説明

エンドレスバンドの検査方法及び装置

【課題】溶液製膜方法に用いたときに厚みムラの原因となるバンドの反りを、溶液製膜方法を行うことなく検知する。
【解決手段】駆動部206は、検査用ローラ201の回転軸201aに所定の外力を印加する。検査用ローラ201に巻き掛けられたバンド91にテンションが印加される。センサユニット208は測定位置MP1から測定窓208aまでの距離Aを測定する。センサユニット208は測定位置MP2から測定窓208aまでの距離Bを測定する。制御部は、距離A,距離B,記憶部から読み込んだバンド厚みDを用いて浮き量CLを算出する。制御部は、検査対象となるバンド91の浮き量CLが全て閾値TH1以下である場合には、当該バンド91は「合格品」と判定する。検査対象となるバンド91の浮き量CLのいずれかが閾値TH1を超える場合には、当該バンド91は「不合格品」と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドレスバンドの検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)の大画面化に伴い、LCDに用いる光学フィルムにも大面積化が要求される。光学フィルムは、長尺に製造されてから、LCDの寸法に応じて所定のサイズにカットされる。したがって、より大きな面積の光学フィルムを製造するためには、幅が従来よりも大きな長尺の光学フィルムを製造する必要がある。
【0003】
長尺の光学フィルムの代表的な製造方法としては、連続方式の溶液製膜方法がある。溶液製膜方法は、周知のように、ポリマーが溶剤に溶けているドープを、移動する流延支持体の上に流延し、ドープからなる流延膜を流延支持体上に形成し、流延膜を流延支持体から剥がして乾燥することによりフィルムを製造する方法である。
【0004】
流延支持体として、駆動ローラに掛け渡された金属製のバンドが用いられ、製造することができるフィルムの最大幅は、このバンドの幅に制約される。したがって、より大きな幅のフィルムを製造するには、より大きな幅のバンドが必要となる。しかし、これまで、幅が2m程度までのバンドしか得られていなかった。
【0005】
そこで、特許文献1では、幅方向の中央部になる中央部バンドと、バンドの各側部になる1対の側部バンドとを、長手方向に溶接することにより、従来よりも大きな幅のバンドを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開公報第2009−0110082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のバンドは、長手方向に延びる溶接ラインに起因して、幅方向にて反りが起こりやすい。特に、バンドの幅方向端部、すなわち、中央部バンドから側部バンドにかけて反りが起こりやすい。幅方向端部が反ったバンドを用いて溶液製膜方法を行えば、この反りに起因して、流延膜の厚みムラが生じる。このような厚みムラが生じた流延膜を乾燥しても、厚みムラが生じたフィルムとなってしまう。更に、厚みムラが生じた流延膜を剥ぎ取る際には、剥げ残り故障が生じやすくなる。また、厚みムラが生じた流延膜を乾燥する場合には、発泡が生じやすくなる。加えて、反りによって湾曲したバンドの内側の面が駆動ローラの周面と接触するようにバンドを駆動ローラに掛け渡した場合、バンドの側部では、バンド端が局所的に駆動ローラの周面に接触することとなる。バンド端が局所的に駆動ローラの周面に接触する状態が継続されれば、バンドの側部の変形が増大するため、上述した厚みムラに起因する問題が起こりやすくなる。
【0008】
また、技術開発により、現時点における製造限界幅を超えるバンドの製造が可能となった場合、当該バンドを用いることにより溶接ラインに起因する反りはなくなる。しかしながら、バンドの幅の増大により幅方向における反りの問題が生じる。
【0009】
このように、溶接ラインの有無に関わらず、従来よりも幅の広いバンドを用いる場合には、幅方向における反りの問題が生じる。
【0010】
本発明は、従来よりも幅の広いバンドを製造したときに、溶液製膜方法を行うことなく、バンドの反りを検知可能なエンドレスバンドの検査方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、流延ダイから流下したドープが到達する到達位置が設定され前記到達したドープからなる流延膜を形成するための表面と、循環移動する際製膜用ローラに支持されるための裏面とを備えた金属製のエンドレスバンドの検査方法において、前記裏面が検査用ローラによって支持され移動テンションが印加された状態の前記エンドレスバンドのうち前記到達位置に対応した前記表面上の測定位置から前記検査用ローラの支持面までの距離Hを算出する距離H算出工程と、式(1)により、前記測定位置における前記支持面から前記裏面までの浮き量CLを算出する浮き量算出工程と、前記算出された浮き量CLが閾値以下であるか否かを判定する判定工程とを有することを特徴とする。
式(1)CL=H−D
D:前記測定位置における前記エンドレスバンドの厚み
【0012】
前記検査用ローラは軸方向端部が露出するように軸方向中央部で前記エンドレスバンドを支持し、前記距離算出工程では、測距手段を用いて、前記測定位置から前記測距手段までの距離A及び前記測定位置における前記軸方向端部から前記測距手段までの距離Bを測定し、式(2)により前記距離Hを算出することが好ましい。
式(2) H=B−A
【0013】
前記浮き量算出工程では、前記エンドレスバンドに設定された基準位置から前記測定位置までの位置情報と前記測定位置における前記エンドレスバンドの厚みDとが関連付けられて記憶された記憶手段から前記エンドレスバンドの厚みDを読み取り、前記記憶手段から読み取った前記エンドレスバンドの厚みDを用いて、前記浮き量CLを算出することが好ましい。
【0014】
前記エンドレスバンドは、金属製の第1ウェブ及びこの第1ウェブの幅方向片側に溶接された金属製の第2ウェブからなることが好ましい。また、前記製膜用ローラと前記検査用ローラとが同一のローラであることが好ましい。更に、前記移動テンションは60N/mmであり、前記閾値が0.1mm以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、流延ダイから流下したドープが到達する到達位置が設定され前記到達したドープからなる流延膜を形成するための表面と、循環移動する際製膜用ローラに支持されるための裏面とを備えた金属製のエンドレスバンドの検査装置において、前記裏面が検査用ローラによって支持され移動テンションが印加された状態の前記エンドレスバンドのうち前記到達位置に対応した前記表面上の測定位置から前記検査用ローラの支持面までの距離Hを算出する距離算出手段と、式(1)により、前記測定位置における前記支持面から前記裏面までの浮き量CLを算出する浮き量算出手段と、前記算出された浮き量CLが閾値以下であるか否かを判定する判定手段とを有することを特徴とする。
式(1)CL=H−D
D:前記測定位置における前記エンドレスバンドの厚み
【0016】
前記検査用ローラは軸方向端部が露出するように軸方向中央部で前記エンドレスバンドを支持し、前記測定位置までの距離A及び前記測定位置における前記軸方向端部までの距離Bを測定する測距手段が設けられ、前記距離算出手段は、式(2)により、前記距離Hを算出することが好ましい。
式(2) H=B−A
【0017】
前記エンドレスバンドに設定された基準位置から前記測定位置までの位置情報と前記測定位置における前記エンドレスバンドの厚みDとが関連付けられて記憶された記憶手段を有し、前記浮き量算出手段は、前記記憶手段に記憶された前記エンドレスバンドの厚みDを用いて、前記浮き量CLを算出することが好ましい。
【0018】
前記製膜用ローラと前記検査用ローラとが同一のローラであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、裏面が検査用ローラによって支持され移動テンションが印加された状態のエンドレスバンドのうち、ドープが着地する到達位置に対応した表面上の測定位置から検査用ローラの支持面までの距離Hを算出する距離H算出工程と、測定位置における支持面から裏面までの浮き量CLを算出する浮き量算出工程と、算出された浮き量CLが閾値以下であるか否かを判定する判定工程とを有するため、溶液製膜方法を行うことなく、バンドの反りが検知可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】バンドの製造設備の概要を示す側面図である。
【図2】バンド製造設備の概要を示す平面図である。
【図3】溶接ユニットの概要を示す側面図である。
【図4】溶接ユニットの概要を示す平面図である。
【図5】溶接支持ローラの概要を示すV−V線断面図である。
【図6】溶接ビード及びその周辺の説明図である。
【図7】テーパローラの概略図である。
【図8】クリップの概略図である。
【図9】バンドの概略図である。
【図10】溶液製膜設備の概要を示す側面図である。
【図11】到達位置DP、減圧エリアBAの概要を示す側面図である。
【図12】流延ダイ、減圧チャンバ、及び製膜用ローラの概要を示す斜視図である。
【図13】到達位置DP及び減圧エリアBAの概要を示す斜視図である。
【図14】回転軸がテンション印加位置にセットされたときのバンド検査装置の概要を示す側面図である。
【図15】検査用ローラに巻き掛けられたバンドの概要を示す斜視図である。
【図16】バンド検査装置の概要を示すブロック図である。
【図17】回転軸が弛み位置にセットされたときのバンド検査装置の概要を示す側面図である。
【図18】厚み情報の概要を示す説明図である。
【図19】測定位置MP1にセットされた厚み測定ラインST(j)におけるバンドの断面図であり、距離A、B及びHの概要を示すものである。
【図20】測定位置MP1にセットされた厚み測定ラインST(j)におけるバンドの断面図であり、距離A,H,バンドの厚みD及び浮き量CLの概要を示すものである。
【図21】バンド検査工程の概要を示すフローチャートである。
【図22】回転軸がテンション印加位置にセットされたときのバンド検査装置の概要を示す側面図である。
【図23】バンドに反りが生じていない場合、測距センサのセンサデバイスが検知する距離の概要を示す説明図である。
【図24】バンドに反りが生じている場合、測距センサのセンサデバイスが検知する距離の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び図2に示すバンド製造設備10は、長尺の中央部材12と、中央部材12の幅方向両側に設けられる側部材11とからなる長尺のバンド部材13をつくるものである。
【0022】
側部材11と中央部材12とは、それぞれ金属製のシート材である。側部材11は相対的に幅が狭い幅狭のシート材である。側部材11と中央部材12とは、互いに同じ素材から形成されることが好ましく、互いに同一の原料及び形成工程を経て形成されることがより好ましい。例えば、側部材11及び中央部材12として、ステンレス鋼から形成されたもの用いることが好ましい。
【0023】
中央部材12としては、従来の流延支持体として用いられてきたバンドを用いてよい。中央部材12は、側部材11よりも幅が広く、本実施形態における中央部材12の幅は1500mm以上2100mm以下の範囲で一定であり、側部材11の幅は50mm以上500mm以下の範囲で一定である。
【0024】
バンド製造設備10は、送出部16と、突き合わせ部17と、溶接ユニット18と、加熱部19と、巻取装置20とを備える。
【0025】
送出部16は、側部材11を送り出す第1送出装置23と、中央部材12を送り出す第2送出装置24とを有し、側部材11と中央部材12とをそれぞれ独立して突き合わせ部17に送る。第1送出装置23には、ロール状に巻かれた側部材11がセットされ、側部材11を巻き出して突き合わせ部17に送る。第2送出装置24には、ロール状に巻かれた中央部材12がセットされ、中央部材12を巻き出して突き合わせ部17に送る。
【0026】
突き合わせ部17は、側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとが互いに接するように、独立して案内されてくる側部材11と中央部材12とを突き合わせる。突き合わせ部17は、中央部材12の搬送路に上流側から順に配される第1ローラ26及び第2ローラ27と、側部材11の搬送路に配される第3ローラ28と、側部材11及び中央部材12の両方を支持するように搬送路に配される第4ローラ29とを有することが好ましい。
【0027】
第4ローラ29は、側部材11の一方の側縁と中央部材12の一方の側縁とが接触を開始する突き合わせ位置Phにおいて、送られてきた側部材11と中央部材12とを支持する突き合わせ支持ローラである。
【0028】
第2ローラ27と第3ローラ28とは、第4ローラ29の周面で中央部材12と側部材11とが接触するように中央部材12の搬送経路と側部材11の搬送経路とをそれぞれ調整する。
【0029】
第2ローラ27は、中央部材12の搬送経路を調整して、側部材11と溶接されるべき側縁12eの通過経路を、突き合わせ位置Phに向けて制御する。第2ローラ27は、中央部材12の幅方向Yに移動自在となっている。シフト機構32は、第2ローラ27を幅方向Yへ移動する。
【0030】
第2ローラ27と第4ローラ29との間には、中央部材12の各側縁12eのうちの一方の通過位置を検出し、検出した通過位置の信号をコントローラ33に送る位置検出手段34が配される。コントローラ33は、送られてきた通過位置の信号に基づき、幅方向Yにおける第2ローラ27の変位量を求め、変位量の信号をシフト機構32に送る。シフト機構32は、送られてきた変位量の信号に基づき第2ローラ27の傾きや中央部材12の幅方向Yにおける第2ローラ27の位置を変える。このように第2ローラ27の傾きや位置を変えることにより、中央部材12が幅方向Yに変位する。
【0031】
第1ローラ26には、シフト機構37が設けられていることが好ましい。このシフト機構37により、第1ローラ26は、第2ローラ27に向かう中央部材12を一方の部材面から押す。この第1ローラ26の変位量に応じて、第1ローラ26の中央部材12に対する押し圧が変わり、押し圧を調整することにより、第2ローラ27に巻き掛ける中央部材12の巻き掛け中心角を制御することができる。この巻き掛け中心角の制御により、第2ローラ27による中央部材12の幅方向Yでの変位量をより精緻に制御することができる。
【0032】
第3ローラ28は、側部材11の搬送経路を調整して、中央部材12と溶接されるべき一方の側縁11eの通過経路を突き合わせ位置Phに向けて調整する。第3ローラ28には、長手方向の向きを制御するコントローラ38が備えられる。このコントローラ38は、例えば、側部材11と接触している間の接触領域における周方向と中央部材12の搬送方向Xとのなす角θ1が変化するように、第3ローラ28の長手方向を側部材11の部材面に沿って変化させる。
【0033】
以上のように第1ローラ26〜第3ローラ28を用いて、突き合わせ位置Phが第4ローラ29上になるように制御することが好ましい。第1ローラ26〜第3ローラ28は、いずれも周方向に回転する駆動ローラであることが好ましい。周方向に回転することにより、第1ローラ26及び第2ローラ27は、中央部材12の搬送手段としても作用し、第3ローラ28は、側部材11の搬送手段としても作用する。第1ローラ26〜第3ローラ28を駆動ローラとすることにより、側部材11と中央部材12との搬送路の制御がより確実になるとともに、側部材11と中央部材12との第1ローラ26〜第3ローラ28上でのスリップを防止して部材面に傷がつくことが防止される。
【0034】
溶接ユニット18は、互いの側縁11e,12eが接触した状態で突き合わせ部17から供給される側部材11と中央部材12とを溶接する。突き合わせ部17から連続的に供給されることにより、側部材11と中央部材12とを長手方向で溶接する長手溶接工程を行うことができる。溶接ユニット18は、溶接装置42を備える。溶接装置42としては、例えば、レーザ溶接装置が挙げられる。レーザ溶接装置としては、例えば、COレーザ溶接装置や、YAGレーザ溶接装置を用いることができる。本実施態様では、COレーザ溶接装置を溶接装置42として用いた場合を説明する。
【0035】
溶接装置42は、集光したレーザ光を射出して、照射対象としての側部材11及び中央部材12にレーザ光を照射することにより、側部材11と中央部材12とを溶融して接合する。溶接装置42は、レーザ発振器43と、このレーザ発振器43から案内されてきたレーザ光を集光して射出する溶接装置本体46と、レーザ光を照射するにあたりCOガスを供給するガス供給部(図示無し)とを備える。COガスは、側部材11と中央部材12との酸化を防止する。なお、図2においては、図の煩雑化を避けるためにレーザ発振器43の図示は略してある。
【0036】
レーザ溶接装置に代えてTIG溶接(Tungsten Inert Gas welding)装置を用いてもよい。TIG溶接とは、周知のように、アークを熱源とする溶接アーク溶接のひとつであり、シールドガスとしてイナートガス(不活性ガス)を用い、電極にはタングステンあるいはタングステン合金を用いるイナートガスアーク溶接の一種である。TIG溶接よりもレーザ溶接の方がより好ましい。また、TIG溶接とレーザ溶接とを組み合わせたハイブリッド溶接としてもよい。
【0037】
溶接装置本体46のレーザ光の射出口に対向するように、側部材11と中央部材12との搬送路には側部材11と中央部材12とを周面で支持する溶接支持ローラ41が備えてある。溶接支持ローラ41の回転軸は、側部材11及び中央部材12の幅方向Yと平行である。溶接支持ローラ41の周面で支持されている間の側部材11と中央部材12とにレーザ光が照射されるように、溶接支持ローラ41による側部材11と中央部材12との支持位置を設定することが好ましい。すなわち、溶接支持ローラ41上で、溶接をすることが好ましい。これにより、互いに側縁11e,12eが接した状態で側部材11と中央部材12とが安定し、照射すべき箇所にレーザ光を確実に照射することができる。
【0038】
溶接装置本体46には、幅方向Yに変位するためのシフト機構50が備えられることが好ましい。溶接装置42の上流側には、側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとが接している接触位置Ps(図5参照)を検出し、検出した接触位置Ps(図5参照)の信号をコントローラ51に送る位置検出手段47が設けてある。位置検出手段47は、突き合わせ位置Phから溶接装置42(例えば、溶接位置Pw)に至る搬送路近傍に配されてあればよい。
【0039】
コントローラ51は、送られてきた接触位置Ps(図5参照)の信号に基づき、幅方向Yにおける溶接装置本体46の変位量を求め、変位量の信号をシフト機構50に送る。コントローラ51は、側部材11と中央部材12との搬送速度の信号が入力されると、溶接装置本体46を変位させるべき変位量の信号とともに変位させるタイミングの信号とをシフト機構50に送る。シフト機構50は、送られてきた変位量及び変位のタイミングの信号に基づき、溶接装置本体46の位置を所定のタイミングで変える。このように溶接装置本体46の位置を幅方向Yで変えることにより、レーザ光の照射位置をより精緻に制御して、より確実に、側部材11と中央部材12とが溶接される。なお、本実施形態における溶接装置42への側部材11と中央部材12との搬送速度は0.15m/分以上20m/分以下の範囲としてある。
【0040】
溶接ユニット18には、図1に示すように、溶接装置本体46と溶接支持ローラ41とを外部空間と仕切るチャンバ52と、気体を清浄化する清浄装置55とを設けることがより好ましい。なお、図2においては、図の煩雑化を避けるためにチャンバ52と清浄装置55との図示は略してある。チャンバ52には、内部気体を外部に出す第1開口(図示無し)と、清浄装置55で清浄化された気体を内部に案内する第2開口(図示無し)とが設けられる。第1開口と第2開口とは、それぞれ清浄装置55に接続する。チャンバ52の内部気体は、第1開口から清浄装置55に案内され、清浄装置55はチャンバ52から案内されてきた気体を清浄化して第2開口を介してチャンバ52に送る。このように、チャンバ52の内部気体は、清浄装置55との間で循環される。
【0041】
チャンバ52の内部気体を清浄化しておくことにより、溶接位置Pw及びその周辺が清浄化され、溶接部13wに異物等が混入されてしまうことが防止される。なお、チャンバ52の内部の圧力が、外部空間の圧力よりも高く保持することにより、チャンバ52の内部を清浄化した状態により確実に保持することができる。また、溶接位置Pwを、送出部16、突き合わせ部17、加熱部19、巻取装置20に対して相対的に高い位置にすることにより、これらから異物が案内されることをより防止することができる。
【0042】
チャンバ52の内部の清浄度は、例えば、米国連邦規格FED−STD−209Dでのクラス1000以下とすることが好ましく、クラス100以下にすることがより好ましい。
【0043】
加熱部19は、溶接ユニット18よりも下流側に設けられることが好ましい。加熱部19は、溶接により得られたバンド部材13の溶接部13wを一定の温度範囲になるように加熱するものであれば特に限定されない。溶接部13w及びその周辺には、溶接により生じたひずみに起因する応力が内部に残っていることがある。このような溶接部13wやその周辺を加熱部19により加熱することにより応力を除去することができる。この応力の除去により、長時間連続して溶液製膜方法を行う場合であっても、溶接部13wの変形を抑えることができる。
【0044】
加熱部19の加熱による溶接部13wの温度は、応力が除去される温度であれば特に限定されないが、例えばバンド部材13がステンレス鋼からなる場合には、溶接部13wの温度は、100℃以上200℃以下であることが好ましく、120℃以上180℃以下であることがより好ましい。
【0045】
加熱部19としては、例えば、送風手段がある。加熱部19としての送風手段は、図1に示すように、一定の温度の気体を吹き出すダクト56と、気体の温度を制御した上でこの気体をダクト56に送り込む送風機57とがある。なお、図2においては、図の煩雑化を避けるためにダクト56と送風機57との図示は略してある。
【0046】
加熱部19は、バンド部材13の搬送路に関し、図1のように溶接支持ローラ41とは反対側に設けてもよいし、溶接支持ローラ41と同じ側に設けてもよい。
【0047】
応力を除去されたバンド部材13は、加熱部19の下流の巻取装置20に送られ、ロール状に巻き取られる。巻取装置20には、バンド部材13を巻き取る巻き芯がセットされ、この巻き芯を周方向に回転させる駆動手段が設けられている。
【0048】
巻取装置20は、溶接位置Pwにおけるバンド部材13と側部材11及び中央部材12との張力を制御する溶接張力制御手段としても作用する。そこで、溶接位置Pwにおけるバンド部材13と側部材11及び中央部材12との張力が一定に保持されるように、巻取装置20のトルクを制御することが好ましい。これにより、溶接部13wを長手方向において一定の状態にすることができる。
【0049】
溶接を開始する場合には、例えば、巻取装置20を用いて以下のようにすると好ましい。まず、送出部16から巻取装置20に至る搬送路に側部材11と中央部材12とをセットし、側部材11と中央部材12との各先端を巻取装置20の巻き芯に巻き掛ける。側部材11と中央部材12との巻取を開始する。巻取を開始して、側部材11と中央部材12との搬送の経路を制御して突き合わせ位置Phを所定位置に保持する。側部材11と中央部材12との突き合わせ位置Phが一定に保持されるようになった後に、溶接装置42により溶接を開始する。
【0050】
溶接は、側部材11と中央部材12とバンド部材13との位置ずれを抑止しながら実施することが好ましい。例えば、溶接ユニット18に代えて、押圧装置を備える図3及び図4に示すような溶接ユニット61を用いてもよい。溶接ユニット61は、図1及び図2に示す溶接ユニット18に、押圧装置62をさらに備えたものであり、シフト機構50、コントローラ51、チャンバ52、清浄装置55を溶接ユニット18と同様に備えるが、図示の煩雑化を避けるため図3及ぶ図4ではこれらの図示を略してある。また、図1及び図2と同じ装置、部材については図1及び図2と同じ符号を付し、説明を略す。なお、溶接ユニット61では、チャンバ52は、押圧装置62と溶接支持ローラ41とを外部空間と仕切るように囲む。
【0051】
押圧装置62は、溶接位置Pwにおける側部材11と中央部材12とバンド部材13との位置ずれを抑止するものであり、第1ベルト63及び第2ベルト64とからなる1対のベルトにより、溶接支持ローラ41上の側部材11と中央部材12とバンド部材13とを押さえる。
【0052】
第1ベルト63と第2ベルト64とは、環状に形成された無端のベルトである。第1ベルト63と第2ベルト64とは、第5ローラ67〜第7ローラ69の周面に、第5ローラ67〜第7ローラ69の各長手方向に並ぶように巻き掛けられる。第5ローラ67〜第7ローラ69のうち少なくともいずれかひとつのローラは、周方向に回転する駆動ローラとされる。この駆動ローラの回転によって、第1ベルト63と第2ベルト64とは、互いに平行な搬送路を保持しながら、搬送される。
【0053】
第5ローラ67〜第7ローラ69は、回転軸が溶接支持ローラ41の回転軸と平行となるように配される。
【0054】
第5ローラ67〜第7ローラ69は、側部材11と中央部材12との搬送路に関し、第4ローラ29と溶接支持ローラ41とが配されてある側とは反対側の領域に配される。第5ローラ67は、第4ローラ29から溶接支持ローラ41へ向かう側部材11と中央部材12との搬送路に対向するように設けられる。第6ローラ68は、溶接支持ローラ41から加熱部19に向かう側部材11と中央部材12との搬送路に対向するように設けられる。第7ローラ69は、第6ローラ68から第5ローラ67へ向かう第1ベルト63と第2ベルト64との搬送路を決定するように、適宜配される。
【0055】
第5ローラ67と第6ローラ68とは、第5ローラ67から第6ローラ68に向かう第1ベルト63と第2ベルト64とが、溶接支持ローラ41上の側部材11と中央部材12とバンド部材13とを押圧するように搬送されるように配される。例えば、溶接支持ローラ41上の側部材11と中央部材12とを上方から溶接する場合には、第5ローラ67と第6ローラ68とは、これらの各下端が、溶接支持ローラ41の上端よりも低い位置となるように配される。
【0056】
第5ローラ67と第6ローラ68とは、第1ベルト63の搬送路が側部材11と側部材11から形成されるバンド部材13の側部13sとの搬送路と対向するように、また、第2ベルト64の搬送路が中央部材12と中央部材12から形成されるバンド部材13の中央部13cとの搬送路に対向するように、設けられる。これにより、第1ベルト63は側部材11と側部13sとを、第2ベルト64は中央部材12と中央部13cとを、それぞれ溶接支持ローラ41に押圧する。
【0057】
以上のように、第1ベルト63と第2ベルト64とは、それぞれ溶接支持ローラ41にそれぞれ対向して設けられ、溶接位置Pwにおける側部材11と中央部材12との高さが等しくなるように押圧する。側部材11と中央部材12との高さとは、各部材11,12の表面の高さである。このように高さが等しくなるように側部材11と中央部材12とを押さえ、この状態で溶接を実施することにより、溶接部13wの態様が長手方向でより均一になるとともに、溶接をより確実に行うことができる。
【0058】
図5及び図6を参照しながら、長手溶接工程についてさらに詳細に説明する。第1ベルト63と第2ベルト64とは、互いに離れた状態で搬送される。第1ベルト63と第2ベルト64とは、溶接位置Pwが第1ベルト63と第2ベルト64との隙間を通過するように搬送路が設定される。これにより、側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとが接している接触位置Psは、図5に示すように第1ベルト63と第2ベルト64との隙間を通過し、第1ベルト63と第2ベルト64との間で溶接される。なお、図5においては溶接装置本体46の図示を略してある。
【0059】
第1ベルト63と第2ベルト64との間隔D1は、6mm以上12mm以下の範囲とすることが好ましい。側部材11と中央部材12との幅方向Yにおける断面において、接触位置Psと第1ベルト63との距離D2、及び、接触位置Psと第2ベルト64との距離D3は、それぞれ3mm以上6mm未満の範囲とすることが好ましい。
【0060】
押圧装置62に代えて、溶接支持ローラ41の回転軸と平行な回転軸を有するローラ(図示無し)を溶接装置本体46の上流と下流とにそれぞれ配してもよい。この場合には、上流の一方のローラで側部材11と中央部材12と押さえ、下流の他方でバンド部材13を押さえることにより、溶接位置Pwにおける側部材11と中央部材12とを押圧することができる。
【0061】
図6に示すように、接触位置Ps及びこの周辺には溶接装置42の熱により溶解されて溶接ビード72が形成される。この溶接ビード72から両側に熱が伝わり、側部材11と中央部材12とのそれぞれに溶接での熱の影響を受ける熱影響領域73が生じる。この熱影響領域73は、熱影響をうけない他の領域とは異なる性状をただちに示したり、経時的に示すようになったりすることがある。例えば、このように熱影響が幅広く生じたものを流延支持体として用いると、溶液製膜方法を長時間連続して行う場合に、溶接部13wが変形する、あるいは、流延膜が発泡するなどの弊害が生じる。
【0062】
そこで、図5に示すように、溶接支持ローラ41の周面のうち、接触位置Psが通過する通過領域には、側部材11及び中央部材12よりも熱伝導率が高い素材からなる高熱伝導部71が形成されていることが好ましい。これにより、溶接装置42(図3、図4参照)からの熱をよりはやく拡散させることができる。熱をよりはやく溶接支持ローラ41側で拡散させるために、側部材11と中央部材12との熱影響領域73の幅をより小さくしたり熱影響領域73の深さも浅くすることができる。
【0063】
高熱伝導部71とされる通過領域の幅D4は26mm以上32mm以下の範囲であることが好ましい。
【0064】
さらに、第1ベルト63及び第2ベルト64の両面にも、側部材11及び中央部材12よりも熱伝導率が高い素材からなる高熱伝導部が形成されていることがより好ましい。これにより、熱影響領域73の大きさを、幅方向または厚み方向において小さくすることができる。
【0065】
側部材11の側縁11eと中央部材12の側縁12eとは、溶接位置Pwにおいて隙間が0(ゼロ)になるように密着した状態であることが好ましい。そこで、側部材11と中央部材12とは、各側縁11e及び12eを突き合わせたときに隙間が生じないような形状に予め形成されてあることが好ましい。これにより、溶接部に空隙がないバンド部材をより確実に製造することができる。
【0066】
上記の長手溶接工程は、側部材11と中央部材12との長手方向に連続して溶接を実施する連続溶接工程のみであってもよいし、これに加えて、断続的に溶接を実施する断続溶接工程を実施してもよい。断続的に溶接すると、溶接装置42に連続的に送られてくる側部材11と中央部材12とは、間欠的に溶接される。このような断続溶接工程は、連続溶接工程の前に行うことが好ましい。この場合には、断続溶接工程で、まず、側部材11と中央部材12とを仮接合し、その後、連続溶接工程で長手方向全域に亘り接合するとよい。
【0067】
断続溶接工程で仮接合し、その後連続溶接工程で接合を行う場合には、突き合わせ部17(図1,図2参照)から溶接ユニット18に側部材11と中央部材12とを案内して断続的に溶接する。なお、側部材11と中央部材12とに、後の流延支持体として用いる際の流延面に対応する表面と、非流延面に対応する裏面とを設定してある場合には、断続溶接工程での溶接は、裏面に対して行うことが好ましい。そこで、裏面が溶接装置本体46(図1参照)に対向して通過するように、側部材11と中央部材12とを搬送する。
【0068】
断続溶接工程を行った後に、巻取装置20に案内して巻き取る。なお、巻取前に溶接部に対して加熱部19により加熱してもよい。断続溶接工程を経て巻き取られた側部材11と中央部材12とからなる仮接合部材(図示無し)を、送出装置(図示無し)により巻きだして溶接ユニット18に再び送る。この送り出しは、仮溶接部材の表面が溶接装置本体46(図1参照)に対向して通過するように行う。溶接ユニット18では連続溶接を行い、バンド部材13を得る。なお、この方法に代えて、ふたつの溶接ユニット18を相対的に上流と下流とに並べて配し、上流の一方の溶接ユニット18で断続溶接を実施し、下流の他方の溶接ユニット18で連続溶接を実施してもよい。
【0069】
溶接を行うと溶接ビード72が側部材11と中央部材12とよりも盛り上がって形成される場合がある。そこで、以上のように一方の面を長手方向で溶接する第1工程と他方の面を長手方向で溶接する第2工程とを実施する場合において用いる溶接支持ローラ41には、図5に示すように、溶接支持ローラ41の周面のうち接触位置Psが通過する通過領域に、溝76が形成されてあることが好ましい。第1工程で盛り上がった溶接ビート72から形成された溶接部が、この溝76を通過するように、側部材11と中央部材12とを搬送して第2工程を実施するとよい。これにより、より平滑で、残留応力がより少ないバンド部材13を得ることができる。したがって、溶液製膜で用いても流延支持体としてのバンドに変形や、性状の変化がより少なく、流延膜が発泡せず、厚みのむらがないフィルムをより確実に製造することができる。
【0070】
溝76の幅D5は、6mm以上12mm以下の範囲であることが好ましく、溝の深さD6は、1mm程度でよい。
【0071】
以上の実施形態では突き合わせ部17における側部材11の搬送経路を調整する手段として第3ローラ28を用いるが、第3ローラ28に代えて、図7に示すようなテーパローラ81を用いてもよい。テーパローラ81は、一端から他端に向けて径dが連続的に漸減するように形成された断面円形のローラである。径dは、一端から他端に向けて一定の割合で連続的に漸減する。径dの大きい一端が中央部材12の搬送路に向き、径dの小さい他端が中央部材12とは反対側(側部材11の搬送路側)に向くように、テーパローラ81を配する。
【0072】
搬送されている側部材11は、このテーパローラ81に接触することにより、搬送の経路を中央部材12に向かう矢線Aの方向に変え、中央部材12に寄るようになる。これにより、突き合わせ位置Ph(図1、図2参照)に向けて側部材11は確実に搬送される。
【0073】
テーパローラ81には、周方向に回転する駆動手段82が備えられていることが好ましい。回転軸は、一端面の中央と他端面の中央とを挿通して形成されてある。駆動手段82で回転するテーパローラ81により側部材11を搬送することにより、側部材はより効果的に中央部材12に寄るようになる。
【0074】
第3ローラ28に代えて、図8に示すような把持手段としてのクリップ85を用いてもよい。クリップ85は、コの字状に開いたクリップ本体86と、クリップ本体86の各先端部に設けられた1対の狭持ピン87とを備え、側部材11を狭持して把持する。狭持ピン87は、側部材11を狭持する狭持位置と、狭持位置から退避する退避位置との間で移動自在に設けられる。クリップ85は、移動機構88を備え、把持を開始する把持開始位置と、把持を解除する把持解除位置との間で移動自在とされる。また、クリップ85は、幅方向Yにも移動自在とされる。
【0075】
クリップ85は、把持開始位置で狭持ピン87が狭持位置に移動することにより側部材11を把持する。クリップ85は、側部材11を把持した状態で中央部材12に向かう方向Aに寄せつつ、下流へと搬送する。
【0076】
テーパローラ81とクリップ85とは、側部材11を中央部材12へ寄せるために用いる他に、中央部材12を側部材11に寄せるために用いてもよい。この場合には、テーパローラ81、クリップ85で中央部材12を支持あるいは搬送するとよい。
【0077】
上記の実施形態では、中央部材12に両側部材11を同時に溶接しているが、一方の側部材11を中央部材12に溶接した後に、他方の側部材11を中央部材12に溶接してもよい。
【0078】
図9に示すように、流延支持体として用いるバンド91は、環状にされた無端(エンドレス)のバンドである。バンド91は、バンド部材13の長手方向における一端と他端とを溶接してなる。なお、バンド91をつくるためのバンド部材13は、所定の長さにカットしても良いし、あらかじめ所定の長さにカットされた側部材11と中央部材12とからバンド部材13を作った場合は、カットせずにそのまま、バンド91をつくってもよい。当該溶接部におけるピンホールの直径は40μm未満であることが好ましい。
【0079】
バンド部材13は、幅方向Yと交差する方向でカットすることが好ましい。カットの方向は、幅方向Yとなす角が概ね5°以上15°以下の範囲となるようにカットすることがより好ましい。このようにカットしたバンド部材13の長手方向における一端と他端とを溶接した溶接部91vと、幅方向Yとのなす角θ2は、概ね5°以上15°以下の範囲となる。このように長尺のバンド部材13を環状にする環状溶接工程では、長手溶接工程で用いた溶接装置42を用いてもよいし、公知の他の溶接装置を用いてもよい。
【0080】
溶接により製造されたバンド91は、側部材11(図1〜図8参照)から形成された側部91sと、中央部材12(図1〜図8参照)から形成された中央部91cとからなり、側部91s及び中央部91cの溶接部91wはバンド表面91aや裏面91bに露出する。溶接部91wは、溶接部13wに相当する部分である。線状の溶接部91wは、バンド91の長手方向と平行となるように設けられることが好ましい。このように得られるバンド91の幅は、2000mm以上3000mm以下の範囲である。
【0081】
得られたバンド91は、表面を研磨して鏡面にした後、溶液製膜設備に用いられる。次に、溶液製膜設備において、フィルムを製造する方法について以下に説明する。ポリマーの種類は特に限定されず、溶液製膜でフィルムにすることができる公知のポリマーを用いてよい。以下の実施形態では、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いた場合を例にして説明する。
【0082】
図10に示すように、溶液製膜設備110は、セルロースアシレート111が溶剤112に溶解したドープ113からフィルム116を形成するフィルム形成装置117と、フィルム116の各側部を保持手段120aで保持しながら乾燥をすすめる第1テンタ120と、フィルム116を複数のローラ122で支持しながら乾燥するローラ乾燥装置124と、フィルム116の各側部を保持手段125aで保持し、幅方向への張力をフィルム116に付与する第2テンタ125と、第2テンタ125の保持手段125aにより保持された各耳部を切除するスリッタ126と、耳部を切除されたフィルム116を巻き芯に巻いてロール状にする巻取装置127とを上流側から順に備える。
【0083】
フィルム形成装置117は、周方向に回転する1対の製膜用ローラ131、132を備える。1対の製膜用ローラ131、132は、水平面上において互いに平行となるように並べられ、製膜用ローラ131と製膜用ローラ132とには、バンド91が巻き掛けられる。製膜用ローラ131はドライブローラであり、製膜用ローラ132はフリーローラである。製膜用ローラ131,132には、周面温度を所定の温度に制御する第1コントローラ(図示せず)及び第2コントローラ(図示せず)がそれぞれ備えられる。
【0084】
フィルム形成装置117には、バンド91の移動方向上流側から下流側に向かって、ドープ113を流出する流延ダイ133と、膜乾燥装置134と、剥取ローラ135とが順次設けられる。
【0085】
図11及び図12に示すように、流延ダイ133は、製膜用ローラ131に支持されたバンド91の表面(以下、バンド表面と称する)91aに向けてドープ113(図10参照)を流下するものであり、ドープ113(図10参照)が流出する流出口133aを先端に備える。流延ダイ133は、流出口133aがバンド91のバンド表面91aと正対するように配される。
【0086】
流延ダイ133から流下したドープ113(図10参照)はバンド表面91a上の到達位置DPに着地する。バンド91は移動状態であるため、到達位置DPに着地したドープ113(図10参照)は、バンド表面91aに設定された流延エリアCAにて流れ延ばされる。こうして、流延エリアCAには、ドープ113(図10参照)からなり流延幅CWの流延膜136が形成される。
【0087】
流延ダイ133は、到達位置DPが次に述べるような位置となるように配される。図11及び図13に示すように、到達位置DPは、バンド表面91aのうち製膜用ローラ131に支持された部分に設定される。到達位置DPは製膜用ローラ131の頂部TPよりもバンド91の移動方向上流側に設定されることが好ましい。また、回転軸131aの回転中心O131aから頂部TPに向かって延びる面LTPと、回転軸131aの回転中心O131aから到達位置DPに向かって延びる面LDPとがなす角の角度φ1は、0°以上45°以下であることが好ましい。
【0088】
図10に示すように、膜乾燥装置134は、第1ダクト141〜第3ダクト143を有する。流延膜136に向けて乾燥風を送り出す第1ダクト141〜第3ダクト143は、バンド91の移動路に沿って上流側から順に配される。第1ダクト141は、製膜用ローラ131から製膜用ローラ132へ向かって移動するバンド91のバンド表面91a側及びバンド裏面91b側に設けられる。第2ダクト142は、製膜用ローラ131に支持されたバンド91のバンド表面91a側に設けられる。第3ダクト143は、製膜用ローラ132から製膜用ローラ131へ向かって移動するバンド91のバンド表面91a側及びバンド裏面91b側に設けられる。
【0089】
第1ダクト〜第3ダクト141〜143は、それぞれ送風機(図示せず)に接続する。送風機には、第1ダクト〜第3ダクト141〜143のそれぞれへ供給する気体の温度、湿度、流量を独立して制御する送風コントローラ(図示せず)が接続する。第1ダクト〜第3ダクト141〜143には、送風機から供給された気体を乾燥風として送り出す送出口が設けられる。第1〜第3ダクト141〜143に設けられた送出口は、バンド表面91a及び裏面91bと対向するように形成される。
【0090】
第1ダクト141〜第3ダクト143に設けられた流出口は、スリット状に形成され、バンド91の一方の端から他方の端にかけて延設される。バンド91の幅方向における各流出口の長さは、流延膜136全体に乾燥風があたるようなものとなっていればよい。
【0091】
乾燥風の温度は、バンド91の移動路の上流側から下流側に向かうに従って低くなることが好ましい。第1ダクト141からの乾燥風の温度は、50℃以上140℃以下であることが好ましく、第2ダクト142からの乾燥風の温度は、50℃以上140℃以下であることが好ましく、第3ダクト143からの乾燥風の温度は、40℃以上100℃以下であることが好ましい。
【0092】
図11に示すように、製膜用ローラ131は、回転軸131aと、回転軸131aに軸着されたローラ本体131bとからなる。製膜用ローラ132は、製膜用ローラ131と同様の構造である。図12に示すように、回転軸131aには、モータ171と駆動部172とが接続する。モータ171により、製膜用ローラ131は回転軸131aを中心に回転する。駆動部172は、製膜用ローラ132(図10参照)から製膜用ローラ131に向かう外力を回転軸131aへ印加する。回転軸131aへ外力F1を印加することにより、バンド91には移動テンションT1が印加される。また、回転軸131aにはロードセル173が取り付けられる。ロードセル173は、回転軸131aが受ける外力F1の大きさを検知する。制御部(図示しない)は、ロードセル173が検知した外力F1を、内部メモリに記憶されている値で除して、移動テンションT1を算出する。移動テンションT1の大きさは、バンド91の寸法や移動路に応じて決定すればよく、例えば、60N/mmである。
【0093】
次に、溶液製膜設備110で行われる溶液製膜方法について説明する。溶液製膜方法では、膜形成工程と、膜乾燥工程と、剥取工程と、フィルム乾燥工程とが順次行われる。
【0094】
膜形成工程では、図11に示すように、流延ダイ133は、バンド表面91aへドープ113(図10参照)を連続的に流出する。膜形成工程により、流延エリアCA(図12参照)には、ドープ113からなり流延幅CW(図12参照)の流延膜136が形成される。
【0095】
図10及び図11に示すように、膜乾燥工程では、第1ダクト141が流延膜136及びバンド91の裏面91bに向けて、第2ダクト142が流延膜136に向けて、第3ダクト143が流延膜136及びバンド91の裏面91bに向けて、それぞれ乾燥風を送り出す。乾燥風が流延膜136にあたると、流延膜136から溶剤が蒸発する。また、乾燥風の接触によりバンド裏面91bが加熱される結果、流延膜136における溶剤が促進する。更に、第2コントローラにより、製膜用ローラ132の周面の温度は、流延膜136の温度よりも高温となるように調節されている。製膜用ローラ132との接触によりバンド91がバンド裏面91b側から加熱される結果、製膜用ローラ132からの熱が流延膜136に伝わる。こうして、流延膜136における溶剤が促進する。
【0096】
剥取工程では、溶剤の蒸発により、第1テンタ120への搬送が可能な程度になった流延膜136を、溶剤を含む状態でバンド91から剥がす。剥ぎ取りの際には、フィルム116を剥取ローラ135で支持し、流延膜136がバンド91から剥がれる剥取位置PPを一定に保つ。なお、剥取ローラ135は、駆動手段を備え周方向に回転する駆動ローラであってもよい。
【0097】
流延膜136が剥ぎ取られたバンド91は、膜乾燥装置134により、流延ダイ133から流出するドープ113よりも高温となっている。このようなバンド91に対し、そのままドープ113を流出すると、ドープ113の発泡が起こってしまう。そこで、第1コントローラを用いて、製膜用ローラ131の周面の温度を、流延ダイ133から流出するドープ113よりも低温となるように調節する。これにより、製膜用ローラ131に支持されたバンド91は、流延ダイ133から流出するドープ113よりも低温となるため、ドープ113の発泡を防止することができる。
【0098】
剥ぎ取られた流延膜136、すなわちフィルム116は、第1テンタ120、ローラ乾燥装置124、第2テンタ125へと順次案内される。第1テンタ120、ローラ乾燥装置124、第2テンタ125では、フィルム116が所定の乾燥気体と接触するフィルム乾燥工程が行われる。フィルム乾燥工程により、フィルム116の乾燥が進行する。
【0099】
スリッタ126は、フィルム116の耳部を切除する耳切工程を行う。耳部が切除されたフィルム116は、巻取装置127によって、ロール状となる。
【0100】
(バンド検査装置)
次に、バンド製造設備10(図1参照)で製造されたバンド91について、溶液製膜方法で用いたときにバンドの反りに起因して厚みムラが生じないか否かの検査を行うバンド検査装置について説明する。
【0101】
図14及び図15に示すように、バンド検査装置200は、1対の検査用ローラ201、202と、シフト部203と、モータ205と、駆動部206と、ロードセル207と、センサユニット208と、制御部210(図16参照)とを備える。
【0102】
1対の検査用ローラ201、202は、検査対象のバンド91を巻き掛けるためのものであり、水平面上において互いに平行となるように並べられる。検査用ローラ201はドライブローラであり、検査用ローラ202はフリーローラである。検査用ローラ201、202の形状及び寸法は、製膜用ローラ131,132と同一のものを用いることが好ましい。例えば、検査用ローラ201、202の直径は、製膜用ローラ131,132の直径と同一であることが好ましい。
【0103】
なお、検査用ローラの直径が製膜用ローラの直径と異なる場合であっても、検査用ローラに巻き掛けられたバンドにはたらく垂直応力が製膜用ローラに巻き掛けられたバンドにはたらく垂直応力と等しい条件下であれば、本発明を適用できる。直径Drのローラに巻き掛けられたバンドにはたらく垂直応力Nは、次式で表すことができる。ここで、T1はバンドの移動テンションであり、THbはバンドの厚みである。
N=THb×T1/0.5Dr
【0104】
検査用ローラ201は、回転軸201aと回転軸201aに軸着されたローラ本体201bとからなる。検査用ローラ202は、回転軸202aと回転軸202aに軸着されたローラ本体202bとからなる。
【0105】
回転軸202aは、検査用ローラ201、202に掛け渡されたバンド91に所定のテンションが印加されるテンション印加位置Ptと、検査用ローラ201、202に掛け渡されたバンド91が弛む弛み位置Pr(図17参照)との間で移動自在となっている。シフト部203は、図示しないシフト制御部の制御の下、テンション印加位置Ptと弛み位置Prとの間で、回転軸202aを変移させる。
【0106】
検査対象のバンド91は、検査用ローラ201と検査用ローラ202とに巻き掛けられる。ローラ本体201bの周面201bxのうち軸方向中央部201bcはバンド裏面91bを支持する。ローラ本体201bの周面201bxのうち軸方向端部201beは露出する。
【0107】
回転軸201aはモータ205と接続する。モータ205により、ローラ本体201bは回転軸201aを中心に回転する。駆動部206は、ローラ本体202bからローラ本体201bへ向かう外力F2を回転軸201aへ印加する。回転軸201aへ外力F2を印加することより、検査用ローラ202、201に掛け渡されたバンド91には移動テンションT2が印加される。ロードセル207は、回転軸201aが受ける外力F2の大きさを検知する。
【0108】
検査用ローラ201に支持されたバンド91のバンド表面91a上には、バンド91の幅方向へ延びる測定位置MP1が設定される。測定位置MP1は、到達位置DP(図11参照)に対応するものである。すなわち、回転軸201aの回転中心O201aから検査用ローラ201の頂部TPに向かって延びる面MTPと回転軸201aの回転中心O201aから測定位置MP1に向かって延びる面MMP1とがなす角の角度φ2は、角度φ1(図11参照)と等しい。
【0109】
周面201bxには、測定位置MP2が設定される。測定位置MP2は、面MMP1との軸方向端部201beとの交線である。
【0110】
センサユニット208は、バンド91のバンド表面91a側であって、面MMP上に配されることが好ましい。センサユニット208は、測定位置MP1と正対する測定窓208aを備える。測定窓208aは、バンド91を支持するローラ本体201bの軸方向の一端から他端にかけて、バンド91の幅方向へ延設される。
【0111】
また、センサユニット208は、測定窓208aから測定位置MP1までの距離や測定窓208aから測定位置MP2までの距離を測定する測距センサ208xと、バンド表面91aに設定された基準位置が、測定位置MP1上に有るか否かを検知する基準位置検知センサ208yとを備える。測距センサ208xは、センサデバイス(図示しない)と、内蔵CPU(図示しない)と、内蔵メモリ(図示しない)とを有する。基準位置検知センサ208yとしては、例えば、反射型フォトセンサを用いることができる。なお、バンド表面91aに設定された基準位置については後述する。
【0112】
バンド91の幅方向へ延びる厚み測定ラインST(j)[j=1,2,3,・・・,n]は、バンド91の長手方向に並ぶように設定される。また、バンド91の長手方向へ延びる厚み測定ラインSM(i)[i=1,2,3,・・・,m]は、バンド91の幅方向に並ぶように設定される。なお、隣り合う厚み測定ラインSTの間隔、及び隣り合う厚み測定ラインSMの間隔は、予め所定の値に設定される。
【0113】
図16に示すように、制御部210は、CPU211と記憶部212と距離算出部216と浮き量算出部217と判定部218とを備える。
【0114】
CPU211は、バス222を介して、記憶部212や各部216〜218と電気的に接続する。記憶部212には、プログラムや各データが格納されている。記憶部212に格納されたプログラムとしては、バンドの検査用プログラムなどがある。また、記憶部212に格納されたデータとしては、バンドの厚み情報225(図18参照)、閾値TH1や移動テンションT1等がある。
【0115】
図18に示すように、バンドの厚み情報225は、それぞれの厚み測定ラインST(図15参照)の位置情報MDと、それぞれの厚み測定ラインST(図15参照)におけるバンド91の厚み分布情報DBとからなる。位置情報MDは、バンド91の長手方向において基準位置B1(図15参照)から、任意の厚み測定ラインS(j)までの距離L(j)(図15参照)を表す。ここで、基準位置B1はバンド表面91aに露出した溶接部91v(図15参照)である。
【0116】
厚み分布情報DBは、厚み測定ラインSTと厚み測定ラインSMとの各交点Pにおけるバンド91の厚みの測定値Dからなり、厚み測定ラインSTごとに、測定値Dがグルーピングされている。例えば、任意の厚み測定ラインST(j)と任意の厚み測定ラインSM(i)との交点P(i,j)におけるバンド91の厚みの測定値をD(i,j)と表す場合、任意の厚み測定ラインST(j)についての厚み分布情報DB(j)には、D(1、j),D(2、j),D(3、j),・・・,D(i−1、j),D(i、j),D(i+1、j)・・・,D(m,j)が含まれる。なお、測定値D(i,j)は、予め、超音波センサなどにより得ることができる。
【0117】
図16に示すように、距離算出部216は、式(2)により、ローラ本体201bの周面201bxからバンド表面91aまでの距離H(図19参照)を算出する。
式(2) H=B−A
Aは、測定窓208aから測定位置MP1までの距離(図19参照)であり、Bは、測定窓208aから測定位置MP2までの距離(図19参照)である。
【0118】
浮き量算出部217は、式(1)により、周面201bxからバンド裏面91bまでの浮き量CL(図20参照)を算出する。
式(1) CL=H−D
【0119】
判定部218は、浮き量算出部217により算出したCLの全てが閾値TH1以下であるか否かを判定する。閾値TH1は、記憶部212に格納される。閾値TH1は、バンド91の目標品質に応じて決定すればよい。溶液製膜方法において、厚みムラ故障や、厚みムラ故障に起因する剥げ残り故障や発泡を抑えるためには、閾値TH1を0.1mm以下に設定することが好ましい。
【0120】
次に、図14に示すバンド検査装置200におけるバンド検査工程230(図21参照)について説明する。
【0121】
まず、シフト部203は、回転軸202aを弛み位置Prにセットする(図17参照)。検査対象のバンド91を検査用ローラ201、202に掛け渡す。その後、シフト部203は、回転軸202aをテンション印加位置Ptにセットする(図21のS10)。
【0122】
図15及び図16に示すように、駆動部206は、制御部210の制御の下、回転軸201aに外力F2を加える。ロードセル207は外力F2を検知する。制御部210は、ロードセル207から外力F2を読み取り、記憶部212から値BSを読み取る。値BSは、バンド91の平均断面積Savに2を乗じたものである。次に、制御部210は、外力F2を値BSで除して、移動テンションT2を算出する。そして、制御部210は、算出した移動テンションT2が記憶部212から読み取った移動テンションT1と等しくなるように、外力F2の大きさを調節する。こうして、バンド91には、製膜時と同一の移動テンションが印加される(図21のS11)。
【0123】
図14及び図15に示すように、モータ205が回転軸201aを回転すると、バンド91は長手方向へ移動する。基準位置検知センサ208yは、光源を用いてテスト光を測定位置MP1へ放つ。基準位置検知センサ208yから放たれたテスト光は、測定位置MP1にて反射して、反射光となって測定窓208aに入射する。基準位置検知センサ208yは、測定窓208aから入射した反射光の量を検知する。内蔵されるCPUは、検知した反射光の量が基準量に満たない場合には、CPU211へ基準位置検知信号を送る。ここで、基準量は、測定位置MP1上にテスト光を当てたときに、基準位置B1を除くバンド表面91aにおける反射光の量である。こうして、基準位置検知センサ208yは、測定位置MP1上にて基準位置B1の検知を行う(図21のS12)。
【0124】
CPU211は、基準位置検知信号を受信した時点から所定の時間t1だけ、モータ205を介して、検査用ローラ201を回転させる。検査用ローラ201の回転により、バンド91は長手方向へ時間t1に応じた距離Lだけ送り出される。例えば、バンド91が基準位置B1から距離L(j)だけ送り出されると、厚み測定ラインST(j)が基準位置MP1上に位置する(図21のS13)。
【0125】
図19に示すように、センサユニット208は、測距センサ208x(図16参照)を用いて、基準位置MP1上の交点P(図15参照)ごとに、バンド表面91aから測定窓208aまでの距離Aを測定する(図21のS14)。例えば、厚み測定ラインST(j)が基準位置MP1上に位置する場合(図15参照)、測距センサ208x(図16参照)は、厚み測定ラインST(j)上の交点P(i,j)[i=1,2,3,・・・m]における距離A(i,j)[i=1,2,3,・・・m]を測定する。
【0126】
また、センサユニット208は、測距センサ208x(図16参照)を用いて、基準位置MP2(図15参照)において、軸方向端部201beから測定窓208aまでの距離Bを測定する。厚み測定ラインS(j)が基準位置MP1上に位置する場合、測距センサ208x(図16参照)は、軸方向端部201beから測定窓208aまでの距離B(j)を測定する(図21のS15)。なお、距離B(j)の測定点は、測定位置MP2上に設定した点であれば、1つでもよいし、複数でもよい。距離B(j)の測定点を1点設定した場合は、その測定点における測定値を距離B(j)とすればよい。また、距離B(j)の測定点を複数設定した場合は、それぞれの測定点における測定値の平均値を、距離B(j)としてもよい。
【0127】
距離Aと距離Bとの測定値は、それぞれ記憶部212(図16参照)へ格納される(図21のS16)。
【0128】
CPU211は、全ての厚み測定ラインSTについての測定が終わっているか否かの判定を行う(図21のS17)。全ての厚み測定ラインSTについての測定が終わっていると判定した場合には、次の処理(図21のS20)に進む。一方、全ての厚み測定ラインSTについての測定が終わっていないと判定した場合には、次の厚み測定ラインSTが基準位置MP1上にくるまでバンド91を移動させるステップ(図21のS18)と、当該厚み測定ラインSTについて測定を行う一連のステップ(S14〜S16)とを繰り返し行う。
【0129】
距離算出部216は、式(2)により、軸方向端部201beからバンド表面91aまでの距離H(図20参照)を算出する(図21のS20)。算出された距離Hは記憶部212(図16参照)へ格納される
式(2) H(i,j)=B(j)−A(i,j)
[j=1,2,3,・・・n] [i=1,2,3,・・・m]
【0130】
浮き量算出部217は、バンドの厚み情報225を記憶部212から読み込み、式(1)により、浮き量CL(i,j)(図21参照)を算出する(図21のS21)。算出された浮き量CLは記憶部212(図16参照)へ格納される。
式(1) CL(i,j)=H(i,j)−D(i,j)
[j=1,2,3,・・・n] [i=1,2,3,・・・m]
【0131】
判定部218は、当該バンド91の浮き量CL(i,j)の全てが閾値TH1以下であるか否かを判定する(図21のS22)。浮き量CL(i,j)の全てが閾値TH1以下であると判定した場合には、当該バンド91は「合格品」と判定する(図21のS23)。一方、許容範囲外であると判定されたバンド91は「不合格品」と判定する(図21のS24)。
【0132】
「不合格品」と判定されたバンド91を溶液製膜方法に用いた場合には、流延膜136に厚みムラが生じてしまう。本発明では、製造されたバンド91について、製膜条件と同一条件下における浮き量CLに基づいて検査を行うため、溶液製膜方法を行うことなく、流延膜の厚みムラを誘発するバンドであるか否かを検知することが可能となる。
【0133】
なお、図11及び図12に示すように、ビードの背面側(バンド91の移動方向上流側)を減圧する減圧チャンバ237を、流延ダイ133の移動方向上流側に設けても良い。ここで、ビードは、流延ダイ133から流出したドープによって、流出口133aからバンド91のバンド表面91aにかけて形成されるものである。減圧チャンバ237により、バンド91の移動に伴ってバンド表面91a近傍に発生し、バンド91の移動方向へ流れる同伴風に起因するビードの振動を抑え、ひいては、流延膜やフィルムの厚みムラ等を防止することができる。同伴風に起因するビードの振動が問題となるのは、バンド91の移動速度が30m/分を超える場合である。したがって、バンド91の移動速度が30m/分を超える場合には、減圧チャンバ237を設けることが好ましい。
【0134】
減圧チャンバ237は、バンド91の移動方向において流延ダイ133よりも上流側に、バンド表面91aの法線方向において、バンド表面91aに近接するように配される。減圧チャンバ237とバンド表面91aとの間隔は、例えば、0.7mm以下である。減圧チャンバ237には、減圧チャンバ237内の気体を吸引するための減圧ファン(図示しない)が吸引管を介して接続される。
【0135】
減圧チャンバ237は、箱状のチャンバ本体と、チャンバ本体内のシーリング性を高めるためのシール部材と、減圧チャンバ237内における気体の流れが所定の向きとなるように整えるための整流部材とからなる。チャンバ本体は、ビードの背面側を囲うためのものであり、上流側遮風板237aと、1対の側方遮風板237bと、天板237cと、前面板とを有する。上流側遮風板237aは、流出口133a(図11参照)よりもバンド91の移動方向上流側にて、バンド表面91aに対して起立した姿勢で、バンド表面91aの法線方向においてバンド表面91aと近接するように設けられる。上流側遮風板237aは、バンド91の一方の側部から他方の側部にかけて延設され、上流側遮風板237aの両端部は、それぞれ、側部と正対する。1対の側方遮風板237bは、それぞれ、側部の表面に対して起立した姿勢で、上流側遮風板237aの両端部からバンド91の移動方向下流側に向かって延設される。1対の側方遮風板237bには、天板237cと、前面板とが掛け渡される。
【0136】
減圧チャンバ本体は、上流側遮風板237aと1対の側方遮風板237bと天板237cと前面板とによって囲まれてなり、バンド表面91aに向かって開口する吸引口(図示しない)を有する。減圧ファン(図示しない)により、減圧チャンバ237は、ビードの上流側にある気体を吸引口から吸引する。ビードの上流側にある気体の吸引の結果、ビードの上流側の気圧が下がり、ビードの上流側及び下流側の圧力差ΔPを生じさせることができる。この圧力差ΔPにより、バンド91の移動に伴ってバンド表面91a近傍に発生し、バンド91の移動方向へ流れる同伴風に起因するビードの振動を抑え、ひいては、流延膜やフィルムの厚みムラ等を防止することができる。
【0137】
図11及び図13に示すように、バンド91のバンド表面91a上には、減圧エリアBAが形成される。減圧エリアBAは、製膜用ローラ131に支持されたバンド表面91aのうち減圧チャンバ237によって覆われる部分である。
【0138】
この場合において、バンド検査装置200(図14参照)を用いて、測定位置MP1についての浮き量CLの測定に加えて、減圧エリアBAに対応する測定位置MA(図15参照)について浮き量CLの測定を行うことが好ましい。より具体的には、バンド表面91aに設定された測定位置MAにおいて、幅方向に延びる測定線MLを設定し、当該測定線MLごとに、上述のバンド検査工程230(図21参照)を行うことが好ましい。測定線MLは、測定位置MAのバンド91の移動方向上流端からバンド91の移動方向下流端にかけて並べて設定することが好ましい。これにより、測定位置MA全域について、バンド91の検査を行うことができる。
【0139】
測定位置MAは、検査用ローラ201に支持されたバンド表面91a上に設定される。図11及び図22に示すように、回転中心O131aから減圧エリアBAのバンド91の移動方向上流端BAuに向かって延びる面LBAuと面LTPとがなす角の角度φBAuは、回転中心O201aから測定位置MAのバンド91の移動方向上流端MAuに向かって延びる面MMAuと面MTPとがなす角の角度φMAuと等しい。また、回転中心O131aから減圧エリアBAのバンド91の移動方向下流端BAdに向かって延びる面LBAdと面LTPとがなす角の角度φBAdは、回転中心O201aから測定位置MAのバンド91の移動方向下流端MAdに向かって延びる面MMAdと面MTPとがなす角の角度φMAdと等しい。
【0140】
測定位置MAにおける浮き量CLが閾値TH1を超えるバンド91を溶液製膜方法に用いた場合には、バンド91の移動により減圧ユニットのシーリング性のばらつきが生じる。そして、減圧ユニットのシーリング性のばらつきにより、ビードが振動する結果、最終低には、流延膜の厚みムラが生じてしまう。そこで、減圧エリアBAに対応する測定位置MA(図22参照)について浮き量CLを測定し、測定位置MA全域について、バンド91の検査を行うことにより、溶液製膜方法を行うことなく、流延膜の厚みムラを誘発するバンドであるか否かを検知することが可能となる。
【0141】
次に、厚み測定ラインSMの設定方法の一例について説明する。図23に、反りが生じていないバンド、すなわち浮き量CLが全て「0」のバンドについて、測距センサ208xのセンサデバイスが検知する距離データを示し、図24に、反りが生じているバンドについて、測距センサ208xのセンサデバイスが検知する距離データを示す。図23及び図24の横軸はバンド91の幅方向の位置を、図23及び図24の縦軸はセンサデバイスが検知した距離を表す。
【0142】
測距センサ208xのセンサデバイスは、バンド91について幅方向の一端から他端にかけて、測定面208aからバンド表面91a又は軸方向端部208beまでの距離を測定する。測距センサ208xの内蔵CPUは、センサデバイスが測定した距離のデータ(以下、距離データと称する)を一の幅方向外側から幅方向中央側に向かって、他の幅方向外側まで読み取る。次に、内蔵CPUは、距離データのうち、立ち上がりE1を軸方向端部201beの端と判定し、ピークE2をバンド91の端と判定する。ここで、立ち上がりE1は、一の幅方向外側から他の幅方向外側まで読み取る内蔵CPUが、一番最初に検知する立ち上がり部分であり、ピークE2は、距離データのうち最大値を示す位置である。
【0143】
次に、内蔵CPUは、立ち上がりE1の位置と、立ち上がりE1から幅方向中央側へ所定量だけ離れた位置との間において、任意の距離データを選択する。そして、この選択された距離データに基づいて距離Bを算出する。
【0144】
更に、内蔵CPUは、ピークE2の位置と、ピークE2から幅方向中央側へ所定量εだけ離れた位置との間において、任意の距離データを選択する。こうして、内蔵CPUは、この選択された距離データに基づいて距離Aを算出する。
【0145】
厚み測定ラインSMのうちバンド91の幅方向において最も端側に位置するもの、すなわち、厚み測定ラインSM(1)や厚み測定ラインSM(m)は、図23や図24におけるピークE2に相当する位置、すなわち、バンド91の一方の端や他方の端に設定することが好ましい。これにより、内蔵CPUは、ピークE2の位置を厚み測定ラインSM(1)や厚み測定ラインSM(M)と認定することができる。また、隣り合う厚み測定ラインSMの間隔εは予め設定されているため、ピークE2から幅方向中央部側へ所定距離だけ離れた位置を厚み測定ラインSM(2)や厚み測定ラインSM(M−1)と認定することができる。
【0146】
このようにすることで、バンド91の幅方向端部が反ったとしても、幅方向における厚み測定ラインSMの位置の誤差を最小限にすることができる。
【0147】
上記実施形態では、バンド91の一方の端や他方の端を基準にして厚み測定ラインSMを設定したが、本発明はこれに限られず、反りが発生しない部分(例えば、バンド91の幅方向中央部)を基準にして、当該部分から所定距離だけ離れた位置に厚み測定ラインSMを設定しても良い。また、溶接部91wを有するバンド91の場合、溶接部91wの位置を基準にして、当該部分から所定距離だけ離れた位置に厚み測定ラインSMを設定しても良い。なお、バンド表面91aに設定された別途の目印を基準にして、当該部分から所定距離だけ離れた位置に厚み測定ラインSMを設定しても良い。
【0148】
上記のバンド検査工程230は、溶接部91vのみを有するバンド91と、溶接部91v及び溶接部91wを有するバンド91とのいずれにも適用可能である。
【0149】
上記のフィルム形成装置117(図10参照)においては、製膜用ローラ131によって支持されるバンド91のバンド表面91a上に、到達位置DPと剥取位置PPとを設定したが、本発明はこれに限られない。例えば、製膜用ローラ131に代えて、到達用支持ローラと剥離用支持ローラとを用いてもよい。そして、到達用支持ローラと剥離用支持ローラとに掛け渡されたバンド91の表面91aには、到達用支持ローラが支持する部分には到達位置DPが設定され、剥離用支持ローラが支持する部分には剥取位置PPが設定される。更に、減圧チャンバ237を設ける場合には、到達用支持ローラが支持する部分に減圧エリアBAが設定される。本発明のバンド検査工程230を、このような到達位置DPや減圧エリアBAに対応する位置に対して行ってもよい。
【0150】
基準位置B1は、溶接部91vではなくてもよい。例えば、バンド表面91aに設定された別途の目印を基準位置B1としてもよい。
【0151】
製膜用ローラ131、132と、評価用ローラ201、202とは同一のローラであることが好ましい。また、溶液製膜設備110において、バンドの検査工程230を行ってもよい。
【0152】
図10に示す溶液製膜設備110により得られるフィルム116は、位相差フィルムや偏光板保護フィルムに用いることができる。
【0153】
フィルム116の幅は、600mm以上3000mm以下であることが好ましく、2000mm以上3000mm以下であることが好ましい。また、フィルム116の幅は、3000mmを超える場合にも本発明を適用することができる。フィルム116の膜厚は、30μm以上120μm以下であることが好ましい。
【0154】
(ポリマー)
本発明に用いることのできるポリマーは、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状オレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状オレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状オレフィンである。
【0155】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)を満たすものであることが好ましい。下記式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。セルロースアシレートの90質量%以上が0.1〜4mmの粒子であることが好ましい。中でも、本発明は、セルロースアシレートとしてセルロースジアセテート(DAC)を用いた場合に特に大きな効果がある。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0156】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
【0157】
全アシル化置換度、すなわち、DS2+DS3+DS6の値は、2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)の値は、0.28が好ましく、より好ましくは0.30以上であり、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2は、グルコース単位における2位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「2位のアシル置換度」とする)であり、DS3は、グルコース単位における3位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「3位のアシル置換度」という)であり、DS6は、グルコース単位において、6位の水酸基の水素がアシル基によって置換されている割合(以下「6位のアシル置換度」という)である。
【0158】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が用いられてもよい。2種類以上のアシル基を用いるときには、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基により置換されている度合いの総和をDSAとし、2位、3位及び6位の水酸基がアセチル基以外のアシル基によって置換されている度合いの総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、2.22〜2.90であることが好ましく、特に好ましくは2.40〜2.88である。
【0159】
また、DSBは0.30以上であることが好ましく、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBは、その20%以上が6位の水酸基の置換基であることが好ましく、より好ましくは25%以上であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上であることが好ましい。さらに、セルロースアシレートの6位におけるDSA+DSBの値が0.75以上であり、さらに好ましくは0.80以上であり、特には0.85以上であるセルロースアシレートも好ましく、これらのセルロースアシレートを用いることで、より溶解性に優れたドープを作製することができる。特に、非塩素系有機溶剤を使用すると、優れた溶解性を示し、低粘度で濾過性に優れるドープを作製することができる。
【0160】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター、パルプのいずれかから得られたものでもよい。
【0161】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特には限定されない。例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレノイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくは、プロピオニル基、ブタノイル基である。
【0162】
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
【0163】
上記のハロゲン化炭化水素の中でも、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。セルロースアシレートの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度及び光学特性など物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対して2〜25質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0164】
最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない溶剤組成も検討されている。この場合には、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく、これらを適宜混合して用いる場合もある。例えば、酢酸メチル、アセトン、エタノール、n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン、エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン、エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−、−CO−、−COO−および−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も溶剤として用いることができる。
【実施例】
【0165】
以下に本発明の効果を確認するために、実験1〜6を行った。各実験の詳細は実験1にて説明し、実験2〜6については、実験1と異なる条件のみを示す。
【0166】
(実験1)
図1に示すバンド製造設備10において、SUS316製の側部材11(幅150mm)とSUS316製の中央部材12(幅2000mm)とから、バンド(A−1)を製造した。
【0167】
バンド(A−1)について、図14に示すバンド検査装置200を用いて、図21に示すバンド検査工程230を行った。バンド検査工程230では、測定位置MP1における浮き量CL、及び測定位置MAにおける浮き量CLを測定した。測定位置MP1における浮き量CLの最大値CLMP、及び測定位置MAにおける浮き量CLの最大値CLMAは、表1に示すとおりである。バンド検査工程230の際、被検査対象となるバンドに印加した移動テンションT2は60N/mmであった。
【0168】
【表1】

【0169】
溶液製膜設備110(図10参照)において、セルロースジアセテート(DAC)及び溶剤を含むドープ113からフィルム116を製造した。バンドAをバンド91として用いた。バンド91の移動速度は40m/分であった。流延ダイ133は、移動状態のバンド91へドープ113を連続的に流出した。バンド91の表面91a上には、ドープ113からなる流延膜136が形成された。
【0170】
各ダクト141〜143からの乾燥風を用いて、バンド91上の流延膜136から溶剤を蒸発させた。剥取ローラ135が、流延膜136をバンド91から剥ぎ取って、フィルム116とした。フィルム116は、第1テンタ120、ローラ乾燥装置124、第2テンタ125、スリッタ126へと順次送られた。
【0171】
(実験2〜6)
バンド(A−1)に代えてバンド製造設備10により得られたバンド(A−2)〜(A−6)を用いたこと以外は、実験1と同様にしてフィルム116を製造した。但し、浮き量CLの最大値CLMP、及び浮き量CLの最大値CLMAは、表1に示すとおりである。
【0172】
実験1〜実験6で得られたフィルムについて、以下の評価を行った。
【0173】
1.剥げ残り評価
バンドにおける流延膜の剥げ残りの有無について調べた。
○:バンドにおける流延膜の剥げ残りが起こらなかった。
×:バンドにおける流延膜の剥げ残りが起こった。
【0174】
2.厚みムラの有無の評価
以下の手順で、流延膜の厚みムラの有無を評価した。巻き取り部127にて、巻き芯に巻き取られる前のフィルムから、サンプルフィルムを切り出した。サンプルフィルムに光を透過させた際、サンプルフィルムの表面に現れる陰影を目視で観察した。サンプルフィルムにて観察された陰影の強弱が、位相差フィルムや偏光板保護フィルムとしての厚みムラの評価試験をパスした製品フィルムのものよりも大きい場合には、当該厚みムラが許容できない(×)と判断した。また、サンプルフィルムにて観察された陰影の規模が、位相差フィルムや偏光板保護フィルムとしての性能試験をパスした製品フィルムのものと同程度、それよりも小さい場合には、当該厚みムラが許容できる(○)と判断した。
【0175】
実験1〜6の評価結果について、表1に示す。なお、表1において、評価結果に付した番号は、上記評価項目に付した番号を表す。
【符号の説明】
【0176】
91 バンド
200 バンド検査装置
201、202 検査用ローラ
203 シフト部
205 モータ
206 駆動部
207 ロードセル
208 センサユニット
208x 測距センサ
208y 基準位置検知センサ
211 CPU
212 記憶部
216 距離算出部
217 浮き量算出部
218 判定部
230 バンド検査工程
237 減圧チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流延ダイから流下したドープが到達する到達位置が設定され前記到達したドープからなる流延膜を形成するための表面と、循環移動する際製膜用ローラに支持されるための裏面とを備えた金属製のエンドレスバンドの検査方法において、
前記裏面が検査用ローラによって支持され移動テンションが印加された状態の前記エンドレスバンドのうち前記到達位置に対応した前記表面上の測定位置から前記検査用ローラの支持面までの距離Hを算出する距離H算出工程と、
式(1)により、前記測定位置における前記支持面から前記裏面までの浮き量CLを算出する浮き量算出工程と、
前記算出された浮き量CLが閾値以下であるか否かを判定する判定工程とを有することを特徴とするエンドレスバンドの検査方法。
式(1)CL=H−D
D:前記測定位置における前記エンドレスバンドの厚み
【請求項2】
前記検査用ローラは軸方向端部が露出するように軸方向中央部で前記エンドレスバンドを支持し、
前記距離算出工程では、測距手段を用いて、前記測定位置から前記測距手段までの距離A及び前記測定位置における前記軸方向端部から前記測距手段までの距離Bを測定し、式(2)により前記距離Hを算出することを特徴とする請求項1記載のエンドレスバンドの検査方法。
式(2) H=B−A
【請求項3】
前記浮き量算出工程では、前記エンドレスバンドに設定された基準位置から前記測定位置までの位置情報と前記測定位置における前記エンドレスバンドの厚みDとが関連付けられて記憶された記憶手段から前記エンドレスバンドの厚みDを読み取り、
前記記憶手段から読み取った前記エンドレスバンドの厚みDを用いて、前記浮き量CLを算出することを特徴とする請求項1または2記載のエンドレスバンドの検査方法。
【請求項4】
前記エンドレスバンドは、金属製の第1ウェブ及びこの第1ウェブの幅方向片側に溶接された金属製の第2ウェブからなることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載のエンドレスバンドの検査方法。
【請求項5】
前記製膜用ローラと前記検査用ローラとが同一のローラであることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載のエンドレスバンドの検査方法。
【請求項6】
前記移動テンションは60N/mmであり、
前記閾値が0.1mm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載のエンドレスバンドの検査方法。
【請求項7】
流延ダイから流下したドープが到達する到達位置が設定され前記到達したドープからなる流延膜を形成するための表面と、循環移動する際製膜用ローラに支持されるための裏面とを備えた金属製のエンドレスバンドの検査装置において、
前記裏面が検査用ローラによって支持され移動テンションが印加された状態の前記エンドレスバンドのうち前記到達位置に対応した前記表面上の測定位置から前記検査用ローラの支持面までの距離Hを算出する距離算出手段と、
式(1)により、前記測定位置における前記支持面から前記裏面までの浮き量CLを算出する浮き量算出手段と、
前記算出された浮き量CLが閾値以下であるか否かを判定する判定手段とを有することを特徴とするエンドレスバンドの検査装置。
式(1)CL=H−D
D:前記測定位置における前記エンドレスバンドの厚み
【請求項8】
前記検査用ローラは軸方向端部が露出するように軸方向中央部で前記エンドレスバンドを支持し、
前記測定位置までの距離A及び前記測定位置における前記軸方向端部までの距離Bを測定する測距手段が設けられ、
前記距離算出手段は、式(2)により、前記距離Hを算出することを特徴とする請求項7記載のエンドレスバンドの検査装置。
式(2) H=B−A
【請求項9】
前記エンドレスバンドに設定された基準位置から前記測定位置までの位置情報と前記測定位置における前記エンドレスバンドの厚みDとが関連付けられて記憶された記憶手段を有し、
前記浮き量算出手段は、前記記憶手段に記憶された前記エンドレスバンドの厚みDを用いて、前記浮き量CLを算出することを特徴とする請求項7または8記載のエンドレスバンドの検査装置。
【請求項10】
前記製膜用ローラと前記検査用ローラとが同一のローラであることを特徴とする請求項7ないし9のうちいずれか1項記載のエンドレスバンドの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−194140(P2012−194140A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60142(P2011−60142)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】