆動するエンジンの実際の回転数を目標回転数に合わせるようにスロットル弁を電気的に開閉制御するエンジン駆動式作業機において、このエンジン駆動式作業機は、目標回転数を複数の段階の値に予め設定しておき、その中から任意に選択した1つの目標回転数の値を指示する目標回転数切替操作部と、この目標回転数切替操作部の指示に基づく1つの目標回転数の値に対して実際の回転数が合うようにスロットル弁を開閉制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明では、請求項1において、複数の目標回転数の値とは、エンジンが最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い目標中速回転数と、目標中速回転数よりも高速でエンジンが最大出力を発生可能な回転数又はその回転数に近い目標高速回転数との、2つであることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2において、エンジン駆動式作業機は、エンジンから作業部へ伝達する出力の遮断・結合を行うクラッチと、このクラッチを操作する作業用クラッチ操作部と、この作業用クラッチ操作部でクラッチの結合操作がされたことを検出する作業用クラッチ操作検出センサとを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明では、請求項3において、制御部は、作業用クラッチ操作検出センサがクラッチの結合操作を検出したときのみ、選択された前記1つの目標回転数の値に基づく制御を実行するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、制御部には複数の目標回転数の値を予め設定しておき、目標回転数切替操作部を操作して、任意に選択した1つの目標回転数を制御部に指示することによって、この1つの目標回転数に対して実際の回転数が合うようにスロットル弁を電気的に開閉制御することができる。従って、作業者は複数の目標回転数の値のうち、単に1つの値を任意に選択して、目標回転数切替操作部を切り替え操作するだけで、選択した値の目標回転数に、極めて簡便に切り替えることができる。このため、作業者はスロットルレバーを操作して、目標回転数の微妙な調節を行う必要はない。
【0016】
このように、作業部の負荷が大きく変動することで、エンジンにかかる負荷が大きく変動した場合であっても、エンジンの負荷に応じて、作業者がエンジンの回転数を簡便に調節することができる。この結果、エンジン駆動式作業機の操作性を高めるとともに、作業効率を高めることができる。さらには、負荷が小さいときには、目標回転数切替操作部を簡便に切り替え操作して、エンジンの回転数を下げることにより、エンジン騒音を低減させることができる。この結果、エンジン駆動式作業機が発生する騒音を低減して作業環境を高めることができる。しかも、負荷が小さいときにエンジンの回転数を下げることにより、エンジンの燃料消費量を節減することができるとともに、作業部が作業中に発する塵埃をも低減することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、目標回転数切替操作部にて切り替えられる複数の目標回転数の値を、目標中速回転数と、目標中速回転数よりも高速である目標高速回転数との、2つに設定したものである。
一般的なエンジンの特性は、回転数の増加に応じて出力が高まるとともに、最大出力を発生可能な回転数よりも低速回転数において最大トルクを発生する特性であることが、知られている。請求項2に係る発明では、目標中速回転数は、エンジンが最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い値に設定される。目標高速回転数は、エンジンが最大出力を発生可能な回転数又はその回転数に近い値に設定される。
【0018】
エンジンの負荷が小さいときには、エンジンの回転数を下げた状態で作業をしても、エンジン出力は十分である。しかも、目標回転数の値を、エンジンが最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い目標中速回転数に設定することにより、大きいトルクで作業部を駆動することができる。このため、作業部の負荷の変動に対して十分に対応することができる(いわゆる、ねばりがある。)。さらには、目標回転数の値を目標中速回転数に切り替えることにより、エンジンの回転数を下げて、エンジン騒音を低減させることができる。
【0019】
一方、エンジンの負荷が大きいときには、目標回転数の値を目標高速回転数に切り替えることによりエンジンの回転数を上げて、エンジン出力を高めた状態で、作業を効率良く行うことができる。
このように、エンジン駆動式作業機の作業途中にエンジンの負荷が大きく変動した場合に、作業者は負荷に応じて、エンジンの回転数を中速と高速との2段階に簡便に設定することができる。しかも、目標回転数切替操作部で変更する速度設定は2段階だけであるから、極めて容易に変更操作できる。
【0020】
請求項3に係る発明では、エンジンと作業部との間に介在されたクラッチを、作業用クラッチ操作部で結合操作をしたときに、この結合操作があったことを作業用クラッチ操作検出センサにて検出することができる。このため、エンジンの出力による作業部の作業状態を確実に検出することができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、作業用クラッチ操作検出センサがクラッチの結合操作を検出したとき、すなわち、作業用クラッチ操作部にてクラッチの結合操作がされたと、制御部が判断したときだけ、選択された1つの目標回転数に対して実際の回転数が合うように、スロットル弁を電気的に開閉制御することができる。このため、作業者にとって不必要に目標回転数の値が変更されることを、防止できる。従って、作業部による作業の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向に従う。
以下、エンジン駆動式作業機の一例として歩行型芝刈機を挙げて、第1実施例を図1〜図9に基づき説明する。
【0023】
図1は本発明に係る歩行型芝刈機を示す左側面図である。
歩行型芝刈機10は、下面を開放したハウジング11の前後端にそれぞれ左右の前輪12および左右の後輪13(駆動輪13)を備え、ハウジング11の上部にエンジン14を搭載し、ハウジング11の内部にカッタ15を備え、ハウジング11の刈芝排出口11aに芝収容バッグ16を備え、ハウジング11から後上方に向けてハンドル17を延ばし、ハンドル17の後端部に操作部18を備えたものである。
【0024】
上述のように、ハウジング11は前輪12、後輪13、エンジン14等の主要部材を設けているので、歩行型芝刈機10の機体(フレーム)の役割をも果たす。芝収容バッグ16は刈った芝を収容する収容体である。
【0025】
エンジン14は、下端部から下方へ出力軸19を延ばし、出力軸19の下端部に作業用ブレーキ/クラッチ部21を介してカッタ15を取り付けた動力源である。カッタ15(刈刃15)は芝刈り作業をするための作業部である。
さらに、エンジン14は、出力軸19を伝動機構22を介して油圧無段変速装置25(以下、単に「変速装置25」と言う。)の入力側に連結したものである。変速装置25の出力軸は車軸26を介して後輪13に連結されている。
【0026】
作業用ブレーキ/クラッチ部21は、エンジン14からカッタ15へ伝達する出力の遮断・結合を行うクラッチ部分と、クラッチを遮断(クラッチオフ。出力の伝達を遮断)したときにカッタ15を制動するブレーキ部分とを組み合わせた、複合的な構成である。以下、作業用ブレーキ/クラッチ部21のことを単に「クラッチ21」と言うことにする。
【0027】
変速装置25は、ケースに図示せぬ変速斜板が内蔵され、この変速斜板に変速用アーム25aが連結され、この変速用アーム25aに変速用ケーブル27を介して変速レバー62が連結された、周知の構成である。
すなわち、変速装置25は、後輪13の回転数を零(停止)から高速回転域まで無段階に変速するものである。このように変速装置25は、エンジン14から後輪13へ伝達する出力の遮断・結合を行う(つまり、遮断することで後輪13を停止させ、結合することで後輪13を回転させる)という、いわゆるクラッチ機能を有している。
【0028】
次にハンドル17周りについて説明する。
ハンドル17は、ハウジング11から後上方に延びる左右のハンドルバー31,32と、左右のハンドルバー31,32に架け渡したグリップ部33とからなる。
左右のハンドルバー31,32は、後端部31a,32aに左右の取付ブラケット38,39を備え、これらの取付ブラケット38,39に作業用クラッチレバー41および走行レバー42を前後へ揺動自在に取り付けた構成である。
【0029】
作業用クラッチレバー41および走行レバー42は、手で前方へ揺動操作してグリップ部33と共に握ることができ、操作する手を離したときに自動的に元の位置へ復帰する、自動復帰式操作部材である。
左ハンドルバー31は、後端部31aに操作部18およびカバー71を備えたものである。
【0030】
図2は本発明に係る歩行型芝刈機の模式的系統図である。
先に、操作部18について説明する。操作部18は、変速レバー62、メインスイッチ64、回転モード切替スイッチ65および作業用クラッチ操作検出センサ68を備える。
【0031】
変速レバー62は、変速装置25を変速操作するものであって、走行レバー42に第2引張りばね106を介して接続するとともに、変速用ケーブル27を介して変速装置25に連結した構成である。
走行レバー42を操作したときに、変速装置25は変速レバー62の変速操作位置に応じた速度で後輪13を回転させる。その後、走行レバー42を元に戻すと、変速装置25の出力回転は零になり、後輪13を停止させる。
【0032】
メインスイッチ64は、エンジン14の電源系統をオン、オフするためのロータリスイッチであり、オフ位置からオン位置へ操作することでエンジン14の始動に備えるとともに、オン位置からオフ位置へ戻すことでエンジン14を停止させることができる。
【0033】
回転モード切替スイッチ65は、エンジン14の目標回転数を複数の段階の値に予め設定しておいた中から、任意に選択した1つの目標回転数の値を指示するための目標回転数切替操作部65(目標回転数選択部)である。より具体的に説明すると、回転モード切替スイッチ65は、エンジン14の制御モードを後述する「静音モード」と「パワーモード」とに切り替えるものであり、例えばシーソースイッチ(「タンブラスイッチ」、「rocker switch」とも言う。)からなる。
【0034】
作業用クラッチ操作検出センサ68は、作業用クラッチレバー41(つまり、作業用クラッチ操作部41)によってクラッチ21の結合操作がされたことを検出するものであり、例えばスイッチからなる。作業用クラッチレバー41を操作し、クラッチ用ケーブル122を介してクラッチ21を結合(クラッチオン)したときに、作業用クラッチ操作検出センサ68は結合操作がされたことを検出する。
【0035】
次に、エンジン14の系統について説明する。
エンジン14はリコイルスタータ81、点火装置82、スロットル弁用制御モータ83、モータ用ドライバ84、スロットル開度センサ85、エンジン回転センサ86、発電機87、電源回路88および制御部89を備える。なお、エンジン14はバッテリを備えていない。
【0036】
リコイルスタータ81は、作業者がエンジン14を手動で始動させる始動装置であり、例えばエンジン14のフライホイールの先端に設けたものである。点火装置82は、図示せぬ点火コイル並びに点火プラグからなる。
【0037】
スロットル弁用制御モータ83(以下「制御モータ83」と言う。)は、エンジン吸気系91に備えたスロットル弁92を開閉駆動するアクチュエータであり、例えばステップモータからなる。モータ用ドライバ84は、制御部89の制御信号に基づいて制御モータ83を電気的にオン・オフ駆動するものである。
【0038】
スロットル開度センサ85は、スロットル弁92の開度を検出し、検出信号を制御部89に発するものである。エンジン回転センサ86は、エンジン14の回転数(回転速度)を検出し、検出信号を制御部89に発するものである。
発電機87は、エンジン14の出力の一部によって交流電力を発電するオルタネータであり、例えばフライホイールに設けたものである。電源回路88は、発電機87で発電された交流電力を整流して直流電力に変換した上で、点火装置82や制御部89等の電装品に供給するものである。
【0039】
制御部89はメインスイッチ64、回転モード切替スイッチ65、作業用クラッチ操作検出センサ68、スロットル開度センサ85、エンジン回転センサ86の各信号を受けて、エンジン14を所定の制御モードで制御する電子制御ユニットであり、例えばマイクロコンピュータからなる。つまり制御部89は、点火装置82を制御し、さらに、検出されたエンジン14の回転数およびスロットル弁92の開度の各データに基づき、所定の制御モードで制御モータ83を介してスロットル弁92の開度を制御することで、エンジン14の回転数が目標回転数と一致するように電気的に制御するものである。
【0040】
以上の説明から明らかなように、エンジン14は電子式ガバナ80(電気式ガバナ、電子式調速機とも言う。)を搭載したことを特徴とする。電子式ガバナ80は、制御部89の制御信号に基づいて、制御モータ83でスロットル弁92の開度を自動的に調整することにより、エンジン14の回転数を制御するものであって、制御モータ83、モータ用ドライバ84、スロットル開度センサ85、エンジン回転センサ86、制御部89およびスロットル弁92の組合せからなる。
【0041】
ところで、制御部89によってエンジン14の回転数を制御する制御モードには、大きく分けて3つの回転制御モードがある。これらの回転制御モードについて、次のように定義する。
第1の回転制御モードは、アイドリング状態のエンジン回転数に制御する「アイドルモード」である。第2の回転制御モードは、エンジン14で発するトルクが最大又は概ね最大のときのエンジン回転数に制御する「静音モード」である。第3の回転制御モードは、エンジン14で発する出力が最大又は概ね最大のときのエンジン回転数に制御する「パワーモード」である。
【0042】
ここで、エンジン14の特性について図3に基づき説明する。
図3は本発明に係るエンジンの特性図であり、横軸をエンジンの回転数とし、左の縦軸をエンジンの出力とし、右の縦軸をエンジンのトルクとして、エンジンの回転数に対する出力の特性およびトルクの特性を示したものである。
曲線Pwは、エンジン14(図2参照)の回転数に対する出力の特性を示す出力特性曲線である。曲線Tqは、エンジン14の回転数に対するトルクの特性を示すトルク特性曲線である。
【0043】
出力特性曲線Pwによれば、エンジン14の回転数の増加に応じて出力が高まることが判る。
また、トルク特性曲線Tqによれば、最大出力を発生可能な回転数よりも低速回転数NMにおいて最大トルクを発生する特性であることが判る。つまり、トルク特性曲線Tqは、低速回転数NMにおいて最大トルクとなる略山形状の曲線である。
このようなエンジン14の特性は一般的なエンジンの特性と同様である。
【0044】
以下、本発明においては、エンジン14のアイドリング状態におけるエンジンの回転数NLのことを、「目標低速回転数NL」と言うことにする。エンジン14で発するトルクが最大Tmax又は概ね最大のときのエンジンの回転数NM(つまり、上記低速回転数NM)のことを、「目標中速回転数NM」と言う。目標中速回転数NMよりも高速であって、エンジン14が最大出力を発生可能なエンジンの回転数NH又はその回転数に近い値のことを、「目標高速回転数NH」と言う。
【0045】
次に、図1に示すハンドル17周りの各部材および操作部18の詳細な構成について説明する。
図4は本発明に係る歩行型芝刈機のハンドルの後部周りを右前上方から見た斜視図であり、作業用クラッチレバー41および走行レバー42を握った状態を表したものである。
図5は図4の5矢視図であり、作業用クラッチレバー41および走行レバー42を握った状態を表したものである。
図6は図4の6矢視図であり、作業用クラッチレバー41および走行レバー42から手を離した状態を表したものである。
【0046】
図4に示すように、正面視門形状のグリップ部33は、左右のハンドルバー31,32の後端部31a,32aから前上方へ延びた左右のグリップ脚部34,35と、左右のグリップ脚部34,35の上端部間に架け渡したグリップ水平バー36とからなる。
【0047】
図4〜図6に示すように、作業用クラッチレバー41は、グリップ部33の後面に概ね沿うように正面視門形状を呈した操作部材であり、左右の脚部44,45と水平バー46とからなる。
図6に示すように、この作業用クラッチレバー41は、押し下げ操作するためのロック解除ノブ113と、ロック解除ノブ113の降下に連動して降下する操作ロッド114と、操作ロッド114に連動して後方へ揺動する係合部材115と、揺動した係合部材115に係合するクラッチアーム121と、クラッチアーム121に一端を連結したクラッチ用ケーブル122とを備える。
【0048】
ロック解除ノブ113を押しながら作業用クラッチレバー41を前方へ揺動操作することにより、クラッチ用ケーブル122を後方に牽引することができる。この結果、クラッチ21(図1参照)は結合状態になる。
【0049】
図4〜図6に示すように、走行レバー42は、作業用クラッチレバー41の後面に概ね沿うように正面視門形状を呈した操作部材であり、左右の脚部52,54と水平バー55とからなる。
【0050】
図4に示すように、作業用クラッチレバー41における左の脚部44に対して、走行レバー42における左の脚部52は機体幅中心寄りの位置にある。このため、グリップ部33に対して作業用クラッチレバー41および走行レバー42を重ねたときに、左の脚部44,52間には間隔SPの操作空間56を有する。作業者は、操作空間56の部位において、左手57で左のグリップ脚部34と作業用クラッチレバー41の左の脚部44とを、いっしょに握ることができる。
一方、作業者は右手58で、グリップ水平バー36と、作業用クラッチレバー41の水平バー46と、走行レバー42の水平バー55とを、いっしょに握ることができる。
【0051】
図4および図6に示すように、変速レバー62は概ね円盤状のディスク部94と、ディスク部94から上方へ延びた操作レバー部95とからなる。
ディスク部94は側部に変速レバーアーム63を重ね合わせた状態で、共に支持ピン96を介して左のハンドルバー31へ前後に揺動可能に取り付けた構成である。変速レバーアーム63は下方へ延びた細長い部材であり、ディスク部94に対して相対的に前後に揺動可能である。
【0052】
図6に示すように、ディスク部94は、支持ピン96を中心とする細長い湾曲状の第1ガイド孔98を有する。第1ガイド孔98は、半径が後端部でR1となり、前端部で径R2となるように形成されている。後端部の半径R1と、前端部の半径R2とを比較すると、R1<R2の関係が成立する。すなわち、第1ガイド孔98の半径は、後端部から前端部に向かって徐々に大きくなるように形成されている。
【0053】
変速レバーアーム63は、第1ガイド孔98に略直交した鉛直方向に細長い第2ガイド孔99を有する。
変速用ケーブル27は、インナケーブル27aの一端に備えた連結ピン101を第1のガイド孔98および第2のガイド孔99に嵌合したものである。
【0054】
図4および図6に示すように、変速レバーアーム63の先端部は、変速レバーアーム63よりも前方に配置されている支持アーム102に第1引張りばね103を掛けるとともに、変速レバーアーム63よりも後方に配置されている走行アーム105に第2引張りばね106を介して連結した構成である。
支持アーム102は、左ハンドルバー31に備えた固定部材である。第1引張りばね103は、変速レバーアーム63を図4および図6に示す走行停止位置へ自動復帰させるための、リターンスプリングである。走行アーム105は、走行レバー42に備えたスイング部材であり、走行レバー42と共に前後に揺動可能である。
【0055】
なお、図4および図5に示すように、操作部18は、左ハンドルバー31における後端部31aの近傍に且つ左のグリップ脚部34の近傍にメインスイッチ64を配置し、メインスイッチ64の右方に回転モード切替スイッチ65を配置し、メインスイッチ64の右前方に且つ回転モード切替スイッチ65の左前方に変速レバー62を配置したものである。
【0056】
回転モード切替スイッチ65は、操作ノブ65aの前部65bが押し込まれた状態でオフ信号(「パワーモード」切り替え信号)を発するとともに、操作ノブ65aの後部65cが押し込まれた状態でオン信号(「静音モード」切り替え信号)を発する。
【0057】
次に、上記図2に示す制御部89をマイクロコンピュータとした場合の制御フローについて、図7〜図8に基づき説明する。図中、ST××はステップ番号を示す。特に説明がないステップ番号については、番号順に進行する。以下、図2および図3を参照しつつ説明する。
【0058】
図7は本発明に係るエンジンの始動操作時点から制御部が制御処理を実行するまでの一連の手順を示すフローチャートである。
ST01;作業者がメインスイッチ64をオン操作する。
ST02;メインスイッチ64のオン状態において、作業者がリコイルスタータ81のノブ81aを引張ることで、リコイルスタータ81を始動操作する。
ST03;リコイルスタータ81の始動操作により、エンジン14が始動する。
ST04;エンジン14の始動に伴い、発電機87が発電を開始する。
ST05;発電機87の出力電圧が一定以上の安定した電圧になることで、発電機87から供給される電力によって制御部89が自動的に起動する。
ST06;制御部89は所定の制御を開始する前の、初期設定の処理を実行する。
ST07;この時点から、制御部89はエンジン回転数制御処理を自動的に実行する。このエンジン回転数制御処理を具体的に実行するための具体的な制御フローについては、次の図8に示す。
【0059】
図8は本発明に係る制御部の制御フローチャートであり、制御部89が上記図7に示すステップST07の「エンジン回転数制御処理」を実行するための、基本的な制御フローを示す。
【0060】
ST11;各スイッチのスイッチ信号を読み込む。具体的には、回転モード切替スイッチ65、回転数変更スイッチ66および作業用クラッチ操作検出センサ68の信号を読み込む。
ST12;作業用クラッチレバー41がオフ位置にあるか否かを調べ、YESなら「アイドルモード」であると判断してST13に進み、NOならST14に進む。図6に示すように、作業者が作業用クラッチレバー41から手を離しているときの位置が、オフ位置である。作業用クラッチレバー41の位置については、作業用クラッチ操作検出センサ68(図2参照)の検出信号によって判断する。
【0061】
ST13;エンジン14の回転制御モードが「アイドルモード」に移行したので、エンジン14の目標回転数Ntを目標低速回転数NLの値に設定する。目標低速回転数NLは、予め設定されている一定の回転数であり、エンジン14のアイドリング状態の回転数に相当する。
ST14;エンジン14の回転制御モードが「静音モード」であるか否かを調べ、YESならST15に進み、NOなら「パワーモード」であると判断してST16に進む。このST14では、回転モード切替スイッチ65がオンであるときにYESの判断になり、回転モード切替スイッチ65がオフであるときにNOの判断になる。
【0062】
ST15;エンジン14の回転制御モードが「静音モード」に移行したので、エンジン14の目標回転数Ntを目標中速回転数NMの値に設定する。目標中速回転数NMは、予め設定されている一定の回転数であり、エンジン14で発するトルクが最大又は概ね最大のときのエンジン回転数に相当する。
ST16;エンジン14の回転制御モードが「パワーモード」に移行したので、エンジン14の目標回転数Ntを目標高速回転数NHの値に設定する。目標高速回転数NHは、予め設定されている一定の回転数であり、エンジン14で発する出力が最大又は概ね最大のときのエンジン回転数に相当する。
【0063】
ここで、目標低速回転数NLよりも目標中速回転数NMが大きく、この目標中速回転数NMよりも目標高速回転数NHが大きい(NL<NM<NH)。
【0064】
ST17;エンジン14の実際の回転数Nr(以下「実回転数Nr」と言う。)を計測する。実回転数Nrについては、エンジン回転センサ86で計測すればよい。
ST18;実回転数Nrが目標回転数Ntを下回っているか否かを調べ、YESならST19に進み、NOならST20に進む。
【0065】
ST19;制御モータ83を正転駆動させることにより、スロットル弁92を開駆動する。この結果、実回転数Nrは増大する。
ST20;制御モータ83を逆転駆動させることにより、スロットル弁92を閉駆動する。この結果、実回転数Nrは減少する。
ST21;メインスイッチ64のスイッチ信号を読み込む。
ST22;メインスイッチ64がオンであるか否かを調べ、YESならエンジン14の作動を続行すると判断してST11に戻り、NOならエンジン14の停止指令があったと判断してST23に進む。
ST23;エンジン14を停止させた後に、この制御フローによる制御を終了する。
【0066】
次に、上記図8の制御フローチャートで説明した歩行型芝刈機10(エンジン駆動式作業機10)の作用を、図2を参照しつつ図9に基づいて説明する。
図9は本発明に係る歩行型芝刈機の作用説明図であり、横軸を時間としたタイムチャートで各部の作用を示す。
【0067】
作業用クラッチレバー41がオフ位置にあるときには、回転モード切替スイッチ65の作動にかかわらず、エンジン14の回転制御モードは「アイドルモード」である(図8のST12)。このため、エンジン14の目標回転数Ntは目標低速回転数NLの値を持続する(図8のST13)。
【0068】
回転モード切替スイッチ65がオン状態であるときに、時点t1において作業用クラッチレバー41をオン位置に操作すると、エンジン14の回転制御モードは「静音モード」に変わる(図8のST12、ST14)。このため、エンジン14の目標回転数Ntは目標中速回転数NMの値に変わる(図8のST15)。
【0069】
その後、時点t2において、回転モード切替スイッチ65をオフにすると、エンジン14の回転制御モードは「パワーモード」に変わる(図8のST14)。このため、エンジン14の目標回転数Ntは目標高速回転数NHの値に変わる(図8のST16)。
【0070】
その後、時点t3において、作業用クラッチレバー41をオフ位置に操作すると、エンジン14の回転制御モードは「アイドルモード」に変わる(図8のST12)。このため、エンジン14の目標回転数Ntは目標低速回転数NLの値に変わる(図8のST13)。
【0071】
次に、エンジン駆動式作業機の一例として歩行型耕耘機を挙げて、第2実施例を図10〜図13に基づき説明する。なお、上記図1〜図9に示す第1実施例と同様の構成並びに作用については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図10は本発明に係る歩行型耕耘機を示す左側面図である。図11は本発明に係る歩行型耕耘機の模式的系統図である。
図10および図11に示すように歩行型耕耘機200は、ケース201の上部に搭載したエンジン14と、ケース201内でエンジン14の出力軸19にクラッチ202を介して連結した動力伝達機構203と、動力伝達機構203に連結して左右に延びる水平な耕耘軸204と、耕耘軸204に設けた第1耕耘爪205・・・並びに第2耕耘爪206・・・と、ケース201の後部から下方へ延びる抵抗棒207を備える。
【0073】
上述のように、ケース201はエンジン14、動力伝達機構203、第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・、抵抗棒207等の主要部材を設けているので、歩行型耕耘機200の機体(フレーム)の役割をも果たす。
【0074】
クラッチ202は、エンジン14から第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・へ伝達する出力の遮断・結合を行うものである。動力伝達機構203は、エンジン14の出力を耕耘軸204へ伝達するための、伝動軸211およびベベルギヤ機構212からなる。第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・は耕耘作業をするための作業部である。抵抗棒207は、土中に差込んで第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・による耕深量を設定するとともに、第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・の牽引力に対する抵抗力を付加する棒である。
【0075】
このような構成の歩行型耕耘機200は、第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・の回転により耕耘し、さらに第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・にて走行する形式の、小型の歩行型自走式耕耘機であり、フロントタイン式管理機と称する。
【0076】
さらに歩行型耕耘機200は、図10に示すようにケース201の後部から後上方に向けて左右一対のハンドル221を延ばし、これら左右のハンドル221の後端にグリップ222を備え、さらに、左のハンドル221の後端部に操作部230を備えたものである。
【0077】
次に、左のハンドル221の後部周りおよび操作部230の詳細な構成について説明する。
図12は本発明に係る左のハンドルの後部周りの左側面図である。図13は本発明に係る左のハンドルの後部周りの平面図である。
図12および図13に示すように、操作部230は、左のハンドル221のうちグリップ222の近傍に配置したものであり、メインスイッチ64、回転モード切替スイッチ65、作業用クラッチレバー231(つまり、作業用クラッチ操作部231)、作業用クラッチ操作検出センサ68およびカバー232を備える。
【0078】
作業用クラッチレバー231は、グリップ222と共に握ることによってクラッチ操作する操作部材であり、クラッチ用ケーブル233を介してクラッチ202に連結されている。すなわち、この作業用クラッチレバー231は、上記図1〜図9に示す作業用クラッチレバー41と同様にクラッチ202を操作する部材である。
【0079】
作業用クラッチ操作検出センサ68は、作業用クラッチレバー231によってクラッチ202の結合操作がされたことを検出するものであり、例えばスイッチからなる。作業用クラッチレバー231を操作し、クラッチ用ケーブル233を介してクラッチ202を結合(クラッチオン)したときに、作業用クラッチ操作検出センサ68は結合操作がされたことを検出して、図11に示す制御部89へ検出信号を発する。
【0080】
図12に示すように、作業者が作業用クラッチレバー231から手を離しているときに、作業用クラッチレバー231はオフ位置にある。一方、作業者がグリップ222と共に作業用クラッチレバー231を握って矢印UP方向へ揺動したときに、作業用クラッチレバー231はオン位置にある。
【0081】
図10に示すように歩行型耕耘機200に搭載された制御部89は、上記図7および図8に示す構成並びに作用を有する。従って、歩行型耕耘機200は上記図9に示す作用をなすことになる。
【0082】
以上の説明をまとめると、次の通りである。
本発明では、制御部89には複数の目標回転数Ntの値を予め設定しておき、目標回転数切替操作部65(回転モード切替スイッチ65)を操作して、任意に選択した1つの目標回転数Ntを制御部89に指示することによって、この1つの目標回転数Ntに対して実回転数Nrが合うようにスロットル弁92を電気的に開閉制御することができる。従って、作業者は複数の目標回転数Ntの値のうち、単に1つの値を任意に選択して、目標回転数切替操作部65を切り替え操作するだけで、選択した値の目標回転数Ntに、極めて簡便に切り替えることができる。このため、作業者はスロットルレバーを操作して、目標回転数Ntの微妙な調節を行う必要はない。
【0083】
このように、作業部15,205,206の負荷が大きく変動することで、エンジン14にかかる負荷が大きく変動した場合であっても、エンジン14の負荷に応じて、作業者が実回転数Nrを簡便に調節することができる。この結果、エンジン駆動式作業機10,200の操作性を高めるとともに、作業効率を高めることができる。さらには、負荷が小さいときには、目標回転数切替操作部65を簡便に切り替え操作して、実回転数Nrを下げることにより、エンジン騒音を低減させることができる。この結果、エンジン駆動式作業機10,200が発生する騒音を低減して作業環境を高めることができる。しかも、負荷が小さいときに実回転数Nrを下げることにより、エンジン14の燃料消費量を節減することができるとともに、作業部15,205,206が作業中に発する塵埃をも低減することができる。
【0084】
さらに本発明では、目標回転数切替操作部65にて切り替えられる複数の目標回転数Ntの値を、目標中速回転数NMと、この目標中速回転数NMよりも高速である目標高速回転数NHとの、2つに設定したものである。
目標中速回転数NMは、エンジン14が最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い値に設定される。目標高速回転数NHは、エンジン14が最大出力を発生可能な回転数又はその回転数に近い値に設定される。
【0085】
エンジン14の負荷が小さいときには、エンジン14の実回転数Nrを下げた状態で作業をしても、エンジン出力は十分である。しかも、目標回転数Ntの値を、エンジン14が最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い目標中速回転数NMに設定することにより、大きいトルクで作業部15,205,206を駆動することができる。このため、作業部15,205,206の負荷の変動に対して十分に対応することができる(いわゆる、ねばりがある。)。
さらには、目標回転数Ntの値を目標中速回転数NMに切り替えることにより、実回転数Nrを下げて、エンジン騒音を低減させることができる。
【0086】
一方、エンジン14の負荷が大きいとき、(例えば、芝刈機10においては、丈が長い芝草を刈るとき等)には、目標回転数Ntの値を目標高速回転数NHに切り替えることにより実回転数Nrを上げて、エンジン出力を高めた状態で、作業を効率良く行うことができる。
【0087】
このように、エンジン駆動式作業機10,200の作業途中にエンジン14の負荷が大きく変動した場合に、作業者は負荷に応じて、実回転数Nrを中速と高速との2段階に簡便に設定することができる。しかも、目標回転数切替操作部65で変更する速度設定は2段階だけであるから、極めて容易に変更操作できる。
【0088】
さらに本発明では、エンジン14と作業部15,205,206との間に介在されたクラッチ21,202を、作業用クラッチ操作部41,231で結合操作をしたときに、この結合操作があったことを作業用クラッチ操作検出センサ68にて検出することができる。このため、エンジン14の出力による作業部15,205,206の作業状態を確実に検出することができる。
【0089】
さらに本発明では、作業用クラッチ操作検出センサ68がクラッチ21,202の結合操作を検出したとき、すなわち、作業用クラッチ操作部41,231にてクラッチ21,202の結合操作がされたと、制御部89が判断したときだけ、選択された1つの目標回転数Ntに対して実回転数Nrが合うように、スロットル弁92を電気的に開閉制御することができる。このため、作業者にとって不必要に目標回転数Ntの値が変更されることを、防止できる。従って、作業部15,205,206による作業の安定化を図ることができる。
【0090】
なお、上記本発明の実施の形態並びに変形例において、エンジン駆動式作業機は、歩行型芝刈機10や歩行型耕耘機200に限定されるものではなく、エンジン14で駆動される各種の作業部を備えた作業機に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のエンジン駆動式作業機は、作業途中で作業部の負荷が大きく変動し得る作業機、例えばエンジン14で駆動されるカッタ15を備えた歩行型芝刈機や、エンジン14で駆動される耕耘爪205,206を備えた歩行型耕耘機に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る歩行型芝刈機を示す左側面図である。
【図2】本発明に係る歩行型芝刈機の模式的系統図である。
【図3】本発明に係るエンジンの特性図である。
【図4】本発明に係る歩行型芝刈機のハンドルの後部周りを右前上方から見た斜視図である。
【図5】図4の5矢視図である。
【図6】図4の6矢視図である。
【図7】本発明に係るエンジンの始動操作時点から制御部が制御処理を実行するまでの一連の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る制御部の制御フローチャートである。
【図9】本発明に係る歩行型芝刈機の作用説明図である。
【図10】本発明に係る歩行型耕耘機を示す左側面図である。
【図11】本発明に係る歩行型耕耘機の模式的系統図である。
【図12】本発明に係る左のハンドルの後部周りの左側面図である。
【図13】本発明に係る左のハンドルの後部周りの平面図である。
【符号の説明】
【0093】
10…エンジン駆動式作業機(歩行型芝刈機)、13…駆動輪、14…エンジン、15…作業部(カッタ)、21…クラッチ、41…作業用クラッチ操作部(作業用クラッチレバー)、65…目標回転数切替操作部(回転モード切替スイッチ)、68…作業用クラッチ操作検出センサ、83…スロットル弁用制御モータ、89…制御部、92…スロットル弁、200…エンジン駆動式作業機(歩行型耕耘機)、202…クラッチ、205,206…作業部(第1・第2耕耘爪)、231…作業用クラッチ操作部(作業用クラッチレバー)、NH…目標高速回転数、NL…目標低速回転数、NM…目標中速回転数、Nr…実際の回転数、Nt…目標回転数。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンで駆動される各種作業部を備えたエンジン駆動式作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンで駆動される作業部を備えた作業機としては、例えば、自走しながらカッタで芝を刈るとともに作業者が歩行しつつ操縦するという、歩行型芝刈機が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−301015号公報
【0003】
特許文献1に示す歩行型芝刈機は、エンジンの出力で走行輪及び芝刈り用カッタが回転することにより、自走しながら芝を刈るものである。作業者が走行用クラッチレバーを操作して、走行用クラッチを遮断・結合させることにより、走行輪を停止状態又は走行状態に切り替えることができる。スロットル弁を、走行用クラッチレバーの切替動作に連動させて一時的に絞ることにより、エンジンの回転数を一時的に減少させることができる。この結果、歩行型芝刈機は低速状態で円滑に発進、停止する。
【0004】
ところで近年、芝刈機や草刈機等の各種のエンジン駆動式作業機において、エンジンに備えた電子式ガバナでスロットル弁を自動的に制御するものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献2】特開平4−350333号公報
【0005】
特許文献2に示す芝刈機や草刈機等のエンジン駆動式作業機は、スロットルレバーを操作して作業をするときに、電子ガバナが負荷の大きさに応じてスロットル弁の開度を自動制御するというものである。更にこのエンジン駆動式作業機は、スロットルレバーから手を放して作業を停止したときに、エンジン回転数が次の(1)又は(2)の状態に戻されるように、スロットル弁を自動的に閉じるようにした構成である。
(1)スロットル弁を全閉位置まで閉じることで、アイドリング回転数に戻す。
(2)スロットル弁を常用位置まで閉じることで、常用最低回転数に戻す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1〜2に示すような各種のエンジン駆動式作業機で作業するときの作業条件は、必ずしも一定ではない。作業条件によっては、作業途中で作業部の負荷が大きく変動することがある。この結果、エンジンにかかる負荷も大きく変動し得る。
【0007】
これに対し、エンジンの負荷に応じて、作業者がスロットルレバーを操作してエンジンの回転数を適宜調節することも考えられる。負荷が小さいときには、エンジンの回転数を下げた状態で作業をしても、エンジン出力は十分である。また、負荷が大きいときには、エンジンの回転数を上げてエンジン出力を高めた状態で、作業をすればよい。
【0008】
しかしながら、作業中においてエンジンの負荷が変動する度に、作業者がスロットルレバーを操作してエンジンの回転数を適切な値に調節するのでは、調節操作が面倒である。また、エンジンの回転数を下げ過ぎた場合には、エンジン出力が過小になってしまい、負荷に対応しきれなくなる。このように、回転数の微妙な調節を適切に行うには、ある程度の熟練を要する。
【0009】
この面倒で熟練を要する調節操作を止めるためには、エンジンの負荷の大きさにかかわらず、エンジンの回転数を常に十分に上げておくことによって、エンジン出力を大きいままで維持させることが考えられる。しかし、負荷が小さいときであっても、エンジンの回転数は大きいままである。この結果、大回転数のときのエンジン騒音が続くことになるので、作業環境を高める上で不利である。しかも、エンジンの燃料消費量を節減する上でも不利である。
【0010】
本発明は、(1)エンジンの負荷に応じて、作業者がエンジンの回転数を簡便に調節できるようにすることで、エンジン駆動式作業機の操作性を高めるとともに、作業効率を高め、さらに(2)エンジン駆動式作業機が発生する騒音を低減して作業環境を高めることができる、技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明では、作業部を駆動するエンジンの実際の回転数を目標回転数に合わせるようにスロットル弁を電気的に開閉制御するエンジン駆動式作業機において、このエンジン駆動式作業機は、目標回転数を複数の段階の値に予め設定しておき、その中から任意に選択した1つの目標回転数の値を指示する目標回転数切替操作部と、この目標回転数切替操作部の指示に基づく1つの目標回転数の値に対して実際の回転数が合うようにスロットル弁を開閉制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明では、請求項1において、複数の目標回転数の値とは、エンジンが最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い目標中速回転数と、目標中速回転数よりも高速でエンジンが最大出力を発生可能な回転数又はその回転数に近い目標高速回転数との、2つであることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2において、エンジン駆動式作業機は、エンジンから作業部へ伝達する出力の遮断・結合を行うクラッチと、このクラッチを操作する作業用クラッチ操作部と、この作業用クラッチ操作部でクラッチの結合操作がされたことを検出する作業用クラッチ操作検出センサとを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明では、請求項3において、制御部は、作業用クラッチ操作検出センサがクラッチの結合操作を検出したときのみ、選択された前記1つの目標回転数の値に基づく制御を実行するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、制御部には複数の目標回転数の値を予め設定しておき、目標回転数切替操作部を操作して、任意に選択した1つの目標回転数を制御部に指示することによって、この1つの目標回転数に対して実際の回転数が合うようにスロットル弁を電気的に開閉制御することができる。従って、作業者は複数の目標回転数の値のうち、単に1つの値を任意に選択して、目標回転数切替操作部を切り替え操作するだけで、選択した値の目標回転数に、極めて簡便に切り替えることができる。このため、作業者はスロットルレバーを操作して、目標回転数の微妙な調節を行う必要はない。
【0016】
このように、作業部の負荷が大きく変動することで、エンジンにかかる負荷が大きく変動した場合であっても、エンジンの負荷に応じて、作業者がエンジンの回転数を簡便に調節することができる。この結果、エンジン駆動式作業機の操作性を高めるとともに、作業効率を高めることができる。さらには、負荷が小さいときには、目標回転数切替操作部を簡便に切り替え操作して、エンジンの回転数を下げることにより、エンジン騒音を低減させることができる。この結果、エンジン駆動式作業機が発生する騒音を低減して作業環境を高めることができる。しかも、負荷が小さいときにエンジンの回転数を下げることにより、エンジンの燃料消費量を節減することができるとともに、作業部が作業中に発する塵埃をも低減することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、目標回転数切替操作部にて切り替えられる複数の目標回転数の値を、目標中速回転数と、目標中速回転数よりも高速である目標高速回転数との、2つに設定したものである。
一般的なエンジンの特性は、回転数の増加に応じて出力が高まるとともに、最大出力を発生可能な回転数よりも低速回転数において最大トルクを発生する特性であることが、知られている。請求項2に係る発明では、目標中速回転数は、エンジンが最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い値に設定される。目標高速回転数は、エンジンが最大出力を発生可能な回転数又はその回転数に近い値に設定される。
【0018】
エンジンの負荷が小さいときには、エンジンの回転数を下げた状態で作業をしても、エンジン出力は十分である。しかも、目標回転数の値を、エンジンが最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い目標中速回転数に設定することにより、大きいトルクで作業部を駆動することができる。このため、作業部の負荷の変動に対して十分に対応することができる(いわゆる、ねばりがある。)。さらには、目標回転数の値を目標中速回転数に切り替えることにより、エンジンの回転数を下げて、エンジン騒音を低減させることができる。
【0019】
一方、エンジンの負荷が大きいときには、目標回転数の値を目標高速回転数に切り替えることによりエンジンの回転数を上げて、エンジン出力を高めた状態で、作業を効率良く行うことができる。
このように、エンジン駆動式作業機の作業途中にエンジンの負荷が大きく変動した場合に、作業者は負荷に応じて、エンジンの回転数を中速と高速との2段階に簡便に設定することができる。しかも、目標回転数切替操作部で変更する速度設定は2段階だけであるから、極めて容易に変更操作できる。
【0020】
請求項3に係る発明では、エンジンと作業部との間に介在されたクラッチを、作業用クラッチ操作部で結合操作をしたときに、この結合操作があったことを作業用クラッチ操作検出センサにて検出することができる。このため、エンジンの出力による作業部の作業状態を確実に検出することができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、作業用クラッチ操作検出センサがクラッチの結合操作を検出したとき、すなわち、作業用クラッチ操作部にてクラッチの結合操作がされたと、制御部が判断したときだけ、選択された1つの目標回転数に対して実際の回転数が合うように、スロットル弁を電気的に開閉制御することができる。このため、作業者にとって不必要に目標回転数の値が変更されることを、防止できる。従って、作業部による作業の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向に従う。
以下、エンジン駆動式作業機の一例として歩行型芝刈機を挙げて、第1実施例を図1〜図9に基づき説明する。
【0023】
図1は本発明に係る歩行型芝刈機を示す左側面図である。
歩行型芝刈機10は、下面を開放したハウジング11の前後端にそれぞれ左右の前輪12および左右の後輪13(駆動輪13)を備え、ハウジング11の上部にエンジン14を搭載し、ハウジング11の内部にカッタ15を備え、ハウジング11の刈芝排出口11aに芝収容バッグ16を備え、ハウジング11から後上方に向けてハンドル17を延ばし、ハンドル17の後端部に操作部18を備えたものである。
【0024】
上述のように、ハウジング11は前輪12、後輪13、エンジン14等の主要部材を設けているので、歩行型芝刈機10の機体(フレーム)の役割をも果たす。芝収容バッグ16は刈った芝を収容する収容体である。
【0025】
エンジン14は、下端部から下方へ出力軸19を延ばし、出力軸19の下端部に作業用ブレーキ/クラッチ部21を介してカッタ15を取り付けた動力源である。カッタ15(刈刃15)は芝刈り作業をするための作業部である。
さらに、エンジン14は、出力軸19を伝動機構22を介して油圧無段変速装置25(以下、単に「変速装置25」と言う。)の入力側に連結したものである。変速装置25の出力軸は車軸26を介して後輪13に連結されている。
【0026】
作業用ブレーキ/クラッチ部21は、エンジン14からカッタ15へ伝達する出力の遮断・結合を行うクラッチ部分と、クラッチを遮断(クラッチオフ。出力の伝達を遮断)したときにカッタ15を制動するブレーキ部分とを組み合わせた、複合的な構成である。以下、作業用ブレーキ/クラッチ部21のことを単に「クラッチ21」と言うことにする。
【0027】
変速装置25は、ケースに図示せぬ変速斜板が内蔵され、この変速斜板に変速用アーム25aが連結され、この変速用アーム25aに変速用ケーブル27を介して変速レバー62が連結された、周知の構成である。
すなわち、変速装置25は、後輪13の回転数を零(停止)から高速回転域まで無段階に変速するものである。このように変速装置25は、エンジン14から後輪13へ伝達する出力の遮断・結合を行う(つまり、遮断することで後輪13を停止させ、結合することで後輪13を回転させる)という、いわゆるクラッチ機能を有している。
【0028】
次にハンドル17周りについて説明する。
ハンドル17は、ハウジング11から後上方に延びる左右のハンドルバー31,32と、左右のハンドルバー31,32に架け渡したグリップ部33とからなる。
左右のハンドルバー31,32は、後端部31a,32aに左右の取付ブラケット38,39を備え、これらの取付ブラケット38,39に作業用クラッチレバー41および走行レバー42を前後へ揺動自在に取り付けた構成である。
【0029】
作業用クラッチレバー41および走行レバー42は、手で前方へ揺動操作してグリップ部33と共に握ることができ、操作する手を離したときに自動的に元の位置へ復帰する、自動復帰式操作部材である。
左ハンドルバー31は、後端部31aに操作部18およびカバー71を備えたものである。
【0030】
図2は本発明に係る歩行型芝刈機の模式的系統図である。
先に、操作部18について説明する。操作部18は、変速レバー62、メインスイッチ64、回転モード切替スイッチ65および作業用クラッチ操作検出センサ68を備える。
【0031】
変速レバー62は、変速装置25を変速操作するものであって、走行レバー42に第2引張りばね106を介して接続するとともに、変速用ケーブル27を介して変速装置25に連結した構成である。
走行レバー42を操作したときに、変速装置25は変速レバー62の変速操作位置に応じた速度で後輪13を回転させる。その後、走行レバー42を元に戻すと、変速装置25の出力回転は零になり、後輪13を停止させる。
【0032】
メインスイッチ64は、エンジン14の電源系統をオン、オフするためのロータリスイッチであり、オフ位置からオン位置へ操作することでエンジン14の始動に備えるとともに、オン位置からオフ位置へ戻すことでエンジン14を停止させることができる。
【0033】
回転モード切替スイッチ65は、エンジン14の目標回転数を複数の段階の値に予め設定しておいた中から、任意に選択した1つの目標回転数の値を指示するための目標回転数切替操作部65(目標回転数選択部)である。より具体的に説明すると、回転モード切替スイッチ65は、エンジン14の制御モードを後述する「静音モード」と「パワーモード」とに切り替えるものであり、例えばシーソースイッチ(「タンブラスイッチ」、「rocker switch」とも言う。)からなる。
【0034】
作業用クラッチ操作検出センサ68は、作業用クラッチレバー41(つまり、作業用クラッチ操作部41)によってクラッチ21の結合操作がされたことを検出するものであり、例えばスイッチからなる。作業用クラッチレバー41を操作し、クラッチ用ケーブル122を介してクラッチ21を結合(クラッチオン)したときに、作業用クラッチ操作検出センサ68は結合操作がされたことを検出する。
【0035】
次に、エンジン14の系統について説明する。
エンジン14はリコイルスタータ81、点火装置82、スロットル弁用制御モータ83、モータ用ドライバ84、スロットル開度センサ85、エンジン回転センサ86、発電機87、電源回路88および制御部89を備える。なお、エンジン14はバッテリを備えていない。
【0036】
リコイルスタータ81は、作業者がエンジン14を手動で始動させる始動装置であり、例えばエンジン14のフライホイールの先端に設けたものである。点火装置82は、図示せぬ点火コイル並びに点火プラグからなる。
【0037】
スロットル弁用制御モータ83(以下「制御モータ83」と言う。)は、エンジン吸気系91に備えたスロットル弁92を開閉駆動するアクチュエータであり、例えばステップモータからなる。モータ用ドライバ84は、制御部89の制御信号に基づいて制御モータ83を電気的にオン・オフ駆動するものである。
【0038】
スロットル開度センサ85は、スロットル弁92の開度を検出し、検出信号を制御部89に発するものである。エンジン回転センサ86は、エンジン14の回転数(回転速度)を検出し、検出信号を制御部89に発するものである。
発電機87は、エンジン14の出力の一部によって交流電力を発電するオルタネータであり、例えばフライホイールに設けたものである。電源回路88は、発電機87で発電された交流電力を整流して直流電力に変換した上で、点火装置82や制御部89等の電装品に供給するものである。
【0039】
制御部89はメインスイッチ64、回転モード切替スイッチ65、作業用クラッチ操作検出センサ68、スロットル開度センサ85、エンジン回転センサ86の各信号を受けて、エンジン14を所定の制御モードで制御する電子制御ユニットであり、例えばマイクロコンピュータからなる。つまり制御部89は、点火装置82を制御し、さらに、検出されたエンジン14の回転数およびスロットル弁92の開度の各データに基づき、所定の制御モードで制御モータ83を介してスロットル弁92の開度を制御することで、エンジン14の回転数が目標回転数と一致するように電気的に制御するものである。
【0040】
以上の説明から明らかなように、エンジン14は電子式ガバナ80(電気式ガバナ、電子式調速機とも言う。)を搭載したことを特徴とする。電子式ガバナ80は、制御部89の制御信号に基づいて、制御モータ83でスロットル弁92の開度を自動的に調整することにより、エンジン14の回転数を制御するものであって、制御モータ83、モータ用ドライバ84、スロットル開度センサ85、エンジン回転センサ86、制御部89およびスロットル弁92の組合せからなる。
【0041】
ところで、制御部89によってエンジン14の回転数を制御する制御モードには、大きく分けて3つの回転制御モードがある。これらの回転制御モードについて、次のように定義する。
第1の回転制御モードは、アイドリング状態のエンジン回転数に制御する「アイドルモード」である。第2の回転制御モードは、エンジン14で発するトルクが最大又は概ね最大のときのエンジン回転数に制御する「静音モード」である。第3の回転制御モードは、エンジン14で発する出力が最大又は概ね最大のときのエンジン回転数に制御する「パワーモード」である。
【0042】
ここで、エンジン14の特性について図3に基づき説明する。
図3は本発明に係るエンジンの特性図であり、横軸をエンジンの回転数とし、左の縦軸をエンジンの出力とし、右の縦軸をエンジンのトルクとして、エンジンの回転数に対する出力の特性およびトルクの特性を示したものである。
曲線Pwは、エンジン14(図2参照)の回転数に対する出力の特性を示す出力特性曲線である。曲線Tqは、エンジン14の回転数に対するトルクの特性を示すトルク特性曲線である。
【0043】
出力特性曲線Pwによれば、エンジン14の回転数の増加に応じて出力が高まることが判る。
また、トルク特性曲線Tqによれば、最大出力を発生可能な回転数よりも低速回転数NMにおいて最大トルクを発生する特性であることが判る。つまり、トルク特性曲線Tqは、低速回転数NMにおいて最大トルクとなる略山形状の曲線である。
このようなエンジン14の特性は一般的なエンジンの特性と同様である。
【0044】
以下、本発明においては、エンジン14のアイドリング状態におけるエンジンの回転数NLのことを、「目標低速回転数NL」と言うことにする。エンジン14で発するトルクが最大Tmax又は概ね最大のときのエンジンの回転数NM(つまり、上記低速回転数NM)のことを、「目標中速回転数NM」と言う。目標中速回転数NMよりも高速であって、エンジン14が最大出力を発生可能なエンジンの回転数NH又はその回転数に近い値のことを、「目標高速回転数NH」と言う。
【0045】
次に、図1に示すハンドル17周りの各部材および操作部18の詳細な構成について説明する。
図4は本発明に係る歩行型芝刈機のハンドルの後部周りを右前上方から見た斜視図であり、作業用クラッチレバー41および走行レバー42を握った状態を表したものである。
図5は図4の5矢視図であり、作業用クラッチレバー41および走行レバー42を握った状態を表したものである。
図6は図4の6矢視図であり、作業用クラッチレバー41および走行レバー42から手を離した状態を表したものである。
【0046】
図4に示すように、正面視門形状のグリップ部33は、左右のハンドルバー31,32の後端部31a,32aから前上方へ延びた左右のグリップ脚部34,35と、左右のグリップ脚部34,35の上端部間に架け渡したグリップ水平バー36とからなる。
【0047】
図4〜図6に示すように、作業用クラッチレバー41は、グリップ部33の後面に概ね沿うように正面視門形状を呈した操作部材であり、左右の脚部44,45と水平バー46とからなる。
図6に示すように、この作業用クラッチレバー41は、押し下げ操作するためのロック解除ノブ113と、ロック解除ノブ113の降下に連動して降下する操作ロッド114と、操作ロッド114に連動して後方へ揺動する係合部材115と、揺動した係合部材115に係合するクラッチアーム121と、クラッチアーム121に一端を連結したクラッチ用ケーブル122とを備える。
【0048】
ロック解除ノブ113を押しながら作業用クラッチレバー41を前方へ揺動操作することにより、クラッチ用ケーブル122を後方に牽引することができる。この結果、クラッチ21(図1参照)は結合状態になる。
【0049】
図4〜図6に示すように、走行レバー42は、作業用クラッチレバー41の後面に概ね沿うように正面視門形状を呈した操作部材であり、左右の脚部52,54と水平バー55とからなる。
【0050】
図4に示すように、作業用クラッチレバー41における左の脚部44に対して、走行レバー42における左の脚部52は機体幅中心寄りの位置にある。このため、グリップ部33に対して作業用クラッチレバー41および走行レバー42を重ねたときに、左の脚部44,52間には間隔SPの操作空間56を有する。作業者は、操作空間56の部位において、左手57で左のグリップ脚部34と作業用クラッチレバー41の左の脚部44とを、いっしょに握ることができる。
一方、作業者は右手58で、グリップ水平バー36と、作業用クラッチレバー41の水平バー46と、走行レバー42の水平バー55とを、いっしょに握ることができる。
【0051】
図4および図6に示すように、変速レバー62は概ね円盤状のディスク部94と、ディスク部94から上方へ延びた操作レバー部95とからなる。
ディスク部94は側部に変速レバーアーム63を重ね合わせた状態で、共に支持ピン96を介して左のハンドルバー31へ前後に揺動可能に取り付けた構成である。変速レバーアーム63は下方へ延びた細長い部材であり、ディスク部94に対して相対的に前後に揺動可能である。
【0052】
図6に示すように、ディスク部94は、支持ピン96を中心とする細長い湾曲状の第1ガイド孔98を有する。第1ガイド孔98は、半径が後端部でR1となり、前端部で径R2となるように形成されている。後端部の半径R1と、前端部の半径R2とを比較すると、R1<R2の関係が成立する。すなわち、第1ガイド孔98の半径は、後端部から前端部に向かって徐々に大きくなるように形成されている。
【0053】
変速レバーアーム63は、第1ガイド孔98に略直交した鉛直方向に細長い第2ガイド孔99を有する。
変速用ケーブル27は、インナケーブル27aの一端に備えた連結ピン101を第1のガイド孔98および第2のガイド孔99に嵌合したものである。
【0054】
図4および図6に示すように、変速レバーアーム63の先端部は、変速レバーアーム63よりも前方に配置されている支持アーム102に第1引張りばね103を掛けるとともに、変速レバーアーム63よりも後方に配置されている走行アーム105に第2引張りばね106を介して連結した構成である。
支持アーム102は、左ハンドルバー31に備えた固定部材である。第1引張りばね103は、変速レバーアーム63を図4および図6に示す走行停止位置へ自動復帰させるための、リターンスプリングである。走行アーム105は、走行レバー42に備えたスイング部材であり、走行レバー42と共に前後に揺動可能である。
【0055】
なお、図4および図5に示すように、操作部18は、左ハンドルバー31における後端部31aの近傍に且つ左のグリップ脚部34の近傍にメインスイッチ64を配置し、メインスイッチ64の右方に回転モード切替スイッチ65を配置し、メインスイッチ64の右前方に且つ回転モード切替スイッチ65の左前方に変速レバー62を配置したものである。
【0056】
回転モード切替スイッチ65は、操作ノブ65aの前部65bが押し込まれた状態でオフ信号(「パワーモード」切り替え信号)を発するとともに、操作ノブ65aの後部65cが押し込まれた状態でオン信号(「静音モード」切り替え信号)を発する。
【0057】
次に、上記図2に示す制御部89をマイクロコンピュータとした場合の制御フローについて、図7〜図8に基づき説明する。図中、ST××はステップ番号を示す。特に説明がないステップ番号については、番号順に進行する。以下、図2および図3を参照しつつ説明する。
【0058】
図7は本発明に係るエンジンの始動操作時点から制御部が制御処理を実行するまでの一連の手順を示すフローチャートである。
ST01;作業者がメインスイッチ64をオン操作する。
ST02;メインスイッチ64のオン状態において、作業者がリコイルスタータ81のノブ81aを引張ることで、リコイルスタータ81を始動操作する。
ST03;リコイルスタータ81の始動操作により、エンジン14が始動する。
ST04;エンジン14の始動に伴い、発電機87が発電を開始する。
ST05;発電機87の出力電圧が一定以上の安定した電圧になることで、発電機87から供給される電力によって制御部89が自動的に起動する。
ST06;制御部89は所定の制御を開始する前の、初期設定の処理を実行する。
ST07;この時点から、制御部89はエンジン回転数制御処理を自動的に実行する。このエンジン回転数制御処理を具体的に実行するための具体的な制御フローについては、次の図8に示す。
【0059】
図8は本発明に係る制御部の制御フローチャートであり、制御部89が上記図7に示すステップST07の「エンジン回転数制御処理」を実行するための、基本的な制御フローを示す。
【0060】
ST11;各スイッチのスイッチ信号を読み込む。具体的には、回転モード切替スイッチ65、回転数変更スイッチ66および作業用クラッチ操作検出センサ68の信号を読み込む。
ST12;作業用クラッチレバー41がオフ位置にあるか否かを調べ、YESなら「アイドルモード」であると判断してST13に進み、NOならST14に進む。図6に示すように、作業者が作業用クラッチレバー41から手を離しているときの位置が、オフ位置である。作業用クラッチレバー41の位置については、作業用クラッチ操作検出センサ68(図2参照)の検出信号によって判断する。
【0061】
ST13;エンジン14の回転制御モードが「アイドルモード」に移行したので、エンジン14の目標回転数Ntを目標低速回転数NLの値に設定する。目標低速回転数NLは、予め設定されている一定の回転数であり、エンジン14のアイドリング状態の回転数に相当する。
ST14;エンジン14の回転制御モードが「静音モード」であるか否かを調べ、YESならST15に進み、NOなら「パワーモード」であると判断してST16に進む。このST14では、回転モード切替スイッチ65がオンであるときにYESの判断になり、回転モード切替スイッチ65がオフであるときにNOの判断になる。
【0062】
ST15;エンジン14の回転制御モードが「静音モード」に移行したので、エンジン14の目標回転数Ntを目標中速回転数NMの値に設定する。目標中速回転数NMは、予め設定されている一定の回転数であり、エンジン14で発するトルクが最大又は概ね最大のときのエンジン回転数に相当する。
ST16;エンジン14の回転制御モードが「パワーモード」に移行したので、エンジン14の目標回転数Ntを目標高速回転数NHの値に設定する。目標高速回転数NHは、予め設定されている一定の回転数であり、エンジン14で発する出力が最大又は概ね最大のときのエンジン回転数に相当する。
【0063】
ここで、目標低速回転数NLよりも目標中速回転数NMが大きく、この目標中速回転数NMよりも目標高速回転数NHが大きい(NL<NM<NH)。
【0064】
ST17;エンジン14の実際の回転数Nr(以下「実回転数Nr」と言う。)を計測する。実回転数Nrについては、エンジン回転センサ86で計測すればよい。
ST18;実回転数Nrが目標回転数Ntを下回っているか否かを調べ、YESならST19に進み、NOならST20に進む。
【0065】
ST19;制御モータ83を正転駆動させることにより、スロットル弁92を開駆動する。この結果、実回転数Nrは増大する。
ST20;制御モータ83を逆転駆動させることにより、スロットル弁92を閉駆動する。この結果、実回転数Nrは減少する。
ST21;メインスイッチ64のスイッチ信号を読み込む。
ST22;メインスイッチ64がオンであるか否かを調べ、YESならエンジン14の作動を続行すると判断してST11に戻り、NOならエンジン14の停止指令があったと判断してST23に進む。
ST23;エンジン14を停止させた後に、この制御フローによる制御を終了する。
【0066】
次に、上記図8の制御フローチャートで説明した歩行型芝刈機10(エンジン駆動式作業機10)の作用を、図2を参照しつつ図9に基づいて説明する。
図9は本発明に係る歩行型芝刈機の作用説明図であり、横軸を時間としたタイムチャートで各部の作用を示す。
【0067】
作業用クラッチレバー41がオフ位置にあるときには、回転モード切替スイッチ65の作動にかかわらず、エンジン14の回転制御モードは「アイドルモード」である(図8のST12)。このため、エンジン14の目標回転数Ntは目標低速回転数NLの値を持続する(図8のST13)。
【0068】
回転モード切替スイッチ65がオン状態であるときに、時点t1において作業用クラッチレバー41をオン位置に操作すると、エンジン14の回転制御モードは「静音モード」に変わる(図8のST12、ST14)。このため、エンジン14の目標回転数Ntは目標中速回転数NMの値に変わる(図8のST15)。
【0069】
その後、時点t2において、回転モード切替スイッチ65をオフにすると、エンジン14の回転制御モードは「パワーモード」に変わる(図8のST14)。このため、エンジン14の目標回転数Ntは目標高速回転数NHの値に変わる(図8のST16)。
【0070】
その後、時点t3において、作業用クラッチレバー41をオフ位置に操作すると、エンジン14の回転制御モードは「アイドルモード」に変わる(図8のST12)。このため、エンジン14の目標回転数Ntは目標低速回転数NLの値に変わる(図8のST13)。
【0071】
次に、エンジン駆動式作業機の一例として歩行型耕耘機を挙げて、第2実施例を図10〜図13に基づき説明する。なお、上記図1〜図9に示す第1実施例と同様の構成並びに作用については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図10は本発明に係る歩行型耕耘機を示す左側面図である。図11は本発明に係る歩行型耕耘機の模式的系統図である。
図10および図11に示すように歩行型耕耘機200は、ケース201の上部に搭載したエンジン14と、ケース201内でエンジン14の出力軸19にクラッチ202を介して連結した動力伝達機構203と、動力伝達機構203に連結して左右に延びる水平な耕耘軸204と、耕耘軸204に設けた第1耕耘爪205・・・並びに第2耕耘爪206・・・と、ケース201の後部から下方へ延びる抵抗棒207を備える。
【0073】
上述のように、ケース201はエンジン14、動力伝達機構203、第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・、抵抗棒207等の主要部材を設けているので、歩行型耕耘機200の機体(フレーム)の役割をも果たす。
【0074】
クラッチ202は、エンジン14から第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・へ伝達する出力の遮断・結合を行うものである。動力伝達機構203は、エンジン14の出力を耕耘軸204へ伝達するための、伝動軸211およびベベルギヤ機構212からなる。第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・は耕耘作業をするための作業部である。抵抗棒207は、土中に差込んで第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・による耕深量を設定するとともに、第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・の牽引力に対する抵抗力を付加する棒である。
【0075】
このような構成の歩行型耕耘機200は、第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・の回転により耕耘し、さらに第1・第2耕耘爪205・・・,206・・・にて走行する形式の、小型の歩行型自走式耕耘機であり、フロントタイン式管理機と称する。
【0076】
さらに歩行型耕耘機200は、図10に示すようにケース201の後部から後上方に向けて左右一対のハンドル221を延ばし、これら左右のハンドル221の後端にグリップ222を備え、さらに、左のハンドル221の後端部に操作部230を備えたものである。
【0077】
次に、左のハンドル221の後部周りおよび操作部230の詳細な構成について説明する。
図12は本発明に係る左のハンドルの後部周りの左側面図である。図13は本発明に係る左のハンドルの後部周りの平面図である。
図12および図13に示すように、操作部230は、左のハンドル221のうちグリップ222の近傍に配置したものであり、メインスイッチ64、回転モード切替スイッチ65、作業用クラッチレバー231(つまり、作業用クラッチ操作部231)、作業用クラッチ操作検出センサ68およびカバー232を備える。
【0078】
作業用クラッチレバー231は、グリップ222と共に握ることによってクラッチ操作する操作部材であり、クラッチ用ケーブル233を介してクラッチ202に連結されている。すなわち、この作業用クラッチレバー231は、上記図1〜図9に示す作業用クラッチレバー41と同様にクラッチ202を操作する部材である。
【0079】
作業用クラッチ操作検出センサ68は、作業用クラッチレバー231によってクラッチ202の結合操作がされたことを検出するものであり、例えばスイッチからなる。作業用クラッチレバー231を操作し、クラッチ用ケーブル233を介してクラッチ202を結合(クラッチオン)したときに、作業用クラッチ操作検出センサ68は結合操作がされたことを検出して、図11に示す制御部89へ検出信号を発する。
【0080】
図12に示すように、作業者が作業用クラッチレバー231から手を離しているときに、作業用クラッチレバー231はオフ位置にある。一方、作業者がグリップ222と共に作業用クラッチレバー231を握って矢印UP方向へ揺動したときに、作業用クラッチレバー231はオン位置にある。
【0081】
図10に示すように歩行型耕耘機200に搭載された制御部89は、上記図7および図8に示す構成並びに作用を有する。従って、歩行型耕耘機200は上記図9に示す作用をなすことになる。
【0082】
以上の説明をまとめると、次の通りである。
本発明では、制御部89には複数の目標回転数Ntの値を予め設定しておき、目標回転数切替操作部65(回転モード切替スイッチ65)を操作して、任意に選択した1つの目標回転数Ntを制御部89に指示することによって、この1つの目標回転数Ntに対して実回転数Nrが合うようにスロットル弁92を電気的に開閉制御することができる。従って、作業者は複数の目標回転数Ntの値のうち、単に1つの値を任意に選択して、目標回転数切替操作部65を切り替え操作するだけで、選択した値の目標回転数Ntに、極めて簡便に切り替えることができる。このため、作業者はスロットルレバーを操作して、目標回転数Ntの微妙な調節を行う必要はない。
【0083】
このように、作業部15,205,206の負荷が大きく変動することで、エンジン14にかかる負荷が大きく変動した場合であっても、エンジン14の負荷に応じて、作業者が実回転数Nrを簡便に調節することができる。この結果、エンジン駆動式作業機10,200の操作性を高めるとともに、作業効率を高めることができる。さらには、負荷が小さいときには、目標回転数切替操作部65を簡便に切り替え操作して、実回転数Nrを下げることにより、エンジン騒音を低減させることができる。この結果、エンジン駆動式作業機10,200が発生する騒音を低減して作業環境を高めることができる。しかも、負荷が小さいときに実回転数Nrを下げることにより、エンジン14の燃料消費量を節減することができるとともに、作業部15,205,206が作業中に発する塵埃をも低減することができる。
【0084】
さらに本発明では、目標回転数切替操作部65にて切り替えられる複数の目標回転数Ntの値を、目標中速回転数NMと、この目標中速回転数NMよりも高速である目標高速回転数NHとの、2つに設定したものである。
目標中速回転数NMは、エンジン14が最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い値に設定される。目標高速回転数NHは、エンジン14が最大出力を発生可能な回転数又はその回転数に近い値に設定される。
【0085】
エンジン14の負荷が小さいときには、エンジン14の実回転数Nrを下げた状態で作業をしても、エンジン出力は十分である。しかも、目標回転数Ntの値を、エンジン14が最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い目標中速回転数NMに設定することにより、大きいトルクで作業部15,205,206を駆動することができる。このため、作業部15,205,206の負荷の変動に対して十分に対応することができる(いわゆる、ねばりがある。)。
さらには、目標回転数Ntの値を目標中速回転数NMに切り替えることにより、実回転数Nrを下げて、エンジン騒音を低減させることができる。
【0086】
一方、エンジン14の負荷が大きいとき、(例えば、芝刈機10においては、丈が長い芝草を刈るとき等)には、目標回転数Ntの値を目標高速回転数NHに切り替えることにより実回転数Nrを上げて、エンジン出力を高めた状態で、作業を効率良く行うことができる。
【0087】
このように、エンジン駆動式作業機10,200の作業途中にエンジン14の負荷が大きく変動した場合に、作業者は負荷に応じて、実回転数Nrを中速と高速との2段階に簡便に設定することができる。しかも、目標回転数切替操作部65で変更する速度設定は2段階だけであるから、極めて容易に変更操作できる。
【0088】
さらに本発明では、エンジン14と作業部15,205,206との間に介在されたクラッチ21,202を、作業用クラッチ操作部41,231で結合操作をしたときに、この結合操作があったことを作業用クラッチ操作検出センサ68にて検出することができる。このため、エンジン14の出力による作業部15,205,206の作業状態を確実に検出することができる。
【0089】
さらに本発明では、作業用クラッチ操作検出センサ68がクラッチ21,202の結合操作を検出したとき、すなわち、作業用クラッチ操作部41,231にてクラッチ21,202の結合操作がされたと、制御部89が判断したときだけ、選択された1つの目標回転数Ntに対して実回転数Nrが合うように、スロットル弁92を電気的に開閉制御することができる。このため、作業者にとって不必要に目標回転数Ntの値が変更されることを、防止できる。従って、作業部15,205,206による作業の安定化を図ることができる。
【0090】
なお、上記本発明の実施の形態並びに変形例において、エンジン駆動式作業機は、歩行型芝刈機10や歩行型耕耘機200に限定されるものではなく、エンジン14で駆動される各種の作業部を備えた作業機に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のエンジン駆動式作業機は、作業途中で作業部の負荷が大きく変動し得る作業機、例えばエンジン14で駆動されるカッタ15を備えた歩行型芝刈機や、エンジン14で駆動される耕耘爪205,206を備えた歩行型耕耘機に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る歩行型芝刈機を示す左側面図である。
【図2】本発明に係る歩行型芝刈機の模式的系統図である。
【図3】本発明に係るエンジンの特性図である。
【図4】本発明に係る歩行型芝刈機のハンドルの後部周りを右前上方から見た斜視図である。
【図5】図4の5矢視図である。
【図6】図4の6矢視図である。
【図7】本発明に係るエンジンの始動操作時点から制御部が制御処理を実行するまでの一連の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る制御部の制御フローチャートである。
【図9】本発明に係る歩行型芝刈機の作用説明図である。
【図10】本発明に係る歩行型耕耘機を示す左側面図である。
【図11】本発明に係る歩行型耕耘機の模式的系統図である。
【図12】本発明に係る左のハンドルの後部周りの左側面図である。
【図13】本発明に係る左のハンドルの後部周りの平面図である。
【符号の説明】
【0093】
10…エンジン駆動式作業機(歩行型芝刈機)、13…駆動輪、14…エンジン、15…作業部(カッタ)、21…クラッチ、41…作業用クラッチ操作部(作業用クラッチレバー)、65…目標回転数切替操作部(回転モード切替スイッチ)、68…作業用クラッチ操作検出センサ、83…スロットル弁用制御モータ、89…制御部、92…スロットル弁、200…エンジン駆動式作業機(歩行型耕耘機)、202…クラッチ、205,206…作業部(第1・第2耕耘爪)、231…作業用クラッチ操作部(作業用クラッチレバー)、NH…目標高速回転数、NL…目標低速回転数、NM…目標中速回転数、Nr…実際の回転数、Nt…目標回転数。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部を駆動するエンジンの実際の回転数を目標回転数に合わせるようにスロットル弁を電気的に開閉制御するエンジン駆動式作業機において、このエンジン駆動式作業機は、
前記目標回転数を複数の段階の値に予め設定しておき、その中から任意に選択した1つの目標回転数の値を指示する目標回転数切替操作部と、
この目標回転数切替操作部の指示に基づく前記1つの目標回転数の値に対して前記実際の回転数が合うように前記スロットル弁を開閉制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするエンジン駆動式作業機。
【請求項2】
前記複数の目標回転数の値とは、前記エンジンが最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い目標中速回転数と、前記目標中速回転数よりも高速で前記エンジンが最大出力を発生可能な回転数又はその回転数に近い目標高速回転数との、2つであることを特徴とした請求項1記載のエンジン駆動式作業機。
【請求項3】
前記エンジン駆動式作業機は、前記エンジンから前記作業部へ伝達する出力の遮断・結合を行うクラッチと、このクラッチを操作する作業用クラッチ操作部と、この作業用クラッチ操作部で前記クラッチの結合操作がされたことを検出する作業用クラッチ操作検出センサとを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエンジン駆動式作業機。
【請求項4】
前記制御部は、前記作業用クラッチ操作検出センサが前記クラッチの結合操作を検出したときのみ、選択された前記1つの目標回転数の値に基づく制御を実行するように構成したことを特徴とする請求項3記載のエンジン駆動式作業機。
【請求項1】
作業部を駆動するエンジンの実際の回転数を目標回転数に合わせるようにスロットル弁を電気的に開閉制御するエンジン駆動式作業機において、このエンジン駆動式作業機は、
前記目標回転数を複数の段階の値に予め設定しておき、その中から任意に選択した1つの目標回転数の値を指示する目標回転数切替操作部と、
この目標回転数切替操作部の指示に基づく前記1つの目標回転数の値に対して前記実際の回転数が合うように前記スロットル弁を開閉制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするエンジン駆動式作業機。
【請求項2】
前記複数の目標回転数の値とは、前記エンジンが最大トルクを発生可能な回転数又はその回転数に近い目標中速回転数と、前記目標中速回転数よりも高速で前記エンジンが最大出力を発生可能な回転数又はその回転数に近い目標高速回転数との、2つであることを特徴とした請求項1記載のエンジン駆動式作業機。
【請求項3】
前記エンジン駆動式作業機は、前記エンジンから前記作業部へ伝達する出力の遮断・結合を行うクラッチと、このクラッチを操作する作業用クラッチ操作部と、この作業用クラッチ操作部で前記クラッチの結合操作がされたことを検出する作業用クラッチ操作検出センサとを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエンジン駆動式作業機。
【請求項4】
前記制御部は、前記作業用クラッチ操作検出センサが前記クラッチの結合操作を検出したときのみ、選択された前記1つの目標回転数の値に基づく制御を実行するように構成したことを特徴とする請求項3記載のエンジン駆動式作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−198240(P2007−198240A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17292(P2006−17292)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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