説明

エンボスロール及びその製造方法

【課題】ネガ型感光性組成物を用いて、フォトリソグラフィによってシャープな形状の凹部が形成されたエンボスロール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属ロールの表面に深度が5〜100μmでかつ凹部が非連続的に形成されている多数の凹部を有するエンボスロールであって、ネガ型感光性組成物を用いるフォトリソグラフィ法によって前記凹部を形成する。前記ネガ型感光性組成物が、(A)カルボキシル基を有し且つエチレン性不飽和結合を有するポリマーと、(B)近赤外線吸収色素と、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、(D)アミノアルコール、アミノアルコールの誘導体及び環状アミンからなる群から選択される1種以上のアミン類と、(E)有機ホウ素化合物と、(F)スルホニル化合物と、を含有することが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ロール、例えば、ステンレス鋼やダイス鋼のように硬度の高い鋼(硬質鋼)製のロール表面に多数の凹部を有するエンボスロール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチンのステンレス製ワークトップのプレート、キッチンストッカーやアルミフェンス等の金属製品または金属プレートの意匠性を高めたり、滑り防止機能を持たせるために高級感を持たせるために多数の凹凸部を形成する表面加工が行われているが、この表面加工には一般的にはエンボス加工(凹凸模様を彫刻したエンボスロールと呼ばれる型付けのロールを金属製品または金属プレート表面に押圧して凹凸の模様を形成する加工)が行われている。このエンボスロールは、一般的に金属ロール、例えば、ステンレス鋼やダイス鋼(例えば、SKD−11)のように硬度の高い鋼(硬質鋼)製のロールによって形成されており、その金属ロールの表面に多数の凹凸部を形成する表面加工を施すことによってエンボスロールが製造される。
【0003】
この金属ロールの表面の凹凸部の形成加工方法としては、凹凸状の表面を有する金属ロールと平坦な表面を有する金属製又はゴム製ワークロールとの間に処理対象金属プレートを挿入し、この処理対象金属プレートに圧縮力を加えてエンボス加工を施す方法が知られている(特許文献1及び特許文献2)。また、その他のエンボスロールの製造方法としては、ショットブラスト加工(特許文献3)、ホーニング加工(特許文献4)、化学エッチング加工(特許文献5)、放電加工(特許文献6)、電解処理加工(特許文献7及び特許文献8)等による製造する方法が知られている。しかしながら、これらの従来方法では、凹凸形状の精度を上げることができず、これらの方法によって製造されたエンボスロールによって金属プレート等にエンボス加工を施しても、高精細な凹凸形状を形成することができないために、精度の高い凹凸模様を形成することができないという問題があった。
【特許文献1】特開2008−784号公報
【特許文献2】特開2008−785号公報
【特許文献3】特開昭60−36196号公報
【特許文献4】特開昭62−25094号公報
【特許文献5】特開昭62−111792号公報
【特許文献6】特開昭62−218189号公報
【特許文献7】特開2005−146299号公報
【特許文献8】特開2005−206851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ネガ型感光性組成物を用いて、フォトリソグラフィによってシャープな形状の凹部が形成されたエンボスロール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のエンボスロールは、金属ロールの表面に深度が5〜100μmでかつ凹部が非連続的に形成されている多数の凹部を有するエンボスロールであって、ネガ型感光性組成物を用いるフォトリソグラフィ法によって前記凹部を形成することを特徴とする。
【0006】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様としては、(A)カルボキシル基を有し且つエチレン性不飽和結合を有するポリマーと、(B)近赤外線吸収色素と、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、(D)アミノアルコール、アミノアルコールの誘導体及び環状アミンからなる群から選択される1種以上のアミン類と、(E)有機ホウ素化合物と、(F)下記式(1)で示されるスルホニル化合物と、を含有する組成を採用することができる。
【0007】
【化1】

【0008】
[式(1)中、Qはアリール基又はヘテロ環基を示し、X〜Xは各々独立してハロゲン原子を示す]
【0009】
前記アミノアルコールの誘導体が、アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。また、前記環状アミンが、モルホリノ基含有化合物又はピペラジン系化合物であることが望ましい。なお、本発明において、アクリルとメタクリルをあわせて(メタ)アクリルと称し、アクリレートとメタクリレートをあわせて(メタ)アクリレートと称する。
【0010】
前記式(1)で示される化合物(F)が、トリブロモメチルフェニルスルホン又は2−[(トリブロモメチル)スルホニル]ピリジンであることが好適である。
【0011】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様としては、(A)カルボキシル基を有し且つエチレン性不飽和結合を有するポリマーと、(B)近赤外線吸収色素と、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、(G)2−メルカプトベンゾオキサゾール及び/又は2−メルカプトオキサゾールと、(H)下記式(2)で示されるジフェニルヨードニウム塩と、を含有する組成を採用することもできる。
【0012】
【化2】

【0013】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様が、(I)下記一般式(3)で示されるトリアジン化合物をさらに含有することが好適である。
【0014】
【化3】

【0015】
[前記一般式(3)において、Rはビニル基又はビニル基を含む1価の有機基である]
【0016】
前記(I)トリアジン化合物としては、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン及び/又は2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジンであることが好適である。
【0017】
前記ネガ型感光性組成物の第1及び第2の態様が、(J)シランカップリング剤をさらに含有することが好ましい。
【0018】
前記ネガ型感光性組成物の第1及び第2の態様が、(K)重合禁止剤をさらに含有することが望ましく、前記重合禁止剤(K)としては、チアゾール系化合物であることが好適である。
【0019】
前記金属ロールとしては、硬質鋼ロールが好ましく、例えば、ステンレス鋼ロール又はダイス鋼ロールを挙げることができる。ダイス鋼としてはSKD−11を例示できる。
【0020】
上記したネガ型感光性組成物を感光液として用いた金属ロールに対する凹部形成工程は次の通りである。
1.金属ロールに感光液塗布(ドライ膜厚2−7μmが好ましい。ピンホールを無くすため膜は厚い方が良いが、薄い方が使用量が少ない分コストは安くなる。)→2.乾燥(タッチドライまで15分→終了まで15〜20分)→3.露光(光源:半導体レーザー830nm、220mJ/cm)→4.現像(60〜90秒/25℃)→5.水洗(スプレー30秒)→6.エッチング(深度5〜100μm、腐食 塩化第二鉄30ボーメ)→7.レジスト剥離(アルカリ剥離)→8.水洗。
【0021】
本発明の凹部を有するエンボスロールの製造方法は、本発明のエンボスロールを製造する方法であって、金属ロールの表面にネガ型感光性組成物を塗布する工程と、該塗布したネガ型感光性組成物膜を乾燥する工程と、該乾燥したネガ型感光性組成物膜を露光する工程と、該露光したネガ型感光性組成物膜を現像して未露光部分を溶解除去し露光部分をレジストとして残存させる工程と、該レジストが残存する金属ロールの表面をエッチングし所定の深度の凹部を形成する工程と、該金属ロールの表面のレジストを除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明方法で用いられるネガ型感光性組成物としては、前記したネガ型感光性組成物の第1及び第2の態様のネガ型感光性組成物を用いることが好適である。
【0023】
本発明のエンボス加工形成されてなる金属製品は、本発明のエンボスロールを用いることによって、表面に多数の凹部模様が形成されてなる金属製品である。前記金属製品としては、ステンレス製キッチン製品、アルミフェンス、又は金属プレート製品等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のエンボスロールは、金属ロールの凹凸形状はシャープな形状の凹凸形状が形成さており、精度の高い凹凸模様を形成することができる。本発明のエンボスロールによってエンボス加工された本発明の金属製品は意匠性に優れ、また滑り防止機能を有するという著大な効果を有する。
【0025】
ネガ型感光性組成物として、前記したネガ型感光性組成物の第1及び第2の態様のネガ型感光性組成物を用いることにより、露光前のバーニング及びオーバーコートを不要とすることができる。さらに、該ネガ型感光性組成物は、優れた感度、密着性及び保存安定性を有しており、硬度の高い鋼等の金属ロールに適用しても常温での密着性が良好であり、高感度が得られるため、極めて高精細な凹凸形状が形成されたエンボスロールを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらの実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0027】
本発明のエンボスロールは、金属ロールの表面に深度が5〜100μmでかつ凹部が非連続的に形成されている多数の凹部を有するエンボスロールであって、ネガ型感光性組成物を用いるフォトリソグラフィ法によって前記凹部を形成したものである。前記ネガ型感光性組成物は特に制限はなく、公知のネガ型感光性組成物を用いることができるが、後述する第1及び第2の態様のネガ型感光性組成物を用いることが好適である。
【0028】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様としては、(A)カルボキシル基を有し且つエチレン性不飽和結合を有するポリマーと、(B)近赤外線吸収色素と、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、(D)アミノアルコール、アミノアルコールの誘導体及び環状アミンからなる群から選択される1種以上のアミン類と、(E)有機ホウ素化合物と、(F)下記式(1)で示されるスルホニル化合物と、を含有する組成を採用することができる。
【0029】
【化4】

【0030】
[式(1)中、Qはアリール基又はヘテロ環基を示し、X〜Xは各々独立してハロゲン原子を示す]
【0031】
前記ポリマー(A)としては、カルボキシル基及びエチレン性不飽和結合を有するポリマーであれば特に限定されないが、例えば、カルボキシル基を有する不飽和化合物を単量体単位として有する(共)重合体を、エチレン性不飽和結合を有する化合物と反応させることにより得られるポリマーが好適に用いられる。前記ポリマー(A)は、カルボキシル基を酸価が30〜500、特に、200〜250になるように含むことが好ましい。重量平均分子量としては1,500〜100,000が好適で好ましく、6,000〜50,000前後のものが更に好ましい。
【0032】
前記カルボキシル基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、及びそれらの誘導体等が好ましく、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
カルボキシル基を有する不飽和化合物を単量体単位として有する(共)重合体は、単量体単位として、前記カルボキシル基を有する不飽和化合物以外の他の不飽和化合物を併用してもよい。該他の不飽和化合物としては、不飽和二重結合を有する化合物が好ましく、スチレン、α−メチルスチレン、m又はp−メトキシスチレン、p−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシメチル−4−ヒドロキシ−スチレン等のスチレン系単量体や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。これらを単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
前記エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、不飽和アルコール(例えば、アリルアルコール、2−ブテン−1−2−オール、フルフリルアルコール、オレイルアルコール、シンナミルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド等),アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート等),オキシラン環及びエチレン性不飽和結合をそれぞれ1個有するエポキシ化合物(例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、α−エチルグリシジルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、イタコン酸モノアルキルモノグリシジルエステル等)等が好適な例として挙げられる。
【0035】
また、上記ポリマー(A)として、不飽和アルコールによりエチレン性不飽和結合を導入されたものに、さらにエチレン性不飽和結合濃度を大きくするために、前記したオキシラン環及びエチレン性不飽和結合をそれぞれ1個有するエポキシ化合物を反応させ、さらにエチレン性不飽和結合濃度を大きくしたものを用いてもよい。
【0036】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における前記ポリマー(A)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、45〜65重量%であるのが好ましく、50〜60重量%であるのが更に好ましい。前記ポリマー(A)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記(B)近赤外線吸収色素としては、波長700〜1,100nmの赤外線領域の一部又は全部に吸収帯を有する有機又は無機の色素が挙げられ、前記波長域の光を効率良く吸収し、且つ紫外線領域の光は殆ど吸収しないか又は吸収しても実質的に感応しない光吸収色素が好ましく、下記一般式(4)で示される化合物及びその誘導体、下記式(5)で示されるポリメチン系化合物(例えば、特開2001−64255号及びWO2005/049736号等参照)等がより好適に用いられる。
【0038】
【化5】

【0039】
[前記一般式(4)において、R〜Rは各々独立して、水素原子、アルコキシル基、又は3級アミノ基であり、メトキシ基、−N(CH、又は−N(Cが好ましい。Xは対アニオンを示し、XとしてはC−B(C、p−CHSO、又はCFSO等が好ましい。]
【0040】
【化6】

【0041】
[前記一般式(5)において、Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を示し、水素原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアルコキシ基を示し、炭素数1〜8のアルキル基、総炭素数2〜8のアルコキシアルキル基、炭素数1〜8のスルホアルキル基、又は総炭素数2〜9のカルボキシアルキル基が好ましい。R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、メチル基が好ましく、またRとRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、シクロペンタン環又はシクロヘキサン環を形成していることが好ましい。Yは水素原子、置換基を有してもよいアルコキシ基又は置換基を有してもよいアルキル基を示し、水素原子、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。Yは水素原子、ハロゲン原子又は置換アルキル基を示し、H、Cl、Br又はジフェニルアミノ基が好ましい。Zは電荷中和イオンを示し、Cl、Br、I、ClO、BF、CFCO、PF、SbF、CHSO又はp−トルエンスルホネート、Na、K、トリエチルアンモニウムイオンが好ましい。]
【0042】
また、他の光吸収色素としては、例えば、特開平11−231515号公報に記載されているような窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等を含む複素環等がポリメチン(−CH=)nで結合された、広義の所謂シアニン系色素が代表的なものとして挙げられ、具体的には、例えば、キノリン系(所謂、シアニン系)、インドール系(所謂、インドシアニン系)、ベンゾチアゾール系(所謂、チオシアニン系)、イミノシクロヘキサジエン系(所謂、ポリメチン系)、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系等が挙げられ、中で、キノリン系、インドール系、ベンゾチアゾール系、イミノシクロヘキサジエン系、ピリリウム系、又はチアピリリウム系が好ましい。特に、フタロシアニンやシアニンが好ましい。
【0043】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における近赤外線吸収色素(B)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.2〜4.0重量%であるのが好ましく、0.4〜3.0重量%であるのが更に好ましい。前記近赤外線吸収色素(B)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0044】
前記(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、エチレン性不飽和結合を分子中に1個以上有する化合物であれば特に制限はないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のイミド基又はマレイミド基を有する(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、レゾルシノールジ(メタ)アクリレート、p,p’−ジヒドロキシジフェニルジ(メタ)アクリレート、スピログリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ウレタン系ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様におけるモノマー(C)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、25〜46重量%であるのが好ましく、30〜40重量%であるのが更に好ましい。前記モノマー(C)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
前記(D)アミン類における前記アミノアルコールとしては、1分子中にアミノ基とアルコール性の水酸基とを有する有機化合物が使用可能であり、例えば、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等が好適な例として挙げられる。
【0047】
前記(D)アミン類における前記アミノアルコールの誘導体としては、アミノアルコールのエステルや塩が好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルがより好ましい。
【0048】
前記(D)アミン類における前記環状アミンとしては、環の内外にアミン性窒素を有する化合物であれば特に制限はないが、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン及びモルホリノエチルメタクリレート等のモルホリノ基含有化化合物や、ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン及び2−メチルピペラジン等のピペラジン環を有する化合物(ピペラジン系化合物)が好ましい。
【0049】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における前記アミン類(D)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.3〜5.0重量%であるのが好ましく、0.5〜4.0重量%であるのが更に好ましい。前記アミン類(D)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0050】
前記(E)有機ホウ素化合物としては、例えば、4級ホウ素アニオンのアンモニウム塩の構造を有するものが好ましく、具体的には、下記一般式(6)で示される構造を有する化合物が好適である。
【0051】
【化7】

【0052】
[前記一般式(6)において、R10は、1価の有機基であり、アルキル基が好ましく、n−ブチル基がより好ましい。R11〜R13は各々独立して1価の有機基であり、アリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基、アルキルフェニル基がより好ましい。R14〜R17は各々独立して1価の有機基であり、アルキル基が好ましい。]
【0053】
また、前記一般式(6)で示される化合物として、下記式(7)で示される化合物が好適に用いられる。
【0054】
【化8】

【0055】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における有機ホウ素化合物(E)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.3〜4.0重量%であるのが好ましく、0.5〜3.0重量%であるのが更に好ましい。前記有機ホウ素化合物(E)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(F)前記式(1)で示されるスルホニル化合物において、Qはアリール基又はヘテロ環基であり、アリール基は単環のアリール基及び多環のアリール基のいずれでもよく、また置換されていてもよい。前記アリール基としては、例えば、置換又は非置換のベンゼン環、置換又は非置換のナフタレン環が挙げられ、フェニレン基が好ましい。
前記ヘテロ環基は単環又は多環のヘテロ環基であり、芳香族のヘテロ環基が好ましく、他のアリール基と縮環していてもよい。前記ヘテロ環基としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンズイミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環等が挙げられ、ピリジン環がより好ましい。
前記スルホニル化合物(F)としては、具体的には、トリブロモメチルフェニルスルホン又は2−[(トリブロモメチル)スルホニル]ピリジンがより好ましい。
【0057】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様におけるスルホニル化合物(F)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.1〜5.0重量%であるのが好ましく、0.3〜4.0重量%であるのが更に好ましい。前記スルホニル化合物(F)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0058】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様は、(J)シランカップリング剤をさらに含有することが好ましい。前記(J)シランカップリング剤を添加することにより、密着性を向上させることができる。前記(J)シランカップリング剤としては、反応性官能基を有するアルコキシシラン化合物が好ましく、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するアルコキシシラン化合物、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を含有するアルコキシシラン化合物、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有するアルコキシシラン化合物、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノ基を有するアルコキシシラン化合物、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するアルコキシシラン化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル基を有するアルコキシシラン化合物、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するアルコキシシラン化合物、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物、イミダゾールシラン等のイミダゾール基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられ、特に、イミダゾール基を有するアルコキシシラン化合部が、ニッケルやステンレス等の鏡面基材に対する密着性をより向上させることができ好ましい。
【0059】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様におけるシランカップリング剤(J)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0〜3.0重量%であるのが好ましく、0.3〜2.0重量%であるのが更に好ましい。前記シランカップリング剤(J)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様は、(K)重合禁止剤をさらに含むことが好適である。重合禁止剤としては、エチレン性不飽和結合含有基の重合を抑制しうる化合物であればよいが、例えば、ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン等のハイドロキノン系化合物;4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール類;フェノチアジン及びフェノチアジン誘導体等のフェノチアジン系化合物;ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸塩;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等のニトロソ系化合物;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2(4−モルフォリニルジチオ)ベンゾチアゾール等のチアゾール系化合物が挙げられ、チアゾール系化合物がより好ましい。
【0061】
前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における重合禁止剤(K)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.1〜7重量%であるのが好ましく、0.1〜5重量%であるのが更に好ましい。前記重合禁止剤(K)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0062】
本発明において用いられるネガ型感光性組成物としては、上記した第1の態様のネガ型感光性組成物の他に下記する第2の態様のネガ型感光性組成物を適用することも可能である。
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様としては、(A)カルボキシル基を有し且つエチレン性不飽和結合を有するポリマーと、(B)近赤外線吸収色素と、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、(G)2−メルカプトベンゾオキサゾール及び/又は2−メルカプトオキサゾールと、(H)下記式(2)で示されるジフェニルヨードニウム塩と、を含有する構成を採用することができる。
【0063】
【化9】

【0064】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様における、(A)カルボキシル基を有し且つエチレン性不飽和結合を有するポリマー、(B)近赤外線吸収色素、及び(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーは、前記第1の態様のネガ型感光性組成物と同様の成分であり、これら成分の具体例や含有割合については前述した内容と同様であるので再度の説明は省略する。
【0065】
前記成分(G)は、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトオキサゾール、又は両者の併用であり、連鎖移動剤として用いられる。前記ネガ型感光性組成物の第2の態様における成分(G)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.5〜20重量%であるのが好ましく、3〜15重量%であるのが更に好ましい。
【0066】
前記成分(H)は、前記式(2)で示されるジフェニルヨードニウム塩であり、光開始剤として用いられる。前記ネガ型感光性組成物の第2の態様における成分(H)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.5〜20.0重量%であるのが好ましく、4.0〜15.0重量%であるのが更に好ましい。
【0067】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様は、(I)下記一般式(3)で示されるトリアジン化合物をさらに含有することが好ましい。
【化10】

【0068】
前記一般式(3)において、Rはビニル基又はビニル基を含む1価の有機基であり、ビニル基又は(メタ)アクリロイルオキシアルキル基が好ましい。前記(I)トリアジン化合物としては、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン及び/又は2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン等が好適な例として挙げられる。
【0069】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様における成分(I)の含有割合は、特に限定されないが、組成物の固形分総量に対して、0.1〜5.0重量%であるのが好ましく、0.2〜4.0重量%であるのが更に好ましい。前記(I)トリアジン化合物は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0070】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様において、前記ネガ型感光性組成物の第1の態様における成分である(D)アミノアルコール、アミノアルコールの誘導体及び環状アミンからなる群から選択される1種以上のアミン類をさらに含有することが好適である。このアミン類の具体例や含有割合については前述した内容と同様であるので再度の説明は省略する。
【0071】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様において、前記ネガ型感光性組成物の第1の態様の場合と同様に(J)シランカップリング剤をさらに含有するのが好ましい。このシランカップリング剤の具体例や含有割合については前述した内容と同様であるので再度の説明は省略する。
【0072】
前記ネガ型感光性組成物の第2の態様において、前記ネガ型感光性組成物の第1の態様の場合と同様に(K)重合禁止剤をさらに含有するのが好ましい。この重合禁止剤の具体例や含有割合については前述した内容と同様であるので再度の説明は省略する。
【0073】
前記ネガ型感光性組成物(第1及び第2の態様を含めて)は、上記した成分に加えて、必要に応じて、顔料又は染料等の着色剤、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤、表面調整剤等の各種添加剤を配合してもよい。現像促進剤は、例えば、ジカルボン酸又はアミン類又はグリコール類を微量添加することが好ましい。
【0074】
前記着色剤は特に限定されないが、トリアリールメタン系染料が好ましい。該トリアリールメタン系染料としては、従来公知のトリアリールメタン系の着色染料を広く使用できるが、具体的には、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ビクトリアブルーB、オイルブルー613(オリエント化学工業(株)製の商品名)及びこれらの誘導体が好ましい。これらトリアリールメタン系色素は単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0075】
着色染料を用いることにより、現像によりパターンができた際に感光膜の表面のピンホール、ゴミ等がはっきり認識でき修正液(オペーク)で塗込み作業がし易いという効果がある。染料の濃度が高いほど見やすく好ましい。
【0076】
前記ネガ型感光性組成物は、通常、溶媒に溶解した溶液として使用される。溶媒の使用割合は、感光性組成物の固形分総量に対して、通常、重量比で1〜20倍程度の範囲である。
【0077】
溶媒としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はなく、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒を使用できる。セロソルブ系溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等が挙げられる。プロピレングリコール系溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。エステル系溶媒としては、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等が挙げられる。高極性溶媒としては、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶媒やジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。その他、酢酸、あるいはこれらの混合溶媒、更にはこれらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。
【0078】
前記ネガ型感光性組成物は、通常、前記各成分をセロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒等の溶媒に溶解した溶液として金属ロール表面に塗布し自然乾燥した後、高速回転して金属ロール表面で風を切り感光膜内における遠心力による質量作用と表面近傍が若干の負圧状態になることで溶剤残留濃度を6%以下に低減することにより、金属ロール表面に感光性組成物層が形成されたネガ型感光膜とされる。前述した第1及び第2の態様のネガ型感光性組成物により形成されるネガ型感光膜は、露光前のバーニング処理(加熱処理)を行なわなくても十分な密着性を発揮するという効果を奏する。
【0079】
塗布方法として、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。塗布膜の厚さは1〜10μmの範囲とすることが好ましく、さらに3〜7μmとするのが好ましい。
【0080】
ネガ型感光性組成物層を画像露光する光源としては、波長700〜1,100nmの赤外レーザー光線を発生する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましい。他に、ルビーレーザー、LED等の固体レーザーを用いることが出来る。レーザー光源の光強度としては、2.0×10mJ/s・cm以上とすることが好ましく、1.0×10mJ/s・cm以上とすることが特に好ましい。
【0081】
上記露光後の感光膜に対して、現像前にバーニング処理(加熱処理)を行なっても良い。バーニング処理を行なうことにより、より密着性を高めることができる。バーニング処理を行なう場合、処理条件は特に制限はないが、過熱水蒸気を用いて所定時間加熱処理することが好ましい。過熱水蒸気の温度は100℃以上、好ましくは100℃を越え300℃以下、より好ましくは105℃以上200℃以下が好適である。加熱時間は過熱水蒸気の温度によって変動するが、5分から1時間程度で十分である。また、複数回バーニング処理を行なってもよい。
【0082】
前記ネガ型感光性組成物を用いて形成した感光膜に対して用いる現像液としては、無機アルカリ(例えば、Na、Kの塩等)、又は有機アルカリ(例えば、TMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)、又はコリン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等)などの無機又は有機のアルカリからなる現像剤が好ましい。
【0083】
現像は、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等により、通常、15〜45℃程度の温度、好ましくは22〜32℃で行なう。
【0084】
前記金属ロールとしては、硬質鋼ロールが好ましく、例えば、ステンレス鋼ロール又はダイス鋼ロールを挙げることができる。ダイス鋼としてはSKD−11を例示できる。
【0085】
前記したネガ型感光性組成物を感光液として用いることによる本発明の凹部を有する金属ロールの製造工程を図1によって以下に説明する。
まず、金属ロール表面に感光液を塗布する(図1のステップ100)。この感光液の膜厚はドライ膜厚で2−7μmが好ましい。ピンホールを無くすため膜は厚い方が良いが、薄い方が感光液の使用量が少ない分コストは安くなる利点がある。
次に、塗布した感光液を乾燥する(図1のステップ102)。この乾燥に要する時間は膜厚にもよるが、タッチドライまで15分程度であり、乾燥終了までは15〜20分程度である。
続いて、乾燥した感光液膜を露光する(図1のステップ104)。露光用の光源としては、例えば、半導体レーザーを用いて、波長830nm、強度220mJ/cmのレーザーを照射する。
この露光した感光液膜を現像する(図1のステップ106)。この現像はトリエタノールアミン0.8%液等の現像液を用いて、20℃〜30℃の温度で60〜90秒程度行う。この現像処理により、未露光部分が溶解除去され、露光部分(レジスト)のみを残した状態となる。この現像処理された金属ロール表面をスプレー水洗等で20秒〜1分程度水洗し未露光部分を完全に除去する(図1のステップ108)。
【0086】
さらに、この露光部分にレジストが残存した金属ロール表面をエッチングする(図1のステップ110)。このエッチングによる凹部の深度としては、金属ロールの使用目的に応じて適宜設定すればよいが、通常は5〜100μm程度とすればよい。このエッチングに用いられるエッチング液としては、例えば、塩化第二鉄(30ボーメ溶液)(使用温度は35℃程度)の他に硝酸20wt%水溶液や過酸化水素20wt%水溶液(使用温度は常温でよいが、これらは酸化剤であるので温度は反応で直ぐに上昇する)等を使用することができる。
エッチング終了後、露光した感光液膜(レジスト)をNaOH水溶液等のアルカリ水溶液を用いて剥離する(図1のステップ112)。最後に、レジストを除去した金属ロールの表面を水洗する(図1のステップ114)。
上記した工程によって、金属ロール表面に多数の凹部を形成することができる。
【0087】
次に、上記のように製造した表面に多数の凹部を有する金属ロール、即ちエンボスロールを用いて処理対象金属プレートをエンボス加工する態様について図2によって説明する。
図2はエンボス加工の一例を示す概略説明図である。
【0088】
図2において、10はエンボスロールで多数の凹部12a及び凸部12bを有している。14はエンボスロール10に対面して設置された駆動ロールである。16はエンボスロール10の上面側に当接して設けられたバックアップロールである。処理対象金属プレート18をエンボスロール10と駆動ロール14の間に矢印X方向に圧入すると、処理対象金属プレート18の表面がエンボスロール10の凸部12bによって圧接され、処理対象金属プレート18の表面に多数の押圧凹部20、即ち凹部模様が形成される。
【実施例】
【0089】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0090】
(製造例1〜6)
表1に示す配合物質及び配合割合(重量部)によりネガ型感光性組成物を調製し、テスト感光液とした。
【0091】
【表1】

【0092】
表1中の各成分は下記の通りである。
ポリマーA1:下記式(8)で示される構造を有するポリマー[酸価(mgKOH/g]=55)
【0093】
【化11】

【0094】
(前記式(8)において、R21はメチル基又はエチル基を示し、lは20〜50、mは15〜25、nは5〜25である。)
【0095】
ポリマーA2:下記式(9)で示される構造を有するポリマー(酸価65)
【0096】
【化12】

【0097】
[前記式(9)において、R22は水素又は下記式(10)で示される基であり、ポリマー中のR22における水素原子:下記式(10)で示される基の当量比は、0.6:0.4である。mは37〜40である。]
【0098】
【化13】

【0099】
近赤外線吸収色素B1:IR−T(昭和電工(株)製、下記式(11)で示される構造を有する化合物)
【0100】
【化14】

【0101】
近赤外線吸収色素B2:YKR−2100(山本化成(株)製、近赤外線吸収色素)
モノマーC1:DPE−6A(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
アミン類D1:ジメチルアミノエチルアクリレート
アミン類D2:N,N−ジメチルエタノールアミン
アミン類D3:モルホリン
アミン類D4:ピペラジン・6水塩
有機ホウ素化合物E1:P3B(昭和電工(株)製、下記式(12)で示される構造を有する化合物)
【0102】
【化15】

【0103】
有機ホウ素化合物E2:CGI909(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、前記式(7)で示される化合物)
スルホニル化合物F1:α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン
スルホニル化合物F2:2−[(トリブロモメチル)スルホニル]ピリジン
シランカップリング剤J1:イミダゾールシラン[(株)日鉱マテリアルズ製]
重合禁止剤K1:クペロン(和光純薬工業(株)製、商品名Q−1300)
重合禁止剤K2:2−メルカプトベンゾチアゾール
着色色素:オイルブルー613(オリエント化学工業(株)製、Color Index(C.I.)No. 42595)
表面調整剤:BYK−378(3%溶液、ビックケミー社製、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン)
PM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
MeOH:メタノール
IPA:イソプロピルアルコール
MEK:メチルエチルケトン
【0104】
(製造例7〜9)
表2に示す配合物質及び配合割合(重量部)によりネガ型感光性組成物を調製し、テスト感光液とした。
【0105】
【表2】

【0106】
表2中の各成分は下記の通りである。
ポリマーA3:下記式(13)で示される構造を有するポリマー[酸価(mgKOH/g)=97、分子量Mw=17000,Mn=9200]
【0107】
【化16】

【0108】
[前記式(13)において、R23はメチル基又はエチル基を示し、mは15〜60、nは40〜85である。]
【0109】
イルガキュア(イルガキュアはチバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッドの登録商標)250:チバ・ジャパン(株)製の光開始剤、前記式(2)で示される化合物。
トリアジン化合物I1:キュアゾール(キュアゾールは四国化成工業(株)の登録商標)VT(四国化成工業(株)製、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン)
トリアジン化合物I2:キュアゾール(キュアゾールは四国化成工業(株)の登録商標)MAVT(四国化成工業(株)製、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン)
重合禁止剤K3:MNT(4−メトキシナフトール)
なお、近赤外線吸収色素B2、モノマーC1、着色色素、表面調整剤、PM、MeOH、IPA及びMEKは表1と同じである。
【0110】
(製造例10)
表3に示す配合物質及び配合割合(重量部)によりネガ型感光性組成物を調製し、テスト感光液とした。
【0111】
【表3】

【0112】
表3中の各成分は表1と同じである。
【0113】
(実施例1)
製造例1で得られたテスト感光液を用いて下記の実験を行った。
1m×1m×0.5mmのダイス鋼ロール(SKD−11)からなる試験鋼ロールに対して、ファウンテンコーティング装置(除湿装置と加湿装置が付設されていて湿度を所望にコントロールできる装置)を用いて、上記テスト感光液を後述するように塗布した。なお、該ファウンテンコーティング装置は、ネガ型感光性組成物中の溶剤がコーティング中に蒸発して溶剤の割合が徐々にレベリングするのに適している。
【0114】
上端からテスト感光液が涌き出るパイプを試験鋼ロールの一端に約500μmのギャップを有するように位置させ、テスト感光液をコーティングに必要な量だけ湧き出させるようにして、該パイプを試験鋼ロールの一端から他端まで移動してテスト感光液を均一に塗布し、塗布終了後、8分経過後にタッチドライ(塗膜のベトツキのない状態)になった。
【0115】
5分間待って、液垂れについて観察したところ、肉眼で液垂れが生じたことが観察できなかった。そして、膜厚測定をしたところ、試験鋼ロールの下部部分と上部部分とで差異はなかった。もって、液垂れが生じなく状態に乾固した感光膜をセットできたことを確認した。
【0116】
引き続いて、試験鋼ロールを20分間放置し、感光膜中の溶剤残留濃度を測定したところ、2%であった。
【0117】
続いて、試験鋼ロールをクレオサイテックス社の高出力半導体レーザーヘッドを搭載した露光装置(株式会社シンク・ラボラトリー製)に取付けて該試験鋼ロールに赤外波長域のレーザーを照射してネガ画像を焼き付け、次いで、試験鋼板を現像装置に取付けて現像槽を上昇させて残渣がなくなるまで現像を行い、その後水洗した。なお、現像液はトリエタノールアミン0.8%(24℃)を用いた。
【0118】
この現像処理により、未露光部分が溶解除去され、露光部分(レジスト)のみを残した状態となる。この現像処理された試験鋼ロール表面をスプレー水洗等で20秒〜1分程度水洗し未露光部分を完全に除去した。さらに、この露光部分にレジストが残存した金属ロール表面をエッチングした。このエッチングは塩化第二鉄(30ボーメ溶液)を用いて35℃で行った。凹部の深度は50μmとした。エッチング終了後、露光した感光液膜(レジスト)をNaOH水溶液で剥離した。最後に、レジストを除去した金属ロールの表面を水洗した。
【0119】
得られた金属ロール表面には、エッジの綺麗な深度50μmの多数の凹部を形成することができた。
【0120】
(実施例2〜9)
テスト感光液として製造例2〜9で得られたテスト感光液を用いた以外は実施例1と同様に実験を行った結果、エッジの綺麗な深度50μmの多数の凹部を形成する金属ロール表面を得ることができた。
【0121】
(実施例10)
テスト感光液として、製造例10で得られたテスト感光液を用いた以外は実施例1と同様に実験を行った結果、多数の凹部を形成することができたが、実施例1〜9に比べて凹部にムラがあり、凹凸形状の精度が劣っていた。
【0122】
(実施例11)
試験鋼ロールとして、2種のステンレス鋼ロール(SUS430及びSUS304)を用いた以外は実施例1と同様に実験を行った結果、いずれのステンレス鋼ロールにおいてもエッジの綺麗な深度50μmの多数の凹部を形成する金属ロール表面を得ることができた。
【0123】
(実施例12)
試験鋼ロールとして、2種のステンレス鋼ロール(SUS430及びSUS304)を用いた以外は実施例7と同様に実験を行った結果、いずれのステンレス鋼ロールにおいてもエッジの綺麗な深度50μmの多数の凹部を形成する金属ロール表面を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明方法の工程順の一例を示すフローチャートである。
【図2】エンボス加工の一例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0125】
10:エンボスロール、12a:凹部、12b:凸部、14:駆動ロール、16:バックアップロール、18:処理対象金属プレート、20:押圧凹部20。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ロールの表面に深度が5〜100μmでかつ凹部が非連続的に形成されている多数の凹部を有するエンボスロールであって、ネガ型感光性組成物を用いるフォトリソグラフィ法によって前記凹部を形成することを特徴とするエンボスロール。
【請求項2】
前記ネガ型感光性組成物が、
(A)カルボキシル基を有し且つエチレン性不飽和結合を有するポリマーと、
(B)近赤外線吸収色素と、
(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、
(D)アミノアルコール、アミノアルコールの誘導体及び環状アミンからなる群から選択される1種以上のアミン類と、
(E)有機ホウ素化合物と、
(F)下記式(1)で示されるスルホニル化合物と、
を含有することを特徴とする請求項1記載のエンボスロール。
【化1】

[式(1)中、Qはアリール基又はヘテロ環基を示し、X〜Xは各々独立してハロゲン原子を示す]
【請求項3】
前記アミノアルコールの誘導体が、アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項2記載のエンボスロール。
【請求項4】
前記環状アミンが、モルホリノ基含有化合物又はピペラジン系化合物であることを特徴とする請求項2記載のエンボスロール。
【請求項5】
前記式(1)で示される化合物(F)が、トリブロモメチルフェニルスルホン又は2−[(トリブロモメチル)スルホニル]ピリジンであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載のエンボスロール。
【請求項6】
前記ネガ型感光性組成物が、
(A)カルボキシル基を有し且つエチレン性不飽和結合を有するポリマーと、
(B)近赤外線吸収色素と、
(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、
(G)2−メルカプトベンゾオキサゾール及び/又は2−メルカプトオキサゾールと、
(H)下記式(2)で示されるジフェニルヨードニウム塩と、
を含有することを特徴とする請求項1記載のエンボスロール。
【化2】

【請求項7】
前記ネガ型感光性組成物が、(I)下記一般式(3)で示されるトリアジン化合物をさらに含有することを特徴とする請求項6記載のエンボスロール。
【化3】

[前記一般式(3)において、Rはビニル基又はビニル基を含む1価の有機基である]
【請求項8】
前記(I)トリアジン化合物が、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン及び/又は2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジンであることを特徴とする請求項7記載のエンボスロール。
【請求項9】
前記ネガ型感光性組成物が、(J)シランカップリング剤をさらに含有することを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項記載のエンボスロール。
【請求項10】
前記ネガ型感光性組成物が、(K)重合禁止剤をさらに含有することを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項記載のエンボスロール。
【請求項11】
前記重合禁止剤(K)がチアゾール系化合物であることを特徴とする請求項10記載のエンボスロール。
【請求項12】
前記金属ロールが硬質鋼ロールであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載のエンボスロール。
【請求項13】
前記硬質鋼ロールがステンレス鋼ロール又はダイス鋼ロールであることを特徴とする請求項12記載のエンボスロール。
【請求項14】
請求項1記載のエンボスロールを製造する方法であって、
金属ロールの表面にネガ型感光性組成物を塗布する工程と、
該塗布したネガ型感光性組成物膜を乾燥する工程と、
該乾燥したネガ型感光性組成物膜を露光する工程と、
該露光したネガ型感光性組成物膜を現像して未露光部分を溶解除去し露光部分をレジストとして残存させる工程と、
該レジストが残存する金属ロールの表面をエッチングし所定の深度の凹部を形成する工程と、
該金属ロールの表面のレジストを除去する工程と、
を含むことを特徴とするエンボスロールの製造方法。
【請求項15】
前記ネガ型感光性組成物が、請求項2〜11のいずれか1項記載のネガ型感光性組成物であることを特徴とする請求項14記載のエンボスロールの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項記載のエンボスロールによって、表面に多数の凹部模様がエンボス加工形成されてなる金属製品。
【請求項17】
前記金属製品がステンレス製キッチン製品、アルミフェンス、又は金属プレート製品である請求項16記載の金属製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−72828(P2009−72828A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215063(P2008−215063)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000131625)株式会社シンク・ラボラトリー (52)
【Fターム(参考)】